説明

外装材用添加剤及び該添加剤を含有してなる外装材

【課題】外装材に対して、セメント等の水硬化性成分の水硬化を阻害せずに、凍害による劣化及び炭酸ガス由来の寸法収縮による劣化の両方を充分に防止する効果を付与できる手段を提供すること。
【解決手段】無機質粉末に下記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を付着させてなる外装材用添加剤。


(式中、R1は、フェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR1は、同一でも異なってもよく、R2及びR3は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR4は、同一でも異なってもよく、nは、2〜50の数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、住宅等の建造物の外装に用いられるサイディング材、パルプセメント板等の外装材に耐久性を付与する外装材用添加剤、及び該外装材用添加剤を含有してなる外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや住宅等の建造物の外壁には、セメント等の水硬化性成分と、木片、パルプ等の軽量骨材とを含有する外装材が使用されている。これらの外装材には、吸収された水の体積変化による凍害、及び炭酸ガスによる寸法収縮に起因する劣化という問題がある。
【0003】
凍害を防ぐためには、撥水剤の使用が提案されている。例えば、特許文献1には、脂肪酸エチルエステル及び脂肪酸カルシウム塩を撥水剤として使用した窯業系サイディングが報告されている。また、特許文献2には、白土含有脂肪酸金属塩を撥水剤として使用したサイディング材が報告されている。また、特許文献3〜5には、シロキサン化合物溶液を土木建築用表面撥水剤として使用することが報告されている。
【0004】
脂肪酸エステルや脂肪酸金属塩に代表される上記撥水剤は、外装材がセメント等の水硬化性成分を含有する場合、水硬化を阻害するので、外装材の強度が低下する問題がある。また、シロキサン化合物からなる表面撥水剤の使用は、充分な使用効果を得るまで使用するとコストが大きくなり、また外装材の塗装性が悪化する問題を有する。
【0005】
一方、炭酸ガス由来の寸法収縮を防止する方法としては、塗装する方法、マイカやワラストナイトを添加する方法が特許文献6に記載されている。
【0006】
マイカやワラストナイトの使用、及び塗装は、凍害防止に対しては充分な効果を与えないし、また、撥水剤の水硬化阻害を防止する機能も有さない。従って、撥水剤と併用しても、水硬化の阻害を解決するものではない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−181410号公報(特に、請求項1、2)
【特許文献2】特開2000−139489号公報(特に、請求項1〜5)
【特許文献3】特開2004−67848号公報(特に、請求項1〜5)
【特許文献4】特開平2−70787号公報(特に、特許請求の範囲)
【特許文献5】特開平3−40976号公報(特に、請求項1〜2)
【特許文献6】特開2002−1715号公報(特に、段落[0002])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、外装材に対して、セメント等の水硬化性成分の水硬化を阻害せずに、凍害による劣化及び炭酸ガス由来の寸法収縮による劣化の両方を充分に防止する効果を付与できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、検討を重ねた結果、無機質粉末に特定のシロキサン化合物を付着させてなる添加剤が、上記問題を解決し得ることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、無機質粉末に下記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を付着させてなる外装材用添加剤、及び該外装材用添加剤を含有してなるセメント系外装材を提供するものである。
【0011】
【化1】

(式中、R1は、フェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR1は、同一でも異なってもよく、R2及びR3は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR4は、同一でも異なってもよく、nは、2〜50の数を表す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイディング板やパルプセメント板に代表される外装材に対して、それらに使用されるセメント等の水硬化性成分の水硬化を阻害せずに、充分な撥水効果及び寸法収縮防止効果を付与する添加剤を提供することがでる。また、外装材に該添加剤を含有させることにより、耐久性に優れた外装材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る上記の一般式(I)で表されるシロキサン化合物において、R1は、フェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基である。分子中に複数存在するR1は、同一でも異なってもよい。R1で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル(パルミチル)、へプタデシル、オクタデシル、イソオクタデシル、ノナデシル、エイコシル等が挙げられる。
【0014】
2、R3及びR4で表される炭素数1〜20のアルキル基としては、上記R1で表される炭素数1〜20のアルキル基として例示した基が挙げられる。また、分子中に複数存在するR4は、同一でも異なってもよい。
【0015】
1〜R4において、炭素数が20を超えるアルキル基の場合、シロキサン化合物の粘度が大きくなり、外装材用添加剤が二次凝集やケーキングを起こすため、外装材組成物中の分散性が悪化する。また、外装用添加剤中のシロキサン化合物の含有量が少なくなり充分な使用効果を得ることができない。更には、無機質粉末にシロキサン化合物が均一に付着しないという不具合も生じる。R1として好ましい基は、炭素数1〜8のアルキル基又はフェニル基であり、R2〜R4として好ましい基は、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0016】
また、上記一般式(I)において、nは2〜50の数である。nが2より小さいと、無機質粉末に充分な量のシロキサン化合物を付着させることができず、充分な撥水性及び耐寸法収縮性を得ることができない。nが50より大きくなると、シロキサン化合物の粘度が大きくなり、外装材用添加剤が二次凝集やケーキングをおこして外装材中の分散性が悪化するために充分な使用効果が得られない。更には、無機質粉末にシロキサン化合物が均一に付着しないという不具合も生じる。nは、2〜20が好ましく、2〜10がより好ましい。
【0017】
本発明に係る無機質粉末の表面状態や形状は、特に限定されず、定形ハニカム構造、不定形ハニカム構造、多孔質、ポーラス組織、中空構造、平滑な表面構造等、いずれでもよい。
【0018】
また、上記無機質粉末は、その粒子径において、特に限定されない。無機質粉末の粒径は通常0.01〜1000μmであるが、本発明の外装材用添加剤においては、分散性が良好である0.1〜500μmが好ましく、0.1〜100μmが更に好ましい。
【0019】
本発明に係る無機質粉末の種類としては、モンモリロナイト、ゼオライト、ベントナイト、スメクタイト、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、ミネソタイト、パイロフィライト、パーライト、ドロマイト、カオリナイト、アタパルジャイト、けい石、珪砂、クレー、カオリン、珪藻土、白土、セリサイト、フリント、無機バルーン、長石粉、蛭石、タルク、マイカ、シリカゲル、シリカ、フュームドシリカ、微粒子シリカ、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化亜鉛、ガラス粉、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、これらを高級脂肪酸金属塩、ワックス、油脂、合成樹脂、界面活性剤等により被覆されたものも挙げられる。また、これらの無機質粉末は、1種類で用いてもよく、2種類以上混合して用いてもよい。
【0020】
上記に例示の無機質粉末の種類の中でも、表面状態が不定形ハニカム構造であり、上記一般式(I)で示されるシロキサン化合物を容易に付着させることがで
きるので、モンモリロナイト、ゼオライト、ベントナイト、スメクタイトが好ましい。
【0021】
また、外装材の比重を1.2より小さくする場合は、上記無機質粉末として、高級脂肪酸金属塩により表面被覆されたものを用いるのが好ましい。外装材の比重を小さくするには、軽量骨材を多くする等の工夫により、外装材の空隙を多くする処方が選択される。この場合は、蒸気又はオートクレーブによる養生時や使用時に添加剤分が流出することがある。上記無機質粉末として高級脂肪酸金属塩により表面被覆されたものを使用した本発明の外装材用添加剤は、外装材組織との付着性が大きいので、流出を防止できる。さらには、外装材の製造時において蒸気又はオートクレーブによる養生を行う場合には、高級脂肪酸金属塩が軟化することで、本発明の外装材用添加剤が外装材組織により強力に付着することも期待できる。
【0022】
上記高級脂肪酸金属塩を構成する高級脂肪酸は、二重結合を含んでもよく、炭素鎖中に分岐を有していてもよく、水酸基で置換されていてもよい。該高級脂肪酸は、炭素数12以上であることが好ましく、炭素数12〜36であることがより好ましい。該高級脂肪酸としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ダイマー酸が挙げられ、複数種の高級脂肪酸の混合物であるパーム脂肪酸等でもよい。
上記高級脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
上記高級脂肪酸金属塩により表面被覆された無機質粉末の場合、被覆成分として好ましい高級脂肪酸金属塩は、炭素数12以上の高級脂肪酸のカルシウム塩である。
また、上記高級脂肪酸金属塩等の被覆成分の使用量は、被覆される無機質粉末100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、10〜500質量部がより好ましく、10〜100質量部が最も好ましい。
【0023】
本発明の外装材用添加剤は、前記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を上記の無機質粉末に付着させたものである。付着の形態は、物理吸着でもよく、化学反応を伴う化学修飾でもよい。無機質粉末にシロキサン化合物を付着させる方法としては、例えば、シロキサン化合物又はシロキサン化合物を有機溶剤に溶解させた溶液を無機質粉末に加え、ミルやミキサーで攪拌混合して含浸させる含浸法、シロキサン化合物又は有機溶剤にシロキサン化合物を溶解させた溶液を、吹き付け、流通等により無機質粉末に接触させて付着させるコーティング法、シロキサン化合物を気化させ、無機質粉末表面に付着又は堆積させる蒸着法が挙げられる。
【0024】
本発明の外装材用添加剤を製造するに当たり、前記無機質粉末に前記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を付着させる方法としては、操作が容易でありコストが低いので、含浸法が好ましい。
【0025】
含浸法又はコーティング法に用いる有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ポリオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ポリエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、塩素系溶剤等が挙げられ、これらは、1種類で又は2種類以上混合して用いることができる。
【0026】
上記有機溶剤の中でも、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤が低コストである点で好ましい。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、第3ブチルアルコール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、第3アミルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−ブトキシエチルアルコール等が挙げられ、炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、テトラデカン、ヘキサデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、灯油、軽油、ガソリン、流動パラフィン、鉱油等が挙げられる。含浸法の場合は、前記シロキサン化合物の溶解性に優れ且つシロキサン化合物溶液の粘度が小さいので、炭化水素系溶剤が好ましい。上記有機溶剤を用いる場合、溶液中のシロキサン化合物の濃度は、5〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
【0027】
本発明の外装材用添加剤において、前記無機質粉末に付着させる前記一般式(I)で表されるシロキサン化合物の量は、特に限定されるものではないが、前記無機質粉末100質量部(高級脂肪酸金属塩、ワックス、油脂、合成樹脂、界面活性剤等により被覆されたものは、これらの被覆成分を含む)に対し、前記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を0.1〜50質量部付着させることが好ましく、1〜10質量部付着させることがより好ましい。シロキサン化合物の付着量が0.1質量部より小さいと、充分な撥水性や耐寸法縮小性を発現しない場合があり、50質量部より大きいと、得られる外装材用添加剤が凝集しやすくなり、使用時の操作性が悪化しやすい上、外装材への分散性不良により充分な使用効果が得られない場合がある。
【0028】
なお、本発明の外装材用添加剤において、無機質粉末に付着させるシロキサン化合物の量を調整する方法としては、例えば含浸法の場合は、シロキサン化合物又はシロキサン化合物溶液の仕込み量や、無機質粉末の粒径を調整する方法が挙げられる。
【0029】
本発明の外装材用添加剤は、外装材に添加して使用される。外装材は、住宅やビルの外装に意匠性を付与することを主な目的として使用される建材であり、比較的軽量で施工が容易なサイディング板やパルプセメント等が素材として好ましく選択される。本発明の外装材用添加剤が使用される外装材の組成や成分については、特に制限を受けることはなく、従来の外装材の組成や成分を採用することができるが、本発明の外装材用添加剤は、水硬化を阻害しないという特異的な機能を有するので、水硬化性成分であるセメントを硬化成分として含有するセメント系外装材に対して特に有用である。
【0030】
本発明のセメント系外装材は、本発明の外装材用添加剤を含有してなるものであり、本発明の外装材用添加剤の使用量は、本発明のセメント系外装材の固形分中、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。また、本発明のセメント系外装材には、セメント、水及び本発明の外装材用添加剤以外に、必要に応じて、セメント系外装材に使用できる各種添加剤、例えば、軽量骨材及び/又は補強材;セメント以外の硬化成分;メチルセルロース等の有機増粘剤;カーボンブラック、鉄黒、チタン白、酸化鉄、酸化クロム等の着色剤;シリカ、珪砂、スラグ、フライアッシュ、生石灰、消石灰等の無機添加成分を含有させてもよい。
【0031】
上記の軽量骨材及び/又は補強材としては、パルプ繊維、木片チップ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ロックウール、硝子繊維、綿、羊毛、ウオラストナイト等の無機繊維等が挙げられ、セメント以外の硬化成分としては、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂が挙げられ、これらはセメントと複合され所謂ポリマーセメントとして外装材マトリクスを形成してもよい。
【0032】
本発明のセメント系外装材の製造方法としては、通常、セメント、水及び本発明の外装材用添加剤、さらに必要に応じて各種添加剤を混合した後、含水率を調整して、セメントペーストを得、次いで、該セメントペーストを、押出成形法、抄造法、注型成形法、射出成形法、脱水プレス法等により成形した後、蒸気養生、オートクレーブ養生して硬化を促進させる方法が用いられる。また、必要に応じて、切削加工を行ってもよい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
実施例1〜11は、本発明の外装材用添加剤の実施例を示し、実施例12〜22は、実施例1〜11で得られた本発明の外装材用添加剤を用いた本発明のセメント系外装材の実施例を示す。また、比較例1は、外装材用添加剤を用いないセメント系外装材の実施例を示し、比較例2〜6は、本発明に係るシロキサン化合物を付着させていない無機質粉末を添加したセメント系外装材の実施例を示す。比較例2は実施例12〜14並びに19及び20に対応する比較例であり、比較例3は実施例15及び21に対応する比較例であり、
比較例4は実施例16に対応する比較例であり、比較例5は実施例17及び22に対応する比較例であり、比較例6は実施例18に対応する比較例である。
【0034】
[実施例1]外装材用添加剤1の製造
メディアン径23μmのモンモリロナイトからなる無機質粉末950gをパドルミキサーに仕込み、60rpm、25℃で攪拌しながら、上記一般式(I)においてnが2であり、R1は全てフェニルであり、R2〜R4は全てメチルであるシロキサン化合物の20質量%テトラデカン溶液250gを注ぎ、更に3分間攪拌を継続して、シロキサン化合物を5質量%付着させた無機粉末からなる外装材用添加剤1を得た。
【0035】
[実施例2]外装材用添加剤2の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが2であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがメチルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤2を得た。
【0036】
[実施例3]外装材用添加剤3の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが6であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがメチルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤3を得た。
【0037】
[実施例4]外装材用添加剤4の製造
モンモリロナイト55質量部、パーム脂肪酸カルシウム35質量部及び水10質量部を、ニーダーを用いて100℃で混合し、得られた塊状物を粉砕して、メディアン径45μmの高級脂肪酸カルシウム被覆モンモリロナイトを得た。
無機質粉末を、上記高級脂肪酸カルシウム被覆モンモリロナイトに変更し、シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが6であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがメチルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤4を得た。
【0038】
[実施例5]外装材用添加剤5の製造
無機質粉末を、メディアン径21μmのゼオライト粉末に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤5を得た。
【0039】
[実施例6]外装材用添加剤6の製造
無機質粉末を、メディアン径26μmのベントナイト粉末に変更し、シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが2であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがメチルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤6を得た。
【0040】
[実施例7]外装材用添加剤7の製造
無機質粉末を、メディアン径20μmのスメクタイト粉末に変更し、シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが6であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがメチルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤7を得た。
【0041】
[実施例8]外装材用添加剤8の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが2であり、R1は、全てヘキシルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤8を得た。
【0042】
[実施例9]外装材用添加剤9の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが6であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがヘキシルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例1と同様にして、外装材用添加剤9を得た。
【0043】
[実施例10]外装用添加剤10の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが6であり、R1は、全てヘキシルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例4と同様にして、外装材用添加剤10を得た。
【0044】
[実施例11]外装用添加剤11の製造
シロキサン化合物を、上記一般式(I)においてnが2であり、R1は、2分の1がフェニルであり、残りがヘキシルであり、R2〜R4は、全てメチルであるシロキサン化合物に変更した以外は、上記実施例6と同様にして、外装材用添加剤11を得た。
【0045】
[実施例12〜22]セメント系外装材の製造1
ポルトランドセメント100質量部、水200質量部、再生パルプ5質量部及び上記実施例1〜11で得た外装材用添加剤のいずれか(表1〜4参照)0.5質量部を混合してスラリーを得た後、該スラリーをブフナー漏斗を用いて含水率が10質量%となるように脱水してセメントペーストを得た。該セメントペーストを用いて、JIS R5201に基づいて40mm×40mm×160mmのセメント系外装材(試験片1〜11)を作成した。
【0046】
[比較例1]比較用セメント系外装材の製造1
外装材用添加剤を使用しない以外は、上記実施例8と同様にして、セメント系外装材(比較用試験片1)を得た。
【0047】
[比較例2〜6]比較用セメント系外装材の製造2
外装材用添加剤に代えて、シロキサン化合物を付着させていない無機質粉末を下記の通り使用した以外は、上記実施例8と同様にして、比較用セメント系外装材(比較用試験片2〜6)を得た。モンモリロナイトを使用したものを比較用試験片2とした。モンモリロナイト55質量部、パーム脂肪酸カルシウム35質量部及び水10質量部を、ニーダーを用いて100℃で混合し、得られた塊状物を粉砕して得たメディアン径45μmの高級脂肪酸カルシウム被覆モンモリロナイトを使用したものを比較用試験片3とした。ゼオライトを使用したものを比較用試験片4とした。ベントナイトを使用したものを比較用試験片5とした。スメクタイトを使用したものを比較用試験片6とした。
【0048】
[評価例1]セメント系外装材の評価1
上記の実施例12〜22及び比較例1〜6で得た試験片1〜11及び比較用試験片1〜6について、JIS A1404に基づいた72時間の半没揚水吸水試験による吸水試験、炭酸ガス濃度5モル%、温度40℃、相対湿度80%、30日間の炭酸化促進試験による寸法収縮試験、及びJIS K6911に基づいたクロスヘッド速度1.0000mm/分、23℃、相対湿度60%条件による曲げ強度試験を行った。結果を表1〜4に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
上記表1〜4より、特定のシロキサン化合物を付着させた本発明の外装材用添加剤は、外装材の曲げ強度を低下させることなく、吸水率及び寸法収縮率を低下させることが確認できた。このことは、本発明の外装材用添加剤は、セメント系外装材に対して、セメントの水硬化を阻害することなく、撥水性及び耐寸法収縮性を付与できることを示している。
【0054】
[実施例23〜29]セメント系外装材の製造2
外装材用添加剤の使用量を1.0質量部とした以外は、上記実施例8と同様にして、セメント系外装材(試験片12〜17)を作成した。尚、実施例23〜29において、外装材用添加剤としては、外装材用添加剤1、4、5、6、7、10及び11をそれぞれ用いた(表5参照)
【0055】
[評価例2]セメント系外装材の評価2
上記実施例23〜29で得た試験片12〜18について、上記評価例1と同様の条件で、吸水試験、寸法収縮試験、曲げ強度試験を行った。結果を表5に示す。
【0056】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質粉末に下記一般式(I)で表されるシロキサン化合物を付着させてなる外装材用添加剤。
【化1】

(式中、R1は、フェニル基又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR1は、同一でも異なってもよく、R2及びR3は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、R4は、炭素数1〜20のアルキル基を表し、n個のR4は、同一でも異なってもよく、nは、2〜50の数を表す。)
【請求項2】
上記無機質粉末がモンモリロナイトである請求項1に記載の外装材用添加剤。
【請求項3】
上記無機質粉末がゼオライトである請求項1に記載の外装材用添加剤。
【請求項4】
上記無機質粉末がベントナイトである請求項1に記載の外装材用添加剤。
【請求項5】
上記無機質粉末がスメクタイトである請求項1に記載の外装材用添加剤。
【請求項6】
上記無機質粉末が高級脂肪酸金属塩により表面被覆されたものである請求項1に記載の外装材用添加剤。
【請求項7】
上記無機質粉末100質量部に対し、上記一般式(I)で表されるシロキサン化合物0.1〜50質量部を付着させてなる請求項1〜6のいずれかに記載の外装材用添加剤。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の外装材用添加剤を含有してなるセメント系外装材。

【公開番号】特開2007−131827(P2007−131827A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61835(P2006−61835)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【出願人】(500333796)ADEKAケミカルサプライ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】