説明

多層抄き合わせ紙

【課題】 本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品に適用可能な偽造防止技術が施された多層抄き合わせ紙に関するものである。
【解決手段】 下部紙層、光学的変化素子が付与された不織布及び上部紙層が順次積層されて成る多層抄き合わせ紙において、前記光学的変化素子が付与された不織布は、前記不織布の片面及び/又は両面に少なくとも一つの前記光学的変化素子が貼付されて成り、前記光学的変化素子が付与された領域は、少なくとも一部が露出する露出部を有して成る多層抄き合わせ紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部紙層と上部紙層の間に不織布が抄き込まれて成る多層抄き合わせ紙であって、不織布に少なくとも一つの光学的変化素子が貼付され、光学的変化素子が設けられた領域は露出部を有する多層抄き合わせ紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品は、その価値を保証・維持するために、偽造防止技術が施されている。そのため、このような貴重品には、その基材の表面にホログラム等の光学的変化素子を貼付して真偽判別を行っている。ホログラム等の光学的変化素子は複写防止、複製防止の観点から特に有効な偽造防止エレメントの一つであるため、多くの貴重品に適用されてきている。
【0003】
例えば、基材の表面にホログラム転写箔層が付着形成されたことを特徴とする偽造防止ラベルが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、ホログラムを設けてある証券において、ホログラムと紙面との間に割印のごとく一葉毎に異なる絵柄を刻印したことを特徴とするホログラム付証券(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−182580号公報(第1頁、第1−4図)
【特許文献2】特開2000−355183号公報(第1−3頁、第1、2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インターネット等により誰でもホログラム等の光学的変化素子の原理を知ることができるようになってきており、一見しただけでは判別できないほどに再現性の良い光学的変化素子が偽造、複製されてきている。よって、特開昭61−182580号公報のように基材にホログラムを貼付しただけでは、容易に偽造、改ざんが可能となる。このようなことから、特開2000−355183号公報のようにホログラムと基材との間に絵柄を刻印し、ホログラムを剥して改ざんする行為を防止する技術が開示されているが、特開昭61−182580号公報と同様に基材の表面にホログラムが貼付されているため、再現性の良いホログラムが複製され、基材に貼付し、その上に印刷を付与することによって複製される可能性がある。このようなことから、更なる偽造防止効果の高いエレメントが要求されてきている。
【0007】
また、特開昭61−182580号公報及び特開2000−355183号公報は紙層中にスポット状にホログラムが付与されているものではなく、また、ホログラムと基材の境界が、用紙の表面にあるため、ホログラムが貼付された貴重品が流通時にホログラムが摩擦による影響を受け、ホログラムが剥がれやすくなる問題があった。また、ホログラムを基材の表面に貼付することによって、用紙を作製後に、オフラインでホログラムの貼付作業を行わざるを得ず、工程が多くなるうえ非効率であり、高コストであった。また、貼付後に、貴重品が複数枚重なった場合、ホログラム領域とその他の領域では厚みの違いが生じ、積み重ね状態では不安定となる問題があった。また、窓開きホログラムスレッドは紙中にスレッドが挿入され、窓状にスレッドが紙中から表出しているが、紙層中にスポット状に付与されるものではなく、帯状に付与されるものであり、デザインが限定されていた。また、スポット状には付与することが不可能であった。
【0008】
以上のことから、本発明は前述した問題点を解決することを目的としたもので、下部紙層と上部紙層の間に不織布が抄き込まれて成る多層抄き合わせ紙であって、不織布にホログラム等の光学的変化素子を付与することによって紙層中にスポット状に貼付できることを見いだした。光学的変化素子が付与された上部紙層の領域は、光学的変化素子の少なくとも一部が露出する露出部を設けることで、改ざん防止効果、複製防止効果に優れ、デザインの柔軟性に優れ、光学的変化素子が貼付された貴重品が流通時に光学的変化素子が摩擦による影響を受け難く、光学的変化素子が剥がれやすくなる問題がなく、また、用紙を作製後に、オフラインで光学的変化素子の貼付作業を行うことなく、効率的に作製可能であり、また、貼付後に、貴重品が複数枚重なった場合、光学的変化素子領域とその他の領域では厚みの違いが生じることなく、積み重ねた状態で不安定となることがない多層抄き合わせ紙及びその作製方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下部紙層、光学的変化素子が付与された不織布及び上部紙層が順次積層されて成る多層抄き合わせ紙において、前記光学的変化素子が付与された不織布は、前記不織布の片面及び/又は両面に少なくとも一つの前記光学的変化素子が貼付されて成り、前記光学的変化素子が付与された領域は、少なくとも一部が露出する露出部を有して成る多層抄き合わせ紙である。
【0010】
また、本発明は、前記光学的変化素子が回折格子を有して成る請求項1記載の多層抄き合わせ紙である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は少なくとも三つの層から成る多層抄き合わせ紙であって、多層抄き合わせ紙の下部紙層と上部紙層の間の不織布に少なくとも一つの光学的変化素子が付与され、光学的変化素子が付与された領域は、少なくとも一部が露出する露出部を設けることで、光学的変化素子が紙層中に付与され、光学的変化素子と基材の境界が、紙層中にあるため、光学的変化素子を剥して改ざんされることがなく、光学的変化素子を複製して、基材に貼付したとしても一見して、光学的変化素子が紙層中に存在しないことがわかり、さらに、手触り感や目視によっても複製物であることが判別できる。また、上層と下層の間の層に少なくとも一つの光学的変化素子を付与することによってデザインの柔軟性に優れる。
【0012】
また、光学的変化素子と基材の境界が、紙層中にあるため、光学的変化素子が貼付された貴重品が流通時に光学的変化素子が摩擦による影響を受け難く、耐摩耗性に優れ、光学的変化素子の剥離防止効果に優れ、また、用紙を作製中に、オンライン方式で光学的変化素子の貼付作業を行う場合、効率的に偽造防止効果の高い多層紙が作製可能となる。よって、作業工程の効率化が図ることが可能である。また、貼付後に、貴重品が複数枚重なった場合、光学的変化素子と基材の境界が、紙層中にあるため、光学的変化素子領域とその他の領域では厚みの違いが生じ難く、積み重ねた状態で不安定となる問題が解消できる。また、多層抄き合わせ紙の下部紙層と上部紙層の間の層に不織布を用いることによって、抄造工程の搾水、脱水等に影響を与えることがなくなる。さらに、下部紙層、不織布及び上部紙層は、互いに繊維が絡み合って結合されるため、層間剥離防止効果に優れる。
【0013】
また、多層抄き合わせ紙は、抄紙機で巻取された巻取紙を断裁して得られるが、抄造段階で、不織布位置修正装置及び位置ズレ検出装置によって、光学的変化素子とその露出部の位置のズレがほとんどなく所定位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0015】
(多層抄き合わせ紙)
図1に繊維から成る上部紙層(1)、中間層となる不織布(2)、繊維から成る下部紙層(3)から成る多層抄き合わせ紙(A1)とその断面図を示す。中間層(2)には、ホログラム等から成る光学的変化素子(4)がスポット状に設けられている。不織布(2)に設けられた光学的変化素子(4)の少なくとも一部が露出する露出部(5)が設けられている。つまり、光学的変化素子(4)が設けられた上部紙層(1)の領域は露出部(5)が形成されることになる。不織布(2)と光学的変化素子(4)の境界(6)のすべての領域が上部紙層(1)の繊維で覆われている。当然、多層抄き合わせ紙(A2)は一般的な印刷方式によって印刷領域(7)を付与することができる。また、ホログラム等から成る光学的変化素子(4)上にも印刷領域(7)を付与することができる。印刷方式は特に限定されるものではない。
【0016】
図1では不織布(2)と光学的変化素子(4)の境界(6)のすべての領域が上部紙層(1)の繊維で覆われているが、不織布(2)と光学的変化素子(4)の境界(6)の少なくとも一部は、上部紙層(1)の繊維で覆われていれば、本発明の効果を得ることができる。ただし、好ましくは、図1に示すように不織布(2)と光学的変化素子(4)の境界(6)のすべての領域が上部紙層(1)の繊維で覆われている必要がある。また、図1の多層抄き合わせ紙(A1)はスポット状に光学的変化素子(4)が一枚付与されているが、本発明は図2(a,b)に示す多層抄き合わせ紙(A2、A3)のようにスポット状に光学的変化素子(4)を複数枚付与しても良い。
【0017】
図1及び図2では不織布(2)の片面にホログラム等から成る光学的変化素子(4)が付与され、さらに、不織布(2)に設けられた光学的変化素子(4)の少なくとも一部が露出する露出部(5)が設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、不織布(2)の片面及び/又は両面に少なくとも一つの光学的変化素子(4)がスポット状に付与され、不織布(2)に設けられた光学的変化素子(4)の少なくとも一部が露出する露出部(5)を設けることができる。
【0018】
この境界部に有する上部紙層の繊維によって、光学的変化素子を剥して改ざんされることがなく、光学的変化素子を複製して、基材に貼付したとしても一見して、光学的変化素子が紙層中に存在しないことがわかり、さらに、手触り感や目視によっても複製物であることが判別できる。また、光学的変化素子と基材の境界が、紙層中にあるため、光学的変化素子が貼付された貴重品が流通時に光学的変化素子が摩擦による影響を受け難く、耐摩耗性に優れ、光学的変化素子の剥離防止効果に優れる。
【0019】
光学的変化素子(4)は転写箔、アルミ箔、又は、回折格子を有する箔、ホログラム等を用いることが可能であり、ホログラムは透過型ホログラム、反射型ホログラム等、特に限定されるものではない。また、光学的変化素子(4)の形状は、円形、楕円形、多角形、星形等の特殊形状等、特に限定されるものではない。よって、反射光、透過光及び磁気等の少なくとも一つのセンサで読取可能となる。
【0020】
上部紙層と下部紙層に使用するパルプは、特に限定されるものではないが、例えば、木材や木綿等の植物繊維を原料とするKP法やSP法によって得られる化学パルプ、GP、TMP、CTMP、CGP、SCP等の機械パルプ、漂白パルプ、古紙再生パルプ等のいずれかのパルプを適宜、選択して使用できる。
【0021】
光学的変化素子(4)が貼付される不織布(2)は、レーヨンであることが好ましい。不織布の厚みは、10μm〜200μm程度であり、5μm〜60μm程度が好ましい。不織布(2)の幅は特に限定されることなく、上部紙層(1)と下部紙層(3)の間に短冊状に設けても良い。短冊状に設ける場合は、複数本設けることも可能である。不織布を用いることによって抄紙の際に、下部紙層、不織布及び上部紙層は、互いに繊維が絡み合って結合されるため、層間剥離防止効果に優れる。
【0022】
また、本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙にその他の偽造防止技術を施すことが可能であり、有色繊維又は細片、無色蛍光繊維又は細片、有色蛍光繊維又は細片、磁性繊維又は細片、金属細片、アルミ細片、赤外吸収特性を有する繊維又は細片、赤外反射特性を有する繊維又は細片、及びサーモクロミック繊維又は細片等を少なくとも一種類を混抄することも可能であり、さらに、スレッド、すき入れ画像等を施すことができる。
【0023】
上記記載の多層抄き合わせ紙は、上部紙層(1)、不織布(2)及び下部紙層(3)の3層構造で説明したが、不織布(2)を挟む上部紙層(1)及び下部紙層(3)が含まれていれば、4層、5層等のさらに多層な構造でも良い。
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の光学的変化素子とその露出部の位置合わせの一例を示す。図3は、後述する本発明に係る多層抄き合わせ装置で最終的に巻取りドラムで巻き取られる帯状の多層抄き合わせ紙の長手方向で観察した場合及びそのX−X’に断面図を示す図である。この帯状の多層抄き合わせ紙(B1)では、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が下部紙層(3)と上部紙層(1)との間に抄き合わされて多層で一体に形成された構成を示している。光学的変化素子(4)はあらかじめ不織布(2)の長手方向に、複数枚、一定間隔で付与されているか、もしくは、後述する不織布供給装置から不織布を供給し、供給された不織布に光学的変化素子貼付器によって一定間隔で付与する。
【0025】
多層抄き合わせ紙(B1)は、露出部(5)が付与されており、この露出部(5)の位置(以下、「露出部位置」という。)(p)に対して(を基準として)、光学的変化素子の位置(q)(図面では光学的変化素子(4)の一つの角部の位置としたが、あらかじめ決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙(B1)の長手方向(抄紙の際にワイヤ上で用紙が移動する方向である。)に所定間隔(s)だけ離れた位置と定め、幅方向に所定間隔(t)だけ離れた位置と定め、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。この場合、多層抄き合わせ紙(B1)の長手方向に所定間隔(s)及び、幅方向に所定間隔(t)のいずれか一方又は両方によって、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。
【0026】
(変形例1)
図4に示すように多層抄き合わせ紙(B2)は、すき入れ(8)が付与されており、このすき入れ(8)の位置(以下、「すき入れ位置」という。)(r)に対して(を基準として)、光学的変化素子の位置(q)(図面では光学的変化素子(4)の一つの角部の位置としたが、あらかじめ決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙(B2)の長手方向に所定間隔(s)だけ離れた位置と定め、幅方向に所定間隔(t)だけ離れた位置と定め、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。この場合、多層抄き合わせ紙(B2)の長手方向に所定間隔(s)及び、幅方向に所定間隔(t)のいずれか一方又は両方によって、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。
【0027】
(変形例2)
図5に示すように多層抄き合わせ紙(B3)は、十字マークで示すように、白すき入れから成るレジスターマーク又はIJP(インクジェットプリンタ)によるマーク(9)が抄造方向に一定間隔において複数個所に付与されている。変形例2ではこのレジスターマーク又はIJPによるマーク(9)に着目して、光学的変化素子(4)がこのレジスターマーク又はIJPによるマーク(9)に対して(を基準として)、長手方向及び/又は幅方向に所定間隔離れた位置に定置する構成である。レジスターマーク又はIJPによるマーク(9)の位置(v)、(十字マークの交差中心点)に対して、光学的変化素子(4)の位置(q)を長手方向に所定間隔(s)、幅方向に所定間隔(t)だけ、離れた位置になるように、光学的変化素子(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。
【0028】
上記記載の多層抄き合わせ紙(B1、B2、B3)は光学的変化素子に露出部を設けているため、光学的変化素子を露出部位置、すき入れ位置、レジスターマーク又はIJPによるマークを基準として所定位置に定置している。光学的変化素子に露出部を設けない場合は、このような基準ではなく、巻取装置で巻き取られた多層抄き合わせ紙を切断する際に、切断された多層抄き合わせ紙の辺の位置から光学的変化素子の位置(q)までが所定間隔となるように切断する。これにより、巻取装置で巻き取られた多層抄き合わせ紙から製造される多層抄き合わせ紙の光学的変化素子の位置は所定位置に配置されたものが形成される。
【0029】
(製造装置)
次に本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の製造装置を図6で説明する。図6は、多層抄き合わせ紙の製造装置の全体構成を示す図である。図6において、この多層抄き合わせ装置(11)は、網帯から成り、循環するエンドレスな抄紙用のワイヤ12を有する。このワイヤ(12)は、従動用プーリ(13)と駆動用プーリ(14)と間に架け渡され、さらに、図示しないが、ワイヤ(12)に沿っての内側に配置された複数の支持や案内をするロールにより支持され、案内されて循環移動する。
【0030】
ワイヤ(12)の上流部(ワイヤの上面における移動始端部)(15)には、上流側から下流側に向けて、下層紙料供給槽(16)、不織布供給装置(17)、上層紙料供給槽(18)が、間隔をおいて順次、配設されている。
【0031】
下層紙料供給槽(16)及び上層紙料供給槽(18)内には、それぞれ下層紙料(19)及び上層紙料(20)が充填され、適宜、図示しない供給源から補給され、所定の液位を維持するように制御されている。下層紙料(19)及び上層紙料(20)は、下部紙層(3)及び上部紙層(1)の素材とから成る材料であり、主にパルプ繊維、水及び添加剤から成る。
【0032】
下層紙料供給槽(16)及び上層紙料供給槽(18)のそれぞれにおける下流部分には、下層紙料用目止め板(21)及び上層紙料用目止め板(22)が配置されている。下層紙料用目止め板(21)及び上層紙料用目止め板(22)のそれぞれとワイヤ(12)との間の隙間を通して、それぞれワイヤ(12)上に下層紙料及び上層紙料を供給し抄紙を可能とする。
【0033】
不織布供給装置(17)による不織布供給部位は、下層紙料供給槽(16)の下流側であって上層紙料供給槽(18)の上流側に設けられており、不織布(2)をワイヤ(12)上に形成される下層紙料層(湿紙)(23)上に向けて供給する。この不織布供給装置(17)は、不織布供給ドラム(24)、テンションロール(25)、及び不織布(2)に付与された光学的変化素子(4)の抄造方向への挿入位置を修正するための位置修正装置(26)における位置修正ロール(29)を備えている。
【0034】
不織布供給ドラム(24)には、帯状の不織布(2)が巻きつけられており、この不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する。帯状の不織布には、上述のとおり、その長手方向に一定の間隔をおいて光学的変化素子があらかじめ付与されている。ただし、不織布にあらかじめ光学的変化素子が付与されていない場合は、不織布供給ドラム(24)から不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する間に、不織布に光学的変化素子貼付器(38)によって長手方向に一定の間隔をおいて光学的変化素子が付与される。
【0035】
不織布供給装置(17)から供給される帯状の不織布(2)の横幅(w)は、下層紙料用目止め板(21)からワイヤ(12)の上面(搬送面)に供給されて形成される下層紙料層(下部湿紙)(23)の横幅とほぼ同じであり、さらに、上層紙料用目止め板(22)から下層紙料層(23)の上面に供給されて形成される上層紙料層(上部湿紙)(27)の横幅とももほぼ同じである。
【0036】
不織布位置修正装置(26)は、位置修正ロール(29)を制御するための位置制御器(28)を有する。位置修正ロール(29)は、多層抄き合わせ紙(B)の露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)の間隔が長手方向にあらかじめ設定された所定間隔(s)からズレた場合に、不織布及び光学的変化素子の位置のズレを修正するロールである。変更例1では、すき入れ位置(r)と光学的変化素子位置(q)の間隔が長手方向にあらかじめ設定された所定間隔(s)からズレた場合に、不織布及び光学的変化素子の位置のズレを修正し、変更例2では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)に対して、光学的変化素子位置(q)の間隔が長手方向にあらかじめ設定された所定間隔(s)からズレた場合に、不織布及び光学的変化素子の位置のズレを修正する。
【0037】
位置修正ロール(29)は、位置制御器(28)からの制御信号で速度制御可能なモータにより駆動され、不織布(2)の送り速度を積極的に増減できる送り制御の可能なロールの構成とする。
【0038】
不織布供給ドラム(24)は、その軸心の長手方向(図6において紙面に対して垂直の方向)、即ち不織布(2)の幅方向に、巻き付けてある不織布ごと移動して幅方向に位置を調整できるように、図示しない不織布供給ドラム幅方向位置調整装置で調整される構成となっている。これにより、後述するが、多層抄き合わせ紙において、光学的変化素子位置(q)が露出部位置(p)から多層抄き合わせ紙(B)の幅方向にあらかじめ設定された所定間隔(t)からズレた場合に、多層抄き合わせ紙(B)に対して不織布(2)を幅方向に移動してズレを修正することができる。変更例1では、すき入れ位置(r)と光学的変化素子位置(q)の幅方向にあらかじめ設定された所定間隔(t)からズレた場合に、不織布及び光学的変化素子の位置のズレを修正し、変更例2では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)に対して、光学的変化素子位置(q)の幅方向にあらかじめ設定された所定間隔(t)からズレた場合に、多層抄き合わせ紙(B)に対して不織布(2)を幅方向に移動してズレを修正することができる。
【0039】
ワイヤ(12)の下流部(ワイヤの上面の移動終端部)の下側には、搾水ボックス(30)が配置されている。この搾水ボックス(30)は、抄紙工程におけるワイヤ(12)の下流部において、下層紙料層(23)、不織布(2)及び上層紙料層(27)内に含まれている水を吸引して搾水するものである。
【0040】
ワイヤ(12)で形成された多層抄き合わせ紙(B)は、図示しないガイドロールで案内され最終製品として巻取ロールで巻き取られるが、ワイヤ(12)と巻取ロールの間には、上流側から、露出部形成器(34)、プレスロール(31)、乾燥装置(32)(図6中、想像線で示す。)及び位置ズレ検出装置(33)が配設されている。プレスロール(31)は変形例1の場合、若しくは多層抄き合わせ紙にすき入れを付与する場合に用いられる。
【0041】
露出部形成器(39)は、多層抄き合わせ紙の下層紙料層(23)及び/又は上層紙料層(27)のうち、光学的変化素子(4)が付与された領域に露出部を形成するための機器である。図6に上部紙層に付与する例を示す。露出部形成器(39)は液体吐出ノズル、エア吐出ノズル、プレスロール、ダンディーロール等から成る。抄造速度と合わせて一定間隔で噴出するように液体吐出ノズル、エア吐出ノズルが制御され、一定間隔で露出部が形成される。同様に、抄造速度と合わせて、プレスロール又はダンディーロールの回転速度が制御され、一定間隔で露出部が形成される。図7に一例を示す。図7(a)に示すように、凸部(41)が設けられたダンディーロール(40)によって、光学的変化素子の少なくとも一部が露出する露出部を施しているが、図7(b)に示すように、少なくとも一つ以上のエアノズル(42)により下層紙料層(23)及び/又は上層紙料層(27)に圧縮空気を噴射し、光学的変化素子の少なくとも一部が露出する露出部を施しても良い。エアノズル(42)の圧縮空気は、抄造速度に合わせて、位置、タイミング、空気圧等を制御することができ、空気圧は0.5〜4.0Kg/cm2程度で、噴射する方向は下層紙料層(23)及び/又は上層紙料層(27)に対して直角方向が好ましい。また、エアノズル(42)の変わりに液体噴出ノズルによって液体を噴出させ、露出部を形成することも可能である。圧力は0.5〜4.0Kg/cm2程度で、噴射する方向は下層紙料層(23)及び/又は上層紙料層(27)に対して直角方向が好ましい。
【0042】
プレスロール(31)は、多層抄き合わせ紙(B)を挟持してさらに下流の巻取ロール側に送る。すき入れ(8)は、周知のプレスロール(31)又はタンディロール(35)によって形成用される。乾燥装置(32)は、周知の乾燥装置を利用する。
【0043】
位置ズレ検出装置(33)は、位置検出器(34)と位置ズレ判別器(36)とを備えている。位置検出器(34)はCCDを有する光学的な検知手段であり、検出対象である多層抄き合わせ紙(B)を挟んで反対側に配置されたライトテーブル(37)からの透過光を利用して露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)を検出することによって両者の間隔を測定し、これを電気信号として位置ズレ判別器(36)に送るものである。変形例1では、すき入れ位置(p)と光学的変化素子位置(q)を検出し、変形例2では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)と光学的変化素子位置(q)を検出する。
【0044】
位置ズレ判別器(36)は、位置検出器(34)から送られてきた露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)との間隔とあらかじめ設定されている所定間隔(s)とのズレの大きさ及びそのズレの方向を判別し、位置ズレ情報として位置制御器(28)に送るものである。なお、露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)との幅方向の間隔を測定し、そのずれを検出する場合も縦方向(抄造方向)か横方向(横幅方向)かの違いはあるが、そのずれの検出については基本的には同様である。変形例1は、すき入れ位置(p)と光学的変化素子位置(q)との間隔とあらかじめ設定されている所定間隔(s)とのズレの大きさ及びそのズレの方向を判別し、位置ズレ情報のデータを位置制御器(28)に送る例である。変形例2は、レジスターマーク又はIJPによるマーク(8)の位置(v)と光学的変化素子位置(q)との間隔とあらかじめ設定されている所定間隔(s)とのズレの大きさ及びそのズレの方向を判別し、位置ズレ情報のデータを位置制御器(28)に送る例である。なお、変形例1及び2においても、露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)との幅方向の間隔を測定し、そのずれを検出する場合も縦方向(抄造方向)か、横方向(横幅方向)かの違いはあるが、そのずれの検出方法及び検出装置については基本的には同様である。
【0045】
変形例3では、巻取装置に巻き取られた多層抄き合わせ紙を切断するための切断装置(特に図示せず。)の近くに、ライトテーブルからの透過光を検出して光学的変化素子位置を検出する位置検出器を設ける。この位置検出器で検出した光学的変化素子位置情報の基づいて、切断されるべき多層抄き合わせ紙(B)の辺の位置から光学的変化素子をすき入れ位置までの間隔が所定の間隔となるように、切断装置を制御するものである。
【0046】
(製造方法)
多層抄き合わせ紙の製造方法について、以下、順次説明する。
(1)下層紙料供給槽(16)から下層紙料用目止め板(21)とワイヤ(12)の隙間を通して、下層紙料(19)を循環移動中のワイヤ(12)の上面に供給する。ワイヤ(12)上に供給された下層紙料(23)は、下層紙料層(23)として抄造方向に送られる。
【0047】
(2)この下層紙料層(23)の上面に、不織布供給装置(17)から光学的変化素子が付与された帯状の不織布2を連続的に供給する。ただし、不織布にあらかじめ光学的変化素子が付与されていない場合は、不織布供給ドラム(24)から不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する間に、不織布に光学的変化素子貼付器(38)によって長手方向に一定の間隔をおいて光学的変化素子が付与される。すると、帯状の不織布(2)と下層紙料層(23)とはワイヤ(12)上で抄造方向に送られながら重なり、下層紙料(19)は不織布(2)の繊維間に入り込み、下層紙料(19)のパルプ繊維と不織布(2)の繊維が絡み合い両者の強固な結合が生成されていく。
【0048】
(3)下層紙料(19)のパルプ繊維と重ねられた帯状の不織布(2)の更に上面に、上層紙料供給槽(18)から上層紙料用目止め板(22)とワイヤ(12)の隙間を通して上層紙料(20)を供給する。すると、上層紙料(20)は、ワイヤ(12)上で上層紙料層(27)として抄造方向に送られながら不織布(2)と重なり、上層紙料(20)は不織布(2)の繊維間に入り込む。これにより、上層紙料(20)のパルプ繊維は、不織布(2)の繊維と絡み合うとともに、不織布(2)内にすでに入りこんでいる下層紙料(19)のパルプ繊維とも絡み合い、強固な結合が生成されていく。
【0049】
(4)このように、ワイヤ(12)上に順次、下層紙料(19)、光学的変化素子が付与された不織布(2)及び上層紙料(20)を供給し、多層に重ね合わせて抄紙することにより、下層紙料(19)、不織布(2)及び上層紙料(20)の各繊維が互いに入り組んで絡み合い強固な結合層を形成し、この結合層内に、光学的変化素子(4)が挿入されて成る多層の多層抄き合わせ紙(B)の抄造が行われる。
【0050】
(5)多層にすき合わされた多層抄き合わせ紙(B)は、搾水ボックス(30)を通過し、多層抄き合わせ紙の光学的変化素子(4)が付与された、下層紙料層(23)及び/又は上層紙料層(27)の少なくとも一部が露出するように露出部形成器(39)によって露出部(5)が形成される。この露出部(5)は、光学的変化素子位置(q)から多層抄き合わせ紙(B)の長手方向(抄造方向)に、あらかじめ設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施されるようにする。すなわち、ワイヤの送り速度及び不織布内の光学的変化素子位置を考慮して、露出部形成器の回転速度等を制御して露出部(5)のタイミングを設定する。しかしながら、実際は、不織布挿入時において、光学的変化素子位置(q)は、予定される露出部位置(p)に対してあらかじめ設定された所定の間隔(s)だけ離れた位置からズレているので、後述のようなズレ位置の修正が必要と成る。
【0051】
(6)このように形成された多層抄き合わせ紙(B)は、さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、最終製品として完成される。そして、多層抄き合わせ紙(B)は、製品として巻き取る巻取装置に送られる途中で、位置ズレ検出装置(33)により、露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)の実際の間隔について、あらかじめ設定された所定の間隔(s)からのズレの量を検出し位置ズレ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。なお、位置ズレ検出装置(33)により、光学的変化素子位置(q)と露出部位置(p)の幅方向の実際の間隔についても同様に、あらかじめ設定された所定の間隔(t)からのズレの量を検出し位置ズレ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
【0052】
露出部を設けない場合の多層抄き合わせ紙は、製品として巻き取る巻取装置に送られる途中で、位置ズレ検出装置(33)により、すき入れ位置(r)、レジスターマーク又はIJPによるマーク(v)と光学的変化素子位置(q)の実際の間隔について、あらかじめ設定された所定の間隔(s)からのズレの量を検出し位置ズレ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
【0053】
プレスロール(31)により、すき入れ(8)を施す場合は、搾水ボックス(30)を通過し、プレスロール31により、すき入れ(8)が施される。このすき入れ(8)は、光学的変化素子位置(q)から多層抄き合わせ紙(B)の長手方向(抄造方向)に、あらかじめ設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施されるようにする。即ち、ワイヤの送り速度及び不織布内の光学的変化素子位置を考慮して、プレスロール(31)の回転速度等を制御してすき入れ(8)のタイミングを設定する。しかしながら、実際は、不織布挿入時において、光学的変化素子位置(q)は、予定されるすき入れ位置(r)に対してあらかじめ設定された所定の間隔(s)だけ離れた位置からズレているので、後述のようなズレ位置の修正が必要となる。
【0054】
(7)位置制御器(28)は、この位置ズレ情報を受けて位置修正ロール(29)を制御して、不織布(2)の送りを制御する。即ち、位置制御器(28)によりモータを介して位置修正ロール(29)の送り速度を調整することで、帯状の不織布(2)の送り速度を上げたり下げたりして不織布(2)内に付与された光学的変化素子(4)の下層紙料層(23)に対する抄造方向の相対的な位置が調整でき、光学的変化素子位置(q)と露出部位置(p)の間隔が、あらかじめ設定された所定の間隔(s)になるように修正することができる。露出部を設けない場合の多層抄き合わせ紙は、位置制御器(28)によりモータを介して位置修正ロール(29)の送り速度を調整することで、帯状の不織布(2)の送り速度を上げたり下げたりして不織布(2)内に付与された光学的変化素子(4)の下層紙料層(23)に対する抄造方向の相対的な位置が調整でき、光学的変化素子位置(q)と、すき入れ位置(r)、レジスターマーク又はIJPによるマーク(v)の間隔が、あらかじめ設定された所定の間隔(s)になるように修正することができる。
【0055】
なお、位置制御器(28)に送られる光学的変化素子位置(q)と露出部位置(p)の幅方向の位置ズレ情報は、図示しない不織布供給ドラム(24)の幅方向への不織布供給ドラム幅方向位置調整装置に送られ、これにより多層抄き合わせ紙(B)に対して不織布(2)を幅方向に移動してズレを修正することができる。
【0056】
下層紙料供給槽(16)又は上層紙料供給槽(18)に貯留された原料の紙料特性を異ならせて、色、坪量又は繊維構成の異なる多層抄き合わせ紙を作製することも可能である。色の調節については繊維の種類の違い、顔料、染料の混入、漂白か未漂白か等により可能であり、坪量の調節については原料濃度、原料吐出部の調整により可能であり、繊維構成の調節については繊維の種類、配合割合、繊維長、叩解度等を変化させることで可能である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
図6に示した多層抄き合わせ紙の製造装置を用いて、針葉樹晒クラフトパルプを、叩解度をカナディアンスタンダードフリーネス550mlに調整した下層紙料(19)を下層紙料供給槽(16)から下層紙料用目止め板(21)とワイヤ(12)の隙間を通して、下層紙料(19)を循環移動中のワイヤ(12)の上面に供給する。ワイヤ(12)上に供給された下層紙料(23)は、下層紙料層(下部湿紙)(23)として抄造方向に送られる。
【0059】
坪量12g/m2、厚さ35μm、水透過性の指標となる透気度はJISの透気度試験法で測定限界以下の透気性が高いレーヨン繊維で構成されるあらかじめ光学的変化素子が貼付された巻取状の不織布(2)を、不織布供給ドラム(24)にセットし、この下層紙料層(23)の上面に、不織布供給装置(17)から光学的変化素子が付与された帯状の不織布(2)を連続的に供給する。下層紙料(19)のパルプ繊維と重ねられた帯状の不織布(2)の更に上面に、針葉樹未晒クラフトパルプを、カナディアンスタンダードフリーネス570mlに調整した上層紙料(20)を上層紙料供給槽(18)から上層紙料用目止め板(22)とワイヤ(12)の隙間を通して上層紙料(20)を供給する。すると、上層紙料(20)は、ワイヤ(12)上で上層紙料層(27)として抄造方向に送られながら不織布(2)と重なり、上層紙料(20)は不織布(2)の繊維間に入り込む。これにより、上層紙料(20)のパルプ繊維は、不織布(2)の繊維と絡み合うとともに、不織布(2)内にすでに入りこんでいる下層紙料(19)のパルプ繊維とも絡み合い生成されていく。
【0060】
多層にすき合わされた多層抄き合わせ紙は、搾水ボックス(30)を通過し、光学的変化素子(4)が付与された上層紙料層(27)の一部が露出するように露出部形成器(39)によって露出部(5)が形成される。この露出部(5)は、光学的変化素子位置(q)から多層抄き合わせ紙の長手方向(抄造方向)に、あらかじめ設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施される。更に乾燥装置内を通過して乾燥され、巻取の多層抄き合わせ紙が完成される。
【0061】
そして、製品として巻き取る巻取装置に送られる途中で、位置ズレ検出装置(33)により、露出部位置(p)と光学的変化素子位置(q)の実際の間隔について、あらかじめ設定された所定の間隔(s)からのズレの量を検出し位置ズレ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。また、位置ズレ検出装置(33)により、光学的変化素子位置(q)と露出部位置(p)の幅方向の実際の間隔について、あらかじめ設定された所定の間隔(t)からのズレの量を検出し位置ズレ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
【0062】
(実施例2)
図6に示した多層抄き合わせ紙の製造装置を用いて、針葉樹晒クラフトパルプを、叩解度をカナディアンスタンダードフリーネス550mlに調整した下層紙料(19)を下層紙料供給槽(16)から下層紙料用目止め板(21)とワイヤ(12)の隙間を通して、下層紙料(19)を循環移動中のワイヤ(12)の上面に供給する。ワイヤ(12)上に供給された下層紙料(23)は、下層紙料層(23)として抄造方向に送られる。
【0063】
坪量12g/m2、厚さ35μm、水透過性の指標となる透気度はJISの透気度試験法で測定限界以下の透気性が高いレーヨン繊維で構成される不織布(2)を用意し、巻取状の不織布(2)を、不織布供給ドラム(24)にセットし、不織布供給ドラム(24)から不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する間に、不織布に光学的変化素子貼付器(38)によって長手方向に一定の間隔をおいて光学的変化素子が付与される。この下層紙料層(23)の上面に、不織布供給装置(17)から光学的変化素子が付与された帯状の不織布(2)を連続的に供給する。下層紙料(19)のパルプ繊維と重ねられた帯状の不織布(2)の更に上面に、針葉樹未晒クラフトパルプを、カナディアンスタンダードフリーネス570mlに調整した上層紙料(20)を上層紙料供給槽(18)から上層紙料用目止め板(22)とワイヤ(12)の隙間を通して上層紙料(20)を供給する。すると、上層紙料(20)は、ワイヤ(12)上で上層紙料層(27)として抄造方向に送られながら不織布(2)と重なり、上層紙料(20)は不織布(2)の繊維間に入り込む。これにより、上層紙料(20)のパルプ繊維は、不織布(2)の繊維と絡み合うとともに、不織布(2)内にすでに入りこんでいる下層紙料(19)のパルプ繊維とも絡み合い生成されていく。
【0064】
多層にすき合わされた多層抄き合わせ紙は、搾水ボックス(30)を通過し、光学的変化素子(4)が付与された上層紙料層(27)の一部が露出するように露出部形成器(39)によって露出部(5)が形成される。この露出部(5)は、光学的変化素子位置(q)から多層抄き合わせ紙の長手方向(抄造方向)に、あらかじめ設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施される。さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、巻取の多層抄き合わせ紙が完成される。光学的変化素子位置(q)と露出部位置(p)の幅方向及び/又は長手方向の位置合わせについては実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】繊維から成る上部紙層(1)、繊維から成る不織布(2)、繊維から成る下部紙層(3)から成る多層抄き合わせ紙(A1)を示す図及びそのX−X’断面図である。
【図2】繊維から成る上部紙層(1)、繊維から成る不織布(2)、繊維から成る下部紙層(3)から成る多層抄き合わせ紙(A2、A3)を示す図及びそのX−X’断面図である。
【図3】本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の光学的変化素子とその露出部の位置合わせの一例を示す図及びそのX−X’断面図である。
【図4】本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の光学的変化素子とその露出部の位置合わせの一例を示す図及びそのX−X’断面図である。
【図5】本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の光学的変化素子とその露出部の位置合わせの一例を示す図及びそのX−X’断面図である。
【図6】本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の製造装置を示す図である。
【図7】露出部形成器(39)の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 上部紙層
2 不織布
3 下部紙層
4 光学的変化素子
5 露出部
6 境界
7 印刷領域
8 すき入れ
9 レジスターマーク又はIJPによるマーク
11 多層抄き合わせ装置
12 抄紙用のワイヤ
13 従動用プーリ
14 駆動用プーリ
15 ワイヤの上流部
16 下層紙料供給槽
17 不織布供給装置
18 上層紙料供給槽
19 下層紙料
20 上層紙料
21 下層紙料用目止め板
22 上層紙料用目止め板
23 下層紙料層(湿紙)
24 不織布供給ドラム
25 テンションロール
26 位置修正装置
27 上層紙料層(上部湿紙)
28 位置制御器
29 位置修正ロール
30 搾水ボックス
31 プレスロール
32 乾燥装置
33 位置ズレ検出装置
34 位置検出器
35 タンディロール
36 位置ズレ判別器
37 ライトテーブル
38 光学的変化素子貼付器
39 露出部形成器
40 タンディロール
41 凸部
42 エアノズル
p 露出部位置
q 光学的変化素子位置
r すき入れ位置
v レジスターマーク又はIJPによるマーク位置
s 長手方向の間隔
t 幅方向の間隔
w 下層紙料層の横幅
A1、A2、A3、B、B1、B2、B3 多層抄き合わせ紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部紙層、光学的変化素子が付与された不織布及び上部紙層が順次積層されて成る多層抄き合わせ紙において、
前記光学的変化素子が付与された不織布は、前記不織布の片面及び/又は両面に少なくとも一つの前記光学的変化素子が貼付されて成り、
前記光学的変化素子が付与された領域は、少なくとも一部が露出する露出部を有して成る多層抄き合わせ紙。
【請求項2】
前記光学的変化素子が回折格子を有して成る請求項1記載の多層抄き合わせ紙。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−52488(P2006−52488A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233960(P2004−233960)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】