多リモコン式ウインチ制御システム、多リモコン式ウインチ制御方法
【課題】複数のリモコンによって操作可能な多リモコン式のウインチ装置を提供する。
【解決手段】多リモコン式ウインチ制御システムは、ウインチ10と、複数のリモコン11,12とを備えている。ウインチ10が備えるとともに複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行うウインチ側制御部102は、複数のリモコン11,12の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けるように構成されている。
【解決手段】多リモコン式ウインチ制御システムは、ウインチ10と、複数のリモコン11,12とを備えている。ウインチ10が備えるとともに複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行うウインチ側制御部102は、複数のリモコン11,12の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリモコンを用いてウインチを動作制御できるようにした多リモコン式ウインチ制御システム、及び多リモコン式ウインチ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチなる機械装置が知られている。このウインチは、荷物の揚げおろし、運搬、引張り作業などに使用される機械装置であり、主として重量物の移動の際に有用である。
【0003】
ウインチの操作は、ウインチに有線接続された操作コントローラを用いたものが一般的であるが、その他にも、ウインチに対してリモコンを付属させ、当該ウインチに対してリモコンから無線信号を送信することで、ウインチの動作制御を行うようにしたリモコンウインチなる製品も製造販売されている(例えば、下記非特許文献1参照)。リモコンによって操作可能なウインチであれば、有線の操作コントローラを用いるウインチに比べて操作者の作業範囲の自由度が拡大するため、非常に操作性が良いという利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】リョービ株式会社ホームページ、表題“パワーツール>商品紹介>プロ用ツール>ウインチ”、[online]、[平成22年4月6日検索]、インターネット<URL:http://www.ryobi-group.co.jp/projects/powertools/products/item_list.php?cid=8&ckbnid=1&pf=5&csid=179>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、図10に示すような二階建ての工場建屋で従来のリモコンウインチを使用する場合には、非常に不便である。すなわち、一階フロア21から二階フロア22に吊り荷13を移動させる場合を考えると、作業上、一階フロア21と二階フロア22のそれぞれに作業者が必要となる。このような作業環境の場合に、リモコン2が一台しかない従来のリモコンウインチ1,2の場合には、いずれか一方の作業者のみがリモコン2を操作することとなる。例えば、図10に示すように、一階フロア21の作業者がリモコン2を操作する場合、この作業者は二階フロア22の状況を目視で十分に確認することができないので、二階フロア22まで吊り荷13を上昇させて二階フロア22に吊り荷13を降ろす作業は、二階フロア22の作業者にとって危険を伴うこととなる。これとは逆に、二階フロア22の作業者がリモコン2を操作する場合を考えても、この作業者も同様に一階フロア21の状況を目視で十分に確認することができないので、一階フロア21の作業者が玉掛け作業を行う場合に、一階フロア21の作業者は危険を伴うこととなる。
【0006】
上述した二人作業でリモコンウインチ1,2を使用する場合の作業方法としては、掛け声をかけ合うことで一人の作業者がリモコン2の操作を行うことが考えられるが、一般的にウインチ1が使用される場所は騒音の大きい環境であることが多く、そのような状況下での従来のリモコンウインチ1,2の使用は、安全性及び作業効率性の点で非常に劣るものであった。そこで、リモコン2が一台しか使用できない現状のリモコンウインチ1,2に対しては、使用現場から、複数のリモコンによって操作可能な新たなリモコンウインチの提供が求められていた。
【0007】
ただし、従来のリモコンウインチ1,2に対して単にリモコン2を増設するだけでは、リモコン2を持った複数の作業者が同時にウインチ1を操作できることになってしまうため、そのような装置は非常に危険である。つまり、単に複数のリモコンによって操作できるウインチを提供するのではなく、複数の作業者それぞれがリモコンを持ったとしても、安全且つ作業効率良く操作できる操作制御システムを備えた新たなリモコンウインチの提供が求められていた。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、複数のリモコンによって操作可能な多リモコン式のウインチ装置であり、しかも複数の作業者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する際に、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる操作制御システムを備えた新たな多リモコン式ウインチ制御システムと、この多リモコン式ウインチ制御システムを用いる際に使用される多リモコン式ウインチ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)は、ワイヤーロープ(10a)の巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ(10a)の下端に設置されたフック(10b)の上昇又は下降を行うことで、当該フック(10b)に係止された吊り荷(13)を昇降させるウインチ(10)と、前記ウインチ(10)に対して無線信号を送信することで、当該ウインチ(10)の動作制御を行う複数のリモコン(11,12)と、を備える多リモコン式ウインチ制御システム(5)であって、前記ウインチ(10)は、前記複数のリモコン(11,12)との間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部(101)と、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号に応じてウインチ(10)の動作制御を行うウインチ側制御部(102)と、を含み、前記複数のリモコン(11,12)の各々は、前記ウインチ(10)との間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部(111,121)と、操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部(115,125)と、前記ウインチ(10)から送信されてくる無線信号、又は前記入力部(115,125)によって受け付けられた動作指令に応じてリモコン(11,12)の動作制御を行うリモコン側制御部(112,122)と、を含み、前記ウインチ側制御部(102)は、前記複数のリモコン(11,12)の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコン(11又は12)を優先リモコンとして認識し、他のリモコン(12又は11)を非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコン(11又は12)から送信されてくる無線信号のみを受け付けることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)では、前記ウインチ側制御部(102)が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、前記複数のリモコン(11,12)間で切替自在とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)において、優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部(102)が最初に受け付けた無線信号を送信したリモコン(11又は12)であることとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)において、優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部(102)が最初に受け付けたロック信号を送信したリモコン(11又は12)であることとすることができる。
【0014】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御方法は、ワイヤーロープ(10a)の巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ(10a)の下端に設置されたフック(10b)の上昇又は下降を行うことで、当該フック(10b)に係止された吊り荷(13)を昇降させるウインチ(10)を、複数のリモコン(11,12)を用いて動作制御するときに用いられる多リモコン式ウインチ制御方法であって、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号に応じてウインチ(10)の動作制御を行う前記ウインチ(10)が備えるウインチ側制御部(102)に、前記複数のリモコン(11,12)の各々が電源ONとなったときに送信してくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識させ、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けさせるステップと、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコン(11,12)を優先リモコンとして認識させ、他のリモコンを非優先リモコンとして認識させるステップと、前記優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けさせるステップと、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のリモコンによって操作可能な多リモコン式のウインチ装置を提供することができる。すなわち、この発明によれば、複数の作業者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する場合であっても、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる操作制御システム(方法)を備えた新たな多リモコン式ウインチ制御システム、及び多リモコン式ウインチ制御方法を提供することができるので、従来のリモコンウインチでは実現できなかった高い作業性と種々の使用方法を実現できる全く新しいリモコンウインチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用される環境を例示する図である。
【図2】本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るウインチと、第一リモコン及び第二リモコンの構成例を示すブロック図である。
【図4】第一リモコン及び第二リモコンの具体的な形態例を示す図である。
【図5】1台のリモコンのみを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6A】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6B】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図7】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合における別の動作例を示すフローチャートである。
【図8】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合におけるさらに別の動作例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る第一リモコン及び第二リモコンが採り得る多様な変形形態例を示す図である。
【図10】従来技術に係るリモコンウインチの技術的課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用される環境を例示する図である。以下で説明する実施形態は、図1に示すように、二階建ての工場建屋で二人作業を行う場合に本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用されることを想定している。
【0019】
建屋の天井部には、本実施形態に係るウインチ10が設置されている。このウインチ10は、巻き取り及び繰り出し動作可能なワイヤーロープ10aを備えており、このワイヤーロープ10aの下端に設置されたフック10bの上昇又は下降を行うことで、当該フック10bに係止された吊り荷13を昇降させることができる装置である。また、このウインチ10には、2台のリモコン11,12が付属しており、一階フロア21にて作業を行う操作者が符号11にて指示される第一リモコンを、二階フロア22にて作業を行う操作者が符号12にて指示される第二リモコンを所持している。二名の操作者のそれぞれが、本実施形態に係るウインチ10に対して動作指令のための無線信号を送信できる作業範囲に位置している。
【0020】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが取り得る構成例を説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5は、ウインチ10と、このウインチ10と無線通信可能な2台のリモコンである第一リモコン11及び第二リモコン12とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、説明の便宜のためにリモコンが2台の場合を例示して説明を行うが、リモコンの台数については、3台以上設けられてもよい。
【0022】
ウインチ10は、使用時においては常時通電された状態となっており、第一リモコン11及び第二リモコン12から送信されてくる無線信号に応じて動作するように構成されている。また、ウインチ10と2台のリモコン11,12との間における無線電波到達距離は、例えば約30m程度に設定することができ、操作者がウインチ10から離れた場所に位置する場合であっても、荷揚げ作業等の遠隔操作が実施可能となっている。
【0023】
第一リモコン11及び第二リモコン12は、それぞれ、多リモコン式ウインチ制御システム5を利用する操作者によって管理され、ウインチ10を遠隔操作するための機能を発揮することとなる。第一リモコン11及び第二リモコン12は、バッテリ等の軽量の蓄電池によって機動電力を供給され、また、外郭形状も小型に設計されているので、操作者による持ち運び性に優れた構成が採用されている。さらに、各リモコン11,12の外周には、破損防止のためにゴムやエラストマーなどの弾性体が設置されており、把持し易く堅牢性に優れた特徴を有している。
【0024】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5を構成するウインチ10と、第一リモコン11及び第二リモコン12の機能を実現するための具体的な構成例を説明する。ここで、図3は、本実施形態に係るウインチ10と、第一リモコン11及び第二リモコン12の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、本実施形態に係るウインチ10は、ウインチ側送受信部101と、ウインチ側制御部102と、モータ103とを含んでいる。
【0026】
ウインチ側送受信部101は、例えばアンテナ等の装置により構成され、2台のリモコン11,12から送信されてくる無線信号を受信したり、ウインチ10側からの無線信号を2台のリモコン11,12に対して送信したりする。
【0027】
ウインチ側制御部102は、例えば中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)として構成され、ウインチ10における中心的な処理装置として働く電子回路である。このウインチ側制御部102は、例えばウインチ側送受信部101を経由して2台のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行ったり、また、所定の条件に応じて2台のリモコン11,12側に無線信号を送信したりして、多リモコン式ウインチ制御システム5の全体を制御する部材である。
【0028】
モータ103は、ウインチ側制御部102からの指令に応じて正転及び逆転の回転駆動力を発生するとともに、この回転駆動力の停止動作を行う。このモータ103の駆動動作によって、ウインチ10が有するワイヤーロープ10aの巻き取り、繰り出し及び停止動作が実行され、吊り荷13の昇降作業が実現する。
【0029】
一方、図3に示すように、第一及び第二リモコン11,12は、リモコン側送受信部111,121と、リモコン側制御部112,122と、表示部113,123と、音声出力部114,124と、入力部115,125と、記憶部116,126とを含んでいる。なお、第一リモコン11と第二リモコン12は、全く同じ構成を有しているので、ここでは、説明の便宜のために第一リモコン11のみを説明することとする。
【0030】
第一リモコン11が有するリモコン側送受信部111は、例えばアンテナ等の装置により構成され、ウインチ10から送信されてくる無線信号を受信したり、第一リモコン11側からの無線信号をウインチ10に対して送信したりする。なお、リモコン側送受信部111によって第一リモコン11から発信される無線信号には、リモコン固有の識別番号(以下、「固有ID」と記す。)が含まれている。そして、上述したウインチ側制御部102は、各リモコンから送信されてくる固有IDを認識できるように成っており、ウインチ側制御部102は、事前に登録された固有IDを含む無線信号のみを受け付けるようにプログラム構成されている。したがって、たとえ同一機種であっても、別のウインチ10にセットされていたリモコンを使用してウインチ10を操作しようとしても、固有IDが未登録であるために操作できないように成っている。この固有IDは、既知の無線通信技術にて何万通りにも設定できるので、複数の多リモコン式ウインチ制御システム5を近接して使用する場合であっても、ウインチ10は操作者の想定外の動作をすることがないので、安全である。
【0031】
リモコン側制御部112は、例えば中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)として構成され、第一リモコン11における中心的な処理装置として働く電子回路である。このリモコン側制御部112は、例えばリモコン側送受信部111を経由してウインチ10から送信されてくる無線信号を取得して第一リモコン11の設定条件を変更したり、また、所定の条件に応じてウインチ10側に指令信号を無線送信したりする部材である。
【0032】
表示部113は、例えば電源のON/OFFを確認できる電源ランプや、無線信号の発信状況を示す送信ランプ等として構成される。ここで、第一リモコン11及び第二リモコン12の具体的な形態例を示す図として図4を参照すると、本実施形態に係る第一リモコン11には、電源ランプ11d及び送信ランプ11eという2つの表示部113が設置されている。なお、電源ランプ11dや送信ランプ11eといった表示部113の点灯条件や点滅条件等については、リモコン側制御部112からの指令に応じて適宜設定することが可能となっている。
【0033】
音声出力部114は、例えばスピーカなどの音声出力手段によって構成される。第一リモコン11における具体的な構成例としては、図4に示すように、第一リモコン11に内蔵された形式にてスピーカ11fが設置されており、このスピーカ11fからの音声出力が外部に好適に伝達できるように、第一リモコン11のケーシングに対して複数の開口孔が(符号11fで指示する個所に)設けられている。スピーカ11fなどにて構成される音声出力部114は、リモコン側制御部112からの指令や、後述する入力部115を介して所定条件の操作がされた際に、警告音などの音声を発呼することができる。なお、音声出力部114から発呼される音声のボリュームについては、例えば第一リモコン11に設置された不図示のボリューム調節つまみによって調節することが可能である。
【0034】
入力部115は、例えば操作ボタンによって構成され、操作者の選択に応じた動作指令を受け付けるための部材である。第一リモコン11における具体的な構成例としては、図4に示すように、第一リモコン11の電源をON/OFFするための電源ボタン11aと、ウインチ10が備えるフック10bを上昇させるためのUPボタン11bと、ウインチ10が備えるフック10bを下降させるためのDOWNボタン11cとによって、本実施形態の入力部115が構成されている。なお、入力部115の操作に連動して表示部113が起動するように成っており、例えば、電源ボタン11aを押下して第一リモコン11の電源をONにすると、電源ランプ11dが点灯するように成っている。また、UPボタン11bやDOWNボタン11cを押下してフック10bの昇降動作を行っているときには、送信ランプ11eが点灯するように成っており、フック10bの移動が行われていることを操作者に対して示すことができる。
【0035】
記憶部116は、例えばRAMなどの記憶媒体によって構成される。記憶部116は、ウインチ側制御部102から送信されてきた指令情報や設定条件、あるいは第一リモコン11の入力部115を介して設定された動作指令や所定情報などのデータを格納するための部材である。記憶部116に格納されたデータは、リモコン側制御部112等の指令信号に応じて適宜書き換えや取り出し、消去等が可能となっている。
【0036】
なお、本実施形態に係る記憶部116は、ウインチ側制御部102からの指令情報などといった一時的なデータを格納するためのものであり、システム全体を動作制御するための制御プログラムを含む各種の初期データ類については、ウインチ側制御部102やリモコン側制御部112が有する不図示のデータベースに格納されている。以下の説明では省略するが、ウインチ側制御部102やリモコン側制御部112などの動作は、データベース(不図示)に記憶された制御プログラム等によって実行されるものである。
【0037】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作について説明する。
【0038】
まず、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5は、複数のリモコン11,12を有しているが、当然ながら1台のリモコンのみでもウインチ10を操作可能である。そこで始めに、図5を用いて、第一リモコン11のみを用いてウインチ10を動作制御する場合の動作について説明することとする。なお、図5は、1台のリモコンのみを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【0039】
本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS21)。ウインチ10が待機したステップS21の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS11)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS12)。
【0040】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS22)。このステップS22の状態から、第一リモコン11によるウインチ可動状態に入る。
【0041】
なお、これ以降に第一リモコン11からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0042】
ウインチ可動状態に入ると、ウインチ10は、第一リモコン11から送信されてくる無線信号に基づき動作を実行することとなる。例えば、ステップS13にて示すように、第一リモコン11のUPボタン11bが操作者によって押下されると、ウインチ10は、ウインチ側制御部102の指令に基づきモータ103が回転駆動し、ワイヤーロープ10aを巻き取ることでフック10bを上昇させ、吊り荷13を上昇移動させることとなる(ステップS23)。一方、ステップS14にて示すように、第一リモコン11のDOWNボタン11cが操作者によって押下されると、ウインチ10は、ウインチ側制御部102の指令に基づきモータ103が先程とは逆に回転駆動し、ワイヤーロープ10aを繰り出すことでフック10bを下降させ、吊り荷13を下降移動させることとなる(ステップS24)。なお、図5にて示したフローチャートにおけるステップS13及びステップS14は、説明の便宜上この順番で示したものであり、ウインチ可動状態の間であれば、UPボタン11bとDOWNボタン11cは任意の順番及びタイミングにて操作を行うことができる。
【0043】
以上説明したウインチ可動状態を離脱して第一リモコン11によるウインチ10の操作を終了させるときには、第一リモコン11の電源ボタン11aを押下することで第一リモコン11の電源をOFFにする(ステップS15)。電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS16)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し(ステップS25)、初期状態であるステップS21で示した待機状態に戻ることとなる。
【0044】
以上、図5を用いて、1台のリモコン11のみを用いてウインチ10を動作制御する場合の動作例を説明した。次に、2台のリモコン11,12を用いてウインチ10を動作制御する場合の動作例について、図6A及び図6Bを用いて説明することとする。ここで、図6A及び図6Bは、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。なお、図6A及び図6Bは、両図にて一連の動作フローを表しており、図6A中の符号(α)、(β)、(γ)は、それぞれ図6B中の符号(α)、(β)、(γ)につながっている。
【0045】
本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS201)。ウインチ10が待機したステップS201の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS101)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS102)。
【0046】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS202)。
【0047】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS301)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS302)。
【0048】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS202)。
【0049】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0050】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS202の状態から、例えば図6Aに示すように第一リモコン11の任意のボタンが押下されると(ステップS103)、ウインチ10のウインチ側制御部102では、最初に操作信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS203)。
【0051】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS104)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS104の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0052】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS303)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS303の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0053】
第一リモコン11におけるステップS104の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS303の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0054】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS105)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS204)。なお、ステップS105及びステップS204における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0055】
また、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS304で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、第二リモコン12のリモコン側制御部122は音声出力部124であるスピーカ12fに対して指令信号を発し、スピーカ12fを介して警告音を発呼させることとなる(ステップS305)。この警告音によって、第二リモコン12の操作者は、改めて自己の所持する第二リモコン12が非優先状態であることを認識することができ、例えば吊り荷13に対する退避行動を取るなど、操作者に対して適切な安全行動を取るように促すことができる。
【0056】
第一リモコン11によるウインチ可動状態を離脱して第一リモコン11によるウインチ10の操作を終了させるときには、第一リモコン11の電源ボタン11aを押下することで第一リモコン11の電源をOFFにする(ステップS106)。電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、RAMである記憶部116に対して保存されていた優先リモコン情報が消去され、さらに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS107)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し(ステップS205)、さらに、この時点で電源ON状態にある第二リモコン12に対して非優先解除の信号を送信する(ステップS206)。
【0057】
非優先解除の信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122は、自身が優先リモコンとなったことを認識し(ステップS306)、RAMである記憶部116に対して保存されていた非優先リモコン情報が削除される。また、この時点で電源ON状態にあるのは第二リモコン12のみとなるため、第二リモコン12のウインチ不可動状態が解除され、直ちに第二リモコン12がウインチ可動状態に移行することとなる。
【0058】
ウインチ可動状態に入った第二リモコン12では、操作者によるUPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125の操作に基づき(ステップS307)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS207)。なお、ステップS307及びステップS207における具体的な動作についても、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0059】
第二リモコン12によるウインチ可動状態を離脱して第二リモコン12によるウインチ10の操作を終了させるときには、第二リモコン12の電源ボタン12aを押下することで第二リモコン12の電源をOFFにする(ステップS308)。電源がOFFになった瞬間に第二リモコン12の入力部125は操作不能になるので、この時点で第二リモコン12によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第二リモコン12では、電源ボタン12aが押下された瞬間に電源ランプ12dが消灯するとともに、リモコン側制御部122がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS309)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第二リモコン12の電源OFFを認識し(ステップS208)、初期状態であるステップS201で示した待機状態に戻ることとなる。
【0060】
以上説明したように、2台のリモコン11,12を用いてウインチ10の操作を行う場合において、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、図6A及び図6Bで示したように、ウインチ側制御部102が最初に受け付けた無線信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとして操作可能な状態とし、それ以外のリモコンを非優先リモコンとして操作不能な状態にすることとした。また、複数のリモコン間での優先状態と非優先状態とを切替自在とした。この切替方法としては、優先状態にあるリモコンの電源ボタンを操作して当該リモコンの電源をOFFすることで、優先リモコンとして認識された状態が解除されるようにした。このような動作方法を採用した多リモコン式ウインチ制御システム5によれば、複数の操作者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する場合であっても、確実に一の操作者のみが一のリモコンを操作できるので安全である。また、複数のリモコン間での優先/非優先状態を簡易に切り替えることができるので、作業効率性にも優れている。したがって、本実施形態によれば、複数のリモコン11,12でウインチ10を安全且つ作業性よく操作できるという、従来のリモコンウインチでは実現できなかった高い作業性と種々の使用方法を実現できる全く新しい多リモコン式ウインチ制御システム5を提供することができる。
【0061】
以上、図6A及び図6Bを用いて本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作例について説明を行った。上述した動作例では、ウインチ側制御部102が最初に受け付けた無線信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとして操作可能な状態とし、それ以外のリモコンを非優先リモコンとして操作不能な状態にすることを特徴としたものであった。ただし、本発明の適用範囲は図6A及び図6Bで示したものには限られず、多様な変形動作を採用することが可能である。そこで、別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作例について、図7を用いて説明を行うこととする。ここで、図7は、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合における別の動作例を示すフローチャートである。
【0062】
図7にて示す別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5においても、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS501)。ウインチ10が待機したステップS501の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS401)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS402)。
【0063】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS502)。
【0064】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS601)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS602)。
【0065】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS502)。
【0066】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0067】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS502の状態において、図7に示す実施形態では、ウインチ10は依然待機状態を維持する(待機状態St)。
【0068】
そして、この待機状態Stから、例えばステップS403にて示されるように、第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cが同時に押下されると、2ボタン同時押下の信号を入力部115から得たリモコン側制御部112は、ウインチ10に対してロック信号を送信する(ステップS403)。
【0069】
このとき、ウインチ10のウインチ側制御部102では、ロック信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS503)。
【0070】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS404)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS404の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0071】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS603)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS603の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0072】
第一リモコン11におけるステップS404の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS603の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0073】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS405)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS504)。なお、ステップS405及びステップS504における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0074】
また、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS604で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、第二リモコン12のリモコン側制御部122は音声出力部124であるスピーカ12fに対して指令信号を発し、スピーカ12fを介して警告音を発呼させることとなる(ステップS605)。この警告音によって、第二リモコン12の操作者は、改めて自己の所持する第二リモコン12が非優先状態であることを認識することができ、例えば吊り荷13に対する退避行動を取るなど、操作者に対して適切な安全行動を取るように促すことができる。
【0075】
この状態から第一リモコン11によるウインチ可動状態を離脱して初期の待機状態に戻りたいときには、再び第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信する(ステップS406)。
【0076】
優先状態にあった第一リモコン11から再度のロック信号を受信したウインチ10では、第一リモコン11での優先状態を解除して再び初期の待機状態に戻るために、ウインチ側制御部102から第一リモコン11に対して優先解除指令を発信するとともに、第二リモコン12に対して非優先解除指令を発信する(ステップS505)。
【0077】
優先解除指令及び非優先解除指令をそれぞれ受信した第一リモコン11及び第二リモコン12では、それぞれ第一リモコン11が優先状態を解除するとともに(ステップS407)、第二リモコン12が非優先状態を解除し(ステップS606)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。またこのとき、RAMである第一リモコン11の記憶部116と、RAMである第二リモコン12の記憶部126とにそれぞれ保存されていた優先リモコン情報及び非優先リモコン情報は、各記憶部116,126から消去されることとなる。さらにこのとき、第一リモコン11及び第二リモコン12で点滅状態にあった送信ランプ11e,12eについては、いずれも待機状態を示すために消灯することとなる。
【0078】
なお、この状態から再び第一リモコン11を優先リモコンとしたい場合には、再びUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信すればよく、逆に、第二リモコン12を優先リモコンとしたい場合には、第二リモコン12が有する入力部125の2ボタンであるUPボタン12bとDOWNボタン12cを同時に押下することで、ウインチ10に対して第二リモコン12からロック信号を送信すればよい。
【0079】
以上説明したように、図7にて示した別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作方法によれば、複数のリモコン間での優先状態と非優先状態を切り替える際には必ず待機状態Stを設けるように成っており、優先リモコンとしてウインチ側制御部102に認識されるためには、必ず2つのボタンを同時に押下してロック信号を送信する動作が必要となっている。この実施形態では、かかる動作方法を採用しているので、操作者に対して優先/非優先の切り替えについての意識付けができるようになり、安全面で好適である。また、各リモコンにおける優先/非優先の状態把握については、送信ランプ11e,12eの点滅状態を確認することで容易に把握ができるので、待機状態Stを設けても作業効率性を損なうことはない。
【0080】
なお、図7を用いて説明した別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、リモコンの優先状態の解除が、UPボタン11bとDOWNボタン11cの同時押下によるロック信号の再送信によって行われる場合を例示して説明を行った。しかしながら、各リモコン11,12における優先状態の解除手法については、ロック信号の再送信によるものには限られない。例えば、優先状態にあるリモコン11(12)の電源ボタン11a(12a)を押下して、リモコン11(12)の電源をOFFにすることでも、優先状態の解除を行うことが可能である。
【0081】
例えば、図7において第一リモコン11が優先状態にある場合に、ステップS406の段階で第一リモコン11の電源ボタン11aを押下し、第一リモコン11の電源をOFFにする。そうすると、電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了することとなる。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し、上述したステップS505と同様の動作指令を行うこととなる。すなわち、電源OFFとなった第一リモコン11、及び非優先解除指令を受信した第二リモコン12においては、第一リモコン11の優先状態が解除されるとともに(ステップS407)、第二リモコン12の非優先状態が解除されるので(ステップS606)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。
【0082】
以上、図6A、図6B及び図7を用いて本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5が取り得る複数の動作例について説明を行った。上述した動作例では、いずれも操作者が非優先状態にあるリモコンを操作した場合には、警告音を発呼して操作者に対して注意喚起するのみであり、優先状態にあるリモコンは依然操作指示可能な状態であった。そこで、次に説明するさらに別の実施形態では、操作者が非優先状態にあるリモコンを操作した場合には、システム全体を強制停止するようにした場合の動作例について、図8を用いて説明を行うこととする。ここで、図8は、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合におけるさらに別の動作例を示すフローチャートである。
【0083】
図8にて示すさらに別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5においても、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS801)。ウインチ10が待機したステップS801の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS701)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS702)。
【0084】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS802)。
【0085】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS901)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS902)。
【0086】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS802)。
【0087】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0088】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS802の状態において、図8に示す実施形態では、ウインチ10は依然待機状態を維持する(待機状態St)。
【0089】
そして、この待機状態Stから、例えばステップS703にて示されるように、第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cが同時に押下されると、2ボタン同時押下の信号を入力部115から得たリモコン側制御部112は、ウインチ10に対してロック信号を送信する(ステップS703)。
【0090】
このとき、ウインチ10のウインチ側制御部102では、ロック信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS803)。
【0091】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS704)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS704の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0092】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS903)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS903の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0093】
第一リモコン11におけるステップS704の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS903の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0094】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS705)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS804)。なお、ステップS705及びステップS804における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0095】
そして、この実施形態では、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS904で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、ウインチ側制御部102は、システムにおける全ての動作を強制的に停止させる(ステップS805)。
【0096】
この状態で、非優先リモコンである第二リモコン12を所持している操作者は、所持する第二リモコン12が非優先状態であることは送信ランプ12eの点滅状態によって把握しているはずである。それにもかかわらず、第二リモコン12における任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されるということは、非常事態であることが考えられる。そのような場合には、システム全体を強制停止することが安全上好ましい。図8にて示すこの実施形態では、安全面を向上した多リモコン式ウインチ制御システム5を提供することを目的としてシステム構成が構築されており、非優先状態のリモコンから無線信号が送られてきた場合には、直ちにシステム全体を強制停止するという思想に基づきシステム設計が成されている。
【0097】
ウインチ側制御部102が、ステップS805にてシステム全体を強制停止させた後は、システムを再び初期の待機状態に戻すために、ウインチ側制御部102から第一リモコン11に対して優先解除指令を発信するとともに、第二リモコン12に対して非優先解除指令を発信する(ステップS806)。
【0098】
優先解除指令及び非優先解除指令をそれぞれ受信した第一リモコン11及び第二リモコン12では、それぞれ第一リモコン11が優先状態を解除するとともに(ステップS706)、第二リモコン12が非優先状態を解除し(ステップS905)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。またこのとき、RAMである第一リモコン11の記憶部116と、RAMである第二リモコン12の記憶部126とにそれぞれ保存されていた優先リモコン情報及び非優先リモコン情報は、各記憶部116,126から消去されることとなる。さらにこのとき、第一リモコン11及び第二リモコン12で点滅状態にあった送信ランプ11e,12eは、いずれも待機状態を示すために消灯することとなる。
【0099】
なお、この状態から再び第一リモコン11を優先リモコンとしたい場合には、再びUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信すればよく、逆に、第二リモコン12を優先リモコンとしたい場合には、第二リモコン12が有する入力部125の2ボタンであるUPボタン12bとDOWNボタン12cを同時に押下することで、ウインチ10に対して第二リモコン12からロック信号を送信すればよい。
【0100】
以上説明したように、図8にて示したさらに別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作方法によれば、非優先状態のリモコンからウインチ10に対して無線信号が送られてきた場合には、直ちにシステム全体を強制停止するという構成が採られていた。したがって、この実施形態によれば、非優先状態のリモコンから不要な無線信号の送信が有った場合には、直ちにシステム全体を強制停止できるので、安全性が非常に高く、また、このような動作システムを考慮した作業ルールに基づいて、この多リモコン式ウインチ制御システム5を利用することで、作業効率性を損なうことなく安全性を高めることが可能である。
【0101】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0102】
例えば、図7及び図8にて例示した実施形態の場合には、各リモコン11,12が有する入力部115,125の2ボタンであるUPボタン11b,12bとDOWNボタン11c,12cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を送信する構成が採られていた。しかしながら、ロック信号を送信するためのリモコン11,12における入力部115,125の構成については、上述したものには限られない。例えば、図9にて例示するように、ロック信号を送信するための専用ボタンとして各リモコン11,12にLOCKボタン11g,12gを増設し、このLOCKボタン11g,12gを押下することでロック信号を発信するようにしてもよい。
【0103】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システムでは、ウインチ側制御部が、複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付ける構成を採用した。この際の所定条件としては、例えば、図6A及び図6Bで例示したように、最初に操作信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとしたり、図7及び図8で例示したように、初期状態を待機状態Stとしておき、ロック信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとしたりする実施形態を説明した。しかしながら、本発明に係る所定条件の設定方法は、様々な形態を採用可能であり、例えば1つのボタンを所定時間長押しした場合に優先リモコンとしたりするような、種々の条件を採用することが可能である。
【0104】
さらに、図6A及び図6Bで説明した実施形態では、優先状態を解除する方法として、ステップS106及びステップS308で示すように電源をOFFする手法を採用していた。ただし、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システムにおけるリモコンの優先状態解除方法は、上述の手法には限られない。例えば、ウインチ側制御部102によって優先リモコンとして認識されたリモコン11,12の入力部115,125の操作が所定時間行われないときに、優先リモコンとして認識された状態が解除されるように構成してもよい。このような構成を採用すれば、例えば優先リモコンを所持している操作者が作業現場を離れてしまった場合に、所定時間過ぎればリモコンの優先/非優先状態を自動的に切り替えることができるので、好ましい。
【0105】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0106】
以上説明したように、上述した実施形態では、ワイヤーロープ10aの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ10aの下端に設置されたフック10bの上昇又は下降を行うことで、当該フック10bに係止された吊り荷13を昇降させるウインチ10と、ウインチ10に対して無線信号を送信することで、当該ウインチ10の動作制御を行う複数のリモコン11,12と、を備える多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、複数のリモコン11,12との間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部101と、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行うウインチ側制御部102と、を含み、複数のリモコン11,12の各々は、ウインチ10との間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部111,121と、操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部115,125と、ウインチ10から送信されてくる無線信号、又は入力部115,125によって受け付けられた動作指令に応じてリモコン11,12の動作制御を行うリモコン側制御部112,122と、を含み、ウインチ側制御部112,122は、複数のリモコン11,12の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けるようにしたので、複数の操作者それぞれがリモコン11,12を所持してウインチ10を操作する場合であっても、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる。
【0107】
また、上述したように、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、ウインチ側制御部102が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、複数のリモコン間で切替自在であることとしたので、複数のリモコン11,12によって操作可能な多リモコン式ウインチ制御システム5を安全性及び作業効率性を損なうことなく実現できている。
【符号の説明】
【0108】
5 多リモコン式ウインチ制御システム、10 ウインチ、101 ウインチ側送受信部、102 ウインチ側制御部、103 モータ、10a ワイヤーロープ、10b フック、11 第一リモコン、12 第二リモコン、111,121 リモコン側送受信部、112,122 リモコン側制御部、113,123 表示部、114,124 音声出力部、115,125 入力部、116,126 記憶部、11a,12a 電源ボタン、11b,12b UPボタン、11c,12c DOWNボタン、11d,12d 電源ランプ、11e,12e 送信ランプ1、11f,12f スピーカ、11g,12g LOCKボタン、13 吊り荷、21 一階フロア、22 二階フロア。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のリモコンを用いてウインチを動作制御できるようにした多リモコン式ウインチ制御システム、及び多リモコン式ウインチ制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチなる機械装置が知られている。このウインチは、荷物の揚げおろし、運搬、引張り作業などに使用される機械装置であり、主として重量物の移動の際に有用である。
【0003】
ウインチの操作は、ウインチに有線接続された操作コントローラを用いたものが一般的であるが、その他にも、ウインチに対してリモコンを付属させ、当該ウインチに対してリモコンから無線信号を送信することで、ウインチの動作制御を行うようにしたリモコンウインチなる製品も製造販売されている(例えば、下記非特許文献1参照)。リモコンによって操作可能なウインチであれば、有線の操作コントローラを用いるウインチに比べて操作者の作業範囲の自由度が拡大するため、非常に操作性が良いという利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】リョービ株式会社ホームページ、表題“パワーツール>商品紹介>プロ用ツール>ウインチ”、[online]、[平成22年4月6日検索]、インターネット<URL:http://www.ryobi-group.co.jp/projects/powertools/products/item_list.php?cid=8&ckbnid=1&pf=5&csid=179>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、図10に示すような二階建ての工場建屋で従来のリモコンウインチを使用する場合には、非常に不便である。すなわち、一階フロア21から二階フロア22に吊り荷13を移動させる場合を考えると、作業上、一階フロア21と二階フロア22のそれぞれに作業者が必要となる。このような作業環境の場合に、リモコン2が一台しかない従来のリモコンウインチ1,2の場合には、いずれか一方の作業者のみがリモコン2を操作することとなる。例えば、図10に示すように、一階フロア21の作業者がリモコン2を操作する場合、この作業者は二階フロア22の状況を目視で十分に確認することができないので、二階フロア22まで吊り荷13を上昇させて二階フロア22に吊り荷13を降ろす作業は、二階フロア22の作業者にとって危険を伴うこととなる。これとは逆に、二階フロア22の作業者がリモコン2を操作する場合を考えても、この作業者も同様に一階フロア21の状況を目視で十分に確認することができないので、一階フロア21の作業者が玉掛け作業を行う場合に、一階フロア21の作業者は危険を伴うこととなる。
【0006】
上述した二人作業でリモコンウインチ1,2を使用する場合の作業方法としては、掛け声をかけ合うことで一人の作業者がリモコン2の操作を行うことが考えられるが、一般的にウインチ1が使用される場所は騒音の大きい環境であることが多く、そのような状況下での従来のリモコンウインチ1,2の使用は、安全性及び作業効率性の点で非常に劣るものであった。そこで、リモコン2が一台しか使用できない現状のリモコンウインチ1,2に対しては、使用現場から、複数のリモコンによって操作可能な新たなリモコンウインチの提供が求められていた。
【0007】
ただし、従来のリモコンウインチ1,2に対して単にリモコン2を増設するだけでは、リモコン2を持った複数の作業者が同時にウインチ1を操作できることになってしまうため、そのような装置は非常に危険である。つまり、単に複数のリモコンによって操作できるウインチを提供するのではなく、複数の作業者それぞれがリモコンを持ったとしても、安全且つ作業効率良く操作できる操作制御システムを備えた新たなリモコンウインチの提供が求められていた。
【0008】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、複数のリモコンによって操作可能な多リモコン式のウインチ装置であり、しかも複数の作業者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する際に、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる操作制御システムを備えた新たな多リモコン式ウインチ制御システムと、この多リモコン式ウインチ制御システムを用いる際に使用される多リモコン式ウインチ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)は、ワイヤーロープ(10a)の巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ(10a)の下端に設置されたフック(10b)の上昇又は下降を行うことで、当該フック(10b)に係止された吊り荷(13)を昇降させるウインチ(10)と、前記ウインチ(10)に対して無線信号を送信することで、当該ウインチ(10)の動作制御を行う複数のリモコン(11,12)と、を備える多リモコン式ウインチ制御システム(5)であって、前記ウインチ(10)は、前記複数のリモコン(11,12)との間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部(101)と、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号に応じてウインチ(10)の動作制御を行うウインチ側制御部(102)と、を含み、前記複数のリモコン(11,12)の各々は、前記ウインチ(10)との間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部(111,121)と、操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部(115,125)と、前記ウインチ(10)から送信されてくる無線信号、又は前記入力部(115,125)によって受け付けられた動作指令に応じてリモコン(11,12)の動作制御を行うリモコン側制御部(112,122)と、を含み、前記ウインチ側制御部(102)は、前記複数のリモコン(11,12)の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコン(11又は12)を優先リモコンとして認識し、他のリモコン(12又は11)を非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコン(11又は12)から送信されてくる無線信号のみを受け付けることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)では、前記ウインチ側制御部(102)が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、前記複数のリモコン(11,12)間で切替自在とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)において、優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部(102)が最初に受け付けた無線信号を送信したリモコン(11又は12)であることとすることができる。
【0013】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システム(5)において、優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部(102)が最初に受け付けたロック信号を送信したリモコン(11又は12)であることとすることができる。
【0014】
本発明に係る多リモコン式ウインチ制御方法は、ワイヤーロープ(10a)の巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ(10a)の下端に設置されたフック(10b)の上昇又は下降を行うことで、当該フック(10b)に係止された吊り荷(13)を昇降させるウインチ(10)を、複数のリモコン(11,12)を用いて動作制御するときに用いられる多リモコン式ウインチ制御方法であって、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号に応じてウインチ(10)の動作制御を行う前記ウインチ(10)が備えるウインチ側制御部(102)に、前記複数のリモコン(11,12)の各々が電源ONとなったときに送信してくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識させ、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けさせるステップと、前記複数のリモコン(11,12)から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコン(11,12)を優先リモコンとして認識させ、他のリモコンを非優先リモコンとして認識させるステップと、前記優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けさせるステップと、を含む処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のリモコンによって操作可能な多リモコン式のウインチ装置を提供することができる。すなわち、この発明によれば、複数の作業者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する場合であっても、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる操作制御システム(方法)を備えた新たな多リモコン式ウインチ制御システム、及び多リモコン式ウインチ制御方法を提供することができるので、従来のリモコンウインチでは実現できなかった高い作業性と種々の使用方法を実現できる全く新しいリモコンウインチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用される環境を例示する図である。
【図2】本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムの構成例を示すブロック図である。
【図3】本実施形態に係るウインチと、第一リモコン及び第二リモコンの構成例を示すブロック図である。
【図4】第一リモコン及び第二リモコンの具体的な形態例を示す図である。
【図5】1台のリモコンのみを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6A】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図6B】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【図7】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合における別の動作例を示すフローチャートである。
【図8】2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合におけるさらに別の動作例を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る第一リモコン及び第二リモコンが採り得る多様な変形形態例を示す図である。
【図10】従来技術に係るリモコンウインチの技術的課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用される環境を例示する図である。以下で説明する実施形態は、図1に示すように、二階建ての工場建屋で二人作業を行う場合に本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが使用されることを想定している。
【0019】
建屋の天井部には、本実施形態に係るウインチ10が設置されている。このウインチ10は、巻き取り及び繰り出し動作可能なワイヤーロープ10aを備えており、このワイヤーロープ10aの下端に設置されたフック10bの上昇又は下降を行うことで、当該フック10bに係止された吊り荷13を昇降させることができる装置である。また、このウインチ10には、2台のリモコン11,12が付属しており、一階フロア21にて作業を行う操作者が符号11にて指示される第一リモコンを、二階フロア22にて作業を行う操作者が符号12にて指示される第二リモコンを所持している。二名の操作者のそれぞれが、本実施形態に係るウインチ10に対して動作指令のための無線信号を送信できる作業範囲に位置している。
【0020】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システムが取り得る構成例を説明する。ここで、図2は、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5は、ウインチ10と、このウインチ10と無線通信可能な2台のリモコンである第一リモコン11及び第二リモコン12とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、説明の便宜のためにリモコンが2台の場合を例示して説明を行うが、リモコンの台数については、3台以上設けられてもよい。
【0022】
ウインチ10は、使用時においては常時通電された状態となっており、第一リモコン11及び第二リモコン12から送信されてくる無線信号に応じて動作するように構成されている。また、ウインチ10と2台のリモコン11,12との間における無線電波到達距離は、例えば約30m程度に設定することができ、操作者がウインチ10から離れた場所に位置する場合であっても、荷揚げ作業等の遠隔操作が実施可能となっている。
【0023】
第一リモコン11及び第二リモコン12は、それぞれ、多リモコン式ウインチ制御システム5を利用する操作者によって管理され、ウインチ10を遠隔操作するための機能を発揮することとなる。第一リモコン11及び第二リモコン12は、バッテリ等の軽量の蓄電池によって機動電力を供給され、また、外郭形状も小型に設計されているので、操作者による持ち運び性に優れた構成が採用されている。さらに、各リモコン11,12の外周には、破損防止のためにゴムやエラストマーなどの弾性体が設置されており、把持し易く堅牢性に優れた特徴を有している。
【0024】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5を構成するウインチ10と、第一リモコン11及び第二リモコン12の機能を実現するための具体的な構成例を説明する。ここで、図3は、本実施形態に係るウインチ10と、第一リモコン11及び第二リモコン12の構成例を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、本実施形態に係るウインチ10は、ウインチ側送受信部101と、ウインチ側制御部102と、モータ103とを含んでいる。
【0026】
ウインチ側送受信部101は、例えばアンテナ等の装置により構成され、2台のリモコン11,12から送信されてくる無線信号を受信したり、ウインチ10側からの無線信号を2台のリモコン11,12に対して送信したりする。
【0027】
ウインチ側制御部102は、例えば中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)として構成され、ウインチ10における中心的な処理装置として働く電子回路である。このウインチ側制御部102は、例えばウインチ側送受信部101を経由して2台のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行ったり、また、所定の条件に応じて2台のリモコン11,12側に無線信号を送信したりして、多リモコン式ウインチ制御システム5の全体を制御する部材である。
【0028】
モータ103は、ウインチ側制御部102からの指令に応じて正転及び逆転の回転駆動力を発生するとともに、この回転駆動力の停止動作を行う。このモータ103の駆動動作によって、ウインチ10が有するワイヤーロープ10aの巻き取り、繰り出し及び停止動作が実行され、吊り荷13の昇降作業が実現する。
【0029】
一方、図3に示すように、第一及び第二リモコン11,12は、リモコン側送受信部111,121と、リモコン側制御部112,122と、表示部113,123と、音声出力部114,124と、入力部115,125と、記憶部116,126とを含んでいる。なお、第一リモコン11と第二リモコン12は、全く同じ構成を有しているので、ここでは、説明の便宜のために第一リモコン11のみを説明することとする。
【0030】
第一リモコン11が有するリモコン側送受信部111は、例えばアンテナ等の装置により構成され、ウインチ10から送信されてくる無線信号を受信したり、第一リモコン11側からの無線信号をウインチ10に対して送信したりする。なお、リモコン側送受信部111によって第一リモコン11から発信される無線信号には、リモコン固有の識別番号(以下、「固有ID」と記す。)が含まれている。そして、上述したウインチ側制御部102は、各リモコンから送信されてくる固有IDを認識できるように成っており、ウインチ側制御部102は、事前に登録された固有IDを含む無線信号のみを受け付けるようにプログラム構成されている。したがって、たとえ同一機種であっても、別のウインチ10にセットされていたリモコンを使用してウインチ10を操作しようとしても、固有IDが未登録であるために操作できないように成っている。この固有IDは、既知の無線通信技術にて何万通りにも設定できるので、複数の多リモコン式ウインチ制御システム5を近接して使用する場合であっても、ウインチ10は操作者の想定外の動作をすることがないので、安全である。
【0031】
リモコン側制御部112は、例えば中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)として構成され、第一リモコン11における中心的な処理装置として働く電子回路である。このリモコン側制御部112は、例えばリモコン側送受信部111を経由してウインチ10から送信されてくる無線信号を取得して第一リモコン11の設定条件を変更したり、また、所定の条件に応じてウインチ10側に指令信号を無線送信したりする部材である。
【0032】
表示部113は、例えば電源のON/OFFを確認できる電源ランプや、無線信号の発信状況を示す送信ランプ等として構成される。ここで、第一リモコン11及び第二リモコン12の具体的な形態例を示す図として図4を参照すると、本実施形態に係る第一リモコン11には、電源ランプ11d及び送信ランプ11eという2つの表示部113が設置されている。なお、電源ランプ11dや送信ランプ11eといった表示部113の点灯条件や点滅条件等については、リモコン側制御部112からの指令に応じて適宜設定することが可能となっている。
【0033】
音声出力部114は、例えばスピーカなどの音声出力手段によって構成される。第一リモコン11における具体的な構成例としては、図4に示すように、第一リモコン11に内蔵された形式にてスピーカ11fが設置されており、このスピーカ11fからの音声出力が外部に好適に伝達できるように、第一リモコン11のケーシングに対して複数の開口孔が(符号11fで指示する個所に)設けられている。スピーカ11fなどにて構成される音声出力部114は、リモコン側制御部112からの指令や、後述する入力部115を介して所定条件の操作がされた際に、警告音などの音声を発呼することができる。なお、音声出力部114から発呼される音声のボリュームについては、例えば第一リモコン11に設置された不図示のボリューム調節つまみによって調節することが可能である。
【0034】
入力部115は、例えば操作ボタンによって構成され、操作者の選択に応じた動作指令を受け付けるための部材である。第一リモコン11における具体的な構成例としては、図4に示すように、第一リモコン11の電源をON/OFFするための電源ボタン11aと、ウインチ10が備えるフック10bを上昇させるためのUPボタン11bと、ウインチ10が備えるフック10bを下降させるためのDOWNボタン11cとによって、本実施形態の入力部115が構成されている。なお、入力部115の操作に連動して表示部113が起動するように成っており、例えば、電源ボタン11aを押下して第一リモコン11の電源をONにすると、電源ランプ11dが点灯するように成っている。また、UPボタン11bやDOWNボタン11cを押下してフック10bの昇降動作を行っているときには、送信ランプ11eが点灯するように成っており、フック10bの移動が行われていることを操作者に対して示すことができる。
【0035】
記憶部116は、例えばRAMなどの記憶媒体によって構成される。記憶部116は、ウインチ側制御部102から送信されてきた指令情報や設定条件、あるいは第一リモコン11の入力部115を介して設定された動作指令や所定情報などのデータを格納するための部材である。記憶部116に格納されたデータは、リモコン側制御部112等の指令信号に応じて適宜書き換えや取り出し、消去等が可能となっている。
【0036】
なお、本実施形態に係る記憶部116は、ウインチ側制御部102からの指令情報などといった一時的なデータを格納するためのものであり、システム全体を動作制御するための制御プログラムを含む各種の初期データ類については、ウインチ側制御部102やリモコン側制御部112が有する不図示のデータベースに格納されている。以下の説明では省略するが、ウインチ側制御部102やリモコン側制御部112などの動作は、データベース(不図示)に記憶された制御プログラム等によって実行されるものである。
【0037】
次に、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作について説明する。
【0038】
まず、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5は、複数のリモコン11,12を有しているが、当然ながら1台のリモコンのみでもウインチ10を操作可能である。そこで始めに、図5を用いて、第一リモコン11のみを用いてウインチ10を動作制御する場合の動作について説明することとする。なお、図5は、1台のリモコンのみを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。
【0039】
本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS21)。ウインチ10が待機したステップS21の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS11)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS12)。
【0040】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS22)。このステップS22の状態から、第一リモコン11によるウインチ可動状態に入る。
【0041】
なお、これ以降に第一リモコン11からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0042】
ウインチ可動状態に入ると、ウインチ10は、第一リモコン11から送信されてくる無線信号に基づき動作を実行することとなる。例えば、ステップS13にて示すように、第一リモコン11のUPボタン11bが操作者によって押下されると、ウインチ10は、ウインチ側制御部102の指令に基づきモータ103が回転駆動し、ワイヤーロープ10aを巻き取ることでフック10bを上昇させ、吊り荷13を上昇移動させることとなる(ステップS23)。一方、ステップS14にて示すように、第一リモコン11のDOWNボタン11cが操作者によって押下されると、ウインチ10は、ウインチ側制御部102の指令に基づきモータ103が先程とは逆に回転駆動し、ワイヤーロープ10aを繰り出すことでフック10bを下降させ、吊り荷13を下降移動させることとなる(ステップS24)。なお、図5にて示したフローチャートにおけるステップS13及びステップS14は、説明の便宜上この順番で示したものであり、ウインチ可動状態の間であれば、UPボタン11bとDOWNボタン11cは任意の順番及びタイミングにて操作を行うことができる。
【0043】
以上説明したウインチ可動状態を離脱して第一リモコン11によるウインチ10の操作を終了させるときには、第一リモコン11の電源ボタン11aを押下することで第一リモコン11の電源をOFFにする(ステップS15)。電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS16)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し(ステップS25)、初期状態であるステップS21で示した待機状態に戻ることとなる。
【0044】
以上、図5を用いて、1台のリモコン11のみを用いてウインチ10を動作制御する場合の動作例を説明した。次に、2台のリモコン11,12を用いてウインチ10を動作制御する場合の動作例について、図6A及び図6Bを用いて説明することとする。ここで、図6A及び図6Bは、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合の動作例を示すフローチャートである。なお、図6A及び図6Bは、両図にて一連の動作フローを表しており、図6A中の符号(α)、(β)、(γ)は、それぞれ図6B中の符号(α)、(β)、(γ)につながっている。
【0045】
本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS201)。ウインチ10が待機したステップS201の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS101)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS102)。
【0046】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS202)。
【0047】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS301)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS302)。
【0048】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS202)。
【0049】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0050】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS202の状態から、例えば図6Aに示すように第一リモコン11の任意のボタンが押下されると(ステップS103)、ウインチ10のウインチ側制御部102では、最初に操作信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS203)。
【0051】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS104)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS104の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0052】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS303)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS303の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0053】
第一リモコン11におけるステップS104の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS303の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0054】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS105)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS204)。なお、ステップS105及びステップS204における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0055】
また、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS304で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、第二リモコン12のリモコン側制御部122は音声出力部124であるスピーカ12fに対して指令信号を発し、スピーカ12fを介して警告音を発呼させることとなる(ステップS305)。この警告音によって、第二リモコン12の操作者は、改めて自己の所持する第二リモコン12が非優先状態であることを認識することができ、例えば吊り荷13に対する退避行動を取るなど、操作者に対して適切な安全行動を取るように促すことができる。
【0056】
第一リモコン11によるウインチ可動状態を離脱して第一リモコン11によるウインチ10の操作を終了させるときには、第一リモコン11の電源ボタン11aを押下することで第一リモコン11の電源をOFFにする(ステップS106)。電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、RAMである記憶部116に対して保存されていた優先リモコン情報が消去され、さらに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS107)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し(ステップS205)、さらに、この時点で電源ON状態にある第二リモコン12に対して非優先解除の信号を送信する(ステップS206)。
【0057】
非優先解除の信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122は、自身が優先リモコンとなったことを認識し(ステップS306)、RAMである記憶部116に対して保存されていた非優先リモコン情報が削除される。また、この時点で電源ON状態にあるのは第二リモコン12のみとなるため、第二リモコン12のウインチ不可動状態が解除され、直ちに第二リモコン12がウインチ可動状態に移行することとなる。
【0058】
ウインチ可動状態に入った第二リモコン12では、操作者によるUPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125の操作に基づき(ステップS307)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS207)。なお、ステップS307及びステップS207における具体的な動作についても、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0059】
第二リモコン12によるウインチ可動状態を離脱して第二リモコン12によるウインチ10の操作を終了させるときには、第二リモコン12の電源ボタン12aを押下することで第二リモコン12の電源をOFFにする(ステップS308)。電源がOFFになった瞬間に第二リモコン12の入力部125は操作不能になるので、この時点で第二リモコン12によるウインチ可動状態が終了する。またこのとき、第二リモコン12では、電源ボタン12aが押下された瞬間に電源ランプ12dが消灯するとともに、リモコン側制御部122がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する(ステップS309)。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第二リモコン12の電源OFFを認識し(ステップS208)、初期状態であるステップS201で示した待機状態に戻ることとなる。
【0060】
以上説明したように、2台のリモコン11,12を用いてウインチ10の操作を行う場合において、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、図6A及び図6Bで示したように、ウインチ側制御部102が最初に受け付けた無線信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとして操作可能な状態とし、それ以外のリモコンを非優先リモコンとして操作不能な状態にすることとした。また、複数のリモコン間での優先状態と非優先状態とを切替自在とした。この切替方法としては、優先状態にあるリモコンの電源ボタンを操作して当該リモコンの電源をOFFすることで、優先リモコンとして認識された状態が解除されるようにした。このような動作方法を採用した多リモコン式ウインチ制御システム5によれば、複数の操作者それぞれがリモコンを所持してウインチを操作する場合であっても、確実に一の操作者のみが一のリモコンを操作できるので安全である。また、複数のリモコン間での優先/非優先状態を簡易に切り替えることができるので、作業効率性にも優れている。したがって、本実施形態によれば、複数のリモコン11,12でウインチ10を安全且つ作業性よく操作できるという、従来のリモコンウインチでは実現できなかった高い作業性と種々の使用方法を実現できる全く新しい多リモコン式ウインチ制御システム5を提供することができる。
【0061】
以上、図6A及び図6Bを用いて本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作例について説明を行った。上述した動作例では、ウインチ側制御部102が最初に受け付けた無線信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとして操作可能な状態とし、それ以外のリモコンを非優先リモコンとして操作不能な状態にすることを特徴としたものであった。ただし、本発明の適用範囲は図6A及び図6Bで示したものには限られず、多様な変形動作を採用することが可能である。そこで、別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作例について、図7を用いて説明を行うこととする。ここで、図7は、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合における別の動作例を示すフローチャートである。
【0062】
図7にて示す別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5においても、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS501)。ウインチ10が待機したステップS501の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS401)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS402)。
【0063】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS502)。
【0064】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS601)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS602)。
【0065】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS502)。
【0066】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0067】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS502の状態において、図7に示す実施形態では、ウインチ10は依然待機状態を維持する(待機状態St)。
【0068】
そして、この待機状態Stから、例えばステップS403にて示されるように、第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cが同時に押下されると、2ボタン同時押下の信号を入力部115から得たリモコン側制御部112は、ウインチ10に対してロック信号を送信する(ステップS403)。
【0069】
このとき、ウインチ10のウインチ側制御部102では、ロック信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS503)。
【0070】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS404)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS404の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0071】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS603)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS603の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0072】
第一リモコン11におけるステップS404の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS603の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0073】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS405)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS504)。なお、ステップS405及びステップS504における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0074】
また、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS604で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、第二リモコン12のリモコン側制御部122は音声出力部124であるスピーカ12fに対して指令信号を発し、スピーカ12fを介して警告音を発呼させることとなる(ステップS605)。この警告音によって、第二リモコン12の操作者は、改めて自己の所持する第二リモコン12が非優先状態であることを認識することができ、例えば吊り荷13に対する退避行動を取るなど、操作者に対して適切な安全行動を取るように促すことができる。
【0075】
この状態から第一リモコン11によるウインチ可動状態を離脱して初期の待機状態に戻りたいときには、再び第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信する(ステップS406)。
【0076】
優先状態にあった第一リモコン11から再度のロック信号を受信したウインチ10では、第一リモコン11での優先状態を解除して再び初期の待機状態に戻るために、ウインチ側制御部102から第一リモコン11に対して優先解除指令を発信するとともに、第二リモコン12に対して非優先解除指令を発信する(ステップS505)。
【0077】
優先解除指令及び非優先解除指令をそれぞれ受信した第一リモコン11及び第二リモコン12では、それぞれ第一リモコン11が優先状態を解除するとともに(ステップS407)、第二リモコン12が非優先状態を解除し(ステップS606)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。またこのとき、RAMである第一リモコン11の記憶部116と、RAMである第二リモコン12の記憶部126とにそれぞれ保存されていた優先リモコン情報及び非優先リモコン情報は、各記憶部116,126から消去されることとなる。さらにこのとき、第一リモコン11及び第二リモコン12で点滅状態にあった送信ランプ11e,12eについては、いずれも待機状態を示すために消灯することとなる。
【0078】
なお、この状態から再び第一リモコン11を優先リモコンとしたい場合には、再びUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信すればよく、逆に、第二リモコン12を優先リモコンとしたい場合には、第二リモコン12が有する入力部125の2ボタンであるUPボタン12bとDOWNボタン12cを同時に押下することで、ウインチ10に対して第二リモコン12からロック信号を送信すればよい。
【0079】
以上説明したように、図7にて示した別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作方法によれば、複数のリモコン間での優先状態と非優先状態を切り替える際には必ず待機状態Stを設けるように成っており、優先リモコンとしてウインチ側制御部102に認識されるためには、必ず2つのボタンを同時に押下してロック信号を送信する動作が必要となっている。この実施形態では、かかる動作方法を採用しているので、操作者に対して優先/非優先の切り替えについての意識付けができるようになり、安全面で好適である。また、各リモコンにおける優先/非優先の状態把握については、送信ランプ11e,12eの点滅状態を確認することで容易に把握ができるので、待機状態Stを設けても作業効率性を損なうことはない。
【0080】
なお、図7を用いて説明した別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、リモコンの優先状態の解除が、UPボタン11bとDOWNボタン11cの同時押下によるロック信号の再送信によって行われる場合を例示して説明を行った。しかしながら、各リモコン11,12における優先状態の解除手法については、ロック信号の再送信によるものには限られない。例えば、優先状態にあるリモコン11(12)の電源ボタン11a(12a)を押下して、リモコン11(12)の電源をOFFにすることでも、優先状態の解除を行うことが可能である。
【0081】
例えば、図7において第一リモコン11が優先状態にある場合に、ステップS406の段階で第一リモコン11の電源ボタン11aを押下し、第一リモコン11の電源をOFFにする。そうすると、電源がOFFになった瞬間に第一リモコン11の入力部115は操作不能になるので、この時点で第一リモコン11によるウインチ可動状態が終了することとなる。またこのとき、第一リモコン11では、電源ボタン11aが押下された瞬間に電源ランプ11dが消灯するとともに、リモコン側制御部112がウインチ10に対して電源OFF信号を送信する。この電源OFF信号を受信したウインチ側制御部102は、第一リモコン11の電源OFFを認識し、上述したステップS505と同様の動作指令を行うこととなる。すなわち、電源OFFとなった第一リモコン11、及び非優先解除指令を受信した第二リモコン12においては、第一リモコン11の優先状態が解除されるとともに(ステップS407)、第二リモコン12の非優先状態が解除されるので(ステップS606)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。
【0082】
以上、図6A、図6B及び図7を用いて本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5が取り得る複数の動作例について説明を行った。上述した動作例では、いずれも操作者が非優先状態にあるリモコンを操作した場合には、警告音を発呼して操作者に対して注意喚起するのみであり、優先状態にあるリモコンは依然操作指示可能な状態であった。そこで、次に説明するさらに別の実施形態では、操作者が非優先状態にあるリモコンを操作した場合には、システム全体を強制停止するようにした場合の動作例について、図8を用いて説明を行うこととする。ここで、図8は、2台のリモコンを用いてウインチを動作制御する場合におけるさらに別の動作例を示すフローチャートである。
【0083】
図8にて示すさらに別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5においても、ウインチ10は、初期状態から電源ONの状態にて待機している(ステップS801)。ウインチ10が待機したステップS801の状態において、第一リモコン11の電源ボタン11aが押下されて第一リモコン11の電源がONになると(ステップS701)、第一リモコン11の側では、電源ランプ11dが点灯して操作者に対して第一リモコン11の電源がONになったことを表示する。また、このとき第一リモコン11では、リモコン側制御部112の指令にてリモコン側送受信部111を経由してウインチ10側に第一リモコン11の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第一リモコン11の固有IDが含まれている(ステップS702)。
【0084】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第一リモコン11の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第一リモコン11の電源がONになったことを認識する(ステップS802)。
【0085】
一方、第一リモコン11の電源ONと同時並行的に第二リモコン12の電源ボタン12aが押下されて第二リモコン12の電源がONになると(ステップS901)、第二リモコン12の側では、電源ランプ12dが点灯して操作者に対して第二リモコン12の電源がONになったことを表示する。また、このとき第二リモコン12では、リモコン側制御部122の指令にてリモコン側送受信部121を経由してウインチ10側に第二リモコン12の電源がONになったことを知らせる無線信号が送信される。このとき送信される無線信号には、第二リモコン12の固有IDが含まれている(ステップS902)。
【0086】
ウインチ10のウインチ側制御部102が、ウインチ側送受信部101を経由して第二リモコン12の送信してきた固有IDを含む電源ON情報を取得すると、ウインチ側制御部102は、固有IDを照合した上で、事前に登録された固有IDを送信してきた第二リモコン12の電源がONになったことを認識する(ステップS802)。
【0087】
なお、これ以降に第一リモコン11及び第二リモコン12からウインチ10に対して送信される無線信号にも、上述した固有IDが含まれており、ウインチ側制御部102は、固有IDを取得した都度、その照合処理を行うが、以下の説明では、説明の便宜のために、固有IDの発信・照合処理については、説明を省略することとする。
【0088】
ウインチ側制御部102が第一リモコン11及び第二リモコン12の電源ON状態を認識したステップS802の状態において、図8に示す実施形態では、ウインチ10は依然待機状態を維持する(待機状態St)。
【0089】
そして、この待機状態Stから、例えばステップS703にて示されるように、第一リモコン11の2つのボタン、例えばUPボタン11bとDOWNボタン11cが同時に押下されると、2ボタン同時押下の信号を入力部115から得たリモコン側制御部112は、ウインチ10に対してロック信号を送信する(ステップS703)。
【0090】
このとき、ウインチ10のウインチ側制御部102では、ロック信号を送信してきた第一リモコン11を優先リモコンとして認識し、第一リモコン11に対して優先信号を送信し、第二リモコン12に対して非優先信号を送信する(ステップS803)。
【0091】
ウインチ10から送信されてきた優先信号を受信した第一リモコン11のリモコン側制御部112では、自身が優先リモコンであることを認識する(ステップS704)。なお、優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部116に対して保存されることとなる。ステップS704の処理段階において、優先リモコンであることを認識した第一リモコン11では、送信ランプ11eが例えば1秒間隔で点滅し、第一リモコン11を所持している操作者が優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0092】
一方、ウインチ10から送信されてきた非優先信号を受信した第二リモコン12のリモコン側制御部122では、自身が非優先リモコンであることを認識する(ステップS903)。なお、非優先リモコンであることの情報は、RAMである記憶部126に対して保存されることとなる。ステップS903の処理段階において、非優先リモコンであることを認識した第二リモコン12では、送信ランプ12eが優先リモコンの場合とは明らかに異なる例えば0.3秒間隔で点滅し、第二リモコン12を所持している操作者が非優先リモコンを所持していることを認識できるようになる。
【0093】
第一リモコン11におけるステップS704の処理段階と、第二リモコン12におけるステップS903の処理段階から、第一リモコン11においてはウインチ可動状態に入り、第二リモコン12においてはウインチ不可動状態に入ることとなる。
【0094】
ウインチ可動状態に入った第一リモコン11では、操作者によるUPボタン11bやDOWNボタン11cなどの入力部115の操作に基づき(ステップS705)、ウインチ10が動作を行うこととなる(ステップS804)。なお、ステップS705及びステップS804における具体的な動作については、図5中のステップS13〜ステップS14及びステップS23〜ステップS24を示して説明した動作と同様である。
【0095】
そして、この実施形態では、第一リモコン11がウインチ可動状態に入り、第二リモコン12がウインチ不可動状態に入った状態において、ステップS904で示すように第二リモコン12で任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されると、ウインチ側制御部102は、システムにおける全ての動作を強制的に停止させる(ステップS805)。
【0096】
この状態で、非優先リモコンである第二リモコン12を所持している操作者は、所持する第二リモコン12が非優先状態であることは送信ランプ12eの点滅状態によって把握しているはずである。それにもかかわらず、第二リモコン12における任意のボタン(UPボタン12bやDOWNボタン12cなどの入力部125)が押下されるということは、非常事態であることが考えられる。そのような場合には、システム全体を強制停止することが安全上好ましい。図8にて示すこの実施形態では、安全面を向上した多リモコン式ウインチ制御システム5を提供することを目的としてシステム構成が構築されており、非優先状態のリモコンから無線信号が送られてきた場合には、直ちにシステム全体を強制停止するという思想に基づきシステム設計が成されている。
【0097】
ウインチ側制御部102が、ステップS805にてシステム全体を強制停止させた後は、システムを再び初期の待機状態に戻すために、ウインチ側制御部102から第一リモコン11に対して優先解除指令を発信するとともに、第二リモコン12に対して非優先解除指令を発信する(ステップS806)。
【0098】
優先解除指令及び非優先解除指令をそれぞれ受信した第一リモコン11及び第二リモコン12では、それぞれ第一リモコン11が優先状態を解除するとともに(ステップS706)、第二リモコン12が非優先状態を解除し(ステップS905)、多リモコン式ウインチ制御システム5全体が初期状態である待機状態Stに戻ることとなる。またこのとき、RAMである第一リモコン11の記憶部116と、RAMである第二リモコン12の記憶部126とにそれぞれ保存されていた優先リモコン情報及び非優先リモコン情報は、各記憶部116,126から消去されることとなる。さらにこのとき、第一リモコン11及び第二リモコン12で点滅状態にあった送信ランプ11e,12eは、いずれも待機状態を示すために消灯することとなる。
【0099】
なお、この状態から再び第一リモコン11を優先リモコンとしたい場合には、再びUPボタン11bとDOWNボタン11cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を再送信すればよく、逆に、第二リモコン12を優先リモコンとしたい場合には、第二リモコン12が有する入力部125の2ボタンであるUPボタン12bとDOWNボタン12cを同時に押下することで、ウインチ10に対して第二リモコン12からロック信号を送信すればよい。
【0100】
以上説明したように、図8にて示したさらに別の実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5の動作方法によれば、非優先状態のリモコンからウインチ10に対して無線信号が送られてきた場合には、直ちにシステム全体を強制停止するという構成が採られていた。したがって、この実施形態によれば、非優先状態のリモコンから不要な無線信号の送信が有った場合には、直ちにシステム全体を強制停止できるので、安全性が非常に高く、また、このような動作システムを考慮した作業ルールに基づいて、この多リモコン式ウインチ制御システム5を利用することで、作業効率性を損なうことなく安全性を高めることが可能である。
【0101】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0102】
例えば、図7及び図8にて例示した実施形態の場合には、各リモコン11,12が有する入力部115,125の2ボタンであるUPボタン11b,12bとDOWNボタン11c,12cを同時に押下することで、ウインチ10に対してロック信号を送信する構成が採られていた。しかしながら、ロック信号を送信するためのリモコン11,12における入力部115,125の構成については、上述したものには限られない。例えば、図9にて例示するように、ロック信号を送信するための専用ボタンとして各リモコン11,12にLOCKボタン11g,12gを増設し、このLOCKボタン11g,12gを押下することでロック信号を発信するようにしてもよい。
【0103】
また、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システムでは、ウインチ側制御部が、複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付ける構成を採用した。この際の所定条件としては、例えば、図6A及び図6Bで例示したように、最初に操作信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとしたり、図7及び図8で例示したように、初期状態を待機状態Stとしておき、ロック信号を送信してきたリモコンを優先リモコンとしたりする実施形態を説明した。しかしながら、本発明に係る所定条件の設定方法は、様々な形態を採用可能であり、例えば1つのボタンを所定時間長押しした場合に優先リモコンとしたりするような、種々の条件を採用することが可能である。
【0104】
さらに、図6A及び図6Bで説明した実施形態では、優先状態を解除する方法として、ステップS106及びステップS308で示すように電源をOFFする手法を採用していた。ただし、本発明に係る多リモコン式ウインチ制御システムにおけるリモコンの優先状態解除方法は、上述の手法には限られない。例えば、ウインチ側制御部102によって優先リモコンとして認識されたリモコン11,12の入力部115,125の操作が所定時間行われないときに、優先リモコンとして認識された状態が解除されるように構成してもよい。このような構成を採用すれば、例えば優先リモコンを所持している操作者が作業現場を離れてしまった場合に、所定時間過ぎればリモコンの優先/非優先状態を自動的に切り替えることができるので、好ましい。
【0105】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0106】
以上説明したように、上述した実施形態では、ワイヤーロープ10aの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープ10aの下端に設置されたフック10bの上昇又は下降を行うことで、当該フック10bに係止された吊り荷13を昇降させるウインチ10と、ウインチ10に対して無線信号を送信することで、当該ウインチ10の動作制御を行う複数のリモコン11,12と、を備える多リモコン式ウインチ制御システム5において、ウインチ10は、複数のリモコン11,12との間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部101と、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号に応じてウインチ10の動作制御を行うウインチ側制御部102と、を含み、複数のリモコン11,12の各々は、ウインチ10との間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部111,121と、操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部115,125と、ウインチ10から送信されてくる無線信号、又は入力部115,125によって受け付けられた動作指令に応じてリモコン11,12の動作制御を行うリモコン側制御部112,122と、を含み、ウインチ側制御部112,122は、複数のリモコン11,12の各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、複数のリモコン11,12から送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けるようにしたので、複数の操作者それぞれがリモコン11,12を所持してウインチ10を操作する場合であっても、安全性及び作業効率性を損なうことなく作業を行うことができる。
【0107】
また、上述したように、本実施形態に係る多リモコン式ウインチ制御システム5では、ウインチ側制御部102が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、複数のリモコン間で切替自在であることとしたので、複数のリモコン11,12によって操作可能な多リモコン式ウインチ制御システム5を安全性及び作業効率性を損なうことなく実現できている。
【符号の説明】
【0108】
5 多リモコン式ウインチ制御システム、10 ウインチ、101 ウインチ側送受信部、102 ウインチ側制御部、103 モータ、10a ワイヤーロープ、10b フック、11 第一リモコン、12 第二リモコン、111,121 リモコン側送受信部、112,122 リモコン側制御部、113,123 表示部、114,124 音声出力部、115,125 入力部、116,126 記憶部、11a,12a 電源ボタン、11b,12b UPボタン、11c,12c DOWNボタン、11d,12d 電源ランプ、11e,12e 送信ランプ1、11f,12f スピーカ、11g,12g LOCKボタン、13 吊り荷、21 一階フロア、22 二階フロア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチと、
前記ウインチに対して無線信号を送信することで、当該ウインチの動作制御を行う複数のリモコンと、
を備える多リモコン式ウインチ制御システムであって、
前記ウインチは、
前記複数のリモコンとの間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部と、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号に応じてウインチの動作制御を行うウインチ側制御部と、を含み、
前記複数のリモコンの各々は、
前記ウインチとの間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部と、
操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部と、
前記ウインチから送信されてくる無線信号、又は前記入力部によって受け付けられた動作指令に応じてリモコンの動作制御を行うリモコン側制御部と、を含み、
前記ウインチ側制御部は、
前記複数のリモコンの各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付ける
ことを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
前記ウインチ側制御部が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、前記複数のリモコン間で切替自在であることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部が最初に受け付けた無線信号を送信したリモコンであることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部が最初に受け付けたロック信号を送信したリモコンであることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項5】
ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチを、複数のリモコンを用いて動作制御するときに用いられる多リモコン式ウインチ制御方法であって、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号に応じてウインチの動作制御を行う前記ウインチが備えるウインチ側制御部に、
前記複数のリモコンの各々が電源ONとなったときに送信してくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識させ、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けさせるステップと、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識させ、他のリモコンを非優先リモコンとして認識させるステップと、
前記優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けさせるステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御方法。
【請求項1】
ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチと、
前記ウインチに対して無線信号を送信することで、当該ウインチの動作制御を行う複数のリモコンと、
を備える多リモコン式ウインチ制御システムであって、
前記ウインチは、
前記複数のリモコンとの間で無線信号を送受信するウインチ側送受信部と、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号に応じてウインチの動作制御を行うウインチ側制御部と、を含み、
前記複数のリモコンの各々は、
前記ウインチとの間で無線信号を送受信するリモコン側送受信部と、
操作者の選択に応じた動作指令を受け付ける入力部と、
前記ウインチから送信されてくる無線信号、又は前記入力部によって受け付けられた動作指令に応じてリモコンの動作制御を行うリモコン側制御部と、を含み、
前記ウインチ側制御部は、
前記複数のリモコンの各々から送信されてくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識し、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けるとともに、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識し、他のリモコンを非優先リモコンとして認識することで、当該優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付ける
ことを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
前記ウインチ側制御部が、優先リモコンとして認識された状態と非優先リモコンとして認識された状態を、前記複数のリモコン間で切替自在であることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部が最初に受け付けた無線信号を送信したリモコンであることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の多リモコン式ウインチ制御システムにおいて、
優先リモコンとして認識されるための前記所定条件は、前記ウインチ側制御部が最初に受け付けたロック信号を送信したリモコンであることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御システム。
【請求項5】
ワイヤーロープの巻き取り又は繰り出し動作によって当該ワイヤーロープの下端に設置されたフックの上昇又は下降を行うことで、当該フックに係止された吊り荷を昇降させるウインチを、複数のリモコンを用いて動作制御するときに用いられる多リモコン式ウインチ制御方法であって、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号に応じてウインチの動作制御を行う前記ウインチが備えるウインチ側制御部に、
前記複数のリモコンの各々が電源ONとなったときに送信してくる無線信号に含まれるリモコン固有の識別番号を認識させ、事前に登録された識別番号を含む無線信号のみを受け付けさせるステップと、
前記複数のリモコンから送信されてくる無線信号のうち、所定条件を満たした無線信号を送信したリモコンを優先リモコンとして認識させ、他のリモコンを非優先リモコンとして認識させるステップと、
前記優先リモコンから送信されてくる無線信号のみを受け付けさせるステップと、
を含む処理を実行させることを特徴とする多リモコン式ウインチ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−235996(P2011−235996A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107671(P2010−107671)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
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