説明

多官能化合物の製造方法

【課題】ポリイソシアネート化合物と求核性官能基を2個以上有する求核性化合物とをバルクで反応させる際、高分子量化やゲル化を発生させることなく、求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得る多官能化合物の製造方法の提供。
【解決手段】ポリイソシアネート化合物と、アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の求核性官能基を2個以上有する求核性化合物とを、振動式かくはん機を用いて均一に混合させながらバルクで反応させることによって、前記求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得る多官能化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基に対して反応可能な求核性官能基(例えば、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基)を2個以上有する求核性化合物とを高分子量化やゲル化させることなく反応させて、求核性官能基を生成物に導入する方法としては、例えば、(1)ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とを溶剤で希釈して反応を行い、反応後溶剤を除去する方法、(2)求核性化合物を大過剰のポリイソシアネート化合物に添加して反応を行い、反応終了後末反応のポリイソシアネート化合物を除去する方法、(3)求核性化合物の求核性官能基をあらかじめ保護基で保護し、これとポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後得られた反応生成物から保護基を外す方法が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のポリイソシアネート化合物と求核性化合物とを高分子量化やゲル化させずに反応させて求核性官能基を生成物に導入する方法には、上述のとおり、溶剤の使用やその除去、原料の大過剰の使用やその除去、官能基の保護化やその脱保護が必要なため、作業工程が多く、製造コストが高くなるという問題があった。
また、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とをバルクで反応させると、反応生成物が、高分子量化やゲル化が発生してしまうという問題があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とをバルクで反応させる際、高分子量化やゲル化を発生させることなく多官能化合物を生成する多官能化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のかくはん機を用いてポリイソシアネート化合物と特定の求核性化合物とを均一に混合させながらバルクで反応させることによって、高分子量化やゲル化を発生させることなく多官能化合物が得られることを知見し、この知見に基づき本発明を完成させたのである。
【0006】
即ち、本発明は、下記(1)〜(3)を提供する。
(1)ポリイソシアネート化合物と、
アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の求核性官能基を2個以上有する求核性化合物とを、
振動式かくはん機を用いて均一に混合させながらバルクで反応させることによって、
前記求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得る多官能化合物の製造方法。
(2)前記振動式かくはん機が、前記ポリイソシアネート化合物と前記求核性化合物との混合物を通す導管と、かくはん体とを具備し、
前記かくはん体が、軸部とかくはん羽根とを有し前記軸部の周囲に前記かくはん羽根が配置され、振動源に接続されているものであり、前記導管内において前記軸部が、前記混合物が前記導管の内部を通る方向と平行となるように配置され、前記方向に沿って振動する上記(1)に記載の多官能化合物の製造方法。
(3)前記導管が、その内部に仕切り板を具備し、
前記仕切り板は、前記軸部を貫通させる孔部を有し、前記導管の内部に固定されている上記(2)に記載の多官能化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多官能化合物の製造方法によれば、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とをバルクで反応させる際、高分子量化やゲル化を発生させることなく多官能化合物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の多官能化合物の製造方法は、
ポリイソシアネート化合物と、
アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の求核性官能基を2個以上有する求核性化合物とを、
振動式かくはん機を用いて均一に混合させながらバルクで反応させることによって、
前記求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得るものである。
【0009】
ポリイソシアネート化合物について以下に説明する。
本発明の製造方法に使用されるポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するものであればよく、低分子量ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマーが挙げられる。
【0010】
低分子量ポリイソシアネートは特に制限されない。例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)のような芳香族炭化水素基含有ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネートのような脂肪族ポリイソシアネート;H6XDI(水添XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの水素添加物(水添MDI)、イソホロンジイソシアネートのような脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
【0011】
ウレタンプレポリマーは、特に制限されない。例えば、低分子量ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させることによって得られるものが挙げられる。
ウレタンプレポリマーの製造の際使用される低分子量ポリイソシアネートは上記と同義である。
【0012】
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用されるポリオールは、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。例えば、低分子多価アルコール類、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシ基を3個以上有するポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
【0013】
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのようなジオール;1,2,5−ヘキサントリオール、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリンのような3価アルコール類;ペンタエリスリトールのような4価以上のアルコール類;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンのようなアルカノールアミン類;ソルビトールのような糖類が挙げられる。
【0014】
ポリカーボネートポリオールは、カーボネート結合(−O−CO−O−)と2個以上のヒドロキシ基とを有するものであれば特に限定されない。例えば、ジアルキルカーボネートのアルコキシ基と、ポリオールのヒドロキシ基から水素原子を除いた基とのエステル交換反応によって得られるものが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの製造の際に使用されうるジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートが挙げられる。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子多価アルコール類および/または芳香族ポリオール類から導かれるものが挙げられる。低分子多価アルコール類は持に限定されず、例えば、上述の低分子多価アルコール類と同様のものが挙げられる。芳香族ポリオール類としては、例えば、キシリレングリコール、スチレングリコールのようなモノフェニル系グリコール;4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール、ビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のようなビスフェノール骨格を有するジオール;ピロガロール、ピロログルシノールのような3価フェノール類が挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールはその製法について特に制限されない。例えば、低分子多価アルコール類および芳香族ポリオール類からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランのようなアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるものが挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオールおよびビスフェノールA(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子多価アルコール類および/または芳香族ポリオール類と多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール)、ラクトン系ポリオールが挙げられる。
縮合系ポリエステルポリオールの製造の際に使用されうる低分子多価アルコール類および芳香族ポリオール類は、ポリエーテルポリオールの製造の際に使用されうるものと同様である。
縮合系ポリエステルポリオールの製造の際に使用されうる多塩基性カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸のような低分子カルボン酸;オリゴマー酸;ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールとの反応生成物のヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
ラクトン系ポリオールとしては、例えば、プロピオンラクトン、バレロラクトンのような開環重合体が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ビスフェノール骨格を有するポリエステルポリオールが挙げられる。このようなポリエステルポリオールは、例えば、ビスフェノール骨格を有するジオールと多塩基性カルボン酸と、必要に応じて低分子多価アルコール類とを反応させることによって得られる。具体的には、例えば、ビスフェノールAとヒマシ油とから得られるポリエステルポリオール、ビスフェノールAとヒマシ油とエチレングリコールとプロピレングリコールとから得られるものが挙げられる。
【0020】
ヒドロキシ基を3個以上有するポリオールとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンのようなアルカノールアミン類;ピロガロールおよびピロログルシノールのような3価フェノール類からなる群から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランのようなアルキレンオキサイドのなかの少なくとも1種を付加して得られるポリオールが挙げられる。
【0021】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールのような炭素炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオールが挙げられる。
【0022】
ウレタンプレポリマーの製造は特に制限されず、例えば、従来公知の方法が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
求核性化合物について以下に説明する。
本発明の製造方法において使用される求核性化合物は、アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の求核性官能基を2個以上有する化合物である。
【0024】
求核性官能基は、イソシアネート基に対して求核付加反応することができる官能基である。
求核性官能基は、アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1分子の求核性化合物が有する求核性官能基は、2個以上であり、2〜4個であるのが好ましい。求核性官能基は、すべて同じ種類でもよく、2種類以上であってもよい。
2個以上の求核性官能基は、求核性化合物中の結合位置について特に制限されない。
【0025】
求核性化合物は、求核性官能基以外の構造について特に制限されない。求核性化合物の求核性官能基以外の構造は、2価以上の炭化水素基であればよく、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基およびこれらの炭化水素基を複合して有するものが挙げられる。
2価以上の炭化水素基は、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子のようなヘテロ原子を含むことができる。このようなヘテロ原子を含む場合、2価以上の炭化水素基は、例えば、カルボニル基、尿素基(カルバミド基)のような官能基;エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合のような結合を有することができる。
2価以上の炭化水素基は、分岐することができ不飽和結合を含むことができる。
【0026】
求核性化合物としては、例えば、アミノ基および/またはイミノ基を含むポリアミン、メルカプト基を含むポリチオール、ヒドロキシ基を含むポリオール、アミノ基および/またはイミノ基とメルカプト基および/またはヒドロキシ基とを含む化合物が挙げられる。
【0027】
ポリアミンについて以下に説明する。
ポリアミンは、アミノ基および/またはイミノ基を含み、アミノ基および/またはイミノ基の合計が2個以上である。
ポリアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、3官能以上のアミン、アミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0028】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン(NBDA)が挙げられる。
【0029】
芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン(MXDA)、4,4′−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジア ミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジア ミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミンが挙げられる。
【0030】
3官能以上のポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンが挙げられる。
【0031】
アミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン系のシランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0032】
ポリチオールについて以下に説明する。
ポリチオールは、メルカプト基(−SH)を2個以上有する化合物である。メルカプト基は、例えば、ポリチオールの末端、骨格内に結合することができる。
ポリチオールとしては、メルカプト基を2個有するチオール、メルカプト基を3個以上有するチオールが挙げられる。
【0033】
メルカプト基を2個有するチオールとしては、例えば、エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール、ヘプタンジチオール、オクタンジチオール、ノナンジチオール、デカンジチオール、ベンゼンジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、ベンゼンジメタンチオール、4,4′−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−メルカプト−3−チアヘキサン−1,6−ジチオール、5,5−ビス(メルカプトメチル)−3,7−ジチアノナン-1,9−ジチオール、5−(2−メルカプトエチル)−3,7−ジチアノナン−1,9−ジチオール、ジメルカプトプロパノール、ジチオエリトリトールが挙げられる。
【0034】
メルカプト基を3個以上有するチオールとしては、例えば、ポリエーテルの末端にメルカプト基を導入したポリチオール(例えば、東レ・ファインケミカル社製、QE−340M)、トリチオグリセリン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)メシチレン、トリス(メルカプトメチル)イソシアヌレート、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、2,4,5−トリス(メルカプトメチル)−1,3−ジチオランのようなトリチオール;テトラメルカプトブタン、ペンタエリトリチオールのようなテトラチオールが挙げられる。
【0035】
ポリオールについて以下に説明する。
ポリオールは、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば、特に制限されない。
ポリオールは上記と同義である。
【0036】
求核性化合物は、求核性官能基以外の官能基を有することができる。求核性官能基以外の官能基としては、例えば、加水分解性シリル基、カルボニル基、アルデヒド基、カルボキシ基、エポキシ基が挙げられる。
【0037】
加水分解性シリル基は、−Si(R1n(Z)3-nで表され、R1は炭化水素基であり、Zは加水分解性基であり、nは0、1または2であり、炭化水素基は、水素原子の少なくとも1個が、例えば、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子やシアノ基のような官能基で置換されていてもよい。
【0038】
炭化水素基は炭素原子数1〜8の1価の炭化水素基であるのが好ましく、炭素原子数1〜8の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基のようなアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基のようなアルケニル基;フェニル基のようなアリール基;ベンジル基のようなアラルキル基が挙げられる。
【0039】
加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基のようなアルコキシ基;プロペノキシ基のようなアルケニルオキシ基;フェノキシ基のようなアリールオキシ基;ケトオキシム基、アミノオキシ基、アミド基が挙げられる。
【0040】
求核性化合物としては、例えば、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
求核性化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明の製造方法によれば、さらに、本発明の製造方法において使用される求核性化合物以外の化合物を使用することができる。
このような化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリカルボン酸、ポリアルデヒド化合物が挙げられる。エポキシ樹脂が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0042】
エポキシ樹脂について以下に説明する。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型のようなビスフェニル基を有するエポキシ化合物、ポリアルキレングリコール型、アルキレングリコール型のエポキシ化合物、ナフタレン環を有するエポキシ化合物、フルオレン基を有するエポキシ化合物等の二官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、三官能型、テトラフェニロールエタン型のような多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ダイマー酸のような合成脂肪酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;N,N,N′,N′−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンのようなグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂;トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を有するエポキシ化合物(例えば、ジシクロペンタジエンとm−クレゾールのようなクレゾール類またはフェノール類を重合させた後、エピクロルヒドリンを反応させる製造方法によって得られるエポキシ化合物)が挙げられる。
【0043】
本発明の多官能化合物の製造方法においては、求核性官能基の一部をあらかじめ保護基によって保護化し、イソシアネート基と反応させないようにすることができるが、製造コストの観点から、求核性官能基を保護化せずそのままで用いることができる。なぜなら、本発明の多官能化合物の製造方法においては、振動式かくはん機を用いて、原料の拡散効率を高くし、原料の拡散が律速段階とならないようにしているため、求核性官能基は保護化されている必要は特にない。
【0044】
ポリイソシアネート化合物および求核性化合物の種類や使用量は、目的とする多官能化合物に応じて適宜決定することができる。
例えば、ジイソシアネート化合物1モルに対して求核性官能基を2個有する求核性化合物を1モルを超えるモル比で反応させて、求核性官能基を2個有する多官能化合物を製造する場合、イソシアネート基:求核性官能基のモル比は、1:1より大きく2以下であるのが好ましく、1:1より大きく1.5以下であるのがより好ましい。
【0045】
本発明の製造方法において、ポリイソシアネート化合物および求核性化合物のほかに、必要に応じて、触媒、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤のような添加剤を使用することができる。
【0046】
振動式かくはん機について以下に説明する。
本発明の製造方法に使用される振動式かくはん機は、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物との反応において、ポリイソシアネート化合物および/または求核性化合物の系内における拡散速度を速くし、かくはん速度が反応の律速段階とならないようにすることができるものであれば特に制限されない。
【0047】
振動式かくはん機は、
ポリイソシアネート化合物と求核性化合物との混合物を通す導管と、かくはん体とを具備し、
かくはん体が、軸部とかくはん羽根とを有し軸部の周囲にかくはん羽根が配置され、振動源に接続されているものであり、導管内において軸部が、混合物が導管の内部を通る方向と平行となるように配置され、方向に沿って振動するものであるのが好ましい態様として挙げられる。
また、導管が、その内部に仕切り板を具備し、
仕切り板は、軸部を貫通させる孔部を有し、導管の内部に固定されているのが好ましい態様として挙げられる。
【0048】
振動式かくはん機について、添付の図面を用いて以下に説明する。
なお、以下の説明において、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とのうち、ポリイソシアネート化合物を主剤といい、求核性化合物を添加剤という。また、反応において使用する主剤以外の成分全体(添加剤、必要に応じて使用されうる触媒)を副剤という。
【0049】
図1は、本発明の多官能化合物の製造方法に使用される振動式かくはん機および原料の供給装置の一例を示す模式的な概略図である。
図1において、1は振動式かくはん機を示す。振動式かくはん機1は、導管9を具備する。導管9は、主剤Xと副剤Yとの混合物(図示せず。)を通す。導管9を覆う枠体3の上には、モータ5と振動源7とが搭載され、枠体3の天井から円筒状の導管9が鉛直方向に吊り下げて配置されている。
【0050】
導管9の下部には原料供給口18が設けられ、原料供給口18には主剤Xを導管9に供給する主剤供給配管19が接続されている。主剤供給配管19の他端部には主剤供給ポンプ25が配置されている。主剤Xは、主剤供給ポンプ25から主剤供給配管19を通って、原料供給口18に供給される。
また、原料供給口18には副剤Yを導管9に供給する副剤供給配管21が接続されており、副剤供給配管21の他端部は分岐し、分岐したそれぞれの配管(図示せず。)に添加剤供給ポンプ27、触媒供給ポンプ29が接続されている。添加剤Ylは、添加剤供給ポンプ27から分岐した配管を通って副剤供給配管21に合流し導管9に供給される。触媒が使用される場合、触媒Y2は、触媒供給ポンプ29から配管(図示せず。)を通って副剤供給配管21に合流し原料供給口18に供給される。
原料供給口18から導管9の内部に供給された主剤Xと副剤Yとの混合物(図示せず。)は、導管9を通って導管9の上方に向かって進み、導管9を通っている間に、導管9の内部のかくはん体11(図示せず。)によって混合されながら反応する。
導管9の上部には、生成物Zを導管9から排出する生成物排出口22が設けられ、生成物排出口22に生成物排出配管23が接続されている。生成物Zは、生成物排出口22から生成物排出配管23を通って振動式かくはん機1の外部へ排出される。
導管9の外部には、導管9を加熱冷却するためのジャケット(図示せず。)を装着させることができる。
【0051】
図2は、導管9の内部を模式的に示す断面図である。
導管9の内部には、軸部13の周囲にかくはん羽根15を螺旋状に形成したかくはん体11が、軸部13が、主剤Xと副剤Yとの混合物(図示せず。)が原料供給口18から生成物排出口22へ通る方向と平行となるように配置され、軸部13の上端(図示せず。)は振動源7(図2には図示せず。)に連結されている。振動源7(図示せず。)は、モータ5(図示せず。)の回転を振動に変換し、かくはん体11を振動させる。かくはん体11は、振動源7(図示せず。)からの振動によって、主剤Xと副剤Yとの混合物(図示せず。)が導管9の内部を通る方向に沿って、振動(上下の往復運動12)をする。かくはん体11の振動によって、主剤Xと副剤Yとが導管9の内部で効果的に混合される。
導管9の内部には、仕切り板17が配置されており、仕切り板17は、主剤Xと副剤Yとの混合物(図示せず。)が導管9の内部を通る方向に対して垂直に固定されている。仕切り板17によって、導管9の内部は多段に仕切られている。仕切り板17は、その直径が導管9の内径と略同じ大きさの円板であり、円板の中央には軸部13を貫通させる孔部(図示せず。)が形成されている。孔部(図示せず。)と軸部13との間には、主剤Xと副剤Yとの混合物が通るためのすき間が設けられている。また、仕切り板17は、仕切り板17内に流通穴(図示せず。)を有することができる。このような場合、主剤Xと副剤Yとの混合物が、流通穴(図示せず。)を通って次の仕切り室16を移動することができる。このような流通穴(図示せず。)を設けることによって、主剤Xと副剤Yとの混合物の流通速度を調節することができる。
2枚の仕切り板の間に挟まれてできる仕切り室の中にかくはん羽根が配置されている。主剤Xと副剤Yとの混合物は、仕切り室を移動しながら、仕切り板とかくはん体との相対的な運動によって特に効果的にかくはんされ均一に混合されながら、反応する。
【0052】
図2において、かくはん羽根15は螺旋状とされているが、かくはん羽根の形としては、螺旋形状のほか、例えば、導管の内面形状に沿った円形板状が挙げられる。また、かくはん羽根は、導管の中を通る混合物の流れに対して水平でなければよい。かくはん羽根は、混合物の流れに対して、垂直にまたは傾斜を持って配置されるのが好ましい。また、かくはん羽根は、一定の間隔を設けて配置されているのが好ましい態様の1つとして挙げられる。かくはん羽根は、その一部に切り欠きおよび/またはパンチング穴を有することができる。かくはん羽根の数は特に制限されず、数が多いほど混合効果が高く、反応時間が短縮できるので好ましい。
【0053】
かくはん体の振動回数は、混合性、反応性の観点から、1秒間当たりの振動回数(往復回数)が10〜10,000回であるのが好ましく、10〜1000回であるのがより好ましく、10〜100回であるのがさらに好ましい。
かくはん体の振幅は、振動式かくはん機(導管とかくはん体)の大きさによるが、混合性、反応性の観点から、0.1〜50mmであるのが好ましく、0.5〜10mmであるのがより好ましい。
本発明の多官能化合物の製造方法に使用される振動式かくはん機としては、例えば、冷化工業社製のVIBROミキサーが挙げられる。
【0054】
反応温度、反応時間、圧力は、使用するポリイソシアネート化合物、求核性化合物に応じて選択することができる。
【0055】
多官能化合物について、以下に説明する。
本発明の多官能化合物の製造方法によって得られる多官能化合物は、求核性官能基を2個以上有する化合物である。
【0056】
多官能化合物に含まれる求核性官能基は、原料である求核性化合物に由来するものであり、求核性官能基は上記と同義である。
また、多官能化合物は、イソシアネート基と求核性官能基とが反応して新たに生成した結合基を有する。生成した結合基は、イソシアネート基と求核性官能基とが反応して生成するものであれば特に制限されない。イソシアネート基とアミノ基とが反応して生成する−NH−CO−NH−、イソシアネート基とイミノ基とが反応して生成する−NH−CO−N<、イソシアネート基とメルカプト基とが反応して生成する−S−CO−NH−、イソシアネート基とヒドロキシ基とが反応して生成する−NH−CO−O−が挙げられる。
【0057】
ジイソシアネート化合物と求核性官能基を2個有する求核性化合物とを1:2(モル比)で反応させる場合、求核性官能基を2個有する多官能化合物が得られる。このような反応は、下記式(I)で表される。
【0058】
B−Rb−B + A−Ra−A + B−Rb−B →
B−Rb−C−Ra−C−Rb−B (I)
【0059】
式中、Ra、Rbは、それぞれ独立に2価の炭化水素基を、Aはイソシアネート基を、Bは求核性官能基を、Cはイソシアネート基と求核性官能基とが反応して新たに生成した結合基を表す。2価の炭化水素基、イソシアネート基、求核性官能基および結合基については、上述と同様である。
【0060】
このような反応としては、例えば、求核性化合物としてのジアミンと、ポリイソシアネート化合物としてのウレタンプレポリマーとを2:1(モル比)で反応させて、アミノ基を2個有する多官能化合物を得る反応が挙げられる。具体的には、下記式(1)で表されるジアミンと、下記式(2)で表されるウレタンプレポリマーとを2:1(モル比)で反応させることによって下記式(3)で表されるアミノ基を2個有する多官能化合物が得られる反応が挙げられる。
【0061】
【化1】

【0062】
式(2)、式(3)中、Rbは、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基以外の2価の炭化水素基であり、2価の炭化水素基は、上述のものと同様である。
【0063】
多官能化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリオールとのウレタンプレポリマーと式(1)で表される化合物との反応物、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリオールとのウレタンプレポリマーと式(3)で表される化合物との反応物が挙げられる。
【0064】
多官能化合物は、その用途について特に制限されない。例えば、シーラント、接着剤、塗料、プライマー、反応性モノマー、コーティング材等が挙げられる。
【0065】
従来、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とを反応させる場合には、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパー付きミキサーのようなかくはん機が用いられていた。
しかしながら、このようなかくはん機を用いてポリイソシアネート化合物と求核性化合物とをバルクで反応させる場合、原料の拡散速度が反応速度に比べて遅く、このため原料が拡散しないうちに、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基がほとんど求核性官能基と反応するためゲル化が起こってしまった。
これに対して、本発明の多官能化合物の製造方法においては、振動式かくはん機を用いることによって、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物とは、効果的にかくはんされてすばやく均一に混合されるため、原料の拡散が律速段階とはなりにくい。このため、ポリイソシアネート化合物と求核性化合物との反応は、イソシアネート基と求核性官能基とが反応系内で均一に衝突しうるようになるため、反応が系内において局部的に進み、高分子量化やゲル化するということが少なく、求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得ることができる。また、多官能化合物は、その分子量分布のピークが、従来のかくはん機を使用する場合に比べて低分子量側にシフトし、非常にシャープなものとなりうる。
【0066】
さらに、上述の式(1)で表されるジアミンのように、求核性化合物がイソシアネート基に対して反応性の異なる求核性官能基(式(1)で表されるジアミンの場合、式(1)で表されるジアミンはアミノ基とイミノ基とを有し、イソシアネート基に対する反応性はアミノ基のほうがイミノ基より高い。)を有する場合、イソシアネート基に対するアミノ基とイミノ基との反応性の差はわずかであるため、反応系内ではアミノ基もイミノ基もそれぞれがイソシアネート基と反応してしまい、その結果、生成物が高分子量化したりゲル化してしまった。
このように、従来、求核性化合物がイソシアネート基に対して反応性の異なる求核性官能基を有する場合、バルクで求核性官能基をイソシアネート基と選択的に反応させることはできなかった。
これに対して、本願発明者は、本発明の製造方法によれば、イソシアネート基に対して同種の求核性官能基を有する求核性化合物を高分子量化やゲル化を発生させることなく反応させるだけでなく、さらに、反応系内にイソシアネート基に対する求核性の異なる2種以上の求核性官能基が存在し、これらの求核性官能基のイソシアネート基に対する反応性の差が小さい場合であっても、反応性の差を活かしてより反応性の高い求核性官能基を選択的にイソシアネート基と反応させることが可能であることを見出したのである。
【0067】
本発明の多官能化合物の製造方法によれば、溶剤や大過剰の原料を除去する必要がなく、非常に経済的である。
また、本発明の多官能化合物の製造方法に使用される振動式かくはん機を製造ラインに組み込むことによって、多官能化合物をインラインで製造し、製造ラインに供給することができる。
なお、上述のようなメカニズムはあくまでも本発明者の推定であり、仮にメカニズムが別であっても本発明の範囲内である。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
1.ウレタンプレポリマーの調製
数平均分子量6000のポリオキシプロピレントリオール100質量部(プレミノール7001、旭硝子社製)を減圧下、110℃、8時間脱水した。その後、これにヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュールH、住化バイエルウレタン社製)8.41質量部(ポリオールとポリイソシアネートとのNCO/OHがモル比で2/1となる)を混合し、80℃、8時間反応させて、ウレタンウレポリマー(NCO基含有率1.93質量%)を調製した。得られたウレタンプレポリマーの粘度(20℃におけるE型粘度計測定値)は9000mPa・sであった。
【0070】
2.多官能化合物の製造1
(1)実施例1
上記のように調製されたウレタンプレポリマー100質量部(第1表中これを主剤と記載する。)に対して、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン10質量部[第1表中これを添加剤と記載する。商品名:KBM602、信越化学工業社製、粘度(20℃におけるE型粘度計測定値):40mPa・s、以下同様。イソシアネート基/アミノ基(モル比)=1/2]となるように主剤供給ポンプおよび添加剤供給ポンプを調整し、振動式かくはん機(冷化工業社製、VIBROミキサー VIBROLABO 35。以下同様。)の導管内にそれぞれ連続的に供給した。主剤および添加剤の供給タンク内の温度は40℃であった。
導管内では、かくはん体を振幅6mm、VM振動数60往復回/秒で振動させ、導管に供給された主剤と添加剤とを混合しながら反応させ、多官能化合物を製造した。原料が導管に供給されてから生成物が導管から排出されるまでの混合時間は、26秒であった。導管の生成物排出口の温度は53℃であった。導管の生成物排出口から得られた混合物にゲル化はなかった。また、得られた混合物を1H−NMR(日本電子社製。以下同様。)で分析した結果、目的とするシラン変性ウレタンが毎分110質量部の収量で得られたことが分かった。
【0071】
(2)比較例1
調製されたウレタンプレポリマー100質量部をバタフライミキサー(井上製作所社製)に投入し、バタフライミキサーのかくはん体を回転速度1000回/分で回転させながら、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1質量部を添加した。N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの添加直後から、バタフライミキサー内を目視でゲル化の有無について確認した。結果を第1表に示す。
【0072】
(3)比較例2
バタフライミキサーをプラネタリーミキサー(井上製作所社製)に代えたほかは比較例1と同様にして実験を行った。プラネタリーミキサーの回転速度は、1000回/分とした。結果を第1表に示す。
【0073】
(4)比較例3
バタフライミキサーをディスパー付きミキサー(井上製作所社製)に代えたほかは比較例1と同様にして実験を行った。ディスパー付きミキサーの回転速度は、1000回/分とした。結果を第1表に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
3.多官能化合物の製造2
(2)実施例2
上記のように調製されたウレタンプレポリマー(第2表中これを主剤と記載する。)を毎分73.4gで供給するのに対して、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(第2表中これを添加剤と記載する。)を毎分7.34gで供給するように主剤供給ポンプおよび添加剤供給ポンプを調整し、振動式かくはん機の導管内にそれぞれ連続的に供給した。主剤および添加剤の供給タンク内の温度(第2表中これを供給温度と記載する。)は40℃であった。
導管内では、かくはん体を振幅6mm、VM振動数60往復回/秒で振動させ、導管に供給された主剤と添加剤とを混合しながら反応させ、多官能化合物を製造した。原料が導管に供給されてから生成物が導管から排出されるまでの混合時間は、26秒であった。導管の生成物排出口の温度(第2表中これを出口温度と記載した。)は53℃であった。なお、第2表に、供給温度と出口温度との温度差を昇温温度として記載した。
生成物排出口から排出された混合物にはゲル化がなかった。また、得られた混合物を1H−NMRで分析した結果、目的とするシラン変性ウレタンが毎分80.75gの収量で得られたことが分かった。
【0076】
(2)実施例3〜9
実施例3〜9は、各条件を第2表に示すように代える以外は実施例2と同様にして行った。実施例3〜4は、導管に水で濡らしたタオルを巻いて導管を冷却した。実施例5〜9は、導管に氷入りのタオルを巻いて導管を冷却した。
第2表の導管の冷却において、導管に水で濡らしたタオルを巻いた場合を「1」とし、導管に氷入りのタオルを巻いた場合を「2」とした。
生成物排出口から排出された混合物のゲル化の有無を目視で確認した。結果を第2表に示す。
【0077】
(3)実施例10
ウレタンプレポリマーの供給量:146.8g/分に対して、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの供給量:14.7g/分となるように主剤供給ポンプおよび添加剤供給ポンプを調整し、振動式かくはん機の導管内にそれぞれ連続的に供給した。主剤および添加剤の供給タンク内の温度は27℃であった。導管に氷入りのタオルを巻いて導管を冷却した。導管内のかくはん体を振幅6mm、VM振動数60往復回/秒で振動させた。
振動式かくはん機および2基の供給ポンプの稼動中、振動式かくはん機および2基の供給ポンプの電源を同時にOFFにして、振動式かくはん機のかくはん体の振動と2基の供給ポンプからの原料の供給とを停止させた。停止から10分間後に、振動式かくはん機および2基の供給ポンプの電源を同時にONにして、かくはん体の振動と、ウレタンプレポリマーの供給と、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシランの供給とを再開させた。
この場合、原料が導管に供給されてから生成物が導管から排出されるまでの混合時間は、停止している10分間を除いて13秒であった。
実施例10の製造によって得られた生成物には、ゲル化や混合不良による異常は認められず、主剤と添加剤との混合比が狂うこともなかった。得られた混合物を分析した結果、1H−NMRで分析した結果、目的とするシラン変性ウレタンが毎分161.5gの収量で得られたことが分かった。
【0078】
【表2】

【0079】
第1表に示す結果から明らかなように、振動式かくはん機を使用する実施例1では、多官能化合物をゲル化させることなく反応を行うことができ、目的の化合物を製造することができた。これに対して比較例1〜3では、ミキサーのかくはん効率が低いため、反応混合物がゲル化してしまった。
第2表に示す結果から明らかなように、振動式かくはん機を使用する実施例2〜10では、ゲル化を起こすことなく、目的の化合物を製造することができた。
また、実施例10(振動式かくはん機および原料の供給ポンプを同時に停止後、再開させる実験)の結果から、本発明の多官能化合物の製造方法は、生産再開直後に得られた生成物にゲル化がなく、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の多官能化合物の製造方法に使用される振動式かくはん機および原料の供給装置の一例を示す模式的な概略図である。
【図2】図2は、導管9の内部を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 振動式かくはん機
3 枠体
5 モータ
7 振動源
9 導管
11 かくはん体
13 軸部
15 かくはん羽根
16 仕切り室
17 仕切り板
18 原料供給口
19 主剤供給配管
21 副剤供給配管
22 生成物排出口
23 生成物排出配管
25 主剤供給ポンプ
27 添加剤供給ポンプ
29 触媒供給ポンプ
X 主剤
Y 副剤
Yl 添加剤
Y2 触媒
Z 生成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート化合物と、
アミノ基、イミノ基、メルカプト基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の求核性官能基を2個以上有する求核性化合物とを、
振動式かくはん機を用いて均一に混合させながらバルクで反応させることによって、
前記求核性官能基を2個以上有する多官能化合物を得る多官能化合物の製造方法。
【請求項2】
前記振動式かくはん機が、前記ポリイソシアネート化合物と前記求核性化合物との混合物を通す導管と、かくはん体とを具備し、
前記かくはん体が、軸部とかくはん羽根とを有し前記軸部の周囲に前記かくはん羽根が配置され、振動源に接続されているものであり、前記導管内において前記軸部が、前記混合物が前記導管の内部を通る方向と平行となるように配置され、前記方向に沿って振動する請求項1に記載の多官能化合物の製造方法。
【請求項3】
前記導管が、その内部に仕切り板を具備し、
前記仕切り板は、前記軸部を貫通させる孔部を有し、前記導管の内部に固定されている請求項2に記載の多官能化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−88206(P2008−88206A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267266(P2006−267266)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】