説明

多層抄き塗工板紙

【課題】裏面からの微細異物の欠落がなく、表面と裏面との貼り付きが少なく、印刷面の耐白抜け性も良好で、また、従来の板紙と比べて10〜15%低米坪・軽量化を図っても、段ボールケース等に適した加工適性を満足させる品質を有すると同時に、青果物用途の段ボールケースに使用された場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を有する多層抄き塗工板紙を提供する。
【解決手段】少なくとも表面層及び裏面層から成る基紙を有し、この表面層上に樹脂粒子を含有する表面塗工層用塗工液を塗工して表面塗工層を形成し、また裏面層は、繊維長分布の平均繊維長が0.2〜0.6mmの微細繊維を含有する離解パルプの離解フリーネスが260cc〜350ccであり、さらに裏面層の表面上に、水溶性樹脂を含有する裏面塗工層用塗工液を0.5〜2.0g/m塗布して裏面塗工層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面からの微細異物の欠落がなく、表面と裏面との貼り付きが少なく、巻取りからスムーズに紙が巻き解かれ、オフセット印刷をしても、ブランケット及び刷版への異物付着がほとんどなく、これによる印刷面の耐白抜け性も良好な多層抄き塗工板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源保護、循環型環境リサイクルへの関心が強くなり、包装紙資材のリサイクル化、製造工程でのゼロエミッション化が進み、古紙の増配、製紙スラッジ、排水スラッジ等の有効利用が望まれている。一般的に段ボール原紙、板紙等は古紙を比較的多配合している。しかし、美粧性、印刷適性を必要とする塗工された多層抄き板紙についても原材料の有効利用、古紙増配が望まれており、こうした塗工品の多層抄き板紙において、製紙の製造工程で発生する製紙スラッジ、排水スラッジ中には繊維分が含まれているが、紙への配合を行うと、微細繊維が多く含まれているため、繊維間結合強度の低下や印刷工程での白抜け、紙紛トラブルの原因となっている。
【0003】
多層抄き塗工板紙には、一般的にマニラボール、白ボール、コートライナー等があり、マニラボールはさらに高級板紙、特殊板紙、一般マニラボールに分類される。従来、多層抄き塗工板紙のオフセット印刷をする場合、オフセット印刷適性に優れたマニラボールがもっぱら使用されてきた。しかし、近年、古紙を多配合している白ボール、コートライナーにもマニラボールと同程度のオフセット印刷適正が要求されてきている。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1には、裏面に顔料塗被組成物を3〜20g/m程度塗工・乾燥し、平滑処理することで、裏面層に未脱墨古紙を多配合しても、裏面のオフセット印刷適性を確保することができ、表裏面ともオフセット印刷適性を有するコート白ボールの技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のコート白ボールでは、裏面層に安価な古紙を多配合するため、白色度が一般に50%以下である。従って、オフセット印刷を行おうとすると、巻取り製品が巻き戻される際、裏面塗工層の表面から表面塗工層の表面に転移するため、紙紛、微細異物等がブランケットに転移し、白抜けが発生するという問題があった。
【0005】
そこで、この対策として、例えば特許文献2〜4には、裏面にポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)、澱粉等を塗布すること、裏層に紙力剤を内添すること、裏層パルプ中の古紙パルプ量を減らすこと、繊維長の長い古紙パルプを使用すること、繊維長の短い古紙パルプを使用する場合は、洗浄を強化するとかニーディング処理をして配合する技術などが開示されている。
【0006】
しかしながら、裏層に繊維長が短く白色度の低い低級古紙パルプを配合し、裏層剥離面白色度が65%以下のコート白ボールにおいては、未だオフセット裏面印刷をした時のインキ発色性が良く、かつ印面の白抜けが少ないものが得られていないのが現状である。
【0007】
一方、ゴミ、省資源の観点から古紙それも低級古紙をリサイクルすることは、社会的な大きな課題であり、資源の有効利用が望まれている。また、古紙も脱墨処理を行うと、排水が汚れ、その負荷が増えるという問題がある。従って、劣化古紙、低白色度パルプ、特に未脱墨古紙、製紙スラッジ、排水スラッジ等を積極的に利用できれば、この問題解決にも大いに貢献することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−192395号公報
【特許文献2】特開平11−302996号公報
【特許文献3】特開2000−8300号公報
【特許文献4】特開2002−266283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、裏面からの微細異物の欠落がなく、表面と裏面との貼り付きが少なく、巻取りからスムーズに紙が巻き解かれ、オフセット印刷をしても、ブランケット及び刷版への異物付着がほとんどなく、これによる印刷面の耐白抜け性も良好で、また、従来の板紙と比べて10〜15%低米坪・軽量化を図ることができ、また低米坪・軽量化を図っても、段ボールケース、紙器用途に適した加工適性を満足させる品質を有すると同時に、青果物用途の段ボールケースに使用された場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を有する多層抄き塗工板紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、少なくとも表面層及び裏面層から成る基紙と、前記表面層上に、樹脂粒子を含有する表面塗工層用塗工液を塗工して形成された表面塗工層とを具備して成る多層抄き塗工板紙であって、前記裏面層は、該裏面層を剥離してJIS−P8220(1998)に準じて得た離解パルプのJIS−P8121(1995)に準じて測定した離解フリーネスが260cc〜350ccであり、また、前記離解パルプは、繊維長分布の平均繊維長が0.2〜0.6mmの微細繊維を含有し、さらにまた、前記裏面層の表面上に、水溶性樹脂を含有する裏面塗工層用塗工液を0.5〜2.0g/m塗布して裏面塗工層を形成したことを特徴とする多層抄き塗工板紙を提供することによって達成される。
【0011】
また、本発明の上記目的は、前記水溶性樹脂が、PVA及び/又はグラフト化澱粉であり、かつコールターカウンター法により測定した粒子径が0.5〜1.5μmであることを特徴とする多層抄き塗工板紙を提供することによって、効果的に達成される。
【0012】
さらにまた、本発明の上記目的は、前記裏面塗工層用塗工液には、ジルコニウム塩が0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする多層抄き塗工板紙を提供することによって、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る多層抄き塗工板紙によれば、少なくとも表面層及び裏面層から成る基紙の表面層上に、樹脂粒子を含有する表面塗工層用塗工液を塗工して形成された表面塗工層を形成し、また、裏面層は、この裏面層の離解パルプの離解フリーネスを260cc〜350ccとし、さらにまた、裏面層の表面上に、水溶性樹脂を含有する裏面塗工層用塗工液を0.5〜2.0g/m塗布して裏面塗工層を形成したので、米坪を従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図ることができる。また、低米坪・軽量化を図っても、段ボールケース、紙器用途に適した加工適性を満足させる品質を有すると同時に、青果物用途の段ボールケースに使用された場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を有するようになる。
【0014】
また、裏面層の離解パルプは、繊維長分布の平均繊維長が0.2〜0.6mmとしたので、裏面層に劣化古紙、低白色度パルプ、特に未脱墨古紙、製紙スラッジ、排水スラッジ等を多配合しても、裏面からの微細異物の欠落がなく、また表面塗工層の裏面塗工層が巻取りからスムーズに離れ、オフセット印刷をしても、ブランケット及び刷版への異物付着がほとんどなく、これによる印刷面の耐白抜け性も良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る再生粒子の製造設備フロー図である。
【図2】第2燃焼炉(外熱キルン炉)の説明図で、(a)は内部構造を示す一部断面正面図、(b)はその内部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る多層抄き塗工板紙について、基紙の紙層が、表面層、3層の中層及び裏面層の5層から成る場合を例に詳細に説明する。なお、本発明に係る多層抄き塗工板紙は、以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲内において、その構成を適宜変更できることはいうまでもない。
【0017】
本発明に係る多層抄き塗工板紙(以下、「本多層抄き塗工板紙」と言う。)は、基紙と、この基紙の表面上(表面層上)に形成される表面塗工層と、基紙の裏面上(裏面塗工層の表面であって、表面塗工層が設けられる面と反対側の面上)に形成される裏面塗工層とにより構成されている。
【0018】
裏面塗工層を形成する塗工液(以下、「裏面塗工層用塗工液」と言う。)は、少なくとも水溶性樹脂を含有する塗工液である。この裏面塗工層用塗工液は、水溶性樹脂としては、例えば、グラフト(重合)化澱粉、リン酸エステル化澱粉、カチオン化澱粉、ヒドロキシンプロピル澱粉、カルボキシル澱粉、酢酸澱粉等の各種加工澱粉、ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)、ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)、カゼイン、ポリスチレン−ブタジエン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、ポリアクリル系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス等を用いることができる。これらの中でも造膜性、剛性、基紙への浸透性及び微細繊維や微小な夾雑物の隠蔽性を考慮すると、完全懸架型(ケン化度98以上)のPVAと、グラフト化澱粉とを、それぞれ単独若しくは組み合わせて用いることが好ましい。
【0019】
このようなグラフト化澱粉として、酢酸ビニル等の樹脂をグラフト重合し皮膜強度を上げた低粘度の澱粉であると塗工液粘度が低く出来、塗工ムラも押さえられる。このグラフト化澱粉としては、例えばペトロコートC18(日澱化学株式会社製)等が挙げられる。また、裏面塗工層用塗工液中の、グラフト化澱粉の配合量は2.0〜15.0質量%が好ましく、3.0〜10.0質量%であるとより好ましい。なお、グラフト化澱粉が2.0質量%未満であると基紙の裏面の微細繊維を強固に固めることが出来ず、紙粉が発生し易くなる。一方、グラフト化澱粉の配合量が15.0質量%を超えると、裏面塗工層の厚みが厚くなりすぎるため、裏面塗工層が硬くなりすぎ、罫線割れが発生し易くなり、加工適性が低下することに加え、裏面塗工層用塗工液のコストアップの問題につながる。
【0020】
また、完全懸架型(ケン化度98以上)のPVAとしては、例えば日本酢ビポバール株式会社製のJF−17等を用いることができる。
【0021】
また、裏面塗工層用塗工液には架橋剤を添加することが好ましい。このように架橋剤を添加することによって、基紙の裏面から浸透させた裏面塗工層用塗工液中の水溶性樹脂と基紙の繊維とを強固に結合させることができるようになる。従って、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図っても、裏面塗工層の剛性を低下させることなく、本願発明の所望とする耐罫線割れ適性等の加工適性も、容易に維持することができるようになる。
【0022】
このような架橋剤としては、例えば、ホウ素化合物、エポキシ化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等が挙げられ、これらの中でもジルコニウム塩を用いることが好ましい。これにより、裏面塗工層の皮膜をより硬いものとすることができるので、より基紙の繊維とを強固に結合させることができ、耐罫線割れ適性等の加工適性を向上させることができる。なお、架橋剤として用いられるジルコニウム塩は特に限定するものではないが、炭酸ジルコニウムアンモニウムを含有するベイコート20(45%品、日本軽金属株式会社製)やカルタボンド(46%品、クラリアント株式会社)が特に好ましい。
【0023】
この場合において、ジルコニウム塩の配合量を、塗被組成物100質量%に対して、0.5〜5.0質量%とすることで、裏面塗工層用塗工液中の水溶性樹脂と、基紙のパルプ繊維とで架橋構造を効率的に形成することができる。この結果、基紙の裏面層側の毛羽立ちを防止するとともに、裏面塗工層側の剛性も確保でき、低米坪・軽量化を図ることができる。また、本多層抄き塗工板紙の低米坪・軽量化を図っても、耐罫線割れ適性等の加工適性に優れると共に、スタンプ印刷適性にも優れるものとすることができる。なお、ジルコニウム塩の配合量が0.5質量%未満であると、水溶性樹脂とパルプの架橋が不足し、裏面塗工層の皮膜が弱くなるため、ブロッキングの発生の原因となる。また、ジルコニウム塩の配合量が5.0質量%を超えると、裏面塗工層用塗工液を塗工する前から架橋が始まり、塗工液がゲル化するため、塗工液を均一に塗工することが困難となる。
【0024】
また、裏面塗工層用塗工液には、この他、顔料として、炭酸カルシウム、クレー、二酸化チタン等の無機顔料、樹脂粒子等を添加することができる。これらの中でも、樹脂粒子を添加すると段ボール用途に使用する場合には、罫線割れが発生しにくいのでより好ましい。
【0025】
裏面塗工層用塗工液の濃度は3〜20%、好ましくは5〜12%となるように調整される。裏面塗工層用塗工液の濃度が3%未満であると、裏面塗工層の皮膜が薄くなり、基紙表面のカバーリングが十分に出来ないため、微細繊維が基紙から脱落してしまい、紙粉を防止することができない。一方、濃度が20%を超えると裏面塗工層用塗工液の粘性が高くなりすぎる傾向となるため、裏面塗工層用塗工液の基紙への浸透が悪化し、さらに操業性が低下するという問題が発生することに加え、裏面塗工層の表面が硬くなる傾向になり、耐罫線割れ適性等の加工適性を満足することが難しくなる。
【0026】
また、このような裏面塗工層用塗工液の塗工量は0.5〜2.0g/m(dry換算)、より好ましくは0.8〜1.8g/mである。これにより、本多層抄き塗工板紙において、従来の塗工板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図っても、段ボールや紙器に加工する際に必要な加工適性を維持することができると共に、裏面の紙粉・微細異物等の発生が防止でき、印刷トラブルを防止することがより容易となる。なお、裏面塗工層用塗工液の塗工量が0.5g/m未満であると、裏面塗工層の微細繊維の毛羽立ちを被い隠すことが難しくなり、一方で2.0g/mを超えると、裏面塗工層の表面の剛性は満足することができるが、裏面塗工層の柔軟性がなくなり、硬くなる傾向になるため、耐罫線割れ適性等の加工適性を満足させることが難しくなる。
【0027】
このような裏面塗工層用塗工液を基紙の裏面層上に塗布して裏面塗工層を形成することにより、裏面塗工層の表面のワックスピックを10〜20Aにすることが好ましく、より好ましくは12〜16Aとする。ワックスピックが10A未満であると、裏面塗工層の剛性が弱くなる傾向になり、低米坪・軽量化を図ると、本願の所望とする加工適性及びスタンプ印刷適性を得ることが難しくなる。一方、ワックスピックが20Aを超えると、裏面塗工層の剛性が強くなりすぎる傾向になり、柔軟性がなくなり、硬くなるため、耐罫線割れ適性等の加工適正を満足することが難しくなる。
【0028】
なお、上記裏面塗工層用塗工液の塗工方法としては、シングル塗工でもダブル塗工以上の多段塗工でもよく、塗工設備としては、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ゲートロールコーター、及びサイズプレス等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター、カレンダーロールコーターなどがある。塗工設備については、これらの中でも高線圧下での塗工が可能なカレンダーロール塗工方式が好ましい。また、カレンダーロールとしてはチルドロールがより好ましい。さらに、塗工後の裏面塗工層の表面の平坦化処理はオンマシンカレンダーやソフトカレンダー、グロスカレンダーなどが使用できる。
【0029】
次に、表面塗工層用塗工液について説明する。表面塗工層用塗工液には、少なくとも樹脂粒子を配合する。樹脂粒子は、無機顔料と比べると、硬度が低いものの、粒子に弾力性と剛性があり、光沢もあるので、印刷適正、耐罫線割れ適正、及び圧縮強度をバランス良く満足させることができる点と、表面塗工層の厚みを増すことができるので、基紙表面を被い隠し易くなる点で、無機顔料よりも好ましい。即ち、このように表面塗工層用塗工液に樹脂粒子を含有することにより、表面塗工層の厚みを確保することができ、さらに柔軟性及び剛性を確保することができる。
【0030】
表面塗工層用塗工液中の樹脂粒子の配合量は1〜10質量%が好ましく、2.0〜8.0質量%であるとより好ましい。これにより、表面塗工層の曲げ応力に対する耐性が向上し、耐罫線割れ適性を向上させることができるので、表面塗工層の割れの発生を大幅に減少させることができるとともに、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を得ることができる。さらには、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図っても、板紙としての圧縮強度を確保し、加工適性を満足することができる。なお、表面塗工層用塗工液中の樹脂粒子の配合量が1質量%未満であると、表面塗工層の厚みが薄くなるので、基紙表面の微細繊維を覆い隠すことができなくなる。一方、配合量が10質量%を超えると、表面塗工層の厚みが厚くなりすぎるため、罫線割れが発生し易くなる他、表面塗工層用塗工液のコストアップにつながる。
【0031】
また、表面塗工層用塗工液に用いられる樹脂粒子としては、真球状又は中空状のプラスチックピグメント(PP)が好ましい。このようなプラスチックピグメントは、無機顔料に比べて硬度が低いものの、剛性を有しているので、顔料自体の変形も容易であり、耐罫線割れ適性を向上させることができる。従って、本多層抄き塗工板紙の米坪を、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化しても、圧縮強度の低下を防止し、加工適性を向上させる効果がある。
【0032】
このようなプラスチックピグメントとしては、共役ジエン単量体5〜18質量%、イタコン酸0.25〜4質量%、アクリル酸0.25〜6質量%、及びこれらと共重合可能なその他の単量体72〜94.5質量%からなる単量体混合物を乳化共重合して得られるものが用いられる。
【0033】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンが好適である。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、共役ジエン単量体の使用量は、全単量体の5〜18質量%、好ましくは8〜16質量%である。この量が少ないと本多層抄き塗工板紙はスタンプ印刷適性に劣り、逆に多いと、耐罫線割れ適性等の加工適性に劣る傾向にある。
【0034】
イタコン酸の使用量は、全単量体の0.25〜4質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。イタコン酸はアルカリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもできる。イタコン酸の使用量が少ないと表面塗工層用塗工液の機械的安定性に劣り、逆に多いと本多層抄き塗工板紙のスタンプ印刷適性を満足することが難しくなり、また白紙光沢も低下する。
【0035】
アクリル酸の使用量は、全単量体の0.25〜6質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。アクリル酸は、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもできる。アクリル酸の使用量が少ないと表面塗工層用塗工液の機械的安定性に劣り、逆に多いと、得られた表面塗工層用塗工液のラテックスの粘度が上昇して取り扱い難くなると共に、本多層抄き塗工板紙がスタンプ印刷適性に劣る傾向となり、また白紙光沢も低下する。
【0036】
共役ジエン単量体、イタコン酸およびアクリル酸と共重合可能なその他の単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、イタコン酸およびアクリル酸を除くエチレン性不飽和酸単量体、架橋性単量体などが挙げられる。
【0037】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられるが、特にスチレンが好ましい。
【0038】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられるが、特に(メタ)アクリロニトリルが好ましい。
【0039】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどのエチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体;マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸エステル単量体;などが挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体が好ましく使用できる。
【0040】
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
【0041】
イタコン酸およびアクリル酸を除くエチレン性不飽和酸単量体としては、例えば、メタクリル酸、クロトン酸などのアクリル酸を除く不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などのイタコン酸を除く不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸−2−リン酸エチル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンリン酸などのリン酸基含有単量体;などが挙げられる。これらは、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもでき、また、これらの単量体は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
架橋性単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0043】
これらの他の単量体は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの他の単量体のうち、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体が好ましく使用される。なお、イタコン酸およびアクリル酸を除くエチレン性不飽和酸単量体の使用量は、全単量体の2質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは使用しない。
【0044】
他の単量体の使用量は、全単量体の72〜94.5質量%、好ましくは76〜91質量%である。この使用量が少ないと本多層抄き塗工板紙の耐ブロッキング性に劣り、逆に多いと本多層抄き塗工板紙はスタンプ印刷適性に劣る傾向となり、また白紙光沢も低下する。
【0045】
また、イタコン酸とアクリル酸との重量比は1:1〜1:3の範囲とすることが好ましい。この範囲で両者を用いると、機械的安定性により優れる表面塗工層用塗工液が得られ、かつ表面塗工層用塗工液の粘度も低く抑えることができるので、高速塗工にも好適に使用できる。
【0046】
また、表面塗工層用塗工液に用いられる樹脂粒子の体積平均粒子径は150〜500nmが好ましく、より好ましくは180〜320nmである。これにより、本多層抄き塗工板紙は、白紙光沢と表面強度とのバランスにより優れるものとなる。なお、この体積平均粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節したり、シードラテックスの粒子径や、その使用量を調節するなどして、所望の値に制御できる。
【0047】
さらに、樹脂粒子のテトラヒドロフラン不溶解分は40質量%以上、50〜95質量%であるとより好ましい。この量が少ないと、本多層抄き塗工板紙の耐ブロッキング性が低下する傾向にある。逆にこの量が多すぎると、本多層抄き塗工板紙のスタンプ印刷適性が低下する傾向にあり、また白紙光沢も低下する。
【0048】
さらにまた、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は30〜95℃、好ましくは50〜80℃である。ガラス転移温度がこの範囲内にあると、本多層抄き塗工板紙の白紙光沢及び耐ブロッキング性のバランスにより優れる表面塗工層を形成することができる。
【0049】
また、表面塗工層用塗工液は、樹脂粒子の他、バインダー成分として、適度な造膜性及び剛性があり、かつ、インク着肉性も良好であるスチレンブタジエンラテックス(SBRラテックス)が配合されていることが好ましい。このように、表面塗工層用塗工液に、樹脂粒子とSBRラテックスとを含有することにより、多層抄き塗工板紙としての耐罫線割れ適性、インク着肉性を維持することはもちろんのこと、本多層抄き塗工板紙を低米坪・軽量化しても、圧縮強度を維持する働きをするため、本多層抄き塗工板紙の加工適性及びスタンプ印刷適性をより向上させることができる。
【0050】
なお、バインダー成分となる樹脂としては上記SBRラテックスの他、アクリルアミド系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、PVA等のポリビニル系樹脂、澱粉等の公知の種々のものを用いることもできる。本発明においては、SBRラテックスのようなスチレン系の樹脂が特に好ましい。
【0051】
また、表面塗工層用塗工液におけるSBRラテックスの配合量は、顔料(樹脂粒子+無機顔料)100重量部に対して、SBRラテックスが6〜15重量部、9〜12重量部とすることがより好ましい。なお、樹脂粒子以外の顔料としては、クレー、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料を用いることができる。中でもクレー、炭酸カルシウムが用いられると、本多層抄き塗工板紙の所望とする耐罫線割れ適正等の加工適性及びスタンプ印刷適性をより容易に得られるので好ましい。
【0052】
なお、SBRラテックスの配合量が6重量部未満であると、耐罫線割れ適性の向上効果を得ることが難しくなる。さらに、樹脂粒子を基紙の表面に固着させることが難しくなるため、擦れにより表面塗工層に傷が入りやすくなる。一方、SBRラテックスの配合量が15重量部を超えると、表面塗工層の表面に粘り感が発生する傾向になるため、巻取り製品に加工した際に表面塗工層と裏面塗工層とが貼り付く傾向になり、紙表面にピッキングを発生させてしまうおそれがある。さらに、表面塗工層の曲げ応力に対する耐性は向上するが、表面塗工層自体の柔軟性がなくなり、硬くなる傾向になるので、耐罫線割れ適性の向上効果を得ることが難しくなることに加え、特に、水性のスタンプ印刷適性に問題が生じる。
【0053】
また、表面塗工層用塗工液中の顔料としては、クレー:炭酸カルシウム:樹脂粒子の比率を20〜60:25〜71:4〜15とすることが好ましい。これにより、本多層抄き塗工板紙は、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化をより容易に図ることを可能とし、また、このように低米坪・軽量化を図っても、段ボールや紙器等への加工適性を維持すると共に、スタンプ印刷適性を有することができる。
【0054】
また、樹脂粒子を配合する表面塗工層用塗工液の塗工量は、表面塗工層の乾燥状態(基紙上に形成された表面塗工層の状態)において、5〜18g/m(dry換算)、より好ましくは6〜15g/mである。これにより、表面塗工層と接する基紙の表面層のパルプ繊維間の目止めをすることができるので、スタンプ印刷適性を向上させることができると共に、印刷面の平滑化及び表面塗工層の剛性を確保できる。また、表面塗工層の厚みが厚くなりすぎないので、インクが基紙へと浸透しやすく、インク接着性が高くなるので、本多層抄き塗工板紙のスタンプ印刷適性をより向上させることができる。
【0055】
なお、表面塗工層用塗工液の塗工量が5g/m未満では、表面層のパルプ繊維間の目止め効果を発揮することができず、スタンプ印刷のインク滲みが発生しやすくなる問題があり、本願の所望とするスタンプ印刷適性を十分に得ることができない。また、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図ると、表面塗工層の剛性を保ち、圧縮強度を確保することが難しくなる。一方、塗工量が18g/mを超えると、塗工層の剛性は向上するものの、表面塗工層の厚みが厚くなりすぎ、表面塗工層の曲げ応力に対する耐性を得ることができず、段ボールなどに必要な耐罫線割れ適性等の加工適性に劣る傾向がある。
【0056】
なお、上記表面塗工層用塗工液の塗工方法としては、シングル塗工でもダブル塗工以上の多段塗工でもよく、塗工設備としては、バーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ゲートロールコーター、及びサイズプレス等のロールコーター、ビルブレードコーター、ベルバパコーター、カレンダーロールコーターなどがある。また、基紙の表面層上に表面塗工層用塗工液を塗布する前(表面塗工層を形成する前)に、表面塗工層用塗工液を均一に塗工し、表面塗工層を平滑にするために、カレンダーパートで基紙に表面処理を施すことが好ましい。
【0057】
次に、本多層抄き塗工板紙の基紙について説明する。本多層抄き塗工板紙の基紙は、上述したように、表面層(表面塗工層が形成され、表面塗工層と接する層)、表下層、中層、裏下層及び裏面層の5層の紙層により構成されている。
【0058】
表面層を形成する原料パルプには、針葉樹パルプ(NKP)が50〜70質量%、より好ましくは55〜65質量%配合される。これにより、表面層のパルプ繊維の結合を強くすることができるので、本多層抄き塗工板紙の米坪を、従来の塗工板紙と比べて10〜15%低米坪・軽量化を図っても、段ボール、紙器の用途に必要な耐罫線割れ適性を満足させることができると共に、微細繊維や無機物の欠落も防止することができる。なお、針葉樹パルプの配合量が50質量%未満であると、長繊維パルプが少なくなることで罫線割れが発生しやくなる。一方、70質量%を超えると、長繊維パルプが多すぎるために、表面層を均一な地合いとすることができず(平坦にすることができず)、印刷不良の原因となるとともに、本多層抄き塗工板紙の低米坪・軽量化を図るにあたり、紙がしまりにくくなり、剛性を確保することが難しくなる。
【0059】
なお、表面層の原料パルプは、針葉樹パルプが50〜70質量%配合されていれば、その他のパルプは特に限定されるものではなく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹亜硫酸パルプ等の木材繊維を主原料として、化学的に処理されたパルプ、化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したサーモメカニカルパルプ(TMP)、木材又はチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを柔らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ等の公知の種々のものを用いることができる。また、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等の非木材繊維も用いることができるが、非木材繊維パルプはパルプ強度が弱く、パルプ自体の単価が高いため、コストも高くなることからクラフトパルプ、TMPなどの機械パルプを用いることが好ましい。
【0060】
なお、針葉樹パルプは、繊維が柔らかくカレンダー処理を施す際に繊維が潰れ易いため、表面塗工層の形成前(表面塗工層用塗工液を塗付する前)に、基紙にカレンダー処理を施すことにより、さらに基紙の表面が平坦となり、表面塗工層用塗工液を表面層上に均一に塗工することが可能となる。
【0061】
また、裏面層を形成する原料パルプには、製紙スラッジ、排水スカム等の製紙工程から排出される微細繊維パルプを3〜30質量%配合することが好ましい。これにより、裏面を平坦にすることが容易となる。なお、その他の原料パルプは、特に限定されず、表面層の原料パルプと同様に公知の種々のものを用いることができるが、一般的には、紙器製造時に発生する裁落損紙、新聞、雑誌等を原料として抄造した白ボール、地券古紙等を主原料とする原料パルプが用いられる。
【0062】
また、基紙の裏面層は、JIS−P8220(1998)に準じて得た離解パルプ(以下、単に「離解パルプ」と言う。)は、繊維長分布の平均繊維長が0.2〜0.6mmの微細繊維である。これにより、裏面を平坦にしやすく、本発明の目的を効率的に達成することができる。なお、平均繊維長が0.2mm未満であると、抄紙工程においてワイヤーの目詰まりが発生しやすくなり、本発明の目的を効率的に達成することが困難になる。一方、平均繊維長が0.6mmを超えると、水溶性樹脂と基紙の裏面の繊維とがバランスよく凝固しにくくなる傾向にある。
【0063】
ここで、基紙の裏面層の離解パルプは、JIS−P8121(1995)に準じて測定したフリーネス(以下、「離解フリーネス」と言う。)が260〜350cc、好ましくは280〜320ccとなるように調整する。これにより繊維同士の絡み合いはもちろんのこと、水溶性樹脂の浸透性を向上させることができ、本発明の目的を効率的に達成することができる。なお、裏面層の離解フリーネスが260cc未満であるとワイヤーパートでの脱水性が低下する傾向になり、地合潰れが発生しやすく、本発明の目的を達成することが難しくなる。一方、離解フリーネスが350ccを超えると、ワイヤーパートでの脱水が早くなり、積層する湿紙との繊維の絡みが悪化する傾向になるため、抄き合わせが困難になり、本発明の目的を効果的に達成することが難しくなる。
【0064】
また、表面層及び裏面層以外の層、すなわち表下層、中層及び裏下層を形成する原料パルプも、特に限定されるものではないが、上白古紙とコート紙の白損からなる中白古紙等とを適宜配合したものが好適に用いられる。
【0065】
また、本多層抄き塗工板紙においては、JIS−P8252(525℃)に準じて測定した灰分が10〜25%であり、より好ましくは13〜20%である。灰分が10%未満であると、紙密度が低下する傾向になり、圧縮強度が低下する傾向になる。一方、灰分が25%を超えると、耐罫線割れ適性等の加工適正を満足することが難しくなる。
【0066】
さらに、上記の灰分範囲において、本多層抄き塗工板紙の基紙の紙密度を0.48〜0.98g/cmに調整すると、表面塗工層用塗工液の基紙への吸収バランスがもっとも良くなり、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化を図ることを可能にし、また低米坪・軽量化しても、板紙の圧縮強度を維持し、加工適性を維持することができることが分かった。これにより、表面塗工層用塗工液の塗工量を5〜18g/mの範囲としても、本多層抄き塗工板紙が所望とする加工適性及びスタンプ印刷適性を、より容易に得ることができるようになる。
【0067】
なお、本多層抄き塗工板紙の基紙の灰分の調整に使用する填料としては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、二酸化チタン、再生粒子が好ましい。この再生粒子については後述する。
【0068】
上述した原料パルプは、公知の抄紙工程、例えばワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、サイズプレス、カレンダーパートなどを経て、表面層、表下層、中層、裏下層及び裏面塗工層の5層の紙層を有する本多層抄き塗工板紙の基紙が形成される。なお、本多層抄き塗工板紙の基紙の抄紙方法については、特に限定されるものではないので、酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法のいずれであっても良い。また、抄紙機も特に限定されるものではないので、例えば長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等の公知の種々の抄紙機を使用することができる。
【0069】
また、本多層抄き塗工板紙を構成する基紙は、各層の繊維配向性(ジェットワイヤー比)を、表面層が100〜96、表下層が100〜96、中層が106〜102、裏下層が106〜102、裏面層が106〜100の範囲で、且つ、表面層<表下層<裏下層<裏面層≦中層の関係を有するように調整することが好ましいことがわかった。これにより、本多層抄き塗工板紙の低米坪・軽量化を図ることができ、かつ剛性を維持できる表面層及び裏面層を形成することができる。
【0070】
このように、基紙の灰分、層別の繊維配向性を規定することで、表面層及び裏面層の剛性を高めることができるので、従来の板紙と比べて10〜15%の低米坪・軽量化が図れ、さらに低米坪・軽量化を図っても、加工適性およびスタンプ印刷適性を満足させることができるに至ったのである。
【0071】
また、基紙の坪量は100〜500g/mとすることが好ましい。坪量が100g/m未満であると、多層抄き塗工板紙を段ボール用途に使用した際、段ボールケースの圧縮強度が低くなるといった問題がある。一方、500g/mを超えると、基紙の紙厚も大きくなるため、多層抄き塗工板紙を折り曲げた際に、表面の応力が強くなりすぎ、表面塗工層及び基紙の表面層にひび割れが発生するという問題が発生する。
【0072】
また、本多層抄き塗工板紙の基紙は、プレス工程後に鏡面仕上げされたドライヤーに圧接することが好ましく、特にヤンキードライヤーなどの大径ドライヤーに圧接乾燥することが望ましい。さらには、圧接前の基紙の湿紙水分が53〜60%であるとより好ましくなる。湿紙水分が53%未満であると表面に存在する水分の絶対量が少なくなり、表裏面のみが過乾燥気味になり、表面塗工層形成前あるいは裏面塗工層形成前の、基紙の表裏面の凹凸が大きくなり、上述した表面塗工層用塗工液あるいは裏面塗工層用塗工液の塗工量では本発明の目的を達成することが難しくなる。一方、湿紙水分が60%を超えると基紙の表面層あるいは裏面層に分布する絶対水分量が多くなり、表面層あるいは裏面層から蒸発する水蒸気量が多くなるので、鏡面と基紙との接触が不十分となり、良好な表面層及び裏面層を得ることが難しくなる。
【0073】
なお、基紙を抄紙後、2次加工で印刷機やバーコーターやロッドコーター、エアナイフ等の塗工機により表面塗工層用塗工液及び裏面塗工層用塗工液を塗工して表面塗工層及び裏面塗工層を形成し、本多層抄き塗工板紙を形成することも可能である。
【0074】
以上に詳述したように、複数層から成る基紙を有し、基紙の表面層上に、特定の樹脂粒子を、特定量配合した表面塗工層用塗工液を塗布して表面塗工層を形成し、かつ基紙の裏面層上に特定の水溶性樹脂を特定量配合した裏面塗工層用塗工液を塗布して裏面塗工層を形成することで、裏面層に劣化古紙、低白色度パルプ、特に未脱墨古紙、製紙スラッジ、排水スラッジ等が配合された原料パルプを用いて形成された多層抄き塗工板紙であっても、裏面からの微細異物の欠落もなく、表面塗工層の裏面塗工層が巻取りからスムーズに離れ、オフセット印刷をしても、ブランケット及び刷版への異物付着がほとんどなく、これによる印面の耐白抜け性も良好な多層抄き板紙および青果物用途の段ボールケースに使用された場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を有する多層抄き板紙を提供することができ、尚かつ、米坪を従来の板紙の10〜15%低減させ、低米坪・軽量化を図ることができ、また低米坪・軽量化を図っても、段ボールケース、紙器用途に適した加工適性を満足させる品質を有すると同時に、青果物用途の段ボールケースに使用された場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を有する多層抄き塗工板紙をより効率よく提供することができる。
【0075】
次に、本板紙の基紙に内添することができる填料である再生粒子について説明する。本発明に使用される再生粒子の製造方法とは、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕の各工程を経て、再生粒子を得るものであって、前記乾燥と燃焼工程が、前記脱水後の原料の乾燥と燃焼を一連で行う先の第1燃焼炉(内熱キルン炉)と、第1燃焼炉にて燃焼された脱墨フロスを再度燃焼する後の第2燃焼炉とを有する、少なくとも2段階の燃焼工程を有し、その後に粉砕し、再生粒子を得るものである。
【0076】
さらに詳述すれば、燃焼工程は、第1燃焼炉(内熱キルン炉)内の酸素濃度が0.2〜20%となるように、第1燃焼炉に300〜500℃の温度で燃焼処理を行い、さらに第2燃焼炉は、第1燃焼炉からの燃焼物を550〜780℃の温度で燃焼処理を行うものである。
【0077】
しかしながら、本発明において使用しようとする再生粒子の主原料となる、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程において、パルプ繊維から分離された脱墨フロスは、無機微粒子を含有すると共に、古紙パルプとして利用が困難な微細繊維や、塗工紙に多用される有機高分子であるラテックス、印刷により付与されたインキ成分を多く含む。このため、燃焼工程の燃焼処理において、脱墨フロスそのものが燃焼反応(酸化)を生じて燃焼するため、熱風による加熱処理以上の発熱が生じ、原料の過剰燃焼を引き起こす問題が発生することを知見した。
【0078】
このような過剰な燃焼は、(1)高温燃焼により原料が黄変化し白色度の低下を招く、(2)原料の溶融によりゲーレナイト等の硬質物質を生じやすくなって抄紙設備でのワイヤー摩耗度が上昇する、(3)原料の溶融による凝集体を形成するため、後の微粉砕工程において粉砕エネルギーの増加、処理効率が低下する、(4)原料の表面が高温に晒され、原料内部よりも先に溶融されるため、原料内部まで燃焼反応(酸化反応)が進まず、有機物(カーボン)が残留し、結果として白色度の低下を招く等の問題が発生する。
【0079】
そこで、このような問題を解決する手段として、過剰な燃焼をコントロールする方策に着目し、鋭意検討を行った結果、燃焼工程を第1燃焼炉及び第2燃焼炉の少なくとも2段階で構成し、第1燃焼炉の燃焼温度(炉内温度)を、主原料である脱墨フロスが自燃せず、脱墨フロス中に含有される有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)を燃焼させるに必要なだけの温度に留め、有機成分ガスの燃焼反応(酸化反応)のみを促進させることで、前記問題を解決できることを見出し、本板紙に内添される再生粒子を完成するに到ったものである。
【0080】
また、第1燃焼炉内において、主原料である脱墨フロスを燃焼させるために必要な酸素濃度0.2〜20%を確保する。これにより、燃焼が促進される炉内環境となるため、脱墨フロスの過剰燃焼が発生しやすくなる。
【0081】
さらに、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するため、熱風供給に加え、主原料となる脱墨フロスの含有水分を高める方策が有効であることを見出している。より具体的には、主原料となる脱墨フロスは、脱水後の水分が40〜90%、好ましくは40〜70%、より好ましくは45〜70%の高含水状態で、第1燃焼工程の第1燃焼炉内に供給されることが、脱墨フロスの過剰燃焼を防止するために適していることを知見した。すなわち、主原料である脱墨フロスを第1燃焼工程の第1燃焼炉内に高含水状態で供給することで、第1燃焼炉内において水分が蒸発し、これにより第1燃焼炉内の温度が低下する。この結果、脱墨フロスの自燃を抑え、発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)のみの燃焼を促進することができ、過剰な燃焼を抑制することができるものと考えられる。
【0082】
さらにまた、第1燃焼工程の後の燃焼工程である第2燃焼工程の第2燃焼炉内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することが好ましく、これにより、原料を均一に燃焼することができ、再生粒子の品質の均一化を図ることができる。
【0083】
すなわち、上述したように、第1燃焼工程の第1燃焼炉では、300〜500℃という低い燃焼温度で、主原料である脱墨フロスの燃焼処理を行い、原料中から、原料に含有される有機物を燃焼ガス化し、この燃焼ガスを燃焼(酸化)させて、均質な第1燃焼炉の燃焼物を得たのち、白色度を低下させる原因となる、残留する炭素分をできる限り燃焼させる必要がある。このため、原料を緩慢に燃焼させる必要があり、可能な限り均一な燃焼を連続的に実施するには、第2燃焼工程の第2燃焼炉内での原料搬送速度を適宜コントロールする方策が最も好適と考えられ、その手段として、リフターを用い、原料の搬送速度を調整することができることも見出した。しかしながら、公知のリフターは、一般的に鉄素材で製造されているため、鉄分がコンタミとして原料中に含有されてしまい、この結果、鉄の酸化により白色度が低下し、再生粒子の品質が低下するという問題を招く。そこで、ステンレス製のリフターを第2燃焼炉に設けることで、鉄の酸化問題を生じることなく、白色度の低下がないなど、均一な焼成品質を有する高品質の再生粒子を製造できる技術を見出した。
【0084】
なお、第2燃焼炉の構造としては、外熱キルン炉または内熱キルン炉のどちらも適宜採用することができる。しかしながら、外熱キルン炉はバーナーの直火が原料に直接晒されないため、原料の過剰燃焼を防止でき、第2燃焼炉の燃焼物を均一な焼成品質とすることができ、また高い白色度が得られるという利点がある。一方、内熱キルン炉は、内部に貼り付けた耐火物が断熱性を持つと同時に遠赤外線を放出し、少ない熱量で加温できる利点がある。従って、第2燃焼炉の構造については、これら諸条件を鑑みて外熱キルン炉あるいは内熱キルン炉のいずれかを適宜選択できるが、いずれの方式についてもリフターを設けることが最適である。
【0085】
より好適には、先の第1燃焼炉として内熱のものを用い、後の第2燃焼炉として外熱のものを用いることである。なお、これらの燃焼炉としては、従来から慣用的に用いられてきた燃焼炉は、ストーカー炉(固定床)、流動床炉、サイクロン炉、キルン炉等の種々のものを用いることができる。しかしながら、これらの燃焼炉としては、それぞれの燃焼炉で再生粒子の製造の検討を重ねたところ、次記の事項が明らかとなった。
【0086】
すなわち、ストーカー炉(固定床)については、脱墨フロスの燃焼度合い調整が困難であり、燃焼物が不均一である上に、灰分の多い脱墨フロスの燃焼では火格子間のクリアランスから落塵を生じるため適さない。火格子を通し燃焼物の下に空気を吹上げ燃焼させるため、炭酸カルシウムなどが飛灰となり排ガスとともに排ガス設備へ送られるため、歩留の低下が問題となる。
【0087】
流動床炉については、炉内の流動媒体に珪砂のような粒子状の流動媒体を使用するため、珪砂が再生粒子へ混入し品質の低下を招く問題を有するとともに、珪砂は本発明で使用する再生粒子より硬度が高く、均一に粉砕することが難しくなる。硅砂を流動層に混合して燃焼させた後、硅砂と燃焼物を分離し、硅砂は燃焼炉へ戻し燃焼物のみを取り出すが、燃焼物も硅砂と同程度の粒径が生じるため分離することが難しい。また、硅砂の上に再生粒子を浮遊した状態で燃焼させているため、燃焼の度合い調整が困難であり、得られた燃焼物の品質にばらつきが発生してしまう。さらに、燃焼物が、燃焼炉のストーカ(階段状)を、所定幅で通過しながら燃焼されるため、灰の攪拌が不十分となり、幅方向で燃焼にバラツキが発生する。また、珪砂は硬度が高いため、摩擦、衝突により燃焼物が微粉化され飛灰となって系外へ排出され歩留りが低下するという問題も発生する。
【0088】
サイクロン炉については、燃焼物が炉内を一瞬で通過してしまうため、燃焼物中の固定炭素を十分に燃焼できず、再生粒子の白色度の低下に繋がる。さらに、風送により、細かい粒子はサイクロンで分離されず排ガスと一緒に排ガス処理工程に回るため歩留が低下する。
【0089】
従って、以上の各炉の諸問題を考慮した結果、本発明に用いられる再生粒子の製造に用いられる燃焼炉としては、キルン炉、流動床炉、ストーカー炉、サイクロン炉、半乾留・負圧燃焼式炉等、公知の種々の燃焼炉を用いることができるが、特にキルン炉を用いることが好適である。さらに、外熱の第2燃焼炉として、重油等を熱源にした間接加熱方式の燃焼炉等の公知の燃焼方法を採用することもできる。
【0090】
さらに好適には、原料が脱水工程を経た後の、乾燥工程と燃焼工程とが一連の工程で行われる方法を用いる。この方法は、第1燃焼工程の第1燃焼炉として、燃焼時間(滞留時間)が30〜90分、好ましくは40〜80分、より好ましくは50〜70分で、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱(直接加熱)キルン炉を用いて、脱水工程を経た後の原料の乾燥及び第1燃焼を行い、また、第2燃焼工程の第2燃焼炉として、燃焼時間(滞留時間)が60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分で、好ましくは本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱(間接加熱)キルン炉、特に燃焼温度を容易に調整可能な外熱電気炉を用い、第1燃焼路で得られた燃焼物を再度燃焼する方法である。
【0091】
このように、第1燃焼炉として、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができる内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉の供給口から排出口に至るまで、緩やかに、かつ安定的に乾燥及び燃焼が進行し、燃焼物の微粉化を抑制することができる。また、第2燃焼炉として、乾燥及び燃焼を一つの炉で行うことができる外熱キルン炉を用いると、第2燃焼炉の端部から燃焼物を所定の滞留時間をもって、他端部の排出口から排出でき、さらに外熱により燃焼物に均一な熱が加わるので、燃焼が均一なものとなり、燃焼のバラツキを生じさせないものとなる。さらに、キルン炉の内壁の回転による摩擦によって燃焼物が緩やかに攪拌されるため、燃焼物の微粉化をより抑制することができる。その結果、最終的な燃焼物の品質及び形状が安定したものとなる。すなわち、上記のとおり、乾燥工程及び燃焼工程を、少なくとも2つの燃焼炉を用いて、好適には内熱キルン炉及び外熱キルン炉を用いて、2段階で行うことで、均一で、白色度の高い再生粒を得ることができる。
【0092】
なお、外熱キルン炉は、キルン炉の外側に加熱設備を設けた構成となるため、燃焼物を間接的に乾燥、燃焼させるためには多量の熱源が必要になる。従って、第1燃焼炉として外熱キルン炉を用いると、脱水工程を経た後の原料は、上述したように高含水状態であるため、乾燥・燃焼効率が低くなる。この結果、再生粒子の生産性が悪くなるとともに、温度の制御が難しくなるため、多大なエネルギーコストを必要とし、費用に対する効果が極めて低くなる。
【0093】
また、第2燃焼炉として内熱キルン炉を用いると、第1燃焼炉で得られた燃焼物の残カーボンを燃焼することにおいて、多量の希釈空気を投入しないと、燃焼熱を内熱キルン炉内に均一に伝えることが難しく、炉内温度の調整が難しくなる、燃焼物の過剰燃焼や、燃焼物の燃焼ムラが生じやすく、均一な焼成物を得にくく、再生粒子の白色度が低下するという問題が発生する。さらに、通常、内熱キルン炉の加熱に重油バーナーが用いられるが、重油燃焼残カーボンやイオウ酸化物等の白色度の低い粒子が発生し、得られる再生粒子の白色度の低下や、バラツキが生じ、均一な品質とすることが難しくなる。
【0094】
さらに、好適な第1燃焼炉および第2燃焼炉として用いられる内熱キルン炉または外熱キルン炉は、内部耐火物を、円周状でなく、六角形や八角形とすることで燃焼物を滑らせることなく持ち上げて攪拌することができる。しかしながら、現実には、キルン炉は円筒形であるため、燃焼物攪拌用のリフターを設けることが、原料の均一な燃焼を行い、品質の均一化を図ることができる点で最適である。これは、第1燃焼炉において、300〜500℃という低温でじっくり原料全体を燃焼することを意図することとも関係すると考えられる。
【0095】
次に、本板紙に用いる再生粒子の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
〔概要〕
図1は、本板紙の基紙に内添される再生粒子の、一実施形態に係る製造設備フロー図である。なお、以下に説明するように、この再生粒子の製造工程は、脱水工程、乾燥・燃焼工程、及び粉砕工程を有するが、この他、脱墨フロスの凝集工程又は造粒工程、さらには各工程間に分級工程等を設けてもよい。なお、本設備には、各種センサーが備わっており、被燃焼物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行っている。
【0096】
図示しない古紙パルプを製造する脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスは、種々の操作を経て、同じく図示しない公知の脱水設備により、水分率が40〜90%、好ましくは45〜70%、より好ましくは50〜60%の高含水状態となるように脱水される。さらに、かかる脱水後の原料10は、図示しない粉砕機(または解砕機)により40mm以下の粒子径となるように粉砕しておくことが望ましい。
【0097】
かかる原料10は、貯槽12から切り出されて、装入機15により、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である第1燃焼炉14の一方側から、第1燃焼炉14に装入される。また、第1燃焼炉14の一方側には排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。熱風が、排出チャンバー18を通り抜けて、第1燃焼炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、第1燃焼炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料10の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0098】
ここで、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%となるようにするのが望ましい。炉内温度は300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。熱風はバーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0099】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。排ガス中に含まれる燃焼物の微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再利用される。排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、第1燃焼炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。排ガスの処理は、排ガス中に含まれる有害物質の除去に有効である。
【0100】
第1燃焼炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉である第2燃焼炉32に装入される。この装入される燃焼物の粒径としては、40mm以下が好適である。第2燃焼炉32での熱源としては、第2燃焼炉32内の温度コントロールが容易で、長手方向の温度制御が容易な電気による調整が好適である。従って、電気ヒーターにより間接的に第1燃焼炉14から得られる燃焼物を再び燃焼させる外熱式の燃焼炉であることが望ましい。
【0101】
第2燃焼炉32においては、酸素濃度を調整する空気あるいは酸素の供給機構(図示せず)にて酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるように燃焼する。温度としては550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。また、第2燃焼炉32内での滞留時間は60分以上、好ましくは60〜240分、より好ましくは90〜150分、特に好ましくは120〜150分が、残カーボンを完全に燃焼させるに望ましい。
【0102】
燃焼が終了した原料である燃焼物は、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により選別され、湿式粉砕機等を用いた粉砕工程で目的の粒子径に調整された燃焼物が燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
【0103】
なお、脱墨フロスを原料として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の製紙スラッジを適宜混入させたものを原料とした燃焼物であってもよい。
【0104】
以上、再生粒子の製造工程の概要を説明したが、その詳細及び応用例を以下に説明する。
〔原料〕
古紙パルプ製造工程では、安定した品質の古紙パルプを連続的に生産する目的から、使用する古紙の選定、選別を行い、一定品質の古紙を使用する。そのため、古紙パルプ製造工程に持ち込まれる無機物の種類やその比率、量が基本的に一定になる。しかも、再生粒子の製造方法において未燃物の変動要因となるビニールやフィルムなどのプラスチック類が古紙中に含まれていた場合においても、これらの異物は脱墨フロスを得る脱墨工程に至る前段階で除去することができる。従って、脱墨フロスは、工場排水工程や製紙原料調成工程等、他の工程で発生する製紙スラッジと比べ、極めて安定した品質の再生粒子を製造するための原料となる。
【0105】
本明細書でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
【0106】
〔脱水工程〕
脱墨フロスの更なる脱水は、公知の脱水手段を適宜に使用できる。本形態における一例では、脱墨フロスは、例えばスクリーン等の脱水手段によって、脱墨フロスから水を分離して脱水する。スクリーンにおいて、水分を90〜97%に脱水した脱墨フロスは、例えばスクリュープレスに送られ、さらに所定の水分に脱水することが好適である。
【0107】
脱水後の原料10の水分率が70%を超えると、第1燃焼炉14における乾燥・燃焼処理温度の低下を招き、加熱のためのエネルギーロスが多大になるとともに、原料10の燃焼ムラが生じやすくなり均一な燃焼を進めにくくなる。さらに、排出される排ガス中の水分が多くなり、ダイオキシン対策における再燃焼処理効率の低下と、排ガス処理設備の負荷が大きくなる問題を有する。また、脱水後の原料10の水分率が40%未満と低いと、脱墨フロスの過剰燃焼の原因となる。
【0108】
以上の説明で明らかにしたように、脱墨フロスの脱水を多段工程で行い急激な脱水を避けると、無機物の流出が抑制でき脱墨フロスのフロックが硬くなりすぎるおそれがない。脱水処理においては、脱墨フロスを凝集させる凝集剤等の脱水効率を向上させる助剤を添加しても良いが、凝集剤には、鉄分を含まないものを使用することが好ましい。鉄分が含有されると、鉄分の酸化により再生粒子の白色度を下げる問題を引き起こす。
【0109】
脱墨フロスの脱水工程は、本板紙に使用する再生粒子の製造工程に隣接することが生産効率の面で好ましいが、予め古紙パルプ製造工程に隣接して設備を設け、脱水を行ったものを搬送することも可能であり、トラックやベルトコンベア等の搬送手段によって定量供給機まで搬送し、この定量供給機から乾燥・燃焼工程に供給する。
【0110】
かかる脱水後の原料10は、第1燃焼炉14に供給する操作において、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径を40mm以下、好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜20mmの範囲になるように調整される。さらには、平均粒子径が50mm以下の割合が70重量%以上になるように粉砕しておくことがより好ましい。脱墨フロス中に含まれる炭酸カルシウムの熱変化をきたさない燃焼処理を図るため、原料の平均粒子径が均一であることが好ましいところ、平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、一方で40mmを超えると、原料芯部まで均一に燃焼を図ることが困難になるという問題を有するためである。
【0111】
前記平均粒子径と粒子径の割合は、攪拌式の分散機で充分分散させた試料溶液を用いて測定した。各燃焼工程における粒子径は、JIS Z 8801−2:2000に基づき、金属製の板ふるいにて測定した。
【0112】
〔第1燃焼工程〕(乾燥、燃焼工程)
かかる原料10が貯槽12から切り出されて、第1燃焼炉に供給される。第1燃焼炉は本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉方式からなり、内熱キルン炉14の一方側から装入機15により装入される。内熱キルン炉加熱手段は、熱風発生炉にて生成された熱風を内熱キルン炉14の排出口側から、脱水物の流れと向流するように送り込まれる。内熱キルン炉14の一方側には、排ガスチャンバー16が、他方側には排出チャンバー18が設けられている。排出チャンバー18を貫通して、熱風が内熱キルン炉14の他方側から吹き込まれ、前記一方側から装入され、内熱キルン炉14の回転に伴って前記他方側に順次移送される原料の乾燥及び燃焼を行うようになっている。
【0113】
すなわち、本乾燥・燃焼工程は、脱水物を、本体が横置きで中心軸周りに回転する、内熱キルン炉によって乾燥・燃焼することにより、供給口から排出口に至るまで、緩やかに乾燥と有機分の燃焼が行え、燃焼物の微粉化が抑制され、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。また、乾燥を別工程に分割し吹き上げ式の乾燥機を入れることもできる。
【0114】
ここで、内熱キルン炉14内に吹き込む熱風は、酸素濃度が0.2〜20%、好ましくは1〜17%、より好ましくは7〜15%となるようにする。
【0115】
酸素濃度は、原料の燃焼(酸化)により消費されるため、燃焼の状況により酸素濃度に変動を生じる。酸素濃度が過度に低いと、十分な燃焼を図ることが困難である。燃焼炉内の酸素は、原料の燃焼等によって消費され酸素濃度が低下するが、燃焼させるための熱風発生装置等により、空気などの酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、酸素濃度を維持、調節可能であり、さらに酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼炉内の温度を細かく調節可能になり、原料をムラなく万遍に燃焼することができる。
【0116】
第1燃焼炉の炉内温度としては、300〜500℃、好ましくは400〜500℃、より好ましくは400〜450℃である。第1燃焼炉においては、容易に燃焼可能な有機物を緩やかに燃焼させ、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑える目的から燃焼温度300〜500℃の温度範囲で燃焼することが好ましい。過度に温度が低いと、有機物の燃焼が不十分であり、過度に温度が高いと過燃焼が生じ、炭酸カルシウムの分解による酸化カルシウムが生成し易くなる。さらに、炉内温度が500℃を超えると、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する燃焼物の粒揃えが進行するよりも早く乾燥・燃焼が局部的に進むため、粒子表面と内部の未燃率の差を少なく均一にすることが困難になる。
【0117】
熱風は、バーナー20Aを備える熱風発生炉20から吹き込まれる。
【0118】
排ガスチャンバー16からは、乾燥・燃焼に供した排ガスが再燃焼室22に送り込まれる。微粉末は、排ガスチャンバー16の下部から排出され、再び原料に配合され再利用される。
【0119】
排ガスは、再燃焼室22でバーナーにより再燃焼が行われ、予冷器24により予冷された後、熱交換器26を通し、誘引ファン28により煙突30から排出される。ここで、熱交換器26は外気を昇温した後に、熱風発生炉20に送られ、内熱キルン炉14から吹き込まれる熱風の用に供せられ、排ガスチャンバー16からの排ガスの熱を回収するようにしてある。
【0120】
第1燃焼炉は、脱墨フロス中に含有される燃焼容易な有機物を緩慢に燃焼させ、残カーボンの生成を抑制するため、好適には前記条件で30〜90分の滞留時間で燃焼させることが好ましい。有機物の燃焼と生産効率の面から40〜80分がより好ましく、さらには恒常的な品質を確保する面から50〜70分の範囲が特に好ましい。燃焼時間が30分未満では、十分な燃焼が行われず残カーボンの割合が多くなる。燃焼時間が90分を超えると、原料の過燃焼による炭酸カルシウムの熱分解が生じ、得られる再生粒子が極めて硬くなる。
【0121】
特に、次工程の第2燃焼工程内に供給する燃焼物の未燃率が2〜20質量%、好ましくは5〜17質量%、より好ましくは7〜12質量%となるように乾燥・燃焼する。
【0122】
未燃率を2〜20質量%にすることで、第2燃焼工程での燃焼を短時間に効率よく行うことができるとともに、外熱炉における安定した加熱により、硬度が低く白色度が80%以上、少なくとも70%以上の高白色度の燃焼物を得ることができる。未燃物が2質量%未満では、先の第1燃焼炉におけるエネルギーコストが高いものとなるとともに、燃焼物の硬度が比較的高くなっている場合があり、第2燃焼炉出口における白色度の低下等の品質低下を来たす場合がある。
【0123】
〔第2燃焼工程〕
内熱キルン炉14において乾燥及び燃焼処理を経た燃焼物は、移送流路を通して、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱ジャケット31を有する第2燃焼炉にあたる外熱キルン炉32に装入される。
【0124】
この燃焼炉では、燃焼物を、外熱で加温しながらキルン炉内壁に設けたリフターにより、原料の燃焼炉内での搬送を制御し、緩慢に燃焼させることで、さらに均一に未燃分を燃焼する。
【0125】
第2燃焼炉における燃焼においては、第1燃焼炉で燃焼しきれなかった残留有機物、例えば残カーボンを燃焼させるため、第1燃焼炉において供給される原料の粒子径よりも小さい粒子径に調整された燃焼物を用いることが好ましい。乾燥・燃焼工程後の燃焼物の粒揃えは、平均粒子径が10mm以下、好ましくは1〜8mm、より好ましくは1〜5mmとなるように調整する。
【0126】
第2燃焼炉入り口での平均粒子径が1mm未満では、過燃焼の危惧があり、平均粒子径が10mmを超える粒子径では、残カーボンの燃焼が困難であり、芯部まで燃焼が進まず得られる再生粒子の白色度が低下する問題を引き起こす。第2燃焼炉での安定生産を確保するためには、平均粒子径が1〜8mmの燃焼物が70%以上に成るように粒子径を調整することが好ましい。従って、得られる再生粒子の品質を均一にするという観点における実用化可能性に、有益である。さらに、本形態のように、分級を乾燥後とすると、小径な粒子の燃焼物を確実に除去することができ、また、処理効率も向上する。
【0127】
外熱キルン炉32での外熱源としては、外熱キルン炉32内の温度コントロールが容易で長手方向の温度制御が容易な電気加熱方式の電気炉が好適であり、したがって、電気ヒーターによる外熱キルン炉32であることが望ましい。
【0128】
外熱に電気を使用することにより、温度の調整を細かくかつ内部の温度を均一にコントロール可能になり、凝集体の形成、硬い・柔らかい等さまざまな性質を有する脱水物の燃焼度合いの制御と粒揃えを安定的に行うことができる。
【0129】
さらに電気炉は、電気ヒーターを炉の流れ方向に複数設けることで、任意に温度勾配を設けることが可能であると共に、燃焼物の温度を一定時間、一定温度保持することが可能であり、第1燃焼炉を経た燃焼物中の残留有機分、特に残カーボンを第2燃焼炉で炭酸カルシウムの分解を来たすことなく未燃分を限りなくゼロに近づけることができ、低いワイヤー摩耗度で、高白色度の再生粒子を得ることができる。
【0130】
外熱キルン炉32においては、酸素濃度が5〜20%、好ましくは10〜20%、より好ましくは10〜15%となるようにする。酸素濃度は、第2焼成炉に適宜の手段により酸素または空気投入量のコントロールによって行うことができる(具体的な形態の図示は省略してある)。外熱キルン炉内の酸素濃度が、5%未満では、燃焼困難な残カーボンの燃焼が進まない問題を生じる。一方、酸素濃度が20%を超えると、炭酸カルシウムの酸化が進み、酸化カルシウムに変化する傾向になる。このため、水に溶出しやすくなり、抄紙系内にスケール汚れが発生するおそれがある。
【0131】
第2燃焼炉の燃焼温度としては550〜780℃、好ましくは600〜750℃である。第2燃焼炉は先に述べたように、第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させる必要があるため、第1燃焼炉14よりも高温で燃焼させることが好ましい。従って、第2燃焼炉の燃焼温度が550℃未満では、十分に残留有機物の燃焼を図ることが困難であり、一方で、燃焼温度が780℃を超える場合は、燃焼物中の炭酸カルシウムの酸化が進行し、粒子が硬くなるという問題が生じる。
【0132】
また、滞留時間は60分〜240分、好ましくは90分〜150分、より好ましくは120分〜150分である。すなわち、燃焼物の安定生産を行うという観点から滞留時間を60分以上とし、一方で過燃焼の防止、生産の確保という観点から滞留時間を240分以下とすることが好適である。なお、特に残カーボンの燃焼は炭酸カルシウムの分解をできる限り生じさせない高温で、緩慢に燃焼させる必要があるが、滞留時間が60分未満では、残カーボンの燃焼には短時間で不十分であり、一方、240分を超えると、炭酸カルシウムが分解する問題が生じる。
【0133】
この外熱キルン炉32から排出される燃焼物の粒子径としては10mm以下、好ましくは平均粒子径が1〜8mm、より好ましくは1〜5mmに調整する。
【0134】
燃焼が終了した再生粒子は好適には凝集体(再生粒子凝集体)であり、冷却機34により冷却された後、振動篩機などの粒径選別機36により目的の粒子径のものが燃焼品サイロ38に一時貯留され、顔料や填料の用途先に仕向けられる。
【0135】
なお、脱墨フロスを原料10として用いた場合を例示したが、脱墨フロスを主原料に、抄紙工程における製紙スラッジ等の他製紙スラッジを適宜混入させたものの燃焼品であってもよい。
【0136】
〔粉砕工程〕
本実施形態に基づく再生粒子の製造方法においては、必要に応じ、さらに公知の分散・粉砕工程を設け、適宜必要な粒子径に微細粒化することで塗工用の顔料、内添用の填料として使用できる。
【0137】
一例では、燃焼後に得られた粒子は、ジェットミルや高速回転式ミル等の乾式粉砕機、あるいは、アトライター、サンドグラインダー、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて粉砕する。填料、顔料用途等への最適な粒子径については、本実施形態の再生粒子は、平均粒子径2〜5μmであるのが好ましい。
【0138】
これは、従来の炭酸カルシウムよりも平均粒子径が大きいため、嵩高効果が向上するためと考えられる。タルクやクレーは再生粒子より平均粒子径が大きく、嵩高効果が期待できるが、酸性抄紙となるために黄変化しやすくなり、実用的ではない。
【0139】
粉砕工程後における再生粒子の粒子径は、粒径分布測定装置(レーザー方式のマイクロトラック粒径分析計:日機装株式会社製)により体積平均粒子径を測定した。
【0140】
〔付帯工程〕
本製造設備において、より品質の安定化を求めるためには、再生粒子の粒子径を、各工程で均一に揃えるための分級を行うことが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
【0141】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱墨フロスを造粒することが好ましく、さらには、造粒物の粒子径を均一に揃えるための分級を行うことがより好ましく、粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0142】
本製造方法の原料10としては、再生粒子の原料と成り得るもの以外は予め除去しておくことが好ましい。すなわち、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパーやスクリーン、クリーナー等で、砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化することにより微粒子の白色度を低下させる起因物質となる。従って、鉄分の混入を避けるために、鉄分を選択的に取り除くことが推奨される。このため、各工程を鉄以外の素材で設計またはライニングし、摩滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0143】
さらに、本実施形態に基づく再生粒子の製造方法による再生粒子は、X線マイクロアナライザーによる微細粒子の元素分析において、カルシウム、シリカ及びアルミニウムの比率が酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35、好ましくは40〜82:9〜30:9〜30、より好ましくは60〜82:9〜20:9〜20の質量割合となるように含有させる。
【0144】
カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含ませることで、比重が軽く、過度の水溶液吸収を抑えることができるため、脱水工程における脱水性が良好であり、また乾燥・燃焼工程における未燃物の割合や、燃焼工程における焼結による過度の硬化を生じるおそれを低減できる。
【0145】
本実施形態の割合に調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整することが本筋ではあるが、乾燥・燃焼工程、燃焼工程において、出所が明確な塗工フロスや調成工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる手段や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる手段にて調整することも可能である。
【0146】
例えば、脱墨フロスを主原料に、再生粒子中のカルシウムの調整には中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、シリカの調整には不透明度向上剤としてホワイトカーボンが多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調整には酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジや、クレーの使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを用いることができる。
【0147】
また、上述したような製造方法で得られる再生粒子は、示差熱熱重量同時測定装置による示差熱分析において、700℃近傍で生じる炭酸カルシウムの分解(酸化カルシウムへの変化)における減量(率)が50%以上となるように、本実施形態に基づいて脱墨フロスを燃焼制御することで、より正確にカルシウム成分の酸化の進行を抑制し、粒子が硬くなることを防止することができるので好ましい。
〔第2燃焼炉(外熱キルン炉)のリフターについて〕
先に採用理由と共に述べたように、第2燃焼炉(外熱キルン炉)32内の内壁に、その一端側から他端側に向けて、螺旋状リフター及び/又は軸心と平行な平行リフターを配設することで、原料10の均一な燃焼と、品質の均一化を図ることができる。
【0148】
この第2燃焼炉(外熱キルン炉)32には、図2(a)にその内部構造を、図2(b)にその内面の展開図で示すような公知の回転式燃焼装置が好適に用いられる。
【0149】
すなわち、この第2燃焼炉(外熱キルン炉)32は、回転駆動手段(図示せず)にて回転駆動可能に構成されるとともに、一端部に投入部32aが、他端部に排出部(図示せず)が設けられ、他端には筒状本体32b内に燃焼ガスを導入する燃焼バーナー20A(図示せず)が配設されている。筒状本体32bの投入部32a側における耐火壁32cの内面には、筒状本体32bの軸心に対して45°〜70°の傾斜角で傾斜した複数条(図示例では8条)の螺旋状リフター32dがブラケット32eを介して等間隔に突設されており、この他端側には、筒状本体32bの軸心に対して平行な適当な長さの平行リフター32fが周方向に等間隔置きに複数(図示例では8つ)、軸心方向に複数列(図示例では8列)ブラケット32gを介して突設されている。
【0150】
なお、耐火壁32cは、耐火キャスタブルあるいは耐火レンガで構成することが好ましく、また、螺旋状リフター32dと平行リフター32fを、例えば耐熱性を有するステンレス鋼板などの金属製とすることにより、比較的温度が低いので高価な耐熱材料を用いなくても十分に耐久性と強度を確保できるとともに、耐火物製のリフターなどに比して伝熱効率が高いので、一層熱効率を向上することができる。特に、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとは、上記のとおり、被燃焼物の投入部32a側から排出側に向けてこの順で配設するのが望ましい。
【0151】
上記のとおり構成されたこの第2燃焼炉(外熱キルン炉)32によれば、投入部32a側から投入された内容物が、まず螺旋状リフター32dにて他端側に向けて適正量ずつ送り込まれながら持ち上げられて落下する間に、原料10に起因する有機成分がガス化し発生する燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触し、さらに引き続いて平行リフター32fにて持ち上げられて落下する動作を繰り返すことで燃焼ガス(可燃焼ガス)と効率的に接触するため、熱交換効率よく内容物を燃焼させることができる。特に、螺旋状リフター32dにて平行リフター32fに送り込まれる内容物の量がコントロールされることで、平行リフター32f部分における内容物の持ち上げ・落下が適正に行われ、内容物の燃焼を均一かつ効率的に行うことができる。また、耐火物の損傷のおそれがないことから、焼成物の純度の低下がなく、その生産能力も向上させることができる。なお、上記の実施形態では、螺旋状リフター32dと平行リフター32fとを並設したが、必要に応じ、いずれか一方のみを設けることでもよい。
【0152】
以上のようにして得られた再生粒子は白色度が75〜85%、好ましくは80〜85%と高く、また白色度の変動が少ない。また、以上に記載の製造方法によって得られた再生粒子を本塗工板紙の基紙に用いると、従来公知の再生粒子および市販填料である炭酸カルシウムを用いた場合と比較して、白色度が高く、嵩高であり、印刷時の紙剥けがない本塗工板紙を得ることができる。
【0153】
なお、上述した製造方法によって得られた再生粒子は、平均粒子径が従来既知の炭酸カルシウムの平均粒子径(1〜2μm)より大きく、再生粒子が繊維間に定着することで嵩高効果が向上し、また、再生粒子のアルミニウムがカチオン性であるために繊維への定着性が強く、炭酸カルシウムよりも配合量を低減できるため、灰分率を下げることができ、嵩高効果及び表面強度が向上し、その結果、印刷時の紙剥けを低減できるものと考えられている。
【0154】
本多層抄き塗工板紙は、この再生粒子から持ち込まれる無機物を合わせた全無機物の内、酸化アルミニウムの含有率が10〜35質量%、好ましくは15〜25質量%とすることが望ましい。酸化アルミニウムの含有量が10%未満の場合、定着性の向上効果が少なくなる。一方で酸化アルミニウムの含有率が35%を超えると、カチオン性が強くなりすぎて抄紙薬品と反応し、凝集物が発生したり、ピッチなどの黒色異物が発生することがある。
【0155】
なお、本実施形態では、上記の如き再生粒子を単独で使用することもできるし、かかる再生粒子と内添用填料として通常使用される重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料を併用することもできる。もちろん、これらの2種以上と併用することもできる。
【0156】
再生粒子の基紙中の(基紙に対する)含有率としては、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜15質量%であることが望ましい。含有率が20質量%を超えると密度が低下し、嵩高にならない。含有率が5質量%未満となると、白色度が低下する。
【0157】
本実施形態における多層抄き塗工板紙に用いる原料パルプとしては、LBKPを主原料とし、全パルプ中に機械パルプを30〜50質量%配合する。機械パルプは嵩高であるが、白色度が低い。一方でLBPKは白色度は高いが嵩が低い。白色度と嵩のバランスをとるためにはLBPKを50質量%以上、機械パルプを30〜50質量%配合することが最適である。
【0158】
LBPKの製造方法については特に制限はなく、従来既知の手段を用いることができる。
【0159】
また、機械パルプには特に制限はないが、広葉樹よりも針葉樹の方が嵩が出るため、好適である。機械パルプの製造方法についても特に制限はなく、機械的に砕木される砕木パルプ(GP)、リファイナーパルプ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ化法のどちらでもかまわない。
【0160】
また、機械パルプの漂白方法についても特に制限はなく、従来既知の手段を用いることができる。その他に従来既知の古紙パルプ、NBPKなどを配合しても良い。
【0161】
古紙パルプの原料古紙としては、新聞古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、OA古紙等が挙げられる。
【0162】
また、より嵩高とするため、従来既知の嵩高剤を使用することもできる。嵩高剤の種類や配合量は特に制限されないが、配合量を増やすと表面強度が低下し、印刷時に紙剥けが発生することがあるため、必要最低限の量に留めることが望ましい。
【0163】
また、紙料スラリーに添加する添加剤としては公知のものを用いることができ、例えば紙力増強剤としては澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体等が、サイズ剤としてはロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水こはく酸)、中性ロジン等が、また歩留り向上剤としてポリアクリルアミド及び共重合体等が挙げられる。更に必要に応じて染料、顔料等の色料を添加してもよい。
【0164】
また、填料をパルプに定着させるために従来既知の凝集剤、凝結剤、硫酸バンドを配合することができ、特に限定されるものではない。なお、白色度や見た目の白さを向上させるため、従来既知の蛍光染料や着色染料、着色顔料についても任意に選ぶことができる。
【実施例】
【0165】
本発明に係る多層抄き塗工板紙の効果を確認するため、以下のような各種の試料を作製し、これらの各試料に対する品質を評価する試験を行った。なお、本実施例において、配合、濃度等を示す数値は、固形分又は有効成分の質量基準の数値である。また、本実施例で示すパルプ・薬品等は一例にすぎないので、本発明はこれらの実施例によって制限を受けるものではなく、適宜選択可能であることはいうまでもない。
【0166】
本発明に係る45種類の多層抄き塗工板紙(これを「実施例1」ないし「実施例45」とする。)と、これらの実施例1ないし実施例45と比較検討するために、2種類の多層抄き塗工板紙(これを「比較例1」及び「比較例2」とする。)を、表1及び表2に示すような構成で作製した。また、参考例として、王子製紙株式会社の市販品(参考例1)、北越製紙株式会社の市販品(参考例2)、レンゴー株式会社の市販品(参考例3)、及び大王製紙株式会社の市販品(参考例4)を用いた。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
[実施例1]
以下の原料を用いて、下記の製造法に従い、表面層、表下層、中層、裏下層、裏面層の5層から成る基紙を有する多層抄き塗工板紙を得た。
<基紙>
・表面層
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)60質量%(dry)と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)40質量%(dry)とを配合した後に、ダブルディスクレファイナーにより、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)を400ccに調整した。この原料パルプ中に、無機顔料として、タルク(日本タルク株式会社製、商品名「ナノエースD1000」、平均粒子径1.0μm)を、原料パルプの重量に対して固形分で8質量%添加し、さらに、パルプからの持込灰分も含め、灰分が17%になるように填料として再生粒子を添加して)、表面層用の原料パルプスラリーを得た。
・表下層、中層、及び裏下層
上白古紙と中白古紙とを1:1の重量比で配合したものを主成分とした原料パルプスラリーを用いた。
・裏面層
製紙スラッジ、排水スカム等から形成され、平均繊維長が0.5mmである微細繊維パルプを20質量%配合し、その他は地券古紙を80質量%配合して裏面層用の原料パルプスラリーを得た。
これらの原料パルプスラリーを用い、円網抄紙機にて、表面層、表下層、中層、裏下層及び裏面層の紙層を、ジェットワイヤー比が表1に示すようになるように抄き合わせて、坪量が255g/mである5層抄きの基紙を得た。なお、この基紙は、湿紙状態の水分率を55%に調整し、鏡面仕上げされたヤンキ−ドライヤー表面に圧接しながら乾燥した。さらに、グロスカレンダーの加圧条件を変え、基紙の紙密度を0.98g/cmに調整した。
【0170】
<表面塗工層用塗工液>
次に、樹脂粒子として、粒子径が300nmである真球状のプラスチックピグメント(日本ゼオン株式会社製、商品名「V1004」)を9質量%配合し、また、無機顔料として、クレー(CADAM社製株式会社製、商品名「アマゾンプラスJPG」)を41重量部、炭酸カルシウム(オミヤ社製株式会社製、商品名「ハイドロカーブ90」、湿式重質炭酸カルシウム)を50重量部配合し、バインダーとして、スチレンブタジエンラテックス(SBR)(日本A&L株式会社製、商品名「スマーテックPA−6082(50%品)」)を9重量部配合して、表面塗工層用塗工液を作製した。なお、各配合量の数値は、乾燥状態における数値である。
【0171】
<裏面塗工層用塗工液>
水溶性樹脂として、ポリビニルアルコール(PVA)(日本酢ビポバール株式会社製、商品名「JF−17」)を固形分換算で3質量%配合し、また、グラフト化澱粉(三井化学株式会社製、商品名「ペトロコートC18」)を固形分換算で5質量%配合し、さらに、架橋剤として、炭酸ジルコニウムアンモニウムを含有するジルコニウム系のもの(日本軽金属株式会社製、商品名「ベイコート20(50%品)」)を固形分換算で1.5質量%配合して、裏面塗工層用塗工液を作製した。
【0172】
<表面塗工層および裏面塗工層の形成>
上記表面塗工層用塗工液を、バーコーターにて基紙の表面層上に11g/mの塗工量で塗工して表面塗工層を形成し、また、上記裏面塗工層用塗工液を、バーコーターにて基紙の裏面層上に1.5g/m塗工して裏面塗工層を形成し、多層抄き塗工板紙(実施例1)を得た。
【0173】
また、実施例2〜45、及び比較例1〜2を、表1及び表2に示す条件以外は実施例1と同様にして、各試料である多層抄き塗工板紙を作製した。なお、参考例1〜4は市販品および当社一般品を用いて評価を行った。
【0174】
なお、表1中の「平均繊維長(mm)」とは、裏面層の原料パルプに用いられた微細繊維の平均繊維長であり、JISP8220:1998「パルプ−離解方法」に記載の方法に準拠して離解した基紙について、カヤニ平均繊維長測定器(FS−100)で測定した重量平均繊維長の値である。
【0175】
また、「離解フリーネス(cc)」とは、各試料である多層抄き塗工板紙の基紙を10cm×10cm大にカットしたサンプルを作成し、このサンプルを水温20℃の水に3分間浸漬させ、その後、前記サンプルを手揉みしながら裏面層を剥離する。その後、剥離した裏面層を、JIS−P8220(1998)に準じて離解した後、JIS−P8121(1995)に準じて測定したフリーネスの値である。
【0176】
さらにまた、「紙密度(g/cm)」とは、各試料である多層抄き塗工板紙の基紙の坪量と、JIS−P8118(1998)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した基紙の紙厚から算出した値である。
【0177】
また、表2中の、裏面塗工層用塗工液に水溶性樹脂として添加されるカチオン澱粉としては、日本食品加工株式会社製の商品名「ネオタック53」を用い、燐酸エステル化澱粉としては、日本食品加工株式会社製の商品名「MS4600」を用い、カルボキシル澱粉としては、第一工業製薬株式会社製の商品名「SGセロゲンPR」を用い、ヒドロキシプロピル澱粉としては、日成共益株式会社製の商品名「PenfordGum280」を用い、酸化澱粉としては、日本食品加工株式会社製の商品名「MS3800」を用い、PVAとしては、日本酢ビポバール株式会社製の商品名「JF−17」を用い、ポリアクリルアミド(PAM)としては、ハリマ化成株式会社製の商品名「ハリコートG−50(30%品)」を用いた。また、エポキシ系の架橋剤として、日本PMC株式会社製の商品名「WS4024(25%品)」を用いた。
【0178】
これらの全実施例、比較例、及び参考例について品質評価を行った結果は、表3に示すとおりであった。なお、この品質評価試験は、JIS−P8111に準拠して温度23±2℃、湿度50±2%の環境条件で行った。
【0179】
【表3】

【0180】
なお、表3中の「灰分(%)」とは、JIS−P8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼方法」に準じて測定した値である。
【0181】
また、「圧縮強度(横)(N)」とは、JIS−P8126(2005)に記載の「紙及び板紙−圧縮強さ試験方法−リングクラッシュ法」に準じて測定した横方向の圧縮強度の値である。
【0182】
「ワックスピック(裏)(A)」とは、JAPAN TAPPI No.1(2000)に記載の「紙及び板紙−ワックスによる表面強さ試験方法」に準じて測定した、裏面塗工層側のワックスピック強度(A)の値である。
【0183】
「耐折強度(横)(回)」とは、JIS−P8115(2001)に記載の「紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法」に準じて測定した横方向の耐折回数である。
【0184】
「インク抜け」とは、グラビア印刷機にサカタインクス株式会社製のグラビアインクNT−2000を使用し、100線、50μ深度のグラビアロールを用いて、各試料である多層抄き塗工板紙の表面塗工層上にベタ印刷を行った後、A4サイズの大きさの各試料の表面塗工層上に発生した直径0.3mm以上のピンホールの数を肉眼で確認し、評価したものである。なお、その評価基準は下記の通りとした。
◎:ピンホールの数が5個以下である。
○:ピンホールの数が6個〜10個である。
△:ピンホールの数が11個〜20個である。
×:ピンホールの数が20個を超えている。
【0185】
「耐罫線割れ適性」とは、インク抜けと同様の印刷を行った各試料の多層抄き塗工板紙をA4サイズ(縦目)に断裁し、長辺に対して2つ折りにし、プレス圧2.0kg/mで5分間プレス後、折り目部分のひび割れを肉眼で確認し、評価したものである。なお、その評価基準は下記の通りとした。
◎:ひび割れが発生していない。
○:折り目長さに対して、総全長が15%未満であるひび割れが発生する。
△:折り目長さに対して、総全長が15%以上30%未満であるひび割れが発生する。
×:折り目長さに対して、総全長が30%以上であるひび割れが発生する。
【0186】
「RIピック」とは、JIS−P8129に規定されているIGT印刷適性試験機に用いる標準タックグレードインクを、熊谷理機工業株式会社製KRK万能印刷適性試験機を用いて多層抄き塗工板紙の塗工層に印刷した後、RI印刷適性試験によって評価したものである。なお、評価基準は下記の通りとした。
◎:表面の毛羽立ち又は紙むけが認められない。
○:0.5mm以上の毛羽立ち又は紙むけが2箇所以下である。
△:0.5mm以上の毛羽立ち又は紙むけが3〜5箇所である。
×:0.5mm以上の毛羽立ち、紙むけが6箇所以上である。
【0187】
「スタンプ印刷適性」とは、市販の油性および水性のスタンプ、シャチハタスタンプ、朱肉印を用いて、捺印後3秒後にその表面をふき取った際の擦れ状態を目視確認し、評価したものである。なお、その評価基準は下記の通りとした。
◎:インクの擦れ汚れがまったく発生していない。
○:殆どインクの擦れ汚れが発生していない。
△:インクの擦れ汚れが発生している。
×:インクが擦り取られてしまう。
【0188】
「米坪(g/m)」とは、各試料である多層抄き塗工板紙の基紙の全体の坪量で、JIS−P8124(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した値である。
【0189】
表3から、実施例1〜45に係る多層抄き塗工板紙、すなわち本発明に係る多層抄き塗工板紙であると、従来の板紙である参考例の10〜15%、低米坪・軽量化させることができることが分かる。また、本発明に係る多層抄き塗工板紙は、このように低米坪・軽量化しても、段ボール、紙器等の加工適性を満足させることができると共に、板紙を青果物用途等の段ボールケースに使用する場合の、水性・油性インクの両方に適したスタンプ印刷適性を満足させることができるということが分かる。

【符号の説明】
【0190】
10 材料
12 貯層
14 第1燃焼炉(内熱キルン炉)
15 装入機
16 排ガスチャンバー
18 排出チャンバー
20 熱風発生炉
22 再燃焼室
24 予冷器
26 熱交換器
31 外熱ジャケット
32 第2燃焼炉(外熱キルン炉)
32b 筒状本体
32c 耐火壁
32d 螺旋状リフター
32f 平行リフター
34 冷却器
36 粒径選別機
38 燃焼炉サイロ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面層及び裏面層から成る基紙と、前記表面層上に、樹脂粒子を含有する表面塗工層用塗工液を塗工して形成された表面塗工層とを具備して成る多層抄き塗工板紙であって、
前記裏面層は、該裏面層を剥離してJIS−P8220(1998)に準じて得た離解パルプのJIS−P8121(1995)に準じて測定した離解フリーネスが260cc〜350ccであり、
また、前記離解パルプは、繊維長分布の平均繊維長が0.2〜0.6mmの微細繊維を含有し、
さらにまた、前記裏面層の表面上に、水溶性樹脂を含有する裏面塗工層用塗工液を0.5〜2.0g/m塗布して裏面塗工層を形成したことを特徴とする多層抄き塗工板紙。
【請求項2】
前記水溶性樹脂が、PVA及び/又はグラフト化澱粉であり、かつコールターカウンター法により測定した粒子径が0.5〜1.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の多層抄き塗工板紙。
【請求項3】
前記裏面塗工層用塗工液には、ジルコニウム塩が0.5〜5重量%配合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層抄き塗工板紙。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−236141(P2010−236141A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85817(P2009−85817)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】