説明

多孔質マトリックス

組織スキャフォールドとしての使用に適した多孔質マトリックスについて記載する。上記マトリックスは、標的組織部位へのまたは標的組織部位での挿入前に成形され得るか、または最低限の侵襲的方法により注入され得る。上記マトリックスは、標的組織の細胞を予め播種されてもよく、あるいは局所的な内因性組織の成長を支持するのに使用してもよい。上記マトリックスは、成長因子または他の薬理学的に許容可能な部分(例えば、抗生物質)を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質マトリックスに関する。より詳細には、本発明は、動物の体内で使用されるように意図され、かつ標的組織部位でin situにて形成される多孔質マトリックスに関する。
【0002】
特許出願の多くは、組織スキャフォールドとして使用するためのゲルまたはゾル、特にハイドロゲルの使用について記載している。例えばPCT公報WO00/23054号は、血管の閉塞または塞栓形成におけるポリビニルアルコールミクロスフェアの使用について記載している。PCT公報WO99/15211号およびPCT公報WO00/64977号は、組織スキャフォールドとしてのハイドロゲルの使用について記載している。ハイドロゲルは、組織成長および/または修復を支持するために患者に移植される。
【0003】
組織スキャフォールディングとしてのハイドロゲルの使用は、ゲル自体が挿入される腔を十分に充填し得るものの、ゲルが拡散特性に乏しく、したがって組織に供給されるべき薬剤、栄養分または他の因子がゲル全体に十分に拡散しないという点で問題をはらんでいる。栄養分の乏しい拡散は未熟細胞の死を引き起こし、おそらく治療の失敗をもたらし得るため、ゲルに生細胞を播種する場合にこの問題は悪化する。ゲルスキャフォールドに関連したさらなる問題は、特にin situでゲルを安定化または凝固させるのに使用される架橋方法が、封入された細胞に損傷を与え得るということである。
【0004】
水不溶性ポリマーに基づいたスキャフォールドもまた当該技術分野で既知であり、例えばPCT公報WO99/25391号は、組織、特に骨組織の再生用のポリマースキャフォールドとしてのポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)の使用について記載している。上記ポリマーは多孔質構造を形成するように加工処理される。ハイドロゲルと同様に、水不溶性ポリマーは、組織成長および/または修復を支持するために患者に移植される。
【0005】
しかしながら、かかる水不溶性ポリマーの欠点は、それらが開放形状を有する腔のみを充填することができ、材料を造形する方法はいまだ完璧ではないことである。さらに、スキャフォールドに細胞が播種される場合、播種は効率的ではない(ほとんどの孔が細胞で充填されない)か、あるいは細胞が播種プロセス中に構造により損傷を受け、周辺組織細胞もまた、移植手順により損傷を受ける可能性がある。
【0006】
PCT公報WO99/11196号は、組織スキャフォールドとしての粒子状マトリックスの使用について記載しており、上記粒子は粒子の構造を安定化するために内部架橋を有する。
【0007】
同様に、PCT出願、PCT/GB02/02813号は、医療において標的組織中または上にて生体内で使用するための粒子状材料の開放性多孔質マトリックスであって、粒子間に存在する孔を規定するように互いに架橋された粒子を含むマトリックスについて記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、細胞を導入する必要なしにマトリックスを組織スキャフォールドとして使用し得る方法を提供することを目的とする。本発明は更に、組織スキャフォールディングマトリックスであって、第1の相および第1の相内に含有される第2の相を含むマトリックスを提供することを目的とする。本発明は更に、組織スキャフォールディングマトリックスの形成用のキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多孔質マトリックスの生産方法であって、以下の:
−第1の相を流体状態にする工程、
−第2の相を前記第1の相に導入する工程、
−前記第1の相および前記第2の相を混合する工程であって、それにより前記第1の相への前記第2の相の所要の分布が確実に達成される、混合する工程、および
−前記第1の相を、前記第1の相中の前記第2の相とともに凝固させるまたは状態を変化させる工程
を含む方法を提供する。
【0010】
好適には、この方法は、標的組織へのまたは標的組織上への挿入前に、マトリックスを成形または部分的に成形することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書中で使用する場合の「流体」という用語は、流動する任意の物質を定義することを意図し、したがって、流動して、かつ容器の輪郭に一致することが可能な液体、気体および固体(例えば、粉末または顆粒または粒子形態、あるいはプラスチック固体での)が挙げられる。
【0012】
本明細書中で使用する場合の「凝固する」という用語は、相が固体または半固体となることを意図する。
【0013】
第1の相は、該相が第2の相の材料を保有するか、または含有するという点でキャリア相であってもよく、あるいは第1の相は、第2の相の材料をコーティングするコーティング相であってもよい。好ましくは、第1の相は、液体または完全に液化された状態ではなく、第2の相と混合し、かつ第2の相を保有またはコーティングするのに十分に流体であるか、または十分に流体とされている。例えば、第1の相は、流体であるが、粘着性であってよく、第2の相の粒子状材料をコーティングする。あるいは、第1の相および第2の相はともに、粒子状または粉末形態であってもよく、一緒に混合され得る。この場合でも同様に、第1の相は軟質または粘着性であるか、そうでなければ第2の相の任意の粒子状材料をコーティングすることが可能であることが望ましい。
【0014】
好ましくは、第1の相は、単一パラメータ(例えば、温度、pH、架橋剤、硬化剤またはゲル化剤の導入、光の存在/非存在、紫外線硬化または嫌気性条件下)の変化時に、流体状態から固体または半固体状態へ転換する。最も好ましくは、第1の相は、温度またはpHの変化、あるいは架橋剤、硬化剤またはゲル化剤の導入に起因して転換する。温度を使用する場合、温度は、相が機能可能とするが、使用する場合の周辺組織を損傷しないのに十分であることが好ましい。使用前の焼結工程をいずれかの相に適用してもよい。第2の相は、好ましくは固体相であるが、特に液体が粒子状材料のエマルジョンまたは懸濁液である場合、液体相を使用してもよい。多孔質マトリックスを組織スキャフォールディングマトリックスとして使用し得る場合、第2の相は、新たな組織の形成のための細胞を任意に含有する。
【0015】
しかしながら、本発明者等は、細胞を導入する必要なしにマトリックスを組織スキャフォールドとして使用し得ることを見出した。組織スキャフォールド(細胞なし)を、必要とされる部位中にまたは部位に配置させると、局所的な内因性細胞が、スキャフォールド上、スキャフォールド中またはスキャフォールド周囲で補充され得るか、または成長するように促され得、既存の組織の新たな成長を引き起こす。この効果は、スキャフォールド中に存在する適切な成長因子の存在により増強される。かかる状況は、非内因性組織を導入する場合よりも、新たな組織の拒絶または他の免疫反応の変化がかなり低いことから、特に有用である。したがって、患者を免疫抑制剤で治療する必要性を低減させることができ、それと関連した問題を低減させることができる。さらに、この技法は、癌患者のようなすでに免疫が低下している患者、幼児、高齢者、妊婦またはAIDSもしくはB型肝炎を患う患者に有用である。
【0016】
したがって、本発明は、組織スキャフォールディングマトリックスであって、第1の相および第1の相内に含有される第2の相を含むマトリックスをさらに提供する。好ましくは、組織スキャフォールディングマトリックスは、上述の方法に従って調製される。
【0017】
本発明で使用する第1の相および第2の相は、異なる凝固または硬化特性を有する類似した材料から作製され得る。例えば、第1の相および第2の相は、異なるゲル化pHまたは異なる溶融温度もしくはガラス転移点を有する類似したポリマーから作製され得る。
【0018】
概して、本発明の相の一方または両方は、1つまたはそれ以上のポリマーを含む。本発明で使用可能な合成ポリマーの例としては:ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特にポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリラクチドポリグリコリドコポリマー、ポリ乳酸ポリエチレングリコール(PEG)コポリマー;他のポリエステル(ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(s−カプロン酸)、ポリ(p−ジオキサノン)およびポリ(プロプレンフマレート)を含む);ポリ(オルトエステル)(ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー(Heller ACS Symposium Series 567, 292-305, 1994により記載されるような)を含む);ポリ酸無水物(ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)(PCPP)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)およびSA、CPPおよびCPMのコポリマー(Journal of Biomaterials Science Polymer Edition, 3, 315-353, 1992においてTamada and Landerにより、およびthe Handbook of Biodegradable Polymers, ed. Domb A.J. and Wiseman R.M., Harwood Academic PublishersのChapter 8においてDombにより記載されるような)を含む);ポリ(アミノ酸);ポリ(擬似アミノ酸)(Controlled Drug Delivery Challenges and Strategies, American Chemical Society, Washington DCのpages 389-403でJames and Kohnにより記載されるものを含む);ポリホスファゼン(ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]ポリマー(Biotechnology and Bioengineering, 52, 102-108, 1996にてSchachtにより記載される)を含む);ポリホスフェート;ポリエチレングリコールポリプロピレンブロックコポリマー(例えば、商品名Pluronics(商標)で販売されているもの)が挙げられる。
【0019】
絹、エラスチン、キチン、キトサン、フィブリン、フィブリノゲン、多糖(ペクチンを含む)、アルギン酸塩、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のような天然ポリマーもまた使用され得る。
【0020】
これらのポリマーのランダムブレンドまたはそれらの混合物もしくは組合せであり得るように、これらのポリマーのモノマーから調製されるコポリマーもまた使用してもよい。
【0021】
ポリマーは、例えば、アクリレートポリマーのUV架橋、チオレートまたはアクリレートポリマーのマイケル付加反応、ビニルスルホンを介して架橋されるチオレートポリマー、スクシニメートまたはビニルスルホンを介する架橋、ヒドラジンを介する架橋、熱誘導性ゲル化、酵素的架橋(例えば、フィブリノゲンへのトロンビンの付加)、塩またはイオン(特に、Ca2+イオン)の付加を介する架橋、イソチアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート)を介する架橋を含む各種方法により架橋され得る。
【0022】
好ましい実施形態では、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)のポリエステルが使用される。これのポリマーは、非経口投与に関してFDAにより認可されている。PLGAは、初期段階で非酵素的加水分解により分解するため、生体内での分解速度は、生体外でのデータから予測することができる。PLGAは、体内で自然に見出される物質である乳酸およびグリコール酸に分解する。
【0023】
しかしながら、ポリエステルは、幾つかの実施形態に関して選り抜きのポリマー系であり得る。ポリエステル材料は、約5,000ダルトンの分子量にまで破壊されると、材料は、マクロファージを含む細胞により摂取され得て、その結果、幾らかの炎症がこれらのポリマーの崩壊に付随し得る。
【0024】
アミノ酸とのコポリマー、例えばグリコール酸およびグリシン、または乳酸およびリシンを合成してもよい(Barrera et al (1993) J Am Chem Soc 115, 11010-11011およびCook et al (1997) J Biomed Mat Res 35, 513-523)。これらは、例えばリシルs−アミノ部分を介した他の分子の固定化に有用であり得る。これらのポリマーは、共有結合を用いて表面にペプチドを結合させるのに使用され得る。例えば、上記参照文献に記載されるように、架橋剤として1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI、Aldrich)を用いて、ペプチドを(乳酸−リシン)コポリマーに結合させてもよい。
【0025】
乳酸とグリコール酸のモル比およびコポリマーの分子量を操作することにより、種々の分解パターンを獲得することができる。ポリL−ラクチドは、数ヶ月から数年の生体外での分解時間を有する。長期の分解時間は、水の浸透からポリマーを保護するその高い結晶性に起因する。ポリグリコリドは、1ヶ月から数ヶ月の分解時間を有するのに対して、ポリ−D,L−ラクチドは、非晶質であり、1ヶ月から2、3ヶ月の分解時間を有する。D,L PLGAは、数週間から数ヶ月の生体外での分解時間を有する。グリコール酸の比率を増加させるにつれ、分解速度が増加する。s−カプロン酸のホモポリマーは、2〜3年の移植期間の間、無傷のままであり得る。
【0026】
好ましくは、相の少なくとも1つは、可塑剤をさらに含み、その例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトン、それらのポリマーの低分子量オリゴマーまたは商品プラスチック材料に幅広く使用される可塑剤のような従来の可塑剤(アジペート、ホスフェート、フタレート、セバケート、アゼレートおよびシトレートが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられる。第1の相および第2の相を形成するのに使用されるポリマーと同じである可塑剤(例えば、ポリラクチド、(ポリ乳酸−グリコール酸)コポリマー等)もまた使用され得る。
【0027】
第2の相は概して、組織スキャフォールドの種となるか、または組織スキャフォールドを形成するのに必要な組織細胞を含む。細胞は、第2の相を含むか、第2の相内に混入または保有される粒子状材料に播種され得る。
【0028】
本発明の組織スキャフォールドにおいて任意の動物細胞を使用することが可能である。使用され得る細胞の例としては、骨、前骨芽細胞(例えば、骨由来)、軟骨、筋肉、肝臓、腎臓、皮膚、内皮細胞、腸もしくは腸管細胞、または特殊化細胞(例えば、心血管細胞、心筋細胞、肺または他の肺細胞、胎盤、羊膜、繊毛膜または胎児細胞)、幹細胞、軟骨細胞、あるいは身体の他の部分から再プログラミングした細胞(例えば、軟骨細胞になるように再プログラミングした脂肪細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
幹細胞を使用する場合、幹細胞は、好ましくは治療されるべき患者から採取した成体骨髄もしくは角膜由来の細胞または他の内因性幹細胞のような非胚幹細胞であることが好ましい。
【0030】
本発明者等は、ある特定の条件下の生体外での環境中の前骨芽細胞が骨の他に軟骨を生産し、骨−軟骨界面の組織操作を可能にする軟骨内骨化を促進することに実験中に注目した。
【0031】
細胞を含有または導入するために第2の相で使用され得る粒子は、同時係属中出願であるPCT/GB02/02813号に記載されるタイプであり得る。
【0032】
粒子状材料が第2の相で使用される場合、粒子は多孔質であることが好ましい。粒子の多孔度は、少なくとも10%であることが好ましく、より好ましくは約40%であり、理想的には、さらに70〜97%程度と高くてもよい。便宜的な作用範囲は50〜95%でよい。いずれの場合でも、粒子の孔径は、粒子中に保持されるべき細胞を受け入れるのに少なくとも十分であることが好ましい。細胞は、in situでの内因性細胞からの補充である場合、マトリックスの移植時またはマトリックスの移植前に、あるいはその後に、マトリックスに添加され得る。
【0033】
概して、粒子は、微粒子であるが、大きな細胞が使用され得る場合、粒子はmm範囲であってもよい。
【0034】
粒子は、超臨界流体を用いて創出され得る。
【0035】
理想的には、孔径は、直径10〜80μm程度である。これは、粒子径が概して直径50μm〜1mm程度、あるいは好ましくは250〜500μm程度であることを意味する。理解され得るように、全体の粒子径は、孔径の関数である。すなわち、マトリックスの最終用途は、マトリックスの粒子径および孔径に影響する。例えば、マトリックスに細胞を負荷すべきでない場合、孔径はあまり重要でなくなるが、但し、拡散はマトリックスを通って行われ得る。さらに、緩い充填は、栄養素または他の移動が良好であるように孔径を増加させ、その逆も同様である。しかしながら、大きな孔に極めて小さな細胞を播種してもよいため、孔径は、必ずしも細胞サイズの関数であるとは限らない。かかる粒子の使用は、全体的なマトリックスが細胞成長にとって、したがって成長中の組織を収容するのに十分なレベルの多孔度を確実に保持するという利点を提供する。好ましくは、粒子は、少なくともそれらの外側表面上では粗面であり、その結果、孔は、緊密に充填された粒子間で依然として形成され得る。さらに、粒子の粗表面の提供により、粒子への細胞の接着が改善される。
【0036】
マトリックスは、例えば別のポリマー相または無機相を用いて、さらなる相を含んでもよい。さらなる相または各さらなる相に含まれる無機材料の例としては、バイオガラス、セラミック、ヒドロキシアパタイト、ガラス、ガラスセラミックおよび複合材料が挙げられる。
【0037】
組織成長および発達の促進に有用な因子を、一方または両方の相に添加してもよく、あるいは粒子をコーティングするのに使用してもよい。さらに、種々の因子を、相それぞれまたはコーティングもしくは各コーティングに添加してもよい。有効に添加され得る因子としては、上皮成長因子、血小板由来成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、形質転換成長因子および骨形成タンパク質、サイトカイン(インターフェロン、インターロイキン、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を含む)、エストロゲン、テストステロン、キナーゼ、ケモキナーゼ、グルコースまたは他の糖類、アミノ酸、カルシウム沈着因子、ドーパミン、アミンリッチなオリゴペプチド(例えば、フィブロネクチンおよびラミニンのような接着タンパク質中に見出されるヘパリン結合ドメイン)、他のアミン、タモキシフェン、シスプラチン、ペプチドおよびある特定のトキソイドが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、薬剤、ホルモン、酵素、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物を、相の一方または両方に添加してもよい。また、異なる薬剤、ホルモン、酵素、抗生物質、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物を相それぞれに添加してもよい。
【0038】
しかしながら、上述のように、本発明者等は、細胞を導入する必要なしにマトリックスを組織スキャフォールドとして使用し得ることを見出した。組織スキャフォールド(細胞なし)を、必要とされる部位中にまたは部位に配置させると、局所的な内因性細胞が、スキャフォールド上、スキャフォールド中またはスキャフォールド周囲で補充され得るか、または成長するように促され得る。この効果は、スキャフォールド中の1つまたはそれ以上の上述の成長因子の存在により増強される。
【0039】
本発明の方法により形成される組織は、移植組織として生体内で、あるいは組織培養物として生体外で使用され得る。例えば、組織は、取り除かれる罹患組織、損傷組織または非機能組織を置換するために生体外で、あるいは組織培養物として生体外で使用され得る。好適には、本発明は、例えば薬物拡散もしくは取り込みの研究において、あるいは細胞が分泌を行うための3次元配置であるのに必要とされる場合が多い分泌細胞の使用において研究ツールとして有用である3次元培養組織の生産または生成を可能にする。
【0040】
マトリックスが組織中で使用され得る場合、好ましくは凝固前に組織に導入される。
【0041】
好ましい実施形態では、組織が生体内で使用され得る場合、第1の相は、動物の身体温度でまたは身体温度付近で、あるいは適切な組織のpHでまたはpH付近で、固体または半固体状態に転換する。代替的には、硬化剤を用いて、凝固を促進してもよい。いずれの場合でも、第1の相の凝固を引き起こすのに必要とされる条件は、第1の相中に混入される任意の細胞にとって有害でないことが好ましい。
【0042】
本発明はまた、本明細書中に記載されるような組織スキャフォールディングマトリックスの形成用のキットを提供する。
【0043】
本発明の1つの好ましい実施形態では、第1の相は、低いガラス転移温度(Tg)または融点(例えば、45℃未満、好ましくは40℃未満、理想的には37℃以下)を有するポリマーを含み、第2の相は、より高いガラス転移温度または融点(例えば、55℃を超える)を有するポリマーを含む。ポリマーを粘着性または完全に液化させるために、第1の相は、45℃以上に、好ましくは40℃以上に、理想的には37℃以上に加熱され、第2の相が、第1の相に導入されて、混合される。混合物を冷却させる。細胞がマトリックス中に存在し得る場合、細胞は、第1の相に導入する前に、あるいはより好ましくはマトリックスの凝固前に、第2の相に添加される。いずれの相も、使用に際して制御放出性効果を達成するために、成長因子または他の薬理学的に活性な化合物をさらに含んでもよい。
【0044】
孔構造は、粒子自体の固有の多孔度のほかに、相または各相の粒子間の間隙により、あるいは第1の相の不完全な液化により形成される。
【0045】
第2の実施形態では、マトリックスは、好ましくはゲル化により形成される。この実施形態では、第1の相は、温度(例えばアガロース)またはpH(例えば、アクリルイミド)に関して、あるいは硬化剤またはゲル化剤の添加(例えば、フィブリンゲルを生産するためのフィブリノゲンへのトロンビンの添加)に関してゲル化する材料を含む。第1の相は、流体または液体状態とされた後、非ゲル化(好ましくは固体)第2の相と混合される。混合物を冷却させるか、またはゲル化させる。細胞は、第1の相と混合する前か、あるいは混合した後であるが、ゲルの完全なゲル化が行われてしまう前に、第2の相に添加され得る。
【0046】
本発明の実施形態はここでは、以下の実施例を参照して、および添付の図面の図1〜図3により示されるように記載される。
【実施例】
【0047】
実施例1
温度誘発される凝固による架橋
この実施例では、第1の相は、ポリ(エチレングリコール)/ポリ(DL−ラクチド)ブレンド粒子(10wt%ポリエチレングリコール)を含み、第2の相は、従来の粒子状物質浸出(leaching)方法により製造される多孔質ポリ(DL−ラクチド)粒子を含む。2つの構成成分を一緒に混合し(20:80〜80:20の比の範囲で)、続いて60℃に加熱して、展性材料を生産し、展性材料は外科医により成形され、欠陥部位に適用される。この実施例では、第1の相は、完全に液化しないが、加工温度で(ポリマーのガラス転移温度以上で)「粘着性」半固体となる。別の実施例では、第1の相(異なるポリマーブレンド組成を有する)は、40〜60℃(ポリマーのガラス融解転移以上で)完全に液化してもよく、その温度で、第2の相の多孔質粒子を液体のままの第1の相と一緒に混合する。続いて、材料は、外科医により成形され、欠陥部位に適用される。
【0048】
実施例1A
温度誘発される凝固
ポリマーブレンド組成、それらのガラス転移温度(示差走査熱量測定法を用いて測定)および架橋温度のさらなる例を以下の表に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1b
細胞播種を伴う温度誘導される架橋
溶融ブレンドを、ホットプレート上に配置させたセラミックタイル上で構成成分(PLGA 1.7g、PEG1000 0.3g)を加熱し、溶融状態で構成成分を物理的に混合することにより製造した。材料を冷却して、タイルを取り除き、液体窒素中で冷却した後、即座に切断および粉砕した。粉砕したブレンドは、使用に先立って真空デシケータ中で保管した。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定法を用いて測定し、温度は、転移領域の中点値を採用した。PLGAのガラス転移温度は43℃で測定し、ブレンドのガラス転移温度は16℃で測定した。
【0051】
静置培養での細胞成長を、ヒト皮膚線維芽細胞を播種したスキャフォールド(三重反復)(および無細胞対照)で測定した。粉砕したブレンド材料(15%PEG1000/5050DLの粉砕したブレンド80mg)を、6mmPDMS鋳型中で37℃にて15分間予備焼結した。次に、細胞懸濁液を材料に添加して(完全培地100μl中5×10個のヒト皮膚線維芽細胞(@p8、50歳ドナー/顔面バイオプシー))、材料をスパチュラで圧縮して、37℃でさらに1時間焼結した。続いて、スキャフォールドをPDMS鋳型から取り出し、完全培養培地中に入れた。無細胞対照は、細胞懸濁液を完全培地100μlで置き換えることにより調製した。スキャフォールドを、3〜4日毎に完全に培地を交換しながら、完全培地中で17日間培養した(静置培養)。
【0052】
細胞成長および増殖は、レザズリン還元アッセイを用いて測定し(図1)、読み取りは、3〜4日毎に行った。スキャフォールドを培養から取り出し、PBSで洗浄して、無血清培地中の10μg/mlレザズリン溶液1ml中に1時間入れた。続いて、溶液を96穴プレートに分取して(3×150μl)、蛍光強度を、励起周波数530nmおよび放出周波数590nmで、プレートリーダーで読み取った。
【0053】
実施例2
ゲル化による凝固
この実施例では、第1の相は、Pluronics F127の溶液(緩衝液または培地中で20wt%)から構成され、これは25℃以上で液体からゲルへの転移を受ける。第2の相は、従来の粒子状物質浸出方法により製造されるポリ(DL−ラクチド)の多孔質粒子を含む。2つの構成成分(広範囲の考え得る比にわたって、例えば相1 100μlを相2 100mgと)を混合し、室温未満で液体として保持する。次に、構成成分を注入により欠陥部位へ送達し、ここで材料は、37℃に到達するとゲル化する。
【0054】
実施例3
ゲル化による凝固
この実施例では、第1の相は、フィブリノゲンの溶液(例えば、緩衝液または培地中で30〜200mg/ml)から構成され、これは、トロンビンの添加によりゲル化される。第2の相は、従来の粒子状物質浸出方法により製造されるポリ(DL−ラクチド)の多孔質粒子を含む。2つの構成成分(広範囲の考え得る比にわたって、例えば相1 100μlを相2 100mgと)を混合し、注入できる状態でシリンジ中に液体として保持する。次に、欠陥部位へ注入すると、構成成分は、(二重バレルシリンジを用いて)トロンビンの溶液と混合され(例えば1〜1000ユニット/mlの最終トロンビン濃度をもたらす)、第1の相の架橋およびゲル化が生じる。
【0055】
実施例3a
細胞を負荷した多孔質PDLLA片(大きな1〜2mm片)の架橋
多孔質PDLLA片は、80%の塩重量分率を用いて、溶媒流延および粒子状物質浸出により生産した。DCM中のPDLLAの45wt%溶液(2ml中に900mg)を塩粒子3.6g(粉砕およびふるい分け後のサイズ分画63〜106μm、平均サイズ=88±27μm)と混合した。次に、塩を伴うポリマー溶液をセラミックタイル上に注ぎ、一晩溶媒を蒸発させた。ポリマー塩複合材をタイルから取り出し、1〜2mmサイズの片に手動で切断した。水中に浸漬し、一晩攪拌することにより、塩を片から浸出させた。
【0056】
静置培養での細胞成長を、ヒト皮膚線維芽細胞を播種したスキャフォールド(三重反復)(および無細胞対照)で測定した。多孔質PDLLA片(2×120mg)を1時間にわたる穏やかな攪拌により血清(2ml)中でコーティングした。細胞播種は、細胞懸濁液1ml中に、血清でコーティングしたPDLLA120mgを入れ、1時間穏やかに攪拌することにより実施した(無血清培地中1.2×10c/ml、ヒト皮膚線維芽細胞@p8、50歳ドナー/顔面バイオプシー)。無細胞対照は、無血清培地中に1時間入れた。細胞結合後、片をCa2+を含まないHBSS中で洗浄した。フィブリノゲン+トロンビンの溶液(100mg/mlフィブリノゲンと10U/mlトロンビンの160μl)を片に添加して、片と混合して、過剰の液体を除去した後、片を15分かけて架橋させた。スキャフォールドを、3〜4日毎に完全に培地を交換しながら、完全培地(ウシ胎児血清を補充したDMEM)中で17日間培養した(静置培養)。
【0057】
細胞成長および増殖は、レザズリン還元アッセイを用いて測定し(図2)、読み取りは、3〜4日毎に行った。スキャフォールドを培養から取り出し、PBSで洗浄して、無血清培地中の10μg/mlレザズリン溶液1ml中に1時間入れた。続いて、溶液を96ウェルプレートに分取して(3×150μl)、蛍光強度を、励起周波数530nmおよび放出周波数590nmで、プレートリーダーで読み取った。
【0058】
実施例3b
細胞を負荷した多孔質PDLLA片(250〜500μmの小片)の架橋
多孔質PDLLA片は、90%の塩重量分率を用いて、溶媒流延および粒子状物質浸出により生産した。DCM中のPDLLAの45wt%溶液(2ml中に900mg)を、(乳棒と乳鉢で粉砕した後ふるい分けしていない)粉砕した塩粒子8.1gと混合した。次に、塩を伴うポリマー溶液をセラミックタイル上に注ぎ、一晩溶媒を蒸発させた。ポリマー塩複合材をタイルから取り出し、乳棒と乳鉢を用いて粉砕した。水中に浸漬し、一晩攪拌することにより、塩を片から浸出させた。塩浸出後に、多孔質片をふるい分けして、250〜500μm分画を保持した。
【0059】
多孔質PDLLA片(40mg)を穏やかな攪拌により血清でコーティングした。次に、片をPBS中で洗浄した。無血清培地中の細胞懸濁液(9×10個の細胞/ml)1ml中に多孔質片を入れ、1時間穏やかに攪拌することにより、(成体ドナー@継代15由来)ヒト皮膚線維芽細胞を多孔質片上へ播種した。
【0060】
細胞結合後、フィブリノゲン+トロンビンの溶液(100mg/mlフィブリノゲンと5U/mlトロンビンの160μl)を片に添加して、片と混合して、過剰の液体を除去した後、片を30分かけて架橋させた。
【0061】
スキャフォールド上での細胞代謝および成長を、72時間にわたって測定した。スキャフォールドを培養から取り出し、PBSで洗浄して、無血清培地中の10μg/mlレザズリン溶液1ml中に1時間入れた。続いて、溶液を96ウェルプレートに分取して(3×150μl)、蛍光強度を、励起周波数530nmおよび放出周波数590nmで、プレートリーダーで読み取った。スキャフォールドからのRFU値は、24〜72時間の間に296RFUから569RFU(バックグラウンドを差し引いた後)へ増加した。
【0062】
実施例3c
DLLA微粒子および細胞の架橋
DLLA 4gをジクロロメタン20ml中に溶解して、20wt%溶液を生産した。ポリ(ビニルアルコール)(88%加水分解した)を蒸留水中に溶解して、0.05wt%溶液を得て、これを0.45μmフィルタに通して濾過した。PVA溶液を6,000rpmにて5分間ホモジナイザーで分散させて、その後、PDLLA/DCM溶液を、分散させたPVA溶液へ注入した。混合物をさらに5分間均質化した後、DCMを蒸発させながら一晩攪拌した。次に、凍結乾燥する前に、遠心分離機を用いて、微粒子を蒸留水で3回洗浄した。微粒子の直径は、明視野顕微鏡法および画像解析を用いて20μm(±10μm)で測定した。
【0063】
ヒト皮膚線維芽細胞(50歳ドナー/顔面バイオプシー由来、継代8にて)を少量の完全培地中に再懸濁させた(50μl中5×10個の細胞)。この細胞懸濁液をフィブリノゲン/トロンビン溶液100μl(HBSS中の150mg/mlフィブリノゲンと15U/mlのトロンビン)と混合した後、この溶液を微粒子200mgに添加して、混合した。得られたペーストを6mmPDMSの立方体形状の鋳型に入れ、37℃にて40分間入れておき、架橋を完了させた。無細胞対照は、細胞懸濁液を完全培地50μlで置き換えることにより調製した。スキャフォールドを、3〜4日毎に完全に培地を交換しながら、完全培地中で17日間培養した(静置培養)。
【0064】
細胞成長および増殖は、レザズリン還元アッセイを用いて測定し(図2)、読み取りは、3〜4日毎に行った。スキャフォールドを培養から取り出し、PBSで洗浄して、無血清培地中の10μg/mlレザズリン溶液1ml中に1時間入れた。続いて、溶液を96ウェルプレートに分取して(3×150μl)、蛍光強度を、励起周波数530nmおよび放出周波数590nmで、プレートリーダーで読み取った。
【0065】
実施例4
多孔質粒子
この実施例では、大きな多孔質粒子(500μm以上、最大数mmまで)を従来の塩浸出方法により生産する。塩を、乳棒と乳鉢を用いて粉砕した後、保持される適切なサイズ分画でふるい分けする。理想的には、塩粒子のサイズは、50〜100μmである。次に、溶融相中または適切な溶媒中のいずれかで、塩粒子をポリ(DL−ラクチド)と混合する。塩の負荷は、50〜90wt%である。続いて、塩/ポリマー複合材のモノリス(冷却または溶媒抽出後)を、粉砕または切断のいずれかにより大きな粒子へと加工する。次に、水中で少なくとも24時間攪拌することにより、塩を複合材から浸出させる。
【0066】
さらなる実施例では、塩/ポリマー複合材は、例えば超臨界COを用いた従来の気体発泡技法により加工されてもよい。さらなる実施例では、多孔質ポリマー片は、例えば超臨界COを用いた従来の気体発泡技法により二次加工されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】レザズリン還元アッセイを用いて測定した、温度架橋した15%PEG1000/PLGA上での細胞成長を示すグラフである。値は、無細胞対照を差し引いた後の還元反応生成物由来の相対蛍光単位を示す(n=3、±SD)。
【図2】レザズリン還元アッセイを用いて測定した、酵素的に架橋した多孔質PDLLA片上での細胞成長を示すグラフである。値は、無細胞対照を差し引いた後の還元反応生成物由来の相対蛍光単位を示す(n=3、±SD)。
【図3】レザズリン還元アッセイを用いて測定した、ヒト皮膚線維芽細胞を播種した酵素的に架橋したPDLLA微粒子上での細胞成長を示すグラフである。値は、無細胞対照を差し引いた後の還元反応生成物由来の相対蛍光単位を示す(n=3、±SD)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質マトリックスの生産方法であって、以下の:
−第1の相を流体状態にする工程、
−第2の相を前記第1の相に導入する工程、
−前記第1の相および前記第2の相を混合する工程であって、それにより前記第1の相への前記第2の相の所要の分布が確実に達成される、混合する工程、および
−前記第1の相を、前記第1の相中の前記第2の相と共に凝固させる工程
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の相は粘着性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の相は、前記第2の相をコーティングする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の相は、単一パラメータの変化時に、流体状態から固体または半固体状態へ転換する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータは、温度、pH、硬化剤の導入、光の存在/非存在、紫外線硬化、赤外線硬化または嫌気性条件下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の相は固体相である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の相は液体相である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体相は、粒子状材料のエマルジョンまたは懸濁液である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記粒子状材料は多孔質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粒子状材料は多孔質であり、前記粒子の多孔度は10〜97%である、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が一方の相に添加される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
細胞が前記第2の相に添加される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の相および前記第2の相は、異なる凝固特性を有する類似した材料である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記相はポリマーを含む、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリ乳酸ポリグリコリドコポリマー、ポリ乳酸ポリエチレングリコール(PEG)コポリマー、ポリエステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(s−カプロン酸)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(プロプレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)(PCPP)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPPおよびCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]ポリマー、ポリホスフェート、ポリエチレングリコールポリプロプレンブロックコポリマー、天然ポリマー、絹、エラスチン、キチン、キトサン、フィブリン、フィブリノゲン、多糖(ペクチンを含む)、アルギン酸塩、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、これらのポリマーのモノマーから調製されるコポリマー、これらのポリマーのランダムブレンドまたはそれらの混合物もしくは組合せから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーは生分解性である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーは架橋されている、請求項14ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
可塑剤が前記相の一方または両方に添加される、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
組織スキャフォールディングマトリックスであって、第1のキャリア相および該第1の相内に含有される第2の懸濁相を含むマトリックスであって、細胞をさらに含むマトリックス。
【請求項20】
請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法により調製される組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項21】
前記第2の相は、前記細胞を含む、請求項19または20に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項22】
前記細胞は、前記第2の相内に混入または保有される粒子状材料に播種される、請求項19ないし21のいずれか1項に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項23】
前記細胞は動物細胞である、請求項19ないし22のいずれか1項に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項24】
前記細胞は哺乳類細胞である、請求項19ないし23のいずれか1項に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項25】
前記細胞はヒト細胞である、請求項19ないし24のいずれか1項に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項26】
前記細胞は、骨、前骨芽細胞、心血管細胞、内皮細胞、心筋細胞、肺細葉もしくは他の肺細胞、腸もしくは腸管細胞、軟骨、筋肉、肝臓、腎臓、皮膚、または特殊化細胞(例えば、胎盤、羊膜、繊毛膜または胎児細胞)、幹細胞、軟骨細胞、あるいは身体の他の部分から再プログラミングした細胞(例えば、軟骨細胞になるように再プログラミングした脂肪細胞)である、請求項23ないし25のいずれか1項に記載の組織スキャフォールディングマトリックス。
【請求項27】
前記マトリックスは、組織成長および発達の促進に有用な因子をさらに含む、請求項19ないし26のいずれか1項に記載のマトリックス。
【請求項28】
前記マトリックスは、上皮成長因子、血小板由来成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、形質転換成長因子および骨形成タンパク質、サイトカイン(インターフェロン、インターロイキン、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を含む)、エストロゲン、テストステロン、キナーゼ、ケモキナーゼ、グルコースまたは他の糖類、アミノ酸、カルシウム沈着因子、ドーパミン、アミンリッチなオリゴペプチド(例えば、フィブロネクチンおよびラミニンのような接着タンパク質中に見出されるヘパリン結合ドメイン)、他のアミン、タモキシフェン、シスプラチン、ペプチドおよびある特定のトキソイドをさらに含む、請求項19ないし27のいずれか1項に記載のマトリックス。
【請求項29】
前記マトリックスは、両方の相中に、薬剤、ホルモン、酵素、抗生物質、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物をさらに含む、請求項19ないし28のいずれか1項に記載のマトリックス。
【請求項30】
前記マトリックスの相はそれぞれ、異なる薬剤、ホルモン、酵素、抗生物質、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物を含む、請求項19ないし27のいずれか1項に記載のマトリックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体または半固体の第1の相、および該第1の相内に含有され、かつ該第1の相へ分布され、任意に細胞をさらに含有する第2の相を含むマトリックスを含む組織スキャフォールドであって、前記マトリックスは、多孔質構造を有する組織スキャフォールド。
【請求項2】
前記第2の相は固体である、請求項1に記載の組織スキャフォールド。
【請求項3】
前記第2の相は、前記第1の相内に含有され、かつ前記第1の相へ分布される固体粒子状材料を含む、請求項2に記載の組織スキャフォールド。
【請求項4】
前記固体粒子状材料は多孔質である、請求項3に記載の組織スキャフォールド。
【請求項5】
前記第1の相または前記第2の相、あるいは前記第1の相および前記第2の相の両方は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリラクチドポリグリコリドコポリマー、ポリ乳酸ポリエチレングリコール(PEG)コポリマー、ポリエステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(s−カプロン酸)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(プロプレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)(PCPP)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPPおよびCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]ポリマー、ポリホスフェート、ポリエチレングリコールポリプロプレンブロックコポリマー、天然ポリマー、絹、エラスチン、キチン、キトサン、フィブリン、フィブリノゲン、多糖(ペクチンを含む)、アルギン酸塩、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、これらのポリマーのモノマーから調製されるコポリマー、これらのポリマーのランダムブレンドまたはそれらの混合物もしくは組合せから選択される1つまたはそれ以上のポリマーを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項6】
前記ポリマーは生分解性である、請求項5に記載の組織スキャフォールド。
【請求項7】
前記ポリマーは架橋されている、請求項5または6に記載の組織スキャフォールド。
【請求項8】
前記第1の相または前記第2の相、あるいは前記第1の相および前記第2の相の両方は、ポリマーおよび可塑剤を含む、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項9】
細胞をさらに含有する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項10】
前記細胞は、前記第2の相に提供される、請求項9に記載の組織スキャフォールド。
【請求項11】
前記細胞は動物細胞である、請求項9または10に記載の組織スキャフォールド。
【請求項12】
前記細胞は哺乳類細胞である、請求項11に記載の組織スキャフォールド。
【請求項13】
前記細胞はヒト細胞である、請求項11に記載の組織スキャフォールド。
【請求項14】
前記細胞は、骨、前骨芽細胞、心血管細胞、内皮細胞、心筋細胞、肺細葉もしくは他の肺細胞、腸もしくは腸管細胞、軟骨、筋肉、肝臓、腎臓、皮膚、または特殊化細胞(例えば、胎盤、羊膜、繊毛膜または胎児細胞)、幹細胞、軟骨細胞、あるいは身体の他の部分から再プログラミングした細胞(例えば、軟骨細胞になるように再プログラミングした脂肪細胞)である、請求項11ないし13のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項15】
前記マトリックスは、組織成長および発達の促進に有用な1つまたはそれ以上の因子をさらに含む、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項16】
前記マトリックスの因子は、上皮成長因子、血小板由来成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、血管内皮成長因子、インスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞成長因子、形質転換成長因子および骨形成タンパク質、サイトカイン(インターフェロン、インターロイキン、単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を含む)、エストロゲン、テストステロン、キナーゼ、ケモキナーゼ、グルコースまたは他の糖類、アミノ酸、カルシウム沈着因子、ドーパミン、アミンリッチなオリゴペプチド(例えば、フィブロネクチンおよびラミニンのような接着タンパク質中に見出されるヘパリン結合ドメイン)、他のアミン、タモキシフェン、シスプラチン、ペプチドおよびある特定のトキソイドを含む、請求項15に記載の組織スキャフォールド。
【請求項17】
前記マトリックスは、前記第1の相および前記第2の相の両方に、薬剤、ホルモン、酵素、抗生物質、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物をさらに含む、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項18】
前記マトリックスの前記第1の相および前記第2の相はそれぞれ、異なる薬剤、ホルモン、酵素、抗生物質、栄養素または他の治療薬もしくは因子、あるいはそれらの混合物を含む、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項19】
請求項1に記載の組織スキャフォールドの生産方法であって、以下の
1.第1の相を流体状態にする工程、
2.第2の相を前記第1の相に導入する工程、
3.前記第2の相が、前記第1の相内に含有され、かつ前記第1の相へ分布されるように、前記第1の相および前記第2の相を混合する混合する工程、および
4.前記第1の相を、前記第1の相内に含有され、かつ前記第1の相に分布される前記第2の相とともに凝固させる工程であって、それによりマトリックスを形成する、凝固させる工程
を含む方法であって、前記マトリックスはまた多孔質構造を有する生産方法。
【請求項20】
前記第2の相は固体粒子状材料であり、前記第1の相は、流体状態である場合には粘着性である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の相および前記第2の相は粒子状形態であり、前記第1の相の粒子は、前記第2の相と混合されると、前記第2の粒子状材料をコーティングする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の相は、工程4で、単一パラメータの変化により、固体または半固体状態へと凝固するようになる、請求項19ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記単一パラメータの変化は、温度の変化、pHの変化、架橋剤、硬化剤またはゲル化剤の導入、光の存在/非存在、紫外線または赤外線硬化、または嫌気性条件下から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の相は、多孔質固体粒子状材料を含む、請求項19ないし23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記多孔質固体粒子状材料は、10〜97%の多孔度を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の相または前記第2の相、あるいは前記第1の相および前記第2の相の両方は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ乳酸またはポリグリコール酸、ポリラクチドポリグリコリドコポリマー、ポリ乳酸ポリエチレングリコール(PEG)コポリマー、ポリエステル、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(s−カプロン酸)、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(プロプレンフマレート)、ポリ(オルトエステル)、ポリオール/ジケテンアセタール付加ポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(セバシン酸無水物)(PSA)、ポリ(カルボキシビスカルボキシフェノキシフェノキシヘキサン)(PCPP)、ポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)メタン](PCPM)、SA、CPPおよびCPMのコポリマー、ポリ(アミノ酸)、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリホスファゼン、ポリ[(ジクロロ)ホスファゼン]の誘導体、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]ポリマー、ポリホスフェート、ポリエチレングリコールポリプロプレンブロックコポリマー、天然ポリマー、絹、エラスチン、キチン、キトサン、フィブリン、フィブリノゲン、多糖(ペクチンを含む)、アルギン酸塩、コラーゲン、ポリ(アミノ酸)、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質、これらのポリマーのモノマーから調製されるコポリマー、これらのポリマーのランダムブレンドまたはそれらの混合物もしくは組合せから選択されるポリマーを含む、請求項19ないし23のいずれか1項に記載の組織スキャフォールド。
【請求項27】
前記ポリマーは生分解性である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリマーは、架橋を受けるようになる、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
可塑剤が、前記第1の相または前記第2の相、あるいは前記第1の相および前記第2の相の両方に添加される、請求項19ないし28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
細胞が前記第2の相に組み込まれる、請求項19ないし29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の相は、ヒトを含む動物の身体温度でまたは身体温度付近で、固体または半固体状態に転換し、前記混合工程3の後、凝固工程4の前に混合物が動物の身体に導入される、請求項19ないし30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の相は、工程4でゲルを形成する材料を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
標的組織へのまたは標的組織上への挿入前に、前記マトリックスを成形または部分的
に成形するさらなる工程を含む、請求項19ないし32のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521144(P2006−521144A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506072(P2006−506072)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001419
【国際公開番号】WO2004/084968
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505359528)レジェンテック リミテッド (1)
【Fターム(参考)】