外科手術用の骨固定具
【課題】 施術措置が簡単で、骨を確実に止めつけ、且つ、可能な限りヘッド部分が薄くなるよう構成して術後の不具合を防止しうる骨固定バンドを提供する。
【解決手段】 骨固定具のバンドヘッドを、バンドの延在方向に並んだ3つのバンド通し穴を具える略N字に湾曲したプレートで構成する。バンド通し穴を縫うようにバンドを差し入れ、折り返して再び通し穴に通して固定する。バンド先端には鋭利で湾曲したニードルを設けて、固定対象とする骨の周囲に廻しやすく、また骨に穴を開けてバンドを通しやすくする。
【解決手段】 骨固定具のバンドヘッドを、バンドの延在方向に並んだ3つのバンド通し穴を具える略N字に湾曲したプレートで構成する。バンド通し穴を縫うようにバンドを差し入れ、折り返して再び通し穴に通して固定する。バンド先端には鋭利で湾曲したニードルを設けて、固定対象とする骨の周囲に廻しやすく、また骨に穴を開けてバンドを通しやすくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術用の骨固定具に関し、特に、胸骨や肋骨内部の手術において一旦分離した胸骨や拡開した肋骨を元通りに固定するための骨固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば心臓手術など、胸骨内部の手術において胸骨軟骨を縦に完全分離した場合、閉胸時に分離した胸骨を元通りにするために骨固定バンドが用いられる(例えば、非特許文献1)。図14はこの従来の骨固定バンドを示す図である。図14(a)に示すように、骨固定バンド20は長細くフラットなバンド21と、バンド21の一方の端部に設けられたニードル22と、バンド21の他方の端部に設けられたヘッド23とで構成されている。ニードル22は、バンド21を骨の裏側に廻して再び手前に出せるように先端が湾曲している。各構成要素には生体適合性のステンレススチールが用いられる。図14(b)に示すように、ヘッド23は、角筒状の挿入部24と、対の羽部25とを具えている。
【0003】
図15は、従来の骨固定バンドの使用方法を示す図である。この骨固定バンドは、ニードル22を操作して対象とする骨の周りをくぐらせた後、ニードル22をカッター等でバンド21から切り離し、図15(a)に示すようにバンド先端をヘッド23の挿入部24に通す。ヘッド23の反対側から出たバンド21を十分に引っ張った後、図15(b)に示すようにバンド21を反対側に折り曲げる。その後、図15(c)に示すようにヘッド23の対の羽部25をそれぞれ内側に倒してバンド21が浮き上がらないようにして、ヘッド23から出ている余剰部分をカッター等で切り落し、固定を完了する。
【非特許文献1】商品カタログ「胸骨固定用バンド」,(承認番号21100BZY00311000),輸入販売元:日本ビー・エックス・アイ株式会社,製造元:TRANSYSTEM S. A.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の骨固定バンドは、バンド21を折り返してからペンチ等で両側の羽部25を倒さなければならず、面倒で精密な作業が必要であるとともに、熟練を要し、また処置に時間がかかるという問題がある。また、ヘッド23の挿入部24は角筒形状を確保すべく5mm以上の高さに構成されるが、この高さのため閉胸後に患者が異物感や痛みを訴える可能性がある。また、この挿入部24はバンド21を挿入する隙間を有するため、骨固定後にこの隙間に体液や組織が入り込み感染症を起こす可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、施術措置が簡単で、骨を確実に止めつけ、且つ、可能な限りヘッド部分が薄くなるよう構成して術後の不具合を防止しうる骨固定バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2または4以上のバンド通し穴を具える一枚のプレートで構成されていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具において、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的に前記バンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の骨固定具において、前記バンド及び/又はバンドヘッドが薄い金属材でなり、好ましくはステンレス鋼で構成されていることが有効である。
【0009】
本発明の骨固定具はさらに、前記バンドの自由端部に湾曲したニードルを備えることを特徴とする。
【0010】
この骨固定具において、前記ニードルが全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンドと同じか僅かに広い幅に形成されていることが有効である。
【0011】
本発明はまた、上記いずれかに記載の骨固定具のバンドを切断する器具であって、前記バンドを案内するガイド溝と、前記バンドを切断する刃と、当該刃を操作する把持部とを具え、前記刃が湾曲形状を有し前記バンドの先端を丸く切断することを特徴とする切断具に関する。
【0012】
本発明はさらに、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具用のバンドヘッドであって、直線方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的にバンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とするバンドヘッドに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の骨固定具は、固定対象となる骨の周囲にバンドを廻し、バンドの先端をバンドヘッドに設けられたバンド通し穴に縫うように差し入れ、十分に引っ張ってから折り返し、必要に応じ再びバンド通し穴に差し入れて固定を完了する。バンドヘッドを一枚のプレートで構成するため固定部分の厚みを従来より遙かに薄くすることができ、手術後に患者が違和感を感じたり組織にあたって痛みが生じることが防止される。また、バンドヘッドが従来器具のような角筒形状でないため隙間に体液が入り込んで感染症を起こしたりする可能性が飛躍的に軽減する。さらに、従来器具のように羽部をペンチで倒す必要がなく簡単に処置できるとともに、従来の骨固定具よりも遙かに低いコストで製造することができる。
【0014】
また、バンドヘッドを湾曲あるいは屈曲させてバンド通し穴に連続的にバンドを通し易くしたため、施術が容易になるとともに所要時間を短縮することができる。また、骨固定具を高品位のステンレス鋼で構成すると、金属の塑性を利用してバンドを折り返すことにより骨を長期に亘り確実に固定しておくことができる。
【0015】
また、バンド先端に湾曲したニードルを設けたため、骨の周囲にバンドを廻しやすくなる。さらにこのニードルを全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンド以上の幅に形成したため、骨にニードルを貫通させてバンドを通すことが可能となり、例えば胸部手術の閉胸時に胸骨柄に穴を開けてバンドを通し固定する際に、骨や骨内部の毛細血管に与えるストレスを最小限に抑えることができる。
【0016】
さらに、バンドの先端を丸く切断する切断具を用いることにより、術中や術後にバンド先端で組織を傷つけてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明に係る骨固定具の第1実施例の構成を示す図である。図1に示すように、骨固定具1は、細長い帯状のバンド11と、バンド11の一方の端部に設けられたニードル12と、バンド11の他方の端部に設けられたバンドヘッド13とを具える。各要素はいずれも生体適合性の金属素材からなり、望ましくはノンフェライトの(磁性を帯びない)高品位ステンレスで形成する。このような金属の一例として、サンドビック社のステンレス鋼316LVM(商品名)を好適に使用することができる。
【0019】
バンド11は可撓性および塑性を備え、例えば長さが150〜400mm、幅1.5〜12.0mm、厚さ0.1〜1.0mm程度に構成される。ニードル12は骨の後ろに潜らせて再び手前に出せるように湾曲しており、長さ40〜60mm、幅1.5〜3.5mm、厚さ1.0〜2.0mm程度に構成されている。本実施例のニードル12を図2に示す。本図に示すように、ニードル12は全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部がバンド11と同じか僅かに広い幅に形成されている。この構成により、例えば胸骨柄の部分などの骨にニードル12を貫通させて、バンド11を通すことができる。なお、このニードル12は、適用する箇所に合わせて寸法形状や湾曲度などが適宜決定されるものとする。例えば、柔らかくて刺通し易い部位に用いるものはラウンドポイントといわれる丸針を使用してもよいし、刺通しにくい部位に用いるものは本実施例のように尖端を三角錐形状としたテーパカッティング針を使用する。
【0020】
バンド11はバンドヘッド13にかしめピンまたはリベット14で固定されており、図1に示すように、軽くN字型に湾曲あるいは屈曲している。このヘッド13は、屈曲前の寸法で長さ7〜50mm、幅4〜15mm、厚さ0.2〜2.0mm程度に構成される。図3は、ヘッド13部分の構成を示す斜視図である。本図に示すように、ヘッド13は縁が丸まった長方形のプレートの端部をバンド11の幅に合わせて狭めた形状を有し、バンド11の延在方向にほぼ等間隔で並ぶ3つの通し穴15a、15b、15cを具える。さらにバンドヘッド13は隣接する通し穴15の間で鈍角に屈曲あるいは湾曲されており、全体として概略N字型の形状が付与されている。通し穴15はバンド11の幅と同じまたは少し大きい直径(例えば、1.5〜12mm程度)の円形であり、1つの通し穴の中心から次の通し穴の中心までの距離は穴の半径以下とする(例えば、2〜15mm程度)。このようなN字形状とすることにより、後述するようにバンド11が通し易くなり、また通し穴15にバンド11を通す順番を間違えないようにすることができる。
【0021】
図4と図5を用いて、骨固定具1を使用するために用いる器具について説明する。図4に支持器40を示し、図5に切断具50を示す。支持器40は通し穴15から出したバンド11を引っ張る際にバンドヘッド13を押さえるための器具であり、持ち手41と、クランク形状に屈曲した支持端部42とを備えている。支持端部42の先端にはバンド11より若干大きな幅のU字溝43が設けられている。このU字溝43にバンド11を宛ってバンドヘッド13を押さえることにより、バンドヘッド13を骨から浮き上がらせることなくバンド11を引っ張ることができる。
【0022】
図5(a)は切断具50の全体構成を示す斜視図であり、図5(b)はその先端部の拡大図である。本図に示すように切断具50はペンチのような構成を有し、バンド11と同じか若干大きな幅を有しバンド11を案内するガイド溝51と、前記バンドを切断する刃52と、当該刃を操作する把持部53とを具えている。ガイド溝51は把持部53側に連通しており、バンド11をガイド溝51に差し入れて把持部53側に長く出すことができる。図4(b)に示すように、刃52は湾曲形状を有し、バンド11の切断面を丸く切断することができる。
【0023】
なお、上述した構成要素の寸法や形状は、骨固定具1の適用部位などの実施環境により適宜変更することができる。
【0024】
このように構成された骨固定具1の使用方法を以下に説明する。図6は、本発明の骨固定具1の適用部位の一例を示す図である。本発明の骨固定具1は、例えば図6に示すように、胸骨内部の手術において胸骨軟骨を縦に完全分離した場合など、閉胸時に分離した胸骨を元通りに固定するために用いられる。すなわち、縦に分離した胸骨をくっつけ、胸骨の周りに骨固定具1を複数巻いて固定する。また、胸骨上部の胸骨柄の部分では、ニードル12で骨を貫通しバンド11を通して固定するようにする。この場合にニードル12の先端は尖っており、またニードル12はバンド11と同じまたは僅かに広い幅を有するため、錐のような手段で骨に穴を開けてバンド11を通す場合よりも骨内部の毛細欠陥の損傷を抑えることができる。ニードル12を入れた向きでバンド11が延在することになるため、施術においてはニードル12の向きに注意することが必要である。
【0025】
図7〜図8は、骨固定具1の使用方法の一例を説明する図である。施術においては、先ず、持針器等を用いてニードル12を固定対象となる骨の周囲に潜らせるか、胸骨柄の部分はニードル12を骨に刺してバンド11を通す。このとき、バンドヘッド13の表側(図1における上側)が上になるようバンドの向きに留意し、またニードル操作中にバンド11が捩れないように注意する。
【0026】
バンド11を骨に廻したら、切断具50あるいは他の器具を用いてバンド11からニードル12を切り離す(図示せず)。バンド11に捻れがないことを確認してから、図7(a)〜(b)に示すように、バンド11の自由端をヘッド13の第1の通し穴15aに裏側から出し、次に第2の通し穴15bに差し入れ、再び第3の通し穴15cから出す。この場合にバンドヘッド13が略N字形状であるため、バンド11の先端を直線的に差し入れることで隣接する3つの通し穴15a〜15cに通せるとともに、バンド11を通す表裏の順番を間違えることがない。
【0027】
次に、図7(c)に示すように、持針器などの鉗子30を用いて、第2の通し穴15bと第3の通し穴15cとの間の山型となっている部分Aを平らにする。これにより骨にあたるバンドヘッド13の部分が平坦になるため加圧が分散され、また骨とバンドヘッド13との隙間に組織や体液が入り込んで生じる炎症を防止することができる。次に、図7(d)に示すようにバンドヘッド13の根元の部分を支持器40で押さえつつ持針器30でバンド11を十分に引っ張り、骨が固定具1により密着した状態となることを確認する。
【0028】
次に、図8(e)に示すようにバンド11を反対側に折り返し、図8(f)に示すようにバンド11の先端を第1の通し穴15aに差し入れる。さらに、図8(g)に示すように切断具50で余剰の部分を切り離し、図8(h)に示すようにバンド11の先端をさらに手前に折り返す。バンド11は金属材でなり、折り返すことにより確実に固定され以降にバンド11が通し穴から外れることがない。最後に支持器40等でバンドヘッド13の先端部分を上から押して平らにする。このようにして必要な箇所を骨固定具1で留めつけ、以降は通常の手順にしたがって骨の周りの組織を縫合し、手術を終了させる。
【0029】
このように骨固定具1を用いることにより、骨を確実に固定することができる。また、3つの通し穴15a〜15cを円形としているため、通し穴15に通した帯状のバンド11との接点が2カ所となり、金属バンドの弾性・可撓性と相俟ってバンドが強固に固定される。また、バンドヘッド13は薄いプレートで構成され、固定状態でも全体の高さが低く抑えられているため、手術後に患者の組織にあたって痛みが生じたりすることがない。さらに、固定状体でバンド11とバンドヘッド13の間に殆ど隙間が生じないため、器具内部に組織が入り込んで炎症を起こしたりすることがない。さらに、切断具50によりバンド11の切断部分は半円形となるため、この部分で組織を傷つけてしまうことがない。
【実施例2】
【0030】
次に、本願発明にかかる骨固定具の第2実施例について説明する。図9〜図10は本実施例に係る骨固定具60およびその使用方法を説明する図である。本実施例では、骨固定具60のバンドヘッド61が略N型形状ではなく、3つの通し穴62a,62b,62cを備える一枚の平坦なプレートで構成されている。その他の構成は図1に示す第1実施例と同じである。
【0031】
本実施例の骨固定具60を用いてバンド63を骨の周囲に廻し、切断具50またはカッター等の器具を用いてバンド63からニードルを切り離す(図示せず)。バンド63に捻れがないことを確認してから、図9(a)〜(b)に示すように、バンドの自由端をヘッド61の第1の通し穴62aに上から差し入れ、第3の通し穴62cから表に出す。次に、図9(c)に示すように、バンド63を反転させて第2の通し穴62bに差し入れ、再び第1の通し穴62aから上に出す。
【0032】
次に、図10(d)に示すように、支持器40で第3の通し穴62cのバンド下を押さえつつ、持針器30でバンドを引っ張る。さらに、図10(e)に示すように、支持器40で第1の通し穴62aのバンド下を押さえ、バンド端部を持針器30で引っ張る。このようにして骨が所望の状態で固定されたことを確認し、図10(f)に示すように、第1の通し穴62aから出ているバンド63の余剰部分を切除して固定を完了する。その後は、通常の手順にしたがって骨の周りの組織を縫合し、手術を終了させる。このバンド63の切除は図5に示す切断具50により行ってもよい。
【0033】
本実施例では、金属のバンド63が第3の通し穴62cで折り返されるとともに、その後に第2の通し穴62bから第1の通し穴62aに通したバンド部分が常に上から押さえられ、固定後にバンド63が通し穴から外れることがない。このように、通し穴へのバンドの通し方は様々なバリエーションを考えることができる。
【実施例3】
【0034】
図11は、本発明に係る骨固定具の第3実施例の構成を示す側面図である。図11に示すように、本発明の骨固定具70では、バンド71とバンドヘッド72とが一体的に成形される。この骨固定具70において、ヘッド72は強度を持たせるためバンド71より厚みをつけて形成されている。その他の構成は実施例2の骨固定具60と同様である。このように構成すると、バンドとバンドヘッドをリベット止めする必要がなくなるため、部品点数を減らせるとともに骨固定具70の高さをリベットの分だけ低くすることができる。なお、骨固定具70の製造方法としては、バンドヘッド72の厚さを有する金属板を用意して所望の形にカットし、その後にバンド71の部分だけを薄く伸延していく方法が考えられる。
【実施例4】
【0035】
図12は、骨固定具の第4実施例の構成を示す図である。図12に示す骨固定具80も、バンドとバンドヘッドとのリベット結合を不要とすべく、両者を一体的に成形する実施例である。本実施例では、バンド部分の厚みを有する金属板を、図12(a)に示すように、バンドヘッドの輪郭を複数つなげた形状にカットし、図12(b)に示すように折り返してプレスする。その後に通し穴を開けてバンドヘッド81を完成させる。このように構成すれば、所望の強度を有するバンドヘッドを比較的安価で得ることができる。なお、図12に示す実施例では金属板を3回折り返してバンドヘッドを構成しているが、これは2回でも4回以上であってもよい。
【0036】
上記の実施例ではバンドヘッドの通し穴を円形としているが、この通し穴はバンドが好適に留まる限りにおいて他の構成とすることができる。例えば、通し穴は図13(a)に示すように楕円形状としてもよく、また図13(b)に示すように略三角形状としてもよい。これらのように構成しても、バンドを通したときに端の2点で接触し、バンドの可撓性と相俟って確実に留めつけることができる。
【0037】
また、バンド通し穴は3つとも上述のような形状に構成されることが望ましいが、最もバンド側にある第3の通し穴(図3の通し穴15c)のみを上記形状とし、後は任意形状(例えば、長方形など)としてもよい。バンドの折り返し部分に最も強い力が加わるため、折り返し部分のみでも上記形状としておけば必要十分な固定強度を得ることができる。
【0038】
さらに、上記実施形態の骨固定具はいずれもバンド通し穴が3つ設けられているが、バンド通し穴は2つであっても、また4つ以上であってもよい。通し穴が2つの場合は、バンドを根元側の通し穴から出した後、折り返して他方の通し穴に差し入れて固定する。通し穴が4つ以上の場合は多彩なバリエーションが考えられるが、いずれかの穴から出したバンドを折り返して別の穴に収めることにより確実に固定することができる。また、上記第2実施例ではバンドヘッドをフラットな板状体で構成しているが、特に細い骨の周囲にまわして用いるような骨固定具では、バンドヘッドを予め骨の外形に応じて湾曲させた板状体として構成してもよい。また、上記実施例で骨固定具はニードルを具えているが、ニードルは必須の構成要素ではなく、バンドとバンドヘッドのみの構成としてもよい。ニードルの寸法形状や湾曲度は適用部位等の実施環境に応じて適宜決定されることは上述のとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
例えば心臓手術など、胸骨を縦に完全分離して胸骨内部の手術を行った場合、本発明の骨固定具を胸骨の周りに5〜6本配置し、分離した胸骨を接合させて固定する。また、人体側部から肋骨を拡開して内部手術を行った場合、本発明の骨固定具1を2〜3本用いて離れた肋骨を近づけて固定する。その他、骨固定具1は頭骨、大腿骨などの固定や補強に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る骨固定具の第1実施例の構成を示す図である。
【図2】ニードル12の構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示すバンドヘッド13の構成を示す斜視図である。
【図4】骨固定具を使用するための支持器の構成を示す斜視図である。
【図5】骨固定具を使用するための切断器の構成を示す図である。
【図6】骨固定具を胸骨に適用した例を示す図である。
【図7】図1に示す骨固定具1の使用方法を説明する図である。
【図8】図1に示す骨固定具1の使用方法を説明する図である。
【図9】本願第2実施例に係る骨固定具の使用方法を説明する図である。
【図10】本願第2実施例に係る骨固定具の使用方法を説明する図である。
【図11】本願第3実施例に係る骨固定具の構成を示す図である。
【図12】本願第4実施例に係る骨固定具の構成を示す図である。
【図13】更なる実施例におけるバンドヘッドの構成を示す図である。
【図14】従来の骨固定具の構成を示す図である。
【図15】従来の骨固定具の使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1、60,70,80 骨固定具
11 バンド
12 ニードル
13 バンドヘッド
15a 第1の通し穴
15b 第2の通し穴
15c 第3の通し穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術用の骨固定具に関し、特に、胸骨や肋骨内部の手術において一旦分離した胸骨や拡開した肋骨を元通りに固定するための骨固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば心臓手術など、胸骨内部の手術において胸骨軟骨を縦に完全分離した場合、閉胸時に分離した胸骨を元通りにするために骨固定バンドが用いられる(例えば、非特許文献1)。図14はこの従来の骨固定バンドを示す図である。図14(a)に示すように、骨固定バンド20は長細くフラットなバンド21と、バンド21の一方の端部に設けられたニードル22と、バンド21の他方の端部に設けられたヘッド23とで構成されている。ニードル22は、バンド21を骨の裏側に廻して再び手前に出せるように先端が湾曲している。各構成要素には生体適合性のステンレススチールが用いられる。図14(b)に示すように、ヘッド23は、角筒状の挿入部24と、対の羽部25とを具えている。
【0003】
図15は、従来の骨固定バンドの使用方法を示す図である。この骨固定バンドは、ニードル22を操作して対象とする骨の周りをくぐらせた後、ニードル22をカッター等でバンド21から切り離し、図15(a)に示すようにバンド先端をヘッド23の挿入部24に通す。ヘッド23の反対側から出たバンド21を十分に引っ張った後、図15(b)に示すようにバンド21を反対側に折り曲げる。その後、図15(c)に示すようにヘッド23の対の羽部25をそれぞれ内側に倒してバンド21が浮き上がらないようにして、ヘッド23から出ている余剰部分をカッター等で切り落し、固定を完了する。
【非特許文献1】商品カタログ「胸骨固定用バンド」,(承認番号21100BZY00311000),輸入販売元:日本ビー・エックス・アイ株式会社,製造元:TRANSYSTEM S. A.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の骨固定バンドは、バンド21を折り返してからペンチ等で両側の羽部25を倒さなければならず、面倒で精密な作業が必要であるとともに、熟練を要し、また処置に時間がかかるという問題がある。また、ヘッド23の挿入部24は角筒形状を確保すべく5mm以上の高さに構成されるが、この高さのため閉胸後に患者が異物感や痛みを訴える可能性がある。また、この挿入部24はバンド21を挿入する隙間を有するため、骨固定後にこの隙間に体液や組織が入り込み感染症を起こす可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、施術措置が簡単で、骨を確実に止めつけ、且つ、可能な限りヘッド部分が薄くなるよう構成して術後の不具合を防止しうる骨固定バンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2または4以上のバンド通し穴を具える一枚のプレートで構成されていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具において、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的に前記バンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の骨固定具において、前記バンド及び/又はバンドヘッドが薄い金属材でなり、好ましくはステンレス鋼で構成されていることが有効である。
【0009】
本発明の骨固定具はさらに、前記バンドの自由端部に湾曲したニードルを備えることを特徴とする。
【0010】
この骨固定具において、前記ニードルが全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンドと同じか僅かに広い幅に形成されていることが有効である。
【0011】
本発明はまた、上記いずれかに記載の骨固定具のバンドを切断する器具であって、前記バンドを案内するガイド溝と、前記バンドを切断する刃と、当該刃を操作する把持部とを具え、前記刃が湾曲形状を有し前記バンドの先端を丸く切断することを特徴とする切断具に関する。
【0012】
本発明はさらに、外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具用のバンドヘッドであって、直線方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的にバンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とするバンドヘッドに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の骨固定具は、固定対象となる骨の周囲にバンドを廻し、バンドの先端をバンドヘッドに設けられたバンド通し穴に縫うように差し入れ、十分に引っ張ってから折り返し、必要に応じ再びバンド通し穴に差し入れて固定を完了する。バンドヘッドを一枚のプレートで構成するため固定部分の厚みを従来より遙かに薄くすることができ、手術後に患者が違和感を感じたり組織にあたって痛みが生じることが防止される。また、バンドヘッドが従来器具のような角筒形状でないため隙間に体液が入り込んで感染症を起こしたりする可能性が飛躍的に軽減する。さらに、従来器具のように羽部をペンチで倒す必要がなく簡単に処置できるとともに、従来の骨固定具よりも遙かに低いコストで製造することができる。
【0014】
また、バンドヘッドを湾曲あるいは屈曲させてバンド通し穴に連続的にバンドを通し易くしたため、施術が容易になるとともに所要時間を短縮することができる。また、骨固定具を高品位のステンレス鋼で構成すると、金属の塑性を利用してバンドを折り返すことにより骨を長期に亘り確実に固定しておくことができる。
【0015】
また、バンド先端に湾曲したニードルを設けたため、骨の周囲にバンドを廻しやすくなる。さらにこのニードルを全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンド以上の幅に形成したため、骨にニードルを貫通させてバンドを通すことが可能となり、例えば胸部手術の閉胸時に胸骨柄に穴を開けてバンドを通し固定する際に、骨や骨内部の毛細血管に与えるストレスを最小限に抑えることができる。
【0016】
さらに、バンドの先端を丸く切断する切断具を用いることにより、術中や術後にバンド先端で組織を傷つけてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明に係る骨固定具の第1実施例の構成を示す図である。図1に示すように、骨固定具1は、細長い帯状のバンド11と、バンド11の一方の端部に設けられたニードル12と、バンド11の他方の端部に設けられたバンドヘッド13とを具える。各要素はいずれも生体適合性の金属素材からなり、望ましくはノンフェライトの(磁性を帯びない)高品位ステンレスで形成する。このような金属の一例として、サンドビック社のステンレス鋼316LVM(商品名)を好適に使用することができる。
【0019】
バンド11は可撓性および塑性を備え、例えば長さが150〜400mm、幅1.5〜12.0mm、厚さ0.1〜1.0mm程度に構成される。ニードル12は骨の後ろに潜らせて再び手前に出せるように湾曲しており、長さ40〜60mm、幅1.5〜3.5mm、厚さ1.0〜2.0mm程度に構成されている。本実施例のニードル12を図2に示す。本図に示すように、ニードル12は全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部がバンド11と同じか僅かに広い幅に形成されている。この構成により、例えば胸骨柄の部分などの骨にニードル12を貫通させて、バンド11を通すことができる。なお、このニードル12は、適用する箇所に合わせて寸法形状や湾曲度などが適宜決定されるものとする。例えば、柔らかくて刺通し易い部位に用いるものはラウンドポイントといわれる丸針を使用してもよいし、刺通しにくい部位に用いるものは本実施例のように尖端を三角錐形状としたテーパカッティング針を使用する。
【0020】
バンド11はバンドヘッド13にかしめピンまたはリベット14で固定されており、図1に示すように、軽くN字型に湾曲あるいは屈曲している。このヘッド13は、屈曲前の寸法で長さ7〜50mm、幅4〜15mm、厚さ0.2〜2.0mm程度に構成される。図3は、ヘッド13部分の構成を示す斜視図である。本図に示すように、ヘッド13は縁が丸まった長方形のプレートの端部をバンド11の幅に合わせて狭めた形状を有し、バンド11の延在方向にほぼ等間隔で並ぶ3つの通し穴15a、15b、15cを具える。さらにバンドヘッド13は隣接する通し穴15の間で鈍角に屈曲あるいは湾曲されており、全体として概略N字型の形状が付与されている。通し穴15はバンド11の幅と同じまたは少し大きい直径(例えば、1.5〜12mm程度)の円形であり、1つの通し穴の中心から次の通し穴の中心までの距離は穴の半径以下とする(例えば、2〜15mm程度)。このようなN字形状とすることにより、後述するようにバンド11が通し易くなり、また通し穴15にバンド11を通す順番を間違えないようにすることができる。
【0021】
図4と図5を用いて、骨固定具1を使用するために用いる器具について説明する。図4に支持器40を示し、図5に切断具50を示す。支持器40は通し穴15から出したバンド11を引っ張る際にバンドヘッド13を押さえるための器具であり、持ち手41と、クランク形状に屈曲した支持端部42とを備えている。支持端部42の先端にはバンド11より若干大きな幅のU字溝43が設けられている。このU字溝43にバンド11を宛ってバンドヘッド13を押さえることにより、バンドヘッド13を骨から浮き上がらせることなくバンド11を引っ張ることができる。
【0022】
図5(a)は切断具50の全体構成を示す斜視図であり、図5(b)はその先端部の拡大図である。本図に示すように切断具50はペンチのような構成を有し、バンド11と同じか若干大きな幅を有しバンド11を案内するガイド溝51と、前記バンドを切断する刃52と、当該刃を操作する把持部53とを具えている。ガイド溝51は把持部53側に連通しており、バンド11をガイド溝51に差し入れて把持部53側に長く出すことができる。図4(b)に示すように、刃52は湾曲形状を有し、バンド11の切断面を丸く切断することができる。
【0023】
なお、上述した構成要素の寸法や形状は、骨固定具1の適用部位などの実施環境により適宜変更することができる。
【0024】
このように構成された骨固定具1の使用方法を以下に説明する。図6は、本発明の骨固定具1の適用部位の一例を示す図である。本発明の骨固定具1は、例えば図6に示すように、胸骨内部の手術において胸骨軟骨を縦に完全分離した場合など、閉胸時に分離した胸骨を元通りに固定するために用いられる。すなわち、縦に分離した胸骨をくっつけ、胸骨の周りに骨固定具1を複数巻いて固定する。また、胸骨上部の胸骨柄の部分では、ニードル12で骨を貫通しバンド11を通して固定するようにする。この場合にニードル12の先端は尖っており、またニードル12はバンド11と同じまたは僅かに広い幅を有するため、錐のような手段で骨に穴を開けてバンド11を通す場合よりも骨内部の毛細欠陥の損傷を抑えることができる。ニードル12を入れた向きでバンド11が延在することになるため、施術においてはニードル12の向きに注意することが必要である。
【0025】
図7〜図8は、骨固定具1の使用方法の一例を説明する図である。施術においては、先ず、持針器等を用いてニードル12を固定対象となる骨の周囲に潜らせるか、胸骨柄の部分はニードル12を骨に刺してバンド11を通す。このとき、バンドヘッド13の表側(図1における上側)が上になるようバンドの向きに留意し、またニードル操作中にバンド11が捩れないように注意する。
【0026】
バンド11を骨に廻したら、切断具50あるいは他の器具を用いてバンド11からニードル12を切り離す(図示せず)。バンド11に捻れがないことを確認してから、図7(a)〜(b)に示すように、バンド11の自由端をヘッド13の第1の通し穴15aに裏側から出し、次に第2の通し穴15bに差し入れ、再び第3の通し穴15cから出す。この場合にバンドヘッド13が略N字形状であるため、バンド11の先端を直線的に差し入れることで隣接する3つの通し穴15a〜15cに通せるとともに、バンド11を通す表裏の順番を間違えることがない。
【0027】
次に、図7(c)に示すように、持針器などの鉗子30を用いて、第2の通し穴15bと第3の通し穴15cとの間の山型となっている部分Aを平らにする。これにより骨にあたるバンドヘッド13の部分が平坦になるため加圧が分散され、また骨とバンドヘッド13との隙間に組織や体液が入り込んで生じる炎症を防止することができる。次に、図7(d)に示すようにバンドヘッド13の根元の部分を支持器40で押さえつつ持針器30でバンド11を十分に引っ張り、骨が固定具1により密着した状態となることを確認する。
【0028】
次に、図8(e)に示すようにバンド11を反対側に折り返し、図8(f)に示すようにバンド11の先端を第1の通し穴15aに差し入れる。さらに、図8(g)に示すように切断具50で余剰の部分を切り離し、図8(h)に示すようにバンド11の先端をさらに手前に折り返す。バンド11は金属材でなり、折り返すことにより確実に固定され以降にバンド11が通し穴から外れることがない。最後に支持器40等でバンドヘッド13の先端部分を上から押して平らにする。このようにして必要な箇所を骨固定具1で留めつけ、以降は通常の手順にしたがって骨の周りの組織を縫合し、手術を終了させる。
【0029】
このように骨固定具1を用いることにより、骨を確実に固定することができる。また、3つの通し穴15a〜15cを円形としているため、通し穴15に通した帯状のバンド11との接点が2カ所となり、金属バンドの弾性・可撓性と相俟ってバンドが強固に固定される。また、バンドヘッド13は薄いプレートで構成され、固定状態でも全体の高さが低く抑えられているため、手術後に患者の組織にあたって痛みが生じたりすることがない。さらに、固定状体でバンド11とバンドヘッド13の間に殆ど隙間が生じないため、器具内部に組織が入り込んで炎症を起こしたりすることがない。さらに、切断具50によりバンド11の切断部分は半円形となるため、この部分で組織を傷つけてしまうことがない。
【実施例2】
【0030】
次に、本願発明にかかる骨固定具の第2実施例について説明する。図9〜図10は本実施例に係る骨固定具60およびその使用方法を説明する図である。本実施例では、骨固定具60のバンドヘッド61が略N型形状ではなく、3つの通し穴62a,62b,62cを備える一枚の平坦なプレートで構成されている。その他の構成は図1に示す第1実施例と同じである。
【0031】
本実施例の骨固定具60を用いてバンド63を骨の周囲に廻し、切断具50またはカッター等の器具を用いてバンド63からニードルを切り離す(図示せず)。バンド63に捻れがないことを確認してから、図9(a)〜(b)に示すように、バンドの自由端をヘッド61の第1の通し穴62aに上から差し入れ、第3の通し穴62cから表に出す。次に、図9(c)に示すように、バンド63を反転させて第2の通し穴62bに差し入れ、再び第1の通し穴62aから上に出す。
【0032】
次に、図10(d)に示すように、支持器40で第3の通し穴62cのバンド下を押さえつつ、持針器30でバンドを引っ張る。さらに、図10(e)に示すように、支持器40で第1の通し穴62aのバンド下を押さえ、バンド端部を持針器30で引っ張る。このようにして骨が所望の状態で固定されたことを確認し、図10(f)に示すように、第1の通し穴62aから出ているバンド63の余剰部分を切除して固定を完了する。その後は、通常の手順にしたがって骨の周りの組織を縫合し、手術を終了させる。このバンド63の切除は図5に示す切断具50により行ってもよい。
【0033】
本実施例では、金属のバンド63が第3の通し穴62cで折り返されるとともに、その後に第2の通し穴62bから第1の通し穴62aに通したバンド部分が常に上から押さえられ、固定後にバンド63が通し穴から外れることがない。このように、通し穴へのバンドの通し方は様々なバリエーションを考えることができる。
【実施例3】
【0034】
図11は、本発明に係る骨固定具の第3実施例の構成を示す側面図である。図11に示すように、本発明の骨固定具70では、バンド71とバンドヘッド72とが一体的に成形される。この骨固定具70において、ヘッド72は強度を持たせるためバンド71より厚みをつけて形成されている。その他の構成は実施例2の骨固定具60と同様である。このように構成すると、バンドとバンドヘッドをリベット止めする必要がなくなるため、部品点数を減らせるとともに骨固定具70の高さをリベットの分だけ低くすることができる。なお、骨固定具70の製造方法としては、バンドヘッド72の厚さを有する金属板を用意して所望の形にカットし、その後にバンド71の部分だけを薄く伸延していく方法が考えられる。
【実施例4】
【0035】
図12は、骨固定具の第4実施例の構成を示す図である。図12に示す骨固定具80も、バンドとバンドヘッドとのリベット結合を不要とすべく、両者を一体的に成形する実施例である。本実施例では、バンド部分の厚みを有する金属板を、図12(a)に示すように、バンドヘッドの輪郭を複数つなげた形状にカットし、図12(b)に示すように折り返してプレスする。その後に通し穴を開けてバンドヘッド81を完成させる。このように構成すれば、所望の強度を有するバンドヘッドを比較的安価で得ることができる。なお、図12に示す実施例では金属板を3回折り返してバンドヘッドを構成しているが、これは2回でも4回以上であってもよい。
【0036】
上記の実施例ではバンドヘッドの通し穴を円形としているが、この通し穴はバンドが好適に留まる限りにおいて他の構成とすることができる。例えば、通し穴は図13(a)に示すように楕円形状としてもよく、また図13(b)に示すように略三角形状としてもよい。これらのように構成しても、バンドを通したときに端の2点で接触し、バンドの可撓性と相俟って確実に留めつけることができる。
【0037】
また、バンド通し穴は3つとも上述のような形状に構成されることが望ましいが、最もバンド側にある第3の通し穴(図3の通し穴15c)のみを上記形状とし、後は任意形状(例えば、長方形など)としてもよい。バンドの折り返し部分に最も強い力が加わるため、折り返し部分のみでも上記形状としておけば必要十分な固定強度を得ることができる。
【0038】
さらに、上記実施形態の骨固定具はいずれもバンド通し穴が3つ設けられているが、バンド通し穴は2つであっても、また4つ以上であってもよい。通し穴が2つの場合は、バンドを根元側の通し穴から出した後、折り返して他方の通し穴に差し入れて固定する。通し穴が4つ以上の場合は多彩なバリエーションが考えられるが、いずれかの穴から出したバンドを折り返して別の穴に収めることにより確実に固定することができる。また、上記第2実施例ではバンドヘッドをフラットな板状体で構成しているが、特に細い骨の周囲にまわして用いるような骨固定具では、バンドヘッドを予め骨の外形に応じて湾曲させた板状体として構成してもよい。また、上記実施例で骨固定具はニードルを具えているが、ニードルは必須の構成要素ではなく、バンドとバンドヘッドのみの構成としてもよい。ニードルの寸法形状や湾曲度は適用部位等の実施環境に応じて適宜決定されることは上述のとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
例えば心臓手術など、胸骨を縦に完全分離して胸骨内部の手術を行った場合、本発明の骨固定具を胸骨の周りに5〜6本配置し、分離した胸骨を接合させて固定する。また、人体側部から肋骨を拡開して内部手術を行った場合、本発明の骨固定具1を2〜3本用いて離れた肋骨を近づけて固定する。その他、骨固定具1は頭骨、大腿骨などの固定や補強に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る骨固定具の第1実施例の構成を示す図である。
【図2】ニードル12の構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示すバンドヘッド13の構成を示す斜視図である。
【図4】骨固定具を使用するための支持器の構成を示す斜視図である。
【図5】骨固定具を使用するための切断器の構成を示す図である。
【図6】骨固定具を胸骨に適用した例を示す図である。
【図7】図1に示す骨固定具1の使用方法を説明する図である。
【図8】図1に示す骨固定具1の使用方法を説明する図である。
【図9】本願第2実施例に係る骨固定具の使用方法を説明する図である。
【図10】本願第2実施例に係る骨固定具の使用方法を説明する図である。
【図11】本願第3実施例に係る骨固定具の構成を示す図である。
【図12】本願第4実施例に係る骨固定具の構成を示す図である。
【図13】更なる実施例におけるバンドヘッドの構成を示す図である。
【図14】従来の骨固定具の構成を示す図である。
【図15】従来の骨固定具の使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1、60,70,80 骨固定具
11 バンド
12 ニードル
13 バンドヘッド
15a 第1の通し穴
15b 第2の通し穴
15c 第3の通し穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2または4以上のバンド通し穴を具える一枚のプレートで構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項2】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具え、当該バンド通し穴に連続的に前記バンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の骨固定具において、前記バンド及び/又はバンドヘッドが薄い金属材でなり、好ましくはステンレス鋼で構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の骨固定具において、前記バンドの自由端部に湾曲したニードルを備えることを特徴とする骨固定具。
【請求項5】
請求項4に記載の骨固定具において、前記ニードルが全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンドと同じか僅かに広い幅に形成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の骨固定具のバンドを切断する器具であって、前記バンドを案内するガイド溝と、前記バンドを切断する刃と、当該刃を操作する把持部とを具え、前記刃が湾曲形状を有し前記バンドの先端を丸く切断することを特徴とする切断具。
【請求項7】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具用のバンドヘッドであって、直線方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的にバンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とするバンドヘッド。
【請求項1】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2または4以上のバンド通し穴を具える一枚のプレートで構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項2】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具であって、細長い帯状のバンドと、当該バンドの一端に設けられたバンドヘッドとを具え、当該バンドヘッドが、前記バンドの延在方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具え、当該バンド通し穴に連続的に前記バンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の骨固定具において、前記バンド及び/又はバンドヘッドが薄い金属材でなり、好ましくはステンレス鋼で構成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の骨固定具において、前記バンドの自由端部に湾曲したニードルを備えることを特徴とする骨固定具。
【請求項5】
請求項4に記載の骨固定具において、前記ニードルが全体的に扁平で、鋭利に尖った先端部を有し、少なくとも一部が前記バンドと同じか僅かに広い幅に形成されていることを特徴とする骨固定具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の骨固定具のバンドを切断する器具であって、前記バンドを案内するガイド溝と、前記バンドを切断する刃と、当該刃を操作する把持部とを具え、前記刃が湾曲形状を有し前記バンドの先端を丸く切断することを特徴とする切断具。
【請求項7】
外科手術で骨を固定するために用いる骨固定具用のバンドヘッドであって、直線方向に並んだ2以上のバンド通し穴を具えるとともに、当該バンド通し穴に連続的にバンドを通し易いように湾曲あるいは屈曲されたプレートで構成されていることを特徴とするバンドヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−288864(P2006−288864A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115566(P2005−115566)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(503412894)株式会社パドル (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(503412894)株式会社パドル (1)
【Fターム(参考)】
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