説明

多周波二重通信サーキュレータ

【課題】デュプレクサおよびサーキュレータの機能が統合され、GSM1800MHz、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzのシステム間において、多周波数帯域および多チャンネルでのデータ統合を行うことができる多周波二重通信サーキュレータを提供する。
【解決手段】本発明は、3周波二重通信サーキュレータと称し、メタマテリアルのEBGの性質に基づき製作される一種の新型のマイクロ波回路である。先ず、従来の単層のマッシュルーム構造をサスペンデッドマイクロストリップ線路の理論と組み合わせることにより、多層構造にする。これにより、多周波のEBGの性質を有し、回路を縮小することができる。次に、3つの2周波EBG回路を環状に直列接続し、適当なインピーダンス整合の後、3周波二重通信サーキュレータが完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーキュレータに関し、特に、ノッチ(notch)フィルタを有する多周波二重通信サーキュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
システム統合技術は、無線システムの発展に重要な貢献をもたらした。各種の通信規格の統合が可能な無線通信システムは、近年、積極的に研究されている。様々な通信規格を統合できる機能を持つ回路設計技術は、積極的に応用されている最も優れた技術の1つである。現在、最もよく見られる回路設計としては、以下に示すものが存在する。
【0003】
図1を参照する。図1は、従来のデュプレクサ(Duplexer)10aを示す模式図である。デュプレクサ10aは、第1のポート101a、第2のポート102aおよび第3のポート103aを有する。第1のポート101aは、第1の周波数f1aを受信し、第2の周波数f2aを出力する。第2のポート102aは、第1の周波数f1aを出力する。第3のポート103aは、第2の周波数f2aを受信する。即ち、デュプレクサ10aは、双方向通信機能を有するが、周波数分割機能は有さない。
【0004】
図2を参照する。図2は、従来のダイプレクサ(Diplexer)10bを示す模式図である。ダイプレクサ10bは、第1のポート101b、第2のポート102bおよび第3のポート103bを有する。第1のポート101bは、第1の周波数f1bおよび第2の周波数f2bを受信する。第2のポート102bは、第1の周波数f1bを出力する。第3のポート103bは、第2の周波数f2bを出力する。即ち、ダイプレクサ10bは、周波数分割機能を有するが、双方向通信機能は有さない。
【0005】
即ち、図1および図2に示すデュプレクサ10aおよびダイプレクサ10bは、双方向通信または周波数分割の何れか1つの機能しか達成できない。即ち、双方向通信機能を有する回路は、周波数分割機能を同時に有することができない。また、周波数分割機能を有する回路は、双方向通信機能を同時に達成できない。この原因は、これらのマイクロ波回路が従来の設計に限定される上、包括的でない整合ネットワークを使用することによる。
【0006】
図3を参照する。図3は、従来の3つの入出力ポートを有するサーキュレータ(circulator)10cを示す。図4は、逆時計回りでのサーキュレータ10cの入出力の行列[S]を示す図である(時計回りは贅言しない)。入力は、行列[S]の横軸であり、出力は、行列[S]の縦軸である。このサーキュレータ10cは、現在の通信システムにおいてよく見られる回路であり、信号を密閉系において伝達するが、単一周波数での操作しかできないため、現在の通信システムの需要を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、双方向通信機能および周波数分割機能を同時に達成する上、サーキュレータのループ伝送機能を有し、GSM1800MHz、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzを含む3種類の通信システムの信号の送受信を統合するのに使用することができ、3つのシステム相互間でのデータ伝送を可能にする多周波二重通信サーキュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を達成するために、本発明の多周波二重通信サーキュレータは、少なくとも、第1の入出力ポート、第2の入出力ポート、第3の入出力ポート、第1のフィルタ、第2のフィルタ、第3のフィルタおよび伝送線路を含む。第1の入出力ポート、第2の入出力ポートおよび第3の入出力ポートは、閉ループ接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多周波二重通信サーキュレータは、双方向通信機能および周波数分割機能を同時に達成する上、サーキュレータのループ伝送機能を有し、GSM1800MHz、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzを含む3種類の通信システムの信号の送受信を統合するのに使用することができ、3つのシステム相互間でのデータ伝送を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のデュプレクサを示す模式図である。
【図2】従来のダイプレクサを示す模式図である。
【図3】従来のサーキュレータを示す模式図である。
【図4】図3のサーキュレータの入出力の行列を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態によるサーキュレータを示す模式図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるサーキュレータを示す模式図である。
【図7】本発明の3周波二重通信サーキュレータを示す模式図である。
【図8】本発明の3つのSパラメータの行列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的、特徴および効果を示す実施形態を図面に沿って詳細に説明する。
【0012】
図5を参照する。図5は、本発明の一実施形態によるサーキュレータを示す模式図である。入力信号は、1800MHz、2.45GHzおよび3.5GHzから選択される(これらのみに限定されず、当該技術を熟知する者は、変更することができる)。本実施形態では、3ポート環状マイクロ波回路20を示す。第1のポート201は、GSM1800MHzおよびWiFi2.45GHzの入出力ポートである。第2のポート202は、GSM1800MHzおよびWiMAX3.5GHzの入出力ポートである。第3のポート203は、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzの入出力ポートである。図5に示すように、第1のポート201と第2のポート202との間の閉ループの伝送線路204のサブ経路上に、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzのノッチ回路とされる第1のフィルタ207が配置される。同様に、第1のポート201と第3のポート203との間の伝送線路204のサブ経路上に、GSM1800MHzおよびWiMAX3.5GHzのノッチ回路とされる第2のフィルタ208が配置される。また、第2のポート202と第3のポート203との間の伝送線路204のサブ経路上に、GSM1800MHzおよびWiFi2.45GHzのノッチ回路とされる第3のフィルタ209が配置される。
【0013】
上述のノッチ回路は、二層のマッシュルーム構造からなるのが好ましい。
【0014】
図6を参照する。図6は、本発明の他の実施形態による3ポート環状マイクロ波回路30を示す。第1のポート301は、GSM1800MHzおよびWiFi2.45GHzの入出力ポートである。第2のポート302は、GSM1800MHzおよびWiMAX3.5GHzの入出力ポートである。第3のポート303は、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzの入出力ポートである。
【0015】
図6に示すように、第1のポート301と第2のポート302との間の閉ループの伝送線路304のサブ経路上の適合する位置に、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzのEBG(electromagnetic band−gap)回路307とされる2層のマッシュルーム構造が配置され、回路全体のインピーダンス整合とされる。同様に、第1のポート301と第3のポート303との間の伝送線路のサブ経路上の適合する位置に、GSM1800MHzおよびWiMAX3.5GHzのEBG回路308が配置され、回路全体のインピーダンス整合とされる。また、第2のポート302と第3のポート303との間の伝送線路のサブ経路上の適合する位置に、GSM1800MHzおよびWiFi2.45GHzのEBG回路309が配置され、回路全体のインピーダンス整合とされる。
【0016】
上述の適合する位置は、EBG回路307,308,309の両隣の入出力ポートが受信する信号の四分の一の波長の正の整数倍から選択されるのが好ましい。
【0017】
閉ループの伝送線路304および2層のマッシュルーム構造は、3つの基板上にそれぞれ配置され、3つの基板間は、空気層を有するのが好ましい。
【0018】
閉ループの伝送線路304は、マイクロストリップ(micro−strip)構造であるのが好ましい。
【0019】
閉ループの伝送線路304の形状は、方形、三角形、円形などの幾何学形状から選択されるのが好ましい。
【0020】
マッシュルーム構造は、金属からなるのが好ましい。
【0021】
上記金属の寸法により、3ポート環状マイクロ波回路30のインピーダンス整合が決定されるのが好ましい。
【0022】
図7を参照する。図7は、本発明の3周波二重通信サーキュレータ40の全体構造を示す模式図である。第1のポート401と第2のポート402との間に、2.45GHzおよび3.5GHzの2周波EBG回路407が配置される。従って、GSM1800MHzの信号のみが通過する。即ち、第1のポート401と第2のポート402との間は、GSM1800MHzの信号チャンネルである。第1のポート401と第3のポート403との間は、1.8GHzおよび3.5GHzの2周波EBG回路408であるため、WiFi2.45GHzの信号のみが通過する。即ち、第1のポート401と第3のポート403との間は、WiFi2.45GHzの信号チャンネルである。また、第1のポート401に接続される2つの2周波EBG回路407,408は、何れも3.5GHzの周波数帯域を含むため、WiMAX3.5GHzの信号は阻止され、第1のポート401から第2のポート402および第3のポート403に伝送することができない。また、第2のポート402および第3のポート403も第1のポート401にWiMAX3.5GHzの信号を伝送できない。即ち、第1のポート401は、WiMAX3.5GHzの分離ポート(isolated port)と称することができる。
【0023】
同様に、第2のポート402および第3のポート403にもそれぞれ2つの2周波EBG回路が接続される。第2のポート402は、GSM1800MHzの信号を第1のポート401に伝達し、WiMAX3.5GHzの信号を第3のポート403に伝達することしかできない。第3のポート403は、WiFi2.45GHzの信号を第1のポート401に伝達し、WiMAX3.5GHzの信号を第2のポート402に伝達することしかできない。即ち、第2のポート402は、WiFi2.45GHzの信号の送受信ができず、第3のポート403は、GSM1800MHzの信号の受送信ができない。即ち、第2のポート402は、WiFi2.45GHzの分離ポートであり、第3のポートは、GSM1800MHzの分離ポートである。
【0024】
インピーダンス整合の関係から、3周波二重通信サーキュレータ40の素子間隔は、EBG回路407,408,409の両隣の入出力ポートが受信する信号の四分の一の波長の正の整数倍の中から選択される。例えば、閉ループの伝送線路404の経路が2.3cm半径の円形のとき、EBG回路407と両隣の入出力ポートとの距離は、2.639cmおよび5.5cmであり、EBG回路408と両隣の入出力ポートとの距離は、4.203cmおよび2.1cmであり、EBG回路409と両隣の入出力ポートとの距離は、3.91cmおよび2.786cmである(これのみに限定されない)。
【0025】
3周波二重通信サーキュレータの全てのSパラメータをまとめ、3つのSパラメータ行列により、このマイクロ波回路の特性を描写する。図8を参照する。当該技術に熟知する者であれば、図8に示すSパラメータ行列から、GSM1800MHz、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzの3種類の操作周波数帯域の下での回路特性は、様々なモード下での操作に都合が良いことが分かる。即ち、3ポート環状マイクロ波回路を3種類の異なる周波数帯域の電気通信規格の統合したいシステムが交わる部分に配置し、システム統合を行う整合回路として使用することができる。3ポート環状マイクロ波回路は、GSM1800MHz、WiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzの三種類のシステムに配置することができ、第1のポートにGSM1800MHzおよびWiFi2.45GHzのシステムを接続し、第2のポートにGSM1800MHzおよびWiMAX3.5GHzのシステムを接続し、第3のポートにWiFi2.45GHzおよびWiMAX3.5GHzのシステムを接続することにより、3つのシステム相互間でのデータ伝送を可能にする。同様の概念から、他の電気通信規格に配置することができ、この概念をさらなる多周波に拡張することができる。
【0026】
以上の説明は、本発明の好適な実施例を示したものであり、本発明の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の明細書および図面を運用した簡易な修飾および同等効果の変更は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
10a デュプレクサ
101a 第1のポート
102a 第2のポート
103a 第3のポート
10b ダイプレクサ
101b 第1のポート
102b 第2のポート
103b 第3のポート
[S] 行列
20 3ポート環状マイクロ波回路
201 第1のポート
202 第2のポート
203 第3のポート
204 伝送線路
207 第1のフィルタ
208 第2のフィルタ
209 第3のフィルタ
30 3ポート環状マイクロ波回路
301 第1のポート
302 第2のポート
303 第3のポート
304 伝送線路
307 EBG回路
308 EBG回路
309 EBG回路
40 3周波二重通信サーキュレータ
401 第1のポート
402 第2のポート
403 第3のポート
404 伝送線路
407 EBG回路
408 EBG回路
409 EBG回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力ポートと、
第2の入出力ポートと、
第3の入出力ポートと、
第1のフィルタと、
第2のフィルタと、
第3のフィルタと、
前記第1の入出力ポート、前記第2の入出力ポートおよび前記第3の入出力ポートを閉ループ接続する伝送線路と、を含み、双方向通信を行うことを特徴とする多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項2】
前記各フィルタと前記各入出力ポートとの間の距離は、前記各入出力ポートが受信する信号の四分の一の波長の正の整数倍であることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項3】
前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタおよび前記第3のフィルタは、2層のマッシュルーム構造であることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項4】
前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタおよび前記第3のフィルタは、EBG構造であることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項5】
前記閉ループの伝送線路および前記2層のマッシュルーム構造は、3つの基板上にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項3記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項6】
前記閉ループの伝送線路および前記2層のマッシュルーム構造がそれぞれ配置される3つの基板間は、空気層を有することを特徴とする請求項5記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項7】
第Nの入出力ポートおよび第Nのフィルタをさらに含み、前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタ、前記第3のフィルタおよび前記第Nのフィルタは、N−1層のマッシュルーム構造であり、前記Nは、3より大きい整数であることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項8】
前記閉ループの伝送線路は、マイクロストリップ構造であることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項9】
前記閉ループの伝送線路の形状は、方形、三角形、円形などの幾何学形状から選択されることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項10】
前記第1の入出力ポート、前記第2の入出力ポートおよび第3の入出力ポートの入力信号は、1800MHz、2.45GHzおよび3.5GHzから選択されることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項11】
前記マッシュルーム構造は、金属からなることを特徴とする請求項3記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項12】
前記金属の寸法が前記サーキュレータのインピーダンス整合を決定することを特徴とする請求項11記載の多周波二重通信サーキュレータ。
【請求項13】
前記第1のフィルタ、前記第2のフィルタおよび前記第3のフィルタは、ノッチフィルタであることを特徴とする請求項1記載の多周波二重通信サーキュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−188466(P2011−188466A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107166(P2010−107166)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】