説明

多加水パン類の製造法

【課題】本発明は、原材料コストを削減しつつ、製パン性を維持しながら、パン本来のやわらかさを持ち、口どけの良い食感を有するパン類を製造する方法を提供することを目的とする。また、より風味の良いパン類を製造する方法を提供することも目的とする。
【解決手段】コーンペネトロ値が40〜550であるショートニング、マーガリン等のような可塑性油脂組成物に対し水溶性成分をあらかじめ混合させた後、パン生地に添加することを特徴とするパン類の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料コストを削減しつつ、製パン性を維持しながら、パン本来のやわらかさを持ち、口どけの良い食感を有するパン類を製造する方法に関する。また、より風味の良いパン類を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、厳しい市場環境の中、消費者からは低価格商品が求められており、製パン業界もコストダウン対策として、製造工程、原材料の見直しなどが図られている。
【0003】
製造工程の見直しとして、生産コストの削減を行うために生産ラインの更なる合理化が進められており、原材料の計量、添加作業などは人力による方法から機械による自動化に切り替えられている。これに伴い、練り込み用油脂も従来用いられている可塑性のショートニング、マーガリンから機械計量、添加の容易な流動状の油脂へ転換することが要望されている。
【0004】
たとえば、特許文献1に開示されているように、液体油に特殊な乳化剤などを添加した液体マーガリンが考案されている。しかしながら、これらの油脂は液状、流動性を持たせるために、製パン性にとって重要な要素である油脂の可塑性を犠牲にしており、満足のいく製パン性が得られていない。もし、これらの液体マーガリンに十分に満足のいく製パン性が得られていれば、現在、もっと多くの液体マーガリンが使用されているはずであるが、普及されているとは言いがたい結果となっている。
【0005】
また、原材料の見直しとして、低級の原材料を使用するという方法もあるが、風味、食感に厳しい消費者を満足させることができず、かえって、市場を失う結果ともなりかねない。これに対し、もっとも安価な原材料である「水」の配合比率を多くする方法が検討されている。一般に言う「多加水パン」であるが、単純に加水量を多くすると、パン生地がだれてしまいパンの食感を損なうことになる。この改善のために、さまざまな方法が考案されている。たとえば、特許文献2では、こんにゃく粉、澱粉、多糖類が使用された製パン法が示されているが、こんにゃく粉などは保水性が高く、パンの焼成中での水分の蒸発が均一とならず、食感の悪いパンとなる可能性がある。
【0006】
なお、特許文献3に、トレハロースを加えた油中水型乳化物を用いたパンが開示されているが、この油中水型乳化物はいわゆるマーガリン等の可塑性油脂組成物であり、これにさらに水を加えて多加水パンを製造することおよび製パンのコストダウンを図ることは開示されていない。また、可塑性油脂組成物に、製パン時の作業温度帯で水溶性成分を混合することも開示されていない。この文献はトレハロースを配合した可塑性油脂組成物によりパン類の品質を改良する発明を開示するものである。
【0007】
さらに、特許文献4に、水相と油相からなる油中水型乳化物を用いたパンが開示されているが、この油中水型乳化物も特許文献3同様、いわゆるマーガリン等の可塑性油脂組成物であり、これにさらに水を加えて多加水パンを製造することおよび製パンのコストダウンを図ることは開示されていない。また、可塑性油脂組成物に、製パン時の作業温度帯で水溶性成分を混合することも開示されていない。この文献は呈味剤を配合した可塑性油脂組成物によりパンの風味を改良する発明を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−262212号公報
【特許文献2】特開2006−320207号公報
【特許文献3】特開2002−153208号公報
【特許文献4】特開2003−289801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、原材料コストを削減しつつ、製パン性を維持しながら、パン本来のやわらかさを持ち、口どけの良い食感を有するパン類を製造する方法を提供することを目的とする。また、より風味の良いパン類を製造する方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、コーンペネトロ値が40〜550であるショートニング、マーガリン等の可塑性油脂組成物を調製し、この可塑性油脂組成物に対し、水溶性成分をあらかじめ混合させた後、パン生地に添加することでパン生地をだれさせることなく、風味、食感が良好で、かつ安価なパン類を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)コーンペネトロ値が40〜550である可塑性油脂組成物に水溶性成分をあらかじめ混合させた後、パン生地に添加することを特徴とするパン類の製造法、
(2)可塑性油脂組成物と混合する水溶性成分の比率が、可塑性油脂組成物100重量部に対し水溶性成分が50〜500重量部であることを特徴とする(1)の製造法、
(3)可塑性油脂組成物に使用する乳化剤が、不飽和系グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびポリグリセリンエルカ酸エステルから選択される1以上の乳化剤を含む、(1)または(2)の製造法、
(4)可塑性油脂組成物との混合時に、水溶性成分が加熱されていないことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1の製造法、
(5)水溶性成分が水、野菜ジュース、フルーツジュース、黒糖液、茶抽出液からなる群から選択される1以上の成分である(1)〜(4)のいずれか1の製造法、
(6)(1)〜(5)のいずれか1の製造法によって製造されたパン類、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパン類の製造方法を用いることにより、製パン性を維持しながら、パン本来のやわらかさを持ち、風味、口どけの良い食感を有するパン類を安価に製造することができる。また、水溶性成分を加熱せずに、製パン時の作業温度帯で可塑性油脂に混合するため、加工油脂会社にて製造される乳化油脂組成物とは違って高温度にさらされることがなく、加熱による風味劣化を起こすことなくパン生地に添加できるという効果も得られる。
【0013】
さらに、最近では野菜ジュース等の栄養成分を添加したパンが販売されているが、野菜成分にはパンのグルテン物性に悪影響を及ぼす物質も多く存在し、野菜ジュース等の添加量を制限するか、乳化剤などの生地改良剤の添加が必要となってくる。しかしながら、本発明のパン類の製造方法では、野菜ジュースのような水溶性成分を直接パン生地に添加しないため、野菜ジュース等の添加量の制限もなく、必要以上の生地改良剤を添加することもなく風味の良いパン類を製造することができる。
【0014】
また、餡、ジャム等を包餡した生地の場合、保存中に餡、ジャム等にパン生地中の水分が移動し、パンが固くなることがあるが、本発明の製造法にて得られたパン生地は生地中の水分を高めているため水分移動が起こったとしてもパンが固くならず、柔らかい状態を維持できるという効果も得られる。同様に、レーズンパン等でも保存中にレーズンの周りが固くなるという現象が現れるが、本発明の製造方法によれば、このような現象を抑える効果も得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のパン類の製造方法は、特有のコーンペネトロ値を有するショートニング、マーガリン等の可塑性油脂組成物に対し水溶性成分をあらかじめ混合させた後、パン生地に添加することを特徴とする。
【0016】
本発明でいうパン類とは、食パン、サンドイッチ用食パン、菓子パン、ロールパン(テーブルロール、バターロール、バンズ等)、バラエティーブレッド(レーズンパン、胚芽パン等)、イーストドーナツ、デニッシュペストリー、クロワッサン、蒸しパン、肉まん、餡まん等のパン類全般を意味するが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明でいうパン生地とは、小麦粉を主原料とし、これに必要に応じて食塩等の調味料、卵、乳製品等の呈味性分、香料、着色料、油脂類、糖類、イースト、イーストフード等の1種または2種以上の原材料を適宜添加し、さらに水と混合して得られるパン生地一般を意味する。
【0018】
本発明で用いられる可塑性油脂組成物のコーンペネトロ値は、40〜550である。コーンぺネトロ値が40未満では、油脂が固く、水溶性成分が油脂組成物内に完全に給水されず、製パン性に好ましくない影響を与える。また、550を超えると、油脂が柔らか過ぎて可塑性に劣り、同様に製パン性に好ましくない影響を与える。好ましいコーンペネトロ値の例は、50〜500、70〜450、90〜400、100〜400、120〜350、150〜300などである。周囲温度5〜40℃、好ましくは10〜40℃さらに好ましくは10〜35℃で上記コーンペネトロ値を示すことが好ましい。
【0019】
本発明における、水溶性成分の混合量は、可塑性油脂組成物100重量部に対して、水溶性成分を50〜500重量部とすることが好ましい。さらに好ましい例は、可塑性油脂組成物100重量部に対して、水溶性成分70〜400重量部、100〜300重量部、100〜250重量部、100〜200重量部、200〜500重量部、250〜500重量部、300〜500重量部などである。
【0020】
本発明の可塑性油脂組成物の調製の際に用いられる油脂は、動物性、植物性のいずれでもよく、液状油、またはそれらに水素添加した硬化油、エステル交換油、または分別油等幅広く使用することができる。例として、動物油としては牛脂、豚脂、魚油が挙げられ、植物油としては大豆油、コーン油、菜種油、米油、パーム油、ヤシ油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油などが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられる乳化剤は特に限定されず、例としてグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、分別大豆レシチン、卵黄レシチン、分別卵黄レシチンなどが挙げられる。中でも、不飽和系グリセリン脂肪酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリンエルカ酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。これらの乳化剤は、単独または2種類以上混合して使用することができる。
好ましい乳化剤の含量の例は、可塑性油脂組成物に対し0.05〜10%、0.05〜5%、0.05〜1%、0.05〜0.5%、0.05〜0.25%、0.1〜0.45%、5〜10%、7.5〜10%などである。
【0022】
本発明で用いられる水溶性成分の例は、水;グルコース、マルトース、ラクトース等の単糖類、グルコース、フラクトース等の二糖類、ラフィノース、マルトペンタオースなどのオリゴ糖、ポリデキストロース、イヌリン等の水溶性多糖類、もしくは澱粉加水分解物、およびこれらを還元した糖アルコール類などから選択される1種または2種以上を含む液糖類;にんじん、ほうれん草、かぼちゃ、トマト、キャベツなどの野菜類を含む野菜ジュースもしくはソース;りんご、柑橘類、ぶどう等のフルーツ類を含むフルーツジュースもしくはソース;牛乳、生クリームなどの乳製品;緑茶、紅茶などの茶抽出液;ならびにコーヒーなどが挙げられる。さらに、カスタードクリーム、フラワーペースト、チョコレートソースおよび黒糖液等の菓子材料、酵母エキス、魚介エキスおよび肉エキス等の食用エキスも挙げられる。上記に挙げられた各成分を2種類以上混合してもよい。さらに、これらにアミノ酸、酢、醤油等の調味料を適宜加えてもよい。本発明では、水溶性成分に可塑性油脂組成物製造時の加熱がかからず、製パン時のみの加熱にとどまるため、熱に弱い風味や成分を有するものについて特に効果が高い。
【0023】
本発明で用いられる可塑性油脂組成物は、公知の方法により、油脂、乳化剤を混合、溶解し、コンビネーター、ボテーター等で急冷練り合わせることで製造でき、必要に応じて乳製品、香料、低味料、着色料、酸化防止剤等の各種添加物を添加してもよい。
【0024】
コーンペネトロ値は、AOCS公定法(Cc16−60)に規定されたものである。
【0025】
可塑性油脂組成物への吸水は、可塑性油脂組成物に水溶性成分を添加し、ミキサー等で撹拌することにより行われる。この際の可塑性油脂組成物が所望のコーンペネトロ値を示すことが重要である。このため、可塑性油脂組成物と水溶性成分の温度は5〜40℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは10〜35℃であることが好ましい。さらに、作業時の周囲温度もこの温度であることが好ましい。
【0026】
本発明のパンの製造法は、本発明の可塑性油脂組成物をパン生地の混捏時に添加するものであり、中種法、ストレート法等いずれの製パン法にも適用できる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例、比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。特に断りのない限り、部は重量基準を表す。
【0028】
<可塑性油脂組成物の調製>
可塑性油脂組成物1〜4
表1に示した配合に従い、油脂、乳化剤を60℃以上にて加熱溶解して油相を調製し、水、香料、脱脂粉乳を混合して水相を調製した。油相に水相を徐々に添加し、油中水型乳化にて乳化しコンビネーターにて急冷練り合わせし、油中水型の可塑性油脂組成物を1〜4を調製した。
可塑性油脂組成物5、6
表1に示した配合に従い、油脂、乳化剤を60℃以上にて加熱溶解後、コンビネーターにて急冷練り合わせし、可塑性油脂組成物5、6を調製した。
【0029】
<コーンペネトロ値の測定>
上記方法にて調製された可塑性油脂組成物を10〜40℃の各温度にて保管し、コーンペネトロメーター(安田精機製作所社製)を用いてコーンペネトロ値を測定した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

*1太陽化学社製、サンソフト No.8070(グリセリンオレイン酸エステル)
*2三菱化学フーズ社製、ER−290(ショ糖エルカ酸エステル)
*3太陽化学社製、サンソフト 818−SX
(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)
*4三菱化学フーズ社製、ER−60D(ポリグリセリンエルカ酸エステル)
*5日清オイリオ社製、レシチンPX
【0031】
<吸水した可塑性油脂組成物の調製>
油脂組成物A
上記可塑性油脂組成物3を、20℃(コーンペネトロ値:120)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を200部添加吸水させ、油脂組成物Aを調製した。
【0032】
油脂組成物B
上記可塑性油脂組成物3を、10℃(コーンペネトロ値:40)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を200部添加吸水させ、油脂組成物Bを調製した。
【0033】
油脂組成物C
上記可塑性油脂組成物1を、35℃(コーンペネトロ値:350)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を250部添加吸水させ、油脂組成物Cを調製した。
【0034】
油脂組成物D
上記可塑性油脂組成物1を、40℃(コーンペネトロ値:550)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を250部添加吸水させ、油脂組成物Dを調製した。
【0035】
油脂組成物E
上記可塑性油脂組成物6を、20℃(コーンペネトロ値:190)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を250部添加吸水させ、油脂組成物Eを調製した。
【0036】
油脂組成物F
上記可塑性油脂組成物4を、20℃(コーンペネトロ値:140)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し水を500部添加吸水させ、油脂組成物Fを調製した。
【0037】
油脂組成物G
上記可塑性油脂組成物2を、20℃(コーンペネトロ値:135)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し野菜ジュース(商品名:野菜生活100 オリジナル、カゴメ社製)を200部添加吸水させ、油脂組成物Gを調製した。
【0038】
油脂組成物H
上記可塑性油脂組成物5を、20℃(コーンペネトロ値:165)に調温して2日間保管し、20コートミキサー(関東混合機工業社製)にて撹拌しながら、可塑性油脂組成物100部に対し黒糖液(市販品)を100部添加吸水させ、油脂組成物Hを調製した。
【0039】
上記にて得られた油脂組成物A〜Hを使用して、パンを調製した。
【0040】
実施例1〜4
表2に示す配合に基づいて、表3に示す工程により、実施例1〜4のパンを製造した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
実施例5、6
表4に示す配合に基づいて、表5に示す工程により、実施例5、6のパンを製造した。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
実施例7、比較例1
表6に示す配合に基づいて、表7に示す工程により、実施例7、比較例1のパンを製造した。
【0047】
【表6】


【0048】
【表7】

【0049】
実施例8、比較例2
表8に示す配合に基づいて、表9に示す工程により、実施例8、比較例2のパンを製造した。
【0050】
【表8】

【0051】
【表9】

【0052】
<生地の評価>
実施例1〜8、比較例1〜2の製造時のパン生地の状態を評価した。結果を表10に示す。表中の「◎」、「○」、「×」は以下のように判定されたことを示す。
◎:良好
○:ややべたつくが許容範囲
×:かなりべたつく
【0053】
<食感の官能評価>
実施例1〜8、比較例1〜2のそれぞれのパンを2cm幅でスライスした後、直ちにビニール袋で包み、20℃で保存した。保存後、1日または3日の期間をおいて、10名のパネラーに食してもらい、食感について官能評価試験を行った。結果を表10に示す。表中の「◎」、「○」、「△」、「×」は、10名のパネラーによる総合評価に基づいて、以下のように判定されたことを示す。
◎:非常にソフトでしっとりした良好な食感
○:ソフトで、ややしっとりした食感
△:ソフトだが、ややぱさつく食感
×:ソフトさを感じない
【0054】
【表10】

【0055】
表10に示すとおり、コーンペネトロ値40〜550の可塑性油脂組成物に水溶性成分を混合して調製した実施例1〜4のパンは、良好または許容される生地状態、食感を示した。可塑性油脂組成物100部に対して、水をそれぞれ250部、500部吸水させた実施例5、6は良好な生地状態、食感を示した。可塑性油脂組成物にあらかじめ野菜ジュース、黒糖液をそれぞれ混合して生地に添加した実施例7、8は良好な生地状態、食感を示したが、可塑性油脂組成物と別に野菜ジュース、黒糖液をそれぞれ生地に添加した比較例1、2は生地状態がかなりべたつき、食感も良くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上記載したごとく、本発明は原材料コストを削減しつつ、製パン性を維持しながら、パン本来のやわらかさを持ち、口どけの良い食感を有するパン類を製造する方法を提供するものであり、製パン、製菓等の食品分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンペネトロ値が40〜550である可塑性油脂組成物に水溶性成分をあらかじめ混合させた後、パン生地に添加することを特徴とするパン類の製造法。
【請求項2】
可塑性油脂組成物と混合する水溶性成分の比率が、可塑性油脂組成物100重量部に対し水溶性成分が50〜500重量部であることを特徴とする請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
可塑性油脂組成物に使用する乳化剤が、不飽和系グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルおよびポリグリセリンエルカ酸エステルから選択される1以上の乳化剤を含む、請求項1または2に記載の製造法。
【請求項4】
可塑性油脂組成物との混合時に、水溶性成分が加熱されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項5】
水溶性成分が水、野菜ジュース、フルーツジュース、黒糖液、茶抽出液からなる群から選択される1以上の成分である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法によって製造されたパン類。