説明

多孔質で制御された可塑化表面を有する工業用ファブリック

本発明は多孔質で制御された可塑化表面を有する工業用ファブリックの製造工程と前述の特徴を有する工業用ファブリックに関する。本発明はたとえば、可塑剤と選択的な熱および/または圧力処理の使用により審美的特性を高められたプレスファブリックであって抄紙機のプレス部分に用いられる工業用ファブリックにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は多孔質で制御された可塑化表面を有する工業用ファブリックを得るための工程に関する。より詳細にはそれは抄紙機クロージングを得るための工程に関し、特に可塑剤と選択的熱処理の使用により特性が改善されたプレスファブリックに関する。
【背景技術】
【0002】
改善されたシート平坦性は今日の世界市場において主要な要求となっている。より良いファブリック平坦性と均一性は負荷の下でのより均一な圧力分布をもたらし、そして結果として、平坦な紙表面となる。芸術的に平坦なプレスファブリック表面はそれらの要求を満たすことができる。シート平坦を達成しようとする試みが多くなされてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ベース構造とバットファイバー層を有する圧縮された表面を備えるプレスファブリックが開示されたWO03/091498にはポリマーのコーティングプロセスがある抄紙機クロージング(PMC)の表面改質の例を見つけることができる。コンパクションは例えばポリウレタン、ポリアクリル酸塩、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などを用いたポリマー処理で行われる。ポリマー処理は水分散布であり、ファブリック表面はグラインディングとサンディングにより平坦化される。この表面平坦化の方法は効果的となることがあるが、表面層のファイバーがグラインディング工程により損傷し、そのファブリックは全体的に耐摩耗性に乏しくなる。さらに、多孔質基板に水性塗料を使用するとき、表面へのコーティングの実施および浸透深さの制御を適切に制御することは困難である。
【0004】
WO 02/053832に関して、それは類似の圧縮されたプレスファブリックであってプレスファブリックのエッジ部と中央部で特性が異なるものの製造方法に言及している。
そのようなプレスファブリックを用いることの欠点はプレスファブリックのクロスマシン方向に沿って特性が不規則となる結果生じる生産された紙の厚さのばらつきである。エッジ部分における浸透率が高くても低くてもクロスマシン方向に沿った水分量の抜き取りのばらつきに至ることがある。
【0005】
次にGB 2200867, US 4,529,643, および US 4,772,504を検討してみるとそれらはそれぞれファインファイバーの使用により平坦表面を有し、そして表面層へゴムまたは樹脂乳剤またはプラスチック材料を塗布する処理によって実質的に低浸透率の表面を有するやや類似するプレスファブリックに関連する。ファインファイバーの使用はプレスファブリックの耐摩耗性の実質的低下を示し、プレスファブリックの表面層の平坦化のためのゴムやプラスチック材料の塗布はゆっくり時間をかけて磨耗し、その構造の効果を低減しがちである。
【0006】
上で議論した先行技術に類似して、WO 99/41447 と WO 99/61130は層分離要素に関連し、例えばPET、PA、PPまたはPANなどの凝固高分子材料であるフッ素重合体が当該層分離要素の外表面に塗布される。
【0007】
現在の縫われたプレスファブリックにはいくらかの不均等な圧力分布とシートマーキングのおそれを起こすかもしれない刺跡があることにも注目すべきである。従って、先行技術では依然として必要な平坦性を有するファブリックが求められ、効率的な生産ができそして様々な種類のファイバー種から得ることができ、そしてなお良好な耐磨耗性を維持するファブリックが求められる。
【0008】
本発明の目的はプレスファブリックの平坦性と均一性を向上するために、たとえばプレスファブリック構造の糸および/またはバットを構成するポリアミドなどの材料に、可塑剤を使用することである。
【0009】
本発明の目的は可塑剤と選択的な熱処理の使用によって、特に平坦性の特性改善を示す多孔質表面を有する工業用ファブリックを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は可塑剤と熱処理の使用によって耐摩耗性の高い工業用ファブリックを提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は親水性の多孔質表面を有する工業用ファブリックを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、プレスニップ中の負荷下でより均一な圧力分布となるファブリックの平坦性と均一性を有する多孔質表面のプレスファブリックなどの工業用ファブリックであって、シートマーキングが全く無い平坦な紙表面と高いシート乾燥度となるものを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、ファイバー間融合を向上することでファブリックの構造内に十分なファイバー間結合を有する工業用ファブリックを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、たとえばファブリックの処理のための可塑剤の量、工程温度、圧力および処理の時間/スピードなどの可変パラメータの使用により多孔質表面の工業用ファブリックを提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、上述のパラメータを変えることにより、本質的にわずかに透過性から非透過性であってプレスベルトまたはトランスファーベルトとしても機能する表面を有する工業用ファブリックを提供することである。
【0016】
本発明は上述した先行技術のファブリックに関連する前述した問題を克服するプレスファブリックとそれの製造工程を記述するものである。
【0017】
本発明のよい理解のために、その動作上の利点および特定の目的はその使用によって達せられ、好ましいが限定的ではない本発明の実施形態が説明された添付の説明事項について言及する。
【0018】
この開示における「備える」の語は「有する」を意味し、または米国特許法で「備える」に一般的に与えられる意味である。もしクレームで「本質的に構成する」の語が使用された場合それは米国特許法における意味を有する。本発明の他の側面は以下の開示(および本発明の範囲内)に記述されまたは以下の開示から自明である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明はたとえば平坦表面などの改善された特性を有するプレスファブリック、プレスベルトおよびトランスファーベルトなどの工業用ファブリックに関する。ファブリック特性の改善はファブリック構造の材料コンポーネントに作用する可塑剤および選択的な熱および/または圧力の組み合わせによる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
実施の形態1
ここでいう工業用ファブリックとはたとえばフォーミングファブリック、プレスファブリック、又はドライヤーファブリック(抄紙機クロージング)などのエンドレスベルトをいう。それは製紙プレスベルトまたはトランスファーベルトとしても用いられ得る。それはたとえばメルトブローイングまたはスパンボンディングなどのプロセスによる不織の製品に用いられるファブリックであることもあり、またはたとえばタンニングベルトなどの繊維仕上げプロセスに用いられるファブリックであることもある。さらに、これらのベルトは透過性または不透過性の多孔質の構造を備えていることがある。
【0021】
工業用ファブリック、特にプレスファブリックは、プレスニップ中でペーパーシートを脱水するための製紙機のプレス部に用いられる。プレスファブリックは、糸材で作られることがありまたプレスファブリックのマシン方向にエンドレスである支持構造またはファブリックを備える。通常はバットファイバーの一又は複数の層は従来型の穿刺器具を用いてそこに加えられる。本発明で用いられる支持構造かファブリックは、織物、たとえば編まれた不織布、押し出されたメッシュ、らせん状リンク、マシン方向(MD)またはクロスマシン方向(CD)糸アレイ、および、織物および不織布材料のらせん状にねじれた細長い切れを含む。支持構造かファブリックはファブリックのどちらかの表面に付加されたバット層を含むこともあるし含まないこともある。ファブリックは、あらゆるタイプの糸を含むことがあり、そしてたとえばモノフィラメント、撚り合わされたモノフィラメント、マルチフィラメントまたは撚り合わされたマルチフィラメント、その他同一出願人によるU.S. Patent No. 5,525, 410 で教示されその内容が参照用にここに組み込まれたマルチストランド糸などの当業者に知られたものを形成する。そのようなファブリックは単層あるいは多層あるいは多層化された織物構造であってもよい。たとえば、MDとCDの両方あるいはいずれかの、マルチフィラメント、BCF(バルク連続フィラメント)、質感を持たせたマルチフィラメント又はマルチストランド糸などからなる多層織物構造であってバットを有しない構造も用いられるかもしれない。上述した構造の一つあるいは複数の積層品も同様に用いられることがある。たとえば梳綿によって製造されるバットなどの繊維コンポーネントは少なくともベース支持構造の外表面に加えられる。 たとえばエアーレイイング、スパンボンディングなどによって製造された他の不織物もたとえば接着剤などの方法によって代わりに加えられるかもしれない。支持構造やファブリックを形成する糸は典型的には、たとえば工業ファブリックの技術における通常の知識を有する者によってこの目的に用いられるポリアミドなどの合成ポリマー樹脂のいずれかから押し出される。しかしながら、それぞれのポリマーは、望ましい平坦な表面を実現するために異なる可塑剤またはその組み合わせ、およびプロセス条件の個別設定を必要とすることがある。
【0022】
本発明の一つの実施形態では、たとえばポリアミドなどで作られた支持構造やファブリックのどちらか一方の表面に付加されたファイバー材料またはバットの単層または多層は、可塑剤を用いて処理される。選ばれた可塑剤の吸着はファイバー材料のガラス転位温度の変化を引き起こす、そして、熱および/または圧力の使用はバットコンポーネント全体の緻密化およびファイバー平坦化を引き起こす。この効果は、可塑剤の使用によるガラス転位温度の低下の結果ファイバー間結合が強化された低溶解ファイバーを有するファブリックにおいてより顕著である、その結果それらを融解過程またはその近くまで移動させ、そしてそれ以降の熱と圧力の使用はファイバーを隣接するファイバーへ完全に結合させる。適切な量の可塑剤、時間、温度、そしてファブリック構造へ加えられる圧力により、望ましいファイバー間融合を達成することができる。これはファブリックの表面平坦性と表面完全性(耐摩耗性)の両方を改善する。しかしながら、表面のどちらかに付加されたファイバー材料が全く無い構造もまた使用することができる。たとえば、たとえば同一出願人によるU.S. Patent No. 5,525,410で教示するようにたとえばバルク連続フィラメント(BCF)、質感を持たせたまたはマルチストランド糸などのポリアミド糸を有する多層織物構造は、ここの基板として使用され得るものでありそして選択的な熱、もし必要であれば平坦で多孔質な表面をそこに形成するための圧力、を伴った選ばれた可塑剤の添加により処理され得る。
【0023】
本発明で用いられる可塑剤は望ましくは水溶性の液体、非イオンのポリアルコキシまたはポリヒドロキシ化合物である。水溶性の液体はグリセリン/水およびレゾルシノール/水からなるグループの中から選択することができる。幾つかの一般に知られている可塑剤であって本発明にも使用可能なものの例としては、限定的ではないが、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、レソルシノール、グリセロール、ジエチレングリコールジベンゾエート、メチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(n−ブチル)フタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジル、ジ(n-オクチル)フタル酸エステル、それの誘導体、組み合わせ、それの混合物および別の高分子可塑剤であって技術的に一般に知られているものが含まれる。たとえば、グリセロールとジプロピレングリコールの混合物が効果的であることが判明している。
【0024】
製造された紙がたとえば糸からのマーキングなどの非均一性を呈さないためには、その耐用年数の間に平坦な表面のプレスファブリックを維持することが重要である。
【0025】
たとえばグリセロール水溶液などでプレスファブリックを処理し、そのファブリックを熱間圧延(はめ合わせ圧力ロールを伴うときも伴わないときもある)に通すことによって、加熱ローラに接する表面は、適切な条件下で、可塑化できそして平坦な多孔質であり透過性のある表面をファブリック上に形成できる。その工程はほとんどまたは実質的に不透過性の表面も形成でき、後にもし必要であれば分離された工程によって有孔にできる。他のそのような構造であって平坦で本質的に不透過性の表面を有するものはプレスベルトまたはトランスファーベルトまたは他のそのような構造であって当業者に知られたものとしても利用することができる。可塑化はグリセロールと水の量に基づいて所望のレベル/厚さに制御することができ、またファブリックの表面の変形の程度はロール温度、圧力そして処理の時間/スピードに基づいて所望のレベルおよび/または厚さに制御できる。その工程は水のグリセロールを平坦となるべき表面に向かって移動させ、水を蒸発させることで制御される、そしてもし適切であるなら、同時に弱い/強い圧力でファブリックを扱いその結果ファイバーの変形を引き起こしまたファイバー間結合を引き起こす。ここの熱は、紙側表面を可塑化することが意図であるときは、ファブリックの紙接触面だけに適用される。特定の条件下では圧力ロールは全く必要でないかもしれない。
【0026】
一つの実施形態では、図1に示される2ローラ加工機100が本発明の熱と圧力印加のために使用されてもよい。たとえばキスロールやスプレーノズル40などのシステムは図1に示すように可塑剤の添加に用いることができる。そのような加工機は典型的には2またはそれ以上の平行に離間したロールを有する機械であり、ファブリック22が二つのロールを通るときにファブリック22に均一な圧力と張力を与える。本実施形態では、加工機100は、一定距離離間したストレッチロール10とロール20によって定義され、処理しているファブリック22へ望ましい量の熱と圧力を与え得る。ロール20もまた加熱され得る。可塑化の程度は可塑剤の量に基づいて所望のレベルおよび/または厚さに制御することができ、また変形の程度はロール温度および/または、2のロールの距離を離間させることによるファブリック張力または時間および/または処理のスピードを制御することによって所望のレベルおよび/または厚さに制御することができる。さらに、機械100は、付加的な圧力をファブリック22へ与えるために追加で搭載されたはめあわせロール30を含むこともある。
【0027】
本発明の他の実施形態では、ポリアミド(PA)と、選択された可塑剤と反応しない特定のほかのファイバーとの混合、たとえばレーヨンまたはアクリルなどのファイバー、を備えるバットファイバーの1またはそれ以上の層を支持構造またはファブリックに普通は穿刺によって適用することによって、非常に平坦な多孔質表面を有するファブリックを得ることができる。そしてそのようなファブリックは図1に示すように加工機に取り付けられそしてその後その構造への付加的な熱と圧力を伴ってポリアミドファイバーへ可塑剤が加えられる。PAと特定のほかのファイバーのブレンドをその構造へ併合するそのようなファブリックの使用において、抄紙機の使用中に非PAファイバーは繊維状構造になりそのファブリックをすり減らす。しかしながら、稼働または挿入の段階の間に、これらのファイバーは特定のファブリック密度を維持するために重要な役割を果たす。ファブリックが小さいと、それらはさらに密になる。理想的なファブリックはその耐用期間を通して一定の密度を有する。これは薄い織物の製造および印刷用フィルム機械の最後のプレスのためのファブリックにとって非常に重要である。ファブリックは、上述の通り、開始時に明確な多孔質表面と密度を有するだろう。非拘束で、可塑化していないファイバーが消えていきファブリックが小さくなっても、所望の密度と開放性が保たれる。
【0028】
可塑化のプロセスの後に、いくらかの余剰の可塑剤を除去するためにファブリックは水や水/洗剤溶液で洗われることができる。しかしながら、もしいくらかの可塑剤が残りファブリック中に存在していると、ファブリックはやわらかくなりそして抄紙機への取り付けと湿らすことの両方が容易になるだろう。
【0029】
本発明に従ったプロセスを利用することにより製造されたプレスファブリック、プレスベルト、またはトランスファーベルトについて他の一般的な特性と重要な特徴は以下のように述べることができる:
・可塑化のプロセスは表面層に制限されそれ故ファブリックの硬化が制限される;
・表面層の弾力性は優れており、例えばPAの多孔質“皮膜”またはPAブレンドが上で弱らせたPA構造が下である;
・多孔質透過性または非透過性表面は高圧の印加に耐性が高い、すなわち表面は高い耐磨耗性を有するだろう。ファブリックまたはベルトの平坦な表面または所望の非透過性のいずれかを達成するために一般的に用いられるコーティングプロセスを回避する、それによって付加的な薬液の使用または製造時間を排除する;
・このプロセスで用いられた薬液は環境の視点からいかなる大きな問題も呈さずそして産業的規模での生産に役立つ;そして、
・少量の余剰可塑剤がファブリック内にも残ることができ取り付けの間の柔軟剤および導入剤として機能する、そして抄紙機の開始段階で洗い流される。
本発明のほかの実施形態では、ファイバーウェブまたはバット層の一部としての複合繊維の使用が開示される。そのような複合繊維は、たとえば、シースコアまたは並列タイプのいずれかからなる。適切なポリマーはたとえばcoPA+PA6β(たとえばEMSファイバータイプBA115とBA140)、PA6+PA6.6(たとえばEMSファイバータイプBA3100)およびその混合物である。複合繊維の使用は幾つかの付加的な効果を提供する、たとえば:
1、可塑剤の使用は両方のポリマーのガラス転位温度Tgを40−600℃まで低下させる。そしてプロセス中の温度が非常に低くなり熱にさらされたときの酸化によるファイバーのダメージが大幅に低減される。従って別のやり方では深刻な問題となる黄変と劣化が非常に制限される。たとえば本発明によればEMSファイバータイプKA140は110−1200℃のロール表面温度で容易に溶解するが、ファイバーへの可塑剤の適用がない標準的なロール表面温度は170−1800℃である;
2、最終ファブリック表面は、可塑化層の下のファイバーと同様に、コンポーネントポリマーへの熱ダメージが抑制されているため、高い耐磨耗性と弾力性を有する。
3、PA6/PA6.6複合繊維の場合、ファイバーと糸に非可逆のダメージをもたらさない熱処理のみによってはファイバーの可溶のPA6部分を溶解することは不可能である、なぜならおよそ240−2500℃の温度が必要だからである。
しかしながら、可塑剤を用いる本発明では、温度は1700℃またはさらに低く制限できる、その結果、熱および/または圧力が適用されたときにファイバー間結合を強化できる。さらに、PA6/PA6.6複合繊維のPA6は通常の可溶複合繊維で用いられるcoPAよりさらに耐磨耗性がある。従って本発明は可溶coPAよりも抄紙機クロージング(PMC)への応用に適したPAポリマーに基づいた複合繊維の使用の可能性を提供する。ここで開示した複合繊維に類似する複合糸はファブリックや支持構造を形成するのに使用でき、特にファブリックにファイバーおよび/またはバットの層がない実施形態において使用できる。これらの糸は、たとえば、シースコアまたは並列型のいずれかであってもよい。適切なポリマーはたとえばPA6+PA6.6(たとえばEMSファイバータイプBA3100)、coPA+PA6(たとえばEMSファイバータイプBA115およびBA140)およびその混合物である。
【0030】
実施の形態2
一つの実施形態に従った本発明は先の実施形態で述べた工業用ファブリックの製造の工程又は方法である。その工程は、上述した支持構造またはファブリックの提供、可塑剤を用いたファブリックの処理、および、圧力を伴いまたは伴わず、ファブリックの表面の可塑化に十分な温度で、ファブリック表面をロールに選択的に通過させることを含む。その工程は支持構造に一またはそれ以上のバットファイバー材料の層を含むことも含まないこともある。さらに、一またはそれ以上の上述の構造の積層品も製造できる。たとえばカーディングにより製造されたバットなどの付加的な繊維コンポーネントは、少なくともベース構造またはファブリックの外面に加えることができる。
【0031】
この工程で用いられる可塑剤はグリセロールと水であることがありそして可塑化は使用されるグリセロールと水の量に基づいて所望のレベルおよび/またはファブリック厚さに制御できる。可塑剤は、限定的ではないが、グリセリン/グリセロール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、レソルシノール、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(n−ブチル)フタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジル、ジ(n-オクチル)フタル酸エステル、それの誘導体およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されてもよい。本発明の可塑化は使用される可塑剤の量に基づいて所望のレベルおよび/またはファブリック厚さに制御でき、そしてファブリックの表面の変形の程度はその表面に接するロールの温度、ファブリックに適用される圧力や張力または時間および/または処理のスピードに基づいて制御できる。
【0032】
この工程は選択された可塑剤で工業用ファブリックを処理しそしてそのファブリックに(はめ合わせ圧力ロールを伴うまたは伴わない)高温ロールを通過させることで実行され得る。加熱ロールに接した表面は可塑化し、そして平坦で、多孔質の、透過性の表面をファブリック上に形成する。その工程はほとんど非透過性の表面も形成することができその後もし必要であれば別の工程によって有孔とすることができる。その工程は、加熱されたロールの方を向いた表面である平坦となるべき表面に向かって可塑剤を移動させることによって制御され、そして、もし適切であれば、同時に弱い/強い圧力でファブリックを処理しそれによってファイバーの変形を引き起こす。この効果は、可塑剤によるガラス転位温度の低減の結果ファイバー間結合が強化された可溶ファイバーを有するファブリックにおいてより顕著であり、それによりそれらを融解過程またはその近くまで移動させ、そしてその後の熱と圧力の使用はファイバー間の完全な結合を引き起こす。ここの熱は、紙側表面を可塑化することが意図であるときに、ファブリックの紙接触面だけに適用される。特定の条件下では圧力ロールは全く必要でないかもしれない。
【0033】
このように本発明によれば、その目的と効果を実現でき、そしてここで好ましい実施形態について開示し詳細に説明したが、その範囲と対象を制限するべきではなく、むしろその範囲は添付されたクレームによって決定するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の更なる理解を提供するために含められ、また明細書の一部を構成しそこに組み込まれた添付図面は、本発明の実施形態を説明し記載とともに本発明の原理の説明に役立つ、図において: 図1は本発明の一側面に従った工業用ファブリックの製造に用いられる加工機である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料で形成された支持構造を備え、前記ファブリック支持構造の表面は前記高分子材料のガラス転位温度を低減させるのに十分な可塑剤で処理されたことを特徴とする多孔質構造の工業用ファブリック。
【請求項2】
前記支持構造に加えられた繊維素材の一又はそれ以上の層をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項3】
前記ファブリックの表面は、ファイバーの変形を達成するための圧力および/または熱を伴いまたは伴わず、ロール上および周りを通過することによって変形したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の工業用ファブリック。
【請求項4】
前記ファブリックの表面は、ファイバー間結合を達成するための圧力および/または熱を伴いまたは伴わず、ロール上および周りを通過することによって変形したことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の工業用ファブリック。
【請求項5】
前記可塑剤はグリセリン/グリセロール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、レソルシノール、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(n−ブチル)フタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジル、ジ(n-オクチル)フタル酸エステル、それの誘導体およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項6】
前記可塑剤はグリセロールとジプロピレングリコールの混合物を備えることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項7】
前記支持構造は織物、多層の織物、不織布、編物、押し出されたメッシュ、らせん状のリンク、マシン方向(MD)糸アレイ、クロスマシン方向(CD)糸アレイ、織物および不織布材料のらせん状にねじれた細長い切れ、およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項8】
前記繊維素材の材料の層はポリアミド(PA)を備えることを特徴とする請求項2に記載の工業用ファブリック。
【請求項9】
前記支持構造はポリアミド糸(PA)を備えることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項10】
前記糸はモノフィラメント、撚り合わされたモノフィラメント、マルチフィラメントまたは撚り合わされたマルチフィラメント、バルク連続フィラメント(BCF)、質感を持たせたマルチフィラメント又は前記ファブリックのマシン方向(MD)および/またはクロスマシン方向(CD)のマルチストランド糸であることを特徴とする請求項9に記載の工業用ファブリック。
【請求項11】
前記支持構造は複合糸を備えることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項12】
前記複合糸はPA+PA6,PA6+PA6.6および その混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項11に記載の工業用ファブリック。
【請求項13】
前記工業用ファブリックは透過性または不透過性であることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項14】
前記工業用ファブリックは、フォーミングファブリック、プレスファブリック、プレスベルト、トランスファーベルト、ドライヤーファブリック、メルトブローイングまたはスパンボンディング工程で用いられるファブリック、または繊維加工仕上げ工程で用いられるファブリックであることを特徴とする請求項1に記載の工業用ファブリック。
【請求項15】
前記繊維素材の層はPA繊維と前記可塑剤と反応しない他の素材繊維との混合を備えることを特徴とする請求項2に記載の工業用ファブリック。
【請求項16】
前記他の素材繊維はレーヨン、アクリルおよびその混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項15に記載の工業用ファブリック。
【請求項17】
前記繊維素材の層は複合繊維を備えることを特徴とする請求項2に記載の工業用ファブリック。
【請求項18】
前記複合繊維はcoPA+PA6,PA6+PA6.6およびその混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項17に記載の工業用ファブリック。
【請求項19】
請求項7に記載の前記ファブリックの一またはそれ以上の層を備えたベース支持構造のための積層構造を備えた工業用ファブリック。
【請求項20】
前記積層構造に加えられた繊維素材の一またはそれ以上の層をさらに備えることを特徴とする請求項19に記載の工業用ファブリック。
【請求項21】
高分子材料で形成された支持構造を供給する工程、および前記高分子材料のガラス転位温度を低減するのに十分な可塑剤で前記支持構造の表面を処理する工程を備えたことを特徴とする多孔質構造を有する工業用ファブリックの製造プロセス。
【請求項22】
前記支持構造に繊維素材の一またはそれ以上の層を付加する工程をさらに備えることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
ファブリック表面を変形させるために、圧力および/または熱を伴いまたは伴わず、ファブリック表面にロール上および周りを通過させる工程をさらに備えることを特徴とする請求項21または22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
ファイバー間結合を起こすために、圧力および/または熱を伴いまたは伴わず、ファブリック表面にロール上および周りを通過させる工程をさらに備えることを特徴とする請求項21または22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記可塑剤はグリセロールと水であり、可塑化はグリセロールと水の量により所望のレベルおよび/またはファブリック厚さに制御できることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
前記可塑剤は、グリセリン/グリセロール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、レソルシノール、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(n−ブチル)フタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジル、ジ(n-オクチル)フタル酸エステル、それの誘導体およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項27】
前記可塑剤はグリセロールとジプロピレングリコールの混合物を備えることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項28】
前記支持構造は織物、多層の織物、不織布、編物、押し出されたメッシュ、らせん状のリンク、マシン方向(MD)糸アレイ、クロスマシン方向(CD)糸アレイ、織物および不織布材料のらせん状にねじれた細長い切れ、およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項29】
変形の程度はファブリック表面に接するロールの温度により所望のレベルおよび/または厚さに制御できることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項30】
変形の程度は前記ファブリック印加された圧力により所望のレベルおよび/または厚さに制御できることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項31】
変形の程度は通過の時間および/またはスピードにより所望のレベルおよび/または厚さに制御できることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項32】
前記繊維素材の層はポリアミド(PA)を備えることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項33】
前記支持構造は複合糸を備えることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項34】
前記複合糸はcoPA+PA6,PA6+PA6.6およびその混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記繊維素材の層はPA繊維と前記可塑剤と反応しない他の素材繊維との混合を備えることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項36】
前記他の素材繊維はレーヨン、アクリルおよびその混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項35に記載のプロセス。
【請求項37】
前記繊維素材の層は複合繊維を備えることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項38】
前記複合繊維はcoPA+PA6,PA6+PA6.6およびその混合物からなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記支持構造はポリアミド(PA)糸を備えることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項40】
前記糸はモノフィラメント、撚り合わされたモノフィラメント、マルチフィラメントまたは撚り合わされたマルチフィラメント、バルク連続フィラメント(BCF)、前記ファブリックのマシン方向(MD)および/またはクロスマシン方向(CD)の質感を持たせたマルチフィラメントまたはマルチストランド糸であることを特徴とする請求項39に記載のプロセス。
【請求項41】
前記工業用ファブリックは透過性または不透過性であることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項42】
前記工業用ファブリックはフォーミングファブリック、プレスファブリック、プレスベルト、トランスファーベルト、ドライヤーファブリック、メルトブローイングまたはスパンボンディング工程で用いられるファブリック、または繊維加工仕上げ工程で用いられるファブリックであることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項43】
前記支持構造の一またはそれ以上の層を積層する工程をさらに備えることを特徴とする請求項28に記載のプロセス。
【請求項44】
前記積層構造に繊維素材の一またはそれ以上の層を加える工程をさらに備えることを特徴とする請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
可塑剤でファブリックを処理する工程を備えた工業用ファブリックの製造方法。
【請求項46】
前記可塑剤はグリセリン/グリセロール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、レソルシノール、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ビス(n−ブチル)フタル酸エステル、フタル酸ブチルベンジル、ジ(n-オクチル)フタル酸エステル、それの誘導体およびそれの組み合わせからなるグループの中から選択されることを特徴とする請求項45に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530483(P2010−530483A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513318(P2010−513318)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/065797
【国際公開番号】WO2008/157041
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】