説明

外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法及び該組立方法に用いる治具

【課題】ワイヤーハーネスの製造作業性を向上でき、自己粘着シートを用いることにより特別な製造設備を不用にして製造コストを低減できる外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法及び該組立方法に用いる治具を提供する。
【解決手段】ワイヤーハーネス25及びワイヤーハーネス25を側方より押圧する為の押さえ治具21を共に片面自己粘着シート17の特殊粘着剤層19上に配置する工程と、片面自己粘着シート17を二つ折りしてワイヤーハーネス25及び押さえ治具21を特殊粘着剤層19で挟持した状態に重ね合わせる工程と、ワイヤーハーネス25を側方より押さえ治具21にて押圧して片面自己粘着シート17の折り返し部に沿って整列させる工程と、重ね合わせた片面自己粘着シート17内から押さえ治具21をワイヤーハーネス25の軸線と略直角な方向に引き抜く工程と、治具21を引き抜いた箇所の片面自己粘着シートの特殊粘着剤層19同士を圧接する工程と、を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法及び該組立方法に用いる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
被取付体である車両のボディやドアに取り付けられるワイヤーハーネスは、ワイヤーハーネスに取り付けられた複数のクランプを、ボディやドアに穿設されたクランプ取付穴に係止して取り付けられる。このワイヤーハーネスには、図6に示すように、結束された電線501の端末部や、分岐部503の端末部にコネクタ505が取り付けられ、必要に応じて、防水領域や、電線501による打音発生を防止する必要がある領域の所定箇所に、樹脂製のシート507が巻かれる(例えば特許文献1,2,3参照)。
【0003】
例えば特許文献1等に開示の外装シートのワイヤーハーネス取付方法は、図7(a)に示すように、布線用図板509に立設したY字形状の布線治具511の受部513に電線501を布線し、電線501の周囲に粘着テープ515を螺旋状に巻き付けてワイヤーハーネス517を形成する。ワイヤーハーネス517の外周面に、予め粘着剤519を塗布したシート507の一部を巻き付ける。この時、粘着剤519が対向するシート内面521に位置するようにシート507をワイヤーハーネス517に被せ、かつ、巻付終端523は、巻付始端525より下方へ垂れ下がった状態となるようにしている。この状態で、図7(b)に示すように、巻付始端525の粘着剤519を対向するシート内面521に接触させ、シワがよらないように伸ばしながら押し付けて、ワイヤーハーネス517を囲む円筒部527を形成する。次いで、シート507の外周面に不図示の半円筒形状治具を外嵌して、残りのシート507をワイヤーハーネス517の外周面に巻き付ける。これにより、シート507を隙間及びシワの発生なく、迅速に巻き付け可能としている。この他、シート507には、粘着剤を覆う剥離紙をはがしてワイヤーハーネス517の指定位置にもっていき、貼り合わせるものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−8596号公報
【特許文献2】特開2007−149566号公報
【特許文献3】特開2004−274952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の粘着剤519を塗布したシート507は、ワイヤーハーネス517外装させるための作業性に難があった。すなわち、粘着剤付きシート507は、不用意にワイヤーハーネス517や治具にくっつくと剥がす時間がかかったり、粘着剤がとれてワイヤーハーネス517側についてしまったりすることがあった。そのため、作業者は気遣いをしながら作業をしなければならず、時間がかかっていた。また、一度粘着面にワイヤーハーネス517がくっつくと剥がすことが困難なため、図8に示すように、電線501が蛇行したり、所定の位置につかなかったりすることもあった。これに対し、粘着剤519を塗布したシート507に換えてホットメルト等を用いることにより作業性は改善されるが、ホットメルト加工機等の特別な製造設備が必要になるという難点があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ワイヤーハーネスの製造作業性を向上でき、自己粘着シートを用いることにより特別な製造設備を不用にして製造コストを低減できる外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法及び該組立方法に用いる治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) ワイヤーハーネス及び該ワイヤーハーネスを側方より押圧する為の治具を共に自己粘着シートの粘着面上に配置する工程と、前記自己粘着シートを二つ折り又は二枚重ねして前記ワイヤーハーネス及び前記治具を前記粘着面で挟持した状態に重ね合わせる工程と、前記ワイヤーハーネスを側方より前記治具にて押圧して前記自己粘着シートの折り返し部又は二枚重ねした一端側に沿って整列させる工程と、重ね合わせた前記自己粘着シート内から前記治具をワイヤーハーネスの軸線と略直角な方向に引き抜く工程と、前記治具を引き抜いた箇所の前記自己粘着シートの粘着面同士を圧接する工程と、を含む外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法。
【0008】
この外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法によれば、自己粘着シートが粘着面を上にして下敷きにされ、そのほぼ中央付近にワイヤーハーネスと治具とが配置される。治具は、ワイヤーハーネスの押さえたい部分に対して押圧方向がほぼ直角となるように置く。二つ折りの場合、自己粘着シートの上側を手前に引きながら治具を一緒に手前側の自己粘着シートの粘着面に被せながら圧力をかける。ワイヤーハーネスは、自己粘着シートが二つ折りされる際、治具により側方を押さえられることで位置ずれしない。また、ワイヤーハーネスは、治具により軸線方向の中央部を側方から押さえられることで治具の押圧方向先端部を頂点に屈曲した状態とすることも可能となる。ワイヤーハーネス及び治具を挟持した後、治具を手前に引きながら、治具があった場所を押さえて圧力をかけ、最終的に治具を重ね合わせた自己粘着シート内から抜く。治具の抜き取られた後の空間における粘着面同士を圧接して貼り合わせる。これにより、ワイヤーハーネスは、蛇行することなく、自己粘着シートの所定位置に高精度に固定される。
【0009】
(2) (1)の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具であって、棒状に形成した治具の押圧方向先端部には、前記ワイヤーハーネスの側面を押える為のハーネス押圧部を備え、該治具は重ね合わせた前記自己粘着シートに挟持される対向面を除く少なくとも一側面が、引き抜き方向に向かって治具が徐々に幅広がりとなるテーパ面に形成されることを特徴とする外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具。
【0010】
この外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具によれば、ワイヤーハーネスを自己粘着シートによって挟持する際に、ワイヤーハーネスと共に挟み込まれる治具は、ハーネス押圧部をワイヤーハーネスの側面に当接させるようにしてワイヤーハーネスの押さえたい部分に対してほぼ直角に置かれ、自己粘着シートの上側を手前に引く際、ワイヤーハーネスが移動するのを押さえる。これにより、ワイヤーハーネスが位置ずれせず、自己粘着シートの二つ折りが可能となる。また、ワイヤーハーネスが所定の位置に挟持された後、治具を抜去する際には、治具の一側面が引き抜き方向に幅広がりのテーパ面となっているので、引き抜き抵抗が少なくなり、作業が容易となる。
【0011】
(3) (2)の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具であって、前記治具の対向面の少なくとも一面が、引き抜き方向に向かって治具が徐々に肉厚となるテーパ面に形成されることを特徴とする外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具。
【0012】
この外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具によれば、治具の一側面に加えて、自己粘着シートに挟持される対向面の少なくとも一面もテーパ面となることで、さらに引き抜き抵抗が少なくなり、作業が一層容易となる。
【0013】
(4) (2)又は(3)の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具であって、前記ハーネス押圧部は前記ワイヤーハーネスの軸線直交方向の横断面形状が円弧状となる凹曲面状に形成されている外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具。
【0014】
この外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具によれば、自己粘着シートを二つ折りしたり、ワイヤーハーネスを所望位置に位置決めしたりするために、ワイヤーハーネスを治具により押さえる際、ワイヤーハーネスが凹曲面状となったハーネス押圧部の内方に保持され、ワイヤーハーネスの保持性が高まり、位置決め作業が容易となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法によれば、簡単な治具と自己粘着シートを用いることにより手作業でワイヤーハーネスを自己粘着シートの所定位置に正確に固定できるとともにシートもずれることなく圧着できる。この結果、ワイヤーハーネスの製造作業性を向上でき、自己粘着シートを用いることにより特別な製造設備を不用にして製造コストを低減できる。
【0016】
本発明に係る外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具によれば、自己粘着シートを用いてワイヤーハーネスを挟持するに際し、自己粘着シートの折り返し部又は二枚重ねした一端側に沿ってワイヤーハーネスを容易に且つ高精度に整列させることができ、しかも、自己粘着シートを本固定するときの抜去を容易にしてワイヤーハーネスの製造作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法を説明する自己粘着シート上に置かれた治具及び電線の平面図である。
【図2】(a)は図1に示した治具の横断面図、(b)は(a)に示した治具の変形例を示す横断面図である。
【図3】(a)は自己粘着シートを重ね合わせた状態の平面図、(b)は(a)のB−B断面矢視図である。
【図4】(a)は重ね合わせた自己粘着シートから治具抜き取り途中の平面図、(b)は治具抜き取り後の平面図である。
【図5】(a)は自己粘着シートが外装されたワイヤーハーネスの要部平面図、(b)は(a)のC−C断面における断面図である。
【図6】従来のワイヤーハーネスの平面図である。
【図7】(a)は従来の外装シート取付治具の斜視図、(b)は外装シート貼り合わせ時の斜視図である。
【図8】粘着剤付きシートが固定された従来のワイヤーハーネスの要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法を説明するため、自己粘着シート上に置かれた治具及び電線の平面図である。
本実施の形態に係る外装シート付ワイヤーハーネス11の組立方法によれば、結束された電線13に自己粘着シートである片面自己粘着シート17が固定(外装)される。片面自己粘着シート17は、電線13の一部分に固定されるもの、電線13のほぼ全長に渡って固定されるもののいずれであってもよい。電線13の端部には不図示のコネクタが取り付けられていてもよい。また、本実施の形態に係る自己粘着シートは、両面が粘着面、又は片面が粘着面のいずれであってもよい。本実施の形態では、片面に粘着面が形成された片面自己粘着シート17を例に説明する。
【0019】
本実施の形態で用いられる片面自己粘着シート17は、図5(b)に示すように、自身の粘着面(裏面)同士を自己粘着によって貼り合わすことができる。つまり、糊や結束テープを不要にして粘着面(裏面)同士を合わせるだけで簡単に貼ることが可能となる。片面自己粘着シート17は、PP(ポリプロピレン)発泡材からなるシート基材15の表面に表面材16が積層され、裏面に特殊粘着剤層19が積層される。表面材16にはクラフト紙、ライナーボード、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PPフィルム、不織布等が使用可能となる。引張強さは、タテ方向が49N/cm幅、ヨコ方向が23N/cm幅(JIS K−6767準拠)、引裂強さは、タテ方向が7.8N、ヨコ方向が6.8N(JIS K−6767準拠)、水蒸気透過率は0.0052g/cm・24hrs(FS−101B)、初期粘着力は2.5N/cm幅(T型剥離試験)等の特性を有する。この片面自己粘着シート17としては例えば米国クロウェル社製のCro−nel(登録商標)等を用いることができる。
【0020】
本実施の形態において、片面自己粘着シート17は、一枚のものが使用される。片面自己粘着シート17は、外形状があらかじめ所定形状に成形される。なお、本発明に用いる自己粘着シートは、第1の自己粘着シート材と第2の自己粘着シート材からなる二枚のもので電線13を挟み、粘着面同士を貼り合わせても同様の作用・効果が得られる。
【0021】
本実施の形態に係る外装シート付ワイヤーハーネス11の組立方法では、上記した片面自己粘着シート17に加えて、押さえ治具(治具)21が主要な構成要件となる。押さえ治具21は、棒状に形成される。この押さえ治具21の押圧方向先端部には、ワイヤーハーネスの側面を押さえる為のハーネス押圧部27を備える。束状の電線13は、結束されてワイヤーハーネス25となっている。押さえ治具21の基本形状は、四角垂台、円柱状、円錐台状、楕円錐台状であり、ワイヤーハーネス25に当たるハーネス押圧部27は後述するように凹曲面状でも平面でもよい。
【0022】
本実施の形態に係る押さえ治具21は、図2(a)に示すように、ハーネス押圧部27がワイヤーハーネス25の軸線直交方向の横断面形状が円弧状となる凹曲面状に形成されている。そこで、片面自己粘着シート17を二つ折りしたり、ワイヤーハーネス25を所望位置に位置決めしたりするために、ワイヤーハーネス25を押さえ治具21により押さえる際、凹曲面状となったハーネス押圧部27の内方にワイヤーハーネス25が保持されるので、ワイヤーハーネス25の保持性が高まり、位置決め作業が容易となっている。
【0023】
なお、図2(b)に示した変形例である押さえ治具21Aのハーネス押圧部27aは、ワイヤーハーネス25の軸線直交方向の横断面形状が台形状の平面状に形成されている。このような押さえ治具21Aによれば、治具製造を容易にすることができる。
【0024】
ワイヤーハーネス25を片面自己粘着シート17によって挟持する際、押さえ治具21は、ワイヤーハーネス25と共に挟み込まれる。片面自己粘着シート17を用いることによりワイヤーハーネス25及び押さえ治具21には特殊粘着剤層19が接着されない。つまり、ワイヤーハーネス25と押さえ治具21を包囲して特殊粘着剤層19同士が対面する片面自己粘着シート17の重ね合わせた部位のみが接合される。
【0025】
本実施の形態に係る押さえ治具21は、重ね合わせた片面自己粘着シート17に挟持される対向面を除く少なくとも一側面が、引き抜き方向に向かって押さえ治具21が徐々に幅広がりとなるテーパ面29に形成される。これにより、引き抜き時に重ね合わせた片面自己粘着シート17との間に隙間が形成されるようになされている。本実施の形態では、両側面がテーパ面29となっている。
【0026】
押さえ治具21は、図1に示すように、ワイヤーハーネス25の押さえたい部分に対して押圧方向がほぼ直角となるように置かれ、片面自己粘着シート17の奥側(図1中上側)を手前に引く際、ワイヤーハーネス25の側面を押さえる。これにより、ワイヤーハーネス25が位置ずれせず、片面自己粘着シート17の二つ折りが容易となる。また、ワイヤーハーネス25が所定の位置に挟持された後、押さえ治具21を抜去する際には、押さえ治具21の両側面が引き抜き方向に幅広がりのテーパ面29となっているので、引き抜き抵抗が少なく、作業が容易となる。
【0027】
また、本実施の形態に係る押さえ治具21は、押さえ治具21の対向面の少なくとも一面が、引き抜き方向に向かって押さえ治具21が徐々に肉厚となるテーパ面31に形成されることが好ましい。本実施の形態では、図2に示すように、押さえ治具21の対向面の双方がテーパ面31で形成される。このテーパ面31によっても引き抜き時に片面自己粘着シート17との間に隙間が形成される。押さえ治具21の両側面に加えて、対向面の両面もテーパ面31となることで、さらに引き抜き抵抗が少なくなり、作業が一層容易となっている。
【0028】
次に、外装シート付ワイヤーハーネス11の組立方法について説明する。
外装シート付ワイヤーハーネス11を組み立てるには、先ず、図1に示すように、ワイヤーハーネス25と、このワイヤーハーネス25を側方より押圧する為の押さえ治具21とを共に片面自己粘着シート17の上に配置する。より具体的には、特殊粘着剤層19を上側にした片面自己粘着シート17のほぼ中央付近(図1の破線33の位置)にワイヤーハーネス25を置く。その後、ハーネス押圧部27をワイヤーハーネス25の側面に当接させるようにしてワイヤーハーネス25の押さえたい部分に対してほぼ直角に押さえ治具21を置く。
【0029】
次に、図3(a)及び(b)に示すように、片面自己粘着シート17を二つ折りして、ワイヤーハーネス25及び押さえ治具21を挟持した状態に重ね合わせる。より具体的には、片面自己粘着シート17の中央付近よりも奥側(図1中上側)を手前に引き寄せながら押さえ治具21を一緒に手前側(図1中下側)の片面自己粘着シート17に被せて重ね合わされた特殊粘着剤層19に圧力をかける。この状態では、片面自己粘着シート17は、上側の特殊粘着剤層19と、下側の特殊粘着剤層19とが圧接される(圧接することによって特殊粘着剤層19と特殊粘着剤層19とを接着する)ことになる。これにより、片面自己粘着シート17は、粘着面同士が接着される。
【0030】
なお、自己粘着シートが第1の自己粘着シート材と第2の自己粘着シート材からなる二枚の場合には、同形状の第1及び第2の自己粘着シート材の粘着面同士を対面して重ね合わせることになる。
【0031】
次いで、ワイヤーハーネス25を側方より押さえ治具21にて押して片面自己粘着シート17の折り返し部に沿ってワイヤーハーネス25を整列させる。片面自己粘着シート17の奥側を手前に引きながら押さえ治具21を一緒に手前側の片面自己粘着シート17の特殊粘着剤層19に被せながら圧力をかける。ワイヤーハーネス25は、片面自己粘着シート17が二つ折りされる際、押さえ治具21により押さえられることで位置ずれしない。また、ワイヤーハーネス25は、押さえ治具21により押さえられることで押さえ治具21の押圧方向先端部であるハーネス押圧部27を頂点に屈曲した状態とすることも可能となる。
【0032】
片面自己粘着シート17によりワイヤーハーネス25及び押さえ治具21を挟持した後、図4に示すように、押さえ治具21を手前に引きながら、押さえ治具21があった場所を押さえて片面自己粘着シート17の重ね合わせ方向へ圧力をかけ、最終的に押さえ治具21を重ね合わせた片面自己粘着シート17内から抜く。押さえ治具21の抜き取られた後の空間35における特殊粘着剤層19同士を圧接して貼り合わせる。これにより、ワイヤーハーネス25は、蛇行することなく、片面自己粘着シート17の所定位置に高精度に固定される。
最後に、押さえ治具21を引き抜いた箇所の片面自己粘着シート17の特殊粘着剤層19同士を全て圧接して、図5に示す外装シート付ワイヤーハーネス11の組立を完了する。
【0033】
したがって、本実施の形態に係る外装シート付ワイヤーハーネス11の組立方法によれば、簡単な押さえ治具21と片面自己粘着シート17を用いることにより手作業でワイヤーハーネス25を片面自己粘着シート17の所定位置に正確に固定できるとともに片面自己粘着シート17もずれることなく圧着できる。この結果、ワイヤーハーネス25の製造作業性を向上でき、片面自己粘着シート17を用いることにより特別な製造設備を不用にして製造コストを低減できる。また、片面自己粘着シート17を用いることにより剥離紙が不要になり、環境にも貢献できる。
【0034】
また、本実施の形態に係る外装シート付ワイヤーハーネス11の組立方法に用いる押さえ治具21によれば、片面自己粘着シート17を用いてワイヤーハーネス25を挟持するに際し、片面自己粘着シート17の折り返し部に沿ってワイヤーハーネス25を容易に且つ高精度に整列させることができ、しかも、片面自己粘着シート17を本固定するときの抜去を容易にしてワイヤーハーネス25の製造作業性を向上させることができる。
【0035】
尚、本発明の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に係るワイヤーハーネス、治具及び自己粘着シート等の構成部材は、上記実施の形態の構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の形態を採りうる。
例えば、上記実施の形態ではシート基材15の片面に特殊粘着剤層19が積層された片面自己粘着シート17を用いたが、シート基材15の両面に特殊粘着剤層19を積層した両面自己粘着シートを用いることもできる。この場合、図5に示したように重ね合わせた際に垂れ下がる両面自己粘着シートの自由端部をワイヤーハーネス25の回りに巻き付かせることができ、外装シート付ワイヤーハーネスをコンパクトにできる。
【符号の説明】
【0036】
11 外装シート付ワイヤーハーネス
17 片面自己粘着シート(自己粘着シート)
21 押さえ治具(治具)
25 ワイヤーハーネス
27 ハーネス押圧部
29、31 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーハーネス及び該ワイヤーハーネスを側方より押圧する為の治具を共に自己粘着シートの粘着面上に配置する工程と、
前記自己粘着シートを二つ折り又は二枚重ねして前記ワイヤーハーネス及び前記治具を前記粘着面で挟持した状態に重ね合わせる工程と、
前記ワイヤーハーネスを側方より前記治具にて押圧して前記自己粘着シートの折り返し部又は二枚重ねした一端側に沿って整列させる工程と、
重ね合わせた前記自己粘着シート内から前記治具をワイヤーハーネスの軸線と略直角な方向に引き抜く工程と、
前記治具を引き抜いた箇所の前記自己粘着シートの粘着面同士を圧接する工程と、を含む外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法。
【請求項2】
請求項1記載の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具であって、
棒状に形成した治具の押圧方向先端部には、前記ワイヤーハーネスの側面を押える為のハーネス押圧部を備え、該治具は重ね合わせた前記自己粘着シートに挟持される対向面を除く少なくとも一側面が、引き抜き方向に向かって治具が徐々に幅広がりとなるテーパ面に形成されることを特徴とする外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具。
【請求項3】
請求項2記載の外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具であって、
前記ハーネス押圧部は前記ワイヤーハーネスの軸線直交方向の横断面形状が円弧状となる凹曲面状に形成されている外装シート付ワイヤーハーネスの組立方法に用いる治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−156396(P2012−156396A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15724(P2011−15724)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】