説明

多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法

【課題】
ポーラスコンクリート構造体の空隙内壁面や外面全体に渡って確実に多孔質無機粉状物の被膜を固着させ微生物の定着と、藻や水草等の水生植物の着床、活着を促す多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法を提供する。
【解決手段】
セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液に、ポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬し、懸濁液を攪拌混合させつつ該ポーラスコンクリート構造体に振動を加えながら、懸濁液中でのポーラスコンクリート構造体の内外の構造体要素の表面に多孔質無機粉状物膜を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続空隙を有するポーラスコンクリート構造体の外面並びに内部空隙側の内壁面部分に多孔質無機粉状物を含む膜を形成させる多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック多孔体は、内部に多くの空隙(細孔)を有しており、この性質を生かした有用な機能を活用した応用がなされている。セラミック多孔体は、これを構造体の要素として用いることにより、軽量化、断熱、吸音、防振、耐衝撃、吸着等の機能を有するとともに、細孔の大きさや分布条件を設定することにより、イオン交換、選択透過、選択吸着、分離機能等をも有する。なかでも、ゼオライトは、触媒担体、吸着剤、イオン交換剤等として多く用いられ、応用分野が広いことが知られている。特許文献1は、人工ゼオライトの製造方法および人工ゼオライトを含むコンクリート構築物に関する提案であり、これによって、苔・草等小植物の育成を促すようにしたものである。
【特許文献1】特開2002−293534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1の人工ゼオライトを含むコンクリート構築物では、粉末原料をアルカリ水懸濁液で熱水処理してNa型又はK型人工ゼオライトを形成し、これを塩化アンモニウム水懸濁液に浸漬しイオン交換して製造したNH型人工ゼオライトを、コンクリート材料中に含ませて小植物育成層ブロック2を形成し、これを積みブロック本体に一体成型してブロック本体に固着するものが示されている。また、人工ゼオライトを一体成型でなく、構造物に面接触する態様で固着したり、あるいは、モルタルペーストに対して浸漬したり、さらには吹き付けによる固着方法も示唆されている。安価でかつ経済的な方法での人工ゼオライトのコンクリートへの固着方法は、浸漬である。一方、人工ゼオライトの優れた機能を生かして魚礁製造や、水質改善構造体、道路法面緑化、脱臭機能材に適用する場合に、多孔質構造体とこの人工ゼオライトとを結合させるとさらに大きな海水や淡水の浄化機能、緑化、脱臭機能が得られたり、あるいはそれ自体を魚礁として使用し得ると考えられるが、現状ではそれらを実用化し得る提案がなく、その出現が待望されていた。特に、多孔質構造体への人工ゼオライトの固着方法が難しく、低コストで実用的な水生植物育成等の構造体の出現が待望されていた。
【0004】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、極めて簡単な方法で連続空隙を有するポーラスコンクリート構造体の空隙内壁面や外面全体に渡って確実に多孔質無機粉状物の被膜を固着させ、ポーラスコンクリート構造体自体への微生物の定着と、多孔質無機粉状物によるイオン交換、吸着機能により藻や水草等の水生植物の着床、活着を促すことのできる多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低コストで実用に優れた多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液に、ポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬し、懸濁液を攪拌混合させつつ該ポーラスコンクリート構造体に振動を加えながら、懸濁液中でのポーラスコンクリート構造体の内外の構造体要素の表面に多孔質無機粉状物膜を形成させることを特徴とする多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法から構成される。
【0006】
その際、ポーラスコンクリート構造体を懸濁液内で移動させて構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにするとよい。ポーラスコンクリート構造体自体に振動を加えながら、かつ、このポーラスコンクリート構造体を懸濁液内で移動するから構造体内部での細孔(空隙)の壁面部分に良好な密度で被膜形成させる。構造体の懸濁液内での移動は、水平方向への移動、斜め方向、上下方向、その他の任意方向への移動でもよく、また、回動あるいは静止状態での回転変位でもよい。上下方向移動では、吊支装置を用いる場合には、この操作による上下移動で実現し得る。また、水平方向或は横方向移動では、進退ロッドを有するシリンダ装置を用いて移動させるようにしても良い。
【0007】
また、ポーラスコンクリート構造体の懸濁液内での位置を保持した状態で該構造体自体を回動させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにするとなおよい。
【0008】
さらに、ポーラスコンクリート構造体を吊支部材により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させるよことにより支持したポーラスコンクリート構造体を回転させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにするとよい。
【0009】
また、本発明は、セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液12を収容する収容槽14と、収容槽14内の懸濁液12を攪拌混合させる攪拌混合装置16と、懸濁液12内にポーラスコンクリート構造体18の一部又は全部を浸漬した状態で支持する支持手段(20)と、浸漬支持されたポーラスコンクリート構造体18自体に振動を加える振動装置22と、を含む多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置から構成される。
【0010】
また、懸濁液12に一部又は全部を支持させたポーラスコンクリート構造体18自体を懸濁液内で強制的に移動させる移動手段(30)を設けるとよい。
【0011】
また、支持手段(20)はポーラスコンクリート構造体18を直接に抱持した状態で支持する吊支部材24を含むとよい。
【0012】
また、支持手段(20)と振動装置22は連結されて、振動装置を支持することにより吊支部材24を介してポーラスコンクリート構造体18を支持するようにするとよい。
【0013】
また、移動手段は、ポーラスコンクリート構造体18を吊支部材24により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させる周回駆動装置30を有し、
支持したポーラスコンクリート構造体18を回転させつつ構造体18内部の細孔Pでの気液交換を行わせるようにするとよい。
【0014】
さらに、多孔質無機粉状物をゼオライトから構成するとなおよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法によれば、セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液に、ポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬し、懸濁液を攪拌混合させつつ該ポーラスコンクリート構造体に振動を加えながら、懸濁液中でのポーラスコンクリート構造体の内外の構造体要素の表面に多孔質無機粉状物膜を形成させるから、簡単な構成によりポーラスコンクリート構造体の外面のみならず内面の空隙壁面に確実に多孔質無機粉状物被膜を形成させることができ、ポーラスコンクリート構造体自体による微生物の着生場所を広く確保し、水質浄化機能を行わせるとともに、さらに、その大きな比表面積へ多孔質無機粉状物を確実に成膜させるから、藻場育成、水生植物着生、道路法面緑化、脱臭機能さらには魚礁機能を確実に保持させることができる。特に、脱臭機能材として適用する際には、臭気源からの気体の通路に配置させて有効に実効化させ得る。
【0016】
また、ポーラスコンクリート構造体を懸濁液内で移動あるいは揺動させて構造体内部の細孔での気液交換を行わせることにより、ポーラスコンクリート構造体内の空隙に貯留される空気を連続空隙から吐き出して液体と空気を確実に交換し、均質、高密度の多孔質無機粉状物被膜を形成させ得る。
【0017】
また、ポーラスコンクリート構造体の懸濁液内での位置を保持した状態で該構造体自体を回動させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせることにより、小型の収容槽での作業が可能で、作業スペースを小さなものとできるうえに、浅い収容槽内での吊り込み状態での構造体への被膜形成を行え、目視作業容易にして、迅速、短時間の成膜作業を実現し得る。
【0018】
また、ポーラスコンクリート構造体を吊支部材により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させるよことにより支持したポーラスコンクリート構造体を回転させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせることにより、作業スペースの小型化、作業の容易化を保持するとともに、吊支部材による架け替え作業でよいから、処理対象の構造体を取り替える際の段取り変え作業を簡易、迅速に行わせ得る。また、構成が極めて簡単で、メンテナンス性が良好である。
【0019】
また、本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置によれば、セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液を収容する収容槽と、収容槽内の懸濁液を攪拌混合させる攪拌混合装置と、懸濁液内にポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬した状態で支持する支持手段と、浸漬支持されたポーラスコンクリート構造体自体に振動を加える振動装置と、を含む構成であるから、簡単な構成によりポーラスコンクリート構造体の外面のみならず内面の空隙壁面に確実に多孔質無機粉状物被膜を形成させることができ、ポーラスコンクリート構造体自体による微生物の着生場所を広く確保し、水質浄化機能を行わせるとともに、さらに、その大きな比表面積へ多孔質無機粉状物を確実に成膜させるから、藻場育成、水生植物着生、さらには魚礁機能を確実に保持させることができる。
【0020】
懸濁液に一部又は全部を支持させたポーラスコンクリート構造体自体を懸濁液内で強制的に移動させる移動手段が設けられた構成とすることにより、ポーラスコンクリート構造体内の空隙に貯留される空気を連続空隙から吐き出して液体と空気を確実に交換し、均質、高密度の多孔質無機粉状物被膜を形成させ得る。
【0021】
また、支持手段はポーラスコンクリート構造体を直接に抱持した状態で支持する吊支部材を含む構成であるから、作業スペースの小型化、作業の容易化を保持するとともに、吊支部材による架け替え作業でよいから、処理対象の構造体を取り替える際の段取り変え作業を簡易、迅速に行わせ得る。また、構成が極めて簡単で、メンテナンス性が良好である。
【0022】
また、支持手段と振動装置は連結されて、振動装置を支持することにより吊支部材を介してポーラスコンクリート構造体を支持する構成とすることにより、振動装置を別体で準備してポーラスコンクリート構造体にあてがい支持する装置を必要とせず、また、作業準備が後片付けも簡単に、かつ短時間に行える。
【0023】
また、移動手段は、ポーラスコンクリート構造体を吊支部材により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させる周回駆動装置を有し、支持したポーラスコンクリート構造体を回転させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにする構成であるから、小型の収容槽での作業が可能で、作業スペースを小さなものとできるうえに、浅い収容槽内での吊り込み状態での構造体への被膜形成を行え、目視作業容易にして、迅速、短時間の成膜作業を実現し得る。
【0024】
また、多孔質無機粉状物が、ゼオライトであると、ゼオライトの持つ高いイオン交換機能、吸着機能等と、ポーラスコンクリート構造体の高空隙率構成とあいまって、藻場育成、珪藻着生、魚礁あるいはその一部として適用したり、さらには、水質浄化を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明は、多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその成膜方法に関するものであるが、実施の最良の形態として、以下、多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体を説明しつつその成膜方法を説明する。
【0026】
図1、図2は本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置(以下、「成膜装置」という。)10の基本構成を示しており、図において、成膜装置10は、懸濁液12を収容する収容槽14と、該収容槽内の懸濁液12を攪拌混合させる攪拌混合装置16と、懸濁液中にポーラスコンクリート構造体18の一部又は全部を浸漬した状態で支持する支持装置20と、該ポーラスコンクリート構造体18に振動を加える振動装置22と、を備えている。
【0027】
懸濁液12は、例えば水にセメントと多孔質無機粉状物とを混合した液体であり、接着結合剤としてのセメントと、多孔質無機粉状物と、の混合懸濁液を対象物としてのポーラスコンクリート構造体の[空隙内壁面及び外表面]、すなわち、内外表面に成膜固着させる。セメントは、水硬性セメントであり,例えばポルトランドセメント,シリカセメント,アルミナセメント,高炉セメント、石灰スラグセメントなどがある。多孔質無機粉状物は、多数の細孔を有する粉状物であり、接着結合剤を介してポーラスコンクリートの内外表面に固定され、特有の機能を発現させる。この多孔質無機粉状物の第一の機能としては、例えば、構造体などに固定させる場合には、軽量化機能,断熱機能,吸音機能,防振機能,耐衝撃機能(緩衝機能),吸着機能などを有する。また、第二の機能としては、例えば、選択吸着機能,イオン交換機能,選択濾過機能,選択透過機能,分離機能などがある。したがって、ポーラスコンクリートの高い空隙率による微生物の広大なすみかの提供を通じた水質浄化機能を行うとともに、海草、藻類育成の基材を形成させる。また、魚礁としても機能し得る。また、道路法面緑化材、脱臭機能材としても適用し得る。本実施形態では、該多孔質無機粉状物は、人工ゼオライト粉状体から構成されており、ゼオライトの吸着機能及びイオン交換機能を介して海水,淡水等での水生植物育成を促進し、特に水質浄化や水産資源に重要な役目を果たすアマゴやカジメ等の海草の成長に寄与させる。ゼオライトはM2/nO・Al・ySiO・wHO(y≧、nは陽イオンMの価数、wは空隙に含まれる水の分子数)で示される結晶性アルミニウムのケイ酸塩である。ゼオライトの骨格構造には空隙が連通したチャンネルが三次元的に広がり、陽イオンや水分で占められている。これは、合成ゼオライトでは、Si4+の一部をAl3+で置換しているため,正電荷が不足し,その不足を補うためにNa、K、Ca2+などの陽イオンを保持する性質があるからである。これらのイオンは移動性であるから,層状粘土類に比べてはるかに高い陽イオン交換能を持っている。ゼオライトは種々の出発原料があり、その製造方法も異なる。出発原料としては、A型として、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、シリカゲル(粘土骨格シリカ)、カセイソーダがある。また、X型として、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムがある。さらに、Y型として、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等がある。ゼオライトは、例えば0.3〜10nmの孔径の微細孔を有するとよく、これらの機能を安定して行う。実施形態では、例えば10μm〜30μm程度の粒径のものが使用され、セメント粒子の粒径に対応して略同径に合わせてある。これによって、ポーラスコンクリートの内部空隙内でこれらの粒子が詰まりにくくなり、表面成膜とその後のイオン交換機能を具体的に実現し得る。なお、多孔質無機粉状物は、ゼオライトに限らず、例えば、シリカゲル,アルミナゲル,活性炭,珪藻土、その他の多孔質無機物質でもよい。懸濁液12は、例えば重量比でセメント80%、人工ゼオライト15%、その他鉄分等5%とし、これに適宜の水を加えてサラサラ状態の十分な流動性を有する状態にするとよい。鉄化合物のイオンは、ゼオライトのイオン交換機能により吸着され、これらの鉄分が富栄養化の原因を生じさせるリンを吸着し、水質浄化に寄与し得る。
【0028】
図1,2において、収容槽14内の懸濁液12を攪拌混合させるための攪拌混合装置16が設けられている。本実施形態において、攪拌混合装置16は、収容槽14内に配置されたサンドポンプからなり、収容槽内の懸濁液に強制的な水流を起こさせて混合攪拌し、セメントや多孔質無機粉状物が水と分離して底面に沈殿しないようにする。
【0029】
懸濁液12内にポーラスコンクリート構造体18の一部又は全部を浸漬した状態で支持装置20により該ポーラスコンクリート構造体18が支持される。ポーラスコンクリート構造体18は、ポーラスコンクリートよりなる任意形状のブロック構造体であり、図3,4に示すように連続空隙Pを形成したものである。本実施形態では例えば図1に示すように、俵形状とされているが、円筒、板状、立体四角形状その他の立体多角形状、異形形状等でも良い。本実施形態では後述するように帯状ベルトにより吊り下げられた状態で回動するようになっており、この実施形態に限れば俵形状、円筒形状あるいは多角形筒形等が好ましい。ポーラスコンクリートは、軽量コンクリートに採用される独立気泡成型体としてのコンクリートではなく、通常のコンクリートに比して粗骨材に対する細骨材の割合を極端に低くして20〜30%程度の連通空隙率を有する多孔質コンクリートであり、内部の空隙内の無数の孔に微生物が着床生息し得る。ポーラスコンクリート構造体18は、例えば港湾、沿岸海域、湖、河川、沼、湖水等に沈めて配置させ、藻場や水生植物育成基材、魚礁並びに水質改善基材、道路法面緑化材、脱臭機能材などとして適用される。
【0030】
ポーラスコンクリート構造体18の一部又は全部を浸漬した状態で支持する支持装置20は、上面側に該ポーラスコンクリート構造体18を載置して支持するようにしても良いが、本実施形態では上から吊支部材24を介して吊り下げ状態で支持する支持手段である。詳しくは、本実施形態の吊支部材24は、無端帯状ベルトからなり、特に2本の帯状ベルト24Aがポーラスコンクリート構造体18をループの内側に直接に抱持するように間隔を空けて2箇所で掛け回されてポーラスコンクリート構造体18を吊支している。支持装置20は、例えば図示しないホイスト等の吊支機構により垂下された吊支索条26と、吊支索条26に支持されて無端帯状ベルト24Aを外周に調帯するプーリ301と、無端帯状ベルトとしての吊支部材24と、を含む。
【0031】
本実施形態では、支持装置20は、例えば正逆回転モータを内蔵した周回駆動装置30から成っており、該周回駆動装置30のケース32の両端にそれぞれモータの回転軸に固定されたベルト調帯用プーリ301が取り付けられて水平方向軸周りに正逆回転する。周回駆動装置30は、懸濁液12に一部又は全部を支持させたポーラスコンクリート構造体18自体を懸濁液内で強制的に移動させる移動手段であり、特に本実施形態では、俵型あるいはおにぎり型のポーラスコンクリート構造体18の位置を静止状態として回転変位させる周回駆動装置30から構成されている。すなわち、移動手段は、懸濁液内におけるポーラスコンクリート構造体の水平移動,垂直移動、斜め移動等の直線移動、あるいは曲線的な移動,さらにはこれらの組み合わせ移動に限らず、収容槽内での位置を変化させることなく、その角度を変位させるものも含む。本実施形態では、これによって、各々の無端帯状ベルト24Aは、上部をプーリ301の外周に、下部をポーラスコンクリート構造体18の外周に掛け回した状態でそれぞれに調帯されてポーラスコンクリート構造体18を内側で支持する。ポーラスコンクリート構造体18は、懸濁液12の全部を浸漬した状態で処理を行っても良いし、あるいは、図2のように同構造体18の上部を若干大気側に露出した状態で支持したり、さらには、図5のように半分程度を浸漬させた状態で支持させて処理を行っても良い。
【0032】
本実施形態において、振動装置22は、周回駆動装置30のケース32に外付け固定された振動モータを含み、周回駆動装置30に微小振動を加えながらこの振動を吊支部材24に伝え、該吊支部材を介してポーラスコンクリート構造体18を間接的に微振動させる。ポーラスコンクリート構造体18を微振動させることにより、ボーラスコンクリートの空隙及びその内外壁面に形成される多孔質無機粉状物の被膜の形成を確実に行わせ得る。なお、図1中、34は、水平方向に移動可能なホイストからの吊支索条の下端側に配置されチェーンに調帯されたフック37付き吊支金具、36はフック37に係止される振動緩衝用リング、38は、周回駆動装置30をリング36に吊支させるワイヤである。
【0033】
次に、図6も参照しつつ本実施形態の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置の作用とともに、多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法について説明する。まず、所要の配合比により人工ゼオライト粉と、セメントと、水とを混合して懸濁液12を用意する。収容槽14内に懸濁液を投入し(S1)、吊支索条24に支持させた周回駆動装置30の両プーリ301にそれぞれ無端状ベルト24A、24Aを調帯させ、それらの両ベルトの下端側においてポーラスコンクリート構造体18を抱持するように下から掛け回し、該ポーラスコンクリート構造体18の例えば3分の2程度が懸濁液に浸漬する程度に吊支高さ位置を調整する(S2)。次に、攪拌混合装置としてのサンドポンプを起動させて吐出流により懸濁液12を攪拌混合させ、沈殿分離を生じさせないで均等にセメントや多孔質無機粉状物粒子が分散するようにさせる(S3)−(a)。さらに、振動装置22を起動させてポーラスコンクリート構造体18自体に振動を加え(S3)−(b)、同時に周回駆動装置30を駆動させてポーラスコンクリート構造体18自体を回転させる(S3)−(c)。なお、周回駆動装置30による回転は、周期的あるいは非周期的に回転方向を反転させて逆回動させてもよい。必ずしも全周回転することなく、所要の角度のみの回転としてもよい。また、ホイスト装置を操作して周回駆動装置全体の上下動、あるいは水平方向移動を同時に行うようにしても良い。このように、懸濁液内に浸漬したポーラスコンクリート構造体18に微振動を加えて振動させるとともに、これを回転変位させるから、その際に、ポーラスコンクリート構造体内部の細孔の壁面に滞留する空気が構造体の回転あるいは反転時に連続空隙から抜け出て大気に浮上し放出され,この間に空気の滞留空間に懸濁液体成分が入り込み気液交換され、そのうちのゼオライト粒子及びセメント粒子を確実に細孔内壁面にとり込んで膜L(図4参照)或は層として確実に固着させる。浸漬した構造体18を液中から吊り上げて余剰の液を流出させ、必要に応じて例えば1週間程度養生させると構造体の内外面への被膜の固着を強固にさせ得る。なお、構造体への付着被膜原料としての懸濁液の調製に際し、例えば界面活性機能により流動性を増して付着性を良好にするための添加剤や、海藻や珪藻等の水生植物の誘引・着生と活着生育を促す鉄化合物粉を混合するようにしてもよい。これによって、単にどぶ漬け方法により構造物等を懸濁液内に浸漬させて引き上げるだけの方法と異なり、30%程度の空隙率を有する連続空隙体であるポーラスコンクリート構造体の空隙内壁面にまで確実にゼオライト粒子膜を形成させ、ポーラスコンクリート構造体による広大な微生物のすみかの確保とともに、吸着あるいはイオン交換機能を介して水生植物や藻場育成を大幅に促進させ、かつ、微生物の分解作用を介した水質浄化に寄与し得る。
【0034】
なお、実施形態ではサンドポンプからの吐出は懸濁液中において行っているが、例えば図7のように、一端吐出ホース161を液中から大気に突出し,大気側から一部を大気に露出させたポーラスコンクリート構造体の部分に向けて吸引液を吐出し、構造体の空隙内への注入的な放出とともに、懸濁液の混合攪拌を行わせるようにしても良い。さらに、図8に示すように、振動装置22は、周回駆動装置30のケース32に取り付けるようにせずに、別個の支持機構により支持させた状態でポーラスコンクリート構造体を直接に振動させるようにしてもよい。
【0035】
上記のようにして多孔質無機粉状物膜を内外壁面に施したポーラスコンクリート構造体は、海、湖沼などでの藻場育成基材、水質浄化基材あるいは魚礁として水中の適宜位置に投入設置し、あるいはこれを必要に応じてアンカー手段で固定することができる。また、道路法面等において植物の植栽花壇材、土台,その他の緑化材として、あるいは、臭気源からの気体の通路に配置させて脱臭機能材としても適用可能である。
【0036】
以上説明した本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置並びにその方法は、藻場育成基材、水質浄化基材あるいは魚礁として好適に用いることのできるポーラスコンクリート構造体への確実な成膜に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置の全体斜視説明図である。
【図2】図1の装置の概念作用説明図である。
【図3】図1の構造体の一部拡大斜視説明図である。
【図4】図1の構造体の断面説明図である。
【図5】図1の装置の他の概念作用説明図である。
【図6】本発明の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法を説明するフローチャート図である。
【図7】図1の装置の他の概念作用説明図である。
【図8】図1の装置の他の概念作用説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 成膜装置
12 懸濁液
14 収容槽
16 攪拌混合装置
18 ポーラスコンクリート構造体
20 支持装置
22 振動装置
24 吊支部材
24A 無端帯状ベルト
30 周回駆動装置
301 ベルト調帯用プーリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液に、ポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬し、
懸濁液を攪拌混合させつつ該ポーラスコンクリート構造体に振動を加えながら、懸濁液中でのポーラスコンクリート構造体の内外の構造体要素の表面に多孔質無機粉状物膜を形成させることを特徴とする多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法。
【請求項2】
ポーラスコンクリート構造体を懸濁液内で移動させて構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにすることを特徴とする請求項1記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法。
【請求項3】
ポーラスコンクリート構造体の懸濁液内での位置を保持した状態で該構造体自体を回動させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにすることを特徴とする請求項1または2記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法。
【請求項4】
ポーラスコンクリート構造体を吊支部材により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させるよことにより支持したポーラスコンクリート構造体を回転させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜方法。
【請求項5】
セメントと多孔質無機粉状物とを含む懸濁液を収容する収容槽と、
収容槽内の懸濁液を攪拌混合させる攪拌混合装置と、
懸濁液内にポーラスコンクリート構造体の一部又は全部を浸漬した状態で支持する支持手段と、
浸漬支持されたポーラスコンクリート構造体自体に振動を加える振動装置と、を含むことを特徴とする多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。
【請求項6】
懸濁液に一部又は全部を支持させたポーラスコンクリート構造体自体を懸濁液内で強制的に移動させる移動手段が設けられたことを特徴とする請求項5記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。
【請求項7】
支持手段はポーラスコンクリート構造体を直接に抱持した状態で支持する吊支部材を含むことを特徴とする請求項5または6記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。
【請求項8】
支持手段と振動装置は連結されて、振動装置を支持することにより吊支部材を介してポーラスコンクリート構造体を支持することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。
【請求項9】
移動手段は、ポーラスコンクリート構造体を吊支部材により吊支した状態で該吊支部材を周回駆動させる周回駆動装置を有し、
支持したポーラスコンクリート構造体を回転させつつ構造体内部の細孔での気液交換を行わせるようにすることを特徴とする請求項5ないし8のいずれかに記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。
【請求項10】
多孔質無機粉状物が、ゼオライトである請求項1ないし9のいずれかに記載の多孔質無機粉状物のポーラスコンクリート構造体への成膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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