説明

多層ブローボトル及びその製造方法

【課題】PEN、PET、又はPEN/PET混合物を外層とし、PPを内層とし、意匠性が高く、水蒸気バリヤ性及び耐衝撃性も高い多層ブローボトルを安価に提供する。
【解決手段】ダイレクトブロー成形法によって製造され、PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合された多層ボトルであって、前記内層材が、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂層である多層ブローボトルであって、外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設け、内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはPEN/PET混合物を主層とする多層ボトルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に、PEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合した原料を用いて、ダイレクトブロー成形による真珠光沢を有する意匠性の高い化粧品用小型ボトルを安価に提供する技術を提案した(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の技術は、マスカラ等の化粧品用の容器として優れたものであるが、化粧水に用いるには水蒸気バリヤ性という点で改良すべき点がある。また、化粧水はマスカラに比べて容量の大きいボトルが要望させることから、耐衝撃性についての改良も必要になる。
【0004】
そこで、出願人は、PEN/PET混合物を外層とし、内層をポリプロピレンとする多層ブローボトルについて検討を行うこととした。
【0005】
この種の技術に関しては、表面光沢、透明性等に優れるとともに、落下強度の改善されたポリプロピレン系多層ブローボトルを提供することを目的とするもので、特定の流動特性を有するポリプロピレン共重合体を主層とし、外層として非晶性乃至低結晶性のポリエチレンテレフタレート共重合体(PET−G)をダイレクトブロー成形機を用いて製造する技術を開示した特許文献がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−89319号公報
【特許文献2】特許第3899787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、出願人が特許文献1で提案した意匠性の高いボトルは、いずれも高融点であるPEN及びPETを用いる技術であるため、特許文献2の提案するPET−Gを用いる方法をそのまま適用しても、ボトルの内層と外層が良好に接合しないという問題がある。
【0008】
また、PET−Gを外層とし、PPを内層とする多層ボトルは、表面に傷が付きやすいため、意匠性を要求されるボトルには向かないという問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、PEN、PET、又はPEN/PET混合物を外層とし、PPを内層とする多層ボトルを、ダイレクトブロー成形によって製造するための新たな技術を開発し、意匠性が高く、かつ水蒸気バリヤ性及び耐衝撃性も高い多層ブローボトルを安価に提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願は、課題解決手段として、ダイレクトブロー成形法によって製造され、PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合された多層ボトルであって、前記内層材が、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトルを第1発明として提案するものである。
【0011】
また、ダイレクトブロー成形法によって製造され、PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合されている多層ブローボトルであって、前記内層材が、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトルを、同じく課題解決手段としての第2発明として提案するものである。
【0012】
これら本発明の多層ブローボトルは、ダイレクトブロー成形によって製造したときに、内層材の剥がれがなく、ボトル底部付近をピンチオフラインの両端から押圧しても内層材までは容易に破壊されず、内容物を入れた状態で落下しても致命的な破損には至らない様な十分な圧壊強度、耐衝撃強度を備えたものとなる。そして、水蒸気バリヤ性も十分に発揮されることから、化粧水等の水溶性の内容物を収容するボトルにも適用することができ、かつ、外層に傷がつき難く、意匠性の高いボトルである。
【0013】
なお、第1発明の多層ブローボトルでは、前記内層材を、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において50%以上含有するポリプロピレン樹脂層で形成するとさらに強度が高まり、第2発明の多層ブローボトルでは、前記内層材が、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜2.5g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層で形成するとさらに強度が高まる。
【0014】
また、これら第1,第2発明の多層ブローボトルにおいて、前記外層材を、PENとPETとを40:60〜60:40の重量比で混合したPEN/PET混合物によって形成され、前記外層材を主層とする第3の発明の多層ブローボトルを課題解決手段として提案する。この第3発明の多層ブローボトルによれば、水蒸気バリヤ性に優れ、圧壊強度・耐衝撃強度にも優れ、さらに、表面に傷が付き難く、真珠光沢を有する意匠性の高いボトルを提供することができる。
【0015】
また、課題解決手段として、PEN又はPETのペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする第4発明の多層ブローボトルの製造方法も提案する。
(A1)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(A2)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(A3)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【0016】
同じく、課題解決手段として、PEN又はPETのペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする第5発明の多層ブローボトルの製造方法も提案する。
(B1)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(B2)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(B3)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【0017】
これら、第4,第5発明によれば、第1,第2発明として上述した多層ブローボトルを的確に製造することができる。
【0018】
また、本願は、PEN/PET混合物のペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、
該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする第6発明の多層ブローボトルの製造方法も提案する。
(C1)前記PEN/PET混合物のペレットとして、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合し、乾燥状態としたものを用いること。
(C2)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(C3)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(C4)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【0019】
同じく、本願は、PEN/PET混合物のペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする第7発明の多層ブローボトルの製造方法も提案する。
(D1)前記PEN/PET混合物のペレットとして、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合し、乾燥状態としたものを用いること。
(D2)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(D3)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(D4)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【0020】
これら、第6,第7発明によれば、第3発明として上述した多層ブローボトルを的確に製造することができる。
【0021】
さらに、本願は、第6,第7発明の多層ブローボトルの製造方法において、さらに以下の条件を採用したことを特徴とする第8発明の多層ブローボトルの製造方法をも提案する。
(E)前記三層構造のチューブ状パリソンは、肉厚比において、外層:中間層:内層=6:2:2〜7:1:1とされていること。
【0022】
第8発明によれば、第4発明として上述した真珠光沢を有する多層ブローボトルを的確に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、PEN、PET、又はPEN/PET混合物を外層とし、PPを内層とし、意匠性が高く、かつ水蒸気バリヤ性及び耐衝撃性も高い多層ブローボトルを安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態の多層ブローボトル成形装置の構成と動作を説明する模式図である。
【図2】実施形態の多層ブローボトル成形装置における温度設定例を示す模式図である。
【図3】圧壊強度試験の方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0026】
まず、多層ブローボトルを製造するための装置について説明する。図1に示す様に、実施形態の多層ブロー成形装置1は、外層用スクリュー式押出成形機11、内層用スクリュー式押出成形機12、及び中間層用スクリュー式押出成形機13と、ブロー成形用金型30と、エアブロー装置40と、製品回収装置50とを備えている。
【0027】
成形に当たっては、押出成形機11,12,13の各ホッパ11a,12a,13aからペレットを投入し、各成形機内で加熱・溶融・混練した上で押し出し、ヘッドH、アダプタAD、ヘッドH1,H2、ダイD1,D2、リップL1,L2を介して、三層構造のチューブ状パリソン21,21を吐出する。次に、この三層構造のチューブ状パリソン21,21の下端部をピンチオフする様にブロー成形用金型30を型閉じし、電熱線カッタ31でパリソン21,21の上端を切断する。こうして成形用金型30内にパリソン21,21を取り込んだら、成形用金型30を、エアブロー装置40の真下へと移動し、ブローピン41,41を挿入してエアを吹き込む。これにより、多層ブローボトル2,2が成形される。
【0028】
次に、成形用金型30を開いて次のパリソンを取り込むために移動させると共に、製品回収装置50のホルダ51をエアブロー装置40の真下へと移動させて型閉じ、多層ブローボトル2,2をホルダ51内にホールドする。このとき、成形用金型30も型閉じ動作を実行する。そして、電熱線カッタ31によってパリソン21,21を切り離した後、成形用金型30及びホルダ51を図示右方向へと移動させる。このとき、シューター52がホルダ51の移動先の真下へと突出する。次に、エアブロー装置40においてブローピン41,41を突出させて成形用金型30内のパリソン21,21をダイレクトブローによって延伸させて次の製品2,2を成形する。そして、成形用金型30及びホルダ51を同時に開いて、前回の動作で成形された製品をシューター52へと落下させ、製品2,2を受けた後にシューター52を回収位置へと退避させる。
【0029】
なお、ホルダ51が回収の際に型閉じしたとき、エアブロー装置40から再度エアブローを実行してリークの有無をチェックするリークテストも実行されている。
【0030】
本実施形態の多層ブロー成形装置1によれば、以上の動作を繰り返し実行することにより、連続的に多層ブローボトル2,2を製造することができる。
【0031】
本実施形態においては、外層用スクリュー式押出成形機11のシリンダ内は3つのチャンバC1〜C3に分けて温度制御可能に構成されている。また、内層及び中間層用スクリュー式押出成形機12,13のシリンダ内は2つのチャンバC1,C2に分けて温度制御可能に構成されている。さらに、ヘッドH、アダプタAD、ヘッドH1,H2、ダイだ1,D2、及びリップL1,L2においても温度制御が行われる構成となっている。
【0032】
本実施形態では、図2に示す様に、外層用スクリュー式押出成形機11においては、成形機内の温度が徐々に低下する様に温度勾配を設ける様に設定し、内層用スクリュー式押出成形機12及び中間層用スクリュー式押出成形機13においては、成形機内の温度が徐々に上昇する様に温度勾配を設ける様に設定した条件で温度制御している。最終的にはリップL1,L2にてパリソン21,21の温度をサチュレートさせている。
【0033】
次に、実施形態で説明した構造、動作、制御を行う多層ブロー成形装置1を用いて、多層ブローボトル2を成形する具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0034】
[原料]
外層材として、それぞれほぼ同じ大きさのPENのペレットとPETのペレットとを、重量比において、PEN:PET=40:60〜60:40の範囲内でよく混合し、十分に乾燥させたPEN/PET混合物ペレットを準備した。なお、PENとしては、帝人化成(株)製の商品名「TN8065S」を、PENとしては、南亜プラスチック(台湾)製の商品名「P115」を使用した。
【0035】
内層材として、それぞれほぼ同じ大きさの一般グレードポリプロピレン(以下、「一般PP」という。)のペレットと、高溶融張力ポリプロピレン(以下、「高溶融張力PP」という。)のペレットとを、重量比において、一般PP:高溶融張力PP=60:40〜0:100の範囲内でよく混合した。なお、一般PPとしては、日本ポリプロ(株)製の商品名「EG7FT」を、高溶融張力PPとしては、日本ポリプロ(株)製の商品名「SH9000」を使用した。
【0036】
接着剤としては、オレフィン系特殊グレード接着剤(三菱化学(株)製の商品名「F534A」を使用した。
【0037】
[温度制御条件]
外層、内層及び中間層の樹脂に対して、三層構造とされるまでの間に、各押出成形機11,12,13及びアダプタADとヘッドHにおいて表1の条件で温度を制御した。
【0038】
【表1】

【0039】
また、三層構造となった後の樹脂に対する温度制御は、ヘッドH1,H2、ダイD1,D2、及びリップL1,L2において、表2の条件が設定されている。
【0040】
【表2】

【0041】
[三層パリソンの肉厚比]
また、三層構造のチューブ状パリソン21,21は、外層:中間層:内層=6:2:2〜7:1:1の肉厚比となる様に調整した。
【0042】
以上の条件で、容量10mlの多層ブローボトルを成形したところ、各層の接合状況が良好で、後述する圧壊強度試験の結果も良好で、真珠光沢を有する多層ブローボトルを成形することができた。
【実施例2】
【0043】
リップ温度を230℃〜260℃の範囲内で変更した条件による成形を行った。リップ温度以外の条件は実施例1と同様である。実施例2によって成形された多層ブローボトルも、各層の接合状況、圧壊強度共に良好で、真珠光沢を有し、特に問題は生じなかった。
【実施例3】
【0044】
ダイ温度を235℃〜270℃の範囲内で変更した条件による成形を行った。ダイ温度以外の条件は実施例1と同様である。実施例3によって成形された多層ブローボトルも、各層の接合状況、圧壊強度共に良好で、真珠光沢を有し、特に問題は生じなかった。
【実施例4】
【0045】
ヘッド温度を235℃〜295℃の範囲内で変更した条件による成形を行った。ヘッド温度以外の条件は実施例1と同様である。実施例4によって成形された多層ブローボトルも、各層の接合状況、圧壊強度共に良好で、真珠光沢を有し、特に問題は生じなかった。
【実施例5】
【0046】
外層材をPET100%とし、その他の条件は実施例1と同様にして多層ブローボトルを成形した。実施例5によって成形された多層ブローボトルも、各層の接合状況、圧壊強度共に良好であった。なお、外観は、真珠光沢は呈さないものの、PPボトルにはない光沢を呈するものであった。
【実施例6】
【0047】
外層材をPEN100%とし、その他の条件は実施例1と同様にして多層ブローボトルを成形した。実施例6によって成形された多層ブローボトルも、各層の接合状況、圧壊強度共に良好であった。なお、外観は、真珠光沢は呈さないものの、PPボトルにはない光沢を呈するものであった。
【比較例1】
【0048】
内層材を一般PP:高溶融張力PP=100:0〜70:30とし、その他の条件を実施例1と同様にしたところ、圧壊強度の不足が観測された。
【0049】
[圧壊強度試験]
圧壊強度は、図3に示す様に、多層ブローボトルのボトル底部付近をペンチで挟み、ピンチオフラインの両端から押圧する方法によって破損状況を観察する方法で調べた。
【0050】
試験対象並びに、その結果を、層間の接合状況の観察結果と共に表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
一般PP:高溶融張力PP=100:0については、層間の接合状況がNGであったため、圧壊強度試験は行わなかった。
【0053】
圧壊強度▲は、少し力を入れただけで内外層共にピンチオフラインで破損し、空気漏れを生じる状態となったもので、製品としては提供困難なものを意味する。
【0054】
圧壊強度○は、成人男性が力一杯にペンチを握りしめないと内外層共にピンチオフラインが破損する状況には至らなかったものである。
【0055】
圧壊強度◎は、成人男性が力一杯にペンチを握りしめても、内層には破損が生じなかったものである。
【0056】
以上の試験結果より、一般PP:高溶融張力PP=0:100〜60:40、即ち、高溶融張力PPを重量比40%以上含有させたPPを内層材として用いる場合には、製品として出荷可能な多層ブローボトルを成形し得るという結論が導かれる。特に、一般PP:高溶融張力PP=0:100〜50:50、即ち、高溶融張力PPを重量比50%以上含有させたPPを内層材として用いる場合には、圧壊強度、層間剥離に関して、何ら問題のない多層ブローボトルを成形し得ることが分かった。
【0057】
[メルトフローレート(MFR)の計測]
内層材に関して、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートを計測した結果を、圧壊強度と並べて表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
メルトフローレートの計測結果より、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂を内層材として用いる場合には、製品として出荷可能な多層ブローボトルを成形し得るという結論が導かれる。特に、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜2.5g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂を内装材として用いる場合には、圧壊強度、層間剥離に関して、何ら問題のない多層ブローボトルを成形し得ることが分かった。
【0060】
なお、外層材についても、温度280℃、圧力2.16kgfにおけるメルトフローレートを計測した結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
PENとPETの混合比は、外層材のメルトフローレートに影響しないことが分かる。
【0063】
[落下試験]
実施例1と同様の方法で製造した容量200mlの多層ブローボトルに水を入れ、キャップをした状態で正立(キャップが上)、横向き、倒立(キャップが下)の3種類の姿勢で、床面から70cmの高さからPタイル上に落下させる方法により落下強度を計測した。その結果、いずれの姿勢においてもボトルが割れることはなく、水の漏れは生じなかった。なお、横向き姿勢でボトル表面に傷が観測される例が一部にあったが、正立、倒立では傷・凹み共に観測されなかった。よって、実施例の多層ブローボトルは落下強度を十分に満足することが分かった。
【0064】
[真珠光沢]
外層材を、PEN/PET混合物としたときの真珠光沢の発現状況について観測したところ、PEN:PET=40:60、50:50、60:40の各割合のものは、単層ボトルについて特願2008−259917(特許文献1)で報告した結果と同様に、良好な真珠光沢が観察された。
【0065】
[考察]
実施例、比較例の検討結果より、以下の通りに考察する。
【0066】
PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合された多層ボトルであって、この内層材が、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトルは、内層材の剥がれがなく、圧壊強度、落下強度共に十分であって、水蒸気バリヤ性を有することから、化粧水等の水溶性の内容物を収容するボトルにも適用することができ、かつ、外層に傷がつき難く、意匠性の高いボトルとなる。
【0067】
このボトルは、観点を変えれば、PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合されている多層ブローボトルであって、この内層材が、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトルである。
【0068】
また、内層材を、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において50%以上含有するポリプロピレン樹脂層で形成すること(観点を変えるなら、内層材を、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜2.5g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層で形成すること)により、さらに強度が高まる。
【0069】
さらに、外層材を、PEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合したPEN/PET混合物によって形成され、この外層材を主層とすることによって、真珠光沢を有する意匠性の高いボトルを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
化粧品ボトル等に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1・・・多層ブロー成形装置
11・・・外層用スクリュー式押出成形機
12・・・内層用スクリュー式押出成形機
13・・・中間層用スクリュー式押出成形機
21・・・パリソン
30・・・ブロー成形用金型
31・・・電熱線カッタ
40・・・エアブロー装置
41・・・ブローピン
50・・・製品回収装置
51・・・ホルダ
52・・・シューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクトブロー成形法によって製造され、ポリエチレンナフタレート樹脂(以下、「PEN」という。)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET」という。)、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合された多層ボトルであって、前記内層材が、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトル。
【請求項2】
請求項1記載の多層ブローボトルにおいて、前記内層材が、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において50%以上含有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトル。
【請求項3】
ダイレクトブロー成形法によって製造され、PEN、PET、及びPEN/PET混合物のいずれかを外層材とし、ポリプロピレン樹脂を内層材とし、外層材と内層材が接着剤層を介して接合されている多層ブローボトルであって、前記内層材が、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ブローボトル。
【請求項4】
請求項3記載の多層ブローボトルにおいて、前記内層材が、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜2.5g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする多層ボトル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の多層ブローボトルにおいて、前記外層材が、PENとPETとを40:60〜60:40の重量比で混合したPEN/PET混合物によって形成され、前記外層材を主層とすることを特徴とする多層ブローボトル。
【請求項6】
PEN又はPETのペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、
該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする多層ブローボトルの製造方法。
(A1)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(A2)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(A3)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【請求項7】
PEN又はPETのペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、
該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする多層ブローボトルの製造方法。
(B1)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(B2)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(B3)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【請求項8】
PEN/PET混合物のペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、
該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする多層ブローボトルの製造方法。
(C1)前記PEN/PET混合物のペレットとして、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合し、乾燥状態としたものを用いること。
(C2)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、高溶融張力ポリプロピレンを重量比において40%以上含有するポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(C3)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(C4)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【請求項9】
PEN/PET混合物のペレットを外層用スクリュー式押出成形機に投入し、ポリプロピレン樹脂のペレットを内層用スクリュー式押出成形機に投入し、接着剤として用いる樹脂のペレットを中間層用スクリュー式押出成形機に投入し、各押出成形機内でペレットを加熱・溶融・混練した上で、三層構造のチューブ状パリソンを吐出し、
該三層構造のチューブ状パリソンの下端をピンチオフする様にブロー成形用金型を型閉じしてパリソンを切断し、ブローピンを挿入してエアを吹き込むことにより、ダイレクトブロー成形によって多層ブローボトルを製造する方法であって、以下の条件を採用したことを特徴とする多層ブローボトルの製造方法。
(D1)前記PEN/PET混合物のペレットとして、それぞれほぼ同じ大きさのペレットをPEN:PET=40:60〜60:40の重量比で混合し、乾燥状態としたものを用いること。
(D2)前記ポリプロピレン樹脂のペレットとして、温度250℃、圧力5kgfにおけるメルトフローレートが0.5〜3.0g/分となる様に調整されたポリプロピレン樹脂のペレットを用いること。
(D3)前記外層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって低下する様に温度勾配を設けること。
(D4)前記内層用スクリュー式押出成形機及び中間層用スクリュー式押出成形機においては、成形機内の温度が吐出口に向かって上昇する様に温度勾配を設けること。
【請求項10】
請求項8又は9記載の多層ブローボトルの製造方法において、さらに以下の条件を採用したことを特徴とする多層ブローボトルの製造方法。
(E)前記三層構造のチューブ状パリソンは、肉厚比において、外層:中間層:内層=6:2:2〜7:1:1とされていること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11586(P2012−11586A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147917(P2010−147917)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(591029149)本多プラス株式会社 (18)
【Fターム(参考)】