説明

外科処理において使用するファスナー装置

【課題】容易に設置できる生物学的に吸収可能なリベット組立体を提供する。
【解決手段】外科用のリベットおよびピンのファスナー装置において、基端部において拡大されたヘッド部4および当該ヘッド部から吊り下げられている状態の複数の拡張可能な足部12を有してリベット軸10に沿って延在している細長い本体部分を有していて、生体吸収性で生体許容性の材料により形成されているリベット3を備えており、足部12が概ね円周全体に配列されてリベット軸に沿って先端側に延在している中央開口部14を形成しており、さらに、ピン5を備えており、ピン5および足部12がピン5の中央開口部14の中における移動により足部12が拡張してリベット3を固定するように寸法付けられている。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明に関する技術分野は外科装置であり、特に、吸収性の整形外科用ファスナーである。とりわけ、形成外科または再構成外科処理における、骨、特に頭蓋または顔面の硬質組織の固定において使用するための生体吸収性のポリマー・リベットおよびピンに関する。
【0002】
〔発明の背景〕
脊椎、頭側部、および顎顔面のプレート材を金属ネジにより固定した骨折部分および外科修復部位に骨プレート材を取り付けるために利用できる種々の金属ファスナーが存在する。このような金属装置の不都合点はこれら(の取り付け)が永久的であり次の外科処理において除去する必要があることである。これらが体内に残存していると、組織萎縮およびこれに続く装置の緩みが生じる可能性がある。
【0003】
合成した吸収性で生体許容性(biocompatible)のポリマーが当該技術分野において周知である。このようなポリマーは一般的に医療装置を製造するために用いられ、体内組織の中に移植されて経時的に吸収される。合成した吸収性で生体許容性の脂肪族ポリエステルはグリコール酸、グリコリド、乳酸、ラクチド(d体、l体、メソ体およびこれらの混合物)、ε−カプロラクトン、トリメチレン・カーボネートおよびp−ジオキサノン等のモノマーのホモポリマーおよびコポリマー(ランダム形、ブロック形、セグメント形、およびグラフト形)を含む。米国特許第5,431,679号、同第5,403,347号、同第5,314,989号、同第5,431,679号、同第5,403,347号および同第5,502,159号を含む多数の米国特許がこれらのポリマーを記載している。
【0004】
吸収性ポリマーの出現により、それらの機能的な作用の低下に伴って体内に徐々に吸収されるように構成されている新しいファスナー(ネジ、ピン等)が開発されるようになった。吸収性の材料により作成した装置は治癒に要する時間だけそれらが残存するという利点を有している。
【0005】
従来技術において開示されている多数の整形外科用リベットが存在する。米国特許第5,167,665号は盲リベットを記載しており、このリベットはその基端部にヘッド部を有していて、当該リベットのヘッド部よりも先端側にビーズまたはヘッド部を有する中心マンドレル部を備えている。この組み合せ体は骨に予め設けた穴の中に挿入されて、中心マンドレル部を基端側に引っ張ることにより皮質層の下部に固定され、これにより、そのビーズの部分が潰れて第2のヘッド部が形成されて、この第2のヘッド部が皮質層の下部に残留する。
【0006】
米国特許第5,268,001号および同第5,725,529号は柔軟なスリーブ部材および細長い構成要素を記載しており、この場合の細長い要素はスリーブの内径よりも大きな外径を有している。このスリーブは骨の中に予め設けた穴の中に挿入される。その後、上記の要素がスリーブの中に挿入されてこれを外側に押し広げることによりスリーブを骨に固定する。
【0007】
米国特許第5,326,205号および同第5,501,695号は骨の中に拡張するように構成されているファスナーを記載している。このファスナーは長手方向の開口部を伴うチューブ状の本体部分を有していて、基端側にヘッド部を備えており、さらに本体部分に沿って先端側に延在している部材を有している。先端部にヘッド部を有する引っ張り装置がチューブ状の本体部分の中に挿入されている。この組立体が骨の中に予め設けた穴の中に挿入される。この引っ張り装置を基端側に移動すると、この装置がチューブ状の本体部分における各部材を圧縮してけん縮することにより各部材が骨に係合する。その後、引っ張り装置はチューブ状の本体部分におけるヘッド部において崩壊して離脱し、残りの部分が骨の中に残留する。
【0008】
米国特許第5,480,403号は縫合線アンカーを記載しており、当該アンカーはその基端側に半径方向に柔軟な足部を有するリベットと、当該リベットの柔軟な足部よりも先端側における端部に鋭い尖端を有する固定ピンと、基端部に結び付けられた縫合線を備えている。これらのリベットおよびピンは予め設けられた穴の中に挿入される。この穴は、ピンがリベットの先端部よりも先に初期的に挿入されるので、このピンに適合するようにリベット/ピンの深さよりも深く形成されている。その後、このピンが基端側に引っ張られてリベットの足部を拡張し、リベットが骨に係合する。
【0009】
米国特許第5,480,403号における別の実施形態においては、上記の縫合線アンカーがリベットおよびピンを有していて、このリベットが先端側に延伸する足部を有している。これらのリベットおよびピンは予め設けられた穴の中に挿入される。このピンを基端側に引っ張ると、リベットのヘッド部に向けて基端側に移動するほどその内径が小さくなるようにテーパー状になっているリベットの足部が半径方向に拡張して、ピンが基端側に引っ張られるのに伴って、縫合線アンカーが骨の表面部に固定される。
【0010】
米国特許第5,713,903号および同第5,720,753号はファスナーを記載しており、このファスナーはその先端部に拡張状態の足部を有しており、さらに当該ファスナーの足部の長さよりも深い位置における中央の中ぐり穴の中に固定されているフレア状の先端部を有するピンを有している。このピンが基端側に移動すると、ピンのフレア状の端部がファスナーの各足部を拡張してファスナーを骨に固定する。その後、ピンがファスナーのヘッド部におけるノッチ部において離脱する。このファスナーは特に骨の軟質組織を固定するために用いられる。
【0011】
これらの特許は穴の中に挿入された後に、装置の半径方向に柔軟な部分を通してまたは当該部分の中に、上方または基端側に、一定の部材を駆動することにより配備される装置に関する。このことは装置の配備の前に装置を完全に挿入するのに十分な空間部分を設けるために配備される装置の深さよりも深い穴を形成する必要がある。このような構成は骨の薄い層のみが取り付けのために利用可能である場合、または頭側部および顎顔面部の外科処理のような下層の軟質組織を損傷する恐れのために薄い骨の層の深さよりも深く穴を形成できない場合における外科的用途において不所望である。このような場合に、適当な固定強度に対応するファスナーの必要とされる長さは骨の全体の厚さに極めて近い。
【0012】
米国特許第4,590,928号はテーパー状の同軸の通路および半径方向に柔軟な足部を有する細長い円筒形の本体部分、および基端部であるヘッド部を有する端部の中に挿入可能なピンを備えているアンカーを記載している。この本体部分は骨の中に形成された穴の中に配置されて、ピンは上記通路の中に挿入されて上記足部を半径方向に拡張して周囲の骨の中に係合させる。これらの本体部分およびピンは生体許容性の材料により形成されていて、本体部分は埋め込まれてその内部に沿って長手方向に延在しているカーボン・ファイバーまたは炭素繊維を含有している。このカーボン・ファイバーは体内に吸収または再吸収されず、ファスナーのみが部分的に吸収可能である。
【0013】
この米国特許第4,590,928号は中実のピンを有するファスナーを記載している。骨組織における弾性のヤング率および材料の降伏応力等の材料特性が年齢と共に大きく変化し、同年齢または同性の間で個別的に大きく異なることがよく知られている。それゆえ、上記の各足部が半径方向に外側に拡張できないほどに周囲の骨が硬い場合に上記のピンが変形できないために、このような中実ピンの使用は装置の固定能力を制限する。
【0014】
このように周囲の骨が装置の設計条件よりも硬くてピンが中実である場合には、上記のテーパー状の穴の中において剛性のピンを駆動するために大きな力が必要になり、各足部が変形して無用化するか、あるいは、ピンが破損する。
【0015】
上述した多数のリベット構成はこれらの適正な設置のために限定された器具による取り扱いを必要とし、この場合に2種類の別の器具または比較的複雑な構成の単一の器具を使用する。それゆえ、例えば、リベット・システムはそれぞれ外側のリベット本体部分を挿入して、中央の拡張用のピンを駆動または挿通するための分離している円筒形状または棒状の器具を必要とする。リベットにおける幾つかの共同作用的な部品を取り扱う場合に、使用前にそれぞれのパッケージの中で各構成部品が分離する恐れ、外科的に生じた傷の中に1個以上の構成部品が落下する恐れ、あるいは、個々の部品の寸法が小さいことによる各構成部品の取り扱いミスまたは位置合わせミスの恐れがある。さらに、このようなリベット構造における多数の部品による構成は、再装填処理が必要になる前に、複数のリベットを設置することに適さない、またはそのような動作が不能な設置器具による取り扱い処理を必要とする場合がある。
【0016】
[発明が解決しようとする課題]
従って、容易に設置できる生物学的に吸収可能なリベット組立体を提供することが望まれている。
【0017】
さらに、再装填処理の前に多数個のリベットの配置が可能な設置器具内に装填できる生物学的に吸収可能なリベット組立体を提供することが望まれている。
【0018】
さらに、向上した取り扱い性および輸送における保全性を有する生物学的に吸収可能なリベット組立体を提供することが望まれている。
【0019】
[課題を解決するための手段]
本発明は生体許容性(biocompatible)で生体吸収性(bioabsorbable)のリベットおよびピンのファスナーを開示し、当該ファスナーはその態様の一例において、(1)基端部および先端部および中心軸を有しているヘッド部を有する生体許容性のリベットを備えており、当該ヘッド部がこのヘッド部の中心軸に実質的に平行であって当該ヘッド部の基端部から先端部まで延在している内部通路を有しており、ヘッド部の先端部が当該ヘッド部から概ね先端側に延在していて上記中心軸に対向している内面部を有する2個以上の足部に機械的に接続しており、さらに、(2)上記リベットの各足部よりも柔軟でない半径方向に圧縮可能な断面を有する生体許容性のピンを備えており、当該ピンが上記リベットの内部通路の中に挿入できるように構成されていて、リベットのヘッド部における基端部から先端部に向けて進行する際に、当該ピンが上記の各足部の内面部に接触して各足部に対して上記中心軸に実質的に垂直な方向に力を加える。
【0020】
上記のピンはこのピンの側面部に配置されている外周ノッチ部またはリブを備えることができる。このピンの面部におけるノッチ部またはリブは本体部分を貫通する内部通路の内表面部における内周リブまたはノッチ部に対して係合する。このようにしてピンの位置を係止する手段が構成されており、ピンを完全に挿入した後のピンの移動が阻止できる。
【0021】
このピンは(1)分離している構成要素であってもよく、または(2)下方の駆動力によりピンが本体部分から離脱して本体部分の中に先端側にピンが駆動されるような崩壊可能な接続手段により本体部分に対して一体になっている構成要素であってもよい。
【0022】
このピンは柔軟な部材を有することができ、これらは本体部分の柔軟な足部よりも柔軟でないまたは硬い。それゆえ、このピンは装置の構成目的に対応している平均的な物性を有する骨の中に装置が配備される場合に本体部分の足部を半径方向に外側に拡張するのに十分な硬さを有しているが、本体部分の足部が外側に拡張できないような極めて硬い骨の中に装置が配備される場合に内側に曲がる程度に十分に柔軟である。
【0023】
別の態様において、本発明は生体許容性で生体吸収性のリベットおよびピンのファスナーを含み、当該ファスナーは、(1)基端部、先端部および中心軸を有するヘッド部を有している生体許容性のリベット部分を備えており、当該ヘッド部がこのヘッド部の中心軸に実質的に平行であって当該ヘッド部の基端部から先端部まで延在している内部通路を有しており、ヘッド部の先端部が当該ヘッド部から概ね先端側に延在していて上記中心軸に対向している内面部を有する2個以上の足部に機械的に接続しており、さらに、(2)一定の半径方向の断面を有する生体許容性のピンを備えており、当該ピンが上記リベットの内部通路の中に挿入されてリベットのヘッド部における基端部から先端部に向けて進行する際に、当該ピンが上記の各足部の内面部に接触して各足部に対して上記中心軸から外側に向く方向に力を加え、このピンが崩壊可能な接続手段により本体部分に対して一体に接続していて、上記リベットおよびピンが輸送および取り扱いのための細長い単一部材片の組立体を形成し、上記中心軸に沿って加えられる駆動力により上記接続手段が崩壊されて、ピンが本体部分の中に先端側に駆動されてファスナーが固定される。好ましくは、このリベットおよびピンの組立体は容易に取り扱いできる好適な長さを有する単一の同軸ユニットを形成し、簡便な設置のための駆動装置内に装填できる。
【0024】
本発明の上記およびその他の特徴および利点は以下の説明および添付図面によりさらに明らかになる。
【0025】
[発明の実施の形態]
本発明の第1の態様によるリベットおよびピンのファスナーの実施形態の一例を図1に示す。このリベットおよびピンのファスナー2はリベット3およびピン5により構成されている。リベット3はヘッド部4および少なくとも2個の足部12を有しており、各足部12はヘッド部4の先端部8に取り付けられている。ヘッド部4の基端部6は内部通路14を有しており、この内部通路14はヘッド部の中心軸10に対して実質的に平行である。好ましくは、ヘッド部4は先端部から基端部にわたり直径が拡張していて、ファスナーの配備時に骨に対して整形外科装置を固定するための一定の面部を形成している。ピン5は半径方向に圧縮可能であり、このことはピンに対して十分な半径方向の力が加えられるとピンの少なくとも一部分における断面の直径が減少し得ることを意味する。このピン5の実施形態の一例は結合部分18において一体に結合している少なくとも2個の先端側の半径方向に柔軟な部材16を有している。このリベットおよびピンのファスナーはリベット3の基端部6内の内部通路14の中にピンの挿入端部を進入させることにより配備される。その後、ピン5の挿入端部20をヘッド部4の先端部8に向けて進行させる。ピン5が進行している時に、このピンの挿入端部20はリベットの各足部12に接触して一定の力をリベット3の中心軸10に対してほぼ垂直に加える。ピン5の各柔軟部材16は足部12が外側に拡張して隣接している骨に対して摩擦係合する際にリベット3における柔軟な各足部12が破壊してヘッド部4から分断しないように変形して曲がるように構成されている。
【0026】
好ましくは、リベット3における柔軟な各足部12はヘッド部4に対する接続部分から先端側にその厚さが増大するように延出するような一定の形状を有している。この形状により、各足部12は直線状のピン5が内部通路14の中に挿入される際に強制的に外側に拡張することができる。このように各足部12がヘッド部に対する接続部分から先端側にその厚さが増大するように延出している場合に、各足部12が取り付けられているヘッド部の先端部におけるリベットの外径よりも各足部12の先端部におけるリベットの外径の方が大きくなるので、ファスナーの定着特性が改善できる。それゆえ、各足部12は骨における高密度な表面層すなわち皮質に形成した初期的な穴の直径よりも大きく外側に拡張される。さらに、各足部12は穴の中に本体部分を挿入しやすくするために面取り処理または丸みを付けた先頭エッジ部24を有することができる。同様に、ピン5も当該ピン5をリベット3の内部通路14の中に挿入しやすくするために面取り処理または丸みを付けた先頭エッジ部26を備えることができる。さらに、リベット3は、必要に応じて、装置を設置した後に供給装置により装置を除去可能にするために面取り処理した内面部を有することもできる。
【0027】
ピン5は半径方向に柔軟な部材16をその先端部に有している。本発明の態様の一例によれば、このピン5における柔軟な部材16はリベット3の柔軟な足部12よりも柔軟性が低く硬質である。このことによりピン5は、装置の先端部におけるリベット3の柔軟性に比べて、構造的な柔軟性が低く、あるいは、構造的な剛性が高い。ピン5をリベット3の内部通路14の中に挿入することにより、リベット3における各足部12の半径方向の拡張が生じて、ピン5における各部材16が半径方向に圧縮される。ピン5における各部材16の総合的な剛性はリベット3における各足部12の総合的な剛性よりも高いので、結果として生じる半径方向の力は常に外側に向いていて、リベット3の各足部12が周囲の骨に対して摩擦係合する。しかしながら、各足部12が周囲の骨に対して効果的に摩擦係合しなくなる状態までピン5により各足部12を剪断または変形しないように、ピン5の少なくとも一部分が各足部12を実質的に損傷する力よりも小さい一定の閾値において半径方向に圧縮される。
【0028】
本発明の別の実施形態において、上記通路14における面部28はピン5の側面31上の外周リブ32に係合する内周ノッチ部30を有している。逆に、本発明のさらに別の実施形態において、通路14の面部28がピン5の側面上における外周ノッチ部に係合する内周リブを有していてもよい。これら両方の実施形態は挿入後のピンの軸方向における移動を阻止するために挿入したピンに対する係止手段を備えている。加えて、このような実施形態はピンがリベットの中に係止されて配置されたという触知可能な音響的なフィードバック的情報を外科医に対して容易に与えることができる。
【0029】
図3(A)に示す本発明の別の実施形態において、リベット3およびピン5はヘッド部4内の薄い材料の接続部分36を介して取り付けられてワン−ピース型(一部材片型)の装置を形成している。この装置が骨の穴の中に挿入されると、この薄い材料の接続部分を崩壊させるのに十分な一定の駆動力がピンに対して加えられて、ピンが本体部分の中に駆動されてファスナーが配備される。
【0030】
図4に示す本発明の別の実施形態において、各足部12の外側面部42は装置の固定強度を増大するためにファスナーの配備時に隣接する骨の中に埋め込まれる1個または多数のリブ44および/または突出部を有している。
【0031】
図5に示す本発明のさらに別の実施形態においては、ピン5が各ピン5の連続的な棒材50の一部になっていて、これらは各ピン5の先頭エッジ部における丸みを付けた部分または面取り部分52により分離される。一定の駆動力を連続的な棒材50に加えると、各ピン5の挿入端部がリベット3に完全に係合するまで棒材の先端部54がリベット3の中に押し込まれる。その後、棒材に十分な屈曲力を加えること、あるいは、接続部分52を切断することにより、先端側のピン5が棒材50から分離して接続部分52が分断され、新しい先端部52Aが現れる。それゆえ、この連続的な棒材50は多数のリベットの配備に使用できる。
【0032】
さらに、図6に示すようなファスナー2を供給するための方法を開示する。外科医がプレート60またはその他の装置を固定する場所における骨に一定の穴61を形成した後に、リベットおよびピンが供給装置62に装填される。その後、リベット3がプレート・ホール64を通して穴61の中に挿入される。さらに、ピン5が供給装置62のプランジャー66に下方に力を加えることによりリベット3の中に押し込まれる。この処理がプレート60に対応する適当な保持力が得られるまで必要に応じて繰り返される。
【0033】
上記のファスナーを形成することのできる適当な材料は脂肪族ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアルキレン・オキシド、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される生体許容性のポリマーを含む。あるいは、本発明の整形外科用ファスナーは吸収性のガラス材またはリン酸カルシウムおよびその他の生体許容性の金属酸化物(例えば、酸化カルシウム等)を含むセラミック材により形成することもできる。さらに、本発明のファスナーは吸収性のセラミック材、ガラス材およびポリマーの組み合わせ物によっても構成できる。
【0034】
好ましい実施形態において、上記整形外科用ファスナーは脂肪族ポリマーおよびコポリマー・ポリエステルおよびこれらの混合物により構成されている。この脂肪族ポリエステルは一般に開環重合において合成される。適当なモノマーとしては、乳酸、ラクチド(L体、D体、メソ体およびD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、イプシロン−デカラクトン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、アルファ,アルファ−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、ガンマ−ブチロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限らない。これらのモノマーは一般に昇温条件下において有機金属触媒および開始剤の存在下で重合される。この有機金属触媒は錫を基材とする例えばオクタン酸第一錫であるのが好ましく、上記モノマー混合物中において約10,000/1乃至約100,000/1の範囲のモノマー対触媒のモル比で存在している。開始剤は一般にアルカノール(ジオールおよびポリオールを含む)、グリコール、ヒドロキシ酸、またはアミンであり、上記モノマー混合物中において約100/1乃至約5000/1の範囲のモノマー対開始剤のモル比で存在している。この重合化反応は一般に約80℃乃至約240℃、好ましくは約100℃乃至約220℃の温度範囲において所望の分子量および粘度に到達するまで行われる。
【0035】
本発明のポリマー混合物は慣用的な様式で製造できる。上記のように作成したホモポリマーおよびコポリマーを混合する方法の一例は羽根車またはその等価物のような慣用的な混合装置を内部に取り付けた慣用的な混合容器または反応容器の中に各ポリマーをそれぞれ供給する方法である。その後、各ポリマーおよび各コポリマーを約100℃乃至約230℃、さらに好ましくは約160℃乃至約200℃の温度で約5分間乃至約90分間、さらに好ましくは約10分間乃至約45分間にわたり均一に分散したポリマー混合物が得られるまで混合する。その後、さらに、このポリマー混合物を混合装置から取り出して、室温まで冷却し、粉砕して、慣用的な装置および方法により一定の時間にわたり昇温条件下で大気圧よりも低い圧力において乾燥することにより処理する。また、これらのホモポリマーまたはコポリマーを混合するための別の方法は1個以上の適当な混合領域を伴う二軸スクリュー押出機の中にポリマーを通過させることにより行われる。
【0036】
上記の諸条件下において、上記のグリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン、ラクチドおよびトリメチレン・カーボネートを含むポリマーおよび混合物は一般に約20,000グラム/モル乃至約300,000グラム/モル、さらに一般的には約40,000グラム/モル乃至約260,000グラム/モル、好ましくは約60,000グラム/モル乃至225,000グラム/モルの重量平均分子量を有している。これらの分子量は、25℃においてヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)の0.1g/dL溶液中で測定した場合に、約0.5デシリットル/グラム(dL/g)乃至約4.0dL/g、さらに一般的には約0.7dL/g乃至約3.5dL/g、最も好ましくは約1.0dL/g乃至約3.0dL/gの固有粘度を与える。さらに、上記の諸条件下においては、残留するモノマー含有率は約5重量%以下になる。
【0037】
本発明の吸収性ファスナー型医療装置のような物品は乾燥窒素雰囲気チャンバーを備えている種々の射出成形および押出成形の設備により、約100℃乃至約230℃、さらに好ましくは約140℃乃至約200℃の範囲の温度において、約1分間乃至約20分間、さらに好ましくは約2分間乃至約10分間の滞留時間で本発明のポリマーおよび混合物により成形される。好ましい装置は整形外科用のリベット・ファスナーである。この好ましい装置は拡張された状態(ピンを配置する時に足部が拡張される状態)に配向されている足部12を有するリベットを伴って成形する必要がある。拡張状態の足部を伴うリベットを成形することにより、各足部の拡張時にヘッド部4に対する各足部12の連結部分における応力を減少しやすくできる。さらに、この連結部分における応力を減少することにより、移植後のリベットおよびピンのファスナーの有効寿命が確実に延びる。
【0038】
本発明のリベットの別の実施形態において、上記ポリマーおよび混合物は薬物供給基質として使用できる。この基質を形成するために、上記ポリマーは治療剤と混合される。このような本発明のポリマーと共に使用できる種々の異なる治療剤が広範囲に存在している。一般に、本発明の薬剤組成物により供給できる治療剤は抗生物質および抗ウイルス剤のような感染防止剤、鎮痛薬および鎮痛剤混合物、抗炎症剤、ステロイドのようなホルモン、骨再生成長因子、および天然誘導した、または遺伝工学的に生成したタンパク質、多糖類、糖タンパク質、またはリポタンパク質等を含むがこれらに限らない。
【0039】
基質配合物が上記ポリマーに1種類以上の治療剤を混合することにより配合できる。この治療剤は液体、微細分割した固体、またはその他の任意の適当な物理的形態として存在し得る。一般的であるが随意的に、上記の基質は希釈剤、キャリヤ、賦形剤、安定化剤等のような1種類以上の添加物を含む。
【0040】
上記治療剤の量は使用する特定の薬物および治療する医療状態に応じて決まる。一般に、この薬物の量は上記基質の重量に基づいて約0.001%乃至約70%、さらに一般的には約0.001%乃至約50%、最も一般的には約0.001%乃至約20%である。また、上記の薬物供給基質に混合されるポリマーの量および種類は所望の放出プロファイルまたは放出様式および使用する薬物の量に応じて異なる。
【0041】
体液に接触すると、上記ポリマーは一定の持続時間または継続時間にわたり分散状の薬物の付随的な放出を伴って(主に加水分解により)徐々に崩壊する。このようにして、有効量(例えば、0.0001mg/kg/時乃至10mg/kg/時)の薬物の延長された(例えば、1時間乃至5000時間、好ましくは2時間乃至800時間にわたる)供給を行うことができる。この投薬形態は治療する対象、苦痛の程度、処方医の判断等により必要に応じて管理できる。
【0042】
上記およびこれに類似する処理方法に従って、当該技術分野における熟練者であれば、種々の配合物を調製できる。
【0043】
本発明のリベットの別の実施形態において、処理中に装置を構成するポリマーに生体許容性の色素を添加して当該装置を外科処理の場においてさらに見えやすくすることができる。あるいは、上記のピンおよびリベットをカラー・コード化することにより、ピンがリベット内に既に挿入されていることを外科医に知らせるための視覚的なフィードバック情報が提供可能にできる。このようなリベットおよびピンの組み合わせ体はさらに装置が既に挿入されていることを外科医に知らせるための触知可能および/または音響的なフィードバック情報を組み込むことができる。
【0044】
さらに、放射線不透過性のマーカーを上記のリベットまたはピンに添加して移植後の上記リベットおよびピンのファスナーの画像処理を可能にできる。
【0045】
以下の非制限的な各実施例は本発明の原理および実施方法の例示である。当該技術分野における熟練者において本発明の範囲および趣旨に含まれる多数の別の実施形態が明らかになる。
【0046】
実施例
以下の各実施例においてファスナー・システムを記載しており、このシステムは吸収性のポリマーまたはポリマー混合物により製造され、柔軟な足部を有する本体部分および当該本体部分の中に挿入されて足部を拡張するピンにより構成されている。
【0047】
合成処理において、本発明の装置の高分子量脂肪族ポリエステルを所望の分子量および粘度が得られるまで不活性窒素雰囲気中において2時間乃至24時間にわたり100℃乃至230℃の温度で開環重合によりラクトン・モノマーを反応させることを含む方法により作成する。
【0048】
本発明のポリマー混合物は合成した脂肪族のホモ−ポリエステルおよびコ−ポリエステルを慣用的な混合容器の中にそれぞれ投入することにより作成する。これらのホモポリマーおよびコポリマーは均一分散状のポリマー混合物が得られるまで5分乃至90分にわたり100℃乃至230℃の温度で混合する。
【0049】
以下の各実施例においては、上記の混合物が化学組成および純度(NMR,FT−IR)、熱分析(DSC)、溶融流動性(melt rheology)(溶融安定性および粘度)、分子量(固有粘度)、および基準線時機械特性(応力/歪)についてそれぞれ特徴づけられる。
【0050】
各混合物および各ポリマーの固有粘度(I.V.,dL/g)を0.1g/dLの濃度における溶媒としてのクロロホルムまたはHFIPを用いて25℃においてサーモスタット制御のウォーター・バス中で浸漬した50ボア・キャノン−ウッベローデ(Cannon-Ubbelhode)希釈粘度計により測定した。
【0051】
以下の数頁において幾つかの実施例を説明する。使用した部およびパーセントの各値は重量またはモル数として特定した場合の部またはパーセントの値である。
【0052】
実施例1
85:15(モル/モル)ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーの合成
以下において説明し、この実施例において採用した方法は本明細書に参考文献として含まれ、当該技術分野における熟練者において既知の米国特許第4,643,191号、同第4,653,497号、同第5,007,923号、同第5,047,048号において記載されている各方法と類似している。
【0053】
オーバーヘッド・メカニカル・スティアラー(機械攪拌器)および窒素供給口を備えている火炎乾燥処理した500mLのワン−ネック型丸底フラスコに268グラム(1.86モル)のL(−)ラクチド、38.4グラム(0.330モル)のグリコリド、0.53グラム(7×10-3モル)のグリコール酸開始剤、および131マイクロリットルのオクタン酸第一錫触媒の0.33モル溶液を加える。
【0054】
その後、上記の組立体を185℃の高温度オイル・バス中に入れる。攪拌された各モノマーは速やかに溶融し始める。この低粘度溶融物は速やかにその粘度を高める。この高粘度溶融物に対する機械攪拌処理を合計4時間の反応時間にわたり続ける。
【0055】
得られた85:15(モル/モル)ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーをバスから取り出して、窒素気流中に室温まで冷却してから単離して粉砕する。その後、このポリマーを110℃で24時間減圧下において乾燥して未反応のモノマーを除去する。溶媒としてHFIPを用いて測定した固有粘度は1.90dL/gである。
【0056】
実施例2
85:15・ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマーによるリベットおよびピンの射出成形
1.5キログラムの実施例1において形成したコポリマーを18mm直径のバレルを備えている28トンのエンゲル(Engel)射出成形機における窒素パージ処理したホッパーに加えて、図1に示すようなリベットおよびピンを形成する。ポリマーを上記バレルに入れる際にこのポリマーを溶融するために200℃,190℃および185℃の3種類の加熱領域を採用した。185℃のノズル温度、700psi(4.83×106 パスカル)の射出圧力、および2インチ(5.08センチメートル)/秒の速度を用いて溶融材料をバレルに供給する。各射出成形処理により単一空孔部の成形型において単一の部品を形成する。部品中の応力レベルを最適にするために45℃の温度を成形型において用いる。この処理により、1分間当たりに2個の部品が形成できる。
【0057】
実施例3
動物体モデルにおける使用または人体における使用の段階的方法
図6において、外科医がプレート60またはその他の装置を固定する必要のある骨の場所に穴61を開けた後に、リベット3およびピン5を供給装置62の受容器68の中に装填する。その後、リベット3をプレートの穴64の中に挿入して、ピン5を供給装置62のプランジャー66に一定の下方の力を加えることによりリベット3の中に押し入れる。外科医が形成する穴の寸法は骨の種類および(ピンを入れた状態の)リベットの断面直径に基づいて変更する必要がある。骨の中に形成される穴はピンを入れた状態のリベットの直径よりも小さくする必要がある。しかしながら、軟質(実質的に網状)の骨の場合には、この穴の直径をさらに小さくすることにより、この軟質の骨に対するリベットおよびピンのファスナーの摩擦係合を高めることができる。一方、比較的硬質(実質的に皮質性の骨)の骨の場合には、この穴の直径を(ピンを入れた状態の)リベットの直径に近づけてリベットおよびピンのファスナーを適用しやすくする必要がある。
【0058】
本発明の別の態様によれば、上記のリベットおよびピンは単一ユニットとして一体に形成できる。本発明のこのような態様における好ましい実施形態は外科医において取り扱いがさらに容易である比較的大きなファスナーになり、各構成部品が分離すること、またはパッケージ処理、輸送、取り扱いまたは設置の際に紛失することがなくなり、この単一部材片型のリベットは簡単な形態を採り、簡便且つ効果的な設置処理が実施可能になるので、さらに高効率で効果的な外科用途に適応できる。
【0059】
図3(B)は本発明の上記の態様に従う単一部材片型リベットの実施形態100の一例を示している図である。図示のように、この単一部材片型リベットはピン部分105および接続ウエブ110により剛体ユニットとして一体に接続されているリベット部分103を備えており、ウエブ110はピンの先端部の近傍におけるピンの外周に延在してリベット103のヘッド部104に接続している。リベット103は上記の各実施形態のいずれかにおけるリベットと実質的に同一の形状にすることができ、拡張したヘッド部104および吊り下げ状態の足部112を有している。さらに、図示の実施形態は周囲組織に対して係合するための固定保持用の隆起部144を各足部に備えている。ピン105は図示のように概ね円筒形の形態にすることができ、好ましくは、図1の実施形態における面取り部分26と同様のベベル状のまたは面取り処理した先頭エッジ部をその先端部(図において見えない、隔壁の下方)に有していて、ピン105をリベット103の中に押し入れる際に確実に滑らかな挿入が行える。ウエブ110はピン105およびリベット103と同一の材料により形成されている。例えば、ウエブ110は1ミル乃至10ミル(2.54×10-3cm乃至2.54×10-2cm)、好ましくは約2ミル乃至5ミル(5.08×10-3cm乃至1.27×10-2cm)の範囲の厚さを有していて、ピンと当該ピンを整合状態で保持するリベットのヘッド部との間において崩壊可能な接続部分を形成するが、ピンがリベットの本体部分の中に進入する際に剪断される。このような全体としてワン−ピース型の組立体は、例えば、リベット本体部分の中の中央開口部の形状に相当する下方部分において中央コア・ピンを有するゲート付きの成形型における射出成形により形成することができる。このコア・ピンは上面部を有しており、当該上面部に対応してウエブ110およびピン105の先頭エッジ部が形成される。
【0060】
図3(C)は本発明の上記の態様に従う単一部材片型(ワン−ピース型)リベットの別の実施形態を示している図であり、この場合のウエブ110は複数のブレース115により置き換えられている。各ブレースはベベル部126またはピンの先端部の中央部分から例えばリベットの表面から下方に凹ませることのできるリベット・ヘッド部104の一部分まで延在している。従って、各ブレース115はリベットとピンとの間において斜めにまたは中央に沿って延在している。好ましくは、各ブレースは、例えば、2個の直径方向に対向するブレース、またはピンの周縁部の周囲に等間隔で配置されている一式の3個または4個のブレースのように、対称的に配置されている。このような配置により、ピン105の本体部分がリベット103の本体部分に対して同軸状態または同心状態に維持でき、ピンに力を加えた時に、ピンが詰まることなく滑らかにリベット内の中央通路の中に導入できる。これらの小さな分離したブレースは容易に剪断されて、それらの内部的な配置により、リベットおよび傷開口部の中に確実に捕捉されるので、このリベット処理において生じる破片または散乱物を最少にできる。
【0061】
図3(B)および図3(C)に示すように、本発明のワン−ピース型リベット/ピンの物品はリベット本体部分またはピン単体の長さの実質的に2倍の長さを有しており、図3(A)のつなぎ留め式の実施形態とは異なって、両方の部材が固定されている幾何学的に単純な形状を有している。このような形状により、取り扱い性が向上して、外科医がリベットの取り出し、保持、および操作をさらに簡単に行えるようになると共に、機械的な取り扱い性を高めることができる。例えば、この全体的な形状は、各リベットをまとめて受容するか、あるいは、位置合わせしたカートリッジ、マガジンまたはストリップ・ホルダーの中に予備装填したリベットを受容して、単一動作でこのリベットを挿入して拡張するように適宜構成されている設置器具により設置されるのに好適である。従って、図3(B)および図3(C)のリベットは外科用メスまたはクリップのような物品に対してこれまで長い間利用されてきた用法を容易化することができる。
【0062】
図7は図3(C)のワン−ピース型リベットを形成するためのゲート付き成形型組立体200を示している図である。図示のように、この成形型組立体は概ね上方の成形型部分200aおよび下方の成形型部分200bを備えており、可動のコア・ピン200cが下方部分200bの中に配置されている。上方部分200aは成形型空孔部105’においてピン105を形成し、生体許容性のポリマー用のゲート付きの入口106を有している。同様に、下方部分200bはリベット本体部分におけるリベット・ヘッド部および足部にそれぞれ対応している概ね二重漏斗型形状の成形型空孔部103’において拡張可能なリベット本体部分103を形成する。第2のポリマー供給口のゲート206が下方の空孔部に連通している。さらに、供給原料および成形する部品形状に適宜応じて別のゲートおよびスプルーまたはランナーを備えることができる。
【0063】
図7は成形型を断面で示している図であり、空孔部103’および空孔部105’がそれぞれ実質的に半径方向に対称形であることが理解されると考える。コア・ピン200cは成形型の下方部分200bの中において上方に延出して、リベット本体部分における中央開口部を形成するので、ポリマーは当該コア・ピン200cの周囲において空孔部103’を構成している2個の概ねオープン・コア状でテーパー状の円錐形の空間部分を充たす。さらに、上方本体部分の中の複数の通路215aおよびコア・ピンの中の複数の通路215bが互いに整合して比較的小さな空孔通路を形成しており、これらの通路がポリマーにより充たされて上記ピンとリベット本体部分とを内部接続するブレース(図3(C))を成形する。好ましくは、コア・ピン200cは一式の半径方向に突出しているフィンにより形成されており、これらのフィンは周囲の下方の成形型空孔部をセグメントに分けてその下方部分において上記リベットの足部である複数の横方向に突出しているローブを形成しており、上記の上方部分がリベットのヘッド部の形状に対応している。下方部分におけるヘッド部の領域内の分離している材料用ゲート206は接合領域において適当なポリマー圧力および流量を利用することによりリベットにおいて精細なブレース115が確実に形成できるようにする。
【0064】
リベットが形成されると、コア・ピンは各ブレース115を破断させることなく後退できる。好ましくは、成形型200はツー−ピース型(二部材片型)の成形型として形成されており、この成形型は図7における面に対して平行に対称的に配置される直径方向の平面に沿って前方部分および後方部分が分離する。それゆえ、通路215a,215bは2個の成形型半体部分の分割線上に存在しており、コア・ピン200cが後退した後に、成形型の前方部分および後方部分を分離して成形したリベット・ユニットが取り出される。分離部分において成形型の中にゲートを介して供給されるポリマーにより形成される比較的大きな2個の本体部分の間における溶着線上に各ブレース115を形成することにより、これらのブレース部分は容易に剪断されるブレースとして形成される。なお、ブレース通路215a,215bの完全な流通性を確実にするためにスプルーを備えることができる。さらに、完全な充填を確実にするために圧力および材料に適宜応じて成形型の中の任意の場所にスプルーまたはランナーを備えることも可能である。
【0065】
ワン−ピース型の物品を形成する様式は比較的少ない数の成形型の構成部品を必要とし、図3(C)の特定の実施形態は崩壊して消失する結合部分またはブレースが傷の部分の中に確実に捕捉されるようにできる。このような単一部材片の構成により、分解、組立間違い、または構成部品の紛失を生じることなく、単純なバブル・パック式の構成において各リベットを効果的にパッケージ化できる。
【0066】
以上において、本発明を開示し説明したが、当該技術分野における熟練者においてはさらに別の変形および変更を考えることが可能であり、これらの全ての変形および変更は本明細書において説明し、且つ、本明細書において記載する特許請求の範囲およびその実施態様により定められる本発明の範囲に含まれると考えるべきである。
【0067】
本発明の実施態様は以下の通りである。
(A) 外科用のリベットおよびピンのファスナー装置において、
基端部において拡大されたヘッド部および当該ヘッド部から吊り下げられている状態の複数の拡張可能な足部を有してリベット軸に沿って延在している細長い本体部分を有していて、生体吸収性で生体許容性の材料により形成されているリベットを備えており、前記足部が概ね円周全体に配列されてリベット軸に沿って先端側に延在している中央開口部を形成しており、さらに、
ピンを備えており、当該ピンおよび前記足部がピンの前記中央開口部の中における移動により足部が拡張して前記リベットを固定するように寸法付けられており、さらに、
前記リベットおよび前記ピンを接続している一体の支持体を備えており、当該支持体が複数の支持部材からなり、当該支持体が前記ピンを前記リベット軸に沿って当該リベットの外側において少なくとも部分的に位置決めして取り扱い性および設置性のための細長いワン−ピース型の組立体を形成し、さらに、前記支持体が前記ピンに対して軸方向に向いている力を加えた時に崩壊するように構成されていて、これにより、前記ピンが前記中央開口部の中を進行して前記リベットを固定し、
前記リベット、前記ピン、及び、前記支持体は、体内組織の中に移植された場合に計時的に吸収される生体吸収性で生体許容性の同一の材料により形成されている、外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(1)前記一体の支持体が前記材料により形成されているウエブ、複数のスポークまたは複数の傾斜した支持ブレースとして形成されている請求項1に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(2)前記装置が成形された装置であり、当該装置が、前記一体の支持体がゲートを備えている成形型部分を横切る溶着線に沿って広がることにより前記リベットと前記ピンとの間に脆い剪断性の接続部分を形成するように構成されている請求項1、請求項2および実施態様(1)のうちいずれか1項に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(3)前記リベットが可視性を有する色素材料、および感染防止剤、抗炎症剤、タンパク質、多糖類、鎮痛薬、ホルモン、骨再生成長因子、糖タンパク質、リポタンパク質またはこれらの組み合わせ物を含む治療的に有効量の治療剤から成る群から選択される少なくとも1種類の材料を含有している請求項1、請求項2、実施態様(1)および実施態様(2)のうちいずれか1項に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(4)前記装置が生体許容性の脂肪族ポリエステルにより作成されている請求項1、請求項2、実施態様(1)乃至実施態様(3)のうちいずれか1項に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(5)前記脂肪族ポリエステルが1種類以上のモノマー、コポリマーまたはこれらの混合物により形成されており、当該モノマーが乳酸、ラクチド(L体、D体、メソ体、およびD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート、1,3−ジオキサン−2−オン、p−ジオキサノン、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、イプシロン−デカラクトン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、アルファ,アルファ−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、ガンマ−ブチロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される実施態様(4)に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
(6)前記ピンおよびリベットが係合して当該ピンをリベット内に係止するための係合用の外周ノッチ部または外周リブを伴って形成されている請求項1および請求項2、および実施態様(1)乃至実施態様(5)のうちいずれか1項に記載の生体吸収性で生体許容性のリベットおよびピンのファスナー装置。
(7)前記リベットが穴の中おける固定保持性を高めるためのリブ付きの表面部を有している請求項1および請求項2、および実施態様(1)乃至実施態様(6)のうちいずれか1項に記載の生体吸収性で生体許容性のリベットおよびピンのファスナー装置。
【0068】
[発明の効果]
従って、本発明によれば、容易に設置できる生物学的に吸収可能なリベット組立体が提供できる。さらに、再装填処理の前に多数個のリベットの配置が可能な設置器具内に装填できる生物学的に吸収可能なリベット組立体が提供できる。さらに、向上した取り扱い性および輸送における保全性を有する生物学的に吸収可能なリベット組立体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による生体許容性で生体吸収性のリベットおよびピンの実施形態の一例の斜視図である。
【図2】ヘッド部における中央通路の中にピンを挿入した状態のリベットの斜視図である。
【図3】(A)は、ワンピース型(一部材片型)ユニットとしての本発明による別の実施形態の斜視図であり、係止機構が示されている。(B)は、ワンピース型ユニットとしての本発明による別の実施形態の斜視図であり、崩壊可能なウエブがピン部分およびリベット部分を内部接続している。(C)は、ワンピース型ユニットとして本発明によるさらに別の実施形態の斜視図であり、複数のブレースがピン部分およびリベット部分を内部接続している。
【図4】本発明のさらに別の実施形態の斜視図であり、配備時にリベットを周囲の組織に対して確実に係合するためにリベットの各足部にリブが備えられている。
【図5】図1、図2および図4の各実施形態におけるピンの別の実施形態の斜視図である。
【図6】リベットおよびピンのファスナーに対応する供給装置の斜視図である。
【図7】図3(C)のリベットを成形するための成形型の概略的な断面図である。
【符号の説明】
【0070】
2 リベットおよびピンのファスナー
3 リベット
4 ヘッド部
5 ピン
10 ヘッド部の中心軸
12 足部
14 内部通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用のリベットおよびピンのファスナー装置において、
基端部において拡大されたヘッド部および当該ヘッド部から吊り下げられている状態の複数の拡張可能な足部を有してリベット軸に沿って延在している細長い本体部分を有していて、生体吸収性で生体許容性の材料により形成されているリベットを備えており、前記足部が概ね円周全体に配列されてリベット軸に沿って先端側に延在している中央開口部を形成しており、さらに、
ピンを備えており、当該ピンおよび前記足部がピンの前記中央開口部の中における移動により足部が拡張して前記リベットを固定するように寸法付けられており、さらに、
前記リベットおよび前記ピンを接続している一体の支持体を備えており、当該支持体が複数の支持部材からなり、当該支持体が前記ピンを前記リベット軸に沿って当該リベットの外側において少なくとも部分的に位置決めして取り扱い性および設置性のための細長いワン−ピース型の組立体を形成し、さらに、前記支持体が前記ピンに対して軸方向に向いている力を加えた時に崩壊するように構成されていて、これにより、前記ピンが前記中央開口部の中を進行して前記リベットを固定し、
前記リベット、前記ピン、及び、前記支持体は、体内組織の中に移植された場合に計時的に吸収される生体吸収性で生体許容性の同一の材料により形成されている、外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項2】
前記ファスナー装置が成形された装置であり、当該装置が、前記一体の支持体がゲートを備えている成形型部分を横切る溶着線に沿って広がることにより前記リベットと前記ピンとの間に脆い剪断性の接続部分を形成するように構成されている請求項1に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項3】
前記リベットが可視性を有する色素材料、および感染防止剤、抗炎症剤、タンパク質、多糖類、鎮痛薬、ホルモン、骨再生成長因子、糖タンパク質、リポタンパク質またはこれらの組み合わせ物を含む治療的に有効量の治療剤から成る群から選択される少なくとも1種類の材料を含有している請求項1または2に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項4】
前記ファスナー装置が生体許容性の脂肪族ポリエステルにより作成されている請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステルが1種類以上のモノマー、コポリマーまたはこれらの混合物により形成されており、当該モノマーが乳酸、ラクチド(L体、D体、メソ体、およびD,L混合物を含む)、グリコール酸、グリコリド、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレン・カーボネート、1,3−ジオキサン−2−オン、p−ジオキサノン、デルタ−バレロラクトン、ベータ−ブチロラクトン、イプシロン−デカラクトン、2,5−ジケトモルホリン、ピバロラクトン、アルファ,アルファ−ジエチルプロピオラクトン、エチレン・カーボネート、エチレン・オキサレート、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、ガンマ−ブチロラクトン、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−ジオキセパン−2−オン、6,8−ジオキサビシクロオクタン−7−オン、およびこれらの組み合わせ物から成る群から選択される請求項4に記載の外科用のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項6】
前記ピンおよびリベットが係合して当該ピンをリベット内に係止するための係合用の外周ノッチ部または外周リブを伴って形成されている請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の生体吸収性で生体許容性のリベットおよびピンのファスナー装置。
【請求項7】
前記リベットが穴の中おける固定保持性を高めるためのリブ付きの表面部を有している請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の生体吸収性で生体許容性のリベットおよびピンのファスナー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−183318(P2012−183318A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90788(P2012−90788)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2001−292098(P2001−292098)の分割
【原出願日】平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願人】(591183957)コドマン・アンド・シャートレフ・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CODMAN & SHURTLEFF,INCORPORATED
【Fターム(参考)】