説明

外観特性の優れた多層プラスチック容器

【課題】多層プラスチック容器において、その外面に立体的な印刷像を形成することができ、印刷像を形成した状態で優れた外観特性を付与することができる多層プラスチック容器を提供する。
【解決手段】。顔料の配合により着色された着色樹脂層を備えた多層プラスチック容器において、該着色樹脂層よりも外面側が全て透明樹脂により形成されており、該着色樹脂層の外面側を形成している該透明樹脂の層の厚みが0.4乃至2.0mmであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層プラスチック容器に関するものであり、より詳細には、外面に印刷像を形成したとき、高級感にあふれた外観を呈する多層プラスチック容器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性を有する各種プラスチックは、何れも熱成形性に優れているため、個々のプラスチックの特性を活かして種々の用途に使用されており、特に包装分野で多用されている。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル系樹脂は、耐熱性、透明性、機械的強度に優れており、表面に傷がつきにくいなどの観点から、各種飲料、洗剤、化粧品などの容器の分野に広く使用されている。また、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂は、成形性に加えて安価であり、特に低価格を要求される食品類の容器などに広く適用されている。
【0003】
プラスチック容器については、各種の樹脂の特性を活かして多層構造とする手法が広く採用されており、例えば、特許文献1,2には、容器の外面側から、ポリエステル系樹脂外層、接着剤樹脂層及びオレフィン系樹脂からなる多層プラスチック容器が提案されており、かかるプラスチック容器は、機械的強度に優れたポリエステル系樹脂の特性と、ローコストであるというオレフィン系樹脂の優れた特性を活かしている。
【0004】
一方、外観特性を向上させたプラスチック容器も種々提案されており、例えば、特許文献3には、容器壁を構成する少なくとも1層に干渉色顔料を配合した多層プラスチック容器が提案されており、特許文献4には、容器壁の中間層にパール顔料が配合された多層プラスチック容器が提案され、さらに、特許文献5には、外面側から順に透明ポリエステル系樹脂外層、透明樹脂接着樹脂層及び、着色ポリオレフィン系樹脂層を有しており、透明ポリエステル系樹脂外層の表面粗さRaが0.2μm以下であり、透明樹脂接着樹脂層と着色ポリオレフィン系樹脂層との界面の凹凸が15μm以下である多層プラスチック容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−79842号公報
【特許文献2】特開平6−106606号公報
【特許文献3】特開平9−11369号公報
【特許文献4】特開平8−309836号公報
【特許文献5】WO2008/090655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の説明から理解されるように、外観特性が向上した多層プラスチック容器は種々提案されているのであるが、何れも容器単独での外観であり、その外面に印刷像を形成したときの外観特性に関する提案は、あまりなされていないのが現状である。
【0007】
例えば、特許文献3で提案されている容器は、見る角度によって、微妙に容器の色が変化するというものであるが、容器の外面に印刷像を形成したとき、このような色の変化は、むしろ印刷像の印象を低下させてしまったり、或いは印刷像自体が容器自体の色の変化を殺してしまったりする問題があり、さらに、形成される印刷像も平面的なものとなり、印刷像を形成した状態では、必ずしも外観特性を向上させているとはいえない。
【0008】
また、特許文献4及び5で提案されている多層プラスチック容器は、表面に光沢性を付与するというものであるが、このような容器においても、表面に形成される印刷像は平坦なものであり、また、印刷像の形成により、容器の外面が部分的に隠されることになるため、やはり印刷像を形成した状態での外観特性は十分とは言えない。
【0009】
従って、本発明の目的は、多層プラスチック容器において、その外面に立体的な印刷像を形成することができ、印刷像を形成した状態で優れた外観特性を付与することができる多層プラスチック容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、特に高級感を与える外観を有する多層プラスチック容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、着色樹脂層の外側に透明樹脂層が形成されている多層構造の多層プラスチック容器について鋭意検討を重ねた結果、この透明樹脂層の厚みを厚くするという極めて簡単な手段により、外面に印刷像を形成したとき、この印刷像には陰影が形成され、立体的に表示されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明によれば、顔料の配合により着色された着色樹脂層を備えた多層プラスチック容器において、該着色樹脂層よりも外面側が全て透明樹脂により形成されており、該着色樹脂層の外面側を形成している該透明樹脂の層の厚みが0.4乃至2.0mmであることを特徴とする多層プラスチック容器が提供される。
【0012】
本発明の多層プラスチック容器においては、
(1)前記透明樹脂の層の外表面に印刷像が形成されていること、
(2)前記顔料として無機顔料が使用されていること、
(3)前記着色樹脂層がシルバー色に着色されていること、
(4)前記着色樹脂層がスクラップ樹脂を含むリグラインド層中に顔料が分散されたものであり、該着色樹脂層の内面側には、バージンの樹脂から形成された最内層が形成されていること、
(5)前記透明樹脂の層が、最外層、接着樹脂層及び内側層から形成されていること、
が好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多層プラスチック容器は、着色樹脂層よりも外面側が全て透明樹脂により形成されているが、特に重要な特徴は、該透明樹脂の層の厚み、即ち、着色樹脂層の外面から容器外表面までの層の厚みが、通常の多層容器を形成している一つの樹脂層の厚みに比して厚く、具体的には0.4乃至2.0mm(特に0.8乃至1.5mm)の範囲に調整されている点にある。即ち、着色樹脂層の外側の透明な層の厚みがこのような範囲に設定されていることにより、容器の外面に印刷像を形成したとき、着色樹脂層の外面に、この印刷像の影が映り、この影は、印刷像の周縁部に陰影となって観察されることとなる。本発明によれば、このように印刷像の周縁部に陰影が形成されるため、印刷像が立体的に観察され、深みのある外観を呈し、印刷像が形成された状態での外観特性が著しく向上し、優れた立体的加飾効果を得ることができる。
例えば、着色樹脂層の外側の透明な層の厚みが上記範囲外であるときには、着色樹脂層の表面に印刷像の影が形成されず、この結果、印刷像の陰影が形成されず、印刷像が形成された状態での外観特性を向上させることはできない。
【0014】
また、本発明では、容器内部の着色樹脂層がシルバー色に着色されていることが印刷像の陰影がより明確となるという点で好ましく、特に、このような態様では、容器自体に高級感を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の多層プラスチック容器の基本層構造を示す図。
【図2】本発明の多層プラスチック容器の外面に形成された印刷像の視覚映像を示す図。
【図3】本発明の多層プラスチック容器の好適な層構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、本発明の多層プラスチック容器は、内面側に着色樹脂層1を有しており、この着色樹脂層1の外面側は、透明樹脂で形成されているという基本層構造を有している。図1において、透明樹脂で形成されている層は3で示されており、この透明樹脂層3の外面には、印刷像5が形成されることとなる。
【0017】
本発明においては、この着色樹脂層1の外面と容器外面との間隔d(即ち、透明樹脂層3の厚みに相当)が0.4乃至2.0mmの範囲、特に0.8乃至1.5mmの範囲に設定されている。即ち、この間隔dが、このような範囲に設定されていると、着色樹脂層1の表面に、印刷像5の影5’が映る。従って、この印刷像5を見ると、図2に示されているように、上記の影5’が印刷像5の周縁部に陰影となって観察され、この結果、印刷像5が立体的に観察されることとなるのである。例えば、間隔dが、上記範囲よりも小さい場合には、印刷像5の影5’が着色樹脂層1の表面に形成されるとしても、この影5’が印刷像5の周縁部に陰影となって現れず、また、間隔dが上記範囲よりも大きいと、光の回折により着色樹脂層1の表面に印刷像5の影5’が形成されないか或いは影5’が形成されたとしてもかなりぼやけたものとなってしまい、この結果、印刷像5の周縁部に陰影が観察されなくなってしまう。
【0018】
本発明において、着色樹脂層1は、印刷像5の影5’が鮮明に形成されるように、容器の内面側が見えないように着色されているものであり、熱可塑性樹脂に顔料が分散されている層である。顔料としては、有機顔料、無機顔料の何れも使用することができるが、着色樹脂層1の隠蔽力を高くし、影5’を鮮明にするという観点から無機顔料が好適である。
【0019】
用いる無機顔料としては、薄板状の雲母粒子の表面を二酸化チタンや酸化鉄などによりコートして得られるパール顔料や、アルミニウム粉やブロンズ粉、アルミ顔料、銀顔料などの金属粉顔料、さらには、着色ガラスからなるガラス顔料や、ガラス、金属などの粒子表面に、銀、アルミ、酸化チタンなどをコーティングもしくは蒸着した被覆ガラス乃至金属顔料などが好適に使用される。これらの顔料を用いて着色しているときには、粒子表面が鏡面となっており、規則的な多重反射により、印刷像5の陰影を鮮明に観察することができる。
【0020】
また、陰影を鮮明に映し出すためには、着色樹脂層1の外側表面(即ち、透明樹脂層3との界面)の凹凸が小さく、且つ着色樹脂層1の表面反射率が高いことが望ましく、このために、配合される顔料の粒径が小さく、且つ成形性が損なわれない範囲において高濃度で顔料が配合されていることが好適である。例えば、用いる顔料の平均粒径(球形でないものについては、長径での平均粒径)が50μm以下、特に0.05乃至20μm程度の範囲にあるのがよい。また、顔料の配合量は、通常、着色樹脂層1を形成する熱可塑性樹脂100重量部当り0.1乃至30重量部程度、特に0.5乃至10重量部の量の範囲が好適である。即ち、このような量で、上記の平均粒径の顔料が配合されていることにより、影5’が均一に形成され、しかも、どの角度からみても影5’を鮮明に認識することができる。
【0021】
また、着色樹脂層1の色は、影5’による印刷像5の陰影が観察されるようなものであれば特に制限されず、例えば黒色以外の色であってよく、容器デザインに応じて種々の色とすることができるが、影5’が鮮明に観察できるという観点からは、淡色が好ましく、特にシルバー色が最適である。鏡の色がシルバー色となっていることから理解されるように、反射像はシルバー色に映し出されるときに、目視で最も明確に認識することができるからである。シルバー色に着色するための顔料の例としては、前述した無機顔料の中で、アルミ顔料、パール顔料、銀顔料、被覆ガラス乃至金属顔料などが好適である。
【0022】
上記のような着色樹脂層1の厚みは、印刷像5の影を反射しかつ容器内部が見えないような遮光性を示す限り、特に制限されるものではないが、一般には、0.2乃至2.0mm程度の厚みが適当である。
【0023】
前述した厚みdで形成される透明樹脂層3は、印刷像5の影5’が着色樹脂層1の表面に明確に映し出され、この影5’を外部から明確に認識し得る程度の透明度を有していればよく、一般に、2mmの樹脂厚みで測定した曇り度(JIS K7136)、すなわちヘイズ値が70%以下、特に60%以下、最も好適には50%以下であればよい。また、影5’が鮮明となるような印刷像5を形成し得るという点で、透明樹脂層3の外面が平滑面となっていることが好ましく、例えばその表面粗さRa(JIS B−0601、最大表面粗さ)が0.2μm以下の範囲となっており、このような平滑面により光沢性が付与されていることが最適である。
【0024】
本発明において、上記の着色樹脂層1や透明樹脂層3の形成には、熱可塑性樹脂が使用されるが、このような熱可塑性樹脂としては、成形が可能である限り、特に制限されず、包装材料の分野で使用されているそれ自体公知の任意の熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体や、環状オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル系共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリフエニレンオキサイド;ポリ乳酸などの生分解性樹脂;などを、容器に要求される特性に応じて使用することができる。勿論、これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合したブレンド物の形で使用することもできる。鮮明な陰影を形成するために要求される種々の性状を満足させるために、これらの熱可塑性樹脂の中から適宜のものを選択して、着色樹脂層1や透明樹脂層3が形成される。
【0025】
例えば、着色樹脂層1の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、顔料に対する分散性や成形性、高強度であること、コストの観点からオレフィン系樹脂、特に高密度ポリエチレン(HDPE)や、α−オレフィン・プロピレンブロック共重合体が好適である。また、着色樹脂層1を形成するための熱可塑性樹脂としては、成形時に発生するバリ等に由来するスクラップ樹脂(リグラインド)をバージンの樹脂と混合して用いることもできる(通常、着色樹脂層1を形成する全樹脂分の10乃至60重量%程度の量)。このようなリグラインドを使用することが省資源やコストダウンの観点から好適である。
【0026】
さらに、透明樹脂層3の形成に用いる熱可塑性樹脂としては、優れた透明性を有し且つ成形性に優れたポリエステル系樹脂やオレフィン系樹脂が好適である。特に前述したヘイズ値を満足し且つ凹凸の小さい平滑な外表面を形成するという観点から、ポリエステル系樹脂の中では、非晶性の高い共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合PET)が好適であり、さらに、オレフィン系樹脂の中では、直鎖低密度ポリエチレン(特に、メタロセンLLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンが好適である。
尚、共重合PETとは、ジオール成分としてエチレングリコール以外のもの、例えばプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール成分や、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分、例えばイソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸及びこれらのアルキルエステル誘導体などを含むものであり、特にジオール成分として、エチレングリコール以外のものを、全ジオール成分当り20乃至60モル%で含む共重合PETが好ましく、特に、かかる量でシクロヘキサンジメタノールを共重合成分として含む共重合PETは、本発明における透明樹脂層3の形成には最適である。
【0027】
ところで、既に述べたように、印刷像5の影5’を鮮明に形成するためには、着色樹脂層1と透明樹脂層3との界面の凹凸が小さいことが望ましい。しかるに、このように界面の凹凸を小さくするためには、着色樹脂層1と、着色樹脂層1との界面部分を形成している透明樹脂層3とが同種の樹脂により形成されていることが好適である。即ち、この界面部分が異種の樹脂(例えばポリエステル樹脂とオレフィン系樹脂)の間に存在していると、これら樹脂での溶融流動特性が異なっているため、容器成形時における押出成形等に際して、着色樹脂層1と透明樹脂層3との界面の凹凸が大きくなってしまい、影5’が不鮮明となるおそれがあるが、同種の樹脂を用いることにより、この界面での凹凸を可及的に小さくし、確実に鮮明な影5’を形成することができる。従って、例えば着色樹脂層1をオレフィン系樹脂(例えば、HDPEやブロックPP)で形成したときには、透明樹脂層3の少なくとも着色樹脂層1との界面部分も、オレフィン系樹脂で形成されていることが望ましい。
【0028】
また、本発明においては、所定の透明性が確保されている限り、透明樹脂層3を同一の樹脂からなる単層構造とすることもできるが、異なる樹脂による複数の層から形成することもでき、これを利用して、印刷像5の影5’の鮮明性を向上させ、本発明の多層プラスチック容器の立体的加飾効果を最大限に発揮させることができる。例えば、前述した説明から理解されるように、透明樹脂層3を形成する樹脂としては、優れた透明性を有していると同時に、透明樹脂層3の外面(印刷像5が形成される面)を凹凸の小さな平滑面とし、鮮明な影5’を形成し得る様な印刷像5を形成でき、しかも優れた機械的強度や耐傷性を確保できるという観点から、共重合PETが最適であるが、一方、着色樹脂層1を形成する樹脂としては、オレフィン系樹脂が最も好ましく、さらに、鮮明な影5’を形成するために、着色樹脂層1と透明樹脂層3の界面の凹凸を小さくするという観点からは、透明樹脂層3の界面部分は、着色樹脂層1を形成する樹脂と同種の樹脂、即ち、オレフィン系樹脂(特に前述した透明樹脂層3を形成用として好適なもの)により形成されていることが好適である。従って、本発明において、最も好適には、透明樹脂層3の最外層(外表面側)が共重合PETにより形成され、透明樹脂層3の着色樹脂層1との界面側部分は、オレフィン系樹脂(特に、樹脂分に対して粘着性が高くかつ透明性が高いメタロセン系触媒により得られたメタロセンLLDPEやランダムPP)により形成されているのがよい。
【0029】
また、上記の場合において、ポリエステル系樹脂とオレフィン系樹脂とは接着性が乏しいため、透明樹脂層3の着色樹脂層1側の層(オレフィン系樹脂層)と最外層(ポリエステル系樹脂層)との間に、接着樹脂層を形成することが好ましい。この接着樹脂層は、透明樹脂層3の一部であり、当然のことながら透明であり、オレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との両方に対して接着性を示すものである。
【0030】
上記のような接着樹脂層の形成に使用される透明樹脂としては、非晶性の高い粘着性オレフィン系樹脂(エチレン・α−オレフィン共重合体など)やその酸変性樹脂、各種オレフィン系樹脂の酸変性樹脂などを例示することができる。また、変性剤として使用される酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸やその無水物などを例示することができる。さらに、このような透明な接着性樹脂には、接着性を向上させるために、公知の粘着付与材、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂などがブレンドされていてよい。
【0031】
尚、上記のようにして透明樹脂層3を内側層(オレフィン系樹脂層)、接着樹脂層及び最外層(ポリエステル系樹脂層)により形成する場合、各層の厚みは、トータルの厚み(間隔d)が前述した範囲(0.4乃至2.0mmの範囲、特に0.8乃至1.5mm)を満足し且つ所定の透明性を満足することを条件に、各層に要求される特性が効果的に発揮されるように設定される。例えば、内側層は、着色樹脂層1との界面の凹凸ができるだけ小さくなるように、0.1乃至2.0mm程度の厚みとすることが好ましく、最外層の厚みは、外表面が前述した表面粗さRaを有する平滑面となるように、少なくとも0.02mm以上の厚みとすることが好ましい。さらに、接着樹脂層の厚みは、通常、0.02乃至0.2mm程度とするのがよい。
【0032】
また、図1の例においては、着色樹脂層1は最内層となっており、その内側に樹脂層は形成されていないが、特に成形性の観点から、この内側に未着色の樹脂層(即ち、顔料が配合されていない樹脂層)を設けることが好ましい。即ち、この未着色樹脂層は、顔料やスクラップ樹脂が分散されている着色樹脂層1が直接容器内容物に接触するのを防止するものであるが、さらに、後述するブロー成形(ダイレクトブロー成形)に際して、ピンチ部(最内層同士の熱融着により形成される部分であり、プリフォームの底部となる)の接合強度を高め、ブローに際してのプリフォームの破損等の成形不良を有効に防止することができるという機能をも有する。このような最内層となる未着色樹脂層は、当然、バージンの熱可塑性樹脂から形成されるものであるが、かかる熱可塑性樹脂としては、着色樹脂層1との接着性の観点から、着色樹脂層1と同種の樹脂により形成されていることが好ましく、具体的には、オレフィン系樹脂、特に、高密度ポリエチレン、ブロックPP、ランダムPPや、粘着性の高いメタロセン系ポリエチレン(LLDPE,LDPE)から形成されていることが望ましい。このような最内層の厚みは、通常、0.05乃至2.0mm程度である。
【0033】
上述した説明から理解されるように、本発明の多層プラスチック容器において、特に好適な層構造は、図3に示すとおりである。
即ち、図3において、着色樹脂層1の上の透明樹脂層3は、最外層3a、接着樹脂層3b及び内側層3cとから形成されており、着色樹脂層1の内側には、未着色樹脂からなる最内層6が形成されており、このような好適な層構成において、各層を形成する樹脂の組み合わせとしては、以下の例を挙げることができる。
【0034】
<好適例(1)>
透明樹脂層3(容器外面側から):
最外層3a;ポリエステル系樹脂層(特に共重合PET)
接着樹脂層3b;前記で例示したもの
内側層3c;オレフィン系樹脂、特にメタロセンLLDPE
着色樹脂層1:
オレフィン系樹脂(特にHDPE)に無機顔料(特に金属粉顔料)を分散した層
(スクラップ樹脂含有)
最内層6:
未着色オレフィン系樹脂(特にHDPE)
【0035】
<好適例(2)>
透明樹脂層3(容器外面側から):
最外層3a;ポリエステル系樹脂層(特に共重合PET)
接着樹脂層3b;前記で例示したもの
内側層3c;オレフィン系樹脂、特にランダムPP
着色樹脂層1:
オレフィン系樹脂(特にブロックPP)に無機顔料(特に金属粉顔料)を分散し
た層(スクラップ樹脂含有)
最内層6:
オレフィン系樹脂、特にブロックPP
【0036】
尚、上述した各樹脂層には、本発明の目的を損なわない範囲で、それ自体公知の各種添加剤、例えば、無機フィラー、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を添加することもできる。
【0037】
本発明のプラスチック容器は、上記のような各樹脂層に対応する樹脂乃至は樹脂組成物と各樹脂層に対応する数の押出機を使用しての共押出成形或いは射出機を用いての射出成形によって、プリフォームを成形し、これを2次成形に供することによって容器形状に成形し、最後に、容器外面に所定の印刷像5を形成することにより製造される。また、共押出成形によって多層フィルムとして、これを裁断して袋状に成形して袋状容器(パウチ)とすることも可能である。
【0038】
また、着色樹脂層1と透明樹脂層3とで異種の樹脂を用いる場合には、着色樹脂層1と透明樹脂層3との界面に凹凸が形成されないように、できるだけメルトフローレートが近似したグレードの樹脂を用いるのがよい。
【0039】
さらに、プリフォームの形状や2次成形手段は、容器の形状によって異なり、例えばボトル形状の容器とする場合には、プリフォームの形状を円筒形状(パリソン)とし、その一端部を適当な治具で挟持して熱溶着し(ピンチオフ)、次いで圧縮空気の吹込みによるブロー成形(ダイレクトブロー)により2次成形を行うことにより、ボトル形状の容器を得ることができる。また、カップ状の容器とする場合には、プリフォームの形状をシート状とし、プラグアシスト成形により2次成形を行うことにより、カップ状の容器とすることができる。
【0040】
また、2次成形に際しては、用いる2次成形金型を鏡面仕上げして、その表面粗さRa(JIS B−0601)を0.2〜0.8μmに調整しておくことが好ましい。このような鏡面仕上げされた金型を使用することにより、例えば容器最外面となる透明樹脂層3の表面を表面粗さRaが0.2μm以下の平滑面とすることができ、容器外面を光沢面とし、印刷適性に優れた面とすることができる。
【0041】
さらに、印刷像5の形成は、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷など、それ自体公知の手段により行うことができるが、印刷インキ等により形成される印刷像5を厚くし(印刷像中の顔料濃度を高める)、着色樹脂層1の表面に形成される影5’を鮮明なものとするという観点から、スクリーン印刷が好適である。
【0042】
このようにして形成される本発明のプラスチック容器は、印刷適性が極めて良好であり、各種の文字、図形、マーク等を外面に印刷したとき、印刷画像の周縁部には陰影がはっきりと映し出され、立体的な像とすることができ、深みのある外観を呈する。
本発明のプラスチック容器は、ボトル形状、カップ形状の容器或いは袋状容器として、種々の内容物を収容する容器として使用に供することができるが、中でも着色樹脂層1がシルバー色に着色されているものでは、印刷像5の陰影が極めて鮮明であり且つ高級感を与えることから、特にボトル形状の化粧品、シャンプー、リンスなどの容器として極めて好適である。
【実施例】
【0043】
本発明の優れた効果を次の例で説明する。
尚、以下の例で、作成された容器(ボトル)の評価は、印刷像の立体感を以下の方法で評価することにより行った。
【0044】
<印刷像の立体感評価>
得られたボトルの外面印刷像正面から蛍光灯で光りを照射し、ボトル表面に対し45度の角度から視覚で、印刷像の立体感を、以下の基準で評点を付与して評価した。
○:印刷像の影が明確に立体的にみえる。
△:印刷像の影がやや立体的にみえる。
×:印刷像の影が立体的にはみえない。
(○と△が許容範囲である。)
【0045】
<実施例1>
図3に示す層構造のボトルを、各層形成用樹脂として、以下のものを用いて成形した。
透明樹脂層(最外層)3a:
非晶性共重合PETである透明ポリエステル系樹脂
(イーストマンPETG DryStar 0601、ヘイズ:0.3%)
透明樹脂層(接着樹脂層)3b:
MFR1.5g/10min(JIS K7210 190℃)の粘着性LDPEであるポリエチレン
系接着剤樹脂(三菱化学モディックF512A)に0.02WT%の滑剤(東洋インキエ
クセフローEX-LD)を混合した樹脂
透明樹脂層(内側層)3c:
MFR2.1g/10min(JIS K7210 210℃)のメタロセンLLDPE樹脂(プライ
ムポリマー社SP1020、ヘイズ:44%)
着色樹脂層1:
MFR0.36g/10min(JIS K7210 210℃)のHDPE樹脂(プライムポリマー
社6008B)にアルミ顔料(平均粒径5μm)を2重量%の割合で混合した樹脂
(顔料の平均粒径は顕微鏡写真により測定した算術平均値)
最内層(未着色樹脂層)6:
MFR0.36g/10min(JIS K7210 210℃)のHDPE樹脂(プライムポリマー
社6008B)
【0046】
即ち、押出機A(φ40)に透明樹脂層3a形成用の透明ポリエステル系樹脂、押出機B(φ40)に透明樹脂層3b形成用のポリエチレン系接着剤樹脂、押出機C(φ50)に透明樹脂層3c形成用のメタロセンLLDPE樹脂、押出機D(φ40)に着色樹脂層1形成用のアルミ顔料含有HDPE樹脂、及び押出機E(φ40)に最内層6形成用のHDPE樹脂を可塑化及び混練して押出し、多層ヘッドにて、図3に示す層構造の多層パリソンを形成させ、キャビティを有する金型で挟み、圧縮空気を吹き込んで、ボトル高さ153mm、胴径49mm、満注内容量200mlの5種5層の円筒形ボトルを成形した。
【0047】
その後、ボトル側壁外面にスクリーン印刷で酸化チタン顔料35重量%含有白色インキで印刷をした。印刷像は「TOKAN」と横書きにした。得られたボトルの「印刷像立体感」の評価を行った。得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0048】
<実施例2>
透明樹脂層3cの側壁厚みを0.2mmにし透明樹脂層3のトータル厚みを0.4mmとした以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0049】
<実施例3>
透明樹脂層3cの側壁厚みを1.8mmにし透明樹脂層3のトータル厚みを2.0mmとし、着色樹脂層1の側壁厚みを1.6mmにし、最内層6の側壁厚みを0.4mmにした以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0050】
<実施例4>
着色樹脂層1を、パール顔料(平均粒径15μm)が1.5重量%の割合で混合されたHDPEに変更して形成した以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0051】
<実施例5>
着色樹脂層1を、銀蒸着にて着色されたガラス顔料(平均粒径20μm)が2重量%の割合で混合されたHDPEに変更して形成した以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0052】
<実施例6>
透明樹脂層3cをランダムPP樹脂(プライムポリマー社B251VT、ヘイズ:15%)に変更し、且つ着色樹脂層1及び最内層6をブロックPP樹脂(プライムポリマー社B511QA)に変更した以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0053】
<実施例7>
透明樹脂層3a、3b、3cをランダムPP樹脂(プライムポリマー社B251VT)により形成された単層(厚み1.1mm)とした以外は実施例6と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0054】
<比較例1>
透明樹脂層3cの側壁厚みを0.1mmとし、透明樹脂層3のトータル厚みを0.3mmとした以外は実施例1と同様にして円筒形ボトルを成形し、印刷し、評価した。
得られた容器胴部樹脂種類と印刷部での各層の平均肉厚及び評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【符号の説明】
【0056】
1:着色樹脂層
3:透明樹脂層
5:印刷像
5’:印刷像の影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料の配合により着色された着色樹脂層を備えた多層プラスチック容器において、該着色樹脂層よりも外面側が全て透明樹脂により形成されており、該着色樹脂層の外面側を形成している該透明樹脂の層の厚みが0.4乃至2.0mmであることを特徴とする多層プラスチック容器。
【請求項2】
前記透明樹脂の層の外表面に印刷像が形成されている請求項1に記載の多層プラスチック容器。
【請求項3】
前記顔料として無機顔料が使用されている請求項1又は2に記載の多層プラスチック容器。
【請求項4】
前記着色樹脂層がシルバー色に着色されている請求項1乃至3の何れかに記載の多層プラスチック容器。
【請求項5】
前記着色樹脂層がスクラップ樹脂を含むリグラインド層中に顔料が分散されたものであり、該着色樹脂層の内面側には、バージンの樹脂から形成された最内層が形成されている請求項1乃至4の何れかに記載の多層プラスチック容器。
【請求項6】
前記透明樹脂の層が、最外層、接着樹脂層及び内側層から形成されている請求項1乃至5の何れかに記載の多層プラスチック容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−63272(P2011−63272A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212908(P2009−212908)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】