説明

多孔質セラミックチューブの製造方法

【課題】 品質のよい多孔質セラミックチューブを歩留まり良く生産する、生産性の高い多孔質セラミックチューブの製造方法の提供。
【解決手段】 セラミック原料からなるグリーンチューブを焼成する多孔質セラミックチューブの製造方法において、前記グリーンチューブを耐火櫃体内に横置きし、グリーンチューブの内外にセラミックボールを充填してグリーンチューブを焼成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱ガスフィルタ等に用いられる多孔質セラミックチューブの製造法に係り、より詳しくはセラミック原料からなるグリーンチューブの焼成方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近時、石炭火力発電に使用される新しい技術として加圧流動床燃焼ボイラが精力的に開発されている。この技術は、日経メカニカル誌1997年4月28日、第505号、第57〜60頁に記載されるように、石炭と石灰石のスラリをボイラ内で加圧燃焼させて蒸気を発生し、発電用蒸気タービンを駆動するとともに、ボイラの高温の燃焼排ガスにより発電用ガスタービンを駆動して発電効率の向上を図るものである。ここに、大きな課題となっているのが、ガスタービンの駆動源となるボイラの燃焼排ガスからの各種ダスト(石炭の灰、石灰石、未燃焼のカーボンあるいは石炭中に含まれる硫黄分と石灰石が反応して生成する石膏など)の除去すなわち高温ガスのフィルタリング、除塵技術である。
【0003】この除塵技術に関しては、前記日経メカニカル誌、第60頁第4図に記載されているように、缶体内に多孔質セラミック等からなる耐熱性の濾筒からなるフィルタを用い、該フィルタを通過せしめた高温ガス中のダストを除去する除塵装置が提案されている。
【0004】ここに用いられるフィルタは、耐熱強度、濾過性能などが重要であり、セラミック原料組成の開発も進められ、例えば、特開平3-68411号公報には前記フィルタに好適なセラミック組成および製造方法が提案されている。このようなフィルタ、すなわち、多孔質セラミックチューブは、原料セラミックを混練して、両端開放の円筒チューブ、あるいは、キャンドルフィルタとして使用される一端閉止のチューブ形状に成形し(この焼成前のチューブ成形体をグリーンチューブ(生チューブ)という)、必要に応じ仕上げ加工を施した後セラミック原料組成に対応し、例えば、1300〜1400℃の高温で焼成して製造される。
【0005】従来、このグリーンチューブの焼成においては、グリーンチューブを焼成炉中に立てて焼成を行っていた。しかし、上述の高温ガスの除塵装置における装置の大型化、高性能化のニーズに対応するためには、それに用いられるフィルタチューブも大型化されることが望まれている。
【0006】一般に、グリーンチューブにはセラミック骨材、結合材、および樹脂あるいは炭素成分などの気孔付与材が含まれるが、結合材にはセラミック骨材と同様の成分も含まれており、これら結合材を溶融させてセラミック骨材の強固な結合を達成するため必然的に、焼成温度はセラミック骨材の軟化点近傍となり、焼成中に変形が生じ製品の歩留まりを低下させる原因となる。また、グリーンチューブが大型になるにしたがい、全体を均一に焼成することが難しくなり、これもまた歩留まりを下げる要因となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、叙上の従来技術の問題点を解決し、品質のよい多孔質セラミックチューブを歩留まり良く生産する、生産性の高い多孔質セラミックチューブの製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、セラミック原料からなるグリーンチューブを焼成する多孔質セラミックチューブの製造方法において、前記グリーンチューブを耐火櫃体内に横置きし、グリーンチューブの内外にセラミックボールを充填してグリーンチューブを焼成することを特徴とするものである。これにより、焼成中の多孔質セラミックチューブの軟化による変形を防止し、均一な焼成を行い、大型のチューブの製造を可能にするとともに、品質の向上とともに歩留まりの向上を達成できるものである。
【0009】また、セラミック原料がコーディエライトとした場合は、気孔率の高い多孔質セラミックチューブが得られるものの焼成中の変形が大きくなるが、本発明によれば変形のない優れた多孔質セラミックチューブを得ることができる。
【0010】また、耐火櫃体に複数のグリーンチューブを収納し、さらにはこの耐火櫃体を同時に複数個積重ねて焼成し、あるいは、これらを台車に載置し、焼成炉中を移動させつつ連続的に焼成することにより、それぞれ、一層、多孔質セラミックチューブの生産性を高め、延いては、生産コストの低減を図るものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】図1は本発明に係る多孔質セラミックチューブの製造方法の焼成工程を簡略化して示した工程図である。先ず、最初に所要の量の中実もしくは中空のセラミックボール1を、耐火性の櫃体2に注入する(「工程−1」)。所要の量のセラミックボール1を櫃体2に入れ、これを均した後、焼成すべきグリーンチューブ3を櫃体2内に横にして配置する(「工程−2」)。次に、改めてセラミックボール1を櫃体2内に補給し、グリーンチューブ3の内外に隙間なく充填し、櫃体2の蓋2aをかぶせる(「工程−3」)。グリーンチューブを収容した櫃体は台車4に載置され、グリーンチューブ、櫃体は、台車4ごと、加熱バーナ5aで所要の温度に加熱された連続焼成炉5に導かれ、順次移動しつつ、焼成されて所望の品質の多孔質セラミックチューブとなり、炉外で冷却、加工その他必要な処理をして製品として完成する。
【0013】ここに、本発明においては、グリーンチューブ3を櫃体2内に横置き、すなわちグリーンチューブが、好ましくは可及的に水平になるように横に寝かせて配置し、櫃体2内に充填したセラミックボール1によりその形態を保持するごとくなして焼成するので、焼成時軟化点に達しても変形が抑止される。また、グリーンチューブ3は、セラミックボール1を充填した櫃体2内に収容された状態で加熱、焼成されるので、加熱バーナ5aに直接暴露されず、焼成炉中の避けられない温度分布の影響を受けることなく、チューブ全体が均一に加熱焼成され、均斉な品質の多孔質セラミックチューブを得ることができる。結果として製品歩留まりを大きく向上することができるものである。
【0014】セラミックボールは、櫃体中においてグリーンチューブの表面をできるだけ覆うように充填することが好ましい。特に、セラミックボールが実質上グリーンチューブのすべての表面を覆うように櫃体中におけるセラミックボールの充填率は、ほぼ100%とするのが好ましい。
【0015】上の実施形態においては、各台車に1つのグリーンチューブを収容した櫃体を1つ載置し、焼成処理する方法を説明したが、この櫃体は例えば、図2に示すとおり、台車40に櫃体20より大きめの蓋20aを介して多段に(図2では2段)積載することもできる。
【0016】また、図3に示すごとく、櫃体は、底と一体になった箱型である必要はなく、長方形の枠体21aと、その上の天板21bと、その下の底板21cとからなる櫃体21としてもよい。また、櫃体21を台車41に多段積載する場合は、下の櫃体21と台車41の間、上下の櫃体21の間にスペーサ41aを挟み、各櫃体各面が均一に加熱されるようすることもできる。このように櫃体は必要に応じ任意の構造、形態を取ることができ、グリーンチューブを横に寝かせて配置でき、セラミックボールを、その中に保持できるものであればよい。
【0017】台車の移動速度は、グリーンチューブの材質、焼成条件により異なるが、好ましくは0.5〜3m/hrとする。
【0018】さらに、生産性をより一層高めるため、あるいは、小型のグリーンチューブの処理の場合は、図4に示すごとく1の台車42に、櫃体22を複数列、複数段(図の場合は2列、3段)スペーサ42aを介して積載することができる。なお、図4において、50はバッチ式の焼成炉を示す。
【0019】セラミックボールの大きさ、材質、中空/中実の選定は、処理されるグリーンチューブの材質、大きさ、あるいは焼成条件(酸化雰囲気、還元雰囲気、不活性雰囲気あるいは焼成温度)により適宜選択する。
【0020】本発明に用いられるセラミックボールは、粒径が1〜10mm、特に3〜5mmの中実もしくは中空のものを用いるのが好ましい。上記粒径が1mmより小さい場合は、櫃体中の空隙率が小さくなり、グリーンチューブ焼成時にグリーンチューブより発生するガスの透過性が低下する。一方、上記粒径が10mmより大きい場合は、グリーンチューブとセラミックボールが接触する部分、接触しない部分とで凹凸ができるおそれがある。
【0021】また、処理されるグリーンチューブがコーディエライト質粒子を主成分とするセラミック原料からなる場合は、セラミックボールとしてアルミナ(Al23)からなるものを用いるのが好ましい。
【0022】本発明の多孔質セラミックチューブの製造方法は、コーディエライト質粒子を主成分とするセラミック原料からなるグリーンチューブを焼成するのに好ましく用いられる。このセラミック原料からなるグリーンチューブを焼成して得られる多孔質のセラミックチューブは、気孔率が高く、焼成中に軟化による変形を起こしやすいが、本発明を用いることによりこれを防止できる。
【0023】また、焼成方法について言えば、前記実施形態ではバーナ加熱の連続焼成炉を示したが電気炉、またバッチ炉など任意の焼成方法を採用できる。焼成温度は、グリーンチューブの材質、大きさ等により異なるが、一般的には1000〜2000℃程度である。さらに、櫃体、スペーサあるいは台車などの耐火、耐熱性の部材については、黒鉛、炭化珪素などの耐熱性材料を用いることができる。
【0024】多孔質セラミックチューブの用途について言えば、叙上の説明においては、主として高温ガスの除塵フィルタに関して説明したが、本発明に係る多孔質セラミックチューブはこれに限らず任意の用途の多孔質セラミックチューブを包含することは言うまでもない。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、焼成中の多孔質セラミックチューブの軟化による変形を防止し、均一な焼成を行うことにより、大型のチューブ、具体的には、長さが1m以上、特には3m以上のチューブの製造を可能にするとともに、品質の向上および歩留まりの向上を達成できる。
【0026】また、耐火櫃体に複数のグリーンチューブを収容し、さらにはこの耐火櫃体を同時に複数個連続的に焼成し、あるいは、これらを台車に載置し、焼成炉中を移動させつつ焼成することにより、それぞれ、一層、多孔質セラミックチューブの生産性を高め、延いては、生産コストの低減を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態係る多孔質セラミックチューブの製造方法の焼成工程を簡略化して示した工程図である。
【図2】本発明の他の実施形態係る櫃体の台車への積載方法を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態係る櫃体構造および台車積載方法を示す一部断面の側面図である。
【図4】本発明の他の実施形態係る櫃体の台車積載方法と焼成方法を示す側面図である。
【符号の説明】
1 セラミックボール
2 櫃体
3 グリーンチューブ
4 台車
5 連続焼成炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミック原料からなるグリーンチューブを焼成する多孔質セラミックチューブの製造方法において、前記グリーンチューブを耐火櫃体内に横置きし、グリーンチューブの内外にセラミックボールを充填してグリーンチューブを焼成することを特徴とする多孔質セラミックチューブの製造方法。
【請求項2】前記セラミック原料の主成分がコーディエライト質粒子であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質セラミックチューブの製造方法。
【請求項3】グリーンチューブを収納した前記耐火櫃体を複数個積重ね、複数のグリーンチューブを焼成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多孔質セラミックチューブの製造方法。
【請求項4】グリーンチューブを収納した前記耐火櫃体を台車に載置し、該台車を、焼成炉中を移動させつつグリーンチューブを焼成することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の多孔質セラミックチューブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−84324(P2000−84324A)
【公開日】平成12年3月28日(2000.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−258817
【出願日】平成10年9月11日(1998.9.11)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】