説明

多層のカード

【課題】層剥離に対して改善された抵抗性を示す不透明なポリエステルフィルムを備えた多層のカードの提供。
【解決手段】(i)その基体の総重量に関して0.2から30重量%の少なくとも1つのエステル−エーテル共重合体を含有する不透明なポリエステルフィルム基体(1)と、(ii)その基体の少なくとも1つの表面上のインキ受容層(2)と、(iii)そのインキ受容層の表面および/またはその基体の表面上のカバー層(4)とを有する多層のカード。その基体内にエステル−エーテル共重合体が存在することが、使用中にカードが層剥離する傾向を減少する。特に身分証明カード、磁気カード、クレジットカード、プリペイドカード、およびスマートカードにおける使用に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身分証明、クレジット、または磁気カードのような多層のカード、および特に不透明なポリエステルフィルム基体を具えた多層のカードに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルフィルムは、テープおよびディスクのような磁気記録メディアを含む広い範囲の用途において、感光性乳化物、圧力感受性接着剤、および金属層に対する支持基体としての、装飾用ドレープ、電気的絶縁体、包装フィルムおよびカードとしての用途を有している。
【0003】
ポリエステルフィルムは身分証明または、クレジットカードのような磁気カード、および特にたとえばテレホンカードのような「プリペイドカード」、およびたとえば数多くの財務取引に関連する情報を記憶する能力を有する「スマート・カード」の製造において用いられてきた。そのようなカードは通常たとえばポリエステルだけの同一のものの多重のシート、またはたとえばポリエチレンテレフタレートおよびPETGのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、または紙の交互のシートなどの別個の材料で構成されている。カードは好ましくは少なくとも1つの不透明な層を含有する。我々は多層のカードにおける不透明なポリエステルフィルムの存在が、その後の層の剥離につながる使用中に多層カードが層剥離する傾向を与えることを発見している。
【0004】
エステル−エーテル共重合体(copolyesterether)類はポリエステルフィルム中でその耐屈曲亀裂性を改善するために用いられてきた。EP−A−0437942号公報は、包装の用途における使用に好適なエステル−エーテル共重合体を含有する透明ポリエステルフィルムについて記載している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0437942号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第838708号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0497483号明細書
【特許文献4】米国特許第5407893号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々は層剥離に対して改善された抵抗性を示す不透明なポリエステルフィルムを備えた多層のカードを今回発明した。
【0007】
したがって、本発明は、(i)基体の総重量に関して0.2重量%から30重量%までの範囲の少なくとも1つのエステル−エーテル共重合体を含む不透明ポリエステルフィルム基体と、(ii)前記基体の少なくとも1つの表面上にインキ受容層と、(iii)前記インキ受容層の表面上および/または前記基体の表面上にカバー層とを具えた多層のカードを提供する。
【0008】
本発明はまた、多層のカードを生産する方法を提供し、それは、不透明剤および基体の総重量に関して0.2重量%から30重量%までの範囲において少なくとも1つのエステル−エーテル共重合体を含む溶融した線状ポリエステルの層を押出すことにより不透明な基体を形成する工程と、前記押出物を急冷する工程と、前記急冷された押出物を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、前記基体の少なくとも1つの表面上にインキ受容層を形成する工程と、絵のおよび/または書かれた情報を前記インキ受容層の表面上に付着する工程と、前記情報を収容しているインキ受容層の表面および/または前記基体の表面上にカバー層を形成する工程とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】不透明なポリエステルフィルム基体、インキ受容層およびカバー層を有する多層のカードの、一定の比率ではない、概略の断面の立面図である。
【図2】インキ受容層の表面上でカバー層の直下に追加の情報収容層を有する、図1に示した多層のカードの同様の概略の立面図である。
【図3】基体の第2の表面上に、追加のインキ受容層およびカバー層を有する、図2に示した多層のカードの同様の概略の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
そのポリエステルフィルム基体は自立のフィルムであり、その自立のフィルムとは支持するベースなしに独立して存在できる自立の構造を意味する。
【0011】
基体の層の形成における使用に好適なポリエステルは好ましくは合成の線状ポリエステルであり、および1つ以上のジカルボン酸またはそれらの低級アルキル(6炭素原子まで)のジエステル(たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−、または2,7−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、または1,2−ビス−p−カルボキシフェノキシエタン)を、(必要に応じてピバル酸のようなモノカルボン酸と)1つ以上のグリコール類、特に脂肪族または脂環式グリコール(たとえばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、および1,4−シクロヘキサンジメタノール)と縮合することによって得ることが可能である。ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートのフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは特に好ましく、たとえば英国特許公開第GB-A-838708号公報に記載されているように、典型的には70から125℃において、2つの相互に直交する方向に連続的に延伸することにより2軸延伸され、および好ましくは、典型的には150から250℃において、ヒートセットされたフィルムのようなものがとりわけ好ましい(特許文献2参照)。
【0012】
ポリエステル基体は非延伸であっても、または好ましくは延伸(たとえば一軸延伸)されても、またはより好ましくはフィルムの面内で2つの相互に垂直な方向に引っ張ることにより2軸延伸されて、機械的および物理的特性の満足すべき組み合わせを達成してもよい。同時の2軸延伸は熱可塑性ポリマーのチューブを押出し、それが引き続いて急冷され、再加熱され、そして次に内部のガスの圧力により膨張されて横の延伸を誘起し、および縦方向の延伸を誘起する速度において延伸されることによりもたらされる。連続的に延伸することはテンター工程において、熱可塑性材料を平面状の押出物として押出し、それを引き続いて最初に1つの方向にそして次にもう一つの相互に垂直な方向に延伸することによってもたらされる。一般的に最初に縦方向、すなわちフィルム延伸機を通って前進する方向に、そして次に横方向に延伸することが好ましい。延伸された基体フィルムは、そのガラス転移温度より上の温度において寸法的な拘束下でヒートセットすることにより寸法的に安定化されてもよく、および好ましくは安定化される。
【0013】
本発明のエステル−エーテル共重合体は好ましくは硬いセグメントとしてポリエステルブロックを主として含み、および軟らかいセグメントとしてポリエーテルブロックを含むブロック共重合体である。
【0014】
硬いポリエステルブロックは、1つ以上のジカルボン酸またはエステル誘導体またはそれらのエステルを形成する誘導体を、1つ以上のグリコールを縮合することにより好適に形成される。そのジカルボン酸またはその誘導体は脂肪族、脂環式、または芳香族でもよい。適当な脂肪族または脂環式ジカルボン酸は1,3−または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、炭酸、シュウ酸、およびアゼライン酸を含む。芳香族ジカルボン酸が好ましく、およびテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ビ安息香酸、およびナフタレンジカルボン酸、およびそれらのジメチル誘導体を含む。グリコール成分もまた、脂肪族、脂環式、または芳香族でもよい。グリコールは好ましくは脂肪族または脂環式である。適当なグリコールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを含む。
【0015】
ポリエステルブロックは好ましくは少なくとも1つのアルキレンテレフタレート、たとえば、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートおよび/またはへキシレンテレフタレートを含む。ブチレンテレフタレートが特に好ましい。ポリエステルブロックの分子量は好ましくは15,000未満であり、より好ましくは440から10,000までの範囲に、特に660から3000、およびとりわけ880から1500である。
【0016】
軟らかいポリエーテルブロックは、エチレングリコール、1,2−または1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、および1,4−シクロヘキサンジメタノールのような1つ以上のグリコールから好適に形成される重合体のグリコールである。ポリエーテルブロックは好ましくはポリ(アルキレンオキシド)グリコールであり、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、およびエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのランダムまたはブロック共重合体である。ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールがポリエーテルブロックの好ましい成分である。ポリエーテル(好ましくはポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール)ブロックの分子量は、好ましくは350から10,000までの範囲、より好ましくは600から5000、特に900から2000、およびとりわけ1200から1800である。本発明の特に好ましい実施の形態において、エステル−エーテル共重合体は、軟らかいポリエーテルブロックとして、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールおよびポリ(プロピレンオキシド)グリコールの混合物を、好適には1から20:1の比で、好ましくは5から15:1で、より好ましくは8から12:1で含む。ポリ(プロピレンオキシド)グリコールの分子量は好ましくは1000から5000までの範囲内であり、より好ましくは2000から3000である。
【0017】
エステル−エーテル共重合体における硬い:軟らかいブロックの比は、好ましくは10から95まで:5から90までの範囲内で、より好ましくは25から55:45から75で、および特に35から45:55から65である。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態において、ポリエステルフィルム基体の形成より前におよび/または基体層の組成物中での混合より前に、エステル−エーテル共重合体は乾燥される。エステル−エーテル共重合体は分離して、あるいは基体層の成分の1つ以上と混合した後に乾燥されてもよく、たとえば、不透明剤と、好ましくは無機充填剤と、より好ましくは二酸化チタンと混合した後に乾燥される。エステル−エーテル共重合体を慣用の手段(たとえば流動床内でまたはオーブン内で)を用いて、高温で、減圧下で、またはたとえば窒素などの不活性ガスを通過させることにより、乾燥してもよい。フィルムを形成する基体層組成物の押出成形およびそれに続くフィルム形成より前のエステル−エーテル共重合体の水含有率は、好適には0から800ppmまでの範囲内で、好ましくは25から600ppmで、より好ましくは50から400ppmで、特に100から300ppmで、およびとりわけ150から250ppmである。
【0019】
ポリエステル基体中に存在するエステル−エーテル共重合体の量は、基体層の総重量に関して、好ましくは1から20重量%までの範囲内で、より好ましくは3から15重量%で、特に5から12重量%で、およびとりわけ6から10重量%である。ポリエステル基体中に存在するポリエーテルの量は、基体層の総重量に関して、好ましくは0.5から15重量%の範囲内で、より好ましくは1から5重量%で、および特に2から4重量%である。
【0020】
本発明に利用されるエステル−エーテル共重合体は好ましくは200MPa以下の、およびより好ましくは50から100MPaまでの範囲の曲げ弾性率(ASTM D790にしたがって23℃で測定した)を有する。加えて、好ましいエステル−エーテル共重合体は60以下の、特に35から45までの範囲内のショアー硬度(DIN53505にしたがって、Dスケール上で23℃において測定した)を有する。
【0021】
エステル−エーテル共重合体は、当業者によく知られている慣用の重合技術により調製することができる。
【0022】
ポリエステル基体は不透明であり(それは光に対して実質的に不透過性であることを意味する)、および好ましくは0.6から1.75までの範囲内の、より好ましくは0.8から1.6の、特に1.0から1.5の、およびとりわけ1.1から1.4の透過光学濃度(TOD)(Macbeth濃度計、タイプTD902、透過モード)を示す。前述のTODの範囲は300μmの厚さの基体に対して特に適切である。
【0023】
ポリエステル基体は好ましくは白色であり、および好適には85より大きな、より好ましくは90から105までの範囲の、特に90から100の、およびとりわけ94から98単位の(ここで記載されるように測定された)白色度指数(whiteness index)を示す。
【0024】
ポリエステル基体は好ましくは3以下の、より好ましくは−10から0までの範囲内の、特に−8から−3の、およびとりわけ−7から−5の(ここで記載されるように測定された)黄色度指数(yellowness index)を示す。
【0025】
ポリエステル基体は、有効な量の不透明剤を合成ポリマーに組み込むことにより、都合よく不透明にされる。適当な不透明剤は不相溶の樹脂充填剤、微粒子の無機充填剤、または2種以上のそのような充填剤の混合物である。
【0026】
「不相溶の樹脂」とは、層の押出および製造中に遭遇する最も高い温度において、溶融しないかまたはポリエステルと実質的に混合しないかのいずれかの樹脂を意味する。不相溶の樹脂の存在は通常穴のあるフィルムを与える。穴のあるフィルムとは、少なくとも分離し閉鎖された気泡の部分を含有する気泡質の構造を有するフィルムを意味する。ポリエステルフィルムへの組み込みに対して、適当な不相溶の樹脂はポリアミドおよびオレフィンポリマーを、特にその分子内に6炭素原子までを含有するモノ−α−オレフィンの単独重合体または共重合体を含む。ポリエチレンテレフタレートフィルムへの組み込みに対しては、適当な材料は低密度または高密度のオレフィン単独重合体(特にポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ(4−メチル−1−ペンテン))、オレフィン共重合体(特にエチレン−プロピレン共重合体)、あるいはそれらの2種以上の混合物を含む。ランダム、ブロック、またはグラフト共重合体を利用してもよい。
【0027】
ポリエステル基体中に存在する不相溶の樹脂の量は、基体層の総重量に関して、好ましくは2から30重量%までの範囲内で、より好ましくは3から20重量%で、とりわけ4から15重量%で、および特に5から10重量%である。
【0028】
不透明のポリエステル基体を生成することに適当な微粒子無機充填剤は、慣用の無機顔料および充填剤を含み、および特に(アルミナ、シリカ、チタニアのような)金属または半金属の酸化物、および(カルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩のような)アルカリ土類金属塩を含む。微粒子無機充填剤は空隙を作る(voiding)あるいは空隙を作らない(non-voiding)種類のものであってもよい。適当な微粒子無機充填剤は均質であり、および二酸化チタンまたは硫酸バリウムのような単一の充填剤材料すなわち化合物で本質的に構成されていてもよい。あるいはまた、少なくとも充填剤の一部が異種成分から成り、主要充填剤材料が追加の修飾する成分と関連させられていてもよい。たとえば、主要充填剤粒子を、(顔料、石鹸、界面活性剤、カップリング剤または他の改質剤のような)表面改質剤で処理して充填剤が基体のポリエステルと適合する程度を増進または変更してもよい。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態において、ポリエステル基体は0から15体積%までの範囲の、より好ましくは0.01から10体積%の、特に0.05から5体積%の、およびとりわけ0.1から1体積%の範囲の空隙を作ることの程度を有する。このように、ポリエステル基体は好ましくは実質的に空隙がない。空隙を作ることの程度は、たとえば、走査電子顕微鏡法を用いてフィルムの断面図を描き、そして画像解析により空隙を測定することによって決定することができる。ポリエステル基体の密度は、好ましくは1.2から1.5までの範囲内で、より好ましくは1.3から1.45で、特に1.35から1.4である。
【0030】
本発明の特に好ましい実施の形態において、微粒子の無機充填剤は二酸化チタンを含む。実質的に空隙を作らない二酸化チタンが好ましい。
【0031】
各個のまたは主要な無機充填剤(好ましくは二酸化チタン)粒子は、好適には0.05から0.4μmまでの範囲の、好ましくは0.1から0.2μmの、およびより好ましくは約0.15μmの、電子顕微鏡法により決定されるような平均結晶サイズを有する。本発明の好ましい実施の形態においては、主要な無機充填剤(好ましくは二酸化チタン)粒子は凝集して複数の無機充填剤粒子を含むクラスターまたは凝集塊を形成する。主要な無機充填剤の凝集プロセスは、充填剤の実際の合成中に、および/またはポリエステルおよびフィルムを作成するプロセス中に起きてもよい。
【0032】
凝集した無機充填剤粒子は、好ましくは0.3から1.5μmまでの範囲の、より好ましくは0.4から1.2μmの、および特に0.5から0.9μmの体積で分類された(volume distributed)中央粒子直径(体積%を粒子の直径に関連させた累積分布曲線上で読み取られる、全粒子の体積の50%に相当する等価な球の直径−しばしば「D(v,0.5)」と呼ばれる)を有する。
【0033】
無機充填剤粒子のサイズの分布もまた重要なパラメータであり、たとえば極度に大きな粒子の存在は見苦しい「スペックル(speckle)」(すなわち、充填剤の凝集塊の存在を肉眼で認めることができる場所)を示すフィルムを与える可能性がある。基体に組み込まれた無機充填剤のいずれもが30μmを超える実際の粒子サイズを有してはならないことが好ましい。そのようなサイズを超える粒子を、当該技術において知られているふるい分けのプロセスによって除去してもよい。しかし、ふるい分けの操作は、選択されたサイズより大きな全ての粒子を除去することにいつも完全に成功するとは限らない。したがって、実際には数で99.9%の無機充填剤粒子のサイズが30μmを超えてはならず、好ましくは20μmを超えてはならず、およびより好ましくは10μmを超えてはならない。好ましくは少なくとも90%の、より好ましくは少なくとも95%の無機充填剤粒子が、体積で分類される中央粒子直径±0.5μmの、特に±0.3μmの範囲内にある。
【0034】
ポリエステル基体に組み込まれる無機充填剤の量は、基体層の総重量に関して、望ましくは5から25重量%までの範囲内で、より好ましくは10から25重量%で、特に12から20重量%で、およびとりわけ14から16重量%でなければならない。
【0035】
好ましい二酸化チタンの粒子は、アナターゼまたはルチル結晶形のものであってもよい。二酸化チタンの粒子は、好ましくは過半数の部分のアナターゼを、より好ましくは少なくとも60重量%の、特に少なくとも80重量%の、およびとりわけ約100重量%のアナターゼを含む。その粒子は、塩化物プロセスあるいは好ましくは硫酸塩プロセスを用いるような標準の手順によって、調製することができる。
【0036】
本発明の1つの実施の形態において、二酸化チタン粒子は好ましくはアルミニウム、ケイ素、亜鉛、マグネシウム、またはそれらの混合物のような無機酸化物によって被覆される。好ましくは、その被覆剤は脂肪酸および好ましくは(適当には8から30までの、好ましくは12から24までの炭素原子を有する)アルカノールのような有機化合物を含む。ポリジメチルシロキサンまたはポリメチル水素シロキサンのような、ポリジオルガノシロキサンまたはポリ有機水素シロキサンが適当な有機化合物である。
【0037】
被覆剤は水性の懸濁液中で二酸化チタンの粒子に付着される。無機酸化物は、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、ケイ酸またはケイ酸ナトリウムのような水溶性の化合物から、水性懸濁液中で析出される。
【0038】
ここに記載されている充填剤粒子の粒子サイズは、電子顕微鏡、コールター・カウンター、沈降分析および静的または動的光散乱によって測定されてもよい。レーザー光の回折をベースとする技術が好ましい。中央粒子サイズは、選択された粒子サイズより下の粒子の体積の割合を表す累積分布曲線をプロットして、そして50番目の百分位数を測定することによって決定されてもよい。充填剤粒子の体積で分類された中央粒子直径は、その充填剤をエチレングリコール中に強い剪断の混合機(たとえばChemcoll)において分散した後に、マルバーン・インストルメント(Malvern Instruments)のMastersizer MS 15粒子寸法測定機を用いて適当に測定される。
【0039】
本発明の1つの実施の形態において、ポリエステル基体は蛍光増白剤を含んでもよい。蛍光増白剤は、基体ポリエステルの重量に関して、好ましくは50から1,500重量ppmの範囲内の、より好ましくは200から1000重量ppmの、特に400から600重量ppmの量で添加される。適当な蛍光増白剤は、「Uvitex」MES、「Uvitex」OB、「Leucopur」EGM、および「Eastobrite」OB−1の商品名のもとに商業的に入手可能な蛍光増白剤を含む。
【0040】
本発明の好ましい実施の形態において、ポリエステル基体は、基体ポリエステルの重量に関して、好ましくは100から3000重量ppmまでの、より好ましくは200から2000重量ppmの、および特に300から1000重量ppmの範囲の量で、青色の染料を含む。
【0041】
蛍光増白剤および/または青色染料はポリエステルまたはポリエステルフィルムの製造のいずれの段階において含まれてもよい。好ましくは蛍光増白剤および/または青色染料はグリコールに、あるいはまた、ポリエステルフィルムの形成より前のポリエステルに対するその後の添加により、たとえば押出中の注入により添加される。
【0042】
ポリエステル基体の厚さは、好ましくは25から400μmまでの範囲内で、より好ましくは100から350μmで、特に250から320μmで、およびとりわけ280から310μmである。
【0043】
基体層の組成物の成分は慣用の方法により混合されてもよい。たとえば、それからポリエステルが誘導されるモノマー反応剤を混合することにより、あるいは、成分は混転すなわち乾燥混合することにより、または押出機内で混合することによりポリエステルと混合されて、冷却および通常細粒またはチップへの粉砕が続いて起きてもよい。エステル−エーテル共重合体は別個に押出機に供給されて、そこから線状のポリエステルが押出成形されて基体層を形成してもよい。
【0044】
インキ受容層は好ましくは、ポリエステル基体に対するインキ、染料および/またはラッカー等の接着を改善するように機能するポリマー被覆層である。インキ受容層は好ましくは少なくとも1つのインキ受容ポリマーを含む。インキ受容層は、通常の写真のような絵の情報および/またはタイプされた原稿、サイン等の書かれた情報を適宜収容することができる。インキ受容層は、オフセット、グラビア、シルクスクリーンおよびフレキソ印刷のような伝統的な印刷プロセスを用いて、または手で書くことによって、または熱転写印刷(TTP)によって、またはレーザー転写印刷(LTP)によって、その上に印刷されてもよい。インキ受容層の化学的組成は広い範囲にわたって変化してもよく、および適当な材料はポリエステル、ポリウレタン、アクリルおよびスチレンを含有するポリマーを含む。
【0045】
本発明の1つの実施の形態において、インキ受容層は、好適にはポリエステル樹脂を、特に1つ以上の2塩基芳香族カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、およびヘキサヒドロテレフタル酸のようなもの)および1つ以上のグリコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびネオペンチルグリコールのようなもの)から誘導されるエステル共重合体(copolyester)樹脂を含む。満足すべき特性を提供する典型的なエステル共重合体は、エチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートの共重合体であり、特に50から90モル%までのエチレンテレフタレートおよび相補的に50から10モル%までのエチレンイソフタレートのモル比における共重合体である。好ましいエステル共重合体は、65から85モル%までのエチレンテレフタレートおよび35から15モル%までのエチレンイソフタレートを、および特に約82モル%のエチレンテレフタレートおよび約18モル%のエチレンイソフタレートのエステル共重合体を含む。
【0046】
ポリエステルインキ受容層は、有機または水性の溶媒からすでに延伸されたポリエステル基体に対して、あるいはより好ましくは延伸操作の前または延伸操作中に付着されてもよい。あるいはまたポリエステルのインキ受容層は、あらかじめ成形された基体層上にインキ受容性ポリエステルをキャストすることによって形成されてもよい。しかし、都合の良いことには、複合材のシート(ポリエステル基体およびインキ受容層)の形成は共押出によって実行される。それは、多オリフィスのダイの独立のオリフィスを通したそれぞれのフィルム形成層の同時の共押出、そしてその後に依然として溶融している層を一体にすることにより、または、好ましくは、単一チャネルの共押出のいずれかにより実行される。その単一チャネルの共押出においては、それぞれのポリエステルの溶融流が最初にダイマニホールドに至るチャネル内で一体にされ、そしてその後に、混合されることの無い層流の条件下において、ダイオリフィスから共に押出されてそれによって複合材シートを生成する。
【0047】
共押出されたシートは延伸されて基体の分子配向が行われ、そして好ましくはヒートセットされる。一般に、基体層を延伸することに対して適用される条件はインキ受容ポリエステルの部分的結晶化を誘起し、そして、したがって、インキ受容層の所望のモルホロジーを発展させるために選択された温度で、寸法的拘束下において、ヒートセットすることが好ましい。このように、インキ受容層の結晶融解温度より下の温度においてヒートセットすることを実行し、およびその複合材を冷却することを許すまたは冷却させることにより、インキ受容ポリエステルは本質的に結晶性のままになる。しかし、インキ受容ポリエステルの結晶融解温度より高い温度においてヒートセットすることにより、後者は本質的に非晶質にされる。ポリエステル基体およびエステル共重合体のインキ受容層を含む複合材シートをヒートセットすることは、都合よく175から200℃までの範囲内の温度において実行されて実質的に結晶性のインキ受容層を与えるか、あるいは200から250℃までの範囲で実行されて本質的に非晶質のインキ受容層を与える。本質的に非晶質のインキ受容層が好ましい。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態において、ポリエステルのインキ受容層はヒートシール特性をも示し、すなわち、インキ受容層のポリエステル材料を加熱して軟化させることおよび圧力を適用することにより、基体層のポリエステル材料が軟化することまたは溶融することなしに、それ自身に対して、および/またはポリエステル基体に対して、および/またはここに記載されるカバー層に対するヒートシール結合を形成することができなければならない。ポリエステルインキ受容層は、好ましくは300から3000Nm−1までの範囲内の、より好ましくは1000から2500Nm−1の、および特に1800から2200Nm−1の、それ自身に対して層をシールすることにより測定される、ヒートシール強さを示す。
【0049】
ポリエステルのインキ受容層の厚さは、広い範囲にわたって変化してもよいが、一般的には50μmを超えず、および好ましくは0.5から25μmの範囲内で、およびより好ましくは3から15μmである。
【0050】
本発明の他の実施の形態においては、インキ受容層はアクリル樹脂を含む。そのアクリル樹脂とは、少なくとも1つのアクリルおよび/またはメタクリル成分を含む樹脂を意味する。
【0051】
インキ受容層のアクリル成分は、好適には熱硬化樹脂であり、および好ましくはアクリル酸のエステルおよび/またはメタクリル酸のエステルおよび/またはそれらの誘導体から誘導された少なくとも1つのモノマーを含む。本発明の好ましい実施の形態において、アクリル樹脂は、50モル%より多くの、好ましくは98モル%未満の、より好ましくは60から97モル%までの範囲の、特に70から96モル%の、およびとりわけ80から94モル%の、アクリル酸のエステルおよび/またはメタクリル酸のエステルおよび/またはそれらの誘導体から誘導された少なくとも1つのモノマーを含む。好ましいアクリル樹脂は、アクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルを含み、ここでアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、およびn−オクチルのように10炭素原子までを含有する。アルキルメタクリレートと合わせてアルキルアクリレート(たとえば、エチルアクリレートおよびブチルアクリレート)から誘導されたポリマーが好ましい。エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを含むポリマーが特に好ましい。アクリレートモノマーは好ましくは30から65モル%までの範囲の比率で存在し、およびメタクリレートモノマーは好ましくは20から60モル%までの範囲の比率で存在する。
【0052】
インキ受容層のアクリル樹脂の調製における使用に対して適当な他のモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ハロ置換アクリロニトリル、ハロ置換メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロイルアクリルアミド、N−エタノールアクリルアミド、N−プロパノールアクリルアミド、N−メタクリルアミド、N−エタノールメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−第3級ブチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、イタコン酸、イタコン酸無水物、およびイタコン酸のハーフエステルを含む。それらは好ましくは、必要に応じた追加のモノマーとしてアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル、および/またはそれらの誘導体と合わせて共重合されてもよい。
【0053】
アクリルのインキ受容層ポリマーの他の必要に応じたモノマーは、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、および安息香酸ビニルのようなビニルエステル、ビニルピリジン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、マレイン酸、マレイン酸無水物、スチレン、およびクロロスチレン、ヒドロキシスチレンおよびアルキル化されたスチレン(ここでアルキル基は1個から10個までの炭素原子を含有する)のようなスチレンの誘導体を含む。
【0054】
3つのモノマーから誘導された好ましいアクリル樹脂は、35から60モル%のエチルアクリレート/30から55モル%のメチルメタクリレート/2から20モル%のメタクリルアミドを含み、特にエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリルアミドまたはメタクリルアミドのそれぞれをおおよそ46%/46%/8%のモル比で含み、後者のポリマーは、たとえば約25重量%のメチル化されたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂の存在下などの、熱硬化性であるときに特に有効である。
【0055】
4つのモノマーから誘導される好ましいアクリル樹脂は、(a)35から40モル%のアルキルアクリレートと、(b)35から40モル%のアルキルメタクリレートと、(c)10から15モル%の遊離のカルボキシル基を含有するモノマーと、(d)15から20モル%のスルホン酸基および/またはその塩を含有するモノマーとをコモノマーとして含む共重合体を含む。エチルアクリレートが特に好ましいモノマー(a)であり、およびメチルメタクリレートが特に好ましいモノマー(b)である。遊離のカルボキシル基(すなわちそれによって共重合体が形成される重合反応に含まれるもの以外のカルボキシル基)を含有するモノマー(c)は、好適には共重合可能な不飽和カルボン酸を含み、そして好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸から選択され;アクリル酸およびイタコン酸が特に好ましい。スルホン酸基のモノマー(d)は遊離の酸および/またはその塩(たとえば、アンモニウム塩、置換アンモニウム塩、またはリチウム、ナトリウム、またはカリウムのようなアルカリ金属の塩)として存在してもよい。スルホネート基は、それによって共重合体樹脂が形成されるポリマー形成反応に関与しない。スルホン酸基モノマーは好ましくは芳香族であり、およびより好ましくはp−スチレンスルホン酸および/またはその塩である。
【0056】
アクリル樹脂の重量平均分子量は広い範囲にわたって変化することができるが、好ましくは10,000から10,000,000までの範囲内で、より好ましくは50,000から200,000である。
【0057】
インキ受容層のアクリル樹脂の成分は、インキ受容層の総重量に関して、好ましくは少なくとも30重量%を、より好ましくは40から99重量%までの範囲内を、特に50から85重量%を、およびとりわけ70から80重量%を構成する。アクリル樹脂は一般に水に不溶性である。それにもかかわらず、水溶性アクリル樹脂を含むインキ受容性被覆組成物を、ポリエステル基体に対して水性分散液として付着してもよい。
【0058】
もし望むならば、アクリルのインク受容層の被覆組成物は、その層を架橋して、それによってポリエステルフィルム基体との接着を改善するように機能する架橋剤もまた含有してもよい。加えて、溶媒の浸透からの保護を提供するために、架橋剤は好ましくは内部の架橋が可能である必要がある。適当な架橋剤は、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、ヘキサメトキシメチルメラミンのようなアミン誘導体、および/または、たとえばメラミン、ジアジン、ウレア、環状エチレンウレア、環状プロピレンウレア、チオウレア、環状エチレンチオウレア、アルキルメラミン、アリールメラミン、ベンゾグアナミン、グアナミン、アルキルグアナミン、およびアリールグアナミンなどのアミンのアルデヒド(たとえばホルムアルデヒド)との縮合生成物を含んでもよい。有用な縮合生成物はメラミンとホルムアルデヒドとの縮合生成物である。縮合生成物は必要に応じてアルコキシル化されてもよい。架橋剤は、インキ受容層の総重量に関して、好適には70重量%までの量で、好ましくは1から60重量%までの範囲内で、より好ましくは15から50重量%で、および特に20から30重量%で用いられてもよい。触媒もまた好ましくは架橋剤の架橋の実行を容易にするために用いられる。メラミンホルムアルデヒドを架橋するための好ましい触媒は、パラトルエンスルホン酸、塩基との反応によって安定されたマレイン酸、モルホリニウムパラトルエンスルホナート、および硝酸アンモニウムを含む。
【0059】
アクリルのインキ受容層被覆組成物は、延伸フィルムの製造における延伸操作の前、間、または後に付着されてもよい。被覆組成物は好ましくは、熱可塑性ポリエステルの2軸延伸操作の2つの段階(縦のおよび横の)の間にフィルム基体に付着される。延伸することおよび被覆することのそのような順序は、インキ受容層を被覆された線状ポリエステルフィルム(特にポリエチレンテレフタレートフィルム)基体の製造に適当であり、それは好ましくは最初に一連の回転ローラー上で縦方向に延伸され、被覆され、そして次にテンターオーブン内で横方向に延伸され、好ましくはヒートセットが引き続いて起きる。
【0060】
水性媒質または溶媒塗布される組成物の場合においては溶媒を乾燥するために、およびまた連続的でおよび均一な層へと被膜を癒着しおよび形成することを補助するために、アクリルのインキ受容層に被覆されたポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)基体は好適には240℃まで、好ましくは220℃まで加熱される。架橋可能な組成物の架橋もまたそのような温度において達成される。
【0061】
アクリルのインキ受容層の被覆組成物は、好ましくは浸積被覆、ビード・コーティング(bead coating)、リバースローラー塗布、またはスロット・コーティング(slot coating)のような、いかなる適当な慣用の技術によってもポリエステルフィルム基体に付着される。
【0062】
アクリルのインキ受容層は、好ましくは0.05から5mgdm−2までの範囲の、特に0.1から2.0mgdm−2の乾燥被覆重量においてポリエステルフィルム基体に付着される。乾燥したアクリルのインキ受容層の厚さは、好ましくは1.5μm未満、より好ましくは0.01から1.0μmまでの範囲で、および特に0.02から0.5μmである。
【0063】
特に好ましい実施の形態において、不透明なポリエステル基体は、ここに記載されたようにその第1の表面上にポリエステルのインキ受容層を、およびここに記載されたようにその第2の表面上にアクリルのインキ受容層を有する。
【0064】
多層のカードのカバー層の成分の化学組成は、本発明にしたがって広い範囲にわたって変化してもよく、そしてポリエチレンテレフタレートおよびPETGのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、および/または紙を含む材料から好適に選択される。カバー層は好ましくは自立のフィルムである。実際、カバー層は多層のカードの合計の厚さに対して主要な寄与をするものであってさえよい。カバー層の機能は、カード全体に対してそれが提供する支持に加えて、例えばインキ受容層およびその上に含有される情報に対する保護(保証を含む)を提供することである。カバー層は2つ以上の層を有してもよく、好ましくは多層のポリマーフィルムであり、そして例えば、ここに記載されるようなインキ受容層を有する不透明なポリエステル基体であってもよい。多層のカードは、それらそれぞれのポリエステルのインキ受容層をヒートシールすることを用いて、2つ以上の不透明ポリエステルフィルムを積層することにより形成されてもよい。あるいはまた、追加の接着層を用いて、非ヒートシール性のインキ受容層を積層してもよい。本発明の好ましい実施の形態において、インキ受容層上に含有される情報を目に見えるようにするために、カバー層は透明である。好ましいカードは、1つの不透明ポリエステル基体、1つのインキ受容層、およびヒートシール可能なすなわちインキ受容層を有する少なくとも1つの透明なポリエステルのカバー層を含有し、それによってそれぞれのインキ受容層を合わせてヒートシールすることによりカードが形成される。特に好ましいカードは、EP−A−0497483号公報に記載されたような一般的構造を有する、全てポリエステルフィルムの構造であり、その開示は参照によって本明細書の一部をなすものとする。EP−A−0497483号公報の不透明ポリエステル支持フィルムおよび染料受容性または印刷可能受容体フィルムは、それぞれ本発明による多層のカードのポリエステル基体およびインキ受容層と同等である(特許文献3参照)。
【0065】
本発明による多層のカードは、米国特許第5,407,893号に記載される多層構造の任意のものを含み、その開示は参照により本明細書の一部をなすものとする(特許文献4参照)。米国特許第5,407,893号の2軸延伸されたポリエステルフィルムおよび画像受容層(図6から13におけるナンバー3および1)は、それぞれ本発明による多層のカードのポリエステル基体およびインキ受容層と同等である(特許文献4参照)。
【0066】
本発明による多層のカードは、身分証明カード、クレジットカードおよびプリペイドカードのような磁気カード、その表面にまたはカード(いわゆる非接触のスマートカード)内部に(例えばエポキシ材料中に)封入された電子チップを有してもよいスマートカードを含む当該技術に知られているカード構造の任意のものを形成するのに用いられてもよい。
【0067】
多層のカードは、好ましくは150から1000μmまでの範囲の、より好ましくは200から900μmの、特に250から850μmの、およびとりわけ650から840μmの厚さを有する。
【0068】
多層のカードは、好ましくは70から100mmまでの範囲内の、より好ましくは80から90mmの、特に約86mmの長さを有し、および好ましくは40から70mmの範囲内の、より好ましくは50から60mmの、および特に約54.5mmの幅を有する。
【0069】
本発明による多層のカードは、好ましくは積層プロセスにより形成される。その積層プロセスは、それら自身2つ以上の層を含有してもよい2つ以上の自立フィルム構造を合わせて、熱または接着剤を含む適当な手段により結合し、カードを形成することを意味する。その少なくとも1つの表面上にインキ受容層を有する不透明なポリエステル基体が好ましい第1の自立フィルム構造であり、およびカバー層が好ましい第2の自立フィルム構造である。
【0070】
製造する目的のために、基体、インキ受容層およびカバー層を含むカードが全ての縁に沿って完全に重なり合うことが一般的に望ましい。しかし、これは常にそうではなく、そして例えば、インキ受容層は基体の一部のみを被覆してもよく、およびカバー層がインキ受容層が無い領域において、一般的に追加の接着層を用いて基体と結合してもよい。
【0071】
本発明による多層のカードの層(複数)は、もし望むならば、ポリマーフィルムの製造において慣用的に用いられる添加剤の任意のものを含有してもよい。したがって、染料、顔料、空隙形成剤(voiding agent)、潤滑剤、酸化防止剤、粘着防止剤、界面活性剤、スリップ助剤、光沢改善剤、プロデグラダント(prodegradant)、紫外光安定剤、粘度調整剤および分散安定剤のような作用剤を適宜組み込んでもよい。
【0072】
本発明は以下の図面を参照して説明され、ここで:
図1は、不透明なポリエステルフィルム基体、インキ受容層およびカバー層を有する多層のカードの、一定の比率ではない、概略の断面の立面図である。
図2は、インキ受容層の表面上でカバー層の直下に追加の情報収容層を有する、図1に示した多層のカードの同様の概略の立面図である。
図3は、前記基体の第2の表面上に、追加のインキ受容層およびカバー層を有する、図2に示した多層のカードの同様の概略の立面図である。
【0073】
図面の図1を参照して、多層のカードは、その基体の第1の表面(3)に結合したインキ受容層(2)、およびその基体から離れたインキ受容層の表面(5)に結合した透明なカバー層(4)を有する不透明なポリエステルフィルム基体層(1)を含む。
【0074】
図2のフィルムは、インキ受容層(2)の表面(7)上に情報収容層(6)をさらに含む。
【0075】
図3のフィルムは、その基体層(1)の第2の表面(9)上に第2のインキ受容層(8)、および第2のインキ受容層(8)の基体(1)から離れた表面(11)上に第2のカバー層(10)をさらに含む。第2のカバー層(10)は、その両方の表面上にインキ受容(すなわちヒートシール可能)層(13および14)を有する不透明なポリエステル基体層を含む多層のフィルムである。
【0076】
本明細書において以下の試験方法を用いて、多層のカードの層(複数)および/またはそのカード自身のいくらかの特性を決定した。
【0077】
(i) 透過光学濃度(TOD)
フィルムのTODは、透過モードにおいてMacbeth濃度計TD902(Dent and Woods Ltd, Basingstoke, UK より入手した)を用いて測定された。
【0078】
(ii) 白色度指数および黄色度指数
フィルムの白色度指数および黄色度指数は、Colorgard System 2000, Model/45(Pacific Scientificにより製造された)を用いて、ASTM D313に記載されている原理に基づいて測定された。
【0079】
(iii) ヒートシール強さ
ヒートシールは、合わせて位置を決めること、および不透明なポリエステル基体層上に存在する2つのインキ受容層を、275kPa(40psi)の圧力下で10秒間にわたって140℃に加熱することによって形成された。シールされたフィルムは室温まで冷却されて、そして4.23mm/秒の一定の速度でフィルムの層を剥離するために直線の張力のもとで単位幅当りの必要な力を測定することにより、ヒートシール強さを決定した。
【0080】
(iv) 層剥離の感受性
層剥離の感受性を、以下のエッジ衝撃試験を用いて測定した。86mm×54.5mm×750(または640)μmの寸法の多層のカードを手の中で直立して保持し、そしてカードの角のエッジを用いて木製のテーブルに均一に10回打ち当てた。そのカードを次に層剥離に関して検査して、優秀(層剥離なし)、良好(層剥離の小さな兆候)または劣悪(完全な層剥離−カードの層が明確に分離し、および容易に剥離することができる)として採点した。
【0081】
本発明は以下の実施例を参照することによりさらに説明される。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
基体の総重量に関して15重量%の0.7μmの体積で分類された中央粒子直径を有するアナターゼの二酸化チタンと、基体の総重量に関して8重量%のLomod ST4090A(エステル−エーテル共重合体、General Electric Corporationにより供給される)と、460ppmの蛍光増白剤とを含むポリエチレンテレフタレートの基体層ポリマー、および82モル%のエチレンテレフタレートと18モル%のエチレンイソフタレートとを含む2つの外側のインキ受容層ポリマーの別個の流れを、別個の押出機から単一チャネルの共押出集成装置へと供給した。そのポリマー層はフィルム形成ダイを通して水冷され回転して急冷するドラム上へと押出されて、非晶質の流延された複合材押出物を与えた。その流延された押出物を約80℃の温度に加熱し、そして次に3.2:1の前方への延伸比において縦方向に延伸した。その複合材シートをテンターオーブン内へと通して、そこでシートは乾燥され、および横向きの方向にその最初の寸法の約3.4倍に延伸された。その2軸延伸された複合材シートを約225℃の温度においてヒートセットした。その複合材シートの最終的なフィルムの厚さは150μmであった。その不透明な基体層は125μmの厚さであり、2つの外側のインキ受容層は双方とも12.5μmの厚さであった。
【0083】
その複合材シートはここに記載された試験手順にかけられ、そして以下の特性を示した:
(i) 透過光学濃度(TOD)=1.2。
(ii) 白色度指数=96単位。
黄色度指数=−0.9単位。
(iii) ヒートシール強さ=2000Nm−1
【0084】
項目(i)および(ii)は、インキ受容層はそれらに対してほとんどまたは全く寄与しないような、本質的に不透明な基体層の特性である。項目(iii)はインキ受容層の特性である。
【0085】
上記で製造した5つの複合材シートを150℃の温度において90秒間にわたって圧縮積層して厚さ750μmの積層されたシートを形成した。寸法86mm×54.5mmの多層のカードをその積層されたシートから切り出して、ここに記載されたエッジ衝撃試験にかけ、そして以下の特性を示した:
(iv) 層剥離の感受性=優秀(すなわち、層剥離はない)。
【0086】
(実施例2)
これは本発明によらない対照の例である。
Lomod ST4090Aを基体層の組成物から省いたことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。厚さ750μmの積層されたシートから切り出された寸法86mm×54.5mmの多層のカードを、ここに記載されたエッジ衝撃試験にかけて、そして以下の特性を示した:
(iv) 層剥離の感受性=劣悪(すなわち、完全な層剥離−カードの層が明確に分離し、および容易に剥離することができる)。
【0087】
(実施例3)
Lomod ST4090Aの代りにLomod TE3040A(エステル−エーテル共重合体、General Electric Corporationから供給される)を用いたことを除いて、実施例1の手順を繰り返した。厚さ750μmの積層されたシートから切り出された寸法86mm×54.5mmの多層のカードを、ここに記載されたエッジ衝撃試験にかけて、そして以下の特性を示した:
(iv) 層剥離の感受性=良好(層剥離の小さな兆候)
【0088】
(実施例4)
前記基体が蛍光増白剤のかわりに青色染料を含み、単一のエステル共重合体のインキ受容層を有し、および一軸延伸されたポリエチレンテレフタレート基盤フィルムの表面を以下の成分を含むアクリルのインキ受容層組成物で被覆したことを除いて、実施例1の手順を繰り返した:
アクリル樹脂 163ml
(25重量%のメトキシル化されたメラミン−ホルムアルデヒドを有するメチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリルアミドが46モル%/46モル%/8モル%の46w/w%の水性ラテックス)
硝酸アンモニウム 6ml
(10w/w%の水溶液)
脱イオン水 2.5リットルまで。
【0089】
最終的なフィルムの厚さは320μmであった。不透明なポリエステル基体は295μmの厚さであり、エステル共重合体のインキ受容層は25μmの厚さであり、アクリルのインキ受容層の乾燥被覆重量は約0.4mgdm−2であった。
【0090】
そのフィルムは以下の特性を示した:
(ii) 白色度指数=96単位。
黄色度指数=−5.7単位。
【0091】
上記で製造した2つの複合材シートを150℃の温度において90秒間にわたって圧縮積層して厚さ640μmの積層されたシートを形成した。寸法86mm×54.5mmの多層のカードを厚さ640μmのその積層されたシートから切り出して、ここに記載されたエッジ衝撃試験にかけ、そして以下の特性を示した:
(iv) 層剥離の感受性=優秀(すなわち、層剥離はない)。
【符号の説明】
【0092】
1 不透明ポリエステルフィルム基体層
2、13、14 インキ受容層
3 基体層の第1の表面
4 カバー層
5、7 インキ受容層の表面
6 情報収容層
8 第2のインキ受容層
9 基体層の第2の表面
10 第2のカバー層
11 インキ受容層の基体層から離れた表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのエステル−エーテル共重合体をその基体の総重量に関して0.2から30重量%までの範囲において含み、1.2から1.5までの範囲内の密度を有する不透明なポリエステルフィルム基体と、
(ii)前記基体の少なくとも1つの表面上のインキ受容層と、
(iii)前記インキ受容層の表面上のおよび/または前記基体の表面上のカバー層と
を含み、前記基体は二酸化チタンから選択される微粒子無機充填剤をさらに含むことを特徴とする多層のカード。
【請求項2】
前記エステル−エーテル共重合体が少なくとも1つのアルキレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項1に記載の多層のカード。
【請求項3】
前記エステル−エーテル共重合体が少なくとも1つのポリ(アルキレンオキシド)グリコールを含むことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項4】
前記基体が、無機充填剤を前記基体の総重量に対して5から25重量%の範囲において含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項5】
前記インキ受容層がアクリル樹脂を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項6】
前記インキ受容層がポリエステル樹脂を含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項7】
前記基体が(i)その第1の表面上のアクリル樹脂を含むインキ受容層と、(ii)その第2の表面上にポリエステル樹脂を含むインキ受容層と、を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかの1つに記載の多層のカード。
【請求項8】
前記基体が少なくとも100μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項9】
前記基体が100μm〜350μmの厚さを有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項10】
前記インキ受容層が50μm未満の厚さを有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の多層のカード。
【請求項11】
多層のカードを製造する方法であって、
不透明剤とその基体の総重量に関して0.2から30重量%までの範囲内の少なくとも1つのエステル−エーテル共重合体を含む溶融した線状ポリエステルの層を押出すことにより不透明な基体を形成する工程であって、前記基体は1.2から1.5までの範囲内の密度を有し、前記基体は二酸化チタンから選択される微粒子無機充填剤をさらに含む工程と、
前記押出物を急冷する工程と、
前記急冷された押出物を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、
前記基体の少なくとも1つの表面上にインキ受容層を形成する工程と、
前記インキ受容層の表面上に絵のおよび/または書かれた情報を付着する工程と、
前記情報を収容しているインキ受容層の表面および/または前記基体の表面上にカバー層を形成する工程と
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記基体および前記インキ受容層(単数または複数)が共押出によって形成されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多層のカードが第1の自立フィルム構造体および第2の自立フィルム構造体を積層することにより形成され、前記第1の自立フィルム構造体が、少なくとも1つの表面上にインキ受容層を有する不透明ポリエステル基体であり、前記第2の自立フィルム構造体がカバー層であることを特徴とする、請求項11または請求項12のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−234275(P2009−234275A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168025(P2009−168025)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【分割の表示】特願平9−535934の分割
【原出願日】平成9年3月14日(1997.3.14)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】