説明

多孔性構造体の製造方法及び多孔性構造体

【課題】被加工物の研磨量を増加することができる多孔性構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】開気孔構造を有する多孔質金属20より構成される多孔性構造体10の製造方法は、多孔質金属20の骨格の表面に、砥粒31を含む砥粒層30を形成する第1の工程と、骨格の表面に砥粒層が形成された多孔質金属20の表面を削って砥粒層30の一部を除去することにより、削った面における砥粒層30の面積を増加させる第2の工程と、を備える。砥粒層30を形成する工程は、電気めっき工程である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用工具などに用いられる多孔性構造体の製造方法及び多孔性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用工具として、溶融したアルミニウムなどの基地金属に、増粘材と、ダイヤモンド砥粒と、を加え、これらを攪拌しながら発泡剤を添加し、発砲した金属材料を冷却、凝固させることにより形成された、多数の気泡を有し、かつ、表面に多数のダイヤモンド砥粒が突出した発砲金属ホイールが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この発砲金属ホイールは、網目状の骨格が三次元に連なって形成されており、その骨格は、基地金属の中にダイヤモンド砥粒が混入して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−193173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の金属ホイールは、骨格の表面だけでなく、基地金属内部にもダイヤモンド砥粒が混入している。そのため、骨格の表面から高い密度でダイヤモンド砥粒を突出させることができず、被加工物の研削量あるいは研磨量を増加させることができなかった。
【0005】
本発明はこれらの問題に着目してなされたもので、被加工物の研削量あるいは研磨量を増加させることができる多孔性構造体の製造方法及び多孔性構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の第1の観点に係る多孔性構造体の製造方法は、
開気孔構造を有する多孔質金属より構成される多孔性構造体の製造方法であって、
前記多孔質金属の骨格の表面に、砥粒を含む砥粒層を形成する第1の工程と、
前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削って前記砥粒層の一部を除去することにより、削った面における前記砥粒層の面積を増加させる第2の工程と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
上記多孔性構造体の製造方法の前記第2の工程において、前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削って、さらに前記多孔質金属の骨格の一部を除去するようにしてもよい。
【0008】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記第1の工程は、電気めっき工程であってもよい。
【0009】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記多孔質金属を、Ni、Cu、Zn、Al、Au、Ag、Fe、Coからなる群から選択された1種の金属若しくはその合金又は2種以上の金属を含む合金により形成してもよい。
【0010】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記砥粒を、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素(CBN)からなる群から選択される超砥粒により形成してもよい。
【0011】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記砥粒を、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)からなる群から選択される酸化物により形成してもよい。
【0012】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記砥粒を、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)からなる群から選択される炭化物により形成してもよい。
【0013】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記砥粒を、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)からなる群から選択される窒化物により形成してもよい。
【0014】
上記多孔性構造体の製造方法において、前記砥粒を、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)からなる群から選択される2種以上の酸化物の複合酸化物により形成してもよい。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の第2の観点に係る多孔性構造体は、
開気孔構造を有する多孔質金属より構成される多孔性構造体であって、
前記多孔質金属の骨格の表面に、砥粒を含む砥粒層を形成し、
前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削ることにより、該削った面における前記砥粒層の面積を増加させることにより製造される、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、被加工物の研削量あるいは研磨量を増加させることができる多孔性構造体の製造方法及び多孔性構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る多孔性構造体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る多孔性構造体を示す拡大写真である。
【図3】本発明の実施形態に係る多孔性構造体の骨格の断面を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係る多孔性構造体の骨格を模式的に示す斜視図である。
【図5】(a)は、本発明の実施形態に係る多孔性構造体を削る前の状態の骨格を図4のIV方向から見た模式図であり、(b)は、面11Bまで削った状態の骨格を図4のIV方向から見た模式図であり、(c)は、面11Cまで削った状態の骨格を図4のIV方向から見た模式図である。
【図6】(a)は、本発明の実施形態に係る多孔性構造体を11Dまで削った状態の骨格を模式的に示す図4のV−V断面図であり、(b)は、11Eまで削った状態の骨格を模式的に示す図4のV−V断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る多孔性構造体を製造する多孔性構造体製造装置の図である。
【図8】(a)は、本発明の実施形態に係る多孔性構造体を削る前の状態を示す模式図であり、(b)は、多孔性構造体を面11aまで削った状態を示す模式図であり、(c)は、多孔性構造体を面11bまで削った状態を示す模式図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る多孔性構造体の骨格を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を説明する。尚、以下に記載する実施形態は説明のためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素又は全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0019】
図1に示すように、多孔性構造体10は、例えば直方体状に形成されており、側面101、上面102等を研磨などのための作業面として使用することができる構造体である。また、図1及び図2に示すように、多孔性構造体10は、網目状の骨格10a(図2のグレー部分参照)が三次元に連なって形成されている。また、網目状の骨格10aの間には、開気孔21(図2の黒色部分参照)が形成されている。なお、開気孔とは、一方の面から、その反対側に位置する他方の面まで通じる気孔のことである。
【0020】
詳細に説明すると、図3に示すように、多孔性構造体10の骨格10aは、多孔質金属20と、多孔質金属20の表面を被覆する砥粒層30と、からなる。また、砥粒層30には、砥粒31が取り込まれている。一部の砥粒、例えば砥粒31aは砥粒層30から開気孔21側に突出した状態で、母材30aを介して多孔質金属20に固定されている。また、他の砥粒、例えば31bは砥粒層30の内部に埋没した状態で、母材30aを介して多孔質金属20に固定されている。尚、本実施形態において、砥粒31は、平均粒径3μmで形成されており、砥粒層30は約16〜17μmの厚さで形成されている。
【0021】
以下、本実施形態に係る多孔性構造体10を構成する各要素について説明する。尚、本実施形態において、砥粒31には、多孔質金属20及び砥粒層30の母材30aのモース硬度より大きなモース硬度を有する物質が選択される。本発明におけるモース硬度とは、硬さの指標を10段階としてそれぞれに対応する標準物質を設定したものである。モース硬度1の標準物質は滑石、2は石膏、3は方解石、4は蛍石、5は燐灰石、6は正長石、7は石英、8はトパーズ、9はコランダム、10はダイヤモンドである。モース硬度は、モース硬度の標準物質で被測定物質の表面を引っ掻き、キズの有無を調べることで相当するモース硬度を決定するものである。
【0022】
多孔質金属20は、ニッケル(Ni、モース硬度:3〜4)から形成されており、網目状の骨格が三次元に連なって形成された開気孔構造を有している。また、多孔質金属20は、直方体状(図1参照)に形成されている。尚、多孔質金属20は、ニッケル(Ni)の他に、銅(Cu、モース硬度:2〜4)、亜鉛(Zn、モース硬度:2〜3)、アルミニウム(Al、モース硬度:2〜3)、金(Au、モース硬度:2〜3)、銀(Ag、モース硬度:2〜3)、鉄(Fe、モース硬度:4〜5)、コバルト(Co、モース硬度:5〜6)からなる群から選択された1種の金属若しくはその合金又は2種以上の金属を含む合金から形成されていてもよい。
【0023】
また、多孔質金属20として、種々の製造方法により形成されたものを用いることができる。例えば、基材としての発泡体、不織布、メッシュ体等の三次元網目状多孔体の表面にカーボン塗布、化学メッキあるいは蒸着により導電性を付与した後、電気めっきを施し、その後、焼成により上記基材を焼き飛ばして金属層により三次元網目状の骨格を形成したものを用いることができる。
【0024】
砥粒31は、ダイヤモンド(モース硬度:10)から形成されており、その平均粒径は3μmである。平均粒径の測定は、砥粒のSEM(走査電子顕微鏡)写真を画像解析して行ったが、他の方法、例えば粒度測定器などを用いて行うこともできる。尚、砥粒31は、ダイヤモンドの他に、立方晶窒化ホウ素(CBN、モース硬度:10)などの超砥粒、アルミナ(Al2O3、モース硬度:8〜9)、ジルコニア(ZrO2、モース硬度:7〜9)、シリカ(SiO2、モース硬度:6〜7)、セリア(CeO2、モース硬度:5〜7)、チタニア(TiO2、モース硬度:5〜8)、マグネシア(MgO 、モース硬度:5〜6)などの酸化物、炭化ケイ素(SiC、モース硬度:8〜9)、炭化ホウ素(B4C、モース硬度:8〜9)などの炭化物、窒化アルミニウム(AlN、モース硬度:6〜8)、窒化ケイ素(Si3N4、モース硬度:5〜7)などの窒化物、から形成されていてもよい。また、砥粒31は、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)からなる群から選択される2種以上の酸化物の複合酸化物から形成されていてもよい。
【0025】
砥粒層30の母材30aは、ニッケル(Ni)から形成されている。尚、砥粒層30の母材30aは、ニッケル(Ni)の他に、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、鉄(Fe)からなる群から選択された1種の金属若しくはその合金又は2種以上の金属を含む合金から形成されていてもよい。
【0026】
次に、図4〜図6を用いて、本実施形態にかかる多孔性構造体10の作業面(図1の101、102を参照)が削られた場合の作用について説明する。図4に示した骨格10aは、作業面近傍の骨格10aである。面11A〜11Eは、多孔性構造体10の外形を規定している面(複数の骨格10aが外接することにより形成される仮想の面)である。そして、面11A〜11Eは、例えば、多孔性構造体10の側面101のように、砥石として用いられた場合に研磨のための作業面として使用される面である。尚、説明を簡単にするため、図4に示した骨格10aは、作業面である面11A〜11Eに平行なX部と垂直なY部とを有している。また、面11A〜11Eは全て平行である。
【0027】
まず、骨格10aのうち、面11A〜11Cに対して平行なX部について説明する。
【0028】
図5(a)に示すように、X部では、面11Aが削られる前において、砥粒31を取り込んだ砥粒層30が、多孔質金属20の周囲全体に、形成されている。そして、領域B1では、砥粒31が面11Aから突出している。
【0029】
面11Aが削られ、砥粒層30の一部が除去されると、図5(b)に示すように、面11Bが新たに形成される。このとき、領域B2では、砥粒31が面11Bから突出している。そして、図5(b)の面11Bにおける領域B2の面積は、図5(a)の面11Aにおける領域B1の面積より大きいので、面11Bで被加工物を研磨した場合、面11Aで研磨した場合より大きく研磨することができる。
【0030】
さらに、面11Bが削られると、砥粒層30及び多孔質金属20の一部が除去され、図5(c)に示すように、新たに面11Cが形成される。このとき、図5(c)の面11Cにおける領域B3の面積は、図5(a)の面11Aにおける領域B1の面積より大きいので、面11Cで被加工物を研磨した場合、面11Aで研磨した場合より大きく研磨することができる。
【0031】
このように、作業面に対して平行な骨格では、砥粒層が削られる前より、削られた後の方が、被加工物と接触する砥粒の数が増えるため、被加工物の研磨量が増加する。
【0032】
次に、骨格10aのうち、面11A〜11Eに対して垂直なY部について説明する。
【0033】
図6(a)に示すように、Y部では、多孔質金属20の周囲には、砥粒31を取り込んだ砥粒層30が形成されている。そして、図6(a)の領域C1では、面11Dから砥粒31が突出している。
【0034】
面11Dが削られると、多孔質金属20及び砥粒層30が共に摩耗し、図6(b)に示すように、新たに面11Eが形成される。このとき、図6(b)の面11Eにおける領域C2の面積は、図6(a)の面11Dのおける領域C1の面積と略同一である。そのため、領域C1において面11Dから突出している砥粒31の量と、領域C2において面11Eから突出している砥粒31の量は略同一である。そのため、被加工物の研磨量も略同一である。
【0035】
次に、本実施形態に係る多孔性構造体10の製造方法について説明する。詳細には、ニッケルからなる多孔質金属20に、ダイヤモンドからなる砥粒31を含有した砥粒層30を、電気めっき法(電着法)により形成した多孔性構造体10の製造方法について説明する。
【0036】
まず、めっきされる多孔質金属20の金属表面の油脂を除去するために、脱脂を行い、その後、水洗する。そして、多孔質金属20の金属表面の酸化物層を除去するために、酸処理を行い、その後、水洗する。
【0037】
次に、図7に示す多孔性構造体製造装置50の電着槽51内に、硫酸ニッケルと塩化ニッケルとホウ酸とを有するめっき液52を蓄える。そして、そのめっき液52に、平均粒径3μmのダイヤモンドの砥粒31を混入する。ここで、ダイヤモンドの砥粒31の液中での状態を調整するために添加剤を入れてもよい。
【0038】
次に、めっき液52に、めっきされる多孔質金属20と、ニッケルからなる電解金属55とを浸漬し、多孔質金属20を通電手段60のマイナス端子に接続し、電解金属55を通電手段60のプラス端子に接続する。
【0039】
そして、通電手段60から多孔質金属20と電解金属55との間に電圧を加え、めっき液52に混入した砥粒31を多孔質金属20の表面上に堆積させるとともに、溶解した電解金属55によって多孔質金属20の表面をめっきし、砥粒31を取り込んだ砥粒層30を成長させる。
【0040】
その後、砥粒層30が約16〜17μmの厚さまで形成され、めっき液52からめっきされた多孔質金属200を取り出し、水洗し、乾燥する。
【0041】
図8(a)に示すように、めっき液52から取り出しためっきされた多孔質金属200の骨格の表面には、砥粒層30が均一な厚さで形成されている。このとき、めっきされた多孔質金属200の外形を規定している面(複数の骨格が外接することにより形成される仮想の面)110の領域D1では、砥粒31が面110から突出している。尚、図8(a)は、砥粒層30がめっきされた多孔質金属200の骨格のうち、面110に対して平行(図4のX部参照)な骨格である20a、20b、20c、20d、20e、20f・・・のみを模式的に示している。
【0042】
そして、多孔質金属200の面110(図8(a)参照)を削り、図8(b)に示すように、砥粒層30の一部を除去して面11aを形成する。このようにして、多孔性構造体10が製造される。尚、削って除去される厚さは砥粒層30の厚さより小さい。このとき、面11aの領域D2では、砥粒31が面11aから突出している。また、めっきされた多孔質金属200の面110は、砥石、紙やすり、又は本発明によって既に製造された多孔性構造体を用いて削られる。
【0043】
以上のようにして、製造された多孔性構造体10では、面110を削った後の面11aにおける砥粒層30の面積(領域D2)は、面110を削る前の状態(図8(a))の面110における砥粒層30の面積(領域D1)よりも大きい。砥粒層が形成された多孔質金属の表面を削ることで、被加工物と接触する砥粒の数を増加させることができるため、被加工物の研削量あるいは研磨量を増加させることができる。
また、作業面に垂直なY部(図4参照)では、削った前後において被加工物の研磨量は略同一であり、作業面に平行なX部(図4参照)では、削る前より削った後の方が被加工物の研磨量を増加させることができる。そのため、多孔性構造体全体では、削った後の方が、被加工物の研削量あるいは研磨量を増加させることができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0045】
上記実施形態の図8(b)の多孔性構造体10をさらに削ることもできる。図8(c)は、多孔性構造体10をさらに削って、砥粒層30だけでなく骨格20a等を削ることによって、新たに面11bが形成された状態を示している。ここで、多孔性構造体10の外形を規定している面11bは、骨格20c、20d、20e及び20fによって形成されている。尚、骨格20c、20d、20e及び20fは、めっきされた多孔質金属200の面110が削られる前において、めっきされた多孔質金属200の外径を規定する面を形成していなかった骨格である。このとき、面11bの領域D3では、砥粒31が突出している。図8(c)の面11bにおける砥粒層30の面積(領域D3)は、図8(a)の面110における砥粒層30の面積(領域D1)より大きいため、被加工物の研削量あるいは研磨量をさらに増加させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、多孔性構造体10は直方体状に形成されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、シート状又はリング状に形成されていてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、砥粒層30は、砥粒31の平均粒径3μmより厚い約16〜17μmで形成されていたが、これに限定されるものではない。図9に示すように、砥粒層30は、砥粒31の平均粒径3μmの1/2である約1.5μmで形成されていてもよく、砥粒層30の厚さは、砥粒31が砥粒層30から脱落しない厚さであればよい。この場合、砥粒層30が多孔質金属20の骨格の太さに対して十分薄いため、多孔性構造体10を所望の形状に容易に変形させることができる。
【0048】
また、上記実施形態では、砥粒31は、平均粒径が3μmで形成されていたが、これに限定されるものではなく、種々の大きさの砥粒を用いることができる。例えば、被加工物の研磨量が小さい多孔性構造体を形成する場合には、平均粒径が小さな砥粒(例えば平均粒径が0.1μm程度)を用いることができる。また、多孔質金属の開気孔が塞がれなければ、平均粒径が大きな砥粒を用いることもでき、例えば、多孔質金属の開気孔の孔径が大きい場合(例えば孔径が2mm)には、平均粒径が大きな砥粒(例えば平均粒径が800μm程度)を用いることができる。平均粒径が大きな砥粒を用いることにより、被加工物の研削量あるいは研磨量をさらに増加させることができる。
【0049】
また、上記実施形態では、砥粒層30は電気めっき法により形成されたが、これに限定されるものではなく、無電解めっき法により形成されていてもよい。詳細には、まず、めっきされる多孔質金属20の金属表面の油脂を除去するために、脱脂を行い、その後、水洗する。そして、多孔質金属20の金属表面の酸化物層を除去するために、酸処理を行い、その後、水洗する。次に、めっき槽内に、硫酸ニッケルと次亜りん酸ナトリウムとを有するめっき液を蓄え、めっき液中に、めっき被覆に取り込まれる砥粒31を混入する。そして、多孔質金属20をめっき液に浸漬する。めっき液に混入した砥粒31を多孔質金属20の表面上に堆積させるとともに、多孔質金属20の表面をめっきし、砥粒31を取り込んだ砥粒層30を成長させる。その後、砥粒層30を所望の厚さ、例えば約15μmまで形成し、めっき液から砥粒層30が形成された多孔質金属20を取り出し、水洗し、乾燥する。以上のようにして、多孔性構造体10を製造する。これにより、電気を使用せず、一層容易に多孔性構造体10を製造することができる。
【0050】
また、上記実施形態では、多孔質金属20は、発泡体などに導電性を付与した後、電気めっきを施すことによって形成されていたが、それに限定されるものではなく、例えば、基礎金属に発泡剤を添加して形成したものを用いることもできる。この場合は、まず、基礎金属を溶融させ、カルシウム、ストロンチウムなどの活性金属を添加して攪拌して基礎金属を増粘させる。そして、その溶融金属中に、発泡剤として、水素化チタンなどを添加し、加熱攪拌により水素化チタンを分解して分子状または原子状の水素を溶融金属中に生成させ、これが凝集して微細な水素ガスの気泡となり、徐々に成長させながら金属中に分散させる。その後、冷却して凝固することにより形成された、三次元網目状の骨格を有する金属多孔体を用いることもできる。
【0051】
また、多孔質金属20は、例えば、金属粉末あるいは合金粉末を水あるいは有機溶剤に懸濁分散させた塗料を製造し、この塗料を連通孔を有する発泡樹脂等の多孔質材料に含浸塗布し乾燥して金属粉末あるいは合金粉末からなる被膜を形成した後、多孔質材料を含浸塗布した金属あるいは合金の融点以下の温度で燃焼消滅させると共に金属粉末あるいは、合金粉末を焼結させることによって、形成することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10 多孔性構造体
10a 骨格
20 多孔質金属
20a、20b、20c、20d、20e、20f 骨格
21 開気孔
30 砥粒層
30a 母材
31 砥粒
31a 砥粒
31b 砥粒
50 多孔性構造体製造装置
51 電着槽
52 めっき液
55 電解金属
101 側面
102 上面
200 めっきされた多孔質金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開気孔構造を有する多孔質金属より構成される多孔性構造体の製造方法であって、
前記多孔質金属の骨格の表面に、砥粒を含む砥粒層を形成する第1の工程と、
前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削って前記砥粒層の一部を除去することにより、削った面における前記砥粒層の面積を増加させる第2の工程と、
を備えることを特徴とする多孔性構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削って、さらに前記多孔質金属の骨格の一部を除去することを特徴とする請求項1に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、電気めっき工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質金属を、Ni、Cu、Zn、Al、Au、Ag、Fe、Coからなる群から選択された1種の金属若しくはその合金又は2種以上の金属を含む合金により形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項5】
前記砥粒を、ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素(CBN)からなる群から選択される超砥粒により形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項6】
前記砥粒を、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)からなる群から選択される酸化物により形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項7】
前記砥粒を、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)からなる群から選択される炭化物により形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項8】
前記砥粒を、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)からなる群から選択される窒化物により形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項9】
前記砥粒を、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)からなる群から選択される2種以上の酸化物の複合酸化物により形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多孔性構造体の製造方法。
【請求項10】
開気孔構造を有する多孔質金属より構成される多孔性構造体であって、
前記多孔質金属の骨格の表面に、砥粒を含む砥粒層を形成し、
前記骨格の表面に砥粒層が形成された前記多孔質金属の表面を削ることにより、該削った面における前記砥粒層の面積を増加させることにより製造される、
ことを特徴とする多孔性構造体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−18099(P2013−18099A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155273(P2011−155273)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(591042045)株式会社サンツール (1)
【Fターム(参考)】