説明

多孔質セラミックの製造方法、多孔質セラミック及びタイル

【課題】 軽量で気孔率の高い多孔質セラミックを安価に製造する。
【解決手段】 石灰岩汚泥及び微砂キラを必須2成分とし、該必須2成分の一方が該必須2成分中で占める比率が42%を下回ることなく、前記必須2成分の合計配合比が90%以上である組成物を焼結する。石灰岩汚泥はCaCO3を豊富に含み、微砂キラはSiO2を豊富に含んでいる。このため、この両者を混合して焼成すると、CaCO3とSiO2の焼結によりCaOSiO2(ワラストナイト)が生成されると同時にCO2が排出される。このCO2により気孔が形成され(多孔質化し)、同時に軽量化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質セラミックの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
多孔質セラミックは、多孔質、軽量で耐熱性、耐薬品性などに優れることから、断熱材料、軽量化建材、保水材料などに利用されている。
セラミックを多孔化する方法としては、(1)SiCに代表される無機炭化物質を使用した高温発泡、(2)無機軽量バルーンを混入して焼成する方法、(3)紙、炭などの可燃物を混入して高温で燃焼させる方法などがある。
【特許文献1】特開平6−144943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記(1)の方法は、寸法、形状が悪化する。また、ねらいどおりの寸法、形状になりにくい。(2)の方法は原料が高価でコストアップになる。また、軽量化には良いが気孔率の増加には不向き。(3)の方法は、成型時のキレ等の欠点が発生しやすい。
【0004】
従来の各方法には上記のような欠点があったので、そうした欠点の克服が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の多孔質セラミックの製造方法は、
石灰岩汚泥及び微砂キラを必須2成分とし、
該必須2成分の一方が該必須2成分中で占める比率が42%を下回ることなく、
前記必須2成分の合計配合比が90%以上である
組成物を
焼結することを特徴とする。
【0006】
石灰岩汚泥は、石灰岩鉱山で採掘された粗鉱を破砕後、水洗するときに発生した汚泥を例えばフィルタープレスで脱水したものである。一例として三星砿業株式会社から「ミツボシ粘土」の商品名で販売されているが、この「ミツボシ粘土」又はこれと同様のものを使用できる。
【0007】
微砂キラは、ガラス原料や窯業用粘土に含まれる珪砂の採掘くずである粘土混じりの微砂であり、従来は産業廃棄物として処理されていた。
上述の出自であることから、石灰岩汚泥はCaCO3を豊富に含み、微砂キラはSiO2を豊富に含んでいる。このため、この両者を混合して焼成すると、CaCO3とSiO2の焼結によりCaOSiO2(ワラストナイト)が生成されると同時にCO2が排出される。このCO2により気孔が形成され(多孔質化し)、同時に軽量化される。
【0008】
この際の焼成温度及び時間はワラストナイトの生成に充分であればよいので、その限りにおいて制限はないが、磁器の焼成条件と同様でよい。
産廃として処理されていた微砂キラであるから、低価格で入手できる。また、資源の有効利用ともなる。
【0009】
必須2成分である石灰岩汚泥と微砂キラとの配合比は、それぞれのCaCO3及びSiO2の含有率にも依るので一律ではないが、おおむね5:5を基本とする。この配合比に偏りがあると(4以下:6以上、つまり一方が40%以下になると)、耐火度が低下して焼成時にキレや割れが発生する。従って、4〜6:6〜4の範囲で配合するのが望ましく、必須2成分の一方が該必須2成分中で占める比率が42%を下回ることのない配合がより好ましい。
【0010】
また、組成物(焼成原料)に占める必須2成分の割合が小さいと上述の多孔質化、軽量化の効果が充分に得られない。従って、組成物中で必須2成分の占める割合(合計配合比)を90%以上にするのが望ましい。なお、より好ましくはこの合計配合比を94%以上とするのがよく、同96%以上がさらに好ましい。
【0011】
また、組成物の成分として、上記の必須2成分に加えて、粘土を含むと成型性や焼結性が向上する。磁器又は陶器の原料として使用される粘土であれば使用できるが、中でもベントナイトが好適である。
【0012】
組成物中で粘土(ベントナイト)が占める割合は、必須2成分を配合した残余すなわち10%以下、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下である。また、このことから明らかではあるが、必須2成分及び粘土(ベントナイト)以外の成分は不要である。
【0013】
組成物の調製から焼成までの工程は、公知の方法に従えばよい。一例として、原料調合→トロンミル粉砕→スプレードライヤーで顆粒粉にする→成形→焼成→完成、という工程になる。
【0014】
製造された多孔質セラミックは、従来のものと同様に断熱材料、軽量化建材、保水材料などに利用できる。また、多孔質セラミックをタイル形態にすれば、外壁などに従来のタイルと同様に施工できる。
【0015】
本発明による多孔質セラミックは、寸法、形状が悪化せず、ねらいどおりの寸法、形状にでき、原料は安価で、軽量化と気孔率の増加を同時に達成でき、成型時のキレ等も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例]
(1)石灰岩汚泥(ミツボシ粘土)の分析値
【0017】
【表1】

【0018】
(2)微砂キラの分析値
【0019】
【表2】

【0020】
(3)タイルの製造
上記(1)の石灰岩汚泥及び(2)の微砂キラとベントナイトを、下記の表3に示す割合(重量%)で調合し、これをトロンミル粉砕し、スプレードライヤーで顆粒粉にして、タイル素地として成型し(圧力250kg/cm2)、焼成した(温度1250℃、時間90分)。なお、この工程は、通常のタイル製造工程と同様である。
(4)焼成評価
【0021】
【表3】

【0022】
(5)性能
実施例3のタイルの性能測定値を表4に示す。
【0023】
【表4】

【0024】
(6)結晶生成物定性分析
実施例3のタイルの結晶生成物定性分析グラフを図1に示す。この分析結果から明らかなとおり、CaOSiO2(ワラストナイト)が生成されている。
(7)電子顕微鏡写真
実施例3のタイルの結晶構造の電子顕微鏡写真を図2に示す。この電子顕微鏡写真により、タイルには微細な気孔が極めて多数形成されて多孔質化していることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例3のタイルの結晶生成物定性分析グラフ。
【図2】実施例3のタイルの結晶構造の電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰岩汚泥及び微砂キラを必須2成分とし、
該必須2成分の一方が該必須2成分中で占める比率が42%を下回ることなく、
前記必須2成分の合計配合比が90%以上である
組成物を
焼結することを特徴とする多孔質セラミックの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の多孔質セラミックの製造方法において、
前記組成物の成分として粘土が含まれていることを特徴とする多孔質セラミックの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の多孔質セラミックの製造方法において、
前記粘土はベントナイトであることを特徴とする多孔質セラミックの製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の多孔質セラミックの製造方法において、
前記組成物における前記粘土の配合比が6%以下であることを特徴とする多孔質セラミックの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の製造方法で製造された多孔質セラミック。
【請求項6】
請求項5記載の多孔質セラミックであるタイル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−131446(P2006−131446A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321312(P2004−321312)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(590001670)株式会社カネキ製陶所 (3)
【Fターム(参考)】