説明

多孔質炭素材料の製造方法

【課題】本発明は、より満足のいく物性が得られるよう、マクロ的に空孔の配列が制御された多孔質材料を提供することを目的とする。
【解決手段】
重合性単量体、またはそれを含む組成物を、前記単量体または組成物には不溶であるコロイド結晶体中に含浸させた配合組成物を用い重合体を得る工程、不活性ガス雰囲気下、800〜3000℃で焼成する工程、前記コロイド結晶体が可溶な溶媒に浸漬してコロイド結晶体を溶解除去する工程を含むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法により、空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料において、空孔がマクロ的に結晶構造を構成する配置で配列していることを特徴とする多孔質炭素材料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質な炭素材料に関し、詳細には、多孔質を形成する空孔が、3次元的に規則正しく配列している多孔質炭素材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質炭素材料としては、単分散のシリカコロイド水溶液から長時間かけて結晶化して得られた一部に長いロッド状の単結晶を含むが、大部分が、多結晶体であるシリカオパールプレート存在下に、フェノール性樹脂を熱硬化させ、さらに、1000℃まで昇温して焼結させその後、フッ酸を用いてシリカオパールを溶解除去させることにより得られる多孔質炭素材料が知られている。(非特許文献1を参照)
【0003】
第1の処理として多孔質材料の表面および空孔内部に有機物を導入し、これを加熱することによって該有機物を炭化し、その後、第2の処理としてさらに有機物を導入して炭化させた後に多孔質材料を除去することにより、0.5nmから100nmの範囲の長周期規則構造を有し、内部に空孔を有する多孔質炭素材料が形成されることが知られている。(特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−29860号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Anvar A. Zakhidov, et.al., Science, 282, 1998, 897.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記多孔質炭素材料は、いずれも空孔の規則性が不十分であり、かつ大面積化や厚膜化が困難であり、さらに得られた材料の物性が必ずしも満足のいくものではないという問題があった。
【0007】
本発明は、より満足のいく物性が得られるよう、マクロ的に空孔の配列が制御された多孔質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の方法で製造されたナノスケールで構造制御されたコロイド結晶体を鋳型として用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料において、空孔がマクロ的に結晶構造を構成する配置で配列していることを特徴とする多孔質炭素材料に関し、
(2)空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料において、空孔がマクロ的に材料表面に面心立方格子の(1,1,1)面配向で配列していることを特徴とする多孔質炭素材料に関し、
(3)空孔が、結晶構造を形成していることを特徴とする(2)に記載の多孔質炭素材料、
(4)空孔が、連続的に配列していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(5)空孔が、面心立方構造で配列していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(6)空孔の最大長さ方向の大きさが、1〜1000nmの範囲であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(7)空孔の最大長さ方向の大きさが、100〜500nmの範囲であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(8)空孔の形状が、球状または略球状であることを特徴とす(1)〜(7)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(9)炭素材料が、難黒鉛化炭素材料または黒鉛化炭素材料であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の多孔質炭素材料、
(10)炭素材料が、ガラス状または結晶状であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の多孔質炭素材料に関する。
【0010】
(11)重合性単量体、またはそれを含む組成物を、前記単量体または組成物には不溶であるコロイド結晶体中に含浸させた配合組成物を用い重合体を得る工程、不活性ガス雰囲気下、800〜3000℃で焼成する工程、前記コロイド結晶体が可溶な溶媒に浸漬してコロイド結晶体を溶解除去する工程を含むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法において、コロイド結晶体が、基板上に滴下されたコロイド溶液から、該溶液に用いられている溶媒を留去して得られるコロイド結晶体、コロイド溶液を吸引濾過して溶媒を除去しコロイド結晶を堆積させて得られたコロイド結晶体、または、コロイド溶液に基板を浸積させ、これを引き上げるまたは該溶液に用いられている溶媒を蒸発させることにより得られるコロイド結晶体であることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように、本発明の方法を用いることにより、ナノスケールでより構造の制御された多孔質炭素材料を、マクロスケールで得ることが可能となった。ナノレベルの構想規則性と多孔性を備えた炭素材料は、キャパシタや、リチウムイオン電池、燃料電池等の電極材料として、種々の導電性材料として、特定の波長を選択反射する光学材料として有用であり、産業上の利用価値は高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)実施例1において得られた多孔質炭素材料表面の電子顕微鏡(SEM)写真を示す。(b)(a)の拡大図を示す。
【図2】実施例1において得られた(a)シリカコロイド結晶、(b)シリカ−ポリマー樹脂複合体、(c)シリカ−カーボン複合体、(d)多孔質炭素材料のそれぞれの反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の炭素材料は、空孔がマクロ的に結晶構造を構成する配置で配列している構造を有する多孔質であることを特徴とする。本発明の多孔質炭素材料は、例えばナノスケールの無機粒子を単量体または単量体を含む溶液に含浸させた状態で重合、焼成させ、その後、無機粒子を取り除くことによって製造されるが、空孔とは、取り除かれた個々の無機粒子に相当する空隙を表すことになる。
【0014】
空孔は、上記規則性を有すれば炭素材料で閉鎖された空隙であっても構わないが、連続的に配列している方が、表面積を拡大し、光学的特性を発現する上で好ましい。空孔が、連続して配列している場合に、空孔は周囲を炭素材料で閉鎖された空隙でも、また、隣接する空孔と貫通する部分を有する空隙であってもよい。
【0015】
空孔の配列における規則性は、結晶構造を構成する配置であれば特に限定されないが、例えば、面心立方、体心立方、単純立方等を例示することができるが、特に面心立方構造すなわち最密充填構造が、材料表面積が大きく、緻密に空孔が配列しているころから、光学的特性等の点で好ましい。特に、結晶構造が単結晶構造であるのが好ましい。
【0016】
また、異なる大きさの空孔を含む場合には、更に、複雑なパターンを形成させることも可能である。先に述べた製造方法においては、無機粒子の充填配列により、空孔の配列が決定されることになり、無機粒子の配列が可能な構造は、空孔の配列の規則性に反映されることになる。
【0017】
マクロ的にとは、微少な領域でのみにその構造を発現している材料を除外する意味であり、例えば、後述する反射スペクトルが、得られた材料のどの部分をとってもほぼ単一波長の吸収を示し、材料全体が単色である場合等を意味する。
【0018】
本発明の多孔質炭素材料は、炭素材料表面において、空孔がマクロ的に面心立方格子の(1,1,1)面配向を有して配列する構造であることを特徴とする。このことは、例えば、炭素材料を任意の面で切断した場合であっても、その表面が常に上記配向性を有する場合等を意味している。
【0019】
空孔の形状は特に限定されず、例えば、先に述べた製造方法においては、用いる無機粒子の形状によってその形状がある程度決定されるが、炭素材料の機械的強度、ナノスケールで無機粒子の形状を制御することを考慮すると球状または略球状であるのが好ましい。
【0020】
また、空孔の最大長さ方向の大きさは、特に限定されるものではないが、1〜1000nmの範囲であるのが好ましい。1nm以下では、空隙が小さすぎてバルク炭素材料と顕著な差が見られず、1000nm以上では、空隙が全体的に大きすぎて、機械的強度を低下させるおそれがある。光学的特性、高分子の表面積等を考慮すると、空孔の最大長さ方向の大きさが100〜500nmの範囲であるのが好ましい。
【0021】
本発明の多孔質炭素材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、製造方法の容易さ、微細構造の制御のしやすさ等を考慮すると、特開平9−67405号公報、または特開2001−213992号公報に記載されている方法を応用し、重合可能な単量体またはそれを含む組成物を、前記単量体または組成物に不溶で他の溶媒に可溶な粒子状物質としてコロイド結晶を混合した配合組成物を用い、まず単量体を重合させ、さらに800〜3000℃程度まで昇温して焼成し、次にコロイド結晶が可溶な溶液に浸漬させてコロイド結晶を溶解除去することによって製造するのが好ましい。この場合コロイド結晶とは、コロイド粒子が集合して結晶構造を形成している状態を表す。
【0022】
コロイド結晶体を得る方法として、具体的には、(i)コロイド溶液に電場をかけその後、溶媒を除去する方法、(ii)固形分濃度が1〜5重量%の比較的希薄な溶液に、平滑な基板2枚を数十μの間隔を開けて対峙させて基板下部を浸漬させ、毛細管現象によりコロイド溶液が基板間を上昇すると共に、溶媒を蒸発除去させることにより、基板間にコロイド結晶を析出させる方法、(iii)分散したコロイド溶液を静置し、コロイド粒子を自然沈降させて堆積させた後、溶媒を除去する方法、(iv)移流集積法等の公知の方法を例示することができる。
【0023】
また、別のコロイド結晶体の製造方法として、コロイド溶液を、基板上に滴下し、コロイド溶液に用いられている溶媒を留去する方法を好ましく例示することができる。溶媒の留去は、室温においても行うことができるが、用いられる溶媒の沸点と同等またはそれ以上の温度に加熱、乾燥するのが好ましい。また、本方法は、基板上にコロイド溶液を滴下し、その後、基板を加熱し溶媒を留去する方法、あらかじめ加熱した基板上にコロイド溶液を滴下し溶媒を留去する方法等いずれの方法でも行うことができる。さらに、コロイド溶液を滴下する際、または滴下後、基板を回転させてもよい。
【0024】
コロイド溶液の滴下、溶媒留去の操作を繰り返すことにより、コロイド溶液の濃度を調製することにより、滴下するコロイド溶液の量を調製することにより、また、以上を任意に組み合わせることにより、得られるコロイド結晶体の膜厚、面積を自由に制御することができる。特に、規則性を保持したまま、大面積化、または大容積化が容易に可能であることから、本発明の多孔質炭素材料を、それに合わせて大面積化、大容積化することができる。
【0025】
例えば、本方法によれば、固形分濃度とし10重量%以上のコロイド溶液を用いることができることから、一度の滴下でかなりの膜厚の結晶構造体を基板上に形成することができ、滴下、乾燥を繰り返すことにより、膜厚を自由に制御することができる。さらに本方法は、例えば、単分散コロイド溶液を用いることにより、得られるコロイド結晶体を単結晶構造のコロイド結晶とすることができる。コロイド単結晶を用いて得られてくる多孔質炭素材料は、マクロに空孔の配列に規則性及び連続性があり、反射光の波長に全体でばらつきがなく、全体として選択反射光波長を統一することができる。
【0026】
また、別な方法として、コロイド粒子を含む溶液を吸引ロートを用いて減圧吸引等により、溶液を吸引除去することより、吸引ロート上の濾紙、または濾布上にコロイド粒子を堆積させる方法を好ましく例示することができる。上記方法においても、例えば、単分散コロイド溶液を用いることでコロイド単結晶体を得ることができる。
【0027】
吸引濾過に用いる溶液の濃度は、一度の操作で得ようとするコロイド結晶体の容積により自由に選択することができる。また、一度すべての溶媒を吸引除去した後、再度溶液を追加して同様の操作を繰返すことにより、任意の容積のコロイド結晶体を得ることができる。本方法を用いることにより、先と同様に、規則性を保持したまま、大面積化、大容積化が可能である。
【0028】
溶媒を吸引する方法は特に限定されないが、アスピレータまたはポンプ等により吸引する方法等を例示することができる。吸引する速度は特に限定されないが、具体的には、40mmHg程度の減圧度でロート内の溶液界面が一定に降下する速度を好ましく例示することができる。
【0029】
また、別な方法として、コロイド溶液に基板を浸積させ、これを引き上げるまたは該溶液に用いられている溶媒を蒸発させる方法を好ましく例示することができる。この方法も、用いるコロイド溶液の濃度の調整、または同様の操作を繰り返し行なうことにより、任意の面積、容積のコロイド結晶体を得ることができる。引き上げる速度は特に限定されないが、溶液の大気との界面において結晶が成長するため、遅い速度で引き上げるのが好ましい。また、溶液を蒸発させる速度も特に限定されないが、同様の理由で遅い方が好ましい。また、単分散コロイド溶液を用いることにより、コロイド単結晶体を得ることができる。
【0030】
用いる基板表面の性状は特に限定されないが、コロイド結晶体を用いて得られてくる炭素材料の光学特性を考慮すると、表面が平滑である基板が好ましい。
【0031】
また、本発明の多孔質炭素材料の製造に用いられる粒状物質であるコロイド粒子は、その形状は真球等の球状または略球形であるのが好ましく、例えば弗化水素酸等の弗素化合物溶液、アルカリ性溶液、酸性溶液に溶解する無機化合物粒子を好ましく用いることができる。
【0032】
上記無機化合物として、具体的には、アルカリ土類金属の炭酸塩、珪酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、その他の金属珪酸塩、あるいはその他の金属炭酸塩等が例示でき、さらに具体的には、アルカリ土類金属の炭酸塩としては炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネウム等が、アルカリ土類金属の珪酸塩としては珪酸カルシウム、珪酸バリウム、珪酸マグネシウム等が、またアルカリ土類金属の燐酸塩としては燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸マグネシウム等が例示できる。さらに金属酸化物としてはシリカ、酸化チタン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化アルミニウム等が、金属水酸化物としては水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム等がそれぞれ例示できる。そしてその他の金属珪酸塩としては珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム等が、その他の金属炭酸塩としては炭酸亜鉛、塩基性炭酸銅等がそれぞれ例示できる。天然物ではシラスバルーン、パーライト等を例示できる。
【0033】
これらコロイド粒子の最大長さ方向の大きさは、1〜1000nmの範囲が好ましく、さらには、100〜500nmの範囲が好ましい。
【0034】
本発明の炭素材料に変換し得る高分子としては、高温焼成により炭素材料に変換し得る高分子であれば、特に限定されないが、具体的には、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−アルデヒド樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、フルフリルアルコール−フェノール樹脂等を例示することができる。焼成温度を選択することにより、炭素材料が、ガラス状の難黒鉛化炭素あるいは黒鉛化炭素になる高分子が好ましい。
【0035】
規則正しく配列したコロイド単結晶体等の粒状物質の存在下で焼成前の高分子を製造するには、単量体の濃度は0.1重量%〜99.9重量%、必要に応じて加える架橋剤濃度は0.001重量%〜50重量%であればよい。また、開始剤濃度や重合方法等の反応条件は、単量体にあったものを選べばよく、例えば、触媒、重合開始剤、単量体、架橋剤等を窒素置換した有機溶媒に溶解して溶液とし、規則正しく配列させたコロイド結晶体に該溶液を含浸させ、その後、適当な温度に加熱する、または、光照射する等で重合を行うことができる。
【0036】
上記各種ポリマーは、ラジカル重合法、酸による重縮合法等の公知の溶液、塊状、乳化、逆相懸濁重合等で、重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間で得ることができる。
【0037】
コロイド結晶体と高分子の複合化物からコロイド結晶体を溶解除去するには、例えば、コロイド結晶体が無機化合物の場合、弗素化合物の酸性溶液、アルカリ性溶液、酸性溶液等を用いることができる。例えば、コロイド結晶体がシリカ、シラスバルーンまたは珪酸塩の場合は弗化水素酸水溶液、弗化アンモニウム、弗化カルシウム、弗化ナトリウム等の酸性溶液或いは水酸化ナトリウム等のアルカリ性溶液に複合化物を浸けるだけでよい。溶液は複合化物の珪素元素に対して弗素元素が4倍量以上であればよいが、濃度は10重量%以上であることが好ましい。また、アルカリ性溶液はpH11以上であれば特に限定はしない。粒子状化合物が金属酸化物、金属水酸化物の場合は塩酸等の酸性溶液に複合化物を浸けるだけでよい。酸性溶液はpH3以下であれば特に限定されない。
【0038】
コロイド結晶体の溶解除去は、得られた高分子の焼結前でも後でもかまわず、不活性雰囲気下、800〜3000℃の範囲の温度で行うことができる。焼成する温度までの昇温速度は、局部的な加熱により炭素構造が崩壊しない範囲であれば、特に限定されない。
【0039】
以下に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
単分散シリカコロイド懸濁水溶液(日本触媒社製単分散シリカ球状微粒子KE−P30を用いて固形分濃度3%である水溶液を作製、コロイド粒子径:280nm)を、濾布(Whatman社製ポリカーボネートメンブレンフィルター、フィルター孔径:100nm)を敷いた径30mmのSPCフィルターホルダー(柴田科学製)入れ、アスピレータを用いて減圧吸引(約40mmHg)することにより、濾布上にシリカ薄膜を得た。濾布を剥がした後、空気中にて1000℃で2時間焼結し、シリカコロイド単結晶体膜を得た。
【0041】
フルフリルアルコール10.0g、シュウ酸六水和物0.0500g(いずれも和光純薬製)の混合物を、テフロン(登録商標)シート上にてシリカコロイド単結晶体膜上に滴下し、シリカコロイド結晶上にあふれ出た余分な混合物を軽く拭き取り、空気中にて、80℃で48時間重合させた。得られたシリカ−ポリマー樹脂複合体を、管状炉にてアルゴン雰囲気下、200度で1時間水分の除去・ポリマーの再硬化過程を経た後、5℃/分で1000℃まで昇温して、1000℃で1時間焼成させ自然冷却することでシリカ−炭素複合体を得た。
【0042】
さらに、48%弗化水素酸溶液に、室温で1週間浸漬させ、シリカコロイド結晶を溶解させた。尚、弗化水素酸溶液は、1日おきに交換した。その後中性になるまで純水で洗浄を繰り返し、多孔質炭素材料1を得た。
【0043】
以上のようにして得られた多孔質炭素材料表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示す。図1(b)より、空孔は、直径280nmの球形であり、隣接する空孔とは、ほぼ40nmの貫通孔をもって連結しており、さらに、空孔は、面心立方構造で配列し、材料表面において、(1,1,1)面配向で配列していることがわかった。
【0044】
多孔質炭素材料を暗所におき、視斜角0°で白色光の光を照射し、反射光の波長を測定した。その結果を図2に示す。得られた反射スペクトルは、450nm付近のみに単峰性の吸収を示すことから、材料内部においても、空孔が規則正しく配列していることがわかった。
【実施例2】
【0045】
単分散シリカコロイド懸濁水溶液(日本触媒社製単分散シリカコロイド縣濁液KE−W30、固形分濃度15wt%、コロイド粒子径:280nm)を、テフロン(登録商標)製3cm×3cm×0.5cmの容積を有する容器に注入し100℃にて溶媒を蒸発しシリカコロイド結晶を得た。
【0046】
フルフリルアルコール10.0g、シュウ酸六水和物0.0500g(いずれも和光純薬製)の混合物を、容器内のシリカコロイド結晶内に注入し、結晶上にあふれ出た余分な混合物を軽く拭き取り、空気中にて、80℃で48時間重合させた。得られたシリカ−ポリマー樹脂複合体をテフロン(登録商標)板から剥ぎ取り、管状炉にて実施例1と同様の過程で焼成し48%弗化水素酸溶液にてシリカを除去、洗浄することにより多孔質炭素材料2を得た。多孔質材料2も、実施例1と同様にしてSEM観察、反射光スペクトル測定を行なったところ、多孔質炭素材料1とほほ同じ構造のものであることがわかった。
【実施例3】
【0047】
シリカ−ポリマー樹脂複合体を得た後、弗化水素酸溶液を用いてシリカコロイド結晶を溶解させた後、焼成させる以外、実施例1と同様に行い、多孔質炭素材3を得た。得られた多孔質炭素材3のSEM観察、反射光スペクトル測定を実施例1と同様に行ったところ、多孔質炭素材料1と同様の構造のものであることがわかった。
【実施例4】
【0048】
粒径が異なる単分散シリカコロイド懸濁水溶液(日本触媒社製単分散シリカ球状微粒子KE−P100を用いて固形分濃度3%である水溶液を作製、コロイド粒子径:1000nm)を用いる以外、実施例1と同様に行い、多孔質炭素材料4を得た。
【0049】
多孔質炭素材料1及び4にき、BET法によりその表面積を測定した。比較のためシリカコロイド結晶を用いないで同様の条件で作製した粉末状炭素も測定した。同時に得られる細孔径分布から細孔容積も求めた。その結果を表1にまとめて示す。
【0050】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料において、空孔がマクロ的に結晶構造を構成する配置で配列していることを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項2】
空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料において、空孔がマクロ的に材料表面に面心立方格子の(1,1,1)面配向で配列していることを特徴とする多孔質炭素材料。
【請求項3】
空孔が、結晶構造を形成していることを特徴とする請求項2に記載の多孔質炭素材料。
【請求項4】
空孔が、連続的に配列していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項5】
空孔が、面心立方構造で配列していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項6】
空孔の最大長さ方向の大きさが、1〜1000nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項7】
空孔の最大長さ方向の大きさが、100〜500nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項8】
空孔の形状が、球状または略球状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項9】
炭素材料が、難黒鉛化炭素材料または黒鉛化炭素材料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項10】
炭素材料が、ガラス状または結晶状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の多孔質炭素材料。
【請求項11】
重合性単量体、またはそれを含む組成物を、前記単量体または組成物には不溶であるコロイド結晶体中に含浸させた配合組成物を用い重合体を得る工程、不活性ガス雰囲気下、800〜3000℃で焼成する工程、前記コロイド結晶体が可溶な溶媒に浸漬してコロイド結晶体を溶解除去する工程を含むことを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法において、コロイド結晶体が、基板上に滴下されたコロイド溶液から、該溶液に用いられている溶媒を留去して得られるコロイド結晶体、コロイド溶液を吸引濾過して溶媒を除去しコロイド結晶を堆積させて得られたコロイド結晶体、または、コロイド溶液に基板を浸積させ、これを引き上げるまたは該溶液に用いられている溶媒を蒸発させることにより得られるコロイド結晶体であることを特徴とする多孔質炭素材料の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−101355(P2012−101355A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−287768(P2011−287768)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2004−73698(P2004−73698)の分割
【原出願日】平成16年3月16日(2004.3.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】