説明

多回路開閉器

【課題】手動駆動機構部、自動駆動機構部の両方の保守点検を別々にでき、又、小型化ができるとともに、組み付け作業に時間を要しない多回路開閉器を提供する。
【解決手段】気中多回路開閉器は手動駆動機構部40を含む手動駆動機構ユニットUhを回路開閉部の前方に配置する。投入コイルと、可動接触子の投入状態を保持するラッチ機構と、ラッチ機構のラッチを解除するトリップ機構を含む自動駆動機構部90を備えた自動駆動機構ユニットUaを回路開閉部の上方に配置する。手動駆動機構部40の駆動力を主軸に伝達する伝達機構Dを設け、自動駆動機構部90と手動駆動機構部40に対し、両者から取り外し可能に取着されて、自動駆動機構部90の駆動力を手動駆動機構部40に伝達する連結部材85を設ける。連結部材85により、自動駆動機構部90の駆動力を手動駆動機構部40及び伝達機構Dを介して伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多回路開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多回路開閉器は、複数の分岐回路用開閉器と、幹線用開閉器とを内装し、操作ハンドルによる手動操作と、電磁ソレノイドを使用して自動操作を可能にした構成を備えている。この多回路開閉器は、道路等に地上設置されることから、できるだけ小型化が求められている。なお、分岐回路用開閉器と、幹線用開閉器の開閉器を単に回路開閉部ということがある。
【0003】
この種の多回路開閉器では、特許文献1の多回路開閉器が知られている。特許文献1では、自動操作用の電磁ソレノイドを含む自動駆動機構と手動操作用のリンク機構とを一体的に組み付け、両操作による駆動力を回路開閉部の可動電極用駆動軸に伝達するようにしている。そして、特許文献1では、自動駆動機構と手動駆動機構であるリンク機構とを回路開閉部の上方において、一体に配置するようにしている。
【特許文献1】登録実用新案第2576153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、自動駆動機構部及び手動駆動機構部を回路開閉部を一体にした場合両者が一体となって組み付けられているため、両機構部の別々の保守点検ができず、一方の調整を行えば、他方の調整をし直したりする必要があり、煩雑な作業を繰り返し行う必要があった。又、自動駆動機構部及び手動駆動機構部を回路開閉部の上方にともに配置すると、必然的に両機構部が積み上げた構成となったりして多回路開閉器の高さが高くなり、小型化が難しい問題があった。さらに、自動駆動機構部及び手動駆動機構部が一体となって組み付けているため、組み付け作業に時間を要する問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、手動駆動機構部、自動駆動機構部の両方の保守点検を別々にでき、又、小型化ができるとともに、組み付け作業に時間を要しない多回路開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、固定接触子と、可動接触子と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して投入開放駆動する主軸を含む回路開閉部を、複数並列させて配置した気中多回路開閉器において、手動操作により前記可動接触子を開閉操作する手動駆動機構部を含む手動駆動機構ユニットを前記回路開閉部の前方に配置し、前記可動接触子を投入作動させるソレノイドと、前記可動接触子の投入状態を保持するラッチ機構と、該ラッチ機構のラッチを解除するトリップ機構を含む自動駆動機構部を備えた自動駆動機構ユニットを前記回路開閉部の上方に配置し、前記手動駆動機構部の駆動力を前記主軸に伝達する伝達機構を設け、前記自動駆動機構部と前記手動駆動機構部に対し、取り外し可能に取着されて、前記自動駆動機構部の駆動力を前記手動駆動機構部に伝達する連結部材を設け、前記自動駆動機構部の駆動力を前記手動駆動機構部及び前記伝達機構を介して伝達することを特徴とする多回路開閉器を要旨とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記手動駆動機構ユニットの手動駆動機構部は、付勢力発生部を含み、手動操作により、前記付勢力発生部の付勢力を発生させて、前記可動接触子を開閉操作し、前記付勢力発生部は、自動駆動機構部からの投入時の駆動力により、回路開閉部の開放時の駆動力を蓄勢することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項請求項1又は請求項2において、前記手動駆動機構部には投入開放時に作動する部材を含み、該部材は、回路開閉部の前方方向に対して直交する面に対して平行な移動軌跡を有するように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、手動駆動機構ユニット及び自動駆動機構ユニット間を連結する連結部材を取り外すことにより、容易に手動駆動機構ユニットの手動駆動機構部に関する保守作業と、自動駆動機構部に関する保守作業を別々に実施できる。 又、請求項1の発明によれば、又、手動駆動機構ユニット及び自動駆動機構ユニットの両ユニットを別位置、すなわち、手動駆動機構ユニットは回路開閉部の前方、自動駆動機構ユニットは回路開閉部の上方に配置していることにより、ソレノイドの配置スペースに自動操作に関連するラッチ機構及びトリップ機構を一体的に配置できる。
【0010】
さらに、請求項1の発明によれば、手動駆動機構ユニットを回路開閉部の前方に配置することにより、従来、手動駆動機構部及び自動駆動機構部を回路開閉部の上方に設けていた従来技術に比較して、回路開閉部の上方のスペースを小さくすることができる。この結果、多回路開閉器の高さを低くできる。
【0011】
又、請求項1の発明によれば、組立作業においては、手動駆動機構ユニットと自動駆動機構ユニットを別々に組立、その後、両者を連結部材で連結する作業により、両ユニットの機構を一体化することができ、作業効率のアップを図ることができる。
【0012】
さらに、請求項1の発明によれば、ラッチ機構及びトリップ機構の調整が自動駆動機構ユニット単体にて可能となるため、調整作業の効率アップも図ることができる。
請求項2の発明によれば、手動操作により、前記付勢力発生部の付勢力を発生させることにより、可動接触子を開閉操作ができる手動駆動機構ユニットを備え、自動駆動機構部からの投入時の駆動力により、回路開閉部の開放時の駆動力を蓄勢する付勢力発生部を備えた多回路開閉器において、請求項1の効果を実現できる。
【0013】
請求項3の発明によれば、手動駆動機構部において、投入開放時に作動する部材が、回路開閉部の前方方向に対して直交する面に対して平行な移動軌跡を有するように配置されているため、回路開閉部の前方に配置された手動駆動機構部の収容スペースを狭くすることができる。すなわち、仮に該移動軌跡が前方方向に沿った面に含まれるように手動駆動機構部において投入開放時に作動する部材を配置すると、手動駆動機構部の収容スペースを前方方向に沿って大きく取る必要があるが、請求項3によれば、このようなことはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜12を参照して説明する。
図1において、歩道等に設置される気中多回路開閉器1の外箱2は、四角箱型に形成され、その前面の開口部3には、図示しない開閉扉が設けられている。外箱2の上下方向において、略中央部よりも上部空間は機械室4とされ、下部空間は、地中配電用のケーブル端末(図示しない)を収納するケーブル接続室5とされている。なお、本明細書では、図1において、左方を左、右方を右、上方を上、及び下方を下とする。
【0015】
機械室4には、複数の(本実施形態では5回路)の回路開閉部10が左右一列に並列配置されるように、外箱2に対して、図1、図2及び図6に示す略四角箱体をなす本体ケース7を介して支持されている。
【0016】
本体ケース7内には、5回路分の開閉器ユニットUが並列した状態で収容固定されている。開閉器ユニットUは、さらに、開閉部ユニットUsと、開閉部ユニットUsの上部に設けられた自動駆動機構ユニットUaと、開閉部ユニットUsの前部、すなわち、回路開閉部10の前方に設けられた手動駆動機構ユニットUhとを備えている。
【0017】
(開閉部ユニットUs)
開閉部ユニットUsについて説明する。
図2、図7に示すように開閉部ユニットUsの内部には、回路開閉部10を構成する3つの開閉部11,12,13が、各相(U相,V相,W相)に対応するように前後方向に並んで設けられている。各相の開閉部11,12,13は、開閉部支持枠15に対して支持されている。開閉部支持枠15は、図7に示すように互いに相対するように所定間隔を隔てて離間されるとともに前後に配置された一対の側板16、17と、両側板16,17の上端を連結する天板14とから構成されている。
【0018】
図2、図4に示すように両側板16,17における左側端の上部間、及び下部間には、一対の支持板18,19がそれぞれ架設されている。
開閉部11,12,13は、互いに所定間隔を隔てて支持板18,19に取付け固定されているところだけが異なるだけで、各部品構成は同じであるため、以下で、開閉部13の構成を説明し、他の開閉部11,12の各構成については、開閉部13の各構成と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0019】
図4に示すように、支持板18には、可動接触子用の支持部材20がボルトにより前後方向に沿って取付け固定されている。又、支持板19には、固定接触子用の支持部材21が、ボルトにより取付固定されている。両支持部材20,21は、絶縁性を有する合成樹脂材料にて形成されている。
【0020】
支持部材20の先端下面から中央部下面にかけて、前後方向の中央には、収納凹部22が形成されている。接続端子23は、該収納凹部22内に下端部が突出するように、支持部材20の先端部に対して貫通固定されている。接続端子23の下端部には、所定間隔を隔てて離間した一対の可動接触子24が軸25にて回動自在に支持されている(図5参照)。両可動接触子24はブレードタイプの可動接触刃に形成され、両可動接触子24の先端下部には、耐弧メタル24aが設けられている。
【0021】
側板16,17の上部間には金属製の主軸28が回動自在に架設されている。主軸28には、可動接触子24と対応する部位は角柱状に形成され、該部位には、絶縁性合成樹脂からなる駆動レバー29が一体となるように取付け固定されている。駆動レバー29は、主軸28に対して外嵌されて取着される取付部29aと、該取付部29aの両端から突出した一対のレバー部29bとからなる。
【0022】
前記駆動レバー29と、可動接触子24の上部において長手方向の中央には絶縁性合成樹脂からなる作動リンク30が連結されている。作動リンク30は、Y字状に形成されており、図5及び図7に示すように、下部が一対の可動接触子24間に挿入されて、可動接触子24に対してピン30aにて回動自在に連結されている。又、作動リンク30の中央部から上部は二股状に分岐されて、一対の分岐部31を有する。なお、この分岐部31間は、貫通空間部としての空間Kとされている。一対の分岐部31は、図5に示すように各レバー部29bの外側面に対してピン32にて回動自在に連結されている。
【0023】
前記駆動レバー29と、作動リンク30とによりリンク機構Lが構成されている。
接続端子23の上端部は、支持部材20の上面に露出されている。そして、各開閉器ユニットUにおいて、支持部材20の上端面には、共通母線35が、ボルト36により締付固定されている。共通母線35は、直線状に延びて配置されており、可動接触子24の移動軌跡を含む平面に平行となるように配置されている。又、共通母線35と主軸28とは絶縁距離Rを隔てて離間されている。
【0024】
すなわち、共通母線35は、金属製の導体からバー状に形成されるとともに、最も右に位置する開閉器ユニットU(図6においては、最も左方に位置する開閉器ユニットU)を除いた開閉器ユニットUにおける作動リンク30の分岐部31に対して無接触状態で空間Kを貫通するように配置されている。空間Kを有する分岐部31は、貫通部に相当する。
【0025】
なお、最も右に位置する開閉器ユニットUとは、図1を基準とした方向であり、図6では、最も右に位置する開閉器ユニットUのことである。
一方、図4に示すように、固定接触子用の支持部材21の先端には、接続端子27が上下に貫通して固定されている。接続端子27の上端部には、固定接触子37が一体に設けられている。固定接触子37は、前記一対の可動接触子24間の離間距離よりも、若干厚みがあるように板状に形成されており、一対の可動接触子24により、挟着されて接離可能な位置に配置されている。固定接触子37において、可動接触子24に対して開閉作動時に相対する面側には耐弧メタル37aが設けられている。又、支持部材21には消弧装置38が取付固定されている。該消弧装置38は、可動接触子24を通過可能としたU字状の切欠部を有する複数の磁性板を可動接触子24の移動方向に沿うように所定間隔毎に積層し、各磁性板を絶縁性を有する支持部材(図示しない)により支持することにより構成されている。該消弧装置38は、可動接触子24が図4の二点差線で示す投入状態から図4の実線で示す開路状態となる際に、可動接触子24と固定接触子37との間に発生するアークを消弧することができる。
【0026】
各相の接続端子27の下端部は、それぞれ接続導体39がボルト39aにて固定されており、接続導体39を介して、本体ケース7の下部前面に突設されたブッシング41に対して接続されている。
【0027】
各ブッシング41は、それぞれ幹線ケーブル、負荷接続ケーブル及び分岐ケーブル(いずれも図示しない))を介して、電力供給源、需要家、及び他の多回路開閉器等(いずれも図示しない)に接続されている。
【0028】
各開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入状態である場合、幹線ケーブルからの電力は1つの各開閉器ユニットU及び共通母線35を介して残りの4つの各開閉器ユニットUにそれぞれ分岐し、分岐ケーブル及び負荷接続ケーブルを介して需要家及び他の多回路開閉器等に供給される。すなわち、5つの各開閉器ユニットUのうち、2つの各開閉器ユニットUは、主回路開閉器として機能し、残りの3つの各開閉器ユニットUは、分岐開閉器として機能する。
【0029】
開閉部ユニットUsの内部には、各相毎に、ボックス状をなす絶縁バリヤ43が取付固定されている。絶縁バリヤ43は、絶縁性の合成樹脂から形成されており、図3(a)及び図7に示すように、前後に位置するとともに上下方向に延びる一対の側壁43a,43bと、側壁43a,43bの上部及び下部を連結する天板43c及び底板43dと、側壁43a,43bの右側部間を閉塞する側壁43eとを有する。そして、絶縁バリヤ43は、左側部が開口されていて、図3(a)に示すように、可動接触子24、消弧装置38、及び、支持部材20、21を覆うように配置されている。
【0030】
又、図6に示すように、側板16、17の左側端面には、板状をなす絶縁バリヤ44が固定されている。絶縁バリヤ44は、絶縁性の合成樹脂から形成されており、隣接する他の各開閉器ユニットUや、本体ケース7との絶縁を図っている。なお、図3(b)では、説明の便宜上、絶縁バリヤ43,44は省略されている。又、図2では、絶縁バリヤ44は省略されている。
【0031】
又、図8(a)に示すように、主軸28は、一端が側板16を貫通して、側板16から前方へ突出した突出端33を備えており、該突出端33には、被動レバー34が固定されている。そして、この被動レバー34を介して、主軸28は、手動駆動機構ユニットUhを構成している手動駆動機構部40により、投入開放が可能であるとともに、自動駆動機構ユニットUaを構成している自動駆動機構部90により、投入開放作動可能である。
【0032】
(手動駆動機構ユニットUh)
次に、主軸28を駆動する手動駆動機構ユニットUhを図8(a)、及び図8(b)を参照して説明する。
【0033】
手動駆動機構ユニットUhの支持板45は、側板16の前面に取り付け固定されている。支持板45の前面側には、図示しない複数の間隔保持部材を介して補助板48が固定されている。支持板45及び補助板48により、基材が構成されている。支持板45及び補助板48には、ハンドル軸49が回動自在に支持されている。ハンドル軸49の前端は、本体ケース7の前壁を貫通して、外部に突出されている。ハンドル軸49の前端は、操作端として、開閉操作ハンドルが着脱自在に取り付け可能とされている。補助板48及びハンドル軸49間において、ハンドル軸49上には、ハンドルリンク50がその長手方向の中央部にて固着されている。ハンドルリンク50の前後両側には、ボルトからなるピン51にて両端を互いに連結された前後一対の作動レバー52がハンドル軸49に対して回動可能に軸着されている。ハンドルリンク50は、支持板45と補助板48間に架橋されたストッパ部材59に対して当接されることにより、投入位置及び開放位置が保持される。すなわち、ハンドルリンク50が図8(b)に示すストッパ部材59上部の投入時当接面59aに当接されて投入状態に保持される。なお、図8(b)では、説明の便宜上、ハンドルリンク50は投入時当接面59aに当接される直前の位置が示されている。又、作動レバー52には、ストッパ部材59を貫通させるための長孔52aが設けられ、作動レバー52が図8(b)において、時計回り方向及び反時計に回転する際に、ストッパ部材59と干渉しないようにしている。
【0034】
又、ハンドルリンク50が、図8(b)に示すストッパ部材59下部の開放時当接面59bに当接されて開放状態に保持される。
ハンドルリンク50の両端には、一対のピン53がそれぞれ固定されている。各ピン53には、板状のバネ案内部材54の一端が回動自在に連結されている。バネ案内部材54は、その他端に長手方向に長孔55が形成されるとともに、該長孔55に対してピン51が摺動自在に貫通されることにより、前記作動レバー52に連結されている。各バネ案内部材54の周囲には、圧縮コイルスプリング56が巻回され、圧縮コイルスプリング56の両端はピン51、53に対して圧接してハンドルリンク50と作動レバー52の両端を互いに離間させる方向に付勢している。
【0035】
作動レバー52の上部中央には、一対の連結リンク57の下端が回動自在にピン58により連結されている。該連結リンク57の上端は被動レバー34に連結されている。被動レバー34及び連結リンク57により伝達機構Dが構成されている。
【0036】
上記のように、支持板45、補助板48に対して組み付けられた、ハンドル軸49、ハンドルリンク50、ピン51、作動レバー52、ピン53、バネ案内部材54、圧縮コイルスプリング56、連結リンク57等により、手動駆動機構部40が構成されている。手動駆動機構部40を構成する部材のうち、手動投入開放時に、作動する部材は、ハンドルリンク50、ピン51、バネ案内部材54、圧縮コイルスプリング56としている。これらの各部材は、回路開閉部10の前方方向に直交する面に対して平行な移動軌跡を有するように配置されている。
【0037】
又、ハンドル軸49、ハンドルリンク50、ピン51、作動レバー52、ピン53、バネ案内部材54、圧縮コイルスプリング56により、付勢力発生部が構成されている。
手動駆動機構部40は、手動投入時において、図示しない開閉操作ハンドルが取り付けされた状態で、開放位置から投入位置に、すなわち、時計回りに回動操作されると、ハンドルリンク50が圧縮コイルスプリング56を圧縮しながら、時計回りに回動される。そして、作動レバー52の両端のピン51を結ぶデッドポイントをハンドルリンク50が越えると、圧縮コイルスプリング56の付勢力により作動レバー52が反時計回りに回動される。この結果、連結リンク57を介して、被動レバー34が回転され、主軸28が投入方向に回動されて、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入される。このとき、ストッパ部材59の投入時当接面59aは、ハンドルリンク50を当接する。
【0038】
一方、手動開放時において、図示しない開閉操作ハンドルが取り付けされた状態で、投入位置から、開放位置に開閉操作ハンドルを反時計回り方向へ回動操作する。すると、ハンドルリンク50が、反時計回り方向に回動され、作動レバー52が時計回り方向に回動される。
【0039】
この結果、連結リンク57を介して、被動レバー34が回転され、主軸28が開放方向に回動されて、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が開放される。このとき、ストッパ部材59の開放時当接面59bは、ハンドルリンク50を当接する。
【0040】
(自動駆動機構ユニットUa)
次に天板14上に設置された自動駆動機構ユニットUaを図2、図7、図8(a)、図10〜12を参照して説明する。
【0041】
ソレノイドとしての投入コイル60は、その下面が天板14に対して図示しないボルトにより着脱自在に固定されている。投入コイル60の前面には、互いに所定間隔を隔てて配置された左右一対の側板61,62が図示しないボルトにより固定されている。
【0042】
図8(a)に示すように左側の側板61の側面には、トリップコイル63が固定されている。側板61,62の下部間には、自動トリップ軸64の両端が回動自在に支持され、この自動トリップ軸64の中央には、自動トリップリンク65が固着されている。
【0043】
自動トリップ軸64には、操作板66が固定されて、その前端が前方へ延出され、トリップコイル63下面に相対して離間するように折り曲げ形成されている。そして、操作板66の前端に進退自在に螺合した操作ボルト(図示しない)の先端は、トリップコイル63の下面に当接し、操作板66の前端とトリップコイル63のプランジャ(図示しない)とを所定間隔をおいて相対向させている。又、自動トリップ軸64には、図10において、時計回り方向に回動付勢する図示しないスプリングが巻回されている。
【0044】
側板61,62の下部間において、自動トリップ軸64よりも投入コイル60に近い側には、投入軸68の両端が回動自在に支持されている。投入軸68には、一対の第1の投入レバー69の基端が固着されている。第1の投入レバー69は、スプリング69aにより、図10において、時計回り方向に付勢されている。又、側板61,62の間には、ストッパピン69bが架設されており、ストッパピン69bにより、第1の投入レバー69の時計回り方向の回転を規制している。
【0045】
なお、図10では、一方の第1の投入レバー69のみ図示されている。各第1の投入レバー69の先端はそれぞれ第1の投入リンク70の一端に対しトリップピン71にて軸着され、このトリップピン71は第1の投入レバー69がストッパピン69bに当接した状態で自動トリップリンク65の先端に当接されている。
【0046】
第1の投入リンク70の他端はそれぞれ一対の第2の投入リンク72の一端に対してプランジャピン73にて軸着されている。プランジャピン73は投入コイル60のプランジャ74にて前方に移動されるようになっている。一対の第2の投入リンク72の中央部から前端にかけてその下部は連結部72aを介して連結されている。又、一対の第2の投入リンク72の前端には、長孔75が長手方向に延出されて形成されている。
【0047】
図8(a)、図10に示すように側板61,62の前部において、上部間には、ソレノイド軸76が回動自在に支持されている。ソレノイド軸76には、第2の投入レバー77が一体に固着され、先端が下方に延出されている。第2の投入レバー77の下端は、各第2の投入リンク72の長孔75に対して摺動自在に貫通されたピン78の中央部に対して取り付けされている。
【0048】
又、図8(a)に示すようにソレノイド軸76の一端には、一対の連結レバー83が固着され、両連結レバー83の先端間にはピン84が架設されている。該ピン84と、作動レバー52のピン58には、棒状の連結部材85の上下両端がそれぞれ回動自在に連結されている。ピン58、84は、ボルトにて形成されているとともに図8(a)、(b)に示すようにナット58a,84aが着脱自在に螺合されている。従って、ナット58a,84aをピン58,84から取り外すことにより、連結部材85は、作動レバー52及び連結レバー83から取り外し可能である。
【0049】
図10に示すように側板61,62の後部の上下方向の略中央部において、該側板61,62間には、掛止軸79の両端が回動自在に支持され。該掛止軸79には板状の掛止部材80が固着されている。掛止部材80は、スプリング81にて、図10において、反時計回り方向に付勢されるとともに、側板61,62間に架設されたストッパピン82にてその回動が規制され、その前端のラッチ面Bに前記プランジャピン73が当接されている。
【0050】
投入コイル60、トリップコイル63、自動トリップリンク65、操作板66、第1の投入レバー69、第1の投入リンク70、第2の投入リンク72、ソレノイド軸76、第2の投入レバー77、連結レバー83、掛止部材80等により、自動駆動機構部90が構成されている。又、第1の投入レバー69、第1の投入リンク70、掛止部材80とによりラッチ機構Eが構成されている。又、トリップコイル63、自動トリップ軸64、自動トリップリンク65、操作板66とにより、トリップ機構Tが構成されている。
【0051】
次に自動駆動機構ユニットUaの自動駆動機構部90の作動について説明する。
図11(b)は、自動駆動機構部90が自動開放状態の場合を示している。この状態では、同図に示すように、自動トリップリンク65は、トリップピン71に対して当接状態に保持されている。又、掛止部材80は、プランジャピン73に対する掛け止めを解除しており、連結レバー83は、手動投入、及び手動開放が可能である。
【0052】
すなわち、図11(b)及び図12(a)の状態において、手動投入されると、連結部材85の上方への移動により、図11(b)及び図12(a)に示す状態から、連結レバー83が、時計回り方向に回動された際、第2の投入レバー77に連結されたピン78が長孔75内を移動できるため、ソレノイド軸76の同方向への回動が許容される。この結果、図11(b)及び図12(a)の状態が、図12(b)の状態に移行する。
【0053】
又、図12(b)の状態において、手動開放されると、連結部材85の下方への移動により、図12(b)に示す状態から、連結レバー83が、反時計回り方向に回動された際、第2の投入レバー77に連結されたピン78が長孔75内を移動できるため、ソレノイド軸76の同方向への回動が許容される。この結果、図12(b)の状態が、図11(b)及び図12(a)の状態に移行する。
【0054】
又、図11(b)の自動開放状態で、自動投入される場合、投入コイル60のプランジャ74が瞬時励磁されて突出されると、プランジャ74により、プランジャピン73が当接されて押圧され、スプリング81の付勢力に抗して、掛止部材80の下部のコーナーCを超える。このことにより、図10に示すように、プランジャピン73は、掛止部材80のラッチ面Bに当接され、この状態で保持される。
【0055】
このプランジャピン73の移動に伴って、投入リンク72が、長孔75の後端面によりピン78を介して第2の投入レバー77、及びソレノイド軸76を時計回り方向へ回動させる。この回動により、連結レバー83を同方向に回動させて、連結部材85を上方へ駆動する。連結部材85の上方への駆動により、作動レバー52が手動投入時と同様に反時計回り方向へ回動され、連結リンク57を介して、被動レバー34が回転されて、主軸28を投入方向に回転させる。この結果、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入される。図10では、自動駆動機構部90が投入状態時の各部材の位置が示されている。
【0056】
又、作動レバー52の反時計回り方向の回動(ただし、前記デッドポイントを超えない範囲での回動)に伴い、圧縮コイルスプリング56が圧縮された状態、すなわち、蓄勢された状態で保持される。
【0057】
なお、投入コイル60は瞬時励磁のため、突出後は投入コイル60に設けられた図示しない復帰スプリングにより、プランジャ74が元の状態に位置するべく後退する。
又、図10の自動投入状態において、自動開放する場合、トリップコイル63の図示しないプランジャが操作板66の前端部を瞬時に押圧作動する。この結果、操作板66が、図10において、反時計回り方向に回動されるため、自動トリップ軸64が同方向に回動されることにより、自動トリップリンク65のトリップピン71に対する掛止めが解除される。
【0058】
この結果、圧縮コイルスプリング56の付勢力により、作動レバー52が時計回り方向に回動され、連結リンク57を介して被動レバー34が開放方向に回転されるとともに第2の投入レバー77が図11(a)において、反時計回り方向に回動される。この結果、第2の投入リンク72が後方へ押圧され、プランジャピン73が掛止部材80の下部のコーナーCを乗り越えて、図11(b)の状態になる。又、被動レバー34の開放方向への回動に伴って、主軸28を開放方向に回転させる。この結果、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が開放される。
【0059】
さて、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の気中多回路開閉器では、手動操作により可動接触子24を開閉操作する手動駆動機構部40を含む手動駆動機構ユニットUhを回路開閉部10の前方に配置するようにした。又、可動接触子24を投入作動させる投入コイル60と、可動接触子24の投入状態を保持するラッチ機構Eと、ラッチ機構Eのラッチを解除するトリップ機構Tを含む自動駆動機構部90を備えた自動駆動機構ユニットUaを回路開閉部10の上方に配置するようにした。さらに、本実施形態では、手動駆動機構部40の駆動力を主軸28に伝達する伝達機構Dを設け、自動駆動機構部90と手動駆動機構部40に対し、両者から取り外し可能に取着されて、自動駆動機構部90の駆動力を手動駆動機構部40に伝達する連結部材85を設けた。そして、連結部材85により、自動駆動機構部90の駆動力を手動駆動機構部40及び伝達機構Dを介して伝達するようにした。
【0060】
この結果、本実施形態では、手動駆動機構ユニットUhと自動駆動機構ユニットUa間を連結する連結部材85を取り外すことにより、容易に手動駆動機構ユニットUhの手動駆動機構部40に関する保守作業と、自動駆動機構部90に関する保守作業を別々に実施ができる。
【0061】
(2) さらに、本実施形態の気中多回路開閉器では、手動駆動機構ユニットUhを回路開閉部10の前方、自動駆動機構ユニットUaを回路開閉部10の上方に配置していることにより、投入コイル60の配置スペースに自動操作に関連するラッチ機構E及びトリップ機構Tを一体的に配置できる。
【0062】
(3) その上、本実施形態の気中多回路開閉器では、手動駆動機構ユニットUhを回路開閉部10の前方に配置することにより、従来、手動駆動機構部と自動駆動機構部を回路開閉部の上方に設けていた従来技術に比較して、回路開閉部10の上方のスペースを小さくすることができる。この結果、気中多回路開閉器の高さを低くできる。
【0063】
(4) 又、本実施形態ての気中多回路開閉器では、組立作業においては、手動駆動機構ユニットUhと自動駆動機構ユニットUaを別々に組立しておき、その後、両者を連結部材85で連結する作業により、両ユニットの機構を一体化することができ、作業効率のアップを図ることができる。
【0064】
(5) さらに、本実施形態の気中多回路開閉器では、ラッチ機構E及びトリップ機構Tの調整が自動駆動機構ユニットUa単体にて可能であるため、調整作業の効率アップも図ることができる。
【0065】
(6) 本実施形態の気中多回路開閉器では、手動駆動機構ユニットUhの手動駆動機構部40は、付勢力発生部を含むようにし、手動操作により、付勢力発生部の付勢力を発生させて、可動接触子24を開閉操作するようにした。
【0066】
この結果、手動操作により、付勢力発生部の付勢力を発生させることにより、可動接触子24を開閉操作ができる手動駆動機構ユニットUhを備えた気中多回路開閉器において、上記(1)〜(5)の効果を実現できる。
【0067】
(7) 本実施形態の気中多回路開閉器では、付勢力発生部は、自動駆動機構部90からの投入時の駆動力により、回路開閉部10の開放時の駆動力を蓄勢するようにした。
この結果、自動駆動機構部90からの投入時の駆動力により、回路開閉部10の開放時の駆動力を蓄勢する付勢力発生部を備えた多回路開閉器において、上記(1)〜(5)の効果を実現できる。
【0068】
(8) 本実施形態の気中多回路開閉器は、手動駆動機構部40には投入開放時に作動する部材として、ハンドルリンク50、ピン51、バネ案内部材54、圧縮コイルスプリング56を含むようにしている。これらの部材は、回路開閉部10の前方方向に対して直交する面に対して平行な移動軌跡を有するように配置しているため、回路開閉部10の前方に配置された手動駆動機構部40の収容スペースを狭くすることができる。
【0069】
なお、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
○ 前記実施形態では、気中多回路開閉器に具体化したが、ガス多回路開閉器に具体化してもよい。
【0070】
○ 前記実施形態では、連結部材85の上下両端を、連結レバー83及び作動レバー52から取り外し可能にしたが、いずれか一方に対して連結部材85を取り外可能に取着してもよい。
【0071】
○ 前記実施形態では、各開閉器ユニットUを5回路分を設けたが、2〜4回路又は6回路分以上の開閉器ユニットを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態の気中多回路開閉器の正面図。
【図2】同じく回路開閉部の左側面図。
【図3】(a)は同じく回路開閉部の背面から見た一部省略断面図、(b)は、同じく、回路開閉部の一部省略背面図。
【図4】同じく回路開閉部の要部断面図。
【図5】回路開閉部の可動接触子と、共通母線の斜視図。
【図6】同じく回路開閉部を並列した状態を示す要部背面図。
【図7】同じく回路開閉部の右側面図。
【図8】(a)は開閉器ユニットUの正面図、(b)は手動駆動機構ユニットUhの正面図。
【図9】手動駆動機構ユニットUhの側面図。
【図10】自動駆動機構ユニットUaの概略を示す断面図。
【図11】(a)は自動駆動機構ユニットUaの投入から開放への移行を示す説明図、(b)は自動駆動機構ユニットUaの自動開放状態を示す説明図。
【図12】(a)は手動開放状態における自動駆動機構ユニットUaの状態を示す説明図、(b)は、手動投入状態における自動駆動機構ユニットUaの状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0073】
10…回路開閉部、24…可動接触子、28…主軸、34…被動レバー
37…固定接触子、40…手動駆動機構部、
27…連結リンク(被動レバー34とともに伝達機構Dを構成する)、
60…投入コイル(ソレノイド)、80…掛止部材(ラッチ機構)、
85…連結部材、90…自動駆動機構部、U…開閉器ユニット、
Ua…自動駆動機構ユニット、Uh…手動駆動機構ユニット、
D…伝達機構、E…ラッチ機構、T…トリップ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子と、可動接触子と、前記可動接触子を前記固定接触子に対して投入開放駆動する主軸を含む回路開閉部を、複数並列させて配置した気中多回路開閉器において、
手動操作により前記可動接触子を開閉操作する手動駆動機構部を含む手動駆動機構ユニットを前記回路開閉部の前方に配置し、
前記可動接触子を投入作動させるソレノイドと、前記可動接触子の投入状態を保持するラッチ機構と、該ラッチ機構のラッチを解除するトリップ機構を含む自動駆動機構部を備えた自動駆動機構ユニットを前記回路開閉部の上方に配置し、
前記手動駆動機構部の駆動力を前記主軸に伝達する伝達機構を設け、
前記自動駆動機構部と前記手動駆動機構部に対し、
取り外し可能に取着されて、前記自動駆動機構部の駆動力を前記手動駆動機構部に伝達する連結部材を設け、
前記自動駆動機構部の駆動力を前記手動駆動機構部及び前記伝達機構を介して伝達することを特徴とする多回路開閉器。
【請求項2】
前記手動駆動機構ユニットの手動駆動機構部は、付勢力発生部を含み、手動操作により、前記付勢力発生部の付勢力を発生させて、前記可動接触子を開閉操作し、前記付勢力発生部は、自動駆動機構部からの投入時の駆動力により、回路開閉部の開放時の駆動力を蓄勢することを特徴とする請求項1に記載の多回路開閉器。
【請求項3】
前記手動駆動機構部には投入開放時に作動する部材を含み、該部材は、回路開閉部の前方方向に対して直交する面に対して平行な移動軌跡を有するように配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の多回路開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−234378(P2007−234378A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54018(P2006−54018)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】