説明

多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ

【課題】多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)において、多忙な者も戦闘シーンを逃すことなく参加できるような非同期性を実現し、かつ、他のプレイヤとの交渉による不確実性を通じて得られる楽しさを残す。
【解決手段】戦闘シーンを非同期処理し、プレイヤ間の交渉を同期処理する。すなわち、戦闘シーンは予めプレイヤに通知されたゲーム更新時刻にのみ開始される。プレイヤ間の交渉は、常時実行可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多人数同時参加型のオンラインロールプレイングゲームを提供するサーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム(以下「MMORPG」(Massively Multiplayer OnlineRole−Playing Game)と言う)を提供するサービスが増加している。MMORPGでは、ゲームを楽しむ者(プレイヤ)がゲーム端末装置をサーバに接続し、同じサーバに接続した他のプレイヤと共同する、アイテムを売買するなどのことを行うことができる。従来のプレイヤが1人のゲームでは、例えばアイテムの売買の相手方がコンピュータによって制御されているため、コンピュータに依存した単純で予測可能性の高いゲームになってしまう。これに対し、MMORPGでは、例えばアイテムを売買する際に他のプレイヤとの価格交渉を行うなど、複雑なゲームになり、また予測可能性も低くなる。これによって、MMORPGでは従来のゲームにはない楽しさを味わうことができる。
【0003】
一方、MMORPGには、多忙な者が参加しづらい要因がある。一度ゲームに参加した後にゲーム端末装置の操作ができない時間帯が発生すると、その時間帯の間に他のプレイヤによってゲームが進行してしまう。すなわち、従来のプレイヤが1人のゲームでは可能であったゲームの状態をセーブして後で再開することが不可能である。操作できない時間帯におけるゲームの進行によって予測できない不利益(例えば、戦闘が行われて自分のキャラクタが死亡する。)が発生し得るので、ゲームを楽しむためにはゲーム端末装置の操作を中断することができなかった。
【0004】
上記の問題を解決するため、特許文献1には、ゲーム端末装置の操作ができない時間帯には自分のキャラクタの操作を他のプレイヤに委譲し、ゲーム端末装置の操作に復帰する際の能力値を委譲前の値に戻すネットワークゲームシステムが開示されている。このネットワークゲームシステムによれば、操作できない時間帯におけるゲームの進行によって不利益を被ることが防止され、多忙な者がMMORPGに参加しやすくなる。
しかし、MMORPGにおいて最も興奮度が高く楽しみの多い戦闘シーンに参加せずに自分のキャラクタの操作を他のプレイヤに委譲することは、実質的にゲームに参加していないことと同等であるとの感覚を持つプレイヤも多く、多忙な者がMMORPGに参加して十分に楽しめるものではない。
【0005】
一方、MMORPG以外のゲーム、例えば「ディプロマシー」と呼ばれる戦略ゲームでは、各プレイヤが順次に操作をする。自分が操作をするターンになるまでは操作をしないでいてもよい。このように、各プレイヤの操作を同期させる必要性のない非同期のゲームであれば、多人数同時参加型のオンラインゲームであっても、多忙な者が参加して十分に楽しめる。しかし、MMORPGにおいて非同期の操作は実現されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−136350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、MMORPGにおいて、多忙な者も戦闘シーンに参加できるような非同期性を実現し、かつ、他のプレイヤとの交渉による不確実性を通じて得られる楽しさを残すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ(以下「MMORPG用サーバ」と言う。)は、戦闘シーンを非同期処理し、プレイヤ間の交渉を同期処理する。
【0009】
本発明のMMORPG用サーバは、
サーバによって制御されたロールプレイングゲームを行うための2つ以上のゲーム端末装置を同時接続可能であり、
前記ロールプレイングゲームにおける戦闘シーンは予めプレイヤに通知された所定のゲーム更新時刻にのみ開始されるように制御することを特徴とする。
2人以上のプレイヤが、同時にサーバに接続してロールプレイングゲームを行うことができる。
「戦闘シーン」とは、ゲームにおいて、プレイヤが「敵」と戦う操作を行う場面を言う。プレイヤは戦闘シーンに用いる武器である「アイテム」や戦闘シーンに用いる「戦闘パワー」を所持しており、この場面(戦闘シーン)において、アイテム及び戦闘パワーを使用するかしないかを決定し、その決定を入力する。かかる決定の巧拙によって戦闘の勝敗が定まり、また、勝敗に応じて戦闘パワーが増減される。戦闘シーンにおけるプレイヤのスキルに依存してその後のゲームの進行が変動するので、戦闘シーンにおけるアニメーションの視覚的効果と合わせて、プレイヤにとっては戦闘シーンにおいてゲームの醍醐味が強く感じられる。
戦闘シーンは、ゲーム更新時刻にのみ開始される。プレイヤは、ゲーム更新時刻にゲーム端末装置を操作すれば、他の時間にゲーム端末装置を操作しなくても戦闘シーンを逃すことなく楽しめる。ゲーム更新時刻は、サーバを運用する者が想定するプレイヤに合わせて決定すればよい。例えば、日本国内の会社員をプレイヤとする場合には、7時、12時30分及び22時をゲーム更新時刻として出勤前、昼休み及び退勤後の時間を活用することができる。また、世界各国の人々をプレイヤとする場合には、時差の影響を減らすために8時間おきにゲーム更新時刻を設定すればよい。
ゲーム更新時刻は、サーバがゲーム端末装置に次のゲーム更新時刻を表示する、固定された時刻であってインターネットのホームページに掲載される、その他の方法によりプレイヤに通知される。
【0010】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記戦闘シーンにおいて1つのチームとして活動する2人以上のプレイヤの集合であるパーティを管理するパーティ機能を備え、
前記パーティ機能は、プレイヤからの処理の要望を常時受け付けることを特徴とする。
戦闘シーンにおいて、プレイヤが協力して敵と戦うことは、従来のプレイヤが1人のゲームでは得られないMMORPGの醍醐味である。1人のプレイヤでは倒せない強力な敵を倒すことができ、また、同じパーティに所属するプレイヤとのコミュニケーションを楽しむことができるからである。これを実現するためには、戦闘シーンにおいてどのプレイヤが互いに協力するかに関する情報(パーティ情報)をサーバに保持する必要がある。戦闘シーンにおけるサーバの処理を対応させるためである。プレイヤ同士でコミュニケーションとり、協力することを合意したら、いずれかのプレイヤがパーティ情報の更新を入力する。サーバのパーティ機能は、この入力を常時受け付け、パーティ情報を即座に更新する。なお、「パーティ機能」はパーティ情報の更新を実行する機能である。
パーティのプレイヤを増やし(場合によっては減らし)、パーティ全体としての戦闘力を充実させることは、戦闘シーンと次の戦闘シーンとの間の時間帯に、プレイヤ同士のコミュニケーションを通じて行われる。これを実現するために、パーティ機能はパーティ情報の更新を常時行う。プレイヤは、ゲーム更新時刻の間の時間帯にも、パーティに参加することやパーティ全体としての戦闘力を充実させることを行い、ゲームを楽しむことができる。
【0011】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記戦闘シーンで各プレイヤの戦闘力を変動させるアイテムをプレイヤ間で売買・交換するアイテム取引機能を備え、
前記アイテム取引機能は、プレイヤからの処理の要望を常時受け付けることを特徴とする。
戦闘シーンにおいて攻撃用の武器又は守備用の防具として用いられるアイテムは、ゲーム内で設定された通貨によって売買されたり、プレイヤ間でアイテム同士の物々交換が行われたりする。適正なアイテムの入手もパーティ全体としての戦闘力を充実させることであり、戦闘シーンと次の戦闘シーンとの間の時間帯に行われる。アイテム取引機能は、かかるアイテムの売買・交換を実行する機能である。アイテム取引機能も、パーティ機能と同様に常時作動する。プレイヤは、アイテムの取引によっても、ゲーム更新時刻の間の時間帯にゲームを楽しむことができる。
【0012】
本発明のMMORPG用サーバは、
プレイヤが入力したテキストを他のプレイヤのゲーム端末装置に表示するチャット機能を備え、
前記チャット機能は、各プレイヤのテキスト入力を常時受け付け、各プレイヤのゲーム端末装置に表示するテキストをそのテキストを入力したプレイヤに基づいて選択する表示対象プレイヤ選択処理を行い、前記表示対象プレイヤ選択処理によって選択されたプレイヤが入力したテキストのみを各プレイヤのゲーム端末装置に表示するものであることを特徴とする。
MMORPGにおいては、プレイヤ間のコミュニケーションを可能にする必要があるため、あるプレイヤが入力したテキストを他のプレイヤのゲーム端末装置に表示するチャット機能が備わっている。あるプレイヤが入力したテキストは、サーバに保持され、サーバが他のプレイヤのゲーム端末装置に表示する。
ここで、プレイヤの数が多くなると、あるプレイヤの端末装置に表示され得る他のプレイヤが入力したテキストの量が膨大になり、ゲーム端末装置の表示部分の面積の制約により他の全てのプレイヤの入力したテキストを全て表示することが不可能になる。そこで、チャット機能に表示対象プレイヤ選択処理を持たせる。表示対象プレイヤ選択処理は、所定の条件を満たすプレイヤを選択し、選択されたプレイヤが入力したテキストのみを各プレイヤのゲーム端末装置に表示する。ここで、「所定の条件」は、表示されるゲーム端末装置のプレイヤ毎に異なる条件であってもよい。
【0013】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記ロールプレイングゲームにおいて全プレイヤに共通の地図があり、各プレイヤは前記ゲーム更新時刻と次の前記ゲーム更新時刻との間に地図上の地点に滞在する又は滞在していた出発地点から目的地点に移動することができ、
前記表示対象プレイヤ選択処理は、各プレイヤと同一の地点に滞在するプレイヤを選択することを特徴とする。
MMORPGでは、全プレイヤに共通のゲームの世界の地図があり、地図には、例えば、町、洞窟、山頂といった地点が含まれ、各プレイヤはこれらの地点のうちの1つに滞在する又は地点間を移動することができる。パーティへの参加及びアイテムの取引は、原則として同一の地点に滞在しているプレイヤ間でのみ行われる。チャット機能により表示されるテキストが同一の地点に滞在するプレイヤが入力したものであれば、パーティへの参加及びアイテムの取引のためのプレイヤ間のコミュニケーションに有効である。
【0014】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記表示対象プレイヤ選択処理は、各プレイヤと同一の地点に滞在するプレイヤ、各プレイヤと同一の出発地点から同一の目的地点に移動するプレイヤ及び各プレイヤの目的地点から出発地点に移動するプレイヤを選択することを特徴とする。
パーティへの参加及びアイテムの取引は、同一の地点に滞在しているプレイヤ間でのみ行われるという原則に対する例外として、滞在せずに移動しているプレイヤ間でもパーティへの参加及びアイテムの取引が行われることがある。プレイヤが地図上の地点を結ぶ道の途中で出会う場合である。これは、地点が道で結ばれておりプレイヤが道に沿って移動するという現実の地図を模したゲームの設定による。道の途中で出会う場合には、同じ道を同じ方向に移動するプレイヤ同士が出会う場合と、同じ道を逆方向に移動するプレイヤ同士がすれ違う際に出会う場合とがある。これらの場合にもチャットによるプレイヤ間のコミュニケーションが行えるようにする。
なお、移動中のプレイヤ同士のチャットによるコミュニケーションの実現は、全てのプレイヤがゲーム更新時刻と次の前記ゲーム更新時刻との間に1つの出発地点から別の1つの目的地点に移動するという仕組みによって容易になっている。各プレイヤが任意の時刻に移動するものとする場合には、チャットによるコミュニケーションが行われる時刻(プレイヤ同士が出会う時刻)をシステムが計算してその時刻に入力されたテキストを他のプレイヤのゲーム端末装置に表示するが、プレイヤはその時刻にゲーム端末装置を操作していない限りチャットによるコミュニケーションを行うことができない。これに対し、本発明においては、ゲーム更新時刻と次の前記ゲーム更新時刻との間はいつでもチャットによるコミュニケーションを行うことができる。
【0015】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記チャット機能は、テキストの入力された時間が後であるものを優先して表示することを特徴とする。
上記のように、チャットによるコミュニケーションを行うプレイヤを限定してもなおゲーム端末装置の表示部分の面積の制約によりテキストを全て表示することが不可能になる場合がある。この場合に、新しく入力されたテキストが優先して表示されることで、プレイヤは以前に見たことのあるテキストでなく新しく入力されたテキストを見ることができる。また、ゲーム端末装置に表示されるテキストが新たな入力によって逐次切り替わり、各プレイヤは他のプレイヤとのコミュニケーションに臨場感を感じることができる。
【0016】
本発明のMMORPG用サーバは、
各パーティに前記戦闘シーンにおける戦術を登録させる戦術登録機能を備え、前記戦闘シーンにおいてそのパーティに属するプレイヤのうちの1人または2人以上がゲーム端末装置を操作しない場合には、登録された前記戦術に基づきサーバが戦闘を自動実行することを特徴とする。
ゲーム更新時刻が予め通知されても、プレイヤの中にはゲーム更新時刻にゲーム端末装置を操作できない者が出てしまう。その場合に、同じパーティに所属する他のプレイヤが戦闘シーンに参加しつつ、全プレイヤのゲームが進行することが望ましい。ゲーム端末装置を操作できないプレイヤが戦術を登録することで、他のプレイヤを含めた戦闘シーンが問題なく進行する。
【0017】
本発明のMMORPG用サーバは、
前記ゲーム端末装置が携帯電話端末であることを特徴とする。
ゲームに特化した端末装置を準備せずにMMORPGに参加することができ、多くのプレイヤがMMORPGに参加すると期待される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のMMORPG用サーバは、予め通知されたゲーム更新時刻にのみ戦闘シーンが開始されるので、多忙な者も戦闘シーンを逃すことなくMMORPGを楽しむことができる。また、ゲーム更新時刻の間にパーティへの参加及びアイテムの取引を行うことができ、常にMMORPGを楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、MMORPGを実行するシステムの構成例を表す図である。
【図2】図2は、ゲームにおける地図を示す図である。
【図3】図3は、プレイヤデータの例を示す図である。
【図4】図4は、チャットデータの例を示す図である。
【図5】図5は、チャット機能の表示処理の例を示す図である。
【図6】図6は、ゲーム端末装置における表示の例を示す図である。
【図7】図7は、ゲーム更新時刻における処理の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のMMORPG用サーバの実施例を、実際にゲームがプレイされる状況を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
(システムの構成、データ及び機能)
図1は、本発明に係るMMORPGを実行するシステムの構成例を表す図である。MMORPG用サーバ1には、ネットワーク2を介して、プレイヤAのゲーム端末装置(携帯電話端末)31、プレイヤBのゲーム端末装置(携帯電話端末)32、プレイヤCのゲーム端末装置(携帯電話端末)33及びプレイヤDのゲーム端末装置(パーソナルコンピュータ端末)34が接続されている。ゲーム端末装置は携帯電話端末、パーソナルコンピュータ端末の他に、スマートフォン、携帯型ゲーム機などのMMORPGが実行できるものであれば、いかなる端末であってもよい。また、接続されるゲーム端末装置の数は4台に限られず、何台のゲーム端末装置が接続されていてもよい。
【0022】
MMORPG用サーバ1には、パーティ機能11、アイテム取引機能12、チャット機能13、戦術登録機能14、移動機能15及び戦闘シーン機能16が設けられている。MMORPG用サーバ1には、プレイヤデータ17、取引希望データ18及びチャットデータ19が保持されている。パーティ機能11、アイテム取引機能12、チャット機能13及び戦術登録機能14は常時動作しており、ゲーム端末装置31−34からの入力を受付け、ゲーム端末装置31−34の画面に必要な表示を行う。
【0023】
図2は、本実施例のゲームにおける地図を示す図である。山頂、山小屋、峠、洞窟、麓の町、海岸及び港町の7つの地点がある。各プレイヤは、図において直線で示された「道」に沿って移動することができる。
プレイヤの目標は、山頂に移動して、山頂にいる「敵」と戦闘を行い、その戦闘に勝利して敵を征伐することである。山小屋、峠及び洞窟には敵の配下がおり、その配下と戦闘を行って勝利しない限り山頂に移動することができないようになっている。敵及び敵の配下は、コンピュータ(サーバ)によって制御されている。
【0024】
図3は、プレイヤデータの例を示す図である。
各プレイヤは、図2に示された地点に滞在しているか若しくは地点の間を移動中であり、「地点」フィールドにこの情報が保持されている。図は、プレイヤA及びBが港町に滞在し、プレイヤC及びDが麓の町に滞在していることを表すデータである。なお、移動中の場合には地点フィールドに「港町→海岸」のように、移動の出発地点及び目的地点を保持する。
各プレイヤは、ゲームにおいて取引に用いる通貨を所持している。「所持金」フィールドに所持している通貨の額が保持されている。
各プレイヤは、戦闘において「アイテム」及び「戦闘パワー」を用いる。「アイテム」は、「剣」、「盾」のように戦闘に用いる道具であり、取引によって入手される。「パワー」は、「攻撃力」、「守備力」のようにプレイヤの性能を表す数値であり、戦闘の結果等によって増減される。例えば「剣」を所持するプレイヤは「攻撃力」の数値を2倍とみなして攻撃ができるなど、アイテムと戦闘パワーを総合して各プレイヤの戦闘能力が決定される。これらの情報が、「アイテム」及び「戦闘パワー」のフィールドに保持されている。
「戦術」フィールドには、各プレイヤが戦闘シーンにおいてゲーム端末装置を操作できない場合に、どのように攻撃及び守備(アイテム及び戦闘パワーの使用/不使用に係る決定)を行うかについてのデータが保持されている。戦闘シーン機能16は、ゲーム端末装置を操作できないプレイヤについては、このデータに基づいて自動で戦闘を行わせる。
【0025】
1人のプレイヤ単独で敵との戦闘に勝利することは困難であり、各プレイヤは戦闘に当たって1つのチームとして活動する2人以上のプレイヤの集合であるパーティを結成してパーティのプレイヤが共同して敵との戦闘を行うことができる。パーティ機能11は、各プレイヤのゲーム端末装置からのパーティに所属するプレイヤの追加・更新に係る入力を受付け、プレイヤデータ17の「パーティ」フィールド(パーティ情報)を更新する。図2は、プレイヤAが「ジャイアンツ」というパーティを結成し、プレイヤC及びDが「タイガース」というパーティを結成したことを表すものである。
【0026】
各プレイヤは、所持金を使用し又は物々交換によってアイテムを入手することができる。かかるアイテムの売買もしくは交換(以下、「売買」と「交換」の両方を表す用語として「取引」を用いる。)は、プレイヤ間の合意に基づいて行われる。アイテム取引機能12は、プレイヤ間の合意を仲介する。具体的には、取引を希望するプレイヤのゲーム端末装置からの希望する取引の内容(例えば購入したいアイテム及びその価格)の入力を受け付けて取引希望データ18に保持し、他のプレイヤのゲーム端末装置の操作によって取引データを表示し、そのプレイヤが取引を応諾する操作を行うことによってプレイヤ間の合意を成立させる。アイテム取引機能12は、プレイヤ間の合意が成立すると、その合意に基づいてプレイヤデータの所持金フィールド及びアイテムフィールドを更新し、その取引データを削除する。
【0027】
上記のパーティの結成及びアイテムの取引は、プレイヤ間の合意に基づく。しかし、各プレイヤにとって、例えばアイテムの取引を希望する場合に取引データを入力して他のプレイヤがその取引データを閲覧することを受動的に待っているのみでは、ゲームの進行が遅く十分に楽しめない。そこで、チャット機能13は、各プレイヤが能動的に他のプレイヤに情報を伝達することを可能にする。具体的には、各プレイヤがゲーム端末装置において入力したテキストを受け付けてチャットデータ19に保持し、他のプレイヤのゲーム端末装置の操作によってチャットデータを表示する。図4は、チャットデータの例を示す図である。図の2〜4行目に示されるようにパーティのメンバ募集やアイテム取引の希望をチャット機能13を通じて他のプレイヤに伝えることができる。また、図の1行目の示されるような同一パーティ内での情報交換にもチャット機能13を活用することができる。

【0028】
図5は、チャット機能の表示処理の例を示す図である。MMORPGに参加するプレイヤが多くなると、他のプレイヤが入力したテキストを全て表示することは不可能である。そこで、表示対象プレイヤ選択処理4によりどのプレイヤが入力したテキストが表示されるかについての制限を加える。
パーティの結成及びアイテムの取引は同一地点にいるプレイヤ間のみでしか行えないので、これらの目的のためには、表示対象プレイヤ選択処理4は、テキストが表示されるゲーム端末装置のプレイヤと同一の地点に滞在するプレイヤが入力したテキストに表示対象を制限することが合理的である。また、パーティ内のコミュニケーションの目的では、表示対象プレイヤ選択処理4は、テキストが表示されるゲーム端末装置のプレイヤと同一のパーティに所属するプレイヤが入力したテキストに表示対象を制限することが好ましい。好ましくは、表示対象プレイヤ選択処理4による制限を1種に限定せずに、表示するプレイヤが自らの目的に合わせて制限を選択できればよい。また、この制限によっても表示対象プレイヤが多すぎる場合には、表示対象プレイヤ選択処理4がランダムにプレイヤを選択してもよい。選択されるプレイヤによる運・不運の要素が加わり、ゲームの楽しみが増加する可能性がある。
また、表示対象のデータを入力時刻の逆順にソートし、最新のテキストを優先的に表示することで、チャットによって会話を進めることを容易にし、会話に臨場感を持たせている。
【0029】
(プレイヤによる操作及びゲームの進行)
図6は、ゲーム端末装置における表示の例を示す図である。アニメーション表示エリア5には、プレイヤがいる地点に対応した背景の中に、プレイヤが所属するパーティのメンバの人数と同じ数のキャラクタが動作する様子が表示される。また、戦闘シーンにおいては、火花、光線等の戦闘感覚を視覚的に増加させるようなアニメーションも表示される。
【0030】
図6には、図3におけるプレイヤAのゲーム端末装置における表示が示されている。下側の「隣席」と表示された部分には、同一の地点である港町にいる他のプレイヤBが表示されている。ここを選択する(又はパーソナルコンピュータ端末であればマウスでクリックする)ことによってプレイヤデータ17内のプレイヤBに関する情報を表示することができる。この表示の際、「パーティに誘う」との表示が合わせて行われる。プレイヤAがこの表示を選択することによって、プレイヤBのゲーム端末装置にプレイヤAからパーティに誘われた旨が表示され、プレイヤBがその誘いを受諾する操作を行うと、パーティ機能11が呼び出され、プレイヤBがプレイヤAのパーティ「ジャイアンツ」に所属する。
【0031】
図6において「チャット」を選択すると、チャット機能13が呼び出され、テキストの入力及び他のプレイヤが入力したテキストの表示を行うことができる。プレイヤA及びBは2人のパーティを結成し、チャット機能を用いて次の行動を相談し、決定する。この際、プレイヤA及びBは、同一のパーティに所属するプレイヤが入力したテキストに表示対象を制限することが好ましい。
プレイヤA及びBが相談して決定した内容は、以下のとおりである。(1)守備力を上げ、盾を入手してから敵との戦闘に向かう。(2)盾を入手するために、麓の町に移動する。
図6において「アイテム」を選択すると、アイテム機能12が呼び出され、アイテム取引の希望の入力及び他のプレイヤが希望するアイテム取引の受諾を行うことができる。しかし、盾を購入する目的でプレイヤA又はBが「アイテム」を選択しても他のプレイヤによる盾の販売に関するデータは表示されない。アイテムの取引は同一の地点にいるプレイヤ同士に限られ、港町にはプレイヤA及びB以外のプレイヤがいないからである。
【0032】
ゲーム更新時刻は8時間おきで、午前7時、午後3時及び午後11時である。このことは、サーバにアクセスしてゲームを開始する際にゲーム端末装置に表示され、プレイヤに対してゲームの前に予め通知される。
プレイヤA及びBは、前記の相談による決定を午前6時までに終えた。その後、プレイヤAは図6において「行動指示」を選択し、午前7時以前に「港町から麓の町に移動する」ことを入力する。
図7は、ゲーム更新時刻における処理の例を示す図である。サーバ1にはタイマが備えられており、タイマによって、午前7時、午後3時及び午後11時に図7に示された処理が起動される。午前7時に処理が起動されると、プレイヤA及びBは移動中でなく、港町では戦闘がないので、プレイヤA及びBに関する地点が「港町」から「港町→麓の町」に更新されることのみが実行される。
【0033】
図7に示される処理の詳細を以下に示す。
移動機能15は、移動中であったプレイヤの地点を目的地に更新する。前のゲーム更新時刻から今のゲーム更新時刻までの移動を反映するものである。
移動後の地点で戦闘が行われる場合には、戦闘シーン機能16が起動され、戦闘が行われる。戦闘シーン機能が呼び出されるのはこの場合のみであり、ゲーム更新時刻以外の時刻に戦闘が行われることはない。
移動機能15は、移動するプレイヤの地点を出発地から目的地への道に更新する。今のゲーム更新時刻から次のゲーム更新時刻までの移動を反映するものである。
以上のように移動機能15の処理の間に戦闘シーン機能の呼出を挟み込むことで、プレイヤは、移動した地点でゲーム更新時刻に戦闘を行い、その後に別の地点に向けて移動することが可能になる。
【0034】
麓の町にいたプレイヤC及びDのパーティは、麓の町から港町に移動することを決定し、午前7時のゲーム更新時刻にプレイヤA及びBに関する地点が「麓の町→港町」に更新された。
プレイヤA及びBのパーティ「ジャイアンツ」と、プレイヤC及びDのパーティ「タイガース」とは、港町と麓の町の間ですれ違う。これを反映して、チャット機能13は、午前7時のゲーム更新時刻から次のゲーム更新時刻(午後3時)までの時間帯にはプレイヤA及びBのゲーム端末装置にプレイヤC又はDが入力したテキストを表示する。プレイヤA及びBは、プレイヤCの入力したテキスト「盾を¥400で売るよ」を見ることができる。
プレイヤBは、「アイテム」を選択してプレイヤCが入力した取引(盾を¥400で販売)を受諾する。これにより、プレイヤBの所持金が¥400減少し、プレイヤBのアイテムに盾が加わる。
【0035】
盾を入手したプレイヤA及びBのパーティは、戦闘に向かうこととし、プレイヤAが「行動指示」を選択して、午後3時のゲーム更新時刻の行動として「麓の町から峠に移動する」ことを入力する。この入力の結果、プレイヤA及びBのパーティは午後11時のゲーム更新時刻に峠に到着して敵の配下と戦闘を行うこととなる。
しかし、プレイヤBは、午後11時には別の用件があってゲーム端末装置の操作を行うことができないことに気づく。そこで、プレイヤBは、チャット機能13を用いて戦術をプレイヤAと相談し、自分が不在で敵の配下との戦闘を行ってもらうことにする。プレイヤBは、図6において「戦術登録」を選択して戦術登録機能14を呼び出し、プレイヤデータ17の戦術フィールドに戦術を登録する。戦術は、例えば「もし敵が7以上の攻撃力を使用したら自分の守備力に加え盾を使用して防御する」のように、if−then形式で表現され人工知能による処理が行えるものである。プレイヤBは、戦術を入力し、戦術登録機能14は入力された戦術をプレイヤデータの戦術フィールドに保存する。
なお、戦術の登録を行わないプレイヤがゲーム端末装置の操作を行うことができない場合には、「アイテム」及び「戦闘パワー」に基づいてシステムが自動的に戦術を決定する。
【0036】
午後11時に、戦闘シーン機能16が呼び出されて戦闘が行われる。戦闘シーン機能16は、プレイヤAのゲーム端末装置31に視覚効果を持った戦闘のアニメーションを表示し、プレイヤAによる攻撃及び守備(アイテム及び戦闘パワーの使用/不使用に係る決定)に関する入力を受けつける。この入力及びプレイヤBによって入力された戦術に基づき、システムに設定された計算手順(確定的な処理及び乱数等の不確定な処理を含む)に従ってプレイヤA及びBのパーティと敵との優劣を判定して戦闘の勝敗を決定する。
プレイヤA及びBは、峠における戦闘に勝利する。
その後、峠に滞在して戦闘を繰り返すこと、山小屋や洞窟に移動して敵の別の配下との戦闘を行うこと、山頂に移動して敵との戦闘を行うこと、麓の町に移動してアイテムを補充することやパーティのメンバを増やすことなどが可能である。
また、チャット機能で相談し、同じパーティのいずれかのプレイヤがゲーム端末装置を操作できないゲーム更新時刻には戦闘のない麓の町に移動して、パーティのプレイヤ全員が戦闘をリアルタイムで楽しめるようにすることもできる。
【0037】
(実施例の拡張)
上記実施例は本発明の1実施形態であり、本発明の技術範囲で、上記実施例と異なる実装が可能である。以下にかかる例を示す。
コンピュータによって制御された敵との戦闘でなく、プレイヤ同士の戦闘が行われるようにしてもよい。
アイテムは、戦闘において使用する武器のみでなく、他のアイテムもありそれを取引させてもよい。例えば、武器を製造するための金属及びその金属で武器を製造する機械をアイテムとしてよい。また、移動の自由度を増加するアイテム(例えば「ヘリコプタ」というアイテムにより道で繋がれていない地点に移動する)を設けてもよい。
プレイヤをパーティに加えることに加えて、パーティから離脱することを、パーティ機能によって実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
多忙な者も戦闘シーンを逃すことなくMMORPGを楽しむことができ、パーティへの参加及びアイテムの取引を介して常にMMORPGを楽しむことができるようなMMORPG用サーバであり、多くのオンラインゲーム提供会社による活用が期待できる。
【符号の説明】
【0039】
1 MMORPG用サーバ
11 パーティ機能
12 アイテム取引機能
13 チャット機能
14 戦術登録機能
15 移動機能
16 戦闘シーン機能
2 ネットワーク
31 ゲーム端末装置
4 表示対象プレイヤ選択処理
5 アニメーション表示エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバによって制御されたロールプレイングゲームを行うための2つ以上のゲーム端末装置を同時接続可能であり、
前記ロールプレイングゲームにおける戦闘シーンは予めプレイヤに通知された所定のゲーム更新時刻にのみ開始されるように制御することを特徴とする、多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項2】
前記戦闘シーンにおいて1つのチームとして活動する2人以上のプレイヤの集合であるパーティを管理するパーティ機能を備え、
前記パーティ機能は、プレイヤからの処理の要望を常時受け付けることを特徴とする、請求項1に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項3】
前記戦闘シーンで各プレイヤの戦闘力を変動させるアイテムをプレイヤ間で売買・交換するアイテム取引機能を備え、
前記アイテム取引機能は、プレイヤからの処理の要望を常時受け付けることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項4】
プレイヤが入力したテキストを他のプレイヤのゲーム端末装置に表示するチャット機能を備え、
前記チャット機能は、各プレイヤのテキスト入力を常時受け付け、各プレイヤのゲーム端末装置に表示するテキストをそのテキストを入力したプレイヤに基づいて選択する表示対象プレイヤ選択処理を行い、前記表示対象プレイヤ選択処理によって選択されたプレイヤが入力したテキストのみを各プレイヤのゲーム端末装置に表示するものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項5】
前記ロールプレイングゲームにおいて全プレイヤに共通の地図があり、各プレイヤは前記ゲーム更新時刻と次の前記ゲーム更新時刻との間に地図上の地点に滞在する又は滞在していた出発地点から目的地点に移動することができ、
前記表示対象プレイヤ選択処理は、各プレイヤと同一の地点に滞在するプレイヤを選択することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項6】
前記表示対象プレイヤ選択処理は、各プレイヤと同一の地点に滞在するプレイヤ、各プレイヤと同一の出発地点から同一の目的地点に移動するプレイヤ及び各プレイヤの目的地点から出発地点に移動するプレイヤを選択することを特徴とする、請求項5に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項7】
前記チャット機能は、テキストの入力された時間が後であるものを優先して表示することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項8】
各パーティに前記戦闘シーンにおける戦術を登録させる戦術登録機能を備え、前記戦闘シーンにおいてそのパーティに属するプレイヤのうちの1人または2人以上がゲーム端末装置を操作しない場合には、登録された前記戦術に基づきサーバが戦闘を自動実行することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。
【請求項9】
前記ゲーム端末装置が携帯電話端末であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム用サーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−360(P2012−360A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140204(P2010−140204)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(510145428)株式会社ミラクルポジティブ (2)
【Fターム(参考)】