説明

多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置

【課題】従来の製造温度を大幅に低減し、作製エネルギーを低減した多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、並びに、前記製造方法により製造した多分岐型ポリエステルポリオールを用いた樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】触媒として硫黄酸を用い、ヒドロキシ基、カルボキシ基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を少なくとも重縮合する工程を含むことを特徴とする多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、前記製造方法により製造した多分岐型ポリエステルポリオールを用いた樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、樹脂粒子分散液、静電荷像現像トナー及びその製造方法、静電荷像現像剤、画像形成方法、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真の分野においては、画像を形成させるための着色剤であるトナーに使用されるバインダー成分としてポリエステル樹脂は、適度な溶融粘度を有しているため、トナーを比較的低い温度で定着させることが可能である。また、かかるポリエステル樹脂は芳香環を繰り返し単位中に有している場合があり、かとう性を有するため、分子量を低くしても、ガラス転移温度(以下「Tg」という。)がそれ程下がらず、結果的にトナーの保存安定性、機械的強度が良好な利点を有す。さらにポリエステル樹脂から調製したトナーによって現像された画像の透明性が良好であることから、特にカラーコピー用の乾式電子写真トナー用に広く用いられている。
近年、複写機、プリンター類の高速化の進展が著しく、また省エネルギー等環境保護の観点より、かかる高速機に使用されるトナーに対しても、より低い温度で定着し、かつより高温においてもオフセットしないことという相反する要求性能を満足することが求められているが、従来かかる要求を満たすことは困難であった。
【0003】
かかる要求性能を満足させるため、通常のポリエステル樹脂に対しさらにエステル化反応を進め高分子量化する試みもなされているが、この場合は低温での定着が困難となる。一方、低温での定着性を改良するために、ポリエステル樹脂のTgを下げる試みもされているが、この場合トナーの保存時の耐ブロッキング性が低下する。また、上記のオフセットの欠点を解消するために定着ロールにシリコーンオイル等を塗布すること等が行われているが、装置の複雑化、オイルによる複写物の汚染等の欠点があり完全に問題点を解決するものとはなっていない。さらにまた、低い温度で定着するトナーを設計するに際し、シャープに溶融する結晶性ポリエステルを用いる、あるいは結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルとを混合する例がある。こうした結晶性ポリエステルを用いたトナーは低温での定着性はある程度発現されるものの、トナーの機械的強度が低くフィルミング、キャリア汚染、外添剤劣化による転写性の低下といった課題を完全に改善出来ずにいた。さらにまた湿式製法トナーに結晶性ポリエステルを用いるとポリエステルの加水分解を発生しやすく、定着性能の劣化を起こしたり、安定化剤の大量使用による帯電性低下の課題があった(以上、特許文献1乃至3等も参照)。
【0004】
また、特許文献4には、バインダー樹脂と着色剤とを含む電子写真用トナーであって、前記バインダー樹脂の数平均分子量が1000〜50000であり、重量平均分子量/数平均分子量の値が10以下のハイパーブランチポリマーを、全バインダー樹脂の10重量%以上含有することを特徴とする電子写真用トナーが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭62−62368号公報
【特許文献2】特開2001−42564号公報
【特許文献3】特公平4−24702号公報
【特許文献4】特開2006−258931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の製造温度を大幅に低減し、作製エネルギーを低減した多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、及び、樹脂粒子分散液を提供することである。
また、本発明の他の目的は、低温での定着性及び高温でのオフセットの欠点が発生せず、電子写真複写機又はプリンター等の高速化に対応できる前記製造方法により製造した多分岐型ポリエステルポリオールを用いた静電荷像現像トナー及びその製造方法、並びに、前記静電荷像現像トナーを用いた静電荷像現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる従来技術の問題点を解消すべく鋭意改良研究を行った結果、多分岐型ポリエステルポリオールを有する樹脂粒子を用いたトナーが、ヒートロールの送り速度が高速になっても低い温度で静電荷像を定着でき、かつ、より高温でも定着ロールにトナー粉がオフセットしないため定着画像がオフセットによる汚染を受けず美麗なものとなる等の顕著な特徴を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の上記課題は、以下の<1>乃至<7>に記載の手段により解決された。
<1> 触媒として硫黄酸を用い、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を少なくとも重縮合する工程を含むことを特徴とする多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、
<2> 上記<1>に記載の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む樹脂粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液、
<3> 上記<1>に記載の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む静電荷像現像トナー、
<4> 少なくとも樹脂粒子分散液を含む分散液中で前記樹脂粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、前記凝集粒子を加熱して融合させる工程を含み、前記樹脂粒子分散液が、上記<2>に記載の樹脂粒子分散液である静電荷像現像トナーの製造方法、
<5> 上記<3>に記載の静電荷像現像トナー又は上記<4>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤、
<6> 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程を含み、
前記トナーとして上記<3>に記載の静電荷像現像トナー若しくは上記<4>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として上記<5>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成方法、
<7> 潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体を露光して該潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記潜像保持体から被記録材に転写する転写手段とを有し、前記現像剤として上記<3>に記載の静電荷像現像用トナー、上記<4>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー又は上記<5>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の製造温度を大幅に低減し、作製エネルギーを低減した多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法、及び、前記製造方法により製造した多分岐型ポリエステルポリオールを含む樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を提供することができる。
また、本発明によれば、低温での定着性及び高温でのオフセットの欠点が発生せず、電子写真複写機又はプリンター等の高速化に対応できる前記製造方法により製造した多分岐型ポリエステルポリオールを用いた静電荷像現像トナー及びその製造方法、並びに、前記静電荷像現像トナーを用いた静電荷像現像剤、画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明について説明する。
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法は、触媒として硫黄酸を用い、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を少なくとも重縮合する工程(以下、「重縮合工程」ともいう。)を含むことを特徴とする。
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、前記本発明の製造方法により得られた多分岐型ポリエステルポリオールであり、種々の公知の用途に使用することができる。
中でも、静電荷像現像トナー用多分岐型ポリエステルポリオールとして好適に用いることができ、低温定着性、オフセット性、ハーフトーン画像でのオフセット性、耐ブロッキング性、現像剤流動性、クリーニング性、及び、画質維持性の全てに優れた静電荷像現像トナーを得ることができる。また、このようなトナーは、複写機等の高速化に適するものである。
【0010】
(多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法)
従来の線状ポリエステルとは全く異なる構造の多分岐型ポリエステルポリオールは分子量を下げても樹脂の機械的強度に優れ、また温度に対する溶融挙動がシャープなことから低温定着トナーに好適な材料となる。さらに加水分解性に優れること、さらには水系媒体中での分散性に優れる点で、界面活性剤等の分散安定化剤を使用しない、又は使用を少なく出来るといった利点を有することから従来の課題を改善した低温定着トナー用に好適な材料となる。
多分岐型ポリエステルポリオールはその特異な樹脂構造故に、特徴的な熱特性、溶融特性を示す。これにより従来のリニアな結晶性樹脂は得られない機械的強度とシャープな溶融性を有し静電荷像現像トナー材料への応用を可能とする。また水系媒体中での安定が高いことから、湿式製法トナーにより好適な材料となる。また本樹脂は、本発明の製造方法である硫黄酸を用いた低温重縮合により簡便に試作が可能で、従来のハイパーブランチポリマー、デンドリマーが複雑な重合工程を有し工業化が困難であったものが回避出来る。低温定着トナー、低エネルギー製造と両者を両立させることが可能である。
【0011】
また、多分岐型ポリエステルポリオールは、同様の構成単位から成り同程度の分子量を有する鎖状のランダムコイル状ポリマーに比べ、粘度が極めて低いという特質を有する。即ち、多分岐型ポリエステルポリオールは、溶液や溶融状態においてランダムコイル状の形態をとらず、密集した球状又は球形構造をとり、それゆえにコイル状高分子よりも流体力学的半径が極端に小さくなるからである。したがって、理論上、粘度上昇の原因となるポリマー鎖の絡みが少なくなる。また、多分岐型ポリエステルポリオールは鎖状ポリマーに極めて少量加えることにより組成物の粘度を著しく低減できる、という有用性もある。そのため溶解した時の溶融粘度を低くおされられ、トナーの低温定着化が好ましい。さらに、前記多分岐型ポリエステルポリオールは、その外側分子末端にヒドロキシ基を有しており、他の様々な反応に利用可能である。多分岐型ポリエステルポリオールの球状構造の直径が成長するにつれて、これらヒドロキシ基の数も増大する。このため、ヒドロキシ基相互の水素結合性が高まり、樹脂のガラス転移点が高まる利点がある。このため、溶融粘度がシャープでありながら常温での機械的強度に直ぐれたトナー用樹脂の設計が可能となる。
【0012】
一般的に多分岐型いわゆるデンドリマー構造を有する化合物(デンドリティック高分子)は、「樹状ポリマー」、「星形高分子」、「スターバーストポリマー」、「ハイパーブランチポリマー」等と呼ばれ、直鎖及び分岐ポリマーに比べ、分子単位あたりの官能基密度が高く、世代を数世代重ねると内部に空間を持つ。このため界面活性剤、ゲル化剤、高分子吸収剤等の応用が考えられている。さらに分子鎖の絡み合いが乏しいため溶融特性、粘度の分子量依存性などに特異な挙動を示す。
「デンドリマー構造を有するポリエステルポリオール」とは、高度に枝分かれした末端基が水酸基であるポリエステル樹脂で、この水酸基の効果で水系媒体中での安定性が高く加水分解に耐性を有す。デンドリマーは低分子モジュールから合成する必要があり工業的生産が困難であるという問題を有している。そこでデンドリマーに代わって、「ハイパーブランチポリマー」として知られる高分岐ポリマーが工業的生産性に優れる点から注目されている。この高分岐ポリマーはその分岐構造がデンドリマーほどの規則性を有していないものの、1段階又は2段階の反応で生産できるという工業的利点がある。
つまり、デンドリマーは正確な構造を持っていることが条件であるので分子量単一の有機化合物と捕らえることが出来る。一方、ハイパーブランチポリマーは、繰り返し単位は同じであるが、分子量の異なる分子の混合物といった高分子特有の特徴を持っている。合成的には、デンドリマーと比べ、ハイパーブランチポリマーの合成はずっと容易であるため、本発明においてもエネルギーやコスト等の面でハイパーブランチポリマーであることが好ましい。
下記に典型的なデンドリマー構造と、ABB型の単量体を使用したハイパーブランチポリマー構造を示す。なお、AとBとは異なる官能基であり、AとBとが反応して結合し、前記構造を構成する。
【0013】
【化1】

【0014】
デンドリティック高分子の一般的性質を記述すると、(A)粘度が小さい、(B)主鎖の結晶化は無い(末端に長鎖アルキル基を導入すれば観察可能)、(C)有機溶媒によく溶ける、(D)末端官能基が分子量と共に増加する性質がある。
デンドリマー樹脂に関しては、例えば、特表昭63−502350号公報、特開平3−263431号公報、特開平7−268096号公報等に製法の記載がある。
また例えば、特開平7−219272号公報には、スターバーストデンドリマーの製法の記載がある。
従来、多分岐型ポリエステルポリオールの重縮合には通常200℃を越える過酷な環境を必要とし、エネルギー消費量が多く必要とされる。多分岐型ポリエステルポリオールの重縮合が、温和な環境で行え、簡素な工程からなればその意義は大きい。
【0015】
次に、本発明における多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法について、詳細に説明する。
本発明において、「多分岐型」とは、一般的に高度に枝分かれした分子構造をいい、実質的に分子内に架橋した構造を含まないものをいう(「樹状構造」ともいう。)。また、「多分岐型ポリエステルポリオール」とは、高度に枝分かれした末端基のほとんどが実質的に水酸基である上記樹状構造を有するポリエステルポリオールをいう。
【0016】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法は、ヒドロキシ基(水酸基)、カルボキシル基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を、多分岐型ポリエステルポリオールの合成原料として少なくとも使用する。
ヒドロキシ酸とは、1つ以上のヒドロキシ基(−OH)及び1つ以上のカルボキシル基(−COOH)を有する化合物である。
本発明においては、多分岐型ポリエステルポリオールを得るため、ヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸を使用する。前記ヒドロキシ酸が有するヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基は、保護基により保護されていてもよく、少なくとも1つのヒドロキシ基又はカルボキシル基が保護されたヒドロキシ酸を、ヒドロキシ酸の保護体ともいう。
ヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸におけるヒドロキシ基の数は、カルボキシル基の数より多いことが好ましい。
また、ヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸は、1つのカルボキシル基及び2つ又は3つのヒドロキシ基を有する化合物であることが好ましく、1つのカルボキシル基及び2つのヒドロキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
【0017】
多分岐型ポリエステルポリオールをデンドリマーとして合成する、すなわち、各世代を段階的に逐次合成する場合、使用するヒドロキシ酸は保護体を用いることが好ましい。
一方、多分岐型ポリエステルポリオールをハイパーブランチポリマーとして合成する、すなわち、1段階又は2段階の反応で合成する場合、使用するヒドロキシ酸は保護されていないものであることが好ましい。
【0018】
前記ヒドロキシ酸が有していてもよい前記保護基は、多分岐型ポリエステルポリオールの製造において問題とならない条件で脱保護が可能な基であればよく、公知の保護基を用いることができる。保護基として例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」(3rd Edition、Theodora. D. Greene and Peter G. M. Wuts著、Wiley, John & Sons社発行、1999年刊)等に記載の保護基を反応条件等により好ましく選ぶことができる。
また、多分岐型ポリエステルポリオールの合成反応、特にデンドリマーの合成反応を行う際、反応を行う箇所のヒドロキシ基及びカルボキシル基は保護基を外しておくことが好ましいが、エステル化反応時に支障がなければ保護基をつけたまま反応を行ってもよい。
【0019】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの合成原料としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を主成分(50重量%以上の割合)として用いることが好ましい。他の合成原料としては、後述するコア化合物や、1つのヒドロキシ基及び1つのカルボキシル基を有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体が挙げられる。
【0020】
本発明に用いることができるヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸は、カルボキシル基含有ジオール又はトリオールであることが好ましく、下記式(I)で表されるジヒドロキシジアルカン酸であることがより好ましく、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸であることがさらに好ましい。
また、下記式(I)におけるRは、水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基であり、水素又は炭素数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基であることがより好ましい。また、前記Rにおけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0021】
【化2】

(式中、Rは水素又は炭素数1以上5以下のアルキル基を表す。)
【0022】
さらにヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸として、リンゴ酸(Malic acid)、酒石酸(Tartaric acid)、クエン酸、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルペンタン酸(メバロン酸)、1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸(キナ酸)等を使用することも好ましい。なお、酒石酸のような2以上のヒドロキシル基及び2以上のカルボキシル基を有する化合物を、多分岐型ポリエステルポリオールの合成原料に用いた場合においても、架橋点を生じない場合もある。
【0023】
【化3】

式中、*は不斉炭素を表す。
【0024】
また、本発明に用いることができるヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸としては、炭素数3以上30以下のものであることが好ましく、炭素数4以上20以下のものであることがより好ましく、炭素数4以上12以下のものであることがさらに好ましい。
中でも、本発明の多分岐ポリエステルポリオールは、ABB型のヒドロキシ酸(A:カルボキシル基、B:ヒドロキシ基)を用い、自己重縮合した多分岐型ポリエステルポリオールが好ましい。
【0025】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、例えば、以下のように作製することができる。
ABB型ヒドロキシ酸(A:カルボキシル基、B:ヒドロキシ基)に触媒を加え、単量体を溶融又は溶媒に溶解した後、通常の方法で脱水重縮合を行い重合する方法である。さらにこの重合を減圧下で行ってもよい。
触媒としては、硫黄酸触媒を使用する。硫黄酸を使用することにより、重合温度を低減でき、これにより150℃以下での重縮合を行うことで、環境負荷の低減が可能となり好ましい。
【0026】
さらにまた本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、該多分岐型ポリエステルポリオールを合成した後、コア(「コア化合物」ともいう。)と称する多価アルコールを加え、重縮合を行い、より分子量の大きい多分岐型ポリエステルポリオールを作製してもよい。具体的には、下記に一例を示すように、ヒドロキシ酸(A)を自己重縮合し、多分岐型ポリエステルポリオール(B)を合成した後、コア化合物(C)と多分岐型ポリエステルポリオール(B)とを反応させ、多分岐型ポリエステルポリオール(D)を作製する方法が好ましく例示できる。
【0027】
【化4】

【0028】
コア化合物として用いることができる多価アルコールは、2価以上の多価アルコールであればよく、具体的には、ネオペンチルグリコール、メチルプロパンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ブチルエチルプロパンジオールが好ましく例示できる。
【0029】
また、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの原料として、ヒドロキシ基及びカルボキシル基を合計3以上有するヒドロキシ酸に加え、1つのヒドロキシ基及び1つのカルボキシル基を有するヒドロキシ酸を用いてもよい。例えば、ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシノナン酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシドデカン酸、ヒドロキシテトラデカン酸、ヒドロキシトリデカン酸、ヒドロキシヘキサデカン酸、ヒドロキシペンタデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等を挙げることができるが、これに限定されない。また、1つのヒドロキシ基及び1つのカルボキシル基を有するヒドロキシ酸は、ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を保護した保護体であってもよい。
【0030】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、公知のデンドリマー合成法に触媒として硫黄酸を適用し、合成することもできる。公知のデンドリマー合成法としては、例えば、国際公開第99/00439号パンフレットに開示されているように、ベンズアルデヒドと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とのアセタール化により水酸基を保護した一塩基酸を、芯物質であるペンタエリスリトールとエステル化反応させ、その後アセタール分解により保護基を除去し、分子の外側に平均8個の水酸基を有する第一世代の樹状分子を合成する。次いで同様に上記の水酸基を保護した一塩基酸を第一世代の樹状分子にエステル化反応させ、脱保護基化を順次繰り返すことにより、所定の世代数の樹状分子を合成するが挙げられる。
【0031】
次に、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの性状値について説明する。
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールを静電荷像現像トナー用のバインダー(結着樹脂)として用いる場合、適切な溶融粘弾性を具備する必要があるため、前記ポリエステルポリオールのゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下「GPC法」という。)による数平均分子量Mnは、500から500,000の範囲にあることが好ましく、1,500から200,000の範囲にあることがより好ましい。GPC法による重量平均分子量Mwは、5,000から500,000の範囲にあることが好ましく、5,500から200,000の範囲にあることがより好ましい。
また、耐オフセット性を十分発現させるためには、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの水酸基価は、300mgKOH/g以上1,000mgKOH/g以下の範囲にあることが好ましい。
さらに、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの酸価は、1.0mgKOH/g以上40.0mgKOH/g以下の範囲にあることが好ましい。
【0032】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、ガラス転移温度(Tg)を有することが好ましく、Tgが45℃以上80℃以下であることがより好ましく、Tgが50℃以上70℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移点が上記範囲であると、トナーにした場合の保管性に優れる。
また、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールは、環球法による軟化点が、80℃以上135℃以下であることが好ましく、90℃以上120℃以下であることがより好ましい。軟化点が上記範囲であると、定着の温度を常用の範囲に容易に設定可能となる。
なお、環球法による軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所(株)製、CFT−500)を使用し、測定条件が昇温速度6℃/分、荷重10kg、ダイス1mmφ×1mmで測定し、流動を開始した点を求めることによって測定することができる。
【0033】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法は、重縮合触媒として硫黄酸を使用する。
硫黄酸とは、硫黄の酸素酸であり、無機硫黄酸又は有機硫黄酸等が挙げられる。
無機硫黄酸としては、硫酸、亜硫酸、及び、これらの塩等が挙げられ、有機硫黄酸としては、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、及び、これらの塩等のスルホン酸類や、アルキル硫酸、アリール硫酸及びその塩等の有機硫酸類が挙げられる。
硫黄酸としては、有機硫黄酸であることが好ましく、界面活性効果を有する有機硫黄酸であることがより好ましい。なお、界面活性効果を有する酸とは、疎水基と親水基とからなる化学構造を有し、少なくとも親水基の一部がプロトンからなる酸の構造を有し、乳化機能と触媒機能とを併せ持つ化合物である。
【0034】
有機硫黄酸としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルジスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸、アルキルナフタリンスルホン酸、アルキルテトラリンスルホン酸、アルキルアリルスルホン酸、石油スルホン酸、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸、高級アルコールエーテルスルホン酸、アルキルジフェニルスルホン酸、長鎖アルキル硫酸エステル、高級アルコール硫酸エステル、高級アルコールエーテル硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキロール硫酸エステル、高級脂肪酸アミドアルキル化硫酸エステル、硫酸化脂肪、スルホ琥珀酸エステル、樹脂酸アルコール硫酸、及びこれらすべての塩化合物などが挙げられ、必要に応じて複数を組み合わせてもよい。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、イソプロピルベンゼンスルホン酸、しょうのうスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、モノブチルフェニルフェノール硫酸、ジブチルフェニルフェノール硫酸、ドデシル硫酸、ナフテニルアルコール硫酸等が挙げられる。またこれらの硫黄酸はその構造中になんらかの官能基を有していてもよい。
界面活性効果を有する有機硫黄酸としては、上記に有機硫黄酸として記載されたもののうち、炭素数7以上20以下のアルキル基又はアルキレン基を有する有機硫黄酸が挙げられ、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ドデシル硫酸等が好ましく例示できる。
【0035】
前記重縮合工程における硫黄酸の使用量は、重縮合成分の総重量に対し、0.05重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。
硫黄酸の使用量が上記範囲内であると、十分な触媒活性を発揮することができるので好ましい。
【0036】
前記重縮合工程における反応温度は150℃以下であることが好ましく、70℃以上150℃以下であることがより好ましく、75℃以上140℃以下であることがさらに好ましい。
【0037】
前記重縮合工程における重縮合反応は、バルク重合、乳化重合、懸濁重合等の水中重合、溶液重合、界面重合等一般の重縮合法で実施することが可能であるが、好適にはバルク重合、水中重合、又は、溶液重合が用いられる。また、大気圧下で反応が可能であるが、高分子量化等を目的とした場合、減圧、窒素気流下等の一般的な条件を広く用いることができる。
【0038】
前記重縮合工程における重縮合反応では、水系媒体を用いて行ってもよい。
本発明に用いることのできる水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水や、エタノール、メタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの中でも、エタノールや水であることが好ましく、蒸留水及びイオン交換水等の水が特に好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、水系媒体には、水混和性の有機溶媒を含んでいてもよい。水混和性の有機溶媒としては、例えば、アセトンや酢酸等が挙げられる。
【0039】
<有機溶剤>
前記重縮合工程における重縮合反応では、有機溶剤を用いて行ってもよい。
本発明に用いることができる有機溶剤の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、p−クロロトルエン等のハロゲン系溶媒、3−ヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン系溶媒、ジブチルエーテル、アニソール、フェネトール、o−ジメトキシベンゼン、p−ジメトキシベンゼン、3−メトキシトルエン、ジベンジルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、メトキシナフタレン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、フェニルスルフィド、チオアニソール等のチオエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、安息香酸メチル、フタル酸メチル、フタル酸エチル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶媒、ジフェニルエーテル、又は、4−メチルフェニルエーテル、3−メチルフェニルエーテル、3−フェノキシトルエン等のアルキル置換ジフェニルエーテル、又は、4−ブロモフェニルエーテル、4−クロロフェニルエーテル、4−ブロモジフェニルエーテル、4−メチル−4’−ブロモジフェニルエーテル等のハロゲン置換ジフェニルエーテル、又は、4−メトキシジフェニルエーテル、4−メトキシフェニルエーテル、3−メトキシフェニルエーテル、4−メチル−4’−メトキシジフェニルエーテル等のアルコキシ置換ジフェニルエーテル、又は、ジベンゾフラン、キサンテン等の環状ジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル系溶媒が挙げられ、これらは、混合して用いてもよい。そして、溶媒として容易に水と分液分離できるものが好ましく、特に平均分子量の高いポリエステルを得るためにはエステル系溶媒、エーテル系溶媒及びジフェニルエーテル系溶媒がより好ましく、アルキル−アリールエーテル系溶媒及びエステル系溶媒が特に好ましい。
【0040】
さらにまた、本発明において、平均分子量の高い多分岐型ポリエステルポリオールを得るため、有機溶剤に脱水、脱モノマー剤を加えてもよい。脱水、脱モノマー剤の具体例としては、例えば、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A、モレキュラーシーブ13X等のモレキュラーシーブ類、アルミナ、シリカゲル、塩化カルシム、硫酸カルシウム、五酸化二リン、濃硫酸、過塩素酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、あるいは水素化カルシウム、水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム等の金属水素化物、又は、ナトリウム等のアルカリ金属等が挙げられる。中でも、取扱い及び再生の容易さからモレキュラーシーブ類が好ましい。
【0041】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法に使用することができる装置としては、特に制限はなく、公知慣用のものが使用できる。
【0042】
(樹脂粒子分散液)
本発明の樹脂粒子分散液は、本発明の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む樹脂粒子が分散媒に分散していることを特徴とする。
本発明の樹脂粒子分散液は、静電荷像現像トナー用樹脂粒子分散液として好適に用いることができる。
本発明の樹脂粒子分散液は、樹脂粒子が水系媒体中にメジアン径0.05μm以上2.0μm以下で乳化分散している樹脂粒子分散液であることが好ましい。
また、本発明の樹脂粒子分散液は、本発明の製造方法により多分岐型ポリエステルポリオールを得た後、多分岐型ポリエステルポリオールを水系媒体中に分散、粒子化することにより得ることが好ましい。
また、本発明の樹脂粒子分散液は、後述する製造方法により製造することが好ましい。
【0043】
本発明の樹脂粒子分散液における樹脂粒子には、樹脂成分として、本発明の多分岐型ポリエステルポリオール以外に、他の重縮合樹脂や付加重合性樹脂、重縮合樹脂と付加重合性樹脂とが化学的に結合及び/又は機械的に分子鎖が絡み合った重縮合樹脂/付加重合性樹脂の重合体を含んでいてもよい。
【0044】
重縮合に用いる重縮合性単量体としては、例えば、ポリカルボン酸、ポリオール、及び、ポリアミンが挙げられる。重縮合樹脂としては、例えば、ポリエステル、及び、ポリアミド等が好ましく例示できるが、特に、重縮合性単量体としてポリカルボン酸とポリオールと含んだものを用いて得られたポリエステルであることが好ましい。
本発明において、重縮合樹脂は重縮合性単量体、それらのオリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選ばれる少なくとも1種を重縮合して得られるが、これらの中でも重縮合性単量体を使用することが好ましい。
他の重縮合樹脂の作製には、公知の重縮合触媒を用いることができるが、硫黄酸を用いて作製することが特に好ましい。
【0045】
付加重合性樹脂の作製に使用する付加重合性単量体としては、カチオン重合性単量体及びラジカル重合性単量体が挙げられるが、ラジカル重合性単量体であることが好ましい。
ラジカル重合性単量体としては、スチレン系単量体類、不飽和カルボン酸類、アクリレート類、N−ビニル化合物類、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル化合物類、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、多官能アクリレート類等が挙げられる。なお、これらの中で、N−置換不飽和アミド類、共役ジエン類、多官能ビニル化合物類、及び、多官能アクリレート類等は、生成された重合体に架橋反応を生起させることもできる。これらを、単独で、あるいは組み合わせて使用できる。
前記付加重合性単量体、特にラジカル重合性単量体は、その重合法としてラジカル重合開始剤を用いる方法、熱による自己重合、紫外線照射を用いる方法、既知の重合方法を用いることができる。この場合、ラジカル開始剤を用いる方法としてラジカル開始剤は、特に制限はなく、公知のものを使用することができ、また、油溶性、水溶性のものがあるがどちらの開始剤を使用しても構わない。
【0046】
重縮合樹脂と付加重合性樹脂とが化学的に結合及び/又は機械的に分子鎖が絡み合った重縮合樹脂/付加重合性樹脂の重合体は、例えば、前記重縮合性単量体及び付加重合性単量体を共に分散させた単量体粒子の分散液に対し、重縮合及び付加重合を行うことにより作製することができる。重縮合触媒及び重合触媒を使い分けることにより、例えば、重縮合性単量体の重縮合を先に行い、次いで付加重合性単量体の付加重合を行うこともできる。
【0047】
本発明の樹脂粒子分散液における樹脂粒子の重量平均分子量は、1,000以上1,000,000以下の範囲であることが好ましい。
また、本発明の樹脂粒子分散液における樹脂粒子は、平均して、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールを0.5重量%以上100重量%以下含有していることが好ましく、0.7重量%以上95重量%以下含有していることがより好ましい。
【0048】
<樹脂粒子分散液の製造方法>
次に、以上述べた本発明の樹脂粒子分散液を製造する方法について説明する。
本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、該多分岐型を水系媒体中に分散する分散工程を含む製造方法である。
また、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法は、前記多分岐型ポリエステルポリオールを得る重縮合工程後、付加重合性単量体に溶解した後、分散、さらに付加重合を行い樹脂粒子を形成する重合工程を含む製造方法であってもよい。
【0049】
前記多分岐型ポリエステルポリオールを水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、強制乳化法、自己乳化法、転相乳化法など、既知の方法からも選択することができる。これらのうち、乳化に要するエネルギー、得られる乳化物の粒径制御性、安定性等を考慮すると、転相乳化法が好ましく適用される。
自己乳化法、転相乳化法等に関しては、「超微粒子ポリマーの応用技術(シーエムシー出版)」に記載されている。
【0050】
前記分散工程において有機溶剤を用いた場合、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法として、少なくとも有機溶剤の一部を除去する工程、及び、樹脂粒子を形成する工程を含んでいてもよい。
例えば、多分岐型ポリエステルポリオールの含有物を乳化後、有機溶剤の一部を除去することにより粒子として固形化するのが好ましい。固形化の具体的方法としては、前記ポリエステルの含有物を水系媒体中に乳化分散した後、溶液を撹拌しながら空気、あるいは窒素等の不活性ガスを送り込みながら、気液界面での有機溶剤の乾燥を行う方法(廃風乾燥法)、又は、減圧下に保持し必要に応じて不活性ガスをバブリングしながら乾燥を行う方法(減圧トッピング法)、さらには、多分岐型ポリエステルポリオール含有物を水系媒体中に乳化分散した乳化分散液若しくは多分岐型ポリエステルポリオール含有物の乳化液を細孔からシャワー状に放出し、例えば、皿状の受けに落としこれを繰り返しながら乾燥させる方法(シャワー式脱溶剤法)などがある。使用する有機溶剤の蒸発速度、水への溶解度などからこれら方式を適時選択、あるいは組み合わせて脱溶剤を行うのが好ましい。
【0051】
また、前記多分岐型ポリエステルポリオールを水系媒体中に分散、粒子化する方法としては、例えば、前記ポリエステルの製造を行う際に、水系媒体中で懸抱重合法、溶解懸濁法、ミニエマルジョン法、マイクロエマルジョン法、多段膨潤法やシード重合を含む乳化重合法などの方法も挙げられる。
また、この場合、重縮合反応、重合反応、特に最終分子量や重合速度が粒子の最終粒子径に依存することから、最も好ましい粒子径形態としての1μmを達成し、しかも効率的な製造を達成することが可能である製造形態としては、ミニエマルジョン法、マイクロエマルジョン法など、1μm以下のサブミクロン粒子をその最終形態とする重合方法がより好ましい。
【0052】
また、本発明の樹脂粒子分散液の製造方法、及び、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法では、重縮合反応を付加重合性単量体の存在下に行うことが可能である。
付加重合性単量体の存在下での重縮合反応を良好に行わせるためには、前記分散工程において、多分岐型ポリエステルポリオールを付加重合性単量体中に溶解又は分散した後、当該付加重合性単量体を水系媒体中で乳化分散等により分散させることが好ましい。
【0053】
ここで、水系媒体中での重合に際し、重合前の単量体成分に加え、後述する着色剤、離型剤等を予め混合しておくことも可能である。こうすることにより、着色剤や離型剤(ワックス)を取り込んだ形で樹脂粒子を作製することが可能となる。
【0054】
また、分散工程においては、本発明の多分岐型ポリエステルポリオールや付加重合性単量体を含有する油相の平均粒子径を特定の範囲に保つために、共界面活性剤を併用することができ、その共界面活性剤としては、水不溶性若しくは難溶性で且つ単量体可溶性であり、詳細については後述する、従来公知の“ミニエマルジョン重合”において用いられているものを用いることができる。
【0055】
好適な前記共界面活性剤の例としては、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の炭素数8以上30以下のアルカン類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数8以上30以下のアルキルアルコール類;ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数8以上30以下のアルキル(メタ)アクリレート類;ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等の炭素数8以上30以下のアルカンチオール類;及び、その他、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂又はポリアダクト類、カルボン酸類、ケトン類、アミン類等が挙げられる。
【0056】
また、分散工程においては、粒子エマルジョンを形成することとなるが、粒子エマルジョンをなすには、例えば、共界面活性剤を加えた単量体溶液と、界面活性剤の水溶液とを、ピストンホモジナイザー、マイクロ流動化装置(例えば、マイクロフルー、ディックス社製「マイクロフルーダイザー」)、超音波分散機等の剪断混合装置によって均一に混合し、乳化させることができる。その際、水に対する単量体の仕込み量は、水との合計量に対して0.1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、また、界面活性剤の使用量は、形成されるエマルジョンの存在下において臨界ミセル濃度(CMC)未満とすることが好ましい。また共界面活性剤の使用量は、単量体100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上40重量部以下の範囲、さらに好ましくは0.1重量部以上10重量部以下の範囲とする。
【0057】
なお、臨界ミセル濃度(CMC)未満の界面活性剤量及び共界面活性剤の併用による単量体エマルジョンの重合開始剤の存在下での該単量体の重合は、例えば、P.L.Tang,E.D.Sudol,C.A.Silebi,M.S.El−Aasser;J.Appl.Polym.Sci.,第43巻,1059頁(1991)等に記載されている、所謂“ミニエマルジョン重合”として知られており、臨界ミセル濃度(CMC)以上の界面活性剤量の存在下での、数μm程度の粒径の単量体粒子の水性エマルジョンを水溶性重合開始剤を用いて重合させる従来の乳化重合が、界面活性剤ミセル内で重合を開始し、単量体粒子からの単量体の拡散による供給を受けて重合体粒子が成長し形成されるのに対して、“ミニエマルジョン重合”では、単量体粒子内で単量体が重合することから均一な重合体粒子が形成され、またさらに、多分岐型ポリエステルポリオール/付加重合型樹脂の重合体の“ミニエマルジョン重合”では、重合過程において単量体の拡散が不要なことから、多分岐型ポリエステルポリオールはそのまま重合体粒子内に存在し得る利点を有する。
【0058】
また、例えば、J.S.Guo,M.S.El−Aasser,J.W.Vanderhoff;J.Polym.Sci.:Polym.Chem.Ed.,第27巻,691頁(1989)等に記載されている、粒子径5nm以上50nm以下の粒子の所謂“マイクロエマルジョン重合”は、本発明における“ミニエマルジョン重合”と同様の分散構造及び重合機構を有するものであるが、“マイクロエマルジョン重合”では、臨界ミセル濃度(CMC)以上の界面活性剤を多量に使用するものであり、得られる重合体粒子中に多量の界面活性剤が混入するとか、あるいは、その除去のために水洗浄、酸洗浄、或いはアルカリ洗浄等の工程に多大な時間を要する等の問題が存在する。
【0059】
本発明においては、単量体の分散液を形成するために、多分岐型ポリエステルポリオールと液体又は固体の付加重合性単量体とが混合され、その混合物が水相に分散されることが好ましい。該付加重合性単量体が室温において固体である場合には、多分岐型ポリエステルポリオールと混合するために、その融点より高温まで加熱してよい。同様のことは多分岐型ポリエステルポリオールが室温において固体である場合にも当てはまる。
【0060】
また、多分岐型ポリエステルポリオール/付加重合性単量体混合物は、水相中に分散された場合に1,000nm以下の体積平均粒径を有する小滴を形成する条件の下で水相に分散される。このように形成された小滴の体積平均粒径は、50nm以上500nm以下の範囲が好ましく、70nm以上350nm以下の範囲がより好ましく、70nm以上250nm以下の範囲がさらに好ましく、200nmまでの体積平均粒径を有することが特に好ましい。
【0061】
前記要求とされる小滴サイズを生じさせるためには、高剪断混合技術、例えば均質化(ホモジナイゼーション)又は高圧衝突混合(インピンジメントミキシング)が有用である。適当な高剪断衝突混合装置は、Microfluidics Corporationから利用可能なマイクロフルイダイザー乳化機(MICROFLUIDIZER(登録商標) emulsifier)である。そのような混合装置は、米国特許第4,533,254号に記載されている。超音波混合も適当である。電気エネルギーを高周波機械エネルギーに変換する電気分散機及び超音波破砕機も使用し得る。さらに、機械分散装置、例えばIKA、OMNI型混合機も、多分岐型ポリエステルポリオール/付加重合性単量体混合物を水相に分散させるために使用することができる。
【0062】
一方、本発明における分散工程において、水相には粒子を安定化する界面活性剤を含有することが好ましい。油滴の不安定性は、一般にはブラウン衝突及び該小滴からの単量体の拡散によって生じ、ここで該単量体は再び核となって新たな粒子を形成するか又は既存の粒子を膨潤させる。ブラウン衝突による不安定性は、小滴の表面上に界面活性剤層が十分に被覆されることによって減少し得る。単量体の拡散は、適当に小滴が安定化されることと、より小さなサイズの小滴が生じることによって減少し得る。界面活性剤は、比較的疎水性基のみならず比較的親水性基も含有するため、小滴よりも水相に可溶である。その疎水性基は小滴に吸着する一方、親水性基は水相に入り込んで安定化を生じさせる。界面活性剤は、分散された小滴に吸着し、小滴と水相との間の界面張力を5dyn/cm以下まで減少させることが好ましい。
【0063】
前記界面活性剤としては、広範囲の陰イオン系、陽イオン系及び非イオン系界面活性剤が用いられる。陰イオン系及び非イオン系界面活性剤が一般的には好ましい。陰イオン系及び陽イオン系界面活性剤は、一般にそれらが1以上のイオン性(陰イオン性又は陽イオン性)基と疎水性基を含有することによって特徴付けられる。好ましい陰イオン性基としては、カルボン酸基及びスルホン酸基がある。好ましい陽イオン性基としては、アンモニウム基及びホスホニウム基がある。疎水性基は、好ましくは6以上の炭素原子を有する芳香族基、6以上の炭素原子を有する脂肪族基、又は、合計6以上30以下の炭素原子を有する芳香族基及び脂肪族基の組合せ、より好ましくは8以上30以下の炭素原子を有する脂肪族基、又は、合計6以上30以下の炭素原子を有する芳香族基及び脂肪族基の組合せである。
【0064】
好ましい陰イオン系及び陽イオン系界面活性剤は、6以上の炭素原子を有する少なくとも1つの非環式アルキル又はアルケニル基を含む。さらに、この陰イオン系及び陽イオン系界面活性剤は、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレン基を含むオキシアルキレン基のような他の部分を含むことができる。
【0065】
好ましい陰イオン系及び陽イオン系界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、直鎖状ドデシルベンジルスルホネート、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ナトリウムドデシルジフェニルオキシドジスルホネート(sodium dodecyl diphenyl oxide disulfonate)、ナトリウムn−デシルジフェニルオキシドジスルホネート(sodium n−decyl diphenyl oxide disulfonate)、ナトリウムヘキシルジフェニルオキシドジスルホネート(sodium hexyl diphenyl oxide disulfonate)、ドデシルベンゼンスルホン酸、ステアリン酸ナトリウム又はアンモニウム、アビエチン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの種類の市販されている界面活性剤の例としては、Stepan ChemicalからのPolystep(商標)A−15及びBisfot(商標)S−100、DeforestからのDesulf(商標)TLS−40、The Dow Chemical CompanyからのDowfax(商標)2A1、3B2及びC6L、EmkayからのEmkapol(商標)PO−18、HerculesからのDresinate(商標)TX、及びUnion CarbideからのTriton(商標) X−100、X−405及びX−165が挙げられる。
【0066】
<静電荷像現像トナー及びその製造方法>
本発明の静電荷像現像トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、本発明の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む。また、本発明の静電荷像現像トナーは、下記の製造方法により製造されたものであることが好ましい。
本発明の静電荷像現像トナーの製造方法は、少なくとも樹脂粒子分散液を含む分散液中で前記樹脂粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、前記凝集粒子を加熱して融合させる工程を含む静電荷像現像トナーの製造方法であって、前記樹脂粒子分散液が、本発明の樹脂粒子分散液、又は、本発明の製造方法により製造された樹脂粒子分散液であることが好ましい。
【0067】
本発明の静電荷像現像トナーは、例えば、少なくとも、上記本発明の樹脂粒子分散液中の樹脂粒子及び着色剤粒子等を凝集させた後、加熱により融合して得られる。
具体的には、前記のようにして形成された樹脂粒子を凝集(会合)させる既知の凝集法などの粒子凝集融着法により、トナー粒子径及び分布を調整することが可能である。以下に示す乳化重合凝集法では、例えば、本発明において調製した樹脂粒子分散液を、着色剤分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、さらに凝集剤を添加しヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し(凝集工程)、その後樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し(融合工程)、洗浄、乾燥することにより得られる。
【0068】
なおトナー形状は、不定形から球状までのものが好ましく用いられる。また、凝集剤としては界面活性剤の他、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性の特性において望ましい。
【0069】
また前述の凝集工程において、本発明の樹脂粒子分散液、着色剤分散液を混合し予め第一の凝集粒子形成後、さらに本発明の樹脂粒子分散液又は別ポリマー粒子分散液を添加して第一の凝集粒子表面に第二のシェル層を形成することも可能である。またこの例示においては、着色剤分散液を別に調製しているが、当然樹脂粒子に予め着色剤が配合されてもよい。
【0070】
ここで、凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。また、例えば、樹脂の乳化重合、顔料の分散、樹脂粒子の分散、離型剤の分散、凝集、凝集粒子の安定化などに界面活性剤を用いることができる。具体的には硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤、アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン系界面活性剤、またポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的であり、分散手段としては、回転せん断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを使用できる。
【0071】
本発明において、前記凝集工程における凝集法としては、特に限定されるものではなく、従来より静電荷像現像トナーのための乳化重合凝集法において用いられている凝集法、例えば、昇温、pH変化、塩添加等によってエマルジョンの安定性を低減化させてディスパーザー等で撹拌する方法等が用いられる。
【0072】
さらに、凝集工程後、粒子表面からの着色剤の滲出を抑える等の目的で、熱処理を施す等により粒子表面を架橋せしめてもよい。なお、用いられた界面活性剤等は、必要に応じて、水洗浄、酸洗浄、あるいはアルカリ洗浄等によって除去してもよい。
【0073】
本発明のトナーに用いる着色剤としては、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレート、チタンブラックなどの種々の顔料や、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料などを1種単独で又は2種以上を併せて使用することができる。
上記着色剤の使用量は、トナー100重量部に対して、0.1重量部以上20重量部以下の範囲であることが好ましく、0.5重量部以上10重量部以下の範囲が特に好ましい。
【0074】
これらの分散方法としては、任意の方法、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、何ら制限されるものではない。また、これらの着色剤粒子は、その他の粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
【0075】
本発明の静電荷像現像トナーは、必要に応じ磁性体、特性改良剤を含有してもよい。前記磁性体としては、フェライト、マグネタイトを始めとする鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性を示す金属若しくは合金又はこれらの元素を含む化合物、あるいは強磁性元素を含まないが、適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫などのマンガンと銅とを含むホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、又は二酸化クロム、その他を挙げることができる。例えば黒色のトナーを得る場合においては、それ自身黒色であり着色剤としての機能をも発揮するマグネタイトを特に好ましく用いることができる。またカラートナーを得る場合においては、金属鉄などのように黒みの少ないものが好ましい。またこれらの磁性体のなかには着色剤としての機能をも果たすものがあり、その場合には着色剤として兼用してもよい。
これらの磁性体の含有量は、磁性トナーとする場合にはトナー100重量部あたり、20重量部以上70重量部以下の範囲であることが好ましく、40重量部以上70重量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0076】
また、本発明においては、必要に応じて、この種トナーに用いられる帯電制御剤が用いられてもよく、その場合、帯電制御剤の添加は、前記単量体粒子エマルジョンの製造開始時、あるいは重合開始時、又は前記樹脂粒子の凝集開始時等に、水性分散液等として添加することができる。帯電制御剤の添加量としては、単量体又は樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは1重量部以上25重量部以下の範囲、さらに好ましくは5重量部以上15重量部以下の範囲である。
【0077】
その帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン系樹脂等の正荷電性帯電制御剤、又はクロム、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸若しくはアキルサリチル酸やベンジル酸等のヒドロキシカルボン酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等の金属塩や金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物、フェノールアミド化合物等の負荷電性帯電制御剤等、公知のものを用いることができる。
【0078】
また、本発明の静電荷像現像トナーの製造には、必要に応じて、この種トナーに用いられる離型剤としてワックス類を用いてもよく、その場合、離型剤の添加は、前記単量体粒子エマルジョンの製造開始時、あるいは重合開始時、又は前記樹脂粒子の凝集開始時等に、水性分散液等として添加することができる。離型剤の添加量としては、単量体又は樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは1重量部以上25重量部以下の範囲、さらに好ましくは5重量部以上15重量部以下の範囲である。
【0079】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系ワックス、パラフィン系ワックス、水添ヒマシ油、カルナバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、モンタン酸エステル等の高級脂肪酸エステル系ワックス、アルキル変性シリコーン、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリルアルコール等の高級アルコール、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン等、公知のものを用いることができる。
【0080】
さらに本発明の静電荷像現像トナーの製造方法には、必要に応じて、この種のトナーに用いられる酸化防止剤、紫外線吸収剤等の公知の各種内添剤が用いられてもよい。
【0081】
本発明の静電荷像現像トナーの体積平均粒径D50は3.0μm以上9.0μm以下の範囲であることが好ましく、3.0μm以上5.0μm以下の範囲であることがより好ましい。D50が3.0μm以上であると、付着力が適度であり、現像性に優れるため好ましい。また、9.0μm以下であると、画像の解像性に優れるため好ましい。
【0082】
また、得られるトナーの体積平均粒度分布指標GSDvは1.30以下であることが好ましい。GSDvが1.30以下であると、解像性に優れ、トナー飛散やカブリ等の画像欠陥が起こりにくいため好ましい。
【0083】
ここで、体積平均粒径D50や平均粒度分布指標は、コールターカウンターTAII(ベックマン−コールター社製)で測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積D16v、累積50%となる粒径を体積D50v、累積84%となる粒径を体積D84vと定義する。これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16V1/2として算出される。
【0084】
得られたトナーの形状係数SF1は、画像形成性の点より100以上140以下の範囲であることが好ましく、110以上135以下の範囲であることがより好ましい。形状係数SF1は次のようにして求められる。まず、スライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像を、ビデオカメラを通じてルーゼックス画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについて、下記式のSF1を計算し、平均値を求めることにより得られたものである。
【0085】
【数1】

式中、MLはトナー粒子の絶対最大長を示し、Aは粒子の投影面積を示す。
これらは、主に顕微鏡画像又は走査電子顕微鏡画像を画像解析装置によって解析することによって数値化される。
【0086】
また、本発明のトナーには、流動性付与やクリーニング性向上の目的で通常のトナーと同様に乾燥した後、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウムなどの無機粒子やビニル系樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態でせん断をかけながらトナー粒子表面に添加して使用することができる。
【0087】
また、水系媒体中にてトナー表面に付着せしめる場合、無機粒子の例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど通常トナー表面の外添剤として使うすべてのものをイオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で分散することにより使用することができる。
【0088】
無機粒子として詳細には、一次粒子径が5nm以上2μm以下の範囲であることが好ましく、5nm以上500nm以下の範囲であることがより好ましい。また、BET法による比表面積は20m2/g以上500m2/g以下の範囲であることが好ましい。トナーに混合される割合は0.01重量%以上5重量%以下の範囲であることが好ましく、0.01重量%以上2.0重量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0089】
このような無機粉末としては、例えば、シリカ粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素などが挙げられるが、シリカ粉末が特に好ましい。
【0090】
なお、ここでいうシリカ粉末はSi−O−Si結合を有する粉末であり、乾式法及び湿式法で製造されたもののいずれもが含まれる。また、無水二酸化ケイ素の他、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛などいずれでもよいが、SiO2を85重量%以上含むものが好ましい。
【0091】
これらシリカ粉末の具体例としては種々の市販のシリカがあるが、表面に疎水性基を有するものが好ましく、例えばAEROSIL R−972、R−974、R−805、R−812(以上、アエロジル社製)、タラックス500(タルコ社製)等を挙げることができる。その他シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル、側鎖にアミンを有するシリコーンオイル等で処理されたシリカ粉末などが使用可能である。
【0092】
<静電荷像現像剤>
本発明の静電荷像現像トナーは、静電荷像現像剤として使用することもできる。この現像剤は、この静電荷像現像トナーを含有することのほかは特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
【0093】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が好ましく挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
なお、静電荷像現像剤における、トナーと、キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。好ましい混合比としては、キャリア100重量部に対して、トナー2重量部以上10重量部以下である。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0094】
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程とを含む画像形成方法であって、前記トナーとして本発明の静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
本発明の画像形成方法としては、上記のような特定のトナーを用いて現像剤を調製し、それを用いて常用の電子写真複写機により静電像の形成及び現像を行い、得られたトナー像を転写紙上に静電転写した上加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により定着して複写画像を形成する。
本発明の画像形成方法は、転写紙上のトナーと加熱ローラとの接触時間が1秒間以内、特に0.5秒間以内であるような高速定着を行う際に特に好ましく用いられる。
【0095】
また、本発明の静電荷像現像剤(静電荷像現像トナー)は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができる。本発明の画像形成方法は、具体的には、例えば、静電潜像形成工程、現像工程、転写工程、及び、クリーニング工程を含む方法であることが好ましい。前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本発明の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
【0096】
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担体上に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤担体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本発明の静電荷像現像トナーを含有する本発明の静電荷像現像剤を含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー画像を転写体上に転写する工程である。
前記定着工程では、加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により、転写紙上に転写したトナー像を定着して複写画像を形成する。
本発明の静電荷像現像トナーは、転写紙上のトナーと加熱ローラとの接触時間が1秒間以内、特に0.5秒間以内であるような高速定着を行う画像形成プロセスに特に好ましく用いられる。
前記クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する静電荷像現像剤を除去する工程である。
【0097】
本発明の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【0098】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、静電潜像保持体と、該静電潜像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、該帯電手段により帯電させられた該保持体の表面に、画像情報に応じて露光することにより静電潜像を形成する露光手段と、該静電潜像を現像剤により現像してトナー像を形成させる現像手段と、該トナー像を該保持体から被記録材に転写する転写手段とを有し、必要に応じて定着基材上のトナー像を定着する定着手段とを有する。上記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。
【0099】
上記静電潜像保持体、及び、上記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。
上記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本発明で用いる画像形成装置は、上記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本発明で用いる画像形成装置は上記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【実施例】
【0100】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、これらの実施例に本発明が限定されるものではない。実施例中「部」とあるのは、特に断りがない限り重量部を表す。
なお、本実施例のトナーは、下記の樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製し、これを所定の割合で混合し撹拌しながら、金属塩の重合体を添加し、イオン的に中和させて凝集粒子を形成した。次いで、無機水酸化物を添加して系内のpHを弱酸性から中性に調整した後、前記樹脂粒子のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して融合・合一を行った。反応終了後、十分な洗浄、固液分離、乾燥の工程を経て所望のトナーを得たる。以下、それぞれの調製方法、及び、各特性値の測定方法を説明する。
【0101】
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定>
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの値は、ゲル・パーミュエーション・クロマトグラフィ(GPC)によって、以下に記す条件で重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。温度40℃において、溶媒(テトラヒドロフラン)を毎分1.2mlの流速で流し、濃度0.2g/20mlのテトラヒドロフラン試料溶液を試料重量として3mg注入し、測定を行った。また、試料の分子量測定にあたっては、当該試料の有する分子量が数種の単分散ポリスチレン標準試料により、作製された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択するものとする。
なお、測定結果の信頼性は、上述の測定条件で行ったNBS706ポリスチレン標準試料が、
重量平均分子量Mw=28.8×104
数平均分子量Mn=13.7×104
となることにより確認することができる。
また、用いたGPCのカラムとしては、TSK−GEL、GMH(東ソー(株)社製)を用いた。
なお、溶媒及び測定温度は、測定試料にあわせ、適当な条件に変更して行った。
また、本発明の樹脂粒子分散液等において、付加重合型樹脂として芳香族を含むモノマーを用いた場合、分子量をGPCで解析する際、検出器としてUVとRIを分離する装置を後付けし、前記付加重合型樹脂と多分岐型ポリエステルポリオール等との分子量を解析することもできる。
なお、GPC法によるMn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)の測定は、Shodex GPC SYSTEM−21(昭和電工(株)製)を使用して行った。
【0102】
<樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径の測定>
樹脂粒子、着色剤粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−920)で測定した。
【0103】
<樹脂の融点、ガラス転移温度の測定>
樹脂のガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)は、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製:DSC−20)を用い、室温から150℃まで昇温速度10℃/分の条件下で測定することにより求めた。なお、ガラス転移点は吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度とし、融点は吸熱ピークの頂点の温度とした。
【0104】
<環球法による軟化点の測定>
環球法による軟化点は、高化式フローテスター(島津製作所(株)製、CFT−500)を使用し、測定した。測定条件は、昇温速度6℃/分、荷重10kg、ダイス1mmφ×1mmである。軟化点は流動開始温度をもって融点とした。
【0105】
(実施例1:多分岐型ポリエステルポリオール(A−1)の合成)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコ中に、ジメチロールプロピオン酸の454部を仕込み、1時間を要して温度を120℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から140℃まで6時間を要して温度を上げ、140℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、最終的に酸価が2.5mgKOH/g、水酸基価が590mgKOH/g、GPC法による数平均分子量(Mnと略記する。)が2,500で、重量平均分子量(Mwと略記する。)が5,800、Tg=50℃、環球法による軟化点が95℃である多分岐型ポリエステルポリオール(A−1)を得た。これを樹脂(A−1)と略記する。
【0106】
(実施例2:多分岐型ポリエステルポリオール(B−1)の合成)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び精留塔を備えたフラスコに、樹脂(A−1)300部を仕込み、撹拌が可能になるように昇温し、温度を120℃に保った。ついでトリメチロールプロパン110部を加え、さらに1時間をかけて温度を135℃まで昇温し、トルエンスルホン酸1.5部を追加し、さらに同温度で5時間反応させた。その結果、Mnが3,900、Mwが160,000、かつTgが62℃の多分岐型ポリエステルポリオール(B−1)を得た。これを樹脂(B)と略記する。酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が320mgKOH/g、環球法による軟化点が105℃であった。
【0107】
(実施例3:多分岐型ポリエステルポリオール(A−2)の合成)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコ中に、ジメチロールブタン酸の398部を仕込み、1時間を要して温度を130℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、ドデシルベンゼンスルホン酸1.5部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から140℃まで6時間を要して温度を上げ、140℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、最終的に酸価が3.5mgKOH/g、水酸基価が405mgKOH/g、Mnが3,500で、Mwが79,000である多分岐型ポリエステルポリオール(A−2)を得た。これを樹脂(A−2)と略記する。Tg=55℃、環球法による軟化点が115℃であった。
【0108】
(実施例4:多分岐型ポリエステルポリオール(B−2)の合成)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び精留塔を備えたフラスコに、ポリエステル樹脂(A−2)300部を仕込み、撹拌が可能になるように昇温し、温度を120℃に保った。ついでペンタエリスリトールを95部加え、さらに1時間をかけて温度を135℃まで昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸を1.5部加え、さらに同温度で5時間反応させた。その結果、Mnが4500、Mwが98,000、かつTgが66℃の多分岐型ポリエステルポリオール(B−2)を得た。これを樹脂(B−2)と略記する。酸価が0.2mgKOH/g、水酸基価が450mgKOH/g、環球法による軟化点が109℃であった。
【0109】
(比較例1:スズ触媒を用いて合成した例)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコ中に、リンゴ酸の541部を仕込み、1時間を要して温度を180℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチルスズオキサイド1.5部を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から220℃まで6時間を要して温度を上げ、220℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、最終的に酸価が95mgKOH/g、水酸基価が51mgKOH/g、Mnが3,600で、Mwが198,000、Tgは明確に存在しない、環球法による軟化点が139℃である多分岐型ポリエステルを得た。これを樹脂(C−1)と略記する。
【0110】
(比較例2:スズ触媒を用いて合成した例)
温度計、撹拌機、窒素導入管、及び精留塔を備えたフラスコに、樹脂(C−1)300部を仕込み、撹拌が可能になるように昇温し、温度を190℃に保った。ついでペンタエリスリトールを95部加え、さらに1時間をかけて温度を200℃まで昇温し、ジブチルスズオキサイドを1.5部加え、さらに同温度で5時間反応させた。その結果、Mnが3,800、Mwが70,000、かつTgなしの多分岐型ポリエステルを得た。これを樹脂(C−2)と略記する。酸価が109mgKOH/g、水酸基価が33mgKOH/g、環球法による軟化点が136℃であった。
【0111】
(樹脂粒子分散液実施例1:樹脂粒子分散液L−1の作製)
樹脂(A−1) 100重量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1重量部
スチレン 10重量部
ブチルアクリレート 2重量部
上記成分をリアクターに投入し、撹拌器70rpm、95℃で溶解した。これに95℃の温水を少しずつ加えながら乳化を行った。さらに、開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.5重量部を加え、70℃で4時間重合を行い、樹脂粒子分散液D−1を作製した。光散乱式粒度分布測定装置によるD50は250nmであった。
【0112】
上記樹脂粒子分散液にイオン交換水を加えて、分散液中の固形分濃度を40%に調整した。この樹脂粒子分散液をL−1とした。
なお、固形分濃度は、3gの分散液を秤量し、130℃で30分加熱して水分を揮発させ、残留した乾燥物の質量から算出した。
【0113】
(樹脂粒子分散液実施例2乃至4)
前記樹脂粒子分散液L−1の作製方法と同様の方法で、樹脂粒子分散液L−1における樹脂をA−1から、B−1,A−2,B−2にそれぞれ変更した以外は全て同じにして、樹脂粒子分散液L−2乃至L−6を作製した。
【0114】
(樹脂粒子分散液比較例1:樹脂粒子分散液L−5の作製)
樹脂(C−1) 100重量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 10重量部
スチレン 10重量部
ブチルアクリレート 2重量部
上記成分をリアクターに投入し、撹拌器70rpm、95℃で溶解した。これに95℃の温水を少しずつ加えながら乳化をおこなった。さらに、開始剤としてAPS0.5重量部を加え、70℃で4時間重合を行い、樹脂粒子分散液D−5を作製した。光散乱式粒度分布測定装置によるD50は890nmであった。
上記樹脂粒子分散液にイオン交換水を加えて、分散液中の固形分濃度を40%に調整した。この樹脂粒子分散液をL−5とした。
【0115】
(樹脂粒子分散液比較例2:樹脂粒子分散液L−6の作製)
前記樹脂粒子分散液L−5の作製方法と同様の方法で、樹脂粒子分散液L−5における樹脂をC−1からC−2に変更した以外は全て同じにして、樹脂粒子分散液L−6を作製した。
【0116】
(比較例3:ポリエステルポリオール(C−3)の合成)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えたフラスコ中に、ジメチロールプロピオン酸の454部を仕込み、1時間を要して温度を120℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、酸化ジブチル錫触媒を1.3部投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から240℃まで6時間を要して温度を上げ、250℃でさらに3時間脱水縮合反応を継続し、最終的に酸価が25.0mgKOH/g、水酸基価が159mgKOH/g、GPC法による数平均分子量(Mnと略記する。)が4800で、重量平均分子量(Mwと略記する。)が16900、Tg=19℃、環球法による軟化点が71℃であるポリエステルポリオール(C−3)を得た。これを樹脂(C−3)と略記する。
【0117】
(樹脂粒子分散液比較例3:樹脂粒子分散液L−7の作製)
前記樹脂粒子分散液L−5の作製方法と同様の方法で、樹脂粒子分散液L−5における樹脂をC−1からC−3に変更した以外は全て同じにして、樹脂粒子分散液L−7を作製した。
得られた樹脂粒子分散液L−7中の樹脂粒子の平均粒径D50は1,200nmであった。
【0118】
<樹脂粒子分散液における平均粒径D50の評価基準>
○:500nm以下
△:500nmを超え700nm未満
×:700nm以上
○を合格とした。
【0119】
<樹脂粒子分散液(ラテックス)の保存安定性の評価基準>
300ccのガラス瓶に作製したラテックスを150cc入れ、85℃の恒温槽中に20週間放置した。20週間後のラテックスの保存安定性を以下で判断した。評価基準は以下の通りである。なお、○を合格とした。
○:沈降、分離無く良好な分散性を示す。かつ、樹脂分散液を77μmメッシュでろ過した時に全く凝集物が残っていない。
△:やや分離が見られる。メッシュ上に残った凝集物が固形分量に対し、0.1重量%以上1.5重量%以下である。
×:沈降、分離あり。メッシュ上に残った凝集物が1.5重量%を超える。
【0120】
実施例1乃至4、比較例1乃至3で作製した樹脂粒子分散液の物性を表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
(離型剤粒子分散液(W1)の調製)
・ポリエチレンワックス(東洋ペトロライト社製、Polywax725、融点:103℃) 30部
・カチオン性界面活性剤(花王社製、サニゾールB50) 3部
・イオン交換水 67部
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で95℃に加熱しながら十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザー)で分散処理し、離型剤粒子分散液(W1)を調製した。得られた分散液中の離型剤粒子の個数平均粒子径D50nは310nmであった。その後イオン交換水を加えて、分散液の固形分濃度を30%に調整した。
【0123】
(マゼンタ顔料分散液(M1)の調製)
・マゼンタ顔料(大日精化工業社製、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドン)) 20部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 2部
・イオン交換水 78部
【0124】
上記成分をホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、3,000rpmで2分間、顔料を水になじませ、さらに5,000回転で10分間分散後、通常の撹拌器で1昼夜撹拌させて脱泡した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで約1時間分散させてマゼンタ顔料分散液(MN1)を得た。分散液中の顔料の数平均粒子径D50nは106nmであった。その後イオン交換水を加えて分散液の固形分濃度を15%に調整した。
【0125】
(マゼンタトナー(トナーM1)の作製)
・樹脂粒子分散液L−1 160部
・離型剤粒子分散液(W1) 33部(トナーに対して10%)
・マゼンタ顔料分散液(M1) 60部(トナーに対して9%)
・ポリ塩化アルミニウム10%水溶液(浅田化学社製、PAC100W) 15部
・1%硝酸水溶液 3部
【0126】
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて5,000rpmで3分間分散した後、前記フラスコに磁力シールを有した撹拌装置、温度計とpH計を具備した蓋をしてから、加熱用マントルヒーターをセットし、フラスコ中の分散液全体が撹拌される最低の回転数に適宜調節して攪拌しながら、48℃まで1℃/1minで加熱し、48℃で30分間保持し、凝集粒子の粒径をコールターカウンター(ベックマン−コールター社製、TA II)で確認した。
【0127】
昇温停止後、直ちに樹脂粒子分散液L−1を50部追加し、30分間保持したのち、系内のpHが6.5になるまで水酸化ナトリウム水溶液を加えてから、1℃/1minで97℃まで加熱した。昇温後、硝酸水溶液を加えて系内のpHを5.0にして、10時間保持して凝集粒子を加熱融合した。この後、系内を50℃まで降温し、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12.0に調節して10分間保持した。その後フラスコから取り出し、イオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄した後、さらに固形分量が10%となるようにイオン交換水中に分散し、硝酸を加えてpH3.0で10分間撹拌した後、再びイオン交換水を用いて充分にろ過、通水洗浄して得られたスラリーを凍結乾燥してマゼンタトナー粒子を得た。
【0128】
マゼンタトナー粒子の体積平均粒径D50Vは5.5μmであった。このトナー粒子の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナーの形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ125であり、形状の分布もとくに見られなかった。
【0129】
前記マゼンタ着色粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、それぞれ1%づつ添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、マゼンタトナー(トナーM1)を作製した。
【0130】
(トナーM2の作製)
前記マゼンタトナー粒子の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−2に変えた以外は同様にしてトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径D50Vは6.6μmであった。このトナー粒子の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナーの形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ128であり、形状の分布もとくに見られなかった
本トナー粒子にトナーM1と同様に外添剤を外添しトナーM2を得た。
【0131】
(トナーM3の作製)
前記トナーM1の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−3に変えた以外は同様にしトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径D50Vは5.4μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナーの形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ134であり、形状の分布もとくに見られなかった。
本トナー粒子にマゼンタトナーと同様に外添剤を外添し、トナーM3を得た。
【0132】
(トナーM4の作製)
前記トナーM1の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−4に変えた以外は同様にしてブラックトナー粒子を得た。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤が狙い通り融合されており、穴や凹凸などは見られず、顔料の分散状態も良好であった。また、このトナー粒子の形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ132であり、形状の分布もとくに見られなかった。
本トナー粒子にマゼンタトナーと同様に外添剤を外添し、トナーM4を得た。
【0133】
(トナーM5の作製)
前記トナーM1の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−5に変えた以外は同様にしてトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径D50Vは11.3μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤融合されおらず、穴や凹凸などは見られた。また表面も荒れていた。顔料の分散状態も良く無い。また、このトナー粒子の形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ132であり、形状の分布も見られた。
本トナー粒子にマゼンタトナーと同様に外添剤を外添し、トナーM5を得た。
【0134】
(トナーM6の作製)
前記M1トナー粒子の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−6に変えた以外は同様にしてトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径D50Vは17.6μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤融合されおらず、穴や凹凸などは見られた。また表面も荒れていた。顔料の分散状態も良く無い。また、このトナー粒子の形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ133であり、形状の分布も見られた。
本トナー粒子にマゼンタトナーと同様に外添剤を外添し、トナーM6を得た。
【0135】
(トナーM7の作製)
前記M1トナー粒子の作製において、樹脂粒子分散液L−1を樹脂粒子分散液L−7に変えた以外は同様にしてトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径D50Vは12.6μmであった。このトナーの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、樹脂、顔料及びその他添加剤融合されおらず、穴や凹凸などは見られた。また表面も荒れていた。顔料の分散状態も良く無い。また、このトナー粒子の形状係数SF1をルーゼクス画像解析装置で測定したところ149であり、形状の分布も見られた。
本トナー粒子にマゼンタトナーと同様に外添剤を外添し、トナーM7を得た。
【0136】
(キャリアの作製)
体積平均粒子径40μmのCu−Znフェライト粒子100部に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.1部を含有するメタノール溶液を添加し、ニーダーで被覆した後、メタノールを留去し、さらに120℃で2時間加熱して上記シラン化合物を完全に硬化させた。この粒子に、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体(共重合比40:60)をトルエンに溶解させたものを添加し、真空減圧型ニーダーを使用してパーフルオロオクチルエチルメタクリレート−メチルメタクレート共重合体のコーティング量が0.5%となるように樹脂被覆型キャリアを製造した。
【0137】
(現像剤D1乃至D4の作製)
トナーM1を4部を、得られた樹脂被覆型キャリア100部に混合して、マゼンタ色現像用の静電荷像現像剤を作製し、これを実施例の現像剤として使用した。
【0138】
(評価)
−定着特性−
画像形成装置としてDocuCentreColor F450(富士ゼロックス社製)を用い、現像剤として二成分現像剤を用いることができるよう現像器部分を改造し、現像剤D1を搭載して画像形成を行い定着特性を評価した。すなわち、前記画像形成装置の定着装置を取り外し、画像形成後、未定着画像として排出できるようにした。この未定着画像を用いて定着テストを行い、下記の方法により最低定着温度(定着可能な加熱ローラの最低温度)、オフセット発生温度(オフセット現象が生ずる最低温度)を測定した。
【0139】
<最低定着温度>
上記画像形成装置にて、64g/m2の転写紙に未定着画像を作成した後、表層がテフロン(登録商標)で形成された直径30mmの熱ローラと、表層がシリコーンゴムで形成された圧着ローラとよりなる定着器により、トナー像を線速度300mm/秒、線圧0.8kg/cm、ニップ幅4.9mmで定着せしめる操作を、熱ローラの設定温度を80℃から240℃の範囲内で5℃づつ段階的に高くして各温度において繰り返し、形成された定着画像に対してキムワイプ摺擦を施し、十分な耐摺擦性を示す定着画像となる最低の設定温度をもって最低定着温度とした。なお、ここに用いた定着器はシリコーンオイル供給機構を有さないものである。なお、定着ロールは表層がPFAチューブであり、定着器はオイルレス仕様のものである。
【0140】
上記のようにして決定される最低定着温度を以下の基準により評価し、○を合格とした。
110℃以下・・・・・・・・・・・○
110℃を超え120℃以下・・・・△
120℃を超え130℃以下・・・・×
【0141】
<ホットオフセット発生温度>
オフセット発生温度の測定は、最低定着温度の測定に準ずるが、上記画像形成装置にて未定着画像を作成した後、トナー像を転写して上述の定着器により定着処理を行い、次いで白紙の転写紙を同様の条件下で定着器に送ってこれにトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する操作を、前記定着器の熱ローラの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返し、トナーによる汚れの生じた最低の設定温度をもってオフセット発生温度とした。画像はハーフトーンの画像を用いた。なお、ハーフトーン部でのオフセット発生温度は原稿画像の面積率35%で測定し、通常のオフセット発生温度は、高原稿画像の面積率で測定した。
【0142】
上記のようにして決定されるオフセット発生温度について、以下の基準により評価した。なお、○を合格とした。
230℃以上・・・・・・・・・・○
210℃以上230℃未満・・・・△
180℃以上210℃未満・・・・×
【0143】
−耐ブロッキング性−
耐ブロッキング性テスト(保存性)は、温度51℃、相対湿度43%RHの環境条件下に2時間放置して凝集塊が生ずるか否かに、以下の基準により評価した。なお、○を合格とした。
凝集塊なし・・・・○
凝集塊発生・・・・×
【0144】
−現像剤流動性−
現像剤の流動性は、現像器内の現像剤を目視にて判定し、実用レベルにあるものを良好とした。
【0145】
−フィルミング性−
フィルミング性は、キャリアや感光体表面を観察し、付着物の有無により判定した。評価の環境は28℃、85%RHとし、フィルミングは走行試験30,000枚後の評価とした。
付着物なし・・・・○
付着物あり・・・・×
【0146】
−クリーニング性−
クリーニング性は、クリーニング部材により感光体の表面をクリーニングした後の感光体表面を観察し、付着物の有無により判定した。
評価の環境は28℃、85%RHとし、クリーニング性はは走行試験30,000枚後の評価とした。
付着物なし・・・・○
付着物あり・・・・×
【0147】
−画質維持性の評価−
前記DocuCentreColor F450改造機により、ブレードクリーニング法での10万枚連続走行試験を行い、以下の判断基準により画質維持性を評価した。
評価の環境は28℃、85%RHとした。
◎:初期の良好な画質を完全に維持している。
○:若干の変化はあるが良好に維持している。
△:画像欠陥はあるが、許容可能。
×:画像欠陥が見られ画質上での問題あり(例えば、クリーニング不良や感光体フィルミングによる背景部汚れ、筋などの発生)。
【0148】
(現像剤D2乃至D7の作製、評価)
トナーM1の代わりに、トナーM2乃至M7を用いた以外は全て同じにし、現像剤D1と同様にして、現像剤D2乃至D7を作製し、これを用いて、実施例1と同様に評価を行った。
結果を表2にまとめて示す。
【0149】
【表2】

【0150】
本発明の多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法によって調製された多分岐型ポリエステルポリオールを用いた静電荷像現像トナーは、定着下限温度と非オフセット上限温度の範囲が広く、低い温度でも高い定着強度が得られるため複写機等の高速化に適している。また、得られた画像の品質も良好なため、極めて実用性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒として硫黄酸を用い、ヒドロキシ基、カルボキシル基及びこれらを保護した基を合計3以上有するヒドロキシ酸及び/又はその保護体を少なくとも重縮合する工程を含むことを特徴とする
多分岐型ポリエステルポリオールの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む樹脂粒子が分散媒に分散している樹脂粒子分散液。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法により製造された多分岐型ポリエステルポリオールを少なくとも含む静電荷像現像トナー。
【請求項4】
少なくとも樹脂粒子分散液を含む分散液中で前記樹脂粒子を凝集して凝集粒子を得る工程、及び、
前記凝集粒子を加熱して融合させる工程を含み、
前記樹脂粒子分散液が、請求項2に記載の樹脂粒子分散液である
静電荷像現像トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の静電荷像現像トナー又は請求項4に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項6】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記潜像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を熱定着する定着工程を含み、
前記トナーとして請求項3に記載の静電荷像現像トナー若しくは請求項4に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー、又は、前記現像剤として請求項5に記載の静電荷像現像剤を用いる
画像形成方法。
【請求項7】
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記潜像保持体を露光して該潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記潜像保持体から被記録材に転写する転写手段とを有し、
前記現像剤として請求項3に記載の静電荷像現像用トナー、請求項4に記載の製造方法により製造された静電荷像現像トナー又は請求項5に記載の静電荷像現像剤を用いる
画像形成装置。

【公開番号】特開2008−203673(P2008−203673A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41390(P2007−41390)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】