説明

多孔質印判の製造方法

【課題】枠体を基準とした印面形成が可能な所望文字を忠実に印面に再現できる多孔質印判の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる多孔質印材1を枠体2の前端面に密閉接着して印材付き枠体21を作製する第1の工程と、印面形成装置に設けたサーマルヘッドと対向配置する受台8に印材付き枠体21を係合固定させ、受台8の上面と多孔質印材1の裏面を接触させる第2の工程と、前記サーマルヘッドと多孔質印材1の表面を接触させつつ相対移動させ、多孔質印材1の表面に印面を形成する第3の工程と、受台8から印材付き枠体21を取り外したうえ、インキを含浸したインキ吸蔵体に多孔質印材1の裏面を当接させた状態で、前記インキ吸蔵体を保持したホルダーに印材付き枠体21を保持する第4の工程と、からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質印判の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質印判は、多孔質印材に捺印パターンを有する捺印部(インク透過部)と非捺印部(インク不透過部)とを形成することにより製造される。捺印部(インク透過部)と非捺印部(インク不透過部)とを形成するには、例えばサーマルヘッドを使用する方法が知られている。この方法によれば、多数の発熱素子が設けられたサーマルヘッドを多孔質印材に押圧し、所望の文字や図形等の印字ドットパターンにしたがって選択的に発熱素子の発熱駆動を行ってインク不透過性の非捺印部を形成するとともに、発熱素子の発熱駆動が行われなかった部分をインク透過性の捺印部とすることができる(特許文献1)。
【0003】
また多孔質印判の製造方法には、多種多様な印面を作製したいという顧客要求に応えるために、印面形成工程とインキ注入工程を最終工程とした方法が知られている。
この方法によれば、スタンプ枠の内部にインキ溜め部を収納し、印面形成・インキ注入を行うことなくスタンプ材をスタンプ枠に接着固定してスタンプ部を組立て・製品とした後、サーマルヘッドを用いて印面形成し、最後にインキ溜め部にインキを注入することによってスタンプ材にインキを含浸し、スタンプを完成させることができる(特許文献2)。
【0004】
また多孔質印判の生産効率を上げるために、印面形成したインキ未含浸の多孔質印材とインキを含浸させたタンク部材とをケース内に組み込んだ後、タンク部材から多孔質印材へインキを浸透させるようにした多孔質印判の製造方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3020416号公報
【特許文献2】特開平10−193763号公報
【特許文献3】特開平06−191133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される多孔質印判の製造方法では、印面形成後の多孔質印材を台木に接着するため、多孔質印材と台木の接着位置が基準位置から少し外れることがある。すると多孔質印材を基準にして形成されている印面も台木の基準位置から少し外れることとなるため、使用者が台木を基準にして捺印をすると捺印印影は基準位置から少し外れることになり使用者にとって不便であった。
【0007】
また、特許文献2に示される多孔質印判の製造方法では、スタンプ材をスタンプ枠に接着固定したのち印面形成するものであるため、捺印印影が基準位置から外れる不具合は生じない。
しかし、特許文献2に開示された製造方法で印面形成する場合には次の不具合が生じる。サーマルヘッドを使用して印面を形成する場合、サーマルヘッドをスタンプ材の表面に接触させつつ移動するため、サーマルヘッドとスタンプ材の表面との間には押圧力が発生する。所望文字等を忠実に印面に再現するためには、この押圧力を一定にし、かつ、サーマルヘッドとスタンプ材表面を平行にして接触させる必要がある。このように、サーマルヘッドとスタンプ材の表面を押圧力一定かつ平行にするためには、スタンプ材の裏面に受け部材が必要になる。
そのため、特許文献1ではこの受け部材としてプラテンを採用し、サーマルヘッドとプラテンとの間にスタンプ材を圧縮しながら通すことで、スタンプ材表面とサーマルヘッド先端部を押圧力一定かつ平行に接触させている。
そして特許文献2の製造方法では、前記受け部材としてインキ溜め部を採用し、スタンプ材の裏面側に配置している。前記受け部材としてのインキ溜め部はその硬度・形状において制約を受ける。硬度が低く柔らかいものや、スタンプ材との接触面に過度の凹凸があるものは、前記押圧力を一定に受け止めることができず前記受け部材として適していない。
また、特許文献2の構成では前記受け部材としてインキ溜め部が必須構成となるため、インキを含浸する際はインキ溜め部からスタンプ材の順に注入されていくこととなり、その分インキ含浸時間が遅くなる。
特許文献2に記載はないが、仮にインキ溜め部が無くスタンプ材のみをスタンプ枠に収納した場合、前記受け部材はスタンプ枠本体の天井面となり、インキ注入孔部分の押圧力が他の部分の押圧力と相違するため、所望文字等を忠実に印面に再現することができない。また、仮にインキ注入孔を無くし、インキを印面側から含浸する場合は、インキ含浸に時間がかかる上、非捺印部にもインキが付着するため捺印前に余分なインキの拭き取りや捨印が必要となり不便である。
【0008】
また、特許文献3に示される多孔質印判の製造方法では、印字体にインキを直接含浸するため多孔質印判の生産効率を上げることはできるが、ケースと印材を分離した状態で印面形成するため、組付け時にケースと印材の向きを合わせる必要がある。この場合、前記特許文献1の課題と同様、ケースと印材の向きが基準位置から少し外れると捺印印影も基準位置から少し外れることになり使用者にとって不便である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多孔質印判の製造方法であって、熱可塑性樹脂からなる多孔質印材を枠体の前端面に密閉接着して印材付き枠体を作製する第1の工程と、印面形成装置に設けたサーマルヘッドと対向配置する受台に前記印材付き枠体を係合固定させ、前記受台の上面と前記多孔質印材の裏面を接触させる第2の工程と、前記サーマルヘッドと前記多孔質印材の表面を接触させつつ相対移動させ、前記多孔質印材の表面に印面を形成する第3の工程と、前記受台から前記印材付き枠体を取り外したうえ、インキを含浸したインキ吸蔵体に前記多孔質印材の裏面を当接させた状態で、前記インキ吸蔵体を保持したホルダーに前記印材付き枠体を保持する第の4工程と、からなることを特徴とする多孔質印判の製造方法にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多孔質印判の製造方法においては多孔質印材を枠体に接着したのち印面形成するものであるため、枠体を基準とした印面形成が可能となり、枠体の基準位置から印面が外れる不具合は生じない。また、枠体とホルダーとを位置決めすれば、ホルダーの基準位置から印面が外れる不具合も生じない。
また、前記受け部材として印面形成装置に設けた受台を採用することで、サーマルヘッドと多孔質印材の表面を押圧力一定かつ平行に接触させ、所望文字等を忠実に印面に再現することができる。
また、製品部材の中に前記受け部材を必要としないため、製品部材は印面形成条件の制約を受けず自由度が広がる。インキ吸蔵体の硬度・形状において、印面形成条件としての制約を受けることはない。
印面形成した後、インキを含浸したインキ吸蔵体を多孔質印材の裏面側から当接保持することで、多孔質印字体の裏側から直接インキを含浸することができるため、インキ含浸時間が速く便利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における、第1の工程の説明図。
【図2】実施例における、第2の工程の説明図。
【図3】実施例における、第2の工程を説明する斜視図。
【図4】実施例における、第3の工程の説明図。
【図5】実施例における、第4の工程の説明図。
【図6】実施例における、キャップを装着した状態を示す多孔質印判。
【実施例】
【0012】
以下に、本発明の多孔質印判の製造方法にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
本例の多孔質印判は、図1〜図6に示すごとく熱可塑性樹脂からなる多孔質印材1と、前記多孔質印材1が密閉接着された枠体2と、インキを含浸したインキ吸蔵体3が保持されたホルダー4とからなる。
ここで、多孔質印判の印面側を「前」「表」とし、印面と反対側を「後」「裏」とする。
【0013】
図1に示すごとく、熱可塑性樹脂からなる多孔性印材1としては、印材表面にサーマルヘッドを押圧して表面を加熱溶融できる多孔質体であればいかなるものでもよく、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エストラマー、具体的にはポリオレフィン系合成樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアセタール等の各合成樹脂、スチレン系、塩化ビニル系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系の熱可塑性エストラマーであり、市販品としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩ビ酢酸ビコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタラート、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネイトなどを原料として用いた多孔質体がある。
前記の原料から多孔質体を得るためには、加熱加圧ニーダー、加熱ロール等の機械にて、デンプン、食塩、硝酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の溶解物質と熱可塑性樹脂又は熱可塑性エストラマーを混練し、シート状にして冷却後、水又は希酸水にて前記溶解物質を溶出する。この方法にて作製した多孔質体の溶融温度は、原料樹脂の溶融温度と同一であるが、顔料、染料、無機質等の充填材を混入させることにより多孔質体の溶融温度を任意に変えることが可能である。本例で印面形成される印材は、溶融温度を70℃〜120℃とすることが適している。
また、多孔質印材1の気孔率及び気孔径は前記溶解物質の粒径や混練含有量により定まる。本例の印面形成装置で印面形成される多孔質印材1は、1層又は2層構造の多孔質体であって、気孔率は50%〜80%であり、1層又は2層構造の表面層の気孔径は1μm〜20μmであり、下層の気孔率は50μm〜100μmとすることが適している。なお、下層としてフェルト等のインキ吸蔵体を使用してもよい。印材形状はシート状やフィルム状の薄膜形状であればよい。
【0014】
図1、図3に示すごとく、前記多孔質印材1が密閉接着される枠体2は、四角形の枠体であり、枠体2の断面形状は略L字型を有する。この略L字型の幅広端を前端面22とし、この前端面22の全周にわたり前記多孔質印材1の周縁部が密閉接着する。前記多孔質印材1を枠体2に密閉接着する方法は、熱融着や接着剤による密閉接着等を採用できる。接着とは物と物とがぴったりくっつくことを意味し、本例では前記多孔質印材1と枠体2がぴったりくっつくことを意味する。密閉接着する具体的な方法は、後述の第1の工程の説明で詳述する。
また、図5に示すごとく、前記枠体2は後述するホルダー4に保持される。枠体2とホルダー4は凹凸嵌合や面嵌合等で保持される。前記枠体2の側壁内周面に設けた嵌合部23とホルダーの側壁外周面に設けた被嵌合部41が嵌合し保持される。
ここで、前記枠体2の形状は四角形に限定されることはなく、環状でもよい。その場合前記凹凸嵌合や面嵌合の他に、ネジ嵌合も採用できる。
また図示しないが、枠体2とホルダー4との方向性を保証するために、枠体2の側壁に凹欠形状の係合部を設け、ホルダー4の側壁に該係合部に対応する被係合部を設けてもよい。
前記枠体2の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化物系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。特に、保持性能の面から前記多孔質印材と同一又は同系の素材を用いることが好ましく、該多孔質印材にポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いる場合は、枠体2の素材も同じくポリオレフィン系熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0015】
図5に示すごとく、インキを含浸したインキ吸蔵体3の材質は、例えば、羊毛等の天然繊維または、合成繊維(ポリエステル、ポリアミド、アクリル等)または天然繊維からなるインキを含浸(吸蔵)保持出来るフェルト等を採用することができる。
前記インキ吸蔵体3は、前記多孔質印材1にインキ含浸できるものであればよく、その硬度や形状において印面形成条件としての制約を受けることはない。
インキは、顔料系、染料系、油性系、水性系を問わず、印判用インキとして知られているもの全てが適宜使用可能であり、インキ吸蔵体3にインキを含浸する方法も真空含浸等公知の含浸方法が採用可能である。
【0016】
図5に示すごとく、前記インキ吸蔵体3を保持するホルダー4は、枠体2と嵌合するための被嵌合部41やグリップ部42を有している。前記インキ吸蔵体3は前記ホルダー4に接着や嵌合等で保持される。
ホルダー4には前記枠体2が保持される。ホルダー4と枠体2は凹凸嵌合や面嵌合等で保持される。枠体2の側壁内周面に嵌合部23を設けた場合、ホルダー4の側壁外周面には該嵌合部に対応する被嵌合部41が設けられる。
また図示しないが、枠体2とホルダー4との方向性を保証するために、枠体2の側壁に設けた係合部に対応する被係合部を、ホルダー4の側壁に設けてもよい。
ホルダー4の素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化物系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニール共重合樹脂などの熱可塑性樹脂が用いられる。
【0017】
次に、図1に示すごとく、前記多孔質印材1を前記枠体2の前端面22に密閉接着して印材付き枠体21を作製する第1の工程について詳細に説明する。
前記多孔質印材1の周縁部と前記枠体2の前端面22を全周にわたって熱融着することによって密閉接着する。具体的には、前記多孔質印材1及び枠体2両者の全周を同時に溶融可能な大きさの熱シール治具(図示しない)を用意し、該熱シール治具を前記多孔質印材1及び枠体2の溶融温度より高い温度に加熱した後、前記多孔質印材1及び枠体2に数秒間押圧する。すると多孔質印材1と枠体2は溶融し、両者が重合あるいは混合した状態で密閉接着する。これにより、押印を何度繰り返しても多孔質印材1の周縁が枠体2から外れず確実に固定され、密閉性にも優れた印材付き枠体21が製造できる。
ここで、前記多孔質印材1の周縁部と密閉接着される前記枠体2の接着位置は、前端面22だけでなく前記枠体2の側壁外周面であってもよい。この場合、前記多孔質印材1は前記前端面22を包み込むようにして前記側壁外周面に密閉接着される。
前記密閉接着の工程に際しては、多孔質印材1の表面を保護すると共に熱シール治具の離型性を担保するために保護フィルムを載置することが好ましい。保護フィルムには高温に耐えられるプラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム,ポリアミドフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、フッ素フィルム、シリコーンフィルムなどを用いることができる。
【0018】
次に、図2、図3、図4に示すごとく、印面形成装置6に設けたサーマルヘッド7と対向配置する受台8に前記印材付き枠体21を係合固定させ、前記受台8の上面83と前記多孔質印材の裏面を接触させる第2の工程について詳細に説明する。
【0019】
まず印面形成装置6について説明する。
図4に示すごとく、本例の印面形成装置6は、ライン状に配置された複数の発熱素子を有するサーマルヘッド7、前記印材付き枠体21を載置するための受台8、受台8を保持する受台保持部9を少なくとも備えている。
図示しないが、前記印面形成装置6には、さらに、サーマルヘッド7を保持するサーマルヘッド保持部、サーマルヘッドに荷重を付加する荷重負荷部、受台上に載置した多孔質印材1とサーマルヘッド7との間に介在させるための樹脂フィルム、受台8を保持した受台保持部9をサーマルヘッド7と相対移動させるための駆動ギア、該駆動ギアを駆動するためのステッピングモーターを備えている。前記樹脂フィルムは、多孔質印材1の溶融樹脂がサーマルヘッド7に溶着する問題や摩擦係数が増大して印面形成不良が生じる問題を解消するために採用できる。前記樹脂フィルムとしては、耐熱性・平滑性の見地から、セロハン・アセテート・ポリ塩化ビニル・ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリエステル・ポリエチレンテレフタレート・ポリ四フッ化エチレン・ポリイミドなどのポリフィルムが主に用いられる。
本例の印面形成装置6の駆動手段としては、サーマルヘッド7を固定して多孔質印材1を積載した受台8を移動させる手段としてもよいし、多孔質印材1を積載した受台8を固定してサーマルヘッド7を移動させる手段としてもよい。
印面形成装置6をコンピュータ(図示しない)に接続し、印面形成速度の設定および形成開始の各操作はコンピュータの画面上で行う。所望の文字や図形等の印字パターンはコンピュータで作成した画像データに従う。発熱素子熱制御データは、組版ソフトで作成したモノクロ画像データに従って作成し、そのデータに基づき印面形成を行う。
図2、図3に示すごとく、前記受台8は前記受台保持部9の上に保持されている。受台8は、略角柱形状の受台上部81と該受台上部81の外周縁に延設したフランジ部82とを有している。前記受台上部81の上面83は、高低や起伏のない平らな形状を形成している。前記受台8の上面83は前記サーマルヘッド7と互いに向き合うように対向配置され、前記受台8の上面83とサーマルヘッド7の先端面71は平行に設定する。また、前記多孔質印材の表面に印面形成する際の印面形成位置は、全てこの受台8を基準とする。
【0020】
次に第2の工程についてさらに詳細に説明する。
第2の工程は、前記第1の工程で製造した印材付き枠体21を前記受台8に載置する工程である。図2、図3に示すごとく、前記印材付き枠体21をその後ろ側、前記多孔質印材の裏面側から前記受台8に載置する。その際、枠体2の側壁内周面と前記フランジ部82の側壁外周面84が係合固定されると共に、前記受台8の上面83に前記多孔質印材1の裏面が接触保持される。
この際、枠体2の側壁内周面とフランジの側壁外周面84との上下方向の係合位置を調整することによって、前記受台8の上面83と前記多孔質印材1裏面との接触量は適宜調整可能である。
前記受台8の上面83と前記多孔質印材1の裏面が接触するのであれば、前記枠体2の側壁後端と前記受台保持部9の上面が当接してもよいし、前記枠体2の前端面22の裏面側と前記フランジ部82が当接してもよい。
また、後述する第3の工程においてサーマルヘッド7と多孔質印材1とは接触しつつ相対移動するため、サーマルヘッド7で部分的に溶融した多孔質印材1の表面は引っ張られて印面がずれる現象が起こりやすい。そのために、前記受台8の上面83と前記多孔質印材1の裏面との接触保持力をより強くするために補助機構を設けてもよい。この補助機構としては、図示しないが、吸着や接着等が考えられる。
また図示しないが、印材付き枠体21と受台8の方向性を保証するために、枠体2の側壁内周面に凹欠形状の係合部を設け、前記フランジ部82の側壁外周面に該係合部に対応する被係合部を設けてもよい。
ここで、印材付き枠体21と受台8との方向性を保証するために設ける前記係合部は、印材付き枠体21とホルダー4との方向性を保証するために設ける係合部と兼用してもよい。
【0021】
次に、図4に示すごとく、前記サーマルヘッド7と前記多孔質印材1の表面を接触させつつ相対移動させ、前記多孔質印材1の表面に印面を形成する第3の工程について詳細に説明する。
第3の工程は、前記第2の工程において、受台8の上面83に固定した多孔質印材1の表面に、サーマルヘッド7を用いて印面形成する工程である。
前記受台8の上面83に載置された多孔質印材1の表面に、前記サーマルヘッド7を接触させつつ相対移動させることにより印面を形成する。本例の印面形成装置6の駆動手段は、サーマルヘッド7を固定して多孔質印材1を積載した受台8を移動させる(紙面左方向に移動させる)。サーマルヘッド7と前記受台8の上面83は平行に設定された状態で、サーマルヘッド7の先端面71は前記多孔質印材1表面に接触しながらその全面を移動し、発熱素子熱制御データに基づき所望の文字や図形が前記多孔質印材1の表面に印面として形成される。
ここで、前記サーマルヘッド7は前記多孔質印材1の表面に押圧接触させてもよい。このようにサーマルヘッド7を押圧接触させると、前記多孔質印材1は圧縮変形されながら印面形成される。サーマルヘッド先端面71と受台8の上面83との間隔は前記多孔質印材1の厚みに応じて適宜調整可能とし、サーマルヘッド7を多孔質印材1に押圧接触させる場合は、サーマルヘッド先端面71と受台8の上面83との間隔を前記多孔質印材1の厚さより狭く設定することで実現できる。また、分銅やバネ等で荷重調整することによってサーマルヘッド7を多孔質印材1に押圧接触させることもできる。なお、サーマルヘッド7は端面タイプサーマルヘッド(京セラ製)を受台8の下流側に軸支して使用する。
また、前記多孔質印材1の表面に印面形成する際の印面形成位置は、全て前記受台8を基準としているため、受台8に係合固定される印材付き枠体21も間接的に前記印面形成位置の基準となる。よって、第1の工程において前記多孔質印材1を前記枠体2の前端面22に密閉接着する際接着位置が設定位置から多少外れていたとしても、前記多孔質印材1の表面に印面形成する際の印面形成位置は、受台8(間接的に枠体2)を基準とする印面形成位置から外れる不具合は生じない。
【0022】
次に、図5に示すごとく、前記受台8から前記印材付き枠体21を取り外したうえ、前記インキを含浸したインキ吸蔵体3に前記多孔質印材1の裏面を当接させた状態で、前記インキ吸蔵体を保持したホルダー4に前記印材付き枠体21を保持する第の4工程について詳細に説明する。
第4の工程は、前記第3の工程で作製された印面形成済みの印材付き枠体21を前記ホルダー4に嵌合保持して多孔質印判10を製造する工程である。
まず、インキを含浸した前記インキ吸蔵体3を前記ホルダー4側壁の内側に接着保持する。その後、該インキ吸蔵体3を保持したホルダー4に印材付き枠体21を嵌合保持し多孔質印判10とする。この際、インキを含浸したインキ吸蔵体3は前記多孔質印字体1の裏面と当接状態とする。
ホルダー4と枠体2は凹凸嵌合や面嵌合等で保持される。枠体2の側壁内周面に設けた嵌合部23と、ホルダー4の側壁外周面に設けた被嵌合部41によって嵌合保持される。
また図示しないが、枠体2とホルダー4との方向性を保証する場合は、枠体2の係合部とホルダー4の被係合部によって係合保持する。
インキ吸蔵体3を接着保持したホルダー4と印材付き枠体21は、それらが嵌合すると同時に多孔質印材の裏側から直接インキ含浸が始まる。そのため、多孔質印材1へのインキ含浸時間が速い。
ここで、本例の印面形成位置は、受台8(間接的に枠体2)を基準としているため、前記枠体2をホルダー4の所望位置に嵌合保持すれば、ホルダー4に対して、印面形成位置が設計位置から外れる不具合は生じない。
また、図6に示すごとく、ホルダー4には必要に応じてキャップ5を装着してもよい。キャップ5を装着することで印面保護の目的を達成できることは当然であるが、多孔質印材にインキを含浸する際、印面を鉛直方向(重力方向)下向きの状態で保持できるためインキ含浸時間をより速くすることができる。
【0023】
以上、現時点において最も実践的でありかつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う多孔質印判の製造方法もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0024】
1 多孔質印材
2 枠体
21 印材付き枠体
22 前端面
23 嵌合部
3 インキ吸蔵体
4 ホルダー
41 被嵌合部
42 グリップ部
5 キャップ
6 印面形成装置
7 サーマルヘッド
71 先端面
8 受台
81 受台上部
82 フランジ部
83 上面
84 側壁外周面
9 受台保持部
10 多孔質印判

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質印判の製造方法であって、
熱可塑性樹脂からなる多孔質印材を枠体の前端面に密閉接着して印材付き枠体を作製する第1の工程と、
印面形成装置に設けたサーマルヘッドと対向配置する受台に前記印材付き枠体を係合固定させ、前記受台の上面と前記多孔質印材の裏面を接触させる第2の工程と、
前記サーマルヘッドと前記多孔質印材の表面を接触させつつ相対移動させ、前記多孔質印材の表面に印面を形成する第3の工程と、
前記受台から前記印材付き枠体を取り外したうえ、インキを含浸したインキ吸蔵体に前記多孔質印材の裏面を当接させた状態で、前記インキ吸蔵体を保持したホルダーに前記印材付き枠体を保持する第の4工程と、
からなることを特徴とする多孔質印判の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153102(P2012−153102A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16534(P2011−16534)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)
【Fターム(参考)】