外科器具
患者別の外科器具、特に切断ガイド、ならびに使用法および製造法を説明する。外科器具100は、患者の関節に対して行われるべき整形外科的関節形成処置で使用されてよく、その関節の軟組織平衡化を可能にすることができる。器具は、取り付け領域106、108、110を有する本体104を含み、これらの取り付け領域は、患者の関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で骨102に取り付けられるように構成されている。器具は、少なくとも、第1の切断ガイド112、114と、骨に対する切断ガイドの位置を変えるように操作可能である調節機構116、118と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、外科器具に関し、特に、軟組織平衡化(soft tissue balancing)を可能にするために整形外科的関節形成処置で使用されうる切断ガイドに関する。
【0002】
整形外科的関節形成処置は、関節の1つまたは複数の関節接合表面を置換するのに用いられる1つまたは複数のインプラントの使用をしばしば伴う。大抵、そのようなインプラントは、患者の骨の、切除されるかまたは別様に準備された部分に取り付けられる。切断ガイドが患者の骨に取り付けられて、その骨の表面が切除されインプラントを受容することができる。関節が正確に再建されるのを確実にしようとするために、様々なアプローチが、処置中に使用される切断ガイド、インプラントおよび他の器具の計画、誘導および設置に利用可能である。しかしながら、膝関節など、いくつかの関節については、関節が正確に再建されるのを確実にしようとするために、靭帯など、関節の軟組織構造を考慮に入れることも必要である。
【0003】
軟組織構造を考慮に入れようとするために、コンピューター支援手術(CAS)システムを用いて、切断ガイド、インプラントなどの位置を計画およびナビゲート(navigate)することができる。骨に作られるべき切り口を調節してインプラントの最終位置を変えるために、切断ガイドの計画位置は、軟組織の測定値に基づいて手術中に更新されることができる。しかしながら、CASシステムは、高額であり、広く利用可能であるわけではない。さらに、一部の外科医は、CASシステムを使用するのを好まず、自身のワークフローおよび技術を用いることを好む。
【0004】
切断ガイドを位置付けるための非ナビゲートアプローチは、患者の骨の取り込み画像からのデータを用いて患者別の切断ガイド(patient specific cutting guide)を作り出すこと(「テンプレート化(templating)」と呼ばれることもある)によって達成されることができ、その切断ガイドは、予め定めた位置で患者の骨に取り付けられ、それにより、計画位置で切り口の位置を固定することができる。しかしながら、このアプローチは、患者の骨に対する切り口の位置が手術前に固定されるので、軟組織を考慮に入れるのには適していない。関節の軟組織構造を考慮に入れるため、または他の理由で必要とされうる実際の切り口は、手術中に明らかになるに過ぎない場合があるので、切断ガイドにより定められた切り口は、最適でない。
【0005】
本発明は、複雑な計画またはナビゲーションシステムを必要とせずに、手術中に利用可能な軟組織情報または他の情報が、適切な切り口を作るために用いられることを可能にする機構を提供する。
【0006】
本発明の第1の態様によると、患者の関節に対する整形外科処置で使用される装置または器具を提供する。この装置は、関節の軟組織平衡化を可能にすることができる。装置は、本体と、少なくとも1つの取り付け領域であって、その取り付け領域またはそれぞれの取り付け領域は、患者の関節の骨に対する特定の好一対(specific match)になり、独自の位置でその骨に取り付けられるように構成されている、取り付け領域と、少なくとも第1の切断ガイドと、切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、を含む。
【0007】
したがって、患者別の取り付け領域は、装置を自動的にナビゲートし、装置が予め決められた位置で骨に取り付けられる。しかしながら、骨に作られるべき切り口は、少なくともいくらかの軟組織平衡化をもたらすのに役立つように、その後で調節されてよい。したがって、複雑なナビゲーションシステムは必要なく、関節の軟組織を補うように骨切り口を合わせる能力がもたらされる。
【0008】
調節機構は、器具が取り付け領域により骨に取り付けられている間、骨に対する切断ガイドの位置を変えるように操作可能であってよい。
【0009】
調節機構は、取り付け領域によって骨に器具を取り付ける前に、骨に対する切断ガイドの位置を変えるように操作可能であってよい。
【0010】
調節機構は、切断ガイドを並進させることができる。調節機構は、その切断ガイドもしくは各切断ガイド、または切断ガイドのうちのいくつかを、前後方向および/または内側‐外側方向および/または上‐下方向に並進させることができる。
【0011】
調節機構は、切断ガイドを回転させることができる。調節機構は、その切断ガイドもしくは各切断ガイド、または切断ガイドのうちのいくつかを、前後方向および/または内側‐外側方向および/または上‐下方向付近で回転させることができる。
【0012】
調節機構は、その切断ガイドまたは各切断ガイドの並進および/または回転を可能にすることができる。
【0013】
器具は、前記の、または後述するタイプの、複数の調節機構を含むことができる。
【0014】
調節機構は、しわゾーン(crumple zone)を含みうる。調節機構は、器具の形態、形状または構成を変形させるように加工された器具の一部を含んでよい。
【0015】
調節機構は、取り付けピンもしくはネジなどの付属物(fixing)を受容する複数の穴を含むことができる。この複数の穴は、本体の中に設けられてよい。複数群の複数の穴が設けられうる。
【0016】
器具は、少なくとも1つ以上の分離部分を含みうる。器具は、器具の1つ以上の部分、特に骨に接触する部分を、特定の方法で器具から分離させるように加工されることができる。
【0017】
調節機構は、少なくとも1つの、または複数の調節ネジを含みうる。本体は、その調節ネジまたは各調節ネジにより、複数の取り付け領域に据え付けられることができる。
【0018】
調節機構は、複数のスペーサを含むことができる。スペーサは、取り付け領域に取り外し可能に取り付け可能であってよい。
【0019】
調節機構は、少なくとも1つの、または複数のネジを含んでよく、このネジはそれぞれ、複数の取り付け領域のうちの1つまたは大多数を支持する脚部を有する。
【0020】
器具は、異なる複数の切断ガイドを含みうる。この異なる複数の切断ガイドは、本体により支持されうる。
【0021】
この切断ガイドまたは各切断ガイドは、使用中、切断装置またはその一部を受容するように構成されてよい。切断装置またはその一部は、鋸刃またはフライス削り装置であってよい。
【0022】
この切断ガイドまたは各切断ガイドは、切断ガイドにより誘導された骨に脛骨切り口または大腿骨切り口を作るように、構成され、かつ/または位置付けられ、かつ/または、設置され、かつ/または角度を付けられることができる。
【0023】
器具は、大腿骨または脛骨の近位端部または遠位端部に取り付け可能となるように適合または構成されることができる。
【0024】
器具は、少なくとも1つの分離部分を含んでよく、この分離部分は、切断ガイドの位置を変えるために切断ガイドおよび/または器具が骨に対して動かされうるように取り外されることができる。
【0025】
調節機構は、骨に対してこの切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能であってよい。
【0026】
調節機構は、本体の凹部と、凹部に受容されるべき少なくとも1つのインサートであって、切断ガイドを画定する構成物を有する、インサートと、を含みうる。この構成物はスロットであってよい。複数のインサートが提供されうる。各インサートのスロットは、インサートにおいて異なる位置および/または角度を有することができる。
【0027】
調節機構は、カム表面と、カム従動子と、を含んでよく、これらは、本体と、器具の少なくとも1つの取り付け領域とを分離するように相互作用する。カム表面は、傾斜表面であってよい。カム従動子は、傾斜表面であってよい。カム表面およびカム従動子は、概ね楔形の部材であってよい。カム表面およびカム従動子のうちの一方は、固定されていてよく、もう一方は、駆動機構により可動であってよい。
【0028】
調節機構は、切断ガイドの角度を調節するように操作可能なピボット機構を含むことができる。
【0029】
調節機構は、同じ切り口を作ることを意図した複数の切断ガイドと、切断ガイドすべての使用を妨げる1つまたは複数のバリア部材と、を含むことができる。バリア部材は、切断ガイドのうちのただ1つのみが使用されることを可能にすることができる。
【0030】
調節機構は、複数のスペーサを含むことができる。スペーサは、本体および/または取り付け表面を支持する構成要素に対して、取り外し可能に取り付け可能、例えば押しばめにより取り付け可能(push fit attachable)、であってよい。
【0031】
調節機構は、その機構の材料をつぶす、複数の孔を有するしわゾーンを含むことができる。調節機構は、支柱もしくは楔形部(wedge)など、1つまたは複数の取り外し可能支持部材を含んでよく、この支持部材は、つぶれを防ぐように複数の孔のうちの少なくともいくつかに挿入可能であり、また、つぶれを可能にするように取り外し可能である。
【0032】
調節機構は、留め具を受容する複数の孔を含んでよい。この複数の孔は、複数群の複数の孔を含むことができる。各群の複数の孔は、異なる方向および/または角度における調節を可能にする、複数小群の複数の孔(plurality of sub-groups of a plurality of apertures)を含むことができる。
【0033】
単一の取り付け領域を設けることができる。この取り付け領域は、器具のかなりの部分の上に延びて、骨への器具の独特な取り付けを可能にすることができる。この単一の取り付け領域は、骨における、異なる、かつ/または別個の複数の構造的特徴部もしくは領域に取り付けられるように構成されてよい。
【0034】
器具は、複数の取り付け領域を有しうる。別個の十分な取り付け領域が設けられて、骨に器具を独自に取り付けることができる。複数の取り付け領域は、骨表面の少なくとも5つの異なる位置で、骨に係合することができる。好ましくは、少なくとも3つの異なる取り付け領域が設けられ、さらに好ましくは、少なくとも4つの異なる取り付け領域、最も好ましくは5つ、または少なくとも5つの異なる取り付け領域が設けられる。少なくとも7つ、または7つの取り付け領域が使用されてもよい。取り付け領域のうちの少なくとも1つは、骨の側面に接触することができ、取り付け領域のうちの少なくとも1つは、骨の端部に接触することができる。
【0035】
本発明のさらなる態様によると、患者の関節に対して整形外科処置を実行し、関節に軟組織平衡化をもたらすための方法を提供する。この方法は、複数の取り付け領域を含む本体を有する装置を提供することであって、複数の取り付け領域は、患者の関節の骨に対する特定の好一対となり、独自の位置でその骨に取り付けられるように構成されている、装置を提供することと、複数の取り付け領域を骨表面と係合させることにより骨に装置を取り付けることと、装置の切断ガイド位置を変えるように器具の調節機構を操作することと、を含むことができる。
【0036】
切断ガイドの位置は、取り付け領域により本体が骨に取り付けられている間に変えられてよい。
【0037】
本発明のさらなる態様によると、装置を製造する方法が提供され、この方法は、患者の関節の骨の形状を特定するデータを患者から取り込むことと、取り込んだデータを使用して、本発明の第1の態様による装置の少なくとも取り付け領域を製造することと、を含む。好ましくは、データは、画像化技術、例えばCTスキャン、を使用して取り込まれる。
【0038】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を、ほんの一例として、これから説明する。
【0039】
異なる図面における同様のアイテムは、別段指摘しない限り、共通の参照符号を共有している。
【0040】
図1は、近位脛骨もしくは遠位大腿骨102上に据え付けられた、本発明による外科器具100の第1の実施形態を貫通した概略的断面図を示す。図1では、断面は、冠状面において示されている。器具100は、主要本体部分104と、いくつかの取り付け領域106、108、110と、を有しており、これらの取り付け領域により、器具は、脛骨の近位部分または遠位大腿骨102に係合する。整列したスロット112、114が、本体104により支持されており、骨102を切除するために使用中の鋸刃を受容する第1の切断ガイドを提供する。インプラントのために骨を準備する際に必要に応じて、大腿骨もしくは脛骨に他の切り口を作るための他のスロットも本体に設けられるが、明瞭化のため図1には示されていない。器具100はまた、第1群の4つの穴116と、第2群の4つの穴118と、を含み、これらの穴は、使用中に、図1に示されるような骨ピン120、122を受容することができる。
【0041】
例えばCTスキャンを実行することによって、患者の脛骨の近位部分または遠位大腿骨の幾何学的外形を定めるデータが手術前に収集される。そのデータは、次に、例えば高速基本形作成技術を用いた、器具100の製造に使用され、器具の取り付け領域が、独自の方法で、脛骨の近位部分または大腿骨の遠位部分の表面に適合するように構成される。
【0042】
したがって、例えば、器具は、ただ1つの独自位置で患者の脛骨に取り付けられることができる。ゆえに、使用中、器具は、患者の脛骨上の適切な位置に自動的にナビゲートされる。これは、器具が患者の脛骨に確実に取り付けられうる位置が他にないためである。いったん取り付けられると、スロット112および114は、平面を定める切断ガイドを提供し、この平面に沿って、脛骨は、鋸などの適切な切断器具もしくは装置を使用して切除されることができる。本発明は、患者の膝関節の軟組織平衡化をもたらすために、その平面が必要に応じて調節されることを可能にする。
【0043】
実施形態のそれぞれにおいて、骨表面と、患者の骨に接触していない器具の部分との間の間隙を設計して、骨表面からの隙間を十分にもたらし、+/−3mmの前後または近位‐遠位の移動、ならびに+/−3°の内反‐外反および屈曲‐伸張および内側‐外側の回転を可能にする。器具形状のこの設計は、1mmと1°またはその区分(divisions)刻みで、許容可能範囲の角度および位置のグリッド検索を使用することにより達成されうる。この例では、3124個のグリッド点に相当する5*5*5*5*5を与える。各グリッド点について、潜在的な内側の器具表面に対する骨のCTスキャン操作の構造上の立体幾何学が行われる。これにより、あらゆる所望のオフセットについて、いかなる骨もはっきりさせる(clear)であろう器具の内側表面が設計および製造されうる。独自の取り付け領域は、次に、それらの取り付け領域がゼロオフセットの0,0,0,0,0位置のためにくるべき場所に置かれる。
【0044】
図1に示されるように、器具100は、複数群の穴1116および118を含む調節機構を含み、この調節機構により、スロット112および114により定められる切断ガイドの位置が調節されうる。器具がまず脛骨に取り付けられると、ピン120、122が穴116、118を通って脛骨内へ導入されることができる。軟組織平衡化を改善するために切り口の位置を並進させることが必要であると決定された場合、器具は、大腿骨から取り外されて、その後、複数群の穴116、118のうちの別の穴において係合されたピン120、122で再び取り付けられてよい。このようにするために、器具の1つまたは複数の部分を分離することが必要となりうる。器具は、例えば破断線または類似のものを導入することによって、容易に破断されるように加工された部分を含んでよい。
【0045】
ピンの使用により、前後および/または近位‐遠位方向において切り口のすべてを再び位置付けることができる。複数組の穴116、118は、予め選択された分離部、例えば最大3mmの転置をもたらす1mmの間隔を備えている。
【0046】
取り付けピンは、まず、ゼロオフセット位置で器具と共に骨に挿入される。調節が必要な場合、器具は骨から取り外され、位置および角度の必要な偏向を与える穴を通って延びるピンで置き直される。これらの穴はいずれも、以下に述べるように取り付け領域の任意の変化を伴うものである。最初の適切なピン穴の識別を容易にするために、調節にのみ必要とされるピン穴が最初にシールされてよい。
【0047】
例えば、切り口の前後位置における変動に適応するために、外科医は、器具の位置が並進されうるように、骨上の取り付け領域を破断する。例えば、テンプレートがより前方に動かされるべき場合は、後方側の接触点が破断され、内側への移動を可能にする整列穴が使用されてよい。取り付け領域は、大腿骨の軸の周りでの回転を可能にするように、または、取り付け領域が特定の角度で進められて(tracked)近位‐遠位方向の移動を可能にすることができるように、選択される。
【0048】
この解決法は、鋸切断(sawing)からの力の大部分が、挿入された整列ピン120、122を通じて鋸から骨に伝達されるので、特に有用である。
【0049】
したがって、図1に示す実施形態により、インプラント位置および向きの、硬組織に基づいた事前設計において、屈曲および伸張時に平衡が保たれていない関節は、解放されるべき靭帯組織の量を減らしうるインプラントを再び位置付けることにより平衡を保たれることができる。
【0050】
器具100は、生体適合性のナイロン材料など、あらゆる適切な材料から作製されてよい。
【0051】
固定ピンおよびネジが、骨上の、患者特有の取り付け接触領域を通って延びることができ、これにより、骨と接触していない器具の領域を通ってピンが延びた場合に生じる応力と比較して、応力が減少する。
【0052】
図2A〜図2Eは、大腿骨102の遠位端部と共に使用されている、本発明の第1の実施形態に対応する器具100’のさらなる改造型の斜視図を示す。器具100’は、4つのスロット123、124、125、126を含む主要本体104’を有し、これらのスロットは、大腿骨102の端部切り口、前方切り口、および後方の顆の切り口をそれぞれ作るための切断ガイドを提供する。器具100’は、7つの部材、例えば127を有し、これらの部材はそれぞれが自由端を有しており、複数の取り付け領域を定める。これらの部材は、例えば、部材を分離することによって、または、押しばめ、圧力ばめもしくは同様のメカニズムを用いて取り付けられることによって、本体に取り外し可能に取り付けられる。第1のアーム128が本体の第1の側面から延び、第2のアーム129が本体の第2の側面から延びている。各アーム128、129の自由端の、内側を向いた表面の一部が、さらなる取り付け領域を定めている。各アーム128、129は、薄い部分を含むことによって、本体に隣接して分離するように加工されている。
【0053】
角錐型またはテーパー状に成形された一対の部材810、812が、本体の、骨に向いた内側表面から延びている。各部材は、実質的に平坦な面を骨表面に与えており、器具の本体に向かってテーパー状になっている。この器具の本体には、それらの部材が、器具表面の浅い溝もしくは凹部814において取り付けられる。部材810、812は、切断ブロック100’が前方方向に並進された場合に適切な遠位切除を維持するのに役立つ。切断ブロックは、角錐部材の端面が遠位大腿骨と接触する位置からの遠位切除の量を定めるであろう。大腿骨の端部は本質的に球形であり、また点接触が用いられたため、ブロックが前方方向に並進された場合に、遠位切除レベルが変わるであろう。平坦な面の端面が、各顆の最遠位部分を持ち上げ、最遠位部分に係合するように構成および位置付けされた状態で、大腿骨の端部と器具本体との間の間隙にそれらの部材を有することによって、切断ブロックがその他のアタッチメントを折り取る(snapping off)ことで前方方向に並進された場合に、切断ブロックは、依然として大腿骨の再遠位部分を持ち上げ、同じ遠位切り口を保持する。換言すると、前後の切り口のみが調節されて、屈曲間隙の平衡を保つ。部材810、812の端部表面(ends surfaces)を大腿骨の表面形状に適合させることは有効に作用しない。というのは、切断ブロックが前方に動かされた際に、部材の端面および顆表面がぶつかるためである。部材810、812は、切断ブロックの、骨に向いた内側表面から盛り上がっており、遠位切除部は、部材810、812を折り取ることにより、必要な場合に調節されうる。
【0054】
不図示の別の実施形態では、各部材810、812は、同じ概ね三角形状の、離間した複数の平行リブの形で設けられており、リブの自由端は協働して、顆に係合するための、概ね平坦な端面を定める。
【0055】
使用中、器具100’は、図2Aに示されるように、骨102の自由端に提供され、その後、図2Bに示されるように、骨の上に据えられ、取り付け表面が患者の骨上の独自の位置を定め、その位置で、器具102’が取り付けられうる。骨ピン120、122はその後、骨に器具を固定して器具の初期位置を決定するように、2群のピン穴116、118のうちの1つを通って導入される。器具は、次に、図2Cに示されるように骨から取り外されてよく、その後、図2Dに示されるように、取り付け表面を有する骨係合部材127が本体から外されることができ、サイドアーム128、129が、本体から引き離されてよい。器具100’は、その後、図2Eに示されるように、本体に再び取り付けられてよいが、切断ガイド123、124、125、126は、器具100’の最初の位置付けと比べて切り口の位置を変えるように、骨ピン120、122を、2群のピン穴116、118のうちの異なる穴と係合させることによって、初期位置に対して異なる位置にくる。
【0056】
図3は、大腿骨102の遠位端部と共に、使用されている本発明の第1の実施形態に対応する器具100”のさらなる改造型の斜視図を示している。器具100”は、第1のスロット112”および第2のスロット114”を支持する主要本体104”を有し、これらのスロットは、前方および後方の切り口を作るための切断ガイドを提供する。一対の脚部材、例えば脚部402、404が、本体104”の前方側面および後方側面から延びる(しかし、第2対の脚部406のうちの1つしか図3では見ることができない)。各脚部の自由端に向かって、取り付け領域が、材料パッド(pad of material)408、410、412の、内側に向いた表面によって設けられている。第3の切断ガイド412が、3つの対414、416、418の離間したプレートにより定められたスロットであって、それらのプレートにわたって延びる、スロットによって設けられており、プレート間の間隔がそのスロットを定めている。これらの対のプレートは、脚部402、404に取り付けられ、脚部402、404により、かつ脚部402、404間で支持されている。第1群の9つの孔116”、および第2群の9つの孔118”が、使用中に骨ピン120、122を受容するために、本体に設けられている。第3群の3つの孔420、および第4群の3つの孔422が、脚部の足部分において、脚部の自由端に向けて設けられている。対応する位置合わせ孔も、足部の後ろに位置する材料パッド408、410に設けられており、このため、骨ピンは、孔およびパッドを通過して骨102”の中に入ることができる。前記のように、骨取り付け領域と同じ位置に取り付け機構を設けることは、切断ガイドとして器具を使用する間の応力を減少させるのに役立つ。
【0057】
器具100”の使用は前記のものと類似しており、脚部は、器具の最初の取り付けと再取り付けとの間で、破断されるか、主要本体104から外されるかまたは別様に取り外されて、後方‐前方または内側/外側回転を可能にする。他の実施形態では、脚部は除去されず、接触パッド408、410、412は、ブロックを調節するように変形可能または取り外し可能である。別の実施形態では、脚部のうちの1つ以上が、切断ブロックの位置を調節するために骨から離れて曲げられることができる。第1群の穴116”の第1小群、および第2群の穴118”の第1小群により、前後方向に器具の位置を調節することができる。第1群の穴116”の第2小群、および第2群の穴118”の第2小群により、大腿骨の内側‐外側回転を調節することができる。このタイプの回転が必要な場合、新しいピンを中央の回転穴に置き、適切な回転ピン穴を用いて切断ガイドの位置を変える。穴の最上列は、様々な前後位置に対して、負の回転角度を与え、穴の中間列は、純然たる(pure)前後の転置をもたらし、穴の最下列は、正の回転角度と共に前後の転置をもたらす。穴のうちのいくつかは、双方向における器具の位置の調節を可能にする。したがって、いずれかの方向または双方向における器具位置の調節が可能である。穴が斜めにオフセットすることにより、穴を重ねることなく、6mmのピンで6mm未満の調節(例えば、典型的には2mmの調節)をすることができる。複数対の穴は、スロットに概ね平行に位置付けられる。すなわち、第1群116”の1つの穴と第2群118”の、対応する穴との間の線が、スロット114”に平行である。ブロックを置き直すことにより、前後位置だけでなく、回転を調節することができるように、より複雑な穴のパターンが、円弧上に位置付けられた穴と共に用いられうるので、ピンは、中間列の穴、およびもう一方の側の最上列または最下列の穴を通って延びる。
【0058】
第3群の穴420、および第4群の穴422により、近位‐遠位方向における器具位置、および遠位切り口の内反‐外反角度を調節することができる。第3および第4群の穴は、概ね三角形のパターンに配列され、これらの穴は、近位‐遠位方向で互いにより密接して設置されることができ、あるサイズ、例えば直径3mmの骨ピンが、穴を左右に転置させることによって、より小さな、例えば2mm刻みの調節をもたらすことができる。
【0059】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す第2の器具130を貫通した断面図を示す。器具130は器具100と同様である。しかしながら、器具130は、異なる調節機構を含み、この調節機構により、スロット112、114により定められる切断ガイドの位置が調節されうる。器具130は、第1のしわゾーン132、第2のしわゾーン134、および第3のしわゾーン136を含み、これらのしわゾーンによって、器具の形状が変形されうる。しわゾーン132、134、136は、異なる材料で作られた領域、または、特に加工された弱さを備えた領域など、あらゆる適切な工学的構築物により設けられてよい。例えば、しわゾーンは、ウェーハタイプの構造物(wafer type structure)により設けられてよい。詰め木および楔形部が、しわになっていないしわゾーンに挿入されて、しわゾーンを圧縮する力が器具に及ぼされたときに、適切なゾーンのみがしわになることを確実にすることができる。
【0060】
使用中、器具130が脛骨102の遠位端部に取り付けられた後で、軟組織平衡化をもたらすために切り口の位置を変えるべきであると測定値が示した場合、外科医は器具130を操作してその形状を変形させ、それにより、器具130がまだ大腿骨に取り付けられている間にスロット112、114の位置および向きを変えることができる。したがって、患者の骨の形状に合わせて独自に構成された複数の取り付け点は、器具が患者の骨上の適切な位置まで確実にナビゲートされることと、1つまたは複数の切り口の位置または角度を調節して軟組織平衡化に適切な1つまたは複数の切り口を作ることができる機構をしわゾーンが提供することと、を確実にする。
【0061】
しわゾーンが取り付けピンに対して前後方向にある状態で、切り口を前後方向または内側‐外側に動かすことができる。楔形部は、ピンが動くことでできた空間を埋めるのに用いられてよい。例えば脛骨上の、単一の平坦な切り口については、切り口より上の平坦なしわゾーンが、近位側および角度の変動をもたらしうる。
【0062】
図5は、図4に示したものと同様の、本発明のさらなる実施形態130’を示す。この多切断器具(multi-cut instrument)130’では、しわゾーン142、144、146が、取り付けピンの周りの溝の形をしており、切断ブロック全体を骨から離すか、または骨に向かって動かす。例えば、図5に示されるように、第1のしわゾーン146を圧縮すると、切り口が、図5の関連する矢印で示す方向で、さらに骨の中に入るであろう。これに対して、第2対のしわゾーン142、144を圧縮すると、切り口が、図5の関連する矢印で示す方向で、骨の外にさらに移されるであろう。
【0063】
しわゾーンにより、すべての切り口の位置および角度を調節することができる。
【0064】
加えて、器具は小さなスペーサ138、140を含んでよく、これらのスペーサは、器具の取り付け領域の内側における様々な点に取り付けられて、位置または角度のさらなる変化をもたらすことができる。器具における小さな穴(不図示)または取り付け点が設けられ、押しばめメカニズムを用いて、この穴の中に、これらのスペーサを据えることができる。
【0065】
図6および図7は、本発明の第2の実施形態による器具130”のさらなる改造型の斜視図を示し、器具130”は、しわゾーンを用いている。器具は、図2A〜図2Eに示したものと概ね同様であるが、分離部分または取り外し可能な部分を有するのではなく、しわゾーンを用いて、切断ガイドの位置を調節することができる。器具の本体438の、骨に向いた内側表面436から延びる部材のうちの2つ432、434は、骨に係合する取り付け領域表面と、部材432、434が内側表面436に取り付けられる点との間で、部材432、434を貫通する概ね三角形の空隙を有している。三角形の楔形部440の形をした、取り外し可能な支持部材は、その空隙に置かれ、また、その空隙から取り外し可能であり、図6に示されていて、これらの部材は、患者の骨への器具130”の最初の取り付けのために正確に位置付けられる。支持部材は、個別に取り外し可能であり、そのため、部材の変形の量および/または方向は、支持部材のうちのどれが取り外されるかに応じて、器具の使用者が選択できるものである。
【0066】
患者の骨に取り付けられた後、楔形部のうちのいくつかまたはすべてが空隙から取り外され、器具は、部材432、434が変形し、それにより、切断ガイドが骨に対して異なる位置をとることができるように、操縦されてよい。図7は、図6に示した器具と同様の器具を示しており、この器具では、楔形部が除去されており、また、部材のうちのさらなる2つ442、444が、しわゾーンを定める空隙を備えている。しわゾーンにより部材は変形されうる。部材432、434、442および444をしわにすると、近位‐遠位方向における変化を生じる。垂直方向にしわゾーンを設けることは、前後位置を調節するのに用いられてよい。
【0067】
器具は、変形可能な部材が並外れて(out of the way)変形した状態で、前記の方法と同様に調節されることができる。代わりに、器具は、骨に器具をピンで留める前に調節されてもよい。この方法は、次に、器具を骨上で、その初期位置に置き、楔形部を取り外し、部材を変形させることにより必要に応じて器具の位置を調節し、切断ブロックを、調節された位置でピン留めし、その後、調節された切り口を作るべきものである。別の実施形態では、変形可能な部材は、器具の前方フランジの下でも用いられる。
【0068】
図8は、しわゾーンを含む、本発明の第2の実施形態による器具130’’’のさらなる改造型を示す。器具は、図3に示す器具100”と概して同様である。しかしながら、各足部450、452は、単一の孔454、456を含み、この孔により、器具は、使用中、骨102にピン留めされうる。この孔より上の足部の一部が、その内部を通る複数の三角形孔を有し、しわゾーン458、460を提供し、これらのしわゾーンにより、上下方向における器具の位置が調節されうる。各しわゾーンの上には、孔462、464がねじ山付き留め具(不図示)を受容するために設けられ、ねじ山付き留め具はしわゾーンより下でねじ山付き孔に受容されるねじ山付き留め具を操作することにより、しわゾーンの上部および下部が、互いに押されて、支持構造体を押しつぶし、また、好ましい変形度でしわゾーンを保持する。これは、しわゾーン材料が弾性であり、ゆえにねじ山付き留め具が、適宜位置を変える器具でしわゾーンを押しつぶすかまたは解放するように操作されうる場合に特に有用である場合がある。
【0069】
図9は、様々な第2の実施形態と共に使用されうる、取り外し可能な支持部分を示す。支持部分470は、本体472を有し、複数の楔形部474、476、478(例示した実施形態では3つ)がその側面から延びており、しわゾーン458、460の三角孔に受容可能となるようにサイズ決めされ成形されている。楔形部は、器具130’’’が最初に骨上に据えられたときにしわゾーンが潰れるのを防ぎ、その後、しわゾーンを変形することにより器具の位置を変えるのが望ましい場合に取り外されるように、しわゾーンの孔に押し込まれることができる。しわゾーンの孔が少なくとも部分的に再形成され(reformed)、器具がその位置を変えてその初期位置に少なくとも部分的に戻るように楔形部を孔に押し込むことによって、楔形部は、しわゾーンが部分的に潰れた場合にも使用されうる。
【0070】
図5Aは、さらなるしわゾーン機構480を示しており、このしわゾーン機構480は、図5に示す器具130’など、本発明の様々な実施形態に使用されてよい。しわゾーン機構480は、図5に示すしわゾーンに取って代わるように用いられうる。取り付け領域484を含む器具482の一部が、変形されうる材料を含むチャンバ486を有する。器具の別の一部の足部分488が、足部分の上490および下492の変形可能な材料の部分と共にチャンバにスライド受容される。器具の位置は、材料の下方部分492を圧縮し変形させることにより、骨に向かって調節されることができ、あるいは、器具の位置は、材料の上方部分490を圧縮し変形させることにより骨から離れるように調節されることができる。
【0071】
図10および図11は、冠状面および矢状面それぞれにおいて本発明の第3の実施形態150を貫通した概略的断面図を示す。器具150の第3の実施形態は、主要本体部分152を含み、主要本体部分152は、第1のスロット154、第2のスロット156および第3のスロット158を支持し、これらのスロットは、使用中、鋸などの切断器具を受容する3つの切断ガイドを提供する。他の実施形態では、さらなる切断ガイド(例えば155および157)を設けてもよい。器具150は、患者の骨の対応する領域の表面形状に適合する表面形状を有する第1の取り付け領域164を有する第1の部材160を含む。第2の部材162もまた、患者の骨168の表面の対応する領域の形状に適合する表面形状を有する取り付け領域166を有する。同じ平面、または取り付け領域162、164の面外(out of the plane)においてさらなる取り付け領域を与えるさらなる取り付け部材を設けることもできる。図10に示されるように、骨160は外側矢状面(lateral plane)で示される遠位大腿骨である。しかしながら、同じ原理が脛骨にも当てはまりうる。
【0072】
第1の取り付け部材160は、第1のネジ機構170を含む。第2の取り付け部材162は第2のネジ機構172を含む。ネジ機構172または170は、図11に示す両方向矢印により示されるように、近位‐遠位方向において骨168に対して切断ガイド158を並進させるように操作されることができる。
【0073】
器具150は、長い穴の形をしたさらなる調節機構174を含み、この調節機構により、ネジ機構170は、図11の関連する両方向矢印で示されるように前後方向において本体152に対して動かされうる。同様の第2の調節機構(不図示)が第2のネジ機構172に与えられる。調節機構174は、骨168に対して前方または後方に切断ガイドの位置を動かすために、主要本体152を前後方向に並進させるように操作可能である。ネジ自体は、ネジの上部または端部が身体組織と干渉するのを防ぐために、ブロックの内側にねじ山付きブシュを備えた係留面タイプ(captive-pane type)または類似のものであってよい。切断面の内反‐外反の変化は、ネジ170および172の代替的な設定によって達成されることもできる。
【0074】
したがって、取り付け領域162、164の形状は患者の骨に固有のものであるので、器具が最初に骨上に置かれうる、患者の骨上の独自の位置がある。いったん器具が所定の場所にピン留めされると、または、ピン留めの前に、切断ガイド154、156、158の位置は、前方、後方および遠位の切り口の位置を調節するために本体152を動かすようにネジ機構を用いることによって調節されることができる。また、取り付けは、前面に対して中心の位置において、骨の前側で、取り付け部材162、160を通過するピンと、表面適合領域と、によりもたらされる。理解されるであろうが、この実施形態では、ネジ機構は調節機構を与える。色または他の印もしくはマークをネジ上に設けて、予め決定した量だけ、位置を変えるかまたは調節することができる。用いられるべき量は、ルックアップテーブルで、または軟組織平衡化測定値から得られたコンピュータプログラムから、特定されることができる。
【0075】
図12は、本発明の第3の実施形態による器具150’のさらなる改造型を示す。器具150’の特徴部のうちのいくつかは、図3および図8に示す器具の特徴部と同様であり、そのため、再び詳細に説明はしない。しかしながら、器具の位置を調節する機構は異なっている。患者別の足部500、502が器具本体の各端部に設けられており、これらの足部は、取り付け領域504を与える表面を含む。患者別の各足部は、調節機構により主要本体506に取り付けられ、調節機構は、前後方向508および/または上下もしくは近位‐遠位方向510において独立して各足部に対して本体506を動かす。
【0076】
各調節機構は、ねじ山付きプレート516、518を通過する捕捉ネジ512、514を用いており、これらのネジは、プレート受容構成で(in a plate receiving formation)前後方向508にスライドすることができる。捕捉プレート520が各ブロックに設けられて、そのネジの端部に対して固定位置でブロック500、502を保持する。本体の下面における特徴部が、ブロック上の結合特徴部と相互作用して、本体506に対するブロック500、502の回転を防ぐ。ネジ512、514は、回転して、本体506を骨に対して近位-遠位方向に動かし、ゆえに、器具150’が骨102の上に据えられた後で、切断ガイドの位置を調節することができる。
【0077】
図13は、器具の第4の実施形態180を貫通した概略的断面図を示す。第4の実施形態は、第1および第2の実施形態と同様である。しかしながら、調節機構は、別個のスペーサ182、184、186の形で設けられており、これらのスペーサは、スロット112および114により定められた切断ガイドの位置を骨102に対して調節するように、取り付け領域に選択的に取り付けられることができる。これらの別個の部品は、押しばめまたはスナップばめメカニズムを用いて取り付けられてよく、プラスチック材料で作られていてよい。スペーサは、色分けされて、特定のスペーサを用いた際に切断ガイドの位置の変化が何をもたらしたのかを示すことができる。スペーサは、表面適合領域の後ろ、またはそれらの領域の上部に合うように作られてよく、あるいは、異なる実施形態では、表面適合領域のパッチ(surface matching areas patch)に完全に取って代わることができる。
【0078】
図14Aは、患者別のスペーサを用いる、本発明の第4の実施形態による器具180’のさらなる改造型の一部の斜視図を示す。器具180’は、図3、図8および図12に示した器具と概ね同様である。取り付け領域をもたらすパッドを有するのではなく、スペーサ、および患者別の接触領域を用いて、器具の足部分420を患者の骨102に据える。例えば、図14Bは、患者別の構成要素530を示しており、その骨に面する表面532が、患者の骨の形状に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。その構成要素の上方表面が、概ねトレー状の形態を有し、トレーの端部が、図14Aに最も良く示されるように、器具の足部420に対する押しばめ取り付けをもたらすようにサイズ決めされ構成されている。孔534がトレーの本体に設けられており、器具を骨102に取り付けるように足部を通過する骨ピンを受容するための器具の足部の孔536と位置合わせされる。
【0079】
図14Cは、さらなる押しばめ構成要素540を示し、これも骨に面する表面542を有し、この表面542は、患者の骨に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。この構成要素540は2つの孔544、546を有し、この構成要素は、2つの異なる別個の位置で足部420に取り付けられうると共に、骨ピンが足部および構成要素を通り抜けることを可能にする。したがって、この構成要素は、近位‐遠位方向に器具が動くことを可能にする。
【0080】
図14Dは、さらなる押しばめ構成要素550を示し、これも、骨に向いた表面552を有し、この表面552は、患者の骨の形状に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。この構成要素550は、複数のくびれを備えて成形された単一の伸張孔554を有しており、この構成要素は、3つの異なる別個の位置で足部420に取り付けられうると共に、骨ピンを足部および構成要素に通すことができる。したがって、この構成要素は、近位‐遠位方向における、しかし固定角での、器具の不連続の直線的な動きを可能にする。
【0081】
図14Eはスペーサ構成要素560を示し、スペーサ構成要素560も、概ねトレー状の形状を有し、図14B〜図14Dに示された患者の形状別の構成要素と積み重ね配列を形成するようにサイズ決めされ構成されている。伸張孔562がトレーの本体に設けられて、使用中に、骨ピンを積み重ね配列の中に通す。このスペーサにより、器具の、角度をつけた転置および直線的な転置が可能となる。図14Fはスペーサ構成要素570を示し、スペーサ構成要素570も、概ねトレー状の形状を有し、図14B〜図14Dに示された患者の形状別の構成要素と積み重ね配列を形成するようにサイズ決めされ構成されている。2つのくびれを有する伸張孔572がトレーの本体に設けられて、使用中に、骨ピンを、3つの別個の位置で、積み重ね配列の中に通す。このスペーサにより、器具の直線的な転置のみが可能となる。
【0082】
図14Gは、スペーサ、例えばスペーサ560と、患者別の形状の構成要素、例えば構成要素550との積み重ね配列580を示している。スペーサは、スペーサによる、足部420への、配列の押しばめ取り付けをもたらすように寸法決めされ構成されている。患者別の形状の構成要素は、その後、スペーサに押しばめ取り付けされる。
【0083】
使用中、器具の初期位置は、少なくとも1つのスペーサが骨の両側にある状態で、計画される。したがって、器具の位置は、器具を前後方向に動かすように異なる厚みのスペーサを用いることにより調節されうる。加えて、または代替的に、スペーサは、骨の片側からもう一方の側に動かされてよく、これによっても、器具の位置が前後方向に調節される。
【0084】
図示のとおり、スペーサは一定の厚みを有する。しかしながら、様々なまたは先細りする厚みを有するスペーサを用いることにより、器具の角度位置を変えることも可能である。
【0085】
図15は、器具の第5の実施形態190を貫通した概略的断面図を示す。第5の実施形態は、第1、第2、および第3の実施形態と同様である。しかしながら、第5の実施形態では、調節機構は、それぞれがねじ山付き穴に受容される3つのネジ190、194、196により提供される。各ネジの足部は、外側表面が取り付け領域を与える部材を支持し、取り付け領域の形状は、患者の骨102の対応する領域の表面形状にほぼ適合している。したがって、ネジ198、200、202の足部上の患者別の取り付け領域により、器具は、患者の骨上の単一の独自位置にのみ取り付けられることができ、一方、ネジ192、194、196を操作すると、スロット112、114により設けられた切断ガイドが、骨102に対して動かされる。チャネルがアタッチメント190の主要本体に設けられ、接触足部は、チャネルの中をスライドし、局所的な骨表面および器具の本体に対する、足部の適切な向きを保つことができる。ネジおよびチャネルの角度および位置は、軟組織に依存する角度および位置の変化の予想される範囲について、患者別の部分に対する接触面積を最大にするように最適化される。取り付けピンは、取り付け領域に適合する表面を貫通して設置されて、取り付けの安定性を改善することができる。
【0086】
図16は、大腿骨211の遠位端部と共に使用することを目的とした本発明による外科器具の第6の実施形態210の概略的な断面側面図を示す。図17は、第6の実施形態210の下側からの斜視図を示す。器具210は、主要本体212を含む。本体212は、第1のスロット214、第2のスロット216、第3のスロット218、第4のスロット220、および第5のスロット221を支持する。第1のスロット214は、前方大腿骨切り口を作るための鋸刃を受容する切断ガイドを提供する。第2のスロット216および第3のスロット218は、それぞれ、第1および第2の大腿骨面切り口(femoral chamfer cuts)を作るために鋸を受容する切断ガイドを提供する。第4のスロット220は、大腿骨の後方切り口を作るさらなる切断ガイドを提供する。第5のスロット221は、大腿骨の遠位切り口を作るさらなる切断ガイドを提供する。
【0087】
本体212は、2つのねじ山付き穴を含み、これらのねじ山付き穴はそれぞれ、ねじ山付き部材222を内部に受容することができる。部材222の後ろで平行面にある他のねじ山付き穴も設けることができる。本体212の第1の端部は、自由端に向かって第1のネジ山付き穴226および第2のネジ山付き穴228を有する第1の湾曲エンドプレート224を含む。第2の湾曲プレート230が本体212の第2の端部に設けられており、このプレート230は、その自由端に向けられた、第1組のオフセットしたねじ山付き穴232および第2組のオフセットしたねじ山付き穴を含む。穴はそれぞれ、ねじ山付き部材222と同様のねじ山付き部材(不図示)を受容する。したがって、実際には、6つのねじ山付き部材が設けられ、その自由端は、6つの取り付け領域を提供し、これらの取り付け領域により、器具210は、大腿骨の遠位端部、または他の実施形態では他の身体部に、取り付けられうる。ネジ222、236のうちの少なくとも1つのネジの端部は、骨の表面形状に適合するように成形されている。
【0088】
端部の骨接触領域は、器具に対してキーで締められ(keyed)、そのため、これらの領域は、骨接触領域が上に据えられるネジが回転されたときには回転されない。骨表面に適合する表面が先端についていないネジ部材には、尖頭(point)が付いており、その位置は、医用画像により表現される表面に対して既知である。記載される実施形態では、使用されるネジの数は6つであるが、変更する寸法がより小さい場合には、使用するネジはさらに少なくてもよい。単に位置調節のために、ネジの数は2つまで減らされて、例えば前後および近位‐遠位の変更を行うことができる。切り口の角度が変更される場合、表面適合領域によりネジに対する少量の剪断力が存在するであろう。考慮に入れられる小さな角度変化(<3°)については、表面適合には影響を与えず、機構の部分同士の界面に吸収されるであろう。
【0089】
第2のエンドプレート230は、その下方端部に向かってスロット238を含み、このスロットは、さらなる切断ガイドを提供する。本体部分212には対応するスロットがある。第2のエンドプレート230は、ピボット機構(不図示)により主要本体212に取り付けられる。一対のねじ山付き部材(そのうちの部材242のみが見える)を操作して、エンドプレート230を旋回させ、それにより、本体212に対するスロット238の角度を変えることができる。使用中、スロット238は切断ガイドを提供し、この切断ガイドにより、器具210が使用中に大腿骨に取り付けられたときに鋸を使用して大腿骨の遠位切り口が作られうる。
【0090】
概して、ねじ山付き部材は、大腿骨の遠位端部に対する切断ガイド214、216、218、220、221の位置を変えるように調節されてよく、大腿骨切り口の位置は、軟組織平衡化をもたらすように必要に応じて調節されうる。
【0091】
調節量は、ネジおよびガイド上にマークされてよく、ルックアップテーブルから、またはコンピューター制御された組織平衡化測定値から、手動で決定されることができる。
【0092】
図18に示されるように、器具の別の実施形態では、調節機能は、単に、多少骨のたくわえ(more or less bone stock)を除去するように同じ切り口に対して本体に複数のスロットを与えることにより達成される。破断バリアが、計画されていなかったスロットの上に設けられてよく、外科医は、それらを使用するために慎重に行動を起こさなければならない。
【0093】
図18は、3つのスロット602、604、606を含み、同じ切り口を作るための切断ガイドを提供する、器具600の一部を示す。しかしながら、単一または複数の(例示されるような)押しばめインサート608、610が、通常は使用されないスロットをブロックするのに用いられ、これによって、単一のスロットのみが、切り口を作るのに最初に利用可能となる。切り口を作るのに使用されるべきスロットの位置は、その後、スロットのうちの別のものからインサートを取り外すことにより調節されてよく、好適な位置に切り口を作るために、そのスロットを次に使用することができる。これらのインサートは、スロット転置の方向を容易に識別するために色分けされていてよい。
【0094】
器具の別の実施形態では、骨上の点/特徴部/表面が、除去されている表面の外側にくるように選択される。その後、器具は、初期の切り口が作られた後でさえ、独自に再配置可能である。このことは、きちんと調整された切除アプローチ(measured resection approach)を用い、かつすべての切り口を作り、後で確認することを望む、外科医にとっては、特に有用である。これにより、外科医は、自分の切断ガイドを装備しなおし、必要とみなすあらゆる調節を行うことが可能になる。
【0095】
本発明は、あらゆる骨または硬い身体物質の切除、および平坦切断インプラント型に適合されうる。例えば、脛骨については、単一の切り口が使用されていることに起因して、複雑さが減少されうる。本発明は、あらゆるタイプのインプラントについて、丸い表面を準備するのにも適用可能であってよく、この場合、バードリル(burr)を用いて、その物質を除去することができる。
【0096】
図19は、調節可能な脛骨切断器具を提供する、本発明のさらなる実施形態300の、矢状面における概略的な側面図を示している。器具306は、切断スロット322を備えた主要本体部分308を含み、切断スロット322を通って、鋸刃が誘導されて脛骨切り口を作ることができる。器具306は、患者の脛骨310の対応する領域314の表面形状に適合する表面形状を有する取り付け部分312により、脛骨310表面に取り付けられる。ネジ機構316が操作されて、近位‐遠位方向に切断スロット322の位置を調節することができる。第2のネジ機構318も設けられ、この第2のネジ機構318は、ガイドがその周りで内反‐外反方向に旋回するのを可能にすることにより、切り口の傾斜を変えるように操作されうる。
【0097】
図20は、図16、図17および図19に示す器具と同様の、本発明による器具のさらなる変形体を示す。器具620は、切断ガイドを提供する複数のスロット622、624、626、628、630を有する。器具の主要本体632は、患者の骨形状に適合する表面形態を有する取り付け領域構成要素642により、骨640上に据えられる。構成要素642は、調節ネジ660により本体632に取り付けられるので、器具は、切断中、および器具の位置が調節された後で、安定されることができる。しかしながら、骨および取り付け領域の表面は、角度調節または直線的調節の後には、正確に適合しないであろう。骨表面は、典型的には遠位または近位切り口のために切り取られるので、安定性の調節は、ブロック器具の位置が調節された後には、必ずしも必要ではない。
【0098】
その他の患者別の取り付け領域644は、ピボット機構648により器具のさらなる部品646に取り付けられて、骨640に対して器具がいくらか回転することを可能にする。ピボット機構は2つのネジを含む。ねじ山付きボアが足部構成要素644に設けられ、そのボアの中にネジの自由端652、654が係合する。孔がネジシャンクを受容するために部品646に設けられるが、この孔は、緩い嵌めあい(loose fit)で、いくらかの旋回運動を可能にする。足部構成要素644の端部は、端部停止部を提供して、本体の過度な回転を防ぐ。足部構成要素644の孔を通り抜ける骨ピン650は、足部構成要素644が骨に対して動くのを防ぐ。
【0099】
双方のネジが同じ向きで(in the same sense)操作される場合、器具は単に並進する。しかしながら、1つのネジのみが操作されるか、または2つのネジが反対の向きで(in opposition senses)操作されると、器具の主要本体は、旋回するかまたは傾いて、それにより、器具の位置がいくらか角度調節される。ピボット機構により、±約2°の、ネジ駆動の回転が可能になる。代替的な構成では、単一のネジ、および可撓性ヒンジを用いてピボット機構を提供することができる。2°刻みの間での(between 2°steps)慎重な回転(Measured rotations)は、ネジの慎重な回転(measure turns)により達成されうる。
【0100】
部品646自体はネジのねじ山656に据えられ、主要本体632の残部は、ヘッド658を使用してねじ山656を動かし調節ネジ660を操作することにより、骨に向かって、また骨から離れるように、動かされることができる。
【0101】
図21Aおよび図21Bは、図16、図17、図19および図20に示すものと同様の、本発明の実施形態である、さらなる器具680の斜視図を示す。図21Bは、器具680の骨係合側面からの斜視図を示し、図21Aは、使用中に大腿骨102上に据えられた器具を示す。器具680は、第1の骨係合部分682、および第2の部分684を含み、第2の部分684は、インプラントを受容するために大腿骨を準備する際に通常使用される複数の切り口を作るための切断ガイドを画定する複数のスロットを含む。第1および第2の部分は、それらの部分の間に、器具の本体を含む。
【0102】
骨係合部分は、骨に面する側面を有し、この骨に面する側面は、骨に面する側面を覆って延びる表面670を含み、広がった骨取り付け領域を提供する。この広がった骨取り付け領域の形状は、患者の骨表面の対応する部分における表面の患者固有の形状に適合している。したがって、骨係合部分は、骨に係合する、器具の唯一の部分であり、器具が事前選択された独自位置において骨に据えられることを確実にする。
【0103】
器具の切断ガイド支持部分684は、第1の部分672および第2の部分674を有し、これらの部分はそれぞれ、少なくとも1つのスロットを支持している。部分672は、遠位切り口の作製を誘導するスロット676を有する。部分672は一対のねじ山付きネジ684、686により骨係合部分682に取り付けられる。ねじ山付きネジ684、686は、ネジの操作により第1および第2の部分が骨102に対して遠位‐近位方向に並進し、それによって、遠位切り口の位置を調節することができるように、捕捉される。
【0104】
第2の部分は、5つのスロット690を含み、これらのスロット690は、膝関節形成処置中に大腿骨を準備する際に通常使用される、前方および後方切り口ならびに角をなす切り口の作成を誘導するのに使用されうる。部分674は、さらなる一対のねじ山付きネジ688、690により第1の部分672に取り付けられる。この一対のネジ山付きネジ688、690は、ネジの操作により、第1および第2の部分が骨102に対して前後方向に並進し、それによって、様々な切り口の位置を調節することができるように、捕捉される。
【0105】
図22A、図22Bおよび図22Cは、本発明による器具700のさらなる実施形態の一部の斜視図を示す。器具700は、図3、図8および図12に示す器具と概ね同様である。器具は、異なるタイプの調節機構を有する。この調節機構は、切断ガイドを画定する際に、スロットを備えたインサートまたはアタッチメントの使用を伴う。異なるインサートおよびアタッチメントのスロットは、異なる量だけオフセットされているので、器具が取り付けられる骨に対して切断ガイドの位置を調節することができる。
【0106】
例えば、図22Aは、器具700の主要本体部分701の上面斜視図を示し、孔704を有する大きな矩形凹部702を主要本体に含む。孔704は、本体を貫通しており、使用中に、器具の下の骨へのアクセスを提供する。凹部は、凹部の一部の周辺に延びる肩部706を含み、肩部706は、図22Bに示されるようにインサート710の挿入深さを制御するよう作用する。インサートは金属製ブロックで、そのブロックを貫通するスロット712を含む。凹部およびインサートは、ブロックが押しばめ式に凹部と結合して、器具の主要本体にインサートを確実に取り付けるように、寸法決めされ成形される。インサートは、詰め木として作用して、スロット、ゆえに切断ガイドの位置を制御する。異なる量のスロットオフセットを有し、また、異なる角度でスロットを有する1組のインサートが設けられて、特定のインサートを選択および使用して、その選択されたインサートにより定められるような切り口の位置および/または方向を調節することができる。
【0107】
図22Cに示されるように、複数のインサートまたはアタッチメントが、器具700の一部として設けられうる。例えば、切断ガイドインサートまたはアタッチメント714が設けられてよく、この切断ガイドインサートまたはアタッチメント714は、足部716および718に隣接する構成物と協働して、インサート714を器具700の側面に押しばめ取り付けする。インサート714は、遠位大腿骨切り口を作る際に使用されうる切断ガイドを提供するスロット715を含む。選択されたオフセットスロット位置またはスロット角度の特定のインサートが、作られるべき切り口の位置を調節するために、選択されて器具本体に挿入される。
【0108】
インサートまたは詰め木710、714は、概して、異なる側方および角度オフセットで利用可能となり、軟組織測定後の切り口表面の調節を可能にし、あるいは、他の適切な調節が、手術中または手術前の情報に基づいて行われる。凹部702は、切断表面における予定の変形を可能にするのに十分幅広い。詰め木は、任意の調節計算が行われた後で、主要本体に挿入される。詰め木は再利用可能であり、それらの単純な形態により、容易な滅菌、および患者別の主要本体701の様々な範囲のサイズおよび切断位置にわたる使用が可能となる。凹部706の一端部は、開かれたままにされ、例えば骨が小さい患者のために、スロットより長いインサートを使用することができる。
【0109】
図22D、図22Eおよび図22Fは、切断器具を調節するための、異なるインサートブロックの使用方法をさらに説明する目的で、それらの異なるインサートブロックの例を示している。図22Dは、インサートブロック720を示し、インサートブロック720は、このブロックの長さ方向軸に沿って、この長さ方向軸に平行に延びるスロット孔722を有する。ブロック712の代わりにこのブロックを使用することで、結果として得られる切り口の位置を、前後方向に調節することができる。図22Eに示すインサートブロック724は、スロット孔726を有し、このスロット孔726も、ブロック724の長さ方向軸に沿って、またこの長さ方向軸に平行に延びるが、スロットは、ブロック720に比べて、ブロック724の側面に、より近接している。したがって、第1の向きで、または180°回転した第2の方向で、ブロック720の代わりにこのブロックを使用することで、結果として得られる切り口の位置を前後方向に変えることができる。図22Fは、インサートブロック728を示し、インサートブロック728は、このブロックの長さ方向軸に概ね沿って延びるがブロックの長さ方向軸に平行でないスロット孔730を有する。したがって、結果として得られる切り口の角度位置を調節するためにブロック728を器具に挿入して使用することができる。
【0110】
硬質材料で作られた、2組の色分けしたインサートまたはブロックが設けられる。第1組のブロックは、前方、後方、遠位および近位の切り口を作るのに用いられる。これらの切り口は、それらの回転(内反‐外反)および側方の位置付けの点で異なっていてよい。通常の使用においては、インプラントは、1.5mm刻みで+/−3mmまで側方に動かされてよい。この程度の切り口調節をもたらすために、3つのブロック、すなわち、スロットが中立的に位置付けられた第1のブロック、スロットが1.5mmオフセットした第2のブロック、および、スロットが3mmオフセットした第3のブロック、を使用する。これは、様々な量、例えば、0°、1°、3°または5°、の内反‐外反角度変動を備えたブロックを提供するのにも役立ちうる。したがって、偏揺れおよび縦揺れするスロットを備えたインサートブロックも提供することにより、例えば12個のブロックで、内反‐外反および側方への動きのすべての値をカバーすることが可能である。
【0111】
第2組のブロックは、面切り口(chamfer cuts)を作るのに使用される。インサートブロックを受容するための同様の凹部が面切り口のために使用され、面切り口の双方については、凹部は面角度(chamfer angle)と整合される。第2組におけるインサートブロックは、第1組におけるブロックよりもわずかに長く、器具の本体中へそれほど深く入り込んでいない。これらのインサートブロックは、安定位置で保持されうる。これは、面切り口ならびに前方、後方および遠位の切り口のためのインサートブロックを受容する凹部が、大腿骨において重なり合うためである。ここでも12個のブロックを使用して、(45°での面について)転置の組み合わせすべてをカバーすることができ、面の他の角度については、24個のブロックを使用することができる。
【0112】
図23は、本発明の器具で使用されうるさらなる調節機構750の実施形態を貫通した概略的断面図を示す。調節機構の第1の部分752は、器具の主要本体の一部であり、調節機構の第2の部分754は、器具の取り付け領域(不図示)を含む部材または足部を支持する。部分752は中空部分756を画定し、この中空部分756の中に、部分754が、両方向矢印758で示されるような方向で、スライド係合することができる。ねじ山付きシャフト760は、自由端にヘッド762を有し、静止した第1対の楔形部材764、766と、可動の第2組の楔形部材770を通り抜ける。第2組の楔形部材770は、ねじ山760を回転させることにより、両方向矢印772で示される方向において前後に駆動されうる。楔形部764、766は静止しているので、駆動機構のねじ山760の回転によりそれらの楔形部に向けて駆動されると、楔形部768、770の傾斜端面は、楔形部764、766の傾斜面の上に乗り上げてスライドし、第2の部分754は、中空部分756から出て、かつ中空部分756から離れるように駆動され、それによって、主要本体と取り付け領域との間の分離が増大し、ゆえに、主要本体により支えられる切断ガイドの位置が調節される。
【0113】
この調節機構750を用いることにより、関節容量自体は、任意の調節ネジを収容しなくてよく、器具全体をよりコンパクトにすることができる。ネジ760は、可動部材768、770を前後方向に動かして、楔形部764、766の上/下運動を引き起こし、したがって、取り付け領域も、上下に動かされる。近位/遠位方向における調節にはツールは必要でなく、この機構は、低侵襲性手術(MIS)処置に特に有用である、よりコンパクトな制御をもたらす。器具本体を押す外科医により戻る力が与えられうる。
【0114】
図24Aおよび図24Bは、本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。図24Aは、器具780の後方側面からの斜視図を示し、図24Bは、使用中に、脛骨782に据えられた器具780の前方側面からの斜視図を示している。器具の本体784はスロット786を含み、スロット786は、本体を貫通しており、使用中に脛骨切り口を作るために切断装置を受容する切断ガイドを提供する。2群788、790の3つの孔が、使用中に器具を脛骨782に固定する骨ピン792、794を受容するために本体を貫通している。一対のアーム796、798が主要本体から延び、患者別の形状の第1の部材800、および患者別の形状の第2の部材802を、アームの、骨に面する下面上で支えている。各部材800、802は、図24Bで最もよく分かるように患者の骨と係合するように構成された取り付け表面を提供する。主要本体の、骨に面する側面は、使用中に脛骨782の前方表面上の領域の形状に適合するように構成されたさらなる取り付け表面806を提供する、患者別の形状の第3の部材804を支持する。
【0115】
器具は、前記の同様の実施形態と同様に使用される。予め決められた位置に器具を最初に設置するように、取り付け領域を骨表面と係合させることにより、器具がまず脛骨上に据えられる。次に、骨ピン792、794が穴788、790を通じて導入されて、器具を脛骨に固定する。スロット786により画定された切り口の位置の調節が、何らかの理由で必要となった場合、器具780は骨ピンから取り外され、部材800、802、804が器具から取り外され、その後、器具は、穴788、790のうちの別の穴を用いて骨ピン上の脛骨上で置き直されて、スロットを近位‐遠位方向において上方または下方に動かし、脛骨切り口の高さを調節することができる。
【0116】
概して、図面に示した実施形態は、いくつかの異なる手術ワークフローで用いられうる。前記で簡単に言及したように、外科処置を開始する前に、例えば高速基本形作成技術を用いて、患者別の器具が製造され、このため、器具の取り付け領域は患者別となり、患者の骨に対して器具を独自に取り付けることができる。これは、例えばCTスキャンデータから得られた、患者の骨の幾何学的外形または形状を表す様々なタイプのデータを用いて達成されうる。例えば、第1、第2、第4および第5の実施形態は、患者固有の骨表面に合う独自の凹形状(unique negative shapes)を用いている。これらの形状は、幾何学的外形がアクセス可能である、完全な骨表面、または骨表面の選択された部分を覆うことができる。第2のアプローチは、手術前の計画段階では正確にモデル化できない骨(例えば軟骨)に軟組織が付着した場合に、より適切である。
【0117】
脛骨では、軟組織平衡化に適応するための、切り口に対する最も重要な変更は、脛骨の傾斜を増大または減少させることが可能であること、より遠位または近位の方向に脛骨切り口を動かすことが可能であること、および、内反‐外反角度を調節できること、である。
【0118】
大腿骨では、軟組織平衡化に適応するための、切り口に対する最も重要な変更は、前方または後方の方向に大腿骨切り口を動かせることである。遠位大腿骨切り口をより近位の方向に動かせることも重要である。大腿骨における内反‐外反角度を変えることが可能であることも有用である。内側/外側回転を変えることが可能であることも有益である。
【0119】
第1のワークフローでは、計画した外科処置にしたがって、最初に脛骨切り口を作る。次に、ツールを用いて、または外科医の目視検査および実験によって、屈曲および伸張間隙を改善するために、潜在的な変化に関する決定を行う。次に、器具は、必要に応じて取り付けられ調節されて、結果として得られた切り口は、必要な屈曲および伸張間隙をもたらすであろう。
【0120】
代替的ワークフローでは、計画した処置にしたがって、脛骨および大腿骨の切り口が作られる。トライアルインプラントが適用され、次にスペーサが使用されて、屈曲および伸張間隙を評価することができる。その後、器具は、切断された脛骨および大腿骨に適用され、必要に応じてさらに矯正的な切り口が作られるように調節されて、所望の屈曲および伸張間隙をもたらすことができる。しかしながら、このアプローチは、遠位大腿骨切り口をより近位の方向に単に動かすことにより、大腿骨のために利用可能な矯正をしそこなう(miss the corrections)であろう。しかしながら、脛骨については、あらゆる調節が依然として利用可能である。この場合、標準スペーサ要素(切り口表面に適合する)が器具と切断された骨表面との間に挿入されうる。これらの要素のうちのいくつかが表面適合領域を置換し、除去されていない、骨上の他の表面適合領域は、以前と同様のままであろう。
【0121】
本発明の器具のいくつかの異なる実施形態と関連していくつかの異なる特徴部を前記で説明してきた。異なる実施形態の特徴部が、本発明によるさらなる器具に達するために、実施形態のうちの他のものの特徴部と共に、追加的または代替的に使用されうることが、認識されるであろう。例えば、説明した異なる調節機構のうちのいくつかが、同じ器具において説明した調節機構のうちの他のものと共に用いられて、器具の、必要な並進運動の調節および/または角度調節をもたらすことができる。また、異なる調節機構および/または調節機構の組み合わせが、異なる骨と共に用いるためまたは異なる切り口を作るための器具と共に用いられうる。さらには、本発明は、意図した初期位置から、切り口の位置を調節できることが役立つであろう場合には、大腿骨または脛骨用器具のみに限定されず、様々な異なる骨において使用されることができる。
【0122】
〔実施の態様〕
(1) 患者の関節に対して実行されるべき整形外科的関節形成処置で使用される外科器具であって、前記関節の軟組織平衡化を可能にする、外科器具において、
少なくとも1つの取り付け領域を有する本体であって、前記取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、本体と、
少なくとも第1の切断ガイドと、
前記骨に対する前記切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、
を含む、外科器具。
(2) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを並進させる、器具。
(3) 実施態様1または2に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを回転させる、器具。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを傾ける、器具。
(5) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、しわゾーンを含む、器具。
【0123】
(6) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、ピンを受容するための、前記本体における複数の穴を含む、器具。
(7) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数の調節ネジを含み、前記複数の調節ネジによって、前記本体が前記複数の取り付け領域に据え付けられる、器具。
(8) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記取り付け領域に取り外し可能に取り付けられうる複数のスペーサを含む、器具。
(9) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数のネジを含み、前記複数のネジはそれぞれ、前記複数の取り付け領域のうちの1つを支持する足部を有する、器具。
(10) 実施態様1〜9のいずれかに記載の器具において、
複数の異なる切断ガイドが、前記本体により支持されている、器具。
【0124】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の器具において、
前記切断ガイドは、使用中に、鋸刃を受容するように構成されている、器具。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の器具において、
前記器具は、少なくとも1つの分離部分を含み、前記少なくとも1つの分離部分は、前記切断ガイドの位置または角度を変えるため、前記骨に対して前記器具が動かされうるよう取り外されることができる、器具。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載の器具において、
前記調節機構は、前記本体に対して前記切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能である、器具。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載の器具において、
複数の取り付け領域、
を有し、
前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記骨の表面の、少なくとも3つ、5つ、または7つの異なる位置において、前記骨に係合することができる、器具。
(15) 実施態様5に記載の器具において、
少なくとも第1の取り外し可能な支持部材であって、前記しわゾーンの好ましい変形量および/または変形方向を選択するために、前記しわゾーンから取り外されうる、第1の取り外し可能な支持部材、
をさらに含む、器具。
【0125】
(16) 実施態様1に記載の器具において、
骨に面する前記器具の表面から盛り上がっており、平坦な面を与える、少なくとも第1の部材であって、前記第1の部材は、前記切断ガイドの位置が変えられた場合に、前記器具と前記骨との間で、ある量の分離を維持するように位置付けられ構成されている、第1の部材、
を含む、器具。
(17) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記器具に取り外し可能に取り付けられうる切断ガイドを含む、器具。
(18) 患者の関節に対して整形外科的関節形成処置を実行し、前記関節の軟組織平衡化をもたらす方法において、
複数の取り付け領域を含む本体を有する外科器具を提供することであって、前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、外科器具を提供することと、
前記複数の取り付け領域を前記患者の前記骨の表面と係合させることにより、前記骨に前記外科器具を取り付けることと、
前記外科器具の切断ガイドの位置を変えるために前記器具の調節機構を操作することと、
を含む、方法。
(19) 外科器具を製造する方法において、
患者の関節の骨の形状を特定するデータを、前記患者から取り込むことと、
取り込まれた前記データを用いて、実施態様1〜17のいずれかに記載の外科器具の少なくとも取り付け領域を製造することと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明による外科器具の第1の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図2A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2C】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2D】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2E】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図3】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図4】本発明による外科器具の第2の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図5】図4に示された第2の実施形態のさらなる改造型を貫通した概略的な断面図を示す。
【図5A】本発明による器具の調節機構部分を貫通した概略的な断面図を示す。
【図6】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図7】図6に示した器具と同様の、本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図8】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図9】図8に示した器具と共に使用されうる取り外し可能な支持部材の概略的な側面図を示す。
【図10】本発明による外科器具の第3の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図11】本発明による外科器具の第3の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図12】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図13】本発明による外科器具の第4の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図14A】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14B】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14C】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14D】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14E】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14F】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14G】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図15】本発明による外科器具の第5の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図16】本発明による外科器具の第6の実施形態の斜視図を示す。
【図17】本発明による外科器具の第6の実施形態の斜視図を示す。
【図18】本発明による器具において使用されうる調節機構の図を示す。
【図19】本発明による外科器具の第7の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図20】本発明による器具のさらなる実施形態の概略的な断面図を示す。
【図21A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図21B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図22A】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22B】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22C】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22D】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22E】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22F】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図23】本発明による器具において使用されうるさらなる調節機構の概略的な断面図を示す。
【図24A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図24B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【開示の内容】
【0001】
本発明は、外科器具に関し、特に、軟組織平衡化(soft tissue balancing)を可能にするために整形外科的関節形成処置で使用されうる切断ガイドに関する。
【0002】
整形外科的関節形成処置は、関節の1つまたは複数の関節接合表面を置換するのに用いられる1つまたは複数のインプラントの使用をしばしば伴う。大抵、そのようなインプラントは、患者の骨の、切除されるかまたは別様に準備された部分に取り付けられる。切断ガイドが患者の骨に取り付けられて、その骨の表面が切除されインプラントを受容することができる。関節が正確に再建されるのを確実にしようとするために、様々なアプローチが、処置中に使用される切断ガイド、インプラントおよび他の器具の計画、誘導および設置に利用可能である。しかしながら、膝関節など、いくつかの関節については、関節が正確に再建されるのを確実にしようとするために、靭帯など、関節の軟組織構造を考慮に入れることも必要である。
【0003】
軟組織構造を考慮に入れようとするために、コンピューター支援手術(CAS)システムを用いて、切断ガイド、インプラントなどの位置を計画およびナビゲート(navigate)することができる。骨に作られるべき切り口を調節してインプラントの最終位置を変えるために、切断ガイドの計画位置は、軟組織の測定値に基づいて手術中に更新されることができる。しかしながら、CASシステムは、高額であり、広く利用可能であるわけではない。さらに、一部の外科医は、CASシステムを使用するのを好まず、自身のワークフローおよび技術を用いることを好む。
【0004】
切断ガイドを位置付けるための非ナビゲートアプローチは、患者の骨の取り込み画像からのデータを用いて患者別の切断ガイド(patient specific cutting guide)を作り出すこと(「テンプレート化(templating)」と呼ばれることもある)によって達成されることができ、その切断ガイドは、予め定めた位置で患者の骨に取り付けられ、それにより、計画位置で切り口の位置を固定することができる。しかしながら、このアプローチは、患者の骨に対する切り口の位置が手術前に固定されるので、軟組織を考慮に入れるのには適していない。関節の軟組織構造を考慮に入れるため、または他の理由で必要とされうる実際の切り口は、手術中に明らかになるに過ぎない場合があるので、切断ガイドにより定められた切り口は、最適でない。
【0005】
本発明は、複雑な計画またはナビゲーションシステムを必要とせずに、手術中に利用可能な軟組織情報または他の情報が、適切な切り口を作るために用いられることを可能にする機構を提供する。
【0006】
本発明の第1の態様によると、患者の関節に対する整形外科処置で使用される装置または器具を提供する。この装置は、関節の軟組織平衡化を可能にすることができる。装置は、本体と、少なくとも1つの取り付け領域であって、その取り付け領域またはそれぞれの取り付け領域は、患者の関節の骨に対する特定の好一対(specific match)になり、独自の位置でその骨に取り付けられるように構成されている、取り付け領域と、少なくとも第1の切断ガイドと、切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、を含む。
【0007】
したがって、患者別の取り付け領域は、装置を自動的にナビゲートし、装置が予め決められた位置で骨に取り付けられる。しかしながら、骨に作られるべき切り口は、少なくともいくらかの軟組織平衡化をもたらすのに役立つように、その後で調節されてよい。したがって、複雑なナビゲーションシステムは必要なく、関節の軟組織を補うように骨切り口を合わせる能力がもたらされる。
【0008】
調節機構は、器具が取り付け領域により骨に取り付けられている間、骨に対する切断ガイドの位置を変えるように操作可能であってよい。
【0009】
調節機構は、取り付け領域によって骨に器具を取り付ける前に、骨に対する切断ガイドの位置を変えるように操作可能であってよい。
【0010】
調節機構は、切断ガイドを並進させることができる。調節機構は、その切断ガイドもしくは各切断ガイド、または切断ガイドのうちのいくつかを、前後方向および/または内側‐外側方向および/または上‐下方向に並進させることができる。
【0011】
調節機構は、切断ガイドを回転させることができる。調節機構は、その切断ガイドもしくは各切断ガイド、または切断ガイドのうちのいくつかを、前後方向および/または内側‐外側方向および/または上‐下方向付近で回転させることができる。
【0012】
調節機構は、その切断ガイドまたは各切断ガイドの並進および/または回転を可能にすることができる。
【0013】
器具は、前記の、または後述するタイプの、複数の調節機構を含むことができる。
【0014】
調節機構は、しわゾーン(crumple zone)を含みうる。調節機構は、器具の形態、形状または構成を変形させるように加工された器具の一部を含んでよい。
【0015】
調節機構は、取り付けピンもしくはネジなどの付属物(fixing)を受容する複数の穴を含むことができる。この複数の穴は、本体の中に設けられてよい。複数群の複数の穴が設けられうる。
【0016】
器具は、少なくとも1つ以上の分離部分を含みうる。器具は、器具の1つ以上の部分、特に骨に接触する部分を、特定の方法で器具から分離させるように加工されることができる。
【0017】
調節機構は、少なくとも1つの、または複数の調節ネジを含みうる。本体は、その調節ネジまたは各調節ネジにより、複数の取り付け領域に据え付けられることができる。
【0018】
調節機構は、複数のスペーサを含むことができる。スペーサは、取り付け領域に取り外し可能に取り付け可能であってよい。
【0019】
調節機構は、少なくとも1つの、または複数のネジを含んでよく、このネジはそれぞれ、複数の取り付け領域のうちの1つまたは大多数を支持する脚部を有する。
【0020】
器具は、異なる複数の切断ガイドを含みうる。この異なる複数の切断ガイドは、本体により支持されうる。
【0021】
この切断ガイドまたは各切断ガイドは、使用中、切断装置またはその一部を受容するように構成されてよい。切断装置またはその一部は、鋸刃またはフライス削り装置であってよい。
【0022】
この切断ガイドまたは各切断ガイドは、切断ガイドにより誘導された骨に脛骨切り口または大腿骨切り口を作るように、構成され、かつ/または位置付けられ、かつ/または、設置され、かつ/または角度を付けられることができる。
【0023】
器具は、大腿骨または脛骨の近位端部または遠位端部に取り付け可能となるように適合または構成されることができる。
【0024】
器具は、少なくとも1つの分離部分を含んでよく、この分離部分は、切断ガイドの位置を変えるために切断ガイドおよび/または器具が骨に対して動かされうるように取り外されることができる。
【0025】
調節機構は、骨に対してこの切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能であってよい。
【0026】
調節機構は、本体の凹部と、凹部に受容されるべき少なくとも1つのインサートであって、切断ガイドを画定する構成物を有する、インサートと、を含みうる。この構成物はスロットであってよい。複数のインサートが提供されうる。各インサートのスロットは、インサートにおいて異なる位置および/または角度を有することができる。
【0027】
調節機構は、カム表面と、カム従動子と、を含んでよく、これらは、本体と、器具の少なくとも1つの取り付け領域とを分離するように相互作用する。カム表面は、傾斜表面であってよい。カム従動子は、傾斜表面であってよい。カム表面およびカム従動子は、概ね楔形の部材であってよい。カム表面およびカム従動子のうちの一方は、固定されていてよく、もう一方は、駆動機構により可動であってよい。
【0028】
調節機構は、切断ガイドの角度を調節するように操作可能なピボット機構を含むことができる。
【0029】
調節機構は、同じ切り口を作ることを意図した複数の切断ガイドと、切断ガイドすべての使用を妨げる1つまたは複数のバリア部材と、を含むことができる。バリア部材は、切断ガイドのうちのただ1つのみが使用されることを可能にすることができる。
【0030】
調節機構は、複数のスペーサを含むことができる。スペーサは、本体および/または取り付け表面を支持する構成要素に対して、取り外し可能に取り付け可能、例えば押しばめにより取り付け可能(push fit attachable)、であってよい。
【0031】
調節機構は、その機構の材料をつぶす、複数の孔を有するしわゾーンを含むことができる。調節機構は、支柱もしくは楔形部(wedge)など、1つまたは複数の取り外し可能支持部材を含んでよく、この支持部材は、つぶれを防ぐように複数の孔のうちの少なくともいくつかに挿入可能であり、また、つぶれを可能にするように取り外し可能である。
【0032】
調節機構は、留め具を受容する複数の孔を含んでよい。この複数の孔は、複数群の複数の孔を含むことができる。各群の複数の孔は、異なる方向および/または角度における調節を可能にする、複数小群の複数の孔(plurality of sub-groups of a plurality of apertures)を含むことができる。
【0033】
単一の取り付け領域を設けることができる。この取り付け領域は、器具のかなりの部分の上に延びて、骨への器具の独特な取り付けを可能にすることができる。この単一の取り付け領域は、骨における、異なる、かつ/または別個の複数の構造的特徴部もしくは領域に取り付けられるように構成されてよい。
【0034】
器具は、複数の取り付け領域を有しうる。別個の十分な取り付け領域が設けられて、骨に器具を独自に取り付けることができる。複数の取り付け領域は、骨表面の少なくとも5つの異なる位置で、骨に係合することができる。好ましくは、少なくとも3つの異なる取り付け領域が設けられ、さらに好ましくは、少なくとも4つの異なる取り付け領域、最も好ましくは5つ、または少なくとも5つの異なる取り付け領域が設けられる。少なくとも7つ、または7つの取り付け領域が使用されてもよい。取り付け領域のうちの少なくとも1つは、骨の側面に接触することができ、取り付け領域のうちの少なくとも1つは、骨の端部に接触することができる。
【0035】
本発明のさらなる態様によると、患者の関節に対して整形外科処置を実行し、関節に軟組織平衡化をもたらすための方法を提供する。この方法は、複数の取り付け領域を含む本体を有する装置を提供することであって、複数の取り付け領域は、患者の関節の骨に対する特定の好一対となり、独自の位置でその骨に取り付けられるように構成されている、装置を提供することと、複数の取り付け領域を骨表面と係合させることにより骨に装置を取り付けることと、装置の切断ガイド位置を変えるように器具の調節機構を操作することと、を含むことができる。
【0036】
切断ガイドの位置は、取り付け領域により本体が骨に取り付けられている間に変えられてよい。
【0037】
本発明のさらなる態様によると、装置を製造する方法が提供され、この方法は、患者の関節の骨の形状を特定するデータを患者から取り込むことと、取り込んだデータを使用して、本発明の第1の態様による装置の少なくとも取り付け領域を製造することと、を含む。好ましくは、データは、画像化技術、例えばCTスキャン、を使用して取り込まれる。
【0038】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を、ほんの一例として、これから説明する。
【0039】
異なる図面における同様のアイテムは、別段指摘しない限り、共通の参照符号を共有している。
【0040】
図1は、近位脛骨もしくは遠位大腿骨102上に据え付けられた、本発明による外科器具100の第1の実施形態を貫通した概略的断面図を示す。図1では、断面は、冠状面において示されている。器具100は、主要本体部分104と、いくつかの取り付け領域106、108、110と、を有しており、これらの取り付け領域により、器具は、脛骨の近位部分または遠位大腿骨102に係合する。整列したスロット112、114が、本体104により支持されており、骨102を切除するために使用中の鋸刃を受容する第1の切断ガイドを提供する。インプラントのために骨を準備する際に必要に応じて、大腿骨もしくは脛骨に他の切り口を作るための他のスロットも本体に設けられるが、明瞭化のため図1には示されていない。器具100はまた、第1群の4つの穴116と、第2群の4つの穴118と、を含み、これらの穴は、使用中に、図1に示されるような骨ピン120、122を受容することができる。
【0041】
例えばCTスキャンを実行することによって、患者の脛骨の近位部分または遠位大腿骨の幾何学的外形を定めるデータが手術前に収集される。そのデータは、次に、例えば高速基本形作成技術を用いた、器具100の製造に使用され、器具の取り付け領域が、独自の方法で、脛骨の近位部分または大腿骨の遠位部分の表面に適合するように構成される。
【0042】
したがって、例えば、器具は、ただ1つの独自位置で患者の脛骨に取り付けられることができる。ゆえに、使用中、器具は、患者の脛骨上の適切な位置に自動的にナビゲートされる。これは、器具が患者の脛骨に確実に取り付けられうる位置が他にないためである。いったん取り付けられると、スロット112および114は、平面を定める切断ガイドを提供し、この平面に沿って、脛骨は、鋸などの適切な切断器具もしくは装置を使用して切除されることができる。本発明は、患者の膝関節の軟組織平衡化をもたらすために、その平面が必要に応じて調節されることを可能にする。
【0043】
実施形態のそれぞれにおいて、骨表面と、患者の骨に接触していない器具の部分との間の間隙を設計して、骨表面からの隙間を十分にもたらし、+/−3mmの前後または近位‐遠位の移動、ならびに+/−3°の内反‐外反および屈曲‐伸張および内側‐外側の回転を可能にする。器具形状のこの設計は、1mmと1°またはその区分(divisions)刻みで、許容可能範囲の角度および位置のグリッド検索を使用することにより達成されうる。この例では、3124個のグリッド点に相当する5*5*5*5*5を与える。各グリッド点について、潜在的な内側の器具表面に対する骨のCTスキャン操作の構造上の立体幾何学が行われる。これにより、あらゆる所望のオフセットについて、いかなる骨もはっきりさせる(clear)であろう器具の内側表面が設計および製造されうる。独自の取り付け領域は、次に、それらの取り付け領域がゼロオフセットの0,0,0,0,0位置のためにくるべき場所に置かれる。
【0044】
図1に示されるように、器具100は、複数群の穴1116および118を含む調節機構を含み、この調節機構により、スロット112および114により定められる切断ガイドの位置が調節されうる。器具がまず脛骨に取り付けられると、ピン120、122が穴116、118を通って脛骨内へ導入されることができる。軟組織平衡化を改善するために切り口の位置を並進させることが必要であると決定された場合、器具は、大腿骨から取り外されて、その後、複数群の穴116、118のうちの別の穴において係合されたピン120、122で再び取り付けられてよい。このようにするために、器具の1つまたは複数の部分を分離することが必要となりうる。器具は、例えば破断線または類似のものを導入することによって、容易に破断されるように加工された部分を含んでよい。
【0045】
ピンの使用により、前後および/または近位‐遠位方向において切り口のすべてを再び位置付けることができる。複数組の穴116、118は、予め選択された分離部、例えば最大3mmの転置をもたらす1mmの間隔を備えている。
【0046】
取り付けピンは、まず、ゼロオフセット位置で器具と共に骨に挿入される。調節が必要な場合、器具は骨から取り外され、位置および角度の必要な偏向を与える穴を通って延びるピンで置き直される。これらの穴はいずれも、以下に述べるように取り付け領域の任意の変化を伴うものである。最初の適切なピン穴の識別を容易にするために、調節にのみ必要とされるピン穴が最初にシールされてよい。
【0047】
例えば、切り口の前後位置における変動に適応するために、外科医は、器具の位置が並進されうるように、骨上の取り付け領域を破断する。例えば、テンプレートがより前方に動かされるべき場合は、後方側の接触点が破断され、内側への移動を可能にする整列穴が使用されてよい。取り付け領域は、大腿骨の軸の周りでの回転を可能にするように、または、取り付け領域が特定の角度で進められて(tracked)近位‐遠位方向の移動を可能にすることができるように、選択される。
【0048】
この解決法は、鋸切断(sawing)からの力の大部分が、挿入された整列ピン120、122を通じて鋸から骨に伝達されるので、特に有用である。
【0049】
したがって、図1に示す実施形態により、インプラント位置および向きの、硬組織に基づいた事前設計において、屈曲および伸張時に平衡が保たれていない関節は、解放されるべき靭帯組織の量を減らしうるインプラントを再び位置付けることにより平衡を保たれることができる。
【0050】
器具100は、生体適合性のナイロン材料など、あらゆる適切な材料から作製されてよい。
【0051】
固定ピンおよびネジが、骨上の、患者特有の取り付け接触領域を通って延びることができ、これにより、骨と接触していない器具の領域を通ってピンが延びた場合に生じる応力と比較して、応力が減少する。
【0052】
図2A〜図2Eは、大腿骨102の遠位端部と共に使用されている、本発明の第1の実施形態に対応する器具100’のさらなる改造型の斜視図を示す。器具100’は、4つのスロット123、124、125、126を含む主要本体104’を有し、これらのスロットは、大腿骨102の端部切り口、前方切り口、および後方の顆の切り口をそれぞれ作るための切断ガイドを提供する。器具100’は、7つの部材、例えば127を有し、これらの部材はそれぞれが自由端を有しており、複数の取り付け領域を定める。これらの部材は、例えば、部材を分離することによって、または、押しばめ、圧力ばめもしくは同様のメカニズムを用いて取り付けられることによって、本体に取り外し可能に取り付けられる。第1のアーム128が本体の第1の側面から延び、第2のアーム129が本体の第2の側面から延びている。各アーム128、129の自由端の、内側を向いた表面の一部が、さらなる取り付け領域を定めている。各アーム128、129は、薄い部分を含むことによって、本体に隣接して分離するように加工されている。
【0053】
角錐型またはテーパー状に成形された一対の部材810、812が、本体の、骨に向いた内側表面から延びている。各部材は、実質的に平坦な面を骨表面に与えており、器具の本体に向かってテーパー状になっている。この器具の本体には、それらの部材が、器具表面の浅い溝もしくは凹部814において取り付けられる。部材810、812は、切断ブロック100’が前方方向に並進された場合に適切な遠位切除を維持するのに役立つ。切断ブロックは、角錐部材の端面が遠位大腿骨と接触する位置からの遠位切除の量を定めるであろう。大腿骨の端部は本質的に球形であり、また点接触が用いられたため、ブロックが前方方向に並進された場合に、遠位切除レベルが変わるであろう。平坦な面の端面が、各顆の最遠位部分を持ち上げ、最遠位部分に係合するように構成および位置付けされた状態で、大腿骨の端部と器具本体との間の間隙にそれらの部材を有することによって、切断ブロックがその他のアタッチメントを折り取る(snapping off)ことで前方方向に並進された場合に、切断ブロックは、依然として大腿骨の再遠位部分を持ち上げ、同じ遠位切り口を保持する。換言すると、前後の切り口のみが調節されて、屈曲間隙の平衡を保つ。部材810、812の端部表面(ends surfaces)を大腿骨の表面形状に適合させることは有効に作用しない。というのは、切断ブロックが前方に動かされた際に、部材の端面および顆表面がぶつかるためである。部材810、812は、切断ブロックの、骨に向いた内側表面から盛り上がっており、遠位切除部は、部材810、812を折り取ることにより、必要な場合に調節されうる。
【0054】
不図示の別の実施形態では、各部材810、812は、同じ概ね三角形状の、離間した複数の平行リブの形で設けられており、リブの自由端は協働して、顆に係合するための、概ね平坦な端面を定める。
【0055】
使用中、器具100’は、図2Aに示されるように、骨102の自由端に提供され、その後、図2Bに示されるように、骨の上に据えられ、取り付け表面が患者の骨上の独自の位置を定め、その位置で、器具102’が取り付けられうる。骨ピン120、122はその後、骨に器具を固定して器具の初期位置を決定するように、2群のピン穴116、118のうちの1つを通って導入される。器具は、次に、図2Cに示されるように骨から取り外されてよく、その後、図2Dに示されるように、取り付け表面を有する骨係合部材127が本体から外されることができ、サイドアーム128、129が、本体から引き離されてよい。器具100’は、その後、図2Eに示されるように、本体に再び取り付けられてよいが、切断ガイド123、124、125、126は、器具100’の最初の位置付けと比べて切り口の位置を変えるように、骨ピン120、122を、2群のピン穴116、118のうちの異なる穴と係合させることによって、初期位置に対して異なる位置にくる。
【0056】
図3は、大腿骨102の遠位端部と共に、使用されている本発明の第1の実施形態に対応する器具100”のさらなる改造型の斜視図を示している。器具100”は、第1のスロット112”および第2のスロット114”を支持する主要本体104”を有し、これらのスロットは、前方および後方の切り口を作るための切断ガイドを提供する。一対の脚部材、例えば脚部402、404が、本体104”の前方側面および後方側面から延びる(しかし、第2対の脚部406のうちの1つしか図3では見ることができない)。各脚部の自由端に向かって、取り付け領域が、材料パッド(pad of material)408、410、412の、内側に向いた表面によって設けられている。第3の切断ガイド412が、3つの対414、416、418の離間したプレートにより定められたスロットであって、それらのプレートにわたって延びる、スロットによって設けられており、プレート間の間隔がそのスロットを定めている。これらの対のプレートは、脚部402、404に取り付けられ、脚部402、404により、かつ脚部402、404間で支持されている。第1群の9つの孔116”、および第2群の9つの孔118”が、使用中に骨ピン120、122を受容するために、本体に設けられている。第3群の3つの孔420、および第4群の3つの孔422が、脚部の足部分において、脚部の自由端に向けて設けられている。対応する位置合わせ孔も、足部の後ろに位置する材料パッド408、410に設けられており、このため、骨ピンは、孔およびパッドを通過して骨102”の中に入ることができる。前記のように、骨取り付け領域と同じ位置に取り付け機構を設けることは、切断ガイドとして器具を使用する間の応力を減少させるのに役立つ。
【0057】
器具100”の使用は前記のものと類似しており、脚部は、器具の最初の取り付けと再取り付けとの間で、破断されるか、主要本体104から外されるかまたは別様に取り外されて、後方‐前方または内側/外側回転を可能にする。他の実施形態では、脚部は除去されず、接触パッド408、410、412は、ブロックを調節するように変形可能または取り外し可能である。別の実施形態では、脚部のうちの1つ以上が、切断ブロックの位置を調節するために骨から離れて曲げられることができる。第1群の穴116”の第1小群、および第2群の穴118”の第1小群により、前後方向に器具の位置を調節することができる。第1群の穴116”の第2小群、および第2群の穴118”の第2小群により、大腿骨の内側‐外側回転を調節することができる。このタイプの回転が必要な場合、新しいピンを中央の回転穴に置き、適切な回転ピン穴を用いて切断ガイドの位置を変える。穴の最上列は、様々な前後位置に対して、負の回転角度を与え、穴の中間列は、純然たる(pure)前後の転置をもたらし、穴の最下列は、正の回転角度と共に前後の転置をもたらす。穴のうちのいくつかは、双方向における器具の位置の調節を可能にする。したがって、いずれかの方向または双方向における器具位置の調節が可能である。穴が斜めにオフセットすることにより、穴を重ねることなく、6mmのピンで6mm未満の調節(例えば、典型的には2mmの調節)をすることができる。複数対の穴は、スロットに概ね平行に位置付けられる。すなわち、第1群116”の1つの穴と第2群118”の、対応する穴との間の線が、スロット114”に平行である。ブロックを置き直すことにより、前後位置だけでなく、回転を調節することができるように、より複雑な穴のパターンが、円弧上に位置付けられた穴と共に用いられうるので、ピンは、中間列の穴、およびもう一方の側の最上列または最下列の穴を通って延びる。
【0058】
第3群の穴420、および第4群の穴422により、近位‐遠位方向における器具位置、および遠位切り口の内反‐外反角度を調節することができる。第3および第4群の穴は、概ね三角形のパターンに配列され、これらの穴は、近位‐遠位方向で互いにより密接して設置されることができ、あるサイズ、例えば直径3mmの骨ピンが、穴を左右に転置させることによって、より小さな、例えば2mm刻みの調節をもたらすことができる。
【0059】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す第2の器具130を貫通した断面図を示す。器具130は器具100と同様である。しかしながら、器具130は、異なる調節機構を含み、この調節機構により、スロット112、114により定められる切断ガイドの位置が調節されうる。器具130は、第1のしわゾーン132、第2のしわゾーン134、および第3のしわゾーン136を含み、これらのしわゾーンによって、器具の形状が変形されうる。しわゾーン132、134、136は、異なる材料で作られた領域、または、特に加工された弱さを備えた領域など、あらゆる適切な工学的構築物により設けられてよい。例えば、しわゾーンは、ウェーハタイプの構造物(wafer type structure)により設けられてよい。詰め木および楔形部が、しわになっていないしわゾーンに挿入されて、しわゾーンを圧縮する力が器具に及ぼされたときに、適切なゾーンのみがしわになることを確実にすることができる。
【0060】
使用中、器具130が脛骨102の遠位端部に取り付けられた後で、軟組織平衡化をもたらすために切り口の位置を変えるべきであると測定値が示した場合、外科医は器具130を操作してその形状を変形させ、それにより、器具130がまだ大腿骨に取り付けられている間にスロット112、114の位置および向きを変えることができる。したがって、患者の骨の形状に合わせて独自に構成された複数の取り付け点は、器具が患者の骨上の適切な位置まで確実にナビゲートされることと、1つまたは複数の切り口の位置または角度を調節して軟組織平衡化に適切な1つまたは複数の切り口を作ることができる機構をしわゾーンが提供することと、を確実にする。
【0061】
しわゾーンが取り付けピンに対して前後方向にある状態で、切り口を前後方向または内側‐外側に動かすことができる。楔形部は、ピンが動くことでできた空間を埋めるのに用いられてよい。例えば脛骨上の、単一の平坦な切り口については、切り口より上の平坦なしわゾーンが、近位側および角度の変動をもたらしうる。
【0062】
図5は、図4に示したものと同様の、本発明のさらなる実施形態130’を示す。この多切断器具(multi-cut instrument)130’では、しわゾーン142、144、146が、取り付けピンの周りの溝の形をしており、切断ブロック全体を骨から離すか、または骨に向かって動かす。例えば、図5に示されるように、第1のしわゾーン146を圧縮すると、切り口が、図5の関連する矢印で示す方向で、さらに骨の中に入るであろう。これに対して、第2対のしわゾーン142、144を圧縮すると、切り口が、図5の関連する矢印で示す方向で、骨の外にさらに移されるであろう。
【0063】
しわゾーンにより、すべての切り口の位置および角度を調節することができる。
【0064】
加えて、器具は小さなスペーサ138、140を含んでよく、これらのスペーサは、器具の取り付け領域の内側における様々な点に取り付けられて、位置または角度のさらなる変化をもたらすことができる。器具における小さな穴(不図示)または取り付け点が設けられ、押しばめメカニズムを用いて、この穴の中に、これらのスペーサを据えることができる。
【0065】
図6および図7は、本発明の第2の実施形態による器具130”のさらなる改造型の斜視図を示し、器具130”は、しわゾーンを用いている。器具は、図2A〜図2Eに示したものと概ね同様であるが、分離部分または取り外し可能な部分を有するのではなく、しわゾーンを用いて、切断ガイドの位置を調節することができる。器具の本体438の、骨に向いた内側表面436から延びる部材のうちの2つ432、434は、骨に係合する取り付け領域表面と、部材432、434が内側表面436に取り付けられる点との間で、部材432、434を貫通する概ね三角形の空隙を有している。三角形の楔形部440の形をした、取り外し可能な支持部材は、その空隙に置かれ、また、その空隙から取り外し可能であり、図6に示されていて、これらの部材は、患者の骨への器具130”の最初の取り付けのために正確に位置付けられる。支持部材は、個別に取り外し可能であり、そのため、部材の変形の量および/または方向は、支持部材のうちのどれが取り外されるかに応じて、器具の使用者が選択できるものである。
【0066】
患者の骨に取り付けられた後、楔形部のうちのいくつかまたはすべてが空隙から取り外され、器具は、部材432、434が変形し、それにより、切断ガイドが骨に対して異なる位置をとることができるように、操縦されてよい。図7は、図6に示した器具と同様の器具を示しており、この器具では、楔形部が除去されており、また、部材のうちのさらなる2つ442、444が、しわゾーンを定める空隙を備えている。しわゾーンにより部材は変形されうる。部材432、434、442および444をしわにすると、近位‐遠位方向における変化を生じる。垂直方向にしわゾーンを設けることは、前後位置を調節するのに用いられてよい。
【0067】
器具は、変形可能な部材が並外れて(out of the way)変形した状態で、前記の方法と同様に調節されることができる。代わりに、器具は、骨に器具をピンで留める前に調節されてもよい。この方法は、次に、器具を骨上で、その初期位置に置き、楔形部を取り外し、部材を変形させることにより必要に応じて器具の位置を調節し、切断ブロックを、調節された位置でピン留めし、その後、調節された切り口を作るべきものである。別の実施形態では、変形可能な部材は、器具の前方フランジの下でも用いられる。
【0068】
図8は、しわゾーンを含む、本発明の第2の実施形態による器具130’’’のさらなる改造型を示す。器具は、図3に示す器具100”と概して同様である。しかしながら、各足部450、452は、単一の孔454、456を含み、この孔により、器具は、使用中、骨102にピン留めされうる。この孔より上の足部の一部が、その内部を通る複数の三角形孔を有し、しわゾーン458、460を提供し、これらのしわゾーンにより、上下方向における器具の位置が調節されうる。各しわゾーンの上には、孔462、464がねじ山付き留め具(不図示)を受容するために設けられ、ねじ山付き留め具はしわゾーンより下でねじ山付き孔に受容されるねじ山付き留め具を操作することにより、しわゾーンの上部および下部が、互いに押されて、支持構造体を押しつぶし、また、好ましい変形度でしわゾーンを保持する。これは、しわゾーン材料が弾性であり、ゆえにねじ山付き留め具が、適宜位置を変える器具でしわゾーンを押しつぶすかまたは解放するように操作されうる場合に特に有用である場合がある。
【0069】
図9は、様々な第2の実施形態と共に使用されうる、取り外し可能な支持部分を示す。支持部分470は、本体472を有し、複数の楔形部474、476、478(例示した実施形態では3つ)がその側面から延びており、しわゾーン458、460の三角孔に受容可能となるようにサイズ決めされ成形されている。楔形部は、器具130’’’が最初に骨上に据えられたときにしわゾーンが潰れるのを防ぎ、その後、しわゾーンを変形することにより器具の位置を変えるのが望ましい場合に取り外されるように、しわゾーンの孔に押し込まれることができる。しわゾーンの孔が少なくとも部分的に再形成され(reformed)、器具がその位置を変えてその初期位置に少なくとも部分的に戻るように楔形部を孔に押し込むことによって、楔形部は、しわゾーンが部分的に潰れた場合にも使用されうる。
【0070】
図5Aは、さらなるしわゾーン機構480を示しており、このしわゾーン機構480は、図5に示す器具130’など、本発明の様々な実施形態に使用されてよい。しわゾーン機構480は、図5に示すしわゾーンに取って代わるように用いられうる。取り付け領域484を含む器具482の一部が、変形されうる材料を含むチャンバ486を有する。器具の別の一部の足部分488が、足部分の上490および下492の変形可能な材料の部分と共にチャンバにスライド受容される。器具の位置は、材料の下方部分492を圧縮し変形させることにより、骨に向かって調節されることができ、あるいは、器具の位置は、材料の上方部分490を圧縮し変形させることにより骨から離れるように調節されることができる。
【0071】
図10および図11は、冠状面および矢状面それぞれにおいて本発明の第3の実施形態150を貫通した概略的断面図を示す。器具150の第3の実施形態は、主要本体部分152を含み、主要本体部分152は、第1のスロット154、第2のスロット156および第3のスロット158を支持し、これらのスロットは、使用中、鋸などの切断器具を受容する3つの切断ガイドを提供する。他の実施形態では、さらなる切断ガイド(例えば155および157)を設けてもよい。器具150は、患者の骨の対応する領域の表面形状に適合する表面形状を有する第1の取り付け領域164を有する第1の部材160を含む。第2の部材162もまた、患者の骨168の表面の対応する領域の形状に適合する表面形状を有する取り付け領域166を有する。同じ平面、または取り付け領域162、164の面外(out of the plane)においてさらなる取り付け領域を与えるさらなる取り付け部材を設けることもできる。図10に示されるように、骨160は外側矢状面(lateral plane)で示される遠位大腿骨である。しかしながら、同じ原理が脛骨にも当てはまりうる。
【0072】
第1の取り付け部材160は、第1のネジ機構170を含む。第2の取り付け部材162は第2のネジ機構172を含む。ネジ機構172または170は、図11に示す両方向矢印により示されるように、近位‐遠位方向において骨168に対して切断ガイド158を並進させるように操作されることができる。
【0073】
器具150は、長い穴の形をしたさらなる調節機構174を含み、この調節機構により、ネジ機構170は、図11の関連する両方向矢印で示されるように前後方向において本体152に対して動かされうる。同様の第2の調節機構(不図示)が第2のネジ機構172に与えられる。調節機構174は、骨168に対して前方または後方に切断ガイドの位置を動かすために、主要本体152を前後方向に並進させるように操作可能である。ネジ自体は、ネジの上部または端部が身体組織と干渉するのを防ぐために、ブロックの内側にねじ山付きブシュを備えた係留面タイプ(captive-pane type)または類似のものであってよい。切断面の内反‐外反の変化は、ネジ170および172の代替的な設定によって達成されることもできる。
【0074】
したがって、取り付け領域162、164の形状は患者の骨に固有のものであるので、器具が最初に骨上に置かれうる、患者の骨上の独自の位置がある。いったん器具が所定の場所にピン留めされると、または、ピン留めの前に、切断ガイド154、156、158の位置は、前方、後方および遠位の切り口の位置を調節するために本体152を動かすようにネジ機構を用いることによって調節されることができる。また、取り付けは、前面に対して中心の位置において、骨の前側で、取り付け部材162、160を通過するピンと、表面適合領域と、によりもたらされる。理解されるであろうが、この実施形態では、ネジ機構は調節機構を与える。色または他の印もしくはマークをネジ上に設けて、予め決定した量だけ、位置を変えるかまたは調節することができる。用いられるべき量は、ルックアップテーブルで、または軟組織平衡化測定値から得られたコンピュータプログラムから、特定されることができる。
【0075】
図12は、本発明の第3の実施形態による器具150’のさらなる改造型を示す。器具150’の特徴部のうちのいくつかは、図3および図8に示す器具の特徴部と同様であり、そのため、再び詳細に説明はしない。しかしながら、器具の位置を調節する機構は異なっている。患者別の足部500、502が器具本体の各端部に設けられており、これらの足部は、取り付け領域504を与える表面を含む。患者別の各足部は、調節機構により主要本体506に取り付けられ、調節機構は、前後方向508および/または上下もしくは近位‐遠位方向510において独立して各足部に対して本体506を動かす。
【0076】
各調節機構は、ねじ山付きプレート516、518を通過する捕捉ネジ512、514を用いており、これらのネジは、プレート受容構成で(in a plate receiving formation)前後方向508にスライドすることができる。捕捉プレート520が各ブロックに設けられて、そのネジの端部に対して固定位置でブロック500、502を保持する。本体の下面における特徴部が、ブロック上の結合特徴部と相互作用して、本体506に対するブロック500、502の回転を防ぐ。ネジ512、514は、回転して、本体506を骨に対して近位-遠位方向に動かし、ゆえに、器具150’が骨102の上に据えられた後で、切断ガイドの位置を調節することができる。
【0077】
図13は、器具の第4の実施形態180を貫通した概略的断面図を示す。第4の実施形態は、第1および第2の実施形態と同様である。しかしながら、調節機構は、別個のスペーサ182、184、186の形で設けられており、これらのスペーサは、スロット112および114により定められた切断ガイドの位置を骨102に対して調節するように、取り付け領域に選択的に取り付けられることができる。これらの別個の部品は、押しばめまたはスナップばめメカニズムを用いて取り付けられてよく、プラスチック材料で作られていてよい。スペーサは、色分けされて、特定のスペーサを用いた際に切断ガイドの位置の変化が何をもたらしたのかを示すことができる。スペーサは、表面適合領域の後ろ、またはそれらの領域の上部に合うように作られてよく、あるいは、異なる実施形態では、表面適合領域のパッチ(surface matching areas patch)に完全に取って代わることができる。
【0078】
図14Aは、患者別のスペーサを用いる、本発明の第4の実施形態による器具180’のさらなる改造型の一部の斜視図を示す。器具180’は、図3、図8および図12に示した器具と概ね同様である。取り付け領域をもたらすパッドを有するのではなく、スペーサ、および患者別の接触領域を用いて、器具の足部分420を患者の骨102に据える。例えば、図14Bは、患者別の構成要素530を示しており、その骨に面する表面532が、患者の骨の形状に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。その構成要素の上方表面が、概ねトレー状の形態を有し、トレーの端部が、図14Aに最も良く示されるように、器具の足部420に対する押しばめ取り付けをもたらすようにサイズ決めされ構成されている。孔534がトレーの本体に設けられており、器具を骨102に取り付けるように足部を通過する骨ピンを受容するための器具の足部の孔536と位置合わせされる。
【0079】
図14Cは、さらなる押しばめ構成要素540を示し、これも骨に面する表面542を有し、この表面542は、患者の骨に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。この構成要素540は2つの孔544、546を有し、この構成要素は、2つの異なる別個の位置で足部420に取り付けられうると共に、骨ピンが足部および構成要素を通り抜けることを可能にする。したがって、この構成要素は、近位‐遠位方向に器具が動くことを可能にする。
【0080】
図14Dは、さらなる押しばめ構成要素550を示し、これも、骨に向いた表面552を有し、この表面552は、患者の骨の形状に適合するように成形され、取り付け領域を提供する。この構成要素550は、複数のくびれを備えて成形された単一の伸張孔554を有しており、この構成要素は、3つの異なる別個の位置で足部420に取り付けられうると共に、骨ピンを足部および構成要素に通すことができる。したがって、この構成要素は、近位‐遠位方向における、しかし固定角での、器具の不連続の直線的な動きを可能にする。
【0081】
図14Eはスペーサ構成要素560を示し、スペーサ構成要素560も、概ねトレー状の形状を有し、図14B〜図14Dに示された患者の形状別の構成要素と積み重ね配列を形成するようにサイズ決めされ構成されている。伸張孔562がトレーの本体に設けられて、使用中に、骨ピンを積み重ね配列の中に通す。このスペーサにより、器具の、角度をつけた転置および直線的な転置が可能となる。図14Fはスペーサ構成要素570を示し、スペーサ構成要素570も、概ねトレー状の形状を有し、図14B〜図14Dに示された患者の形状別の構成要素と積み重ね配列を形成するようにサイズ決めされ構成されている。2つのくびれを有する伸張孔572がトレーの本体に設けられて、使用中に、骨ピンを、3つの別個の位置で、積み重ね配列の中に通す。このスペーサにより、器具の直線的な転置のみが可能となる。
【0082】
図14Gは、スペーサ、例えばスペーサ560と、患者別の形状の構成要素、例えば構成要素550との積み重ね配列580を示している。スペーサは、スペーサによる、足部420への、配列の押しばめ取り付けをもたらすように寸法決めされ構成されている。患者別の形状の構成要素は、その後、スペーサに押しばめ取り付けされる。
【0083】
使用中、器具の初期位置は、少なくとも1つのスペーサが骨の両側にある状態で、計画される。したがって、器具の位置は、器具を前後方向に動かすように異なる厚みのスペーサを用いることにより調節されうる。加えて、または代替的に、スペーサは、骨の片側からもう一方の側に動かされてよく、これによっても、器具の位置が前後方向に調節される。
【0084】
図示のとおり、スペーサは一定の厚みを有する。しかしながら、様々なまたは先細りする厚みを有するスペーサを用いることにより、器具の角度位置を変えることも可能である。
【0085】
図15は、器具の第5の実施形態190を貫通した概略的断面図を示す。第5の実施形態は、第1、第2、および第3の実施形態と同様である。しかしながら、第5の実施形態では、調節機構は、それぞれがねじ山付き穴に受容される3つのネジ190、194、196により提供される。各ネジの足部は、外側表面が取り付け領域を与える部材を支持し、取り付け領域の形状は、患者の骨102の対応する領域の表面形状にほぼ適合している。したがって、ネジ198、200、202の足部上の患者別の取り付け領域により、器具は、患者の骨上の単一の独自位置にのみ取り付けられることができ、一方、ネジ192、194、196を操作すると、スロット112、114により設けられた切断ガイドが、骨102に対して動かされる。チャネルがアタッチメント190の主要本体に設けられ、接触足部は、チャネルの中をスライドし、局所的な骨表面および器具の本体に対する、足部の適切な向きを保つことができる。ネジおよびチャネルの角度および位置は、軟組織に依存する角度および位置の変化の予想される範囲について、患者別の部分に対する接触面積を最大にするように最適化される。取り付けピンは、取り付け領域に適合する表面を貫通して設置されて、取り付けの安定性を改善することができる。
【0086】
図16は、大腿骨211の遠位端部と共に使用することを目的とした本発明による外科器具の第6の実施形態210の概略的な断面側面図を示す。図17は、第6の実施形態210の下側からの斜視図を示す。器具210は、主要本体212を含む。本体212は、第1のスロット214、第2のスロット216、第3のスロット218、第4のスロット220、および第5のスロット221を支持する。第1のスロット214は、前方大腿骨切り口を作るための鋸刃を受容する切断ガイドを提供する。第2のスロット216および第3のスロット218は、それぞれ、第1および第2の大腿骨面切り口(femoral chamfer cuts)を作るために鋸を受容する切断ガイドを提供する。第4のスロット220は、大腿骨の後方切り口を作るさらなる切断ガイドを提供する。第5のスロット221は、大腿骨の遠位切り口を作るさらなる切断ガイドを提供する。
【0087】
本体212は、2つのねじ山付き穴を含み、これらのねじ山付き穴はそれぞれ、ねじ山付き部材222を内部に受容することができる。部材222の後ろで平行面にある他のねじ山付き穴も設けることができる。本体212の第1の端部は、自由端に向かって第1のネジ山付き穴226および第2のネジ山付き穴228を有する第1の湾曲エンドプレート224を含む。第2の湾曲プレート230が本体212の第2の端部に設けられており、このプレート230は、その自由端に向けられた、第1組のオフセットしたねじ山付き穴232および第2組のオフセットしたねじ山付き穴を含む。穴はそれぞれ、ねじ山付き部材222と同様のねじ山付き部材(不図示)を受容する。したがって、実際には、6つのねじ山付き部材が設けられ、その自由端は、6つの取り付け領域を提供し、これらの取り付け領域により、器具210は、大腿骨の遠位端部、または他の実施形態では他の身体部に、取り付けられうる。ネジ222、236のうちの少なくとも1つのネジの端部は、骨の表面形状に適合するように成形されている。
【0088】
端部の骨接触領域は、器具に対してキーで締められ(keyed)、そのため、これらの領域は、骨接触領域が上に据えられるネジが回転されたときには回転されない。骨表面に適合する表面が先端についていないネジ部材には、尖頭(point)が付いており、その位置は、医用画像により表現される表面に対して既知である。記載される実施形態では、使用されるネジの数は6つであるが、変更する寸法がより小さい場合には、使用するネジはさらに少なくてもよい。単に位置調節のために、ネジの数は2つまで減らされて、例えば前後および近位‐遠位の変更を行うことができる。切り口の角度が変更される場合、表面適合領域によりネジに対する少量の剪断力が存在するであろう。考慮に入れられる小さな角度変化(<3°)については、表面適合には影響を与えず、機構の部分同士の界面に吸収されるであろう。
【0089】
第2のエンドプレート230は、その下方端部に向かってスロット238を含み、このスロットは、さらなる切断ガイドを提供する。本体部分212には対応するスロットがある。第2のエンドプレート230は、ピボット機構(不図示)により主要本体212に取り付けられる。一対のねじ山付き部材(そのうちの部材242のみが見える)を操作して、エンドプレート230を旋回させ、それにより、本体212に対するスロット238の角度を変えることができる。使用中、スロット238は切断ガイドを提供し、この切断ガイドにより、器具210が使用中に大腿骨に取り付けられたときに鋸を使用して大腿骨の遠位切り口が作られうる。
【0090】
概して、ねじ山付き部材は、大腿骨の遠位端部に対する切断ガイド214、216、218、220、221の位置を変えるように調節されてよく、大腿骨切り口の位置は、軟組織平衡化をもたらすように必要に応じて調節されうる。
【0091】
調節量は、ネジおよびガイド上にマークされてよく、ルックアップテーブルから、またはコンピューター制御された組織平衡化測定値から、手動で決定されることができる。
【0092】
図18に示されるように、器具の別の実施形態では、調節機能は、単に、多少骨のたくわえ(more or less bone stock)を除去するように同じ切り口に対して本体に複数のスロットを与えることにより達成される。破断バリアが、計画されていなかったスロットの上に設けられてよく、外科医は、それらを使用するために慎重に行動を起こさなければならない。
【0093】
図18は、3つのスロット602、604、606を含み、同じ切り口を作るための切断ガイドを提供する、器具600の一部を示す。しかしながら、単一または複数の(例示されるような)押しばめインサート608、610が、通常は使用されないスロットをブロックするのに用いられ、これによって、単一のスロットのみが、切り口を作るのに最初に利用可能となる。切り口を作るのに使用されるべきスロットの位置は、その後、スロットのうちの別のものからインサートを取り外すことにより調節されてよく、好適な位置に切り口を作るために、そのスロットを次に使用することができる。これらのインサートは、スロット転置の方向を容易に識別するために色分けされていてよい。
【0094】
器具の別の実施形態では、骨上の点/特徴部/表面が、除去されている表面の外側にくるように選択される。その後、器具は、初期の切り口が作られた後でさえ、独自に再配置可能である。このことは、きちんと調整された切除アプローチ(measured resection approach)を用い、かつすべての切り口を作り、後で確認することを望む、外科医にとっては、特に有用である。これにより、外科医は、自分の切断ガイドを装備しなおし、必要とみなすあらゆる調節を行うことが可能になる。
【0095】
本発明は、あらゆる骨または硬い身体物質の切除、および平坦切断インプラント型に適合されうる。例えば、脛骨については、単一の切り口が使用されていることに起因して、複雑さが減少されうる。本発明は、あらゆるタイプのインプラントについて、丸い表面を準備するのにも適用可能であってよく、この場合、バードリル(burr)を用いて、その物質を除去することができる。
【0096】
図19は、調節可能な脛骨切断器具を提供する、本発明のさらなる実施形態300の、矢状面における概略的な側面図を示している。器具306は、切断スロット322を備えた主要本体部分308を含み、切断スロット322を通って、鋸刃が誘導されて脛骨切り口を作ることができる。器具306は、患者の脛骨310の対応する領域314の表面形状に適合する表面形状を有する取り付け部分312により、脛骨310表面に取り付けられる。ネジ機構316が操作されて、近位‐遠位方向に切断スロット322の位置を調節することができる。第2のネジ機構318も設けられ、この第2のネジ機構318は、ガイドがその周りで内反‐外反方向に旋回するのを可能にすることにより、切り口の傾斜を変えるように操作されうる。
【0097】
図20は、図16、図17および図19に示す器具と同様の、本発明による器具のさらなる変形体を示す。器具620は、切断ガイドを提供する複数のスロット622、624、626、628、630を有する。器具の主要本体632は、患者の骨形状に適合する表面形態を有する取り付け領域構成要素642により、骨640上に据えられる。構成要素642は、調節ネジ660により本体632に取り付けられるので、器具は、切断中、および器具の位置が調節された後で、安定されることができる。しかしながら、骨および取り付け領域の表面は、角度調節または直線的調節の後には、正確に適合しないであろう。骨表面は、典型的には遠位または近位切り口のために切り取られるので、安定性の調節は、ブロック器具の位置が調節された後には、必ずしも必要ではない。
【0098】
その他の患者別の取り付け領域644は、ピボット機構648により器具のさらなる部品646に取り付けられて、骨640に対して器具がいくらか回転することを可能にする。ピボット機構は2つのネジを含む。ねじ山付きボアが足部構成要素644に設けられ、そのボアの中にネジの自由端652、654が係合する。孔がネジシャンクを受容するために部品646に設けられるが、この孔は、緩い嵌めあい(loose fit)で、いくらかの旋回運動を可能にする。足部構成要素644の端部は、端部停止部を提供して、本体の過度な回転を防ぐ。足部構成要素644の孔を通り抜ける骨ピン650は、足部構成要素644が骨に対して動くのを防ぐ。
【0099】
双方のネジが同じ向きで(in the same sense)操作される場合、器具は単に並進する。しかしながら、1つのネジのみが操作されるか、または2つのネジが反対の向きで(in opposition senses)操作されると、器具の主要本体は、旋回するかまたは傾いて、それにより、器具の位置がいくらか角度調節される。ピボット機構により、±約2°の、ネジ駆動の回転が可能になる。代替的な構成では、単一のネジ、および可撓性ヒンジを用いてピボット機構を提供することができる。2°刻みの間での(between 2°steps)慎重な回転(Measured rotations)は、ネジの慎重な回転(measure turns)により達成されうる。
【0100】
部品646自体はネジのねじ山656に据えられ、主要本体632の残部は、ヘッド658を使用してねじ山656を動かし調節ネジ660を操作することにより、骨に向かって、また骨から離れるように、動かされることができる。
【0101】
図21Aおよび図21Bは、図16、図17、図19および図20に示すものと同様の、本発明の実施形態である、さらなる器具680の斜視図を示す。図21Bは、器具680の骨係合側面からの斜視図を示し、図21Aは、使用中に大腿骨102上に据えられた器具を示す。器具680は、第1の骨係合部分682、および第2の部分684を含み、第2の部分684は、インプラントを受容するために大腿骨を準備する際に通常使用される複数の切り口を作るための切断ガイドを画定する複数のスロットを含む。第1および第2の部分は、それらの部分の間に、器具の本体を含む。
【0102】
骨係合部分は、骨に面する側面を有し、この骨に面する側面は、骨に面する側面を覆って延びる表面670を含み、広がった骨取り付け領域を提供する。この広がった骨取り付け領域の形状は、患者の骨表面の対応する部分における表面の患者固有の形状に適合している。したがって、骨係合部分は、骨に係合する、器具の唯一の部分であり、器具が事前選択された独自位置において骨に据えられることを確実にする。
【0103】
器具の切断ガイド支持部分684は、第1の部分672および第2の部分674を有し、これらの部分はそれぞれ、少なくとも1つのスロットを支持している。部分672は、遠位切り口の作製を誘導するスロット676を有する。部分672は一対のねじ山付きネジ684、686により骨係合部分682に取り付けられる。ねじ山付きネジ684、686は、ネジの操作により第1および第2の部分が骨102に対して遠位‐近位方向に並進し、それによって、遠位切り口の位置を調節することができるように、捕捉される。
【0104】
第2の部分は、5つのスロット690を含み、これらのスロット690は、膝関節形成処置中に大腿骨を準備する際に通常使用される、前方および後方切り口ならびに角をなす切り口の作成を誘導するのに使用されうる。部分674は、さらなる一対のねじ山付きネジ688、690により第1の部分672に取り付けられる。この一対のネジ山付きネジ688、690は、ネジの操作により、第1および第2の部分が骨102に対して前後方向に並進し、それによって、様々な切り口の位置を調節することができるように、捕捉される。
【0105】
図22A、図22Bおよび図22Cは、本発明による器具700のさらなる実施形態の一部の斜視図を示す。器具700は、図3、図8および図12に示す器具と概ね同様である。器具は、異なるタイプの調節機構を有する。この調節機構は、切断ガイドを画定する際に、スロットを備えたインサートまたはアタッチメントの使用を伴う。異なるインサートおよびアタッチメントのスロットは、異なる量だけオフセットされているので、器具が取り付けられる骨に対して切断ガイドの位置を調節することができる。
【0106】
例えば、図22Aは、器具700の主要本体部分701の上面斜視図を示し、孔704を有する大きな矩形凹部702を主要本体に含む。孔704は、本体を貫通しており、使用中に、器具の下の骨へのアクセスを提供する。凹部は、凹部の一部の周辺に延びる肩部706を含み、肩部706は、図22Bに示されるようにインサート710の挿入深さを制御するよう作用する。インサートは金属製ブロックで、そのブロックを貫通するスロット712を含む。凹部およびインサートは、ブロックが押しばめ式に凹部と結合して、器具の主要本体にインサートを確実に取り付けるように、寸法決めされ成形される。インサートは、詰め木として作用して、スロット、ゆえに切断ガイドの位置を制御する。異なる量のスロットオフセットを有し、また、異なる角度でスロットを有する1組のインサートが設けられて、特定のインサートを選択および使用して、その選択されたインサートにより定められるような切り口の位置および/または方向を調節することができる。
【0107】
図22Cに示されるように、複数のインサートまたはアタッチメントが、器具700の一部として設けられうる。例えば、切断ガイドインサートまたはアタッチメント714が設けられてよく、この切断ガイドインサートまたはアタッチメント714は、足部716および718に隣接する構成物と協働して、インサート714を器具700の側面に押しばめ取り付けする。インサート714は、遠位大腿骨切り口を作る際に使用されうる切断ガイドを提供するスロット715を含む。選択されたオフセットスロット位置またはスロット角度の特定のインサートが、作られるべき切り口の位置を調節するために、選択されて器具本体に挿入される。
【0108】
インサートまたは詰め木710、714は、概して、異なる側方および角度オフセットで利用可能となり、軟組織測定後の切り口表面の調節を可能にし、あるいは、他の適切な調節が、手術中または手術前の情報に基づいて行われる。凹部702は、切断表面における予定の変形を可能にするのに十分幅広い。詰め木は、任意の調節計算が行われた後で、主要本体に挿入される。詰め木は再利用可能であり、それらの単純な形態により、容易な滅菌、および患者別の主要本体701の様々な範囲のサイズおよび切断位置にわたる使用が可能となる。凹部706の一端部は、開かれたままにされ、例えば骨が小さい患者のために、スロットより長いインサートを使用することができる。
【0109】
図22D、図22Eおよび図22Fは、切断器具を調節するための、異なるインサートブロックの使用方法をさらに説明する目的で、それらの異なるインサートブロックの例を示している。図22Dは、インサートブロック720を示し、インサートブロック720は、このブロックの長さ方向軸に沿って、この長さ方向軸に平行に延びるスロット孔722を有する。ブロック712の代わりにこのブロックを使用することで、結果として得られる切り口の位置を、前後方向に調節することができる。図22Eに示すインサートブロック724は、スロット孔726を有し、このスロット孔726も、ブロック724の長さ方向軸に沿って、またこの長さ方向軸に平行に延びるが、スロットは、ブロック720に比べて、ブロック724の側面に、より近接している。したがって、第1の向きで、または180°回転した第2の方向で、ブロック720の代わりにこのブロックを使用することで、結果として得られる切り口の位置を前後方向に変えることができる。図22Fは、インサートブロック728を示し、インサートブロック728は、このブロックの長さ方向軸に概ね沿って延びるがブロックの長さ方向軸に平行でないスロット孔730を有する。したがって、結果として得られる切り口の角度位置を調節するためにブロック728を器具に挿入して使用することができる。
【0110】
硬質材料で作られた、2組の色分けしたインサートまたはブロックが設けられる。第1組のブロックは、前方、後方、遠位および近位の切り口を作るのに用いられる。これらの切り口は、それらの回転(内反‐外反)および側方の位置付けの点で異なっていてよい。通常の使用においては、インプラントは、1.5mm刻みで+/−3mmまで側方に動かされてよい。この程度の切り口調節をもたらすために、3つのブロック、すなわち、スロットが中立的に位置付けられた第1のブロック、スロットが1.5mmオフセットした第2のブロック、および、スロットが3mmオフセットした第3のブロック、を使用する。これは、様々な量、例えば、0°、1°、3°または5°、の内反‐外反角度変動を備えたブロックを提供するのにも役立ちうる。したがって、偏揺れおよび縦揺れするスロットを備えたインサートブロックも提供することにより、例えば12個のブロックで、内反‐外反および側方への動きのすべての値をカバーすることが可能である。
【0111】
第2組のブロックは、面切り口(chamfer cuts)を作るのに使用される。インサートブロックを受容するための同様の凹部が面切り口のために使用され、面切り口の双方については、凹部は面角度(chamfer angle)と整合される。第2組におけるインサートブロックは、第1組におけるブロックよりもわずかに長く、器具の本体中へそれほど深く入り込んでいない。これらのインサートブロックは、安定位置で保持されうる。これは、面切り口ならびに前方、後方および遠位の切り口のためのインサートブロックを受容する凹部が、大腿骨において重なり合うためである。ここでも12個のブロックを使用して、(45°での面について)転置の組み合わせすべてをカバーすることができ、面の他の角度については、24個のブロックを使用することができる。
【0112】
図23は、本発明の器具で使用されうるさらなる調節機構750の実施形態を貫通した概略的断面図を示す。調節機構の第1の部分752は、器具の主要本体の一部であり、調節機構の第2の部分754は、器具の取り付け領域(不図示)を含む部材または足部を支持する。部分752は中空部分756を画定し、この中空部分756の中に、部分754が、両方向矢印758で示されるような方向で、スライド係合することができる。ねじ山付きシャフト760は、自由端にヘッド762を有し、静止した第1対の楔形部材764、766と、可動の第2組の楔形部材770を通り抜ける。第2組の楔形部材770は、ねじ山760を回転させることにより、両方向矢印772で示される方向において前後に駆動されうる。楔形部764、766は静止しているので、駆動機構のねじ山760の回転によりそれらの楔形部に向けて駆動されると、楔形部768、770の傾斜端面は、楔形部764、766の傾斜面の上に乗り上げてスライドし、第2の部分754は、中空部分756から出て、かつ中空部分756から離れるように駆動され、それによって、主要本体と取り付け領域との間の分離が増大し、ゆえに、主要本体により支えられる切断ガイドの位置が調節される。
【0113】
この調節機構750を用いることにより、関節容量自体は、任意の調節ネジを収容しなくてよく、器具全体をよりコンパクトにすることができる。ネジ760は、可動部材768、770を前後方向に動かして、楔形部764、766の上/下運動を引き起こし、したがって、取り付け領域も、上下に動かされる。近位/遠位方向における調節にはツールは必要でなく、この機構は、低侵襲性手術(MIS)処置に特に有用である、よりコンパクトな制御をもたらす。器具本体を押す外科医により戻る力が与えられうる。
【0114】
図24Aおよび図24Bは、本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。図24Aは、器具780の後方側面からの斜視図を示し、図24Bは、使用中に、脛骨782に据えられた器具780の前方側面からの斜視図を示している。器具の本体784はスロット786を含み、スロット786は、本体を貫通しており、使用中に脛骨切り口を作るために切断装置を受容する切断ガイドを提供する。2群788、790の3つの孔が、使用中に器具を脛骨782に固定する骨ピン792、794を受容するために本体を貫通している。一対のアーム796、798が主要本体から延び、患者別の形状の第1の部材800、および患者別の形状の第2の部材802を、アームの、骨に面する下面上で支えている。各部材800、802は、図24Bで最もよく分かるように患者の骨と係合するように構成された取り付け表面を提供する。主要本体の、骨に面する側面は、使用中に脛骨782の前方表面上の領域の形状に適合するように構成されたさらなる取り付け表面806を提供する、患者別の形状の第3の部材804を支持する。
【0115】
器具は、前記の同様の実施形態と同様に使用される。予め決められた位置に器具を最初に設置するように、取り付け領域を骨表面と係合させることにより、器具がまず脛骨上に据えられる。次に、骨ピン792、794が穴788、790を通じて導入されて、器具を脛骨に固定する。スロット786により画定された切り口の位置の調節が、何らかの理由で必要となった場合、器具780は骨ピンから取り外され、部材800、802、804が器具から取り外され、その後、器具は、穴788、790のうちの別の穴を用いて骨ピン上の脛骨上で置き直されて、スロットを近位‐遠位方向において上方または下方に動かし、脛骨切り口の高さを調節することができる。
【0116】
概して、図面に示した実施形態は、いくつかの異なる手術ワークフローで用いられうる。前記で簡単に言及したように、外科処置を開始する前に、例えば高速基本形作成技術を用いて、患者別の器具が製造され、このため、器具の取り付け領域は患者別となり、患者の骨に対して器具を独自に取り付けることができる。これは、例えばCTスキャンデータから得られた、患者の骨の幾何学的外形または形状を表す様々なタイプのデータを用いて達成されうる。例えば、第1、第2、第4および第5の実施形態は、患者固有の骨表面に合う独自の凹形状(unique negative shapes)を用いている。これらの形状は、幾何学的外形がアクセス可能である、完全な骨表面、または骨表面の選択された部分を覆うことができる。第2のアプローチは、手術前の計画段階では正確にモデル化できない骨(例えば軟骨)に軟組織が付着した場合に、より適切である。
【0117】
脛骨では、軟組織平衡化に適応するための、切り口に対する最も重要な変更は、脛骨の傾斜を増大または減少させることが可能であること、より遠位または近位の方向に脛骨切り口を動かすことが可能であること、および、内反‐外反角度を調節できること、である。
【0118】
大腿骨では、軟組織平衡化に適応するための、切り口に対する最も重要な変更は、前方または後方の方向に大腿骨切り口を動かせることである。遠位大腿骨切り口をより近位の方向に動かせることも重要である。大腿骨における内反‐外反角度を変えることが可能であることも有用である。内側/外側回転を変えることが可能であることも有益である。
【0119】
第1のワークフローでは、計画した外科処置にしたがって、最初に脛骨切り口を作る。次に、ツールを用いて、または外科医の目視検査および実験によって、屈曲および伸張間隙を改善するために、潜在的な変化に関する決定を行う。次に、器具は、必要に応じて取り付けられ調節されて、結果として得られた切り口は、必要な屈曲および伸張間隙をもたらすであろう。
【0120】
代替的ワークフローでは、計画した処置にしたがって、脛骨および大腿骨の切り口が作られる。トライアルインプラントが適用され、次にスペーサが使用されて、屈曲および伸張間隙を評価することができる。その後、器具は、切断された脛骨および大腿骨に適用され、必要に応じてさらに矯正的な切り口が作られるように調節されて、所望の屈曲および伸張間隙をもたらすことができる。しかしながら、このアプローチは、遠位大腿骨切り口をより近位の方向に単に動かすことにより、大腿骨のために利用可能な矯正をしそこなう(miss the corrections)であろう。しかしながら、脛骨については、あらゆる調節が依然として利用可能である。この場合、標準スペーサ要素(切り口表面に適合する)が器具と切断された骨表面との間に挿入されうる。これらの要素のうちのいくつかが表面適合領域を置換し、除去されていない、骨上の他の表面適合領域は、以前と同様のままであろう。
【0121】
本発明の器具のいくつかの異なる実施形態と関連していくつかの異なる特徴部を前記で説明してきた。異なる実施形態の特徴部が、本発明によるさらなる器具に達するために、実施形態のうちの他のものの特徴部と共に、追加的または代替的に使用されうることが、認識されるであろう。例えば、説明した異なる調節機構のうちのいくつかが、同じ器具において説明した調節機構のうちの他のものと共に用いられて、器具の、必要な並進運動の調節および/または角度調節をもたらすことができる。また、異なる調節機構および/または調節機構の組み合わせが、異なる骨と共に用いるためまたは異なる切り口を作るための器具と共に用いられうる。さらには、本発明は、意図した初期位置から、切り口の位置を調節できることが役立つであろう場合には、大腿骨または脛骨用器具のみに限定されず、様々な異なる骨において使用されることができる。
【0122】
〔実施の態様〕
(1) 患者の関節に対して実行されるべき整形外科的関節形成処置で使用される外科器具であって、前記関節の軟組織平衡化を可能にする、外科器具において、
少なくとも1つの取り付け領域を有する本体であって、前記取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、本体と、
少なくとも第1の切断ガイドと、
前記骨に対する前記切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、
を含む、外科器具。
(2) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを並進させる、器具。
(3) 実施態様1または2に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを回転させる、器具。
(4) 実施態様1〜3のいずれかに記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを傾ける、器具。
(5) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、しわゾーンを含む、器具。
【0123】
(6) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、ピンを受容するための、前記本体における複数の穴を含む、器具。
(7) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数の調節ネジを含み、前記複数の調節ネジによって、前記本体が前記複数の取り付け領域に据え付けられる、器具。
(8) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記取り付け領域に取り外し可能に取り付けられうる複数のスペーサを含む、器具。
(9) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数のネジを含み、前記複数のネジはそれぞれ、前記複数の取り付け領域のうちの1つを支持する足部を有する、器具。
(10) 実施態様1〜9のいずれかに記載の器具において、
複数の異なる切断ガイドが、前記本体により支持されている、器具。
【0124】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の器具において、
前記切断ガイドは、使用中に、鋸刃を受容するように構成されている、器具。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の器具において、
前記器具は、少なくとも1つの分離部分を含み、前記少なくとも1つの分離部分は、前記切断ガイドの位置または角度を変えるため、前記骨に対して前記器具が動かされうるよう取り外されることができる、器具。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載の器具において、
前記調節機構は、前記本体に対して前記切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能である、器具。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載の器具において、
複数の取り付け領域、
を有し、
前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記骨の表面の、少なくとも3つ、5つ、または7つの異なる位置において、前記骨に係合することができる、器具。
(15) 実施態様5に記載の器具において、
少なくとも第1の取り外し可能な支持部材であって、前記しわゾーンの好ましい変形量および/または変形方向を選択するために、前記しわゾーンから取り外されうる、第1の取り外し可能な支持部材、
をさらに含む、器具。
【0125】
(16) 実施態様1に記載の器具において、
骨に面する前記器具の表面から盛り上がっており、平坦な面を与える、少なくとも第1の部材であって、前記第1の部材は、前記切断ガイドの位置が変えられた場合に、前記器具と前記骨との間で、ある量の分離を維持するように位置付けられ構成されている、第1の部材、
を含む、器具。
(17) 実施態様1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記器具に取り外し可能に取り付けられうる切断ガイドを含む、器具。
(18) 患者の関節に対して整形外科的関節形成処置を実行し、前記関節の軟組織平衡化をもたらす方法において、
複数の取り付け領域を含む本体を有する外科器具を提供することであって、前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、外科器具を提供することと、
前記複数の取り付け領域を前記患者の前記骨の表面と係合させることにより、前記骨に前記外科器具を取り付けることと、
前記外科器具の切断ガイドの位置を変えるために前記器具の調節機構を操作することと、
を含む、方法。
(19) 外科器具を製造する方法において、
患者の関節の骨の形状を特定するデータを、前記患者から取り込むことと、
取り込まれた前記データを用いて、実施態様1〜17のいずれかに記載の外科器具の少なくとも取り付け領域を製造することと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明による外科器具の第1の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図2A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2C】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2D】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図2E】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図3】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図4】本発明による外科器具の第2の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図5】図4に示された第2の実施形態のさらなる改造型を貫通した概略的な断面図を示す。
【図5A】本発明による器具の調節機構部分を貫通した概略的な断面図を示す。
【図6】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図7】図6に示した器具と同様の、本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図8】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図9】図8に示した器具と共に使用されうる取り外し可能な支持部材の概略的な側面図を示す。
【図10】本発明による外科器具の第3の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図11】本発明による外科器具の第3の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図12】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図13】本発明による外科器具の第4の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図14A】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14B】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14C】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14D】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14E】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14F】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図14G】本発明による器具のさらなる実施形態の一部、および、器具と共に使用されるスペーサ構成要素の斜視図を示す。
【図15】本発明による外科器具の第5の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図16】本発明による外科器具の第6の実施形態の斜視図を示す。
【図17】本発明による外科器具の第6の実施形態の斜視図を示す。
【図18】本発明による器具において使用されうる調節機構の図を示す。
【図19】本発明による外科器具の第7の実施形態を貫通した概略的な断面図を示す。
【図20】本発明による器具のさらなる実施形態の概略的な断面図を示す。
【図21A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図21B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図22A】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22B】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22C】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22D】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22E】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図22F】本発明による器具のさらなる実施形態、および、器具の調節機構の一部として使用されるインサートブロックの斜視図を示す。
【図23】本発明による器具において使用されうるさらなる調節機構の概略的な断面図を示す。
【図24A】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【図24B】本発明による器具のさらなる実施形態の斜視図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の関節に対して実行されるべき整形外科的関節形成処置で使用される外科器具であって、前記関節の軟組織平衡化を可能にする、外科器具において、
少なくとも1つの取り付け領域を有する本体であって、前記取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、本体と、
少なくとも第1の切断ガイドと、
前記骨に対する前記切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、
を含む、外科器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを並進させる、器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを回転させる、器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを傾ける、器具。
【請求項5】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、しわゾーンを含む、器具。
【請求項6】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、ピンを受容するための、前記本体における複数の穴を含む、器具。
【請求項7】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数の調節ネジを含み、前記複数の調節ネジによって、前記本体が前記複数の取り付け領域に据え付けられる、器具。
【請求項8】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記取り付け領域に取り外し可能に取り付けられうる複数のスペーサを含む、器具。
【請求項9】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数のネジを含み、前記複数のネジはそれぞれ、前記複数の取り付け領域のうちの1つを支持する足部を有する、器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の器具において、
複数の異なる切断ガイドが、前記本体により支持されている、器具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の器具において、
前記切断ガイドは、使用中に、鋸刃を受容するように構成されている、器具。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の器具において、
前記器具は、少なくとも1つの分離部分を含み、前記少なくとも1つの分離部分は、前記切断ガイドの位置または角度を変えるため、前記骨に対して前記器具が動かされうるよう取り外されることができる、器具。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の器具において、
前記調節機構は、前記本体に対して前記切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能である、器具。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の器具において、
複数の取り付け領域、
を有し、
前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記骨の表面の、少なくとも3つ、5つ、または7つの異なる位置において、前記骨に係合することができる、器具。
【請求項15】
請求項5に記載の器具において、
少なくとも第1の取り外し可能な支持部材であって、前記しわゾーンの好ましい変形量および/または変形方向を選択するために、前記しわゾーンから取り外されうる、第1の取り外し可能な支持部材、
をさらに含む、器具。
【請求項16】
請求項1に記載の器具において、
骨に面する前記器具の表面から盛り上がっており、平坦な面を与える、少なくとも第1の部材であって、前記第1の部材は、前記切断ガイドの位置が変えられた場合に、前記器具と前記骨との間で、ある量の分離を維持するように位置付けられ構成されている、第1の部材、
を含む、器具。
【請求項17】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記器具に取り外し可能に取り付けられうる切断ガイドを含む、器具。
【請求項18】
患者の関節に対して整形外科的関節形成処置を実行し、前記関節の軟組織平衡化をもたらす方法において、
複数の取り付け領域を含む本体を有する外科器具を提供することであって、前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、外科器具を提供することと、
前記複数の取り付け領域を前記患者の前記骨の表面と係合させることにより、前記骨に前記外科器具を取り付けることと、
前記外科器具の切断ガイドの位置を変えるために前記器具の調節機構を操作することと、
を含む、方法。
【請求項19】
外科器具を製造する方法において、
患者の関節の骨の形状を特定するデータを、前記患者から取り込むことと、
取り込まれた前記データを用いて、請求項1〜17のいずれか1項に記載の外科器具の少なくとも取り付け領域を製造することと、
を含む、方法。
【請求項1】
患者の関節に対して実行されるべき整形外科的関節形成処置で使用される外科器具であって、前記関節の軟組織平衡化を可能にする、外科器具において、
少なくとも1つの取り付け領域を有する本体であって、前記取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、本体と、
少なくとも第1の切断ガイドと、
前記骨に対する前記切断ガイドの位置を変えるように操作可能な調節機構と、
を含む、外科器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを並進させる、器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを回転させる、器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の器具において、
前記調節機構は、前記切断ガイドを傾ける、器具。
【請求項5】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、しわゾーンを含む、器具。
【請求項6】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、ピンを受容するための、前記本体における複数の穴を含む、器具。
【請求項7】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数の調節ネジを含み、前記複数の調節ネジによって、前記本体が前記複数の取り付け領域に据え付けられる、器具。
【請求項8】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記取り付け領域に取り外し可能に取り付けられうる複数のスペーサを含む、器具。
【請求項9】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、複数のネジを含み、前記複数のネジはそれぞれ、前記複数の取り付け領域のうちの1つを支持する足部を有する、器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の器具において、
複数の異なる切断ガイドが、前記本体により支持されている、器具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の器具において、
前記切断ガイドは、使用中に、鋸刃を受容するように構成されている、器具。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の器具において、
前記器具は、少なくとも1つの分離部分を含み、前記少なくとも1つの分離部分は、前記切断ガイドの位置または角度を変えるため、前記骨に対して前記器具が動かされうるよう取り外されることができる、器具。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の器具において、
前記調節機構は、前記本体に対して前記切断ガイドまたは各切断ガイドを動かすように操作可能である、器具。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の器具において、
複数の取り付け領域、
を有し、
前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記骨の表面の、少なくとも3つ、5つ、または7つの異なる位置において、前記骨に係合することができる、器具。
【請求項15】
請求項5に記載の器具において、
少なくとも第1の取り外し可能な支持部材であって、前記しわゾーンの好ましい変形量および/または変形方向を選択するために、前記しわゾーンから取り外されうる、第1の取り外し可能な支持部材、
をさらに含む、器具。
【請求項16】
請求項1に記載の器具において、
骨に面する前記器具の表面から盛り上がっており、平坦な面を与える、少なくとも第1の部材であって、前記第1の部材は、前記切断ガイドの位置が変えられた場合に、前記器具と前記骨との間で、ある量の分離を維持するように位置付けられ構成されている、第1の部材、
を含む、器具。
【請求項17】
請求項1に記載の器具において、
前記調節機構は、前記器具に取り外し可能に取り付けられうる切断ガイドを含む、器具。
【請求項18】
患者の関節に対して整形外科的関節形成処置を実行し、前記関節の軟組織平衡化をもたらす方法において、
複数の取り付け領域を含む本体を有する外科器具を提供することであって、前記複数の取り付け領域は、前記患者の前記関節の骨に固有のデータを用いて、独自位置で前記骨に取り付けられるように構成されている、外科器具を提供することと、
前記複数の取り付け領域を前記患者の前記骨の表面と係合させることにより、前記骨に前記外科器具を取り付けることと、
前記外科器具の切断ガイドの位置を変えるために前記器具の調節機構を操作することと、
を含む、方法。
【請求項19】
外科器具を製造する方法において、
患者の関節の骨の形状を特定するデータを、前記患者から取り込むことと、
取り込まれた前記データを用いて、請求項1〜17のいずれか1項に記載の外科器具の少なくとも取り付け領域を製造することと、
を含む、方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図14G】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【公表番号】特表2010−531187(P2010−531187A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514102(P2010−514102)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002181
【国際公開番号】WO2009/001083
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【出願人】(506300914)デピュイ・オーソぺディー・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY ORTHOPADIE GMBH
【出願人】(599134034)デピュイ・オーソピーディックス・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Orthopaedics, Inc.
【住所又は居所原語表記】700 Orthopaedic Drive, Warsaw, IN 46581, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002181
【国際公開番号】WO2009/001083
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【出願人】(506300914)デピュイ・オーソぺディー・ゲーエムベーハー (6)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY ORTHOPADIE GMBH
【出願人】(599134034)デピュイ・オーソピーディックス・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】DePuy Orthopaedics, Inc.
【住所又は居所原語表記】700 Orthopaedic Drive, Warsaw, IN 46581, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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