説明

外装用筐体およびそれを用いた電気製品

【課題】貼り付け物の接着信頼性を維持しつつ、簡単に押圧を加えるだけで貼り付け物を効率よく容易に除去することができる外装用筐体を提供することを目的としている。
【解決手段】貼り付け物を貼り付けるための貼り付け面30を備え、この貼り付け面30には、貼り付け物である銘板20の外周端よりも内側に配置される内側溝部60を設け、貼り付け裏面70には、貼り付け物である銘板20の外周端に対向する対向位置の近傍に配置される外側溝部80を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資源として有効に利用できるようにした外装用筐体およびそれを用いた電気製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
AV機器や、コンピュータ端末機器、OA機器等の電気製品には、機器の名称や品番、製造者名等を表示する銘板やシールといった貼り付け物を貼り付ける必要がある。この貼り付け物は、電気製品の外装用筐体に貼り付けられている。貼り付け物の材質としては、金属、プラスチック、紙等が用いられている。銘板としては、金属やプラスチックがよく用いられ、シールとしては、紙がよく用いられている。また、外装用筐体としては、プラスチック成形品や金属成形品がよく用いられている。
【0003】
プラスチック成形品に貼り付け物を接着固定する場合、外観をよくするための工夫と、貼り付け物の剥がれを抑制するための工夫を施している。貼り付け物の厚さの分だけプラスチック成形品の表面を凹ませて、この凹みに貼り付け物を接着固定している。また、貼り付け物の端部もこの凹みに隠している。
【0004】
このようなプラスチック成形品をプラスチックとしてリサイクルする場合、貼り付けられている貼り付け物を剥離する必要がある。しかし、凹みの中に貼り付けられた貼り付け物を、貼り付け面から剥離させることは困難である。このような貼り付け物を剥離するには、刃物のような工具が必要であり、工数がかかるとともに、作業安全性にも問題がある。
【0005】
この対策案としては、貼り付け物をプレス装置で打ち抜く技術が提案されている。しかし、プラスチック成形品にはいろいろな形状があり、所望の部分を打ち抜くことは困難である。
【0006】
別の対策案としては、貼り付け物の端部を工具で押圧する技術が提案されている。プラスチック成形品に配置した袋穴部の壁を切断して貫通穴を形成し、その貫通穴に工具を挿入して、工具の先端で貼り付け物の端部を押圧するものである。このような技術は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−131162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された外装用筐体では、貼り付け物が貼り付けられていない未接着の部分が袋穴部にできる。よって、この未接着部分を起点に貼り付け物が剥がれてくる危険性があるので、接着信頼性に欠けていた。また、貼り付け物は、金属板やアルミ箔、プラスチックや紙等、厚みの薄いものであり、貼り付け物の端部を押圧するだけでは、貼り付け物の全体を除去させることは困難である。また、貼り付け物の除去後にはプラスチック成形品に接着剤が残る等、精度高く除去することも困難である。
【0009】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、貼り付け物の接着信頼性を維持しつつ、貼り付け物を効率よく容易に除去することができる外装用筐体およびそれを用いた電気製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために本発明の外装用筐体は、貼り付け物を貼り付けるための貼り付け面と、貼り付け裏面とを備え、前記貼り付け面には、前記貼り付け物の外周端よりも内側に配置される内側溝部を設け、前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置の近傍に配置される外側溝部を設けた構成である。
【0011】
また、本発明の電気製品は、外装用筐体を有し、前記外装用筐体は、貼り付け物を貼り付けるための貼り付け面と、貼り付け裏面とを備え、前記貼り付け面には、前記貼り付け物の外周端よりも内側に配置される内側溝部を設け、前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置の近傍に配置される外側溝部を設けた構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の外装用筐体またはそれを用いた電気製品によれば、貼り付け物の接着信頼性を維持しつつ、貼り付け物を効率よく容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1における外装用筐体の斜視図
【図2A】貼り付け面側から見た貼り付け部の正面図
【図2B】貼り付け裏面側から見た貼り付け部の正面図
【図3】図2Aにおける貼り付け部の3−3断面図
【図4A】銘板の除去時を示す説明図
【図4B】銘板の除去時を示す説明図
【図4C】銘板の除去時を示す説明図
【図5A】実施の形態2における外装用筐体の貼り付け面側から見た貼り付け部の正面図
【図5B】貼り付け裏面側から見た貼り付け部の正面図
【図6】図5Aにおける貼り付け部の6−6断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態における外装用筐体およびそれを用いた電気製品について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態においては、電気製品の一例として液晶テレビについて説明する。また、液晶テレビのバックカバーとして外装用筐体を用いた場合について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態1における外装用筐体の斜視図である。外装用筐体10は、液晶テレビを背面から囲むためのバックカバーとして機能する。外装用筐体10は、その中央付近に貼り付け物である銘板20を貼り付けるための貼り付け部40を有している。
【0017】
図2Aは貼り付け面側(図1におけるx軸の正の方向側)から見た貼り付け部の正面図、図2Bは貼り付け裏面側(図1におけるx軸の負の方向側)から見た貼り付け部の正面図、図3は図2Aにおける貼り付け部の2A−2A断面図である。
【0018】
図1〜図3において、外装用筐体10は、プラスチック材料よりなるプラスチック成型品である。
【0019】
この外装用筐体10は、貼り付け物である銘板20を貼り付けるための貼り付け面30を有する。この貼り付け面30には貼り付け部40が配置され、この貼り付け部40には凹部50が配置されている。この凹部50は銘板20の厚み程度に凹ませており、銘板20はこの凹部50に貼り付けられている。この凹部50の底面には、内側溝部60が形成されている。この内側溝部60は、互いに直交する二方向の溝からなる。
【0020】
貼り付け面30の裏側(銘板20が貼り付けられる貼り付け面30とは反対側)である貼り付け裏面70には銘板20の外周端に対向する対向位置の近傍に外側溝部80が形成されている。ここでいう対向の位置の近傍とは、対向位置を含み、この対向位置とその周辺の領域をいう。上述した内側溝部60は、この内側溝部60を貼り付け裏面70に投影した場合に、外側溝部80の内側に位置するように形成されている。
【0021】
内側溝部60および外側溝部80は、貼り付け面30と垂直な断面における断面形状が、略V字形状となるように形成されている。また、内側溝部60と外側溝部80の略V字形状は互いに反対方向に向いている。
【0022】
次に、実施の形態1の外装用筐体10において、銘板20を除去する様子を、図4A〜図4Cを用いて説明する。
【0023】
プラスチック成型品である外装用筐体10から、異種材料である銘板20を除去する場合、図4Aに示すように、銘板20が貼り付けられている貼り付け面30とは反対側の貼り付け裏面70を、図面中の矢印方向に押圧する。所定以上の押圧が加わると、図4Bに示すように、内側溝部60と外側溝部80に亀裂が発生して、外装用筐体10の貼り付け部40が銘板20とともに折れ曲がる。
【0024】
このとき、内側溝部60は、外側溝部80が形成された貼り付け裏面70とは反対側の面に形成され、かつ外側溝部80の内側に位置するように形成されているので、略V字形状の内側溝部60の溝幅が広がるようにして、外装用筐体10の貼り付け部40が銘板20とともに折れ曲がる。
【0025】
つまり、簡単に押圧を加えるだけで外装用筐体10の貼り付け部40を銘板20とともに折り曲げることができる。さらに押圧を加えると、図4Cに示すように、内側溝部60と外側溝部80が破断し、外装用筐体10の貼り付け部40が銘板20とともに分離する。すなわち、貼り付け部40に配置された銘板20は、外装用筐体10から除去される。
【0026】
ここで、貼り付け裏面70に形成された外側溝部80が、銘板20の外周端に対向する対向位置よりもあまり外側に位置するように形成されると、貼り付け部40以外の部分を多く含むようにして、外装用筐体10の貼り付け部40が分離される。つまり、銘板20と一緒に除去されてしまう外装用筐体10の部分が増え、リサイクルされる外装用筐体10が減ってしまう。
【0027】
また、貼り付け裏面70に形成された外側溝部80が、銘板20の外周端に対向する対向位置よりもあまり内側に位置するように形成されると、銘板20の外周端が外装用筐体10に貼りついたままとなり、押圧しても除去されにくくなる。
【0028】
本実施の形態における外装用筐体10においては、貼り付け裏面70に形成された外側溝部80を、銘板20の外周端に対向する対向位置の近傍に設けているので、銘板20が貼り付けられている貼り付け部40の近傍部分だけを無駄なく除去することができる。このように本実施の形態における外装用筐体10によれば、貼り付け物の接着信頼性を維持しつつ、貼り付け物を効率よく容易に除去することができ、作業工数も低減できるものである。
【0029】
なお、貼り付け部40の近傍部分だけを無駄なく除去できる程度ならば、貼り付け裏面70に形成された外側溝部80は、銘板20の外周端に対向する対向位置よりも外側に位置するように形成してもよいし、銘板20の内周端に対向する対向位置よりも内側に位置するように形成してもよい。
【0030】
また、内側溝部60と外側溝部80は、略V字形状にしているが、このような形状にすることによって、略V字の先端に押圧力が集中しやすくなり、貼り付け物をより容易に除去しやすくなる。特に、内側溝部60と外側溝部80の略V字形状が互いに反対方向に向いているので、簡単に押圧を加えるだけで、貼り付け部40を銘板20とともに外装用筐体10から分離することができる。
【0031】
また、内側溝部60は、互いに直交する二方向の溝を有している。この構成により、一方向のみの構成に比べてより簡単に貼り付け部40を折り曲げることができる。
【0032】
また、外側溝部80は、銘板20が貼り付けられている貼り付け面30とは反対側である貼り付け裏面70に形成されている。よって、外装用筐体10との未接着部分が、銘板20の端部近傍で発生しない。すなわち、銘板20の接着信頼性を維持することができる。
【0033】
また、本実施の形態の外装用筐体10によれば、刃物のような工具を使用しないで銘板20を除去できるので、作業安全性を向上することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、外装用筐体10として、プラスチック成型品を用いた場合を説明したが、これに限られない。例えば、金属筐体等にも適用することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、外装用筐体10として、液晶テレビのバックカバーとして用いた場合を説明したが、これに限られない。電気製品やその他のあらゆる機器に外装用筐体10は適用可能である。
【0036】
また、本実施の形態では、外装用筐体10の貼り付け面30には、凹部50が配置されている。この凹部50は必ずしも必要ではないが、凹部50が配置されていれば、銘板20の貼り付け位置を明確にできるとともに、銘板20の端部の剥がれを低減することができる。
【0037】
また、本実施の形態において、貼り付け物として銘板20を用いた場合を説明したが、これに限られない。例えば、貼り付け物としてシール等を用いた場合にも適用可能である。
【0038】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る外装用筐体について説明する。本実施の形態では、実施の形態1と同様、液晶テレビのバックカバーとして外装用筐体を用いた場合について説明する。実施の形態2の外装用筐体は、実施の形態1と比較して、内側溝部の構造が異なる。
【0039】
なお、実施の形態1と同様の構成については同じ符号を付して、再度の説明を省略する。
【0040】
図5Aは外装用筐体の貼り付け面側(図5Aにおけるx軸の正の方向側)から見た貼り付け部の正面図、図5Bは外装用筐体の貼り付け裏面側(図5Bにおけるx軸の負の方向側)から見た貼り付け部の正面図である。図6は図5Aにおける貼り付け部の5A−5A断面図である。
【0041】
本実施の形態における内側溝部90は、貼り付け面30から貼り付け裏面70まで貫通した貫通溝としている。この内側溝部90は、y軸方向に伸びた2つの貫通溝とz軸方向に伸びた2つの貫通溝からなる。
【0042】
このような内側溝部90を有する場合でも、実施の形態1と同様に貼り付け裏面70を押圧すれば、貼り付け部40が銘板20とともに分離される。よって、簡単に押圧を加えるだけで外装用筐体10から銘板20を効率よく容易に除去することができる。
【0043】
なお、実施の形態1および実施の形態2で示した外側溝部80や内側溝部60、90の形状、寸法は、一例であり、外装用筐体10の厚み、材質等により適宜調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、銘板等の貼り付け物が貼り付けられた外装用筐体において、リサイクルに適した外装用筐体として好適である。
【符号の説明】
【0045】
10 外装用筐体
20 銘板
30 貼り付け面
40 貼り付け部
50 凹部
60 内側溝部
70 貼り付け裏面
80 外側溝部
90 内側溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼り付け物を貼り付けるための貼り付け面と、貼り付け裏面とを備え、
前記貼り付け面には、前記貼り付け物の外周端よりも内側に配置される内側溝部を設け、
前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置の近傍に配置される外側溝部を設けた
外装用筐体。
【請求項2】
前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置に配置される外側溝部を設けた
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項3】
前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置よりも外側に配置される外側溝部を設けた
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項4】
前記貼り付け裏面には、前記貼り付け物の外周端に対向する対向位置よりも内側に配置される外側溝部を設けた
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項5】
前記外側溝部は、その断面形状を略V字形状とした
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項6】
前記内側溝部は、その断面形状を略V字形状とした
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項7】
前記外側溝部および前記内側溝部は、その断面形状を略V字形状とし、
前記外側溝部と前記内側溝部の略V字形状が互いに反対方向に向いている
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項8】
前記内側溝部は、互いに直交する二方向の溝を有する
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項9】
前記内側溝部は、前記貼り付け面の表側から裏側まで貫通している
請求項1に記載の外装用筐体。
【請求項10】
請求項1〜請求項9に記載の外装用筐体を用いた電気製品。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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