説明

多孔体及びフィルター

【課題】極めて微細な気泡が成形体中に分布している多孔体及び上記多孔体を用いたフィルターを提供する。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレン系樹脂と上記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂とからなる多孔体であって、上記多孔体は、比重が2.18未満であり、結晶転化率が50%以下であることを特徴とする多孔体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔体及びフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、一般に、耐熱性、耐薬品性、非粘着性、難燃性、機械的強度等に優れることから、多孔体に成形することで、極めて安定で耐久性の高いフィルターとして使用できる。
【0003】
フッ素樹脂の多孔質体としては、ポリテトラフルオロエチレン焼成粉末、又は、ポリテトラフルオロエチレン焼成粉末と1重量%のテトラフルオロエチレン/パーフルオロビニルエーテル共重合体粉末との混合物を用い、加圧形成した予備成形体を焼成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このポリテトラフルオロエチレン樹脂多孔質体は、予め焼成して硬化させたポリテトラフルオロエチレン粉末を用い、予備成形時の加圧を粉末粒子が完全に潰れない程度に行い、粉末粒子同士の接点を焼成して結着させることにより、多孔質体を得るものであり、後述する本発明とは発明思想が全く異なる。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−66730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、極めて微細な気泡が成形体中に分布している多孔体及び上記多孔体を用いたフィルターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂と上記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂とからなる多孔体であって、上記多孔体は、比重が2.18未満であり、結晶転化率が50%以下であることを特徴とする多孔体である。
【0008】
本発明は、上記多孔体を用いてなることを特徴とするフィルターである。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の多孔体は、比重が2.18未満であり、結晶転化率が50%以下である。本発明の多孔体は、これらの物性を満たすものであるので、ボイドを多く含んでおり、連続気泡となっていて、かつ、この気泡の大きさは平均数μmであり、例えば、フィルターとしての用途に極めて有用である。
【0010】
本発明の多孔体は、比重が2.18未満である。比重が2.18以上であると、ガス透過性に劣ることがある。上記比重は、ガス透過性を優れたものとできる点で、1.7以下であることが好ましく、機械的強度の点で、0.9以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の多孔体は、結晶転化率が50%以下である。上記結晶転化率が50%を超えると、ガス透過性に劣ることがある。上記結晶転化率は、ガス透過性を優れたものとできる点で、30%以下であることが好ましい。上記結晶転化率は、以下の方法に従って算出される。
【0012】
まず、本発明の多孔体から10.0±0.1mg秤量して切り取り、試料とする。尚、樹脂の加熱変性は、多孔体の表面から内部へ進行するので、上記試料の採取に際しては、多孔体厚み方向において各変性度合いのものが平均して含まれるようにする。また、これと同様にして、熱処理前の未焼成状態の予備成形品の試料10.0±0.1mgを調製する。これらの試料を用いてまず次の方法で結晶融解曲線を求める。
【0013】
結晶融解曲線は、DSC(Perkin Elmer社製のDSC−2型)を用いて記録する。まず、未焼成状態の予備成形品の試料を、DSCのアルミニウム製パンに仕込み、未焼成状態の予備成形品の融解熱及び予備成形品をPTFE系樹脂の融点以上に加熱して得られる焼成体の融解熱(予備焼成品焼成体の融解熱)を、次の手順で測定する。
【0014】
(1)試料を160℃/分の加熱速度で277℃に加熱し、ついで10℃/分の加熱速度で277℃から360℃まで加熱する。この加熱工程で記録された結晶融解曲線の一例を図1に示す。この加熱工程において現れる吸熱ピークの位置を「予備成形品の融点」または「樹脂粉末の融点」と定義する。
【0015】
(2)360℃まで加熱した直後、試料を80℃/分の冷却速度で277℃に冷却する。
【0016】
(3)試料を再び10℃/分の加熱速度で360℃に加熱する。加熱工程(3)において記録される結晶融解曲線の一例を図2に示す。加熱工程(3)において現れる吸熱ピークの位置を「予備焼成品焼成体の融点」と定義する。
【0017】
予備成形品と予備焼成品焼成体の融解熱は、吸熱カーブとベースラインとの間の面積に比例する。ベースラインは、DSCチャート上の307℃の点から吸熱カーブの右端の基部に接するように引いた直線である。
【0018】
つづいて、本発明の多孔体についての結晶融解曲線を上記工程(1)に従って記録する。この場合の曲線の一例を図3に示す。
【0019】
結晶転化率は、次の式(A)によって算出する。
結晶転化率=(S1−S3)/(S1−S2) (A)
前記式(A)において、S1は予備成形品の吸熱カーブの面積、S2は予備焼成品焼成体の吸熱カーブの面積、S3は本発明の多孔体の吸熱カーブの面積である。
【0020】
本発明の多孔体は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]系樹脂と上記PTFE系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂とからなる多孔体である。
【0021】
上記多孔体は、上記PTFE系樹脂を10〜95質量%、上記熱可塑性樹脂を90〜5質量%含有することが好ましい。各樹脂の含有量は、所望するガス透過性、最大強度、伸び等を考慮して決められるが、上記PTFE系樹脂が10質量%未満の場合には、ボイドが連続気泡となりにくくガス透過性に劣ることがある。また、上記熱可塑性樹脂が5質量%未満の場合には、多孔体の機械的強度が劣ることがある。
【0022】
上記PTFE系樹脂としては、非溶融加工性のものであれば、テトラフルオロエチレン[TFE]単独重合体であってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]であってもよい。上記変性PTFEとしては、パーフルオロアルキルビニルエーテル変性PTFE、ヘキサフルオロプロピレン変性PTFE等が挙げられる。上記変性PTFEは、微量単量体単位を全単量体単位の0.01〜1質量%含有するものであることが好ましい。上記PTFE系樹脂は、融点以上の温度に加熱した履歴がないものが好ましい。
【0023】
上記PTFE系樹脂の融点は、機械的強度及び耐熱性の点で、320℃以上であることが好ましい。上記融点は、327℃以上がより好ましく、345℃以下が好ましい。本明細書において、上記融点は、セイコー型示差走査熱量計を用い、10℃/分で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とするものである。
【0024】
上記PTFE系樹脂は、メルトフローレート[MFR]が1g/10分以下であることが好ましい。MFRが1g/10分を超えると、多孔体の表面の平滑性が劣るおそれがある。
【0025】
本明細書において、上記MFRは、ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えたメルトインデクサー(東洋精機製)を用いて、5gの試料粉末を372±1℃に保持されたシリンダーに充填して5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下でダイオリフィスを通して押出し、この時の押出速度(g/10分)をMFRとして求める値である。
【0026】
上記熱可塑性樹脂としては、多孔体の機械的強度が優れる点で、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体[FEP]、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA]、ポリビニリデンフルオライド[PVdF]、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体[ETFE]、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体[EFEP]、ポリプロピレン[PP]、ポリエチレン[PE]よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0027】
上記熱可塑性樹脂としては、多孔体の耐熱性を向上させ、比較的高温下でも安定した使用が可能となる点で、溶融加工可能なフッ素樹脂がより好ましく、溶融加工可能なフッ素樹脂としては、例えば、FEP、PFA、PVdF、ETFE、EFEPが挙げられ、なかでも、FEP、PFAが更に好ましい。
【0028】
上記PFAとしては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)共重合体等が挙げられる。
【0029】
上記PTFE系樹脂及び熱可塑性樹脂は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の公知の方法で製造することができるが、ペースト押出が容易である点で、乳化重合により製造されたものが好ましい。
【0030】
上記PTFE系樹脂及び熱可塑性樹脂は、乳化重合法により製造されたものである場合、平均一次粒径は、通常約0.02〜0.5μmであり、上記平均一次粒径の好ましい下限は0.1μmであり、好ましい上限は0.3μmである。上記平均一次粒径は、重力沈降法に基づく測定により得られるものである。
【0031】
上記熱可塑性樹脂の融点は、上記PTFE系樹脂の融点よりも低いことが好ましく、機械的強度、耐熱性及び成形性の点で、100〜325℃であることが好ましい。上記融点は、機械的強度と耐熱性の点で、150℃以上がより好ましく、機械的強度と成形性の点で、315℃以下がより好ましい。
【0032】
上記熱可塑性樹脂のメルトフローレート[MFR]は、70g/10分以下であることが好ましい。上記MFRが70g/10分を超えると、機械的強度が劣るおそれがある。上記MFRは、50g/10分以上であることがより好ましい。
【0033】
本発明の多孔体は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂とポリテトラフルオロエチレン系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂とを混合して成形し、得られる予備成形品を熱処理することにより製造することができる。
【0034】
上記混合の方法としては、例えば、(i)上記PTFE系樹脂からなる粉末と上記熱可塑性樹脂からなる粉末とを混合する乾式混合法、(ii)上記PTFE系樹脂又は熱可塑性樹脂のうち、何れか一方の樹脂からなる水性分散液に、他方の樹脂からなる粉末を添加して凝析する共凝析法、(iii)上記PTFE系樹脂からなる水性分散液と、上記熱可塑性樹脂からなる水性分散液とを混合して凝析する共凝析法等が挙げられる。
【0035】
なかでも、充分に混合でき、均質で、機械的強度と電気特性に優れた多孔体が得られやすい点で、上記(ii)又は(iii)の共凝析法が好ましく、(iii)の共凝析法がより好ましい。
【0036】
上記(iii)の共凝析法としては、上記PTFE系樹脂からなる粒子の重合上がりの水性分散液と、上記熱可塑性樹脂からなる粒子の重合上がりの水性分散液とを混合した後、無機酸又はその金属塩等の凝析剤を作用させて共凝析することよりなる方法が好ましい。
【0037】
上記PTFE系樹脂と上記熱可塑性樹脂とを混合して得られる混合物は、上記PTFE系樹脂の固形分が10〜95質量%であり、上記熱可塑性樹脂の固形分が90〜5質量%である混合物であることが好ましい。混合割合は、所望するガス透過性、最大強度、伸び等を考慮して決められるが、上記PTFE系樹脂が10質量%未満であると、ボイドが連続気泡となりにくくガス透過性に劣ることがある。また、上記熱可塑性樹脂が5質量%未満の場合には、多孔体の機械的強度が劣ることがある。
【0038】
上記PTFE系樹脂と上記熱可塑性樹脂とが充分に混合され、均質な混合物を得やすい点で、上記PTFE系樹脂からなる粒子の平均粒径と上記熱可塑性樹脂からなる粒子の平均粒径とは、互いにほぼ同じであることがより好ましい。
【0039】
上記混合物においては、上記PTFE系樹脂及び上記熱可塑性樹脂に加え、成形加工性の向上、得られる多孔体の物性の向上等を目的として、その他公知の押出助剤等の添加剤を添加したものであってもよい。
【0040】
上記押出助剤は、特に後述のペースト押出を行う場合、添加することが好ましく、上記PTFE系樹脂と上記熱可塑性樹脂との合計に対し、10〜25質量%の量で添加することが好ましい。上記押出助剤としては、炭化水素系溶剤が好ましい。
【0041】
押出助剤以外の添加剤として、酸化防止剤、顔料、染料、フィラー、発泡剤等を使用してもよく、例えば、カーボンブラック、グラファイト、球状カーボン、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化錫、ブロンズ、金、銀、銅、ニッケル等の粉末又は繊維粉末などを例示することができる。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、上述した樹脂以外の他の重合体微粒子、その他の成分を含有させて使用することができる。押出助剤以外の添加剤は、PTFE系樹脂と熱可塑性樹脂とを混合する工程で添加してもよい。
【0042】
本発明の多孔体の製造においては、上記PTFE系樹脂と上記熱可塑性樹脂とを混合した後、成形して予備成形品を得る。上記成形する方法としては特に限定されず、目的とする多孔体の用途によるが、例えば、圧縮成形、押出成形、押出被覆成形、ラッピングテープ成形、カレンダー成形等の公知の方法を用いることができ、なかでも、成形加工の容易さの点で、ペースト押出成形が好ましい。また、シート状に加工する場合は圧縮成形が好適である。
【0043】
上記成形時に加熱してもよく、加熱温度は、使用するPTFE系樹脂、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、熱可塑性樹脂の融点未満であることが好ましい。
【0044】
本発明の多孔体は、成形して得られる予備成形品を熱処理することにより得られ、上記熱処理は、PTFE系樹脂の融点未満、かつ、熱可塑性樹脂のうち、最も低い融点を有する樹脂の融点以上で行うものである。上記熱処理の温度が、上記範囲にあると、PTFE系樹脂は未焼成のため低密度でやわらかく、熱可塑性樹脂は一旦溶融した後固化するため、得られる多孔体は、微細な空隙を有するとともに機械的強度に優れたものとなる。
【0045】
上記熱処理を行う温度は、PTFE系樹脂の融点と、熱可塑性樹脂のうち、最も低い融点を有する樹脂の融点とを平均して得られる温度の±50℃の範囲であることが好ましい。上記熱処理を行う温度は、100〜325℃であることが好ましく、150〜315℃であることがより好ましい。
【0046】
本発明の製造方法は、熱処理する工程の後、延伸する工程を含むものであることが好ましい。本発明の製造方法は、延伸する工程を含むものであると、PTFE系樹脂が未焼成の状態で延伸することができるため、気泡のサイズを更に小さくし、用途に応じたフィルターを得ることができる。上記延伸は、公知の方法により行えばよく、例えば、ロール圧延等が挙げられ、延伸する条件としては、特に限定されないが、延伸する際の温度を100〜325℃とし、延伸倍率を2〜60倍とすることができる。
【0047】
本発明の多孔体を用いてなることを特徴とするフィルターも本発明の一つである。上記フィルターは、本発明の多孔体を用いてなるので、空気を通すが水は通しにくいものとすることができる。上記フィルターは、酸素富化膜、気液分離膜等の用途に好適に使用できる。
【0048】
本発明のフィルターは、円柱状であってもシート状であってもよい。本発明のフィルターとして使用する方法としては、チューブ状に成形してチューブ内側から外側へ、あるいはその逆への流れによってフィルター作用を利用することや、棒状(円柱状)に成形してチューブ内へ入れて円柱中心線に平行な方向への流れによるフィルター作用の利用、また、シート状に圧縮成形加工して面状でのフィルター作用の利用等が挙げられる。あるいは、チューブ状に成形してスライス加工することによりリングを得て、オイル含浸軸受け等に使用できる。
【発明の効果】
【0049】
本発明の多孔体は、上述の構成よりなることから、極めて微細な気泡が分布しており、機械的強度にも優れており、フィルター用途に好適に使用できる。
本発明のフィルターは、本発明の多孔体を用いたものであるので、空気を通すが水は通しにくいものとすることができ、フィルターとして極めて優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、実施例、比較例を示し、本発明を具体的に説明する。
なお、各実施例及び比較例において、各値の測定は以下の方法により行った。
【0051】
結晶転化率の測定
実施例で得られた円柱状の成形体及び多孔体から試料を調製し、上述の方法により測定した。
【0052】
実施例1
パーフルオロプロピルビニルエーテル変性PTFEの水性分散液(樹脂成分35.1wt%)2739gと、PFAの水性分散液(樹脂成分11.8wt%)2034gとを混合し、凝析を行い、洗浄、乾燥(160℃18時間)を行うことで混合粉を得た。これに炭化水素系溶剤であるIsoparGを混合粉の16wt%混合する。これをペースト成形機で、押し出し、助剤乾燥、焼成を経て、円柱状の成形体を作成した。ペースト押出機の金型内径は3.5mmであり、焼成炉の温度設定は330℃、できあがった多孔体は直径2.8mmの円柱状であった。示差走査熱量計(DSC)にて熱吸収を確認したところ、334℃と310℃にピークをもっており、PTFEが未焼成状態、PFAが一旦焼成されていることが分かった。できあがった多孔体の比重は1.83、結晶転化率は2%であった。
この直径2.8mmの多孔体を、長さ10mmに切断して、内径3.0mmのステンレスチューブへ挿入してフィルターとした。
【0053】
実施例2
ヘキサフルオロプロピレン変性PTFEの水性分散液(樹脂成分29wt%)3103gと、FEPの水性分散液(樹脂成分18wt%)556gを混合し、凝析を行い、洗浄、乾燥(160℃18時間)を行うことで混合粉を得た。これらに炭化水素系溶剤であるIsoparGを混合粉の16wt%混合する。これらをペースト成形機で、押し出し、助剤乾燥、焼成を経て、チューブ状の多孔体を作成した。ペースト押出機の金型内径は3.5mmであり、コアピンとして、1.48mm径のステンレスチューブを使った。焼成炉の温度設定は330℃、できあがった多孔体は外径2.8mm、内径1.2mmのチューブ状である。DSCにて熱吸収を確認したところ、352℃と341℃にピークをもっており、PTFEが未焼成状態、FEPが一旦焼成されていることがわかる。できあがった多孔体の比重は1.70、結晶転化率は4%であった。
【0054】
実施例3
パーフルオロプロピルビニルエーテル変性PTFEの水性分散液(樹脂成分35.1wt%)2307gと、PFAの水性分散液(樹脂成分11.8wt%)1525gとを混合し、さらにカーボン繊維(クレハ化学製M2007S)を100g添加し共凝析を行い、洗浄、乾燥(160℃18時間)を行うことで混合粉を得た。これに炭化水素系溶剤であるIsoparGを混合粉の15wt%混合する。これをペースト成形機で、押し出し、助剤乾燥、焼成を経て、円柱状の成形体を作成した。ペースト押出機の金型内径は3.5mmであり、焼成炉の温度設定は330℃、できあがった多孔体は直径2.8mmの円柱状であった。示差走査熱量計(DSC)にて熱吸収を確認したところ、334℃と310℃にピークをもっており、PTFEが未焼成状態、PFAが一旦焼成されていることが分かった。できあがった多孔体の比重は1.70、PTFEの結晶転化率は2%であった。
この直径2.8mmの多孔体を、長さ10mmに切断して、内径3.0mmのステンレスチューブへ挿入してフィルターとした
【0055】
比較例1
PTFEの水性分散液(樹脂成分35.1wt%)2739gと、PFAの水性分散液(樹脂成分11.8wt%)2034gとを混合し、凝析を行い、洗浄、乾燥(160℃18時間)を行うことで混合粉を得た。これに炭化水素系溶剤であるIsoparGを混合粉の16wt%混合する。これをペースト成形機で、押し出し、助剤乾燥、焼成を経て、円柱状の成形体を作成した。ペースト押出機の金型内径は3.5mmであり、焼成炉の温度設定は380℃、できあがった多孔体は直径2.6mmの円柱状であった。示差走査熱量計(DSC)にて熱吸収を確認したところ、327℃と310℃にピークをもっており、PTFE、PFAとも一旦焼成されていることが分かった。できあがった多孔体の比重は2.18、結晶転化率は99%であった。
得られた成型品を切断し、100倍顕微鏡で観察したがほとんどボイドが確認できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の多孔体は、フィルター用途に好適に利用できる。本発明のフィルターは、酸素富化膜、気液分離膜等の用途に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】結晶転化率の測定に用いる予備成形品の過熱工程におけるDSC結晶融解曲線の一例である。
【図2】結晶転化率の測定に用いる予備成形品焼成体の過熱工程におけるDSC結晶融解曲線の一例である。
【図3】結晶転化率の測定に用いる多孔体の過熱工程におけるDSC結晶融解曲線の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂と前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂とからなる多孔体であって、
比重が2.18未満であり、結晶転化率が50%以下である
ことを特徴とする多孔体。
【請求項2】
熱可塑性樹脂は、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレンよりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1記載の多孔体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の多孔体を用いてなることを特徴とするフィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132712(P2010−132712A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64002(P2007−64002)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】