説明

多分岐ライトガイド

【課題】 出射光の均一性に優れるとともに、構成が簡単で、しかも、その製造が容易である小型多分岐ライトガイドを提供することにある。
【解決手段】光ファイバ素線の束を、入射端(3)及び出射端(5)において円筒状に集束された3分岐ライトガイド(2)において、光源(1)の均一性に優れた照射位置(b)に対応する入射端(3)の(B)の範囲に位置する光ファイバ素線群を出射端(5b)に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライトガイド、特に生産工場などのラインでの微小部品の検査用照明装置として有用な多分岐ライトガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、微小部品の検査用照明装置のライトガイドとして、多分岐ライトガイドが盛んに使われるようになってきている。これに伴い、ライトガイドからの出射光の均一化の要求が厳しくなってきている。
この要求に対応するため、多分岐ライトガイドを構成する光ファイバ素線束をランダム編み等によりランダム配列することは周知のとおりである。また、別の方策として、導光用ライトガイドが接続具を介して照光用ライトガイドに組合わされた照明装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。
ところが、前者の方策では、出射光の均一性には優れているものの、光ファイバ素線束をランダム編みするためには、必然的に或る長さが必要になる。したがって、この方策は、或る長さ未満の多分岐ライトガイドには適用し得ない。一方、後者の方策では、接続具を使用するため、接続ロスが生じて照射効率が低下するという問題がある。さらに、この方策では、導光用ライトガイド、接続具、および照光用ライトガイドの3点構成であるため、構造が複雑で、結果的には高価なものになる。
【0003】
以上の方策とは別に、光軸の周りで入射端部の光ファイバ素線束をその断面方向において放射状に等分割することも知られている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方策は、汎用されているハロゲンランプ等電球光源の固有の問題を解決するには至っていない。周知のように、電球光源では、中央部が暗くなるという、所謂、中抜け特性があるので、入射端部の光ファイバ素線束を放射状に等分割しても、中抜け特性がそのまま出射端部に伝達されるのみで、均一な出射光は得られない。
【0004】
【特許文献1】実開平3−129904公報全文
【特許文献2】実開平6−64206公報全文
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、出射効率が高く且つ出射光の均一性に優れ、しかも、構成が簡単な多分岐ライトガイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、光源からの照射スポットのうち均一発光帯にある光が入射した光ファイバ素線群を、それらの出射端部において選択的に集束することに着想した結果、上記課題を解決するに至った。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多分岐ライトガイドにあっては、以下のような格別顕著な効果が奏される。
(1) 光源の均一発光帯の光のみを選択的に入射・出射させる光ファイバ素線群を採用するので、従来の方策に比べて出射効率が改善されるばかりでなく均一出射光までをも得られる。
(2) その製造に際しては、後述するように、光マスキング手段を採用するので、上記均一発光帯の光が入射した光ファイバ素線群のみの点灯現象を利用して容易に仕分けることができ、その結果、光ファイバ素線束の出射端部で該素線群からなる分岐ファイバ群を容易に円滑に得ることができる。また、光源の仕様が変わっても、光源の出射特性パターンに応じた光マスキング手段を予め用意しておくだけで済むので、設計上の自由度が高く、応用範囲が広くなる。
(3) 従来のランダム編みでは実現できなかった30mm〜100mmの短尺物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を3分岐ライトガイドの場合を例にとり、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、光源に接続された3分岐ライトガイドの一例を示す斜視図である。
図2は、図1の3分岐ライトガイドの入射端面の正面図である。
図3(a)は、ハロゲンランプの照度分布を示すグラフである。
図3(b)は、ハロゲンランプの照射スポットを示すグラフである。
図4は、3分岐ライトガイドの製造に用いるマスキング手段の一例を示す正面図である。
図5は、方形状LED光源の照射スポットを示すグラフである。
【0009】
図1において、(1)はハロゲンランプ等の光源、(2)は3分岐ライトガイド、(3)は光源(1)からの光が入射する入射端部、(3a)は入射端部(3)の入射端面、(4)は入射端部(3)の光ファイバ素線束を円筒状に集束させるためのコネクタ、(5)は分岐ファイバ群(5a)、(5b)および(5c)からなる出射端部、(6a)、(6b)および(6c)は各分岐ファイバ群を出射端部で円筒状に集束させるためのコネクタである。ここで、本発明の特徴は、ハロゲンランプ等の照射特性との関係で、分岐ファイバ群(5a)、(5b)および(5c)と入射端部(3)の光ファイバ素線束との間に位置的相関を確立させたことに在る。
【0010】
以下、上記位置的相関の意義について述べる。
図2は、円形の入射端面(3a)の仮想的分割状況を示し、仮に該入射端面の中心から半径方向に3分割された際の各区域を、図示したように、それぞれ中央円状部(A)、中間環状帯(B)、および外郭環状帯(C)とする。このとき、中央円状部(A)に位置する光ファイバ素線群は分岐ファイバ群(5a)を、中間環状帯(B)の光ファイバ素線群は分岐ファイバ群(5b)を、そして、外郭環状帯(C)の光ファイバ素線群は分岐ファイバ群(5c)を構成している。
他方、図3(a)には、光源(1)としてのハロゲンランプ等の一般的照度分布状態が、そして、図3(b)には、該ランプの照射スポットのプロファイルが示されている。ここで、中央円状照射部(a)付近には中抜けが生じ、したがって、明るい部分と暗い部分があり、均一な照射状態を呈しない。他方、外郭環状照射帯(c)では照度が急激に低下しているので、光量不足が生じる。これに対して、中間環状照射帯(b)では最も明るく且つ均一な照射状態を呈している。本発明では、この中間環状照射帯(b)を“均一発光帯“と定義する。また、(w1)は中央円状照射部(a)の直径、(w2)は中間環状照射帯(b)の幅、そして、(w3)は外郭環状照射帯(c)の幅である。これらの直径および幅の各符号は、図2中の同一符号および後述する図4中の同一符号に対応させてある。
【0011】
本発明では、この電球光源固有の特性が光ファイバ素線束に反映されている。つまり、中央の円状照射帯(a)からの照射光が入射した中央円状部(A)の光ファイバ素線群(図2、以下同様)は分岐ファイバ群(5a)として集束される。また、外周の環状照射帯(c)からの照射光が入射した外郭環状帯(A)の光ファイバ素線群は分岐ファイバ群(5c)として集束される。ここで、最も特徴的なことは、中間環状照射帯(b)からの照射光が入射した中間環状帯(B)の光ファイバ素線群は選択的に分岐ファイバ群(5b)として集束されていることである。これにより、分岐ファイバ群(5b)からの出射光は確実に均一化されるので、均一光の精度が要求される箇所には、これからの出射光を利用すればよい。他方、均一化の精度がそれほど要求されない箇所には、分岐ファイバ群(5a)あるいは(5c)からの出射光を利用すればよいことになる。
【0012】
これに対して、入射端部(3)と出射端部(5)における光ファイバ素線群の同士の位置関係を考慮せず、ただ単に多分岐させ従来法にあっては、光源(1)の照射特性がそのまま出射端に反映して出射されるので、均一な出射光は望むべくもない。
【0013】
本発明の多分岐ライトガイドにおいて、通常は分岐ファイバ群(5a)〜(5c)の各出射端面の面積は同じか異なっていてもよい。その際、それぞれの断面積は、80mm2以下であればよい。
また、光ファイバ素線束は、ガラスファイバ、プラスチックファイバ(POF)のいずれであってもよいが、短尺物を得る上では、分岐し易い細径のプラスチックファイバ(POF)が好ましく採用される。このときのファイバ素線の外径としては、0.25mm〜1mm、好ましくは0.5mm〜1mmが採用される。
上記説明では、光源(1)としてハロゲンランプの例を示したが、光源自体は円状の照射スポットを呈するランプに限定されることなく、例えば、方形状LED光源等の他の光源にも適用できる。方形状LED光源の照射スポットは図5に示されている。該図において、本発明で言う“均一発光帯”は(b)の帯域となる。この場合の各帯域(a)、(b)および(c)の分割割合((w1):(w2):(w3))は、図3(b)の場合と同じである。このような方形状LED光源を採用するときは、ライトガイド(2)の入射端面(3a)も該照射スポットに対応して方形状に集束されたものが好ましい。この方形状入射端面(3a)に適用するマスキング手法も図4のそれに準じればよい。要は、用いる光源の照度分布と照射スポットから、“均一発光帯”を求め、該帯の光が入射した光ファイバ素線群を選択的に分岐させることにより、本発明の多分岐ライトガイドが得られる。
【0014】
以下に、本発明の多分岐ライトガイドの製造方法について述べる。
まず、光ファイバ素線束の一方の端部を円筒状に集束させ、ついでコネクタ(4)を装着して入射端部(3)を形成する。
つぎに、入射端面(3a)に、光源(1)の均一発光帯(b)からの光を選択的に入射させる為のマスキング手段(7)を装着する。このマスキング手段(7)は、図4に示されるように、予めマスキングパターンが設定されている。図4の場合は、図3の中間環状照射帯(b)の照射光のみが選択的に透過する透過帯(Bt)が設けられている。つまり、図3の中央円状照射帯(a)および外郭環状照射帯(c)からの照射光は透過しないように、(Ab)および(Cb)の箇所はマスキングされている。したがって、光源(1)からの均一発光帯(b)からの光は入射端面の中間環状帯(B)に位置する光ファイバ素線群に入射しつつ、出射端部では、対応する光ファイバ素線群が点灯する。そして、これらの点灯した光ファイバ素線群だけを選択的に集束させてからコネクタ(6b)を装着することにより、分岐ファイバ群(5b)が得られる。
同様の操作は、入射端面の中央円状部(A)または外郭環状帯(C)に位置する各素線群に対して適用してもよい。例えば、前者に対して、図4の(Ab)の箇所のみが光透過性のマスキング手段(7)を用い、分岐ファイバ群(5b)に対する集束処理と同様の集束処理を行うと、分岐ファイバ群(5a)が得られる。この時点で、集束されていない残りの光ファイバ素線群は、図4の外郭環状帯(C)に位置するので、これらをさらに集束処理することにより、分岐ファイバ群(5c)が得られる。これら分岐ファイバ群(5a)または(5c)は、分岐群(5b)に比べると、出射光の均一性は劣る。この意味では、中央円状部(A)と外郭環状部(C)との間の素線群の区別は厳しく要求されることはないので、必ずしもマスキング手段(7)を用いる必要はない。入射端面の中央円状部(A)および外郭環状部(C)に位置する各素線群をそれぞれに手作業で集束してもよい。言うまでもないことであるが、これら分岐ファイバ群(5a)〜(5c)の形成工程の順序は任意である。上記の態様では、マスキング手段(7)を利用することに特徴がある。したがって、光源(1)の照射特性に合わせたマスキングパターンを予め準備しておけば、多分岐ライトガイドの設計上の自由度が高くなる。
【0015】
以上の説明は、3分岐のライトガイドの場合であるが、本発明の多分岐ライトガイドは、光源の均一発光帯の光を入射・出射する分岐ファイバ群を独立群として含む限り、その分岐数は任意である。さらに、分岐ファイバ群(5b)は単一の例で示したが、必要に応じて複数の群に少分割してもよい。
【0016】
以下に、本発明の多分岐ライトガイドの具体例を示す。
長さ50mm、外径0.5mmのPMMAからなるプラスチックファイバ素線を720本集束して光ファイバ素線束を得た。この束の一方の端部を入射端部(3)として、該端部に厚さが2mmで内径が15.2mmのアルミ二ウム製コネクタ(4)を装着した。ついで、入射端面(3a)に透明な石英硝子製の光マスキング手段(7)を取り付けた。このマスキング手段(7)は、図4に示す(Bt)の中間環状帯を光透過部として、その他の(At)および(Cb)の箇所は黒色マスキング材にてマスキングされたものである。このとき、(w1)は10mm、(w2)は1mm、そして、(w3)は1.5mmとした。
上記マスキングされた入射端端面には、 光源(1)として50wのハロゲンランプを対峙させ(入射距離10mm)、均一発光帯(b)から光をマスキング手段(7)の光透過部(Bt)を通して入射端面の中間環状帯(B)に入射させた。ついで、出射端部側で該入射光により点灯している光ファイバ素線群137本を選択的に集束した。集束端部には厚さ1mmで内径が6.6mmのアルミ二ウム製コネクタ(6b)を装着して分岐ファイバ群(5b)を形成した。
さらに、残りの点灯していない光ファイバ素線群の内、入射端面(3a)の中央円状部(A)に位置する光ファイバ素線群312本を手作業にて集束した。その集束端部には厚さが2mmで内径が10mmのアルミ二ウム製コネクタ(6a)を装着して分岐ファイバ群(5a)を形成した。同様の手順で、入射端面(3a)の外郭環状帯(C)に位置する光ファイバ素線群271本を手作業で集束した。その集束端部には厚さが2mmで内径が9.3mmのアルミ二ウム製コネクタ(6c)を装着して分岐ファイバ群(5c)を形成した。
この3分岐ライトガイドの分岐ファイバ群(5b)の照度および照度バラツキを照度計にて測定した所、このバラツキは5%以内であって、出射光が十分に均一化され、しかも、照度も、5000ルックスと、十分な照度が得られていることが確認された。
なお、バラツキとはRmax/Xa*100%で示され、その際、Rmaxは有効照射部の照度分布における最大照度差、Xaはその平均とする。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の照明装置は、出射効率が高く且つ出射光の均一性に優れ、しかも、構成が簡単な多分岐ライトガイドを実現するので、検査用照明装置のみならず、画像処理照明用や光学機器照明用、小型の商品展示用、屋内照明用あるいは医療用の用途としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光源に接続された3分岐ライトガイドの一例を示す斜視図である。
【図2】図1の3分岐ライトガイドの入射端の正面図である。
【図3】ハロゲンランプの照度分布(a)および照射スポット(b)を示すグラフである。
【図4】3分岐ライトガイドの製造に用いるマスキング手段の一例を示す正面図である。
【図5】方形状LED光源の照射スポットを示すグラフである。
【符号の説明】
【0019】
1 光源
2 3分岐ライトガイド
3 3分岐ライトガイドの入射端部
3a 入射端面
4 入射端部コネクタ
5 3分岐ライトガイドの出射端
5a、5b、5c 出射端を構成する分岐ファイバ群
6a、6b、6c 各分岐ファイバ群のコネクタ
7 光マスキング手段
A 入射端面の中央円状部、
B 入射端面の中間環状帯
C 入射端面の外郭環状帯
Ab マスキング部
Bt 光透過部
Cb マスキング部
w1 ハロゲンランプの中央円状照射部の直径
w2 ハロゲンランプの中間環状照射帯の幅
w3 ハロゲンランプの外郭環状照射帯の幅











【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ素線束の一方の端部が集束され、他方の端部が多分岐ファイバ群からなる多分岐ライトガイドにおいて、該集束端面で光源の均一発光帯の光が入射する光ファイバ素線群が該他方の端部において選択的に集束されて多分岐ファイバ群の一群を形成していることを特徴とする多分岐ライトガイド。
【請求項2】
該集束端面から入射した光が、該多分岐ファイバ群の各端面から光が出射される請求項1に記載の多分岐ライトガイド。
【請求項3】
該光がハロゲン光である請求項2に記載の多分岐ライトガイド。
【請求項4】
該集束端面が円形であり、その際、該均一発光帯の光が入射する光ファイバ素線群が、該円形端面の中心から半径方向に3分割した際に形成される中央円状部と外郭環状部との間に位置する請求項2または3に記載の多分岐ライトガイド。
【請求項5】
全長が30mm〜100mmの短尺物であるである請求項1〜4のいずれかに記載の多分岐ライトガイド。
【請求項6】
以下のa〜dの工程を含むことを特徴とする多分岐ライトガイドの製造方法。
a 光ファイバ素線束の一方の端部を集束する工程;
b 該集束端部の端面に光マスキング手段を適用して、該端面に光源の均一発光帯の光を入射させる工程;
c 該光ファイバ素線束の他方の端部で、該入射した光で点灯している光ファイバ素線群を選択的に集束する工程;および、
d 該光ファイバ素線束の他方の端部で、出射光が点灯しなかった光ファイバ素線群を一群または2群以上の群に集束させる工程。
【請求項7】
該光源がハロゲンランプである請求項6に記載の多分岐ライトガイドの製造方法。
【請求項8】
ハロゲンランプからの照射光を光ファイバ素線束からなるライトガイドに通して導光するに際し、該ランプの均一発光帯の光が入射した光ファイバ素線群を、該ライトガイドの出射端部で選択的に集束して分岐させ、この分岐ファイバ群から該光を出射させることを特徴とする導光方法。
【請求項9】
均一発光帯が、該照射スポットの中間に位置する環状帯である請求項8に記載の導光方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−72388(P2007−72388A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262161(P2005−262161)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】