説明

多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体及びその製造方法

【課題】 純物質でありながら室温で液状を示し、金属カチオンを有する塩を提供する。
【解決手段】下記構造式(1)で表される多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体。
【化9】



(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、pは自然数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基、Xはアニオン官能基を含む基、Mp+はp価のカチオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多分岐構造を有するオリゴエチレンオキシドの塩に関する。さらに詳しくは、溶剤、潤滑油、界面活性剤、イオン液体として利用され得る、高度に構造制御された多分岐オリゴエチレンオキシド構造を有するアニオンと金属カチオンからなる塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直鎖のオリゴエチレンオキシド誘導体は広く知られている。
【0003】
また、ポリエチレンオキシドが室温でイオン導電性を示すことが非特許文献1において報告されて以来、イオン導電材料として様々なオリゴエチレンオキシド構造を有する化合物が合成されてきた。これらの中には特許文献1のような分岐構造を有するものも存在する。
【0004】
【非特許文献1】P. V. Write, Br. Polym. J., 319, 137 (1975)
【特許文献1】特開2002−63813号公報
【0005】
オリゴエチレンオキシド構造を含むアニオンと金属カチオンからなる塩も報告されている。(特許文献2、非特許文献1,2,3)
【0006】
【特許文献2】特開平07−268094
【非特許文献1】Hiroyuki Ohno, Polymer, 36(4), 891 (1995).
【非特許文献2】Hiroyuki Ohno, Solid State Ionics, 124, 323 (1999).
【非特許文献3】Masayoshi Watanabe, Electrochemica Acta, 50, 1 (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の塩のうち比較的高分子量のものは、原料にオリゴエチレングリコ−ル誘導体を用いており、その製法が従来の重合法であるため分子量の制御、すなわち1分子当たりに導入できるエチレンオキシドユニット(−CHCHO−)の数を厳密に制御することは極めて困難である。そのため分子量に分布があり、さまざまな分子量の化合物の混合物となっているため、その物性も単独の化合物としてのものではない。オリゴエチレングリコ−ルの融点はその分子量が大きくなるほど高くなり、分子量が1000に満たないものでも室温付近で固体となる。
【0008】
さらに末端に塩構造を有するオリゴエチレンオキシドでは末端のイオン基が静電相互作用により凝集することで分子の運動を阻害するため、よりエチレンオキシド部が配列しやすくなる。そのためより低分子量のものでも室温で固体となる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものである。すなわち分子量がある程度大きいにもかかわらず分布幅を有することなく単一の値を示す純物質でありながら室温で液状を示し、溶剤、潤滑油、界面活性剤、イオン液体として好適に用いることができる塩構造を有する多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体は、下記構造式(1)で表される多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体である。
【化1】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、pは自然数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基、Xはアニオン官能基を含む基、Mp+はp価のカチオンを表す。)
【0011】
ここで、R1〜R2は全て同じでもよく、異なっていてもよい。また、2本あるエチレンオキシド鎖の長さnは、全て同じでもよく、異なっていてもよい。
【0012】
本発明の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体は、多分岐構造なので、分子間のパッキングが起こりにくく結晶化しにくいため、室温でも結晶化による凝固を起こさず、液状である。
【0013】
はスルホン酸アニオンを有するアニオン官能基とすることができる。
【0014】
p+はナトリウムやカリウムやセシウムやルビジウム等のアルカリ金属イオンとすることができる。そのなかでも、セシウムやルビジウムは電気陰性度が小さくイオン解離しやすいため特に好ましいと考えられる。
【0015】
mは1から5であることが好ましい。
【0016】
本発明の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体は、以下のようにして製造することができる。すなわち、本発明の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体の製造方法は、
下記一般式(2)で示される1種類あるいは2種類のアルコ−ルと、下記一般式(3)で示される化合物とを反応させることによって下記一般式(4)で示される化合物とする分岐エ−テル化工程と、
該エ−テル化工程で得られた一般式(4)で示される化合物の水酸基をアルコキシドとするアルコキシド化工程と、
該アルコキシド化工程で得られたアルコキシドに、求核置換反応によって開環する化合物を作用させて、請求項1記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体とするアニオン官能基導入工程と、
を備えることを特徴とする。
【化2】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、R1〜R2m−1は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。但しmが1の場合はm−1が0となるが、このときの構造は下記一般式(5)であることを示す。)

【化3】


(式中、Zは脱離基を示す。)
【化4】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。)
【化5】


(式中、nは負でない整数、Rは置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。)
【0017】
本発明に用いる開環性化合物としては、1,3−プロパンスルトン、1,3−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトン、1,6−ヘキサンスルトン、1,7−ヘプタンスルトン、1,8−オクタンスルトン、1,8−ナフトスルトン、トルエンスルトン等を挙げることができる。その中でも1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトンが好ましい。さらにその中でも1,3−プロパンスルトンが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオリゴエチレンオキシド誘導体は、構造および分子量が高度に制御され、かつイオン基を1つ有するオリゴエチエンオキシドであるので、分子量や構造の曖昧さが払拭され、溶剤、潤滑油、界面活性剤、電解質などの分野において、混合物としてではなく単一物質としての材料が得られる。また、室温付近で液状を示すため、イオン液体としてみなす事もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
下記一般式(6)で表される化合物は、適当な溶媒中、アルコキシドを形成する塩基存在下で1種類あるいは2種類の前期一般式(5)で示されるアルコ−ルを前記(3)で表される化合物と反応させることで製造することができる。この場合の反応は下記式(7)で示される。
【化6】


(式中、nは負でない整数、R1、R2は置換されてもよいアルキル基又はアリ−ル基を表す。)
【化7】


(式中、nは負でない整数、R1、R2は置換されてもよいアルキル基又はアリ−ル基、Zは脱離基を示す。)
【0020】
ここで、R1、R2は同じでもよく、異なっていてもよい。また、2本のエチレンオキシド鎖の長さnは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0021】
前記反応においては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができるが、これを例示すれば、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン等である。また、前記一般式(5)で表されるアルコ−ルを反応基質兼溶媒として用いることも可能である。
【0022】
前記一般式(3)で表される化合物はR体、L体、ラセミ体、R体とL体の非等価混合物いずれでもよく、また、脱離基Zは前記反応を促進するものであれば特に規定されないが、副生する塩の処理が容易な塩素基や臭素基が好ましい。
【0023】
塩基については前記反応を促進するものであれば特に規定されないが、これを例示すれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム等である。塩基は1当量以上必要であり好ましくは1.2〜2.0当量の割合で用いられる。
【0024】
前記反応は溶媒あるいは反応基質の融点から沸点までの温度範囲で実施できるが、特に0℃〜120℃が好ましい。反応後は中和、副生塩の除去の後蒸留等によって精製できる。
【0025】
前記一般式(4)で表される化合物は、適当な溶媒中、アルコキシドを形成する塩基存在下で1種類あるいは2種類の前記一般式(2)で示されるアルコ−ルを前記(3)で表される化合物と反応させることで製造することができる。この場合の反応は式(8)で示される。
【化8】


(式中、mは2以上の整数、nは負でない整数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又はアリ−ル基、Zは脱離基を表す。)
【0026】
ここで、R1〜R2は全て同じでもよく、異なっていてもよい。また、2本あるエチレンオキシド鎖の長さnは、全て同じでもよく、異なっていてもよい。
【0027】
前記反応においては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができるが、これを例示すれば、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン等である。また、前記一般式(2)で表されるアルコ−ルを反応基質兼溶媒として用いることも可能である。
【0028】
前記一般式(3)で表される化合物はR体、L体、ラセミ体、R体とL体の非等価混合物いずれでもよく、また、脱離基Zは前記反応を促進するものであれば特に規定されないが、副生する塩の処理が容易な塩素基や臭素基が好ましい。
【0029】
塩基については前記反応を促進するものであれば特に規定されないが、これを例示すれば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、ブチルリチウム等である。塩基は1当量以上必要であり好ましくは1.2〜2.0当量の割合で用いられる。
【0030】
前記反応は溶媒あるいは反応基質の融点から沸点までの温度範囲で実施できるが、特に0℃〜120℃が好ましい。反応後は中和、副生塩の除去の後蒸留等によって精製できる。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物中のアニオン基を含む構造の導入は特に規定されないが、導入部が水酸基であることからアルコキシドによる求核置換反応によって開環し発生したアニオンにアルコキシドを形成していた金属カチオンが補足され、そのまま塩を形成するような反応が簡便で望ましい。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)9−(2−オキサプロピル)−6−(3−(2−オキサプロピル)−2,5−ジオキサヘキシル)−5,8,11−トリオキサドデカンスルホン酸リチウム(一般式(1),m=2,n=0,p=1,R1〜R4:CH,X:CHCHCHSO,Mp+:Li)の合成
【0034】
(分岐エ−テル化工程1)2000ml容のなす形フラスコ中、200mlのエピクロロヒドリンと200mlのメタノ−ルを混合し、これに16.85gの水酸化カリウムを320mlのメタノ−ルに溶解した溶液を氷浴で冷却しながらゆっくり滴下した。室温で19時間攪拌した後、ろ過し、ろ液中の低沸点成分を60℃に加熱しながら減圧留去し、黄色液体を得た。副生成物である目的物の構造異性体を除去するため、この液体に5.0gのエピクロロヒドリンを加え、60℃で5時間攪拌した後、減圧蒸留(80.2℃/28mmHg)することにより193.57gの1,3−ジメトキシ−2−プロパノ−ル(一般式(1),m=1,n=0)を無色液体として単離した。
得られた1,3−ジメトキシ−2−プロパノ−ルのNMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR(400MHz, CDCl): δ2.89(dd), 3.39(s,6H), 3.41−3.48(m,4H), 3.96(m,1H);
13C−NMR(100MHz, CDCl): δ59.2, 69.3, 73.84.
【0035】
(分岐エ−テル化工程2)500ml容のなす形フラスコ中、13.4mlのエピクロロヒドリンとTHFを混合し、これに11.34gの水酸化カリウムを210gの実施例1で単離した1,3−ジメトキシ−2−プロパノ−ルに溶解した溶液をゆっくり滴下した。100℃で29時間攪拌した後、ろ過し、ろ液中の低沸点成分を減圧留去し、桃色液体を得た。この液体を減圧蒸留(85.0℃/39mmHg)することにより1,3−ジメトキシ−2−プロパノ−ルを回収した後、さらに減圧蒸留(101.6℃/0.08mmHg)することにより12.9gの1,3−ビス(1,3−ジメトキシ−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ルを無色液体として単離した。
1,3−ビス(1,3−ジメトキシ−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ルのNMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR(400MHz, CDCl): δ3.37(s,12H), 3.42−3.49(m,8H),3.59−3.63(m,4H), 3.65−3.71(m,2H), 3.92−3.96(m,1H);
13C NMR(100MHz, CDCl): δ59.22, 69.86, 72.00, 72.73, 78.60.
【0036】
(アルコキシド化工程及びアニオン官能基導入工程)窒素下で300ml容のなす形フラスコ中、工程2で単離した1,3−ビス(1,3−ジメトキシ−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ル6.61gを乾燥THFに溶解した。これに1.57Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を室温で添加し、60℃で1時間過熱攪拌した後、室温で12時間攪拌した。この溶液に1.95mlのプロパンスルトンをゆっくり滴下し、60℃で4日間攪拌した。得られた反応混合物をろ過し、ろ液の低沸点成分を減圧留去して粘性液体の粗成生物を得た。メタノ−ルを溶離液に用いたゲルろ過クロマトグラフィ−による精製を行い、6.30gの9−(2−オキサプロピル)−6−(3−(2−オキサプロピル)−2,5−ジオキサヘキシル)−5,8,11−トリオキサドデカンスルホン酸リチウムを黄色粘性液体として得た。
9−(2−オキサプロピル)−6−(3−(2−オキサプロピル)−2,5−ジオキサヘキシル)−5,8,11−トリオキサドデカンスルホン酸リチウムのNMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR(400MHz, CDCl): δ2.08(m,2H), 3.02(t,2H), 3.37(s,6H), 3.39(s,6H), 3.44−3.50(m,8H), 3.61−3.79(m,9H);
13C NMR(100MHz, CDCl): δ25.03, 47.84, 59.26,68.77, 69.14, 72.12, 77.56, 77.81.
【0037】
(実施例2) 9−(2,5−ジオキサヘキシル)−6−(3−(2,5−ジオキサヘキシル)−2,5,8−トリオキサノニル)−5,8,11,14−テトラオキサペンタデカンスルホン酸リチウム(一般式(1),m=2,n=1,p=1,R1〜R4:CH,X:CHCHCHSO,Mp+:Li)の合成
【0038】
(分岐エ−テル化工程1)2000ml容のなす形フラスコ中、120mlのエピクロロヒドリンと300mlのTHFを混合し、これに90.78gの水酸化カリウムを725mlの2−メトキシエタノ−ルに溶解した溶液を氷浴で冷却しながらゆっくり滴下した。室温で15時間、90℃で32時間攪拌した後、8.05gの水酸化カリウムを加え、90℃で19時間加熱した。得られた反応混合物をろ過し、ろ液中の低沸点成分を減圧留去した。得られた液体を得た。この液体に7.42gの水酸化カリウムを溶解し、10.64gのエピクロロヒドリンを加えて、140℃で29時間加熱した。この反応混合物をろ過し、ろ液を減圧蒸留(109.3℃/0.8mmHg)することにより1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロパノ−ル(一般式(1),m=1,n=1)を無色液体として単離した。
1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロパノ−ルのNMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR(CDCl): δ2.99(s,1H), 3.39(s,6H), 3.49−3.60(m,8H), 3.65−3.67(m,4H), 4.01(m,1H);
13C NMR(CDCl): δ59.02, 69.44, 70.73, 71.90, 72.59.
【0039】
(分岐エ−テル化工程2)500ml容のなす形フラスコ中、8.8mlのエピクロロヒドリンと25mlのTHFを混合し、これに7.47gの水酸化カリウムを228gの実施例3で単離した1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロパノ−ルに溶解した溶液をゆっくり滴下した。140℃で29時間攪拌した後、塩酸で中和した。この反応混合物をろ過し、ろ液中の低沸点成分を減圧留去し、橙色液体を得た。この液体を減圧蒸留(142.4℃/0.1mmHg)することにより1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロパノ−ルを回収した後、さらに減圧蒸留(275℃/0.1mmHg)することにより8.85gの1,3−ビス(1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ルを無色液体として単離した。
1,3−ビス(1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ルのNMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR(400MHz, CDCl): δ3.38(s,12H), 3.46−3.57(m,16H),3.59−3.66(m,8H), 3.68(d,4H), 3.70−3.76(m,2H), 3.92(m,1H).
13C NMR(100MHz, CDCl): δ59.03, 69.76, 70.73, 71.42, 71.88, 72.06, 78.70.
【0040】
(アルコキシド化工程及びアニオン官能基導入工程)窒素下で300ml容のなす形フラスコ中、工程2で単離した1,3−ビス(1,3−ジ(2−メトキシエトキシ)−2−プロポキシ)−2−プロパノ−ル7.47gを乾燥THFに溶解した。これに1.57Mのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を室温で添加し、60℃で1時間過熱攪拌した後、室温で12時間攪拌した。この溶液に1.95mlのプロパンスルトンをゆっくり滴下し、60℃で4日間攪拌した。得られた反応混合物をろ過し、ろ液の低沸点成分を減圧留去して粘性液体の粗成生物を得た。メタノ−ルを溶離液に用いたゲルろ過クロマトグラフィ−による精製を行い、4.21gの9−(2,5−ジオキサヘキシル)−6−(3−(2,5−ジオキサヘキシル)−2,5,8−トリオキサノニル)−5,8,11,14−テトラオキサペンタデカンスルホン酸リチウムを黄色粘性液体として得た。
NMRデ−タについては以下のとおりである。
H NMR (400 MHz,CDCl): δ3.81(t,2H), 3.54−3.82(m,31H), 3.39(s,12H), 3.01(t,2H), 2.07(m,2H). 13C NMR(100MHz,CDCl): δ25.23, 48.11, 59.02, 68.83, 69.47, 70.49, 70.89, 71.64, 77.54, 77.94.
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体は、溶剤、潤滑油、界面活性剤、イオン液体として利用可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)で表される多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体。
【化1】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、pは自然数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基、Xはアニオン官能基を含む基、Mp+はp価のカチオンを表す。)
【請求項2】
はスルホン酸アニオンを有するアニオン官能基であることを特徴とする請求項1記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体
【請求項3】
p+はアルカリ金属イオンであることを特徴とする請求項1又は2記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体
【請求項4】
mは1から5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体
【請求項5】
下記一般式(2)で示される1種類あるいは2種類のアルコ−ルと、下記一般式(3)で示される化合物とを反応させることによって下記一般式(4)で示される化合物とする分岐エ−テル化工程と、
該エ−テル化工程で得られた一般式(4)で示される化合物の水酸基をアルコキシドとするアルコキシド化工程と、
該アルコキシド化工程で得られたアルコキシドと開環性化合物を反応させて多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体とするアニオン官能基導入工程
を備えることを特徴とする請求項1記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体の製造方法。
【化2】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、R1〜R2m−1は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。但しmが1の場合はm−1が0となるが、このときの構造は下記一般式(5)であることを示す。)
【化3】


(式中、Zは求核置換反応の脱離基となる基を示す。)
【化4】


(式中、mは1以上の整数、nは負でない整数、R1〜R2は置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。)
【化5】


(式中、nは負でない整数、Rは置換されてもよいアルキル基又は置換されてもよいアリ−ル基を表す。)
【請求項6】
開環性化合物はプロパンスルトンであることを特徴とする請求項5記載の多分岐オリゴエチレンオキシド誘導体の製造方法。



【公開番号】特開2008−222666(P2008−222666A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65995(P2007−65995)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】