説明

多孔質球状シリカ及びその製造方法

【課題】液体クロマトグラフィー用担体、化粧品用フィラー、触媒、酵素、微生物等を固定化するための固定化担体、吸着剤等として高性能となる平均細孔径、細孔容積、細孔分布等を有する多孔質球状シリカを提供する。
【解決手段】水銀ポロシメーターで測定した最頻細孔径が45〜70オングストローム、平均細孔径が50〜100オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.40ml/g以上であることを特徴とする多孔質球状シリカを用いる。当該多孔質状シリカはBET比表面積が400m/g以上、細孔容積が0.9ml/g以下である多孔質球状シリカ前駆体を600℃以上の温度で焼成することによって製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質球状シリカ及びその製造方法に関するものである。詳しくは、シャープな細孔分布を有し、平均細孔径に対する細孔容積の割合が大きい新規な多孔質球状シリカ及びその製造方法に関する。本発明の多孔質球状シリカは、液体クロマトグラフィー用担体をはじめとして、化粧品用フィラー、固定化担体、吸着剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
多孔質球状シリカは、液体クロマトグラフィー用担体、化粧品用フィラー、触媒、酵素、微生物等を固定化するための固定化担体、吸着剤等としての用途が広がっており、これら用途の広がりに応じて、比表面積、平均細孔径、細孔容積、細孔分布等のシリカ物性に対する要求も多様化している。例えば、高性能な触媒開発においては、対象とする反応物の分子サイズに合せた触媒設計が必要であり、細孔分布がシャープな触媒担体を使用することで触媒活性、反応選択性、触媒寿命等の点で優れた材料開発が可能となる。また、高性能な吸着剤開発においては、細孔分布がシャープな担体を用いることで選択的な吸着特性を有する材料開発が可能となり、更には細孔容積の大きな担体を用いることで吸着容量の大きな材料開発が可能となる。
【0003】
多孔質球状シリカの製造方法に関してはこれまで数多くの方法が公知となっている。例えば、コアセルベーション法をベースとする方法としては、コロイダルシリカの存在下、ホルムアルデヒドと尿素を混合して重合を開始し、樹脂及びコロイダルシリカからなる複合球状粒子を形成させ、樹脂を焼成・除去して多孔質化する方法(例えば、特許文献1)、エマルジョン法をベースとする方法としては、ポリエトキシシロキサンをエタノールと水の混合物中で乳化させ、縮合触媒としてアンモニア水溶液を添加し、多孔質球状シリカを製造する方法(例えば、非特許文献2)、アルコキシド加水分解をベースとする方法としては、テトラアルコキシシランとホウ素化合物とを加水分解させてシリカと酸化ホウ素からなる複合球状粒子を製造し、酸化ホウ素を溶出・除去して多孔質化する方法(例えば、特許文献3)、カルボン酸や脂肪族ニトリル化合物を含む水溶液中でテトラアルコキシシランを加水分解させて多孔質球状シリカを製造する方法(例えば、特許文献4)、更には噴霧乾燥法をベースとする方法としては、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液をアンモニア型イオン交換樹脂と接触させてケイ酸アンモニウムゾルを生成させ、これを噴霧乾燥して多孔質球状シリカを製造する方法(例えば、特許文献5)等が開示されている。
【0004】
しかしながら、上述の方法にて製造された多孔質球状シリカは、シャープな細孔分布を有するものではなく、また、平均細孔径に対する細孔容積の割合が小さいものであった。
【0005】
シャープな細孔分布を有するシリカとして、特許文献6に最頻細孔径が200オングストローム未満、最頻細孔径の±20%の範囲内にある細孔容積が全細孔容積の50%以上となるシリカゲルが提案されている。しかしながら、この特許文献6での最頻細孔径とは、窒素ガスの吸着等温線からBJH法にて算出して求めた値であり、これは本願発明の水銀ポロシメーターにて測定した値とは異なるものである。具体的には、特許文献6での実施例には最頻細孔径が89オングストローム、69オングストローム、133オングストロームのシリカゲルの製造方法が開示されているが、実施例に記載の比表面積からは、水銀ポロシメーターにて測定されたこれらシリカゲルの最頻細孔径では全て34オングストローム以下になるものであった。液体クロマトグラフィー用担体としての応用を考えた場合、水銀ポロシメーターにて測定された細孔直径が40オングストローム以下の細孔は分離には利用されないものであるため、その応用範囲が限定されたものであった。
【0006】
【特許文献1】特開昭49−017806号公報(請求項2)
【非特許文献1】Journal of Colloid and Interface Science, Vol.55, 377(1976)
【特許文献2】特開平07−172814号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平08−026716号公報(請求項1)
【特許文献4】特公平07−055816号公報(請求項1)
【特許文献5】特開2003−194792号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような背景から、細孔分布がシャープであり、平均細孔径に対する細孔容積の割合が大きく、汎用的に利用することが可能な細孔分布を有し、形状が球状であるシリカの開発が熱望されていた。
【0008】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、具体的には、水銀ポロシメーターで測定した最頻細孔径が45〜70オングストローム、平均細孔径が50〜100オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.40ml/g以上である多孔質球状シリカ及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来の多孔質球状シリカと比べて細孔分布がシャープであり、平均細孔径に対する細孔容積の割合が大きい新規な多孔質球状シリカを開発すべく鋭意検討を行った結果、BET比表面積が400m/g以上、細孔容積が0.9ml/g以下である多孔質球状シリカ前駆体を600℃以上の温度で焼成することで新規な細孔構造を有する多孔質球状シリカの合成が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の多孔質球状シリカは、水銀ポロシメーターで測定した最頻細孔径が45〜70オングストローム、平均細孔径が50〜100オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.40ml/g以上である多孔質球状シリカである。
【0012】
本発明でいう細孔容積、平均細孔径、最頻細孔径とは、水銀ポロシメーターにて測定した値である。水銀ポロシメーターにて多孔質球状シリカの細孔構造を評価する場合、測定される細孔容積は多孔質球状シリカ粒子内に存在する容積と多孔質球状シリカ粒子間で形成される容積が測定可能である。本発明でいう細孔容積とは多孔質球状シリカ粒子内に存在する細孔容積のことである。多孔質球状シリカ粒子の平均粒径が数十μm以下の場合、多孔質球状シリカ粒子内に存在する細孔容積は細孔径が2000オングストローム以下の範囲の測定値であり、具体的には34〜2000オングストロームの範囲内の細孔径で形成される細孔の容積となる。また、本発明でいう平均細孔径とは細孔の円筒モデルによって求めたものであり、具体的には細孔容積と比表面積とから算出した値である。更に、本発明でいう最頻細孔径とは、細孔直径に対して対数微分細孔容積(ΔV/Δ(log d)、ここでVは水銀圧入容積、dは細孔直径)をプロットした図上において、対数微分細孔容積の値が最大となる細孔直径のことである。
【0013】
本発明の多孔質球状シリカの最頻細孔径は45〜70オングストロームであり、好ましくは50〜65オングストロームの範囲である。液体クロマトグラフィー用担体としての応用を考えた場合、最頻細孔径が45オングストローム未満の多孔質球状シリカは、分離に利用されない細孔の割合が多くなり、好ましくない。
【0014】
本発明の多孔質球状シリカの平均細孔径は50〜100オングストロームであり、好ましくは60〜100オングストロームの範囲である。例えば液体クロマトグラフィー用担体としての応用では、平均細孔径が50オングストローム未満又は100オングストロームを超える多孔質球状シリカは汎用的に使用することができないために好ましくない。一般的に液体クロマトグラフィー用担体としては、ポリマーを担持するグレードや蛋白質等の高分子物質分析用等の特殊グレードを除き、分離対象の分子サイズ等から80〜120オングストロームの平均細孔径を有するものが用いられる。
【0015】
本発明の多孔質球状シリカの最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積は0.40ml/g以上である。最頻細孔径±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.40ml/g未満では、目的の範囲の容積が少なすぎ、上述の用途に適さない。一方、その上限は特に限定されないが、通常0.55ml/g程度まで実施することができる。
【0016】
本発明の多孔質球状シリカの最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積は全細孔容積の50%以上であることがさらに好ましい。最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が全細孔容積の50%未満の多孔質球状シリカは細孔分布がシャープではなく、触媒担体や吸着剤として優れた性能を有する材料開発が困難となるために好ましくない。この割合の上限は特に限定されないが、通常、80%程度までである。
【0017】
本発明の多孔質球状シリカの細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]の比は0.01以上、特に0.010〜0.015であることがさらに好ましい。吸着剤としての応用を考えた場合、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]の比が0.010未満の多孔質球状シリカでは同じ平均細孔径のものでも細孔容積が小さくなり、吸着容量が小さくなるために好ましくない。
【0018】
本発明の多孔質球状シリカのその他の粉体物性は特に限定されないが、以下の粉体物性を具備することがさらに好ましい。本発明の多孔質球状シリカのBET比表面積は400〜500m/gの範囲、平均粒径は数〜数十μmの範囲、その形状は実質的に個々の粒子が独立した球状であり、級の長径と短径との比は0.8〜1.0であることが特に好ましい。
【0019】
次に本発明の多孔質球状シリカの製造方法について説明する。
【0020】
本発明の多孔質球状シリカは、BET比表面積が400m/g以上で、細孔容積が0.9ml/g以下である多孔質球状シリカ前駆体を600℃以上の温度で焼成することによって製造される。
【0021】
多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は400m/g以上のものを用いる。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積が400m/g未満の場合、得られる多孔質球状シリカの最頻細孔径±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.4ml/g未満となり、さらに多孔質球状シリカの細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]の比が0.01未満となり易い。ここで多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積の上限は特に限定されないが、通常、500m/g程度までである。
【0022】
多孔質球状シリカ前駆体の細孔容積は0.9ml/g以下のものを用いる。多孔質球状シリカ前駆体の細孔容積が0.9ml/gを超える場合、それを用いて製造した多孔質球状シリカの最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が全細孔容積の50%未満となる。多孔質球状シリカ前駆体の細孔容積の下限は特に限定されないが、通常、0.3ml/g以上である。
【0023】
多孔質球状シリカ前駆体の焼成温度は600℃以上であり、好ましくは600〜1000℃の範囲である。焼成温度が600℃未満の場合、多孔質球状シリカの最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が全細孔容積の50%未満となり、本発明の多孔質球状シリカが得られないために好ましくない。焼成温度が1000℃を超える場合、多孔質球状シリカの1次粒子の粒成長が進行し、本発明の多孔質球状シリカが得られない場合がある。焼成時間は特に限定されず、数〜数十時間でよい。焼成時の雰囲気は特に限定されず、大気中で焼成すればよい。
【0024】
BET比表面積が400m/g以上、細孔容積が0.9ml/g以下である多孔質球状シリカ前駆体は、例えばテトラアルコキシシランを部分的に加水分解してアルコキシシラン重合物を調製し、アルコキシシラン重合物100重量部に対して有機溶媒の量が30重量部以下となるようにアルコキシシラン重合物と有機溶媒を混合し、この混合溶液を水相で分散させてO/W型エマルジョンを形成させ、加水分解触媒を添加して製造することができる。
【0025】
テトラアルコキシシランは特に限定されず、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の炭素数が1〜4の低級アルコキシ基を有するテトラアルコキシシラン等を使用すればよい。アルコキシシラン重合物は、水の存在下においてテトラアルコキシランを部分的に重合させて調製される。アルコキシシラン重合物の重合度は使用される水の量によって決定されることは公知であり、通常、テトラアルコキシラン1molに対して1.0〜1.5molの水を使用して加水分解反応を行えばよい。また、アルコキシシラン重合物の重合度は加水分解反応の温度によって決定されることは公知であり、通常、室温〜200℃の温度で加水分解反応を行えばよい。
【0026】
テトラアルコキシランの加水分解反応は酸性化合物によって促進されることが公知であり、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸等の希薄水溶液の存在下で加水分解反応を行うのが一般的である。テトラアルコキシランの加水分解反応は水に可溶な有機溶媒中で行うことが好ましく、水に可溶な有機溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール類等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が例示できる。部分的に加水分解されたアルコキシシラン重合物は粘性液体であり、その物性としては特に限定されないが、重量平均分子量は400〜5000、粘度は10〜500cP程度である。
【0027】
次に、アルコキシシラン重合物100重量部に対して有機溶媒の量が30重量部以下となるようにアルコキシシラン重合物と有機溶媒を混合し、この混合溶液を水相で分散させてO/W型エマルジョンを形成させ、加水分解触媒を添加して多孔質球状シリカ前駆体を製造する。
【0028】
アルコキシシラン重合物100重量部に対する有機溶媒の量は30重量部以下が好ましい。有機溶媒の量が30重量部を超える場合、細孔容積が0.9ml/gを超える多孔質球状シリカ前駆体が得られ、本発明の多孔質球状シリカの製造が困難となる場合がある。
【0029】
ここで用いられる有機溶媒としては水に不溶な有機溶媒であれば特に限定することなく使用することが可能である。アルコキシシラン重合物に対する水相の量は特に限定されず、アルコキシシラン重合物100重量部に対して100〜1000重量部程度の量でよい。水相には水を単独で用いてもよいが、必要に応じて水と混和することが可能な有機溶媒との混合物を水相として使用してもよい。加水分解触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物の希薄水溶液やアンモニア、アミン等の有機物の希薄水溶液を使用することが可能であるが、不純物カチオンの混入を防ぐという点でアンモニア、アミン等の希薄水溶液を用いることが好ましい。加水分解触媒の量は特に限定されないが、反応槽内のpHが7.0以上、好ましくは8.0以上となる量が好ましい。
【0030】
O/W型エマルジョンを安定化させることを目的とし、界面活性剤の存在下に多孔質球状シリカ前駆体を製造してもよい。界面活性剤としては公知の材料を用いることができ、例えば蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤等が例示される。
【0031】
多孔質球状シリカ前駆体は固液分離され、洗浄した後、乾燥することで得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の多孔質球状シリカは、水銀ポロシメーターで測定した最頻細孔径が45〜70オングストローム、平均細孔径が50〜100オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.4ml/g以上であり、さらに最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が全細孔容積の50%以上、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]の比が0.010〜0.015の、従来の多孔質球状シリカに比べて細孔分布がシャープであり、かつ、平均細孔径に対する細孔容積の割合が大きい新規な多孔質球状シリカであるため、液体クロマトグラフィー用担体、化粧品用フィラー、触媒、酵素、微生物等を固定化するための固定化担体、吸着剤等の用途に優れた性能を発揮する。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
なお、平均細孔径、最頻細孔径、細孔容積は水銀ポロシメーター AutoPore IV9500(Micromeritics製)で測定し、測定範囲は34〜2000オングストロームとした。粘度はTOKIMEC VISCOMETER B8L(TOKYO KEIKI製)を使用して測定した。BET比表面積はFlowSorb III(Micromeritics製)を使用して測定し、200℃で脱気処理したものを測定に用いた。
【0035】
実施例1
テトラエトキシシラン150gとエタノール60gを混合し、0.01N硫酸水溶液20gを添加し、室温で1時間攪拌した。次いで、オイルバスの温度を90℃とし、エタノールを留去しながら18時間加水分解反応を行い、部分的に加水分解したアルコキシシラン重合物を合成した。アルコキシシラン重合物は粘性液体であり、その粘度は100cPであった。
【0036】
アルコキシシラン重合物80gとシクロヘキサン24gを混合し、温度を50℃に保った水300gとエタノール300gを混合した溶液に添加し、500rpmで攪拌してエマルジョンを形成した。30分後、28%アンモニア水溶液10gを添加し、更に4時間攪拌を継続した。反応スラリーを固液分離後、エタノール、水で十分に洗浄し、110℃で1晩乾燥し、多孔質球状シリカ前駆体を製造した。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は440m/g、細孔容積は0.87ml/gであった。
【0037】
上述の方法で得られた多孔質球状シリカ前駆体を大気中、600℃で2時間焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0038】
多孔質球状シリカの細孔分布を図1に示す。多孔質球状シリカの最頻細孔径は57オングストローム、平均細孔径は71オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.50ml/gであった。また、全細孔容積は0.99ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の50.1%であった。更に、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.014であった。
【0039】
実施例2
実施例1と同様の方法で製造したアルコキシシラン重合物80gとシクロヘキサン12gを混合し、温度60℃に保った水300gとエタノール200gを混合した溶液に添加し、500rpmで攪拌してエマルジョンを形成した。30分後、28%アンモニア水溶液10gを添加し、更に3時間攪拌を継続した。反応スラリーを固液分離後、エタノール、水で十分に洗浄し、110℃で1晩乾燥し、多孔質球状シリカ前駆体を製造した。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は430m/g、細孔容積は0.66ml/gであった。
【0040】
上述の方法で得られた多孔質球状シリカ前駆体を実施例1と同様の方法で焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0041】
多孔質球状シリカの最頻細孔径は56オングストローム、平均細孔径は65オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.44ml/gであった。また、全細孔容積は0.77ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の57.3%であった。更に、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.012であった。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の方法で製造したアルコキシシラン重合物80gを温度60℃に保った水300gとエタノール200gを混合した溶液に添加し、実施例2と同様の方法で多孔質球状シリカ前駆体を製造した。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は440m/g、細孔容積は0.36ml/gであった。
【0043】
上述の方法で得られた多孔質球状シリカ前駆体を実施例1と同様の方法で焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0044】
多孔質球状シリカの最頻細孔径は49オングストローム、平均細孔径は51オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.41ml/gであった。また、全細孔容積は0.54ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の75.9%であった。更に、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.011であった。
【0045】
実施例4
実施例2と同様の方法で製造した多孔質球状シリカ前駆体を大気中、800℃で2時間焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0046】
多孔質球状シリカの最頻細孔径は64オングストローム、平均細孔径は73オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.49ml/gであった。また、全細孔容積は0.81ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の60.5%であった。更に、細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.011であった。
【0047】
比較例1
実施例2と同様の方法で製造した多孔質球状シリカ前駆体を大気中、400℃で2時間焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0048】
多孔質球状シリカの最頻細孔径は46オングストローム、平均細孔径は66オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.32ml/gと低かった。また、全細孔容積は0.83ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の38.9%と低く、細孔分布はブロードであった。細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.013であった。
【0049】
比較例2
実施例1と同様の方法で製造したアルコキシシラン重合物80gとシクロヘキサン44gを混合し、実施例1と同様の方法で多孔質球状シリカ前駆体を製造した。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は460m/g、細孔容積は1.31ml/gであった。
【0050】
上述の方法で得られた多孔質球状シリカ前駆体を実施例1と同様の方法で焼成し、多孔質球状シリカを製造した。
【0051】
多孔質球状シリカの最頻細孔径は49オングストローム、平均細孔径は70オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.36ml/gと低かった。また、全細孔容積は1.19ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の30.2%と低く、細孔分布はブロードであった。細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.017であった。
【0052】
比較例3
実施例1と同様の方法で製造したアルコキシシラン重合物80gを温度80℃に保った水300gとエタノール200gを混合した溶液に添加し、500rpmで攪拌してエマルジョンを形成した。30分後、28%アンモニア水溶液50gを添加し、更に12時間攪拌を継続した。反応スラリーを固液分離後、エタノール、水で十分に洗浄し、110℃で1晩乾燥し、多孔質球状シリカ前駆体を製造した。多孔質球状シリカ前駆体のBET比表面積は390m/g、細孔容積は0.45ml/gであった。
【0053】
上述の方法で得られた多孔質球状シリカ前駆体を実施例1と同様の方法で焼成し、多孔質球状シリカを製造した。多孔質球状シリカの最頻細孔径は57オングストローム、平均細孔径は61オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は0.24ml/gと低かった。また、全細孔容積は0.51ml/gであり、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔容積は全細孔容積の47.1%と低く、細孔分布はブロードであった。細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]は0.008と低かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1で得られた多孔質球状シリカの細孔直径に対する対数微分圧入容積をプロットした細孔分布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀ポロシメーターで測定した最頻細孔径が45〜70オングストローム、平均細孔径が50〜100オングストローム、最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が0.40ml/g以上であることを特徴とする多孔質球状シリカ。
【請求項2】
最頻細孔径の±10%の範囲に存在する細孔の容積が全細孔容積の50%以上である請求項1に記載の多孔質球状シリカ。
【請求項3】
細孔容積[ml/g]/平均細孔径[オングストローム]の比が0.010〜0.015であることを特徴とする請求項1〜2に記載の多孔質球状シリカ。
【請求項4】
BET比表面積が400m/g以上、細孔容積が0.9ml/g以下である多孔質球状シリカ前駆体を600℃以上の温度で焼成することを特徴とする請求項1〜3に記載の多孔質球状シリカの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−76941(P2007−76941A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265269(P2005−265269)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】