説明

外科用プロテーゼ

骨に連結されるように構成されたプロテーゼ。プロテーゼは、表面(6)を有する基板(2)を含む。基板(2)の表面(6)は、第1の領域および第2の領域を有し、第1の領域は、骨結合が第2の領域よりも促進されるように処理される。第1の領域と第2の領域との間の界面(12)は、骨に対するプロテーゼの整列を助ける整列マークを形成する。プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、骨空洞に対する整列マークの位置は、プロテーゼの挿入角度を示し、または、整列マークは、空洞におけるプロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を提供する。プロテーゼを製造する方法、およびプロテーゼを植え込む方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、外科用プロテーゼに関する。本発明は、寛骨臼カップなどの回転対称外科用プロテーゼに特に適している。
【0002】
天然の骨関節の一部または全部を置き換えるためプロテーゼ構成要素を植え込むことによって、疾病または傷害で損傷した骨関節を修復することが周知である。例えば、股関節の外科的再建では、天然の大腿骨頭をプロテーゼベアリングヘッドと置き換えるために大腿骨端部に植え込まれる大腿骨プロテーゼ構成要素と、プロテーゼベアリングヘッドを受容するように、広げられた寛骨臼空洞(reamed acetabular cavity)または天然の寛骨臼内に植え込まれるおよびプロテーゼ寛骨臼カップと、が必要とされる場合がある。
【0003】
プロテーゼを骨の表面に、または骨空洞内部で固定することで知られる、さまざまな範囲の異なる固定技術がある。さらに、これらの固定技術を組み合わせて使用することができる。一般に、プロテーゼから骨内へ延びるねじ、釘、ワイヤ、または同様の留め具でプロテーゼを固定することで、機械固定がもたらされる。植え込まれたときに骨と接触するか、または骨に非常に近接するプロテーゼ表面にコーティングを設けることも知られており、このコーティングは、骨結合(osseointegration)を促進するよう選択される。骨結合は、生きている骨とプロテーゼ表面との間の、直接的な構造的かつ機能的接続である。骨結合は、プロテーゼ(特に金属プロテーゼ)の表面特徴部内への骨の内部成長によりプロテーゼが骨に固定される機械的保持、または、インプラントが生理活性材料でコーティングされる生理活性保持のいずれかにより生じることができ、生理活性材料は、骨形成を促進し、インプラントが骨と膠着する化学的結合をもたらす。
【0004】
機械固定による骨結合は、植え込み可能なプロテーゼ内で一般に使用されるいくつかの金属、例えばチタンおよびチタン合金で生じる。これは、骨と接触するプロテーゼの表面上に孔、スロット、およびくぼみといった位相的特徴部を設けることで、促進され得る。プロテーゼの化学的保持はなく、保持は、プロテーゼの表面積に左右される。機械固定による骨結合は、プロテーゼの表面積を増大するようにプロテーゼの表面部分を処理すること、例えば表面をエッチングすることによって、促進され得る。あるいは、細孔内への骨の内部成長によりプロテーゼと骨との間に堅い結合が形成されるように、金属基板に多孔性コーティングを適用することが知られている。多孔性コーティングは、コーティングに複数の介在性接続細孔を画定するよう接触点で互いに結合された、金属材料の複数の別個の小粒子のみからなってよい。このようなコーティング材料、およびコーティングを形成する方法がUS−3855638に記載されている。好ましくは、それらの粒子は、基板と同じ金属材料のものである。コーティングは、コーティングされるべき基板の部分に接着剤を塗布し、粒子を接着剤に付けることによって、形成され得る。あるいは、水溶液中に懸濁した金属粉末のスラリーを形成して、基板に付けることができる。プロテーゼはその後、焼結され、接着剤もしくは水溶液を除去し、粒子を互いに、かつ基板に融合させる。そのような多孔性コーティングは、DePuy Orthopaedics, IncからPorocoatという名称で市販されている。
【0005】
生理活性骨結合は、コーティングが骨形成を刺激すると、生じる。適切なコーティング材料は、ハイドロキシアパタイト(HA;ハイドロキシルアパタイトとしても知られる)である。ハイドロキシアパタイトは、天然の骨の、最大で70%を形成するカルシウムアパタイト(calcium apatite)の、天然に存在する鉱物形態である。ハイドロキシアパタイトは、一般的には、切断された骨を置き換えるための賦形剤として、または骨結合を促進するためのプロテーゼコーティングとして、使用される。
【0006】
天然の骨、特にプロテーゼを受容するよう構成された骨内部の広げられた空洞に対して、植え込まれたプロテーゼを正しく整列させることは、骨に対する強力な結合を確実にするため、また、再構成される関節の正確な可動性を達成するために、不可欠である。例えば、寛骨臼カップについては、カップ(概して、半球形の外表面を有する)を受容するよう成形された寛骨臼(または、適切な場合には天然の寛骨臼空洞を使用してよい)に、空洞を形成する。カップは、その空洞内部で偏心して位置付けられることが意図されており、カップの一部が、空洞の縁の上に突出する。しかしながら、経験の浅い外科医は、カップの自然な向きを再現するため、カップが寛骨臼の縁と同じ高さの所定位置に置かれ、固定されることが意図されていると、誤って考えている場合がある。これは不適当であり、股関節の動きを制限する場合がある。
【0007】
従来の寛骨臼カップの設置に関する第2の問題は、外科医の視角のため、カップを位置付けるのが困難であることに起因する。寛骨臼カップを位置付けるためには、典型的には、カップを、患者の長さ方向軸に対して40°の傾斜で挿入する。次に、典型的には、20°の前傾(患者の長さ方向軸周囲での回転)を適用して、正しい解剖学的位置をとることが、必要である。しかしながら、外科医が前方−後方平面で患者を見ている場合、手術による前傾(operative anteversion)が施されると、傾斜角度が大きくなるように見える。この合成角作用(compound angle effect)によって、経験不足の外科医が、傾斜を減らすことで埋め合わせをする場合がある。しかしながら、これにより、不適当なカップの植え込みが結果として生じ、これは、カップの磨耗率を増大させる。
【0008】
第3の問題は、従来の寛骨臼カップについて、空洞の中に正しく設置された場合に、空洞から突出するカップの部分が、骨結合を促進するための基板の表面処理により、粗い表面を含み得ることである。この粗い表面は、周囲の軟組織をすり減らすかもしれない。
【0009】
本発明の実施形態の目的は、本明細書で特定されるかまたはその他で特定されるかにかかわらず、従来技術に関する問題のうちの1つまたは複数を除去または軽減することである。特に、本発明の実施形態の目的は、局所的な骨の目印を参照することで、外科医が、植え込まれたプロテーゼを正しく位置付けるのを助ける、プロテーゼを提供することである。
【0010】
本発明の第1の態様によると、骨に連結されるように構成されたプロテーゼが提供され、このプロテーゼは、表面を有する基板を含み、基板の表面は、第1の領域および第2の領域を有し、第1の領域は、骨結合が第2の領域よりも促進されるように処理され、第1の領域と第2の領域との間の界面は、骨に対するプロテーゼの整列を助ける整列マークを形成し、プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、骨空洞に対する整列マークの位置が、プロテーゼの挿入角度を示すか、または整列マークが、空洞におけるプロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準(position reference)を提供する。
【0011】
本発明の第1の態様の利点は、整列マークが、局所的な骨の目印に対してプロテーゼを整列する上で外科医を助けることである。例えば、寛骨臼カップに関する本発明の実施形態について、整列マークは、寛骨臼空洞に対するカップの正確な整列を示すことができる。より詳細には、整列マークは、有利なことに、骨空洞から突出するカップの正確な割合を外科医に対して特定することができる。これにより、カップが、寛骨臼の縁と同じ高さに不適当に挿入されるか、または傾斜角度が、外科医の視角からの合成角の作用により不適当に設定される危険性が低くなる。表面処理は、骨結合を促進するため、基板にコーティングを施すことを含み得る。あるいは、表面処理は、表面をグリットブラストするか、または表面を別様に処理して、物質を除去し、基板の多孔性または表面積を増大させることを含み得る。表面処理は、第1の領域に施されるだけであってよい。あるいは、第1の領域および第2の領域の双方が処理されてもよいが、処理の量、または処理のタイプは、これら2つの領域間で異なっていてよい。例えば、コーティング材料の深さを、第1の領域のほうで大きくしてもよい。
【0012】
骨空洞に対する整列マークの位置は、空洞から延出するプロテーゼの部分を示すことができる。
【0013】
プロテーゼは、骨結合を促進するため少なくとも第1の領域において基板の表面に施されたコーティングを含んでよく、第2の領域は、整列マークを形成するため、コーティングの中断部(interruption)を含む。
【0014】
本発明のある実施形態によると、骨に連結されるように構成されたプロテーゼが提供され、このプロテーゼは、基板と、骨結合を促進するため基板の表面に施されたコーティングと、を含み、コーティングの少なくとも1つの中断部が設けられて整列マークを形成し、骨に対するプロテーゼの整列を支援し、プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、骨空洞に対する、コーティングの中断部の位置が、プロテーゼの挿入角度、または空洞から延出するプロテーゼの部分を示す。
【0015】
コーティングの少なくとも一部が、骨組織と接触するように使用中に配列されてよい。コーティングは、下にある基板よりも大きな表面積を有する多孔性コーティングを含み得る。あるいは、コーティングは、骨成長を促進するよう、生理活性材料を含むことができる。コーティングの中断部は、プロテーゼ表面の粗さの差として、かつ/またはプロテーゼ表面の段差不連続部(step discontinuity)として、検出可能であってよい。
【0016】
プロテーゼは、空洞内へ延びる第1の軸周辺で回転対称であってよい。特に、プロテーゼは、プロテーゼのボールソケット形継手のソケット構成要素を形成するよう、骨空洞に挿入されるように構成されたカップを含んでよい。コーティングの中断部は、カップの縁から、カップの凸状表面を横切って延びる分割線まで、カップの凸状表面の一部にわたって延びることができ、この分割線は、所定の角度でカップの縁に対して延びており、コーティングの中断部は、カップが骨空洞内部で傾斜したときに骨空洞から突出することが意図されたカップの部分に対応する。あるいは、コーティングの中断部は、カップの縁に対して所定の角度で延びている、カップの凸状表面を横切る少なくとも1本の線に沿って形成されてよい。
【0017】
本発明の第2の態様によると、プロテーゼを製造する方法が提供され、この方法は、基板を提供する工程と、第1の領域および第2の領域を特定する工程と、骨結合が第2の領域よりも促進されるように第1の領域を処理する工程と、を含み、第1の領域と第2の領域との間の界面は、骨に対してプロテーゼを整列させるのを助ける整列マークを形成し、プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、骨空洞に対する整列マークの位置が、プロテーゼの挿入角度を示すか、または整列マークは、空洞におけるプロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を提供する。
【0018】
第1の領域を処理する工程は、基板の表面の第2の領域を遮蔽する工程と、骨結合を促進するコーティングを、基板の表面の第1の領域に施す工程であって、コーティングは、基板の、遮蔽されていない第1の領域に付着し、基板の遮蔽された第2の領域は、整列マークを形成する、コーティングの中断部を含む、工程と、を含むことができる。
【0019】
本発明のある実施形態によると、プロテーゼを製造する方法が提供され、この方法は、基板を提供する工程と、基板の表面の一部を遮蔽する工程と、骨結合を促進するコーティングを、基板の表面に施す工程であって、コーティングは、基板の遮蔽されていない部分に付着し、遮蔽された部分は、整列マークを形成する、コーティングの中断部を含んで、骨に対するプロテーゼの整列を助け、プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、骨空洞に対するコーティングの中断部の位置は、プロテーゼの挿入角度、または空洞から延出するプロテーゼの部分を示す。
【0020】
本発明の第3の態様によると、プロテーゼを植え込む方法が提供され、この方法は、プロテーゼを骨空洞に挿入する工程であって、プロテーゼは、表面を有する基板を含み、基板の表面は、第1の領域および第2の領域を有し、第1の領域は、骨結合が第2の領域よりも促進されるように処理され、第1の領域と第2の領域との間の界面は、骨に対するプロテーゼの整列を助ける整列マークを形成する、工程と、骨空洞に対する整列マークの位置がプロテーゼの挿入角度を示すか、または整列マークが空洞におけるプロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を提供するように、骨空洞内部でプロテーゼを回転させることによって、局所的な骨特徴部に対して整列マークを整列させる工程と、を含む。
【0021】
本発明のある実施形態によると、プロテーゼを植え込む方法が提供され、この方法は、プロテーゼを骨空洞に挿入する工程であって、プロテーゼは、基板、および骨結合を促進するために基板の表面に施されるコーティングを含み、コーティングは、整列マークを形成する、少なくとも1つの中断部を有する、工程と、骨空洞に対するコーティングの中断部の位置が、プロテーゼの挿入角度または空洞から延びるプロテーゼの部分を示すように、骨空洞内部でプロテーゼを回転させることによって、局所的な骨の特徴部とコーティングの中断部を整列させる工程と、を含む。
【0022】
本発明は、添付図面を参照して、単なる例として説明される。
【0023】
まず図1を参照すると、この図は、中空で概ね半球形の金属基板2と、凸状表面6の一部の上のコーティング4と、を含む寛骨臼カップを示し、これは、植え込まれると、少なくとも部分的に骨と接触する。コーティング4は、骨結合を促進することを目的としており、Porocoatなどの多孔性コーティング、またはハイドロキシアパタイトなどの生理活性コーティング、または、プロテーゼの表面に施すことができる任意の他の類似したコーティング材料であってよい。カップは、追加の骨固定手段、例えば概して半球の極に位置付けられたねじ穴(不図示)、を有してよい。コーティング4は、凸状表面6の大部分の上に延びるが、コーティング無し部分8により中断されており、コーティング無し部分は、カップの縁10の1つのエッジから延びている。コーティング無し部分8は、凸状表面6を横切る弧に沿って延びる分割線12に沿って、コーティングから分離されている。この弧は、縁10の周りの別個の地点で始まり、かつ終了してよく、または、縁10上の単一地点に、かつその地点から延びることができる。あるいは、分割線12は、カップ周辺に延びる円を概ね構成することができる。
【0024】
次に図2を参照すると、この図は、患者の寛骨臼内部に形成された骨空洞14へ挿入される間における、図1のカップを部分断面図で示している。分割線12が縁10に対して約20°で凸状表面6を横切って延びているのを見ることができる。カップは、分割線12が寛骨臼の縁16とほぼ整列し、カップのコーティング無し部分8が、広げられた寛骨臼空洞または天然の寛骨臼14から突出するように、位置付けられる。縁10に対する分割線12の角度は、外科医が、空洞14から突出すべきカップの割合を明確に特定できるように選択される。本発明の他の実施形態では、分割線12と縁10との間の角度がさまざまであってよいことが認識されるであろう。
【0025】
コーティング4とコーティング無し部分8との間の違いは、表面の粗さの違い、および、カップ表面の段差変化(コーティング4の厚さに等しい)として、外科医が明確に特定することができる。したがって、局所的な骨の目印(すなわち寛骨臼の縁16)に対してカップを位置付ける整列マークとして役立つ、コーティング無し部分8は、血液または他の流体により不明瞭であったとしても、明確に特定可能である。整列マークを明確に特定することは、それらの整列マークが手術中に容易に特定可能であることを確実にする上で重要である。したがって、異なるコーティング技術を用いて整列マークを形成することは、レーザーマーキング、またはプロテーゼ表面に色を付けること(これは、より分かりにくくなりやすい)によって形成される整列マークより好ましい。
【0026】
コーティング無し部分が空洞のエッジ(そこからカップは突出するよう意図されている)に向くよう、まずカップをその極性軸の周りで回転させ、その後、分割線が寛骨臼の縁と平行になるまでカップを傾けることによって、カップは、準備した空洞の中に容易に挿入され得る。カップのコーティング無し部分は、骨と接触していないので、コーティング面積の減少による強度損失はない。
【0027】
次に図3を参照すると、この図は、本発明の第2の実施形態による寛骨臼カップを示している。図1および図2に共通の特徴部には、同じ参照符号を用いて言及する。図1および図2は、カップの一定の部分(fixed portion)が一定の角度で空洞から突出するように骨空洞に挿入されることが意図されたカップを示しているが、突出角度は、外科医が手術中に選択するのが望ましい場合がある。凸状表面6の単一のコーティング無し部分の代わりに、図3は、コーティングがカップに存在しない領域から形成された、コーティング4内部の一連の線20を示している。線20は、コーティング内部の細長い隙間を構成し、コーティングが線20の間にある。示されるように、4本の線20があってよく、これらは、5°、10°、15°、20°だけ縁10から離間しているが、線の本数、および線の間隔は、さまざまであってよく、例えば、縁に対して、図1に示す分割線12と同じ角度位置にある1本の線のみであってもよい。これらの線は、図3に示すようにカップの縁へと延びることができるが、代わりに、縁の手前で止まってもよく、または縁に交差しなくてもよい。
【0028】
有利なことに、空洞からの限られた角度突出が必要とされる場合、骨空洞内部に位置する線20により表されるコーティング面積の減少は最小限である。反対に、図1および図2のカップでは、外科医が、最大限のコーティング無し部分(full extent of the uncoated portion)により示されるものより小さい角度突出でカップを植え込むと決定した場合、凸状表面全体がコーティングされる先行技術によるカップに比べ、骨と接触するコーティングが著しく減少し得る。
【0029】
本発明の代替的な実施形態では、異なるサイズおよび形状の凸状表面をコーティングせずに残し、整列マークとして役立たせ得ることが認識されるであろう。例えば、コーティングの無い線は、点線、縁まで完全に延びない短い線、またはコーティングの、単一の小さい円形の中断部で置き換えられてもよい。さらに一般的には、局所的な骨の目印に対するプロテーゼの整列情報を運ぶことができる、コーティングの任意の中断部は、本発明の範囲内である。
【0030】
コーティングの中断部は、特定のコーティング材料に照らして当業者に周知であるように、コーティングを施す前にプロテーゼ表面の一部を覆うことで、設けられ得る。
【0031】
本発明は、主にプロテーゼ寛骨臼カップに関して説明されてきたが、本発明は、この適用に限定されない。例えば、本発明は、肩関節の関節窩に連結されるように構成されたカップに適用されてもよい。より一般的には、本発明は、任意のプロテーゼ構成要素に適用可能であり、プロテーゼ構成要素が骨に対して可変角度で植え込まれ得るか、または骨空洞から突出するプロテーゼの割合を変えて植え込まれ得る適用に特に適しており、コーティングの中断部は、プロテーゼ構成要素を正しく整列させるのを助ける。特に、コーティングの中断部は、骨空洞から突出することが意図されるプロテーゼ構成要素の割合を決定するのを助ける。
【0032】
コーティングの中断部は、コーティングが施されているプロテーゼ表面の部分と、コーティングの無いプロテーゼ表面の部分との間の違いとして、前述してある。しかしながら、本発明の代替的な実施形態では、中断部は、コーティング厚さの違い、またはコーティング材料の追加の層の有無を含むことができる。本発明のさらなる実施形態では、基板の表面にコーティング材料が施されていなくてもよい。代わりに、基板の選択された部分が、例えば、材料の多孔性または表面積を増やすことによって、骨結合を促進するように処理されてもよい。例えば、選択された部分をグリットブラストするか、または別様に処理して、その部分の粗さを増大させることができる。整列マークは、別々の程度まで骨結合を促進するため別々に処理された隣接表面領域間の界面を含む。例えば、1つの領域は、全く処理されていなくてよく、または軽度に(lower extent)処理されるか、または別様に処理されてよい。
【0033】
本発明に対するさらなる改変、および本発明のさらなる適用が、請求項の範囲から逸脱せずに、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0034】
〔実施の態様〕
(1) 骨に連結されるように構成されたプロテーゼにおいて、
表面を有する基板、
を含み、
前記基板の前記表面は、第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域は、前記第2の領域よりも骨結合が促進されるように処理され、
前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を支援する整列マークを形成し、
前記プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を与える、プロテーゼ。
(2) 実施態様1に記載のプロテーゼにおいて、
前記骨空洞に対する前記整列マークの位置は、前記空洞から延出する前記プロテーゼの部分を示す、プロテーゼ。
(3) 実施態様1または2に記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、骨結合を促進するため少なくとも前記第1の領域において前記基板の前記表面に施されたコーティングを含み、前記第2の領域は、前記整列マークを形成するため、前記コーティングの中断部を含む、プロテーゼ。
(4) 実施態様3に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの少なくとも一部が、骨組織と接触するように使用中に配列される、プロテーゼ。
(5) 実施態様3または4に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングは、下にある前記基板より大きい表面積を有する多孔性コーティングを含む、プロテーゼ。
【0035】
(6) 実施態様3または4に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングは、骨成長を促進するよう、生理活性材料を含む、プロテーゼ。
(7) 実施態様3〜6のいずれかに記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、前記プロテーゼ表面の粗さの差、および/または前記プロテーゼ表面の段差不連続部として、検出可能である、プロテーゼ。
(8) 実施態様1〜7のいずれかに記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、第1の軸に関して回転対称である、プロテーゼ。
(9) 実施態様1〜8のいずれかに記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、プロテーゼのボールソケット形継手のソケット構成要素を形成するよう、骨空洞に挿入されるように構成されたカップを含む、プロテーゼ。
(10) 実施態様3に従属する実施態様9に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、前記カップの縁から、前記カップの凸状表面を横切って延びる分割線まで、前記カップの前記凸状表面の一部にわたって延び、
前記分割線は、所定の角度で前記カップの前記縁に対して延び、前記コーティングの前記中断部は、前記カップが骨空洞内部で傾斜したときに前記骨空洞から突出することが意図された前記カップの部分に対応する、プロテーゼ。
【0036】
(11) 実施態様10に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、所定の角度で前記カップの前記縁に対して延びる前記カップの前記凸状表面を横切る少なくとも1本の線に沿って形成される、プロテーゼ。
(12) プロテーゼを製造する方法において、
基板を提供する工程と、
第1の領域および第2の領域を特定する工程と、
骨結合が前記第2の領域より促進されるように前記第1の領域を処理する工程と、
を含み、
前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を助ける整列マークを形成し、
前記プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を与える、方法。
(13) 実施態様12に記載のプロテーゼを製造する方法において、
前記第1の領域を処理する工程は、
前記基板の前記表面の前記第2の領域を遮蔽する工程と、
前記基板の前記表面の前記第1の領域に、骨結合を促進するコーティングを施す工程であって、前記コーティングは、前記基板の、遮蔽されていない前記第1の領域に付着し、前記基板の、遮蔽された前記第2の領域は、前記整列マークを形成する、前記コーティングの中断部を含む、工程と、
を含む、方法。
(14) プロテーゼを植え込む方法において、
骨空洞にプロテーゼを挿入する工程であって、前記プロテーゼは、表面を有する基板を含み、前記基板の前記表面は、第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域は、骨結合が前記第2の領域より促進されるように処理され、前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を助ける整列マークを形成する、工程と、
前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を提供するように、前記骨空洞内部で前記プロテーゼを回転させることによって、局所的な骨特徴部に対して前記整列マークを整列させる工程と、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態による寛骨臼カップを示す。
【図2】広げられた骨空洞に植え込まれた図1の寛骨臼カップを部分断面図で示す。
【図3】本発明の第2の実施形態による寛骨臼カップを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨に連結されるように構成されたプロテーゼにおいて、
表面を有する基板、
を含み、
前記基板の前記表面は、第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域は、前記第2の領域よりも骨結合が促進されるように処理され、
前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を支援する整列マークを形成し、
前記プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を与える、プロテーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロテーゼにおいて、
前記骨空洞に対する前記整列マークの位置は、前記空洞から延出する前記プロテーゼの部分を示す、プロテーゼ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、骨結合を促進するため少なくとも前記第1の領域において前記基板の前記表面に施されたコーティングを含み、前記第2の領域は、前記整列マークを形成するため、前記コーティングの中断部を含む、プロテーゼ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの少なくとも一部が、骨組織と接触するように使用中に配列される、プロテーゼ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングは、下にある前記基板より大きい表面積を有する多孔性コーティングを含む、プロテーゼ。
【請求項6】
請求項3または4に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングは、骨成長を促進するよう、生理活性材料を含む、プロテーゼ。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、前記プロテーゼ表面の粗さの差、および/または前記プロテーゼ表面の段差不連続部として、検出可能である、プロテーゼ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、第1の軸に関して回転対称である、プロテーゼ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロテーゼにおいて、
前記プロテーゼは、プロテーゼのボールソケット形継手のソケット構成要素を形成するよう、骨空洞に挿入されるように構成されたカップを含む、プロテーゼ。
【請求項10】
請求項3に従属する請求項9に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、前記カップの縁から、前記カップの凸状表面を横切って延びる分割線まで、前記カップの前記凸状表面の一部にわたって延び、
前記分割線は、所定の角度で前記カップの前記縁に対して延び、前記コーティングの前記中断部は、前記カップが骨空洞内部で傾斜したときに前記骨空洞から突出することが意図された前記カップの部分に対応する、プロテーゼ。
【請求項11】
請求項10に記載のプロテーゼにおいて、
前記コーティングの前記中断部は、所定の角度で前記カップの前記縁に対して延びる前記カップの前記凸状表面を横切る少なくとも1本の線に沿って形成される、プロテーゼ。
【請求項12】
プロテーゼを製造する方法において、
基板を提供する工程と、
第1の領域および第2の領域を特定する工程と、
骨結合が前記第2の領域より促進されるように前記第1の領域を処理する工程と、
を含み、
前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を助ける整列マークを形成し、
前記プロテーゼは、骨空洞に少なくとも部分的に挿入されるように構成され、前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を与える、方法。
【請求項13】
請求項12に記載のプロテーゼを製造する方法において、
前記第1の領域を処理する工程は、
前記基板の前記表面の前記第2の領域を遮蔽する工程と、
前記基板の前記表面の前記第1の領域に、骨結合を促進するコーティングを施す工程であって、前記コーティングは、前記基板の、遮蔽されていない前記第1の領域に付着し、前記基板の、遮蔽された前記第2の領域は、前記整列マークを形成する、前記コーティングの中断部を含む、工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
プロテーゼを植え込む方法において、
骨空洞にプロテーゼを挿入する工程であって、前記プロテーゼは、表面を有する基板を含み、前記基板の前記表面は、第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域は、骨結合が前記第2の領域より促進されるように処理され、前記第1の領域と第2の領域との間の界面が、骨に対する前記プロテーゼの整列を助ける整列マークを形成する、工程と、
前記骨空洞に対する前記整列マークの位置が、前記プロテーゼの挿入角度を示すか、または前記整列マークが、前記空洞における前記プロテーゼの植え込み位置を判断する位置基準を提供するように、前記骨空洞内部で前記プロテーゼを回転させることによって、局所的な骨特徴部に対して前記整列マークを整列させる工程と、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524584(P2012−524584A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506556(P2012−506556)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000718
【国際公開番号】WO2010/122281
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(500353989)デピュー インターナショナル リミテッド (40)
【Fターム(参考)】