説明

多層構造を有する軟骨様構造および骨軟骨代替物、ならびにその使用

本発明は、コラーゲンを含有する有機基質からなる最上層(2)と、ヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンを含有する複合材料マトリックスからなる1以上の下層(3、4、・・・10)とを含む多層構造(1)に関する。また、本発明は、前記多層構造(1)を含む軟骨代替物と、前記多層構造(1)を含む骨軟骨代替物に関する。さらに、本発明は、軟骨異常および骨軟骨異常の治療または、軟骨組織および/または軟骨下骨組織の新規形成のための、前記軟骨代替物および前記骨軟骨代替物の作製への、前記多層構造(1)の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲンを含有する有機基質からなる最上層と、ヒドロキシアパタイト及びコラーゲンを含有する複合材料マトリックスからなる1以上の下層とを有する多層構造に関する。さらに、本発明は、前記多層構造を有する軟骨代替物および前記多層構造を有する骨軟骨代替物に関する。また、本発明は、関節軟骨異常及び骨軟骨異常の治療、または軟骨組織および/または軟骨下骨組織の新規形成用の前記軟骨代替物および前記骨軟骨代替物の作製への前記多層構造の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関節軟骨(軟骨組織)は、高度に系統化された非血管構造である複合体により形成され、神経終末が含まれない粘弾性結合組織であることが知られている。
【0003】
関節軟骨は、関節付近の軟骨下骨板の外側にある。
【0004】
軟骨組織は、骨組織とともに、高い機械的性質を有する支持骨格組織または結合組織に属している。
【0005】
軟骨組織は、特定の機械的伸縮特性が高く、人体の通常の運動活動中に関節面にかかる負荷による摩擦を継続的に低減することができる。しかも、軟骨組織は軟骨下骨にかかる機械的ストレスのピークを消散させることも可能である。
【0006】
細胞の軟骨成分を囲む結合組織、すなわち、軟骨細胞(軟骨全体の2体積%)は、コラーゲン、プロテオグリカンおよび糖タンパク質からなる細胞外マトリックス/格子に浸されている。たとえば、結合組織の2〜40%に、約50〜60%のコラーゲン、25〜35%のプロテオグリカンおよび10〜15%の糖タンパク質が含まれている。
【0007】
コラーゲン分子は、組織全体に均一に分散しており、その形状や機械的強度に関与している。
【0008】
プロテオグリカンおよび糖タンパク質は、基質内に水分を閉じ込めることによりコラーゲンに結合する。
【0009】
外傷性疾患、炎症性疾患および変性疾患は、関節軟骨に大きなダメージを生じ、無視できない確率で、慢性関節疾患の原因となる可能性がある。ダメージを受けた軟骨組織は、特に大きなダメージを受けた場合、人体構造上血管に乏しい部位であることに加え、軟骨細胞の複製能力が弱いために、自己修復能力に乏しい。軟骨の自己修復プロセスの結果は、通常線維組織の形成であることが多く、機械的な性能と生理的特徴の観点からは、硝子軟骨とは比べものにならない。したがって、軟骨の劣化プロセスはほとんどの場合、無症状の現象ではあるものの、粘弾性と機械性のバランスの変化が、関節機能を傷つけ、痛みと深刻な病理的結果を発生させる可能性がある。
【0010】
軟骨層の完全な破壊により、骨が関節からの機械的なストレスに直接さらされるようになった軟骨下骨構造の損傷の場合、事態はさらに複雑な方向に発展する。
【0011】
要約すると、ほぼ常に不可逆的な退行変性過程を誘因する病態として、アラインメントの不良(内反状態と外反状態)、虚血壊死、変形性関節症および関節リウマチなどがほんの一例として挙げられる。
【0012】
現在利用されている既知の軟骨組織修復のための外科手術技法は、言うまでもなく、サイズおよび損傷の程度に応じて適用される。
【0013】
既知技法のうちいくつかを以下にまとめた。
【0014】
モザイク形成外科手術と呼ばれる技法は、負荷の対象ではない健康な関節の軟骨域に由来する複数の骨軟骨のシリンダーの移植からなり、一般に関節鏡検査により行われる。こうした診療はドナー側に副作用を生じる可能性があるため、モザイク形成外科手術は、サイズの小さな骨軟骨異常にのみ適している。
【0015】
ドナーからの骨軟骨組織の移植に関する技法。この技法には、ウィルス感染の危険性、拒絶反応および移植バンクからの組織提供が限られているといった問題がある。
【0016】
負荷の対象ではない健康な軟骨域から採取され、in vitroで培養、骨膜移植片またはポリマー由来の不透過性膜の下に再注射される軟骨細胞の自家移植に関わる技法。
【0017】
培養軟骨細胞を合成ポリマーまたは天然ポリマーに基づく3次元足場材を通して運搬させる再生医療技法。
【0018】
これまでに、最後の2つの技法によって、ひざの関節区域に存在する軟骨構造の形状・機能について、十分に満足できる結果が得られている。
【0019】
骨軟骨不良の修復は、しばしば外科医にとって解決の難しい病態の一つとされるが、特に、患者が若年の場合、結果はさらに複雑になってくる。こうした場合、軟骨層の復元に加えて、軟骨下骨構造の再構築が重要となる。
【0020】
サイズの大きな骨軟骨異常の治療には、骨軟骨区域全体を模しやすい3次元足場材の使用が提案されてきた。前記足場材は、組成、気孔率、構造および機械的特性が明瞭で、複雑な構造を有する。外表面は一般に、目視可能なサイズの気孔を有するポリマー層からなる。一方、より内部の層は、鉱物成分を包含するポリマーマトリックスを有する複合材料で構成される(非特許文献1)。
【0021】
したがって、従来技術で使用される医療用具がもつ欠点のない、軟骨代替物および骨軟骨代替物として使用される医療用具が、依然求められている。
【0022】
特に、損傷および/または退化している軟骨内または軟骨下に設置が可能な医療用具が求められている。
【0023】
本発明の第一の目的は、いかなる炎症反応も発生させず、かつ人体の免疫反応を誘引する能力を排除させないような、高い生体適合性を有する軟骨代替物および骨軟骨代替物の提供である。
【0024】
本発明の目的の一つは、ヒドロキシアパタイトのナノサイズの結晶(5〜30nm)が核となっている、コラーゲン線維を含有する複合材料マトリックス、またはその他の天然および/または合成ポリマーなどからなる新規代替物の提供である。
【0025】
本発明の目的の一つは、軟骨区域および軟骨下骨区域の双方を模倣可能な多層構造の提供である。
【0026】
本発明の目的の一つは、生体模倣構造の提供である。
【0027】
本発明の目的の一つは、骨誘導構造の提供である。
【0028】
本発明の目的の一つは、分解可能かつ生体再吸収性があり(上記のコラーゲン部分全てに関連して)、しかも骨同化可能な(上記のヒドロキシアパタイトの無機部分全てに関連して)構造の提供である。
【0029】
本発明の目的の一つは、組織の誘導再生の概念(非特許文献2)に基づき、in situ結合および副軟骨区域由来の未分化間葉細胞の分化のためにサポート(足場材)として機能可能な医療用具の提供である。
【0030】
本発明の目的の一つは、骨髄血由来の濃縮物、濃縮血小板(PRP)、成長因子、または一般に指向性および細胞分化を促進可能なTGF、EGF、BMPなどの因子に、生体外で取り込まれ得る医療用具の提供である。
【0031】
本発明の目的の一つは、未分化の間葉細胞に生体外で取り込まれ得る医療用具、または骨芽細胞および軟骨細胞の母細胞の複製および/または分化に必要とされる時間培養液に浸した医療用具の提供である。
【0032】
本発明の目的の一つは、サイズが適合し、軟骨性または骨軟骨の損傷部位に適している;たとえば、抗炎症性コルチコステロイド、FANS、免疫抑制剤、抗生物質、抗芽球化、抗増殖剤および抗ウィルス剤などの薬理的活性物質を取り込みうる;関節鏡視下技術が適用されうる;吸収性および非吸収性の縫合糸や生体由来および合成の外科用接着剤により固定されうる、新規骨軟骨および軟骨性の移植片/代替物の提供である。
【非特許文献1】Sherwood J et al.(2002)Biomaterials、23 (24 )、4739
【非特許文献2】Baran ET et al.(2004)、J Master Sci Mater Med. Febbraio、15(2): 161- 5
【発明の開示】
【0033】
本出願人は、添付の独立請求項に記載の要件を満たす、多層構造、ならびに前記多層構造を含む軟骨および骨軟骨代替物を発明し、上記の目的と、以下の詳細な説明から明らかな他の目的とを達成した。
【0034】
本発明の目的は、コラーゲンを含有する有機基質からなる最上層と、ヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンを含有する複合材料マトリックスからなる1以上の下層とを含む多層構造である。
【0035】
本発明の別の目的は、前記多層構造を有する軟骨代替物である。
【0036】
本発明の別の目的は、前記多層構造を有する骨軟骨代替物である。
【0037】
本発明の別の目的は、関節軟骨異常および骨軟骨異常の治療用の前記軟骨代替物および前記骨軟骨代替物の作製への前記多層構造の使用である。
【0038】
また、本発明の別の目的は、軟骨組織の新規形成および/または軟骨下骨組織の形成への前記多層構造の使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の他の要件および利点を、実施形態を基に詳しく説明するが、添付の図面に示される、軟骨代替物および骨軟骨代替物の好ましいが非限定的な実施形態の記載に限定されない:
図1は、第一の実施形態に係る多層構造の透視図を、
図2は、第二の実施形態に係る多層構造の透視図を、
図3は、第二の実施形態に係る多層構造の透視図を示している。
【0040】
本発明の主題である多層構造1は、上表面2aと下表面2bを示す最上層2を含む。
【0041】
図1に示すように、前記多層構造1はさらに、少なくとも前記上層2と接合する下層3を含む。
【0042】
特に、下層3は、前記上層2の前記下表面2bと接合する上表面3aと、前記上表面3aに対向する下表面3bとを含む。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態においては、図2に示すように、2枚の下層3、4が想定されうる。この場合、上層2に近接する下層3には、それぞれ、上層2の前記下表面2bと接合する上表面3aと、下層4の上表面4aと接合する下表面3bとがある。
【0044】
有利には、この場合、下層3は、前記上層2および前記下層4との間に配置される中間層となる。
【0045】
本発明の範囲内においては、複数の下層を有する多層構造1は、たとえば、2以上10以下の下層を有する。
【0046】
たとえば、図3に示すように、多層構造1には、各上表面が隣接する層の下表面とそれぞれ接合する4枚の下層3、4、5および6がある可能性がある。
【0047】
上層2はコラーゲンを含有する有機基質からなる。
【0048】
下層3、4、5および6は、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトを含有する複合材料マトリックスからなる。
【0049】
本発明の明細書および請求の範囲においては、コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトの量は重量%で示す。
【0050】
好ましくは、コラーゲンは、下層に99〜1%の割合で存在する。
【0051】
あるいは、ヒドロキシアパタイトは、下層に1〜99%の割合で存在する。
【0052】
図1に示される実施形態では、下層3は、コラーゲンを95〜75%、ヒドロキシアパタイトを5〜25%含有する複合材料マトリックスからなる。
【0053】
図2に示される実施形態では、下層3は、コラーゲンを95〜75%、ヒドロキシアパタイトを5〜25%含有する複合材料マトリックスからなる。一方、下層4は、コラーゲンを75〜45%、ヒドロキシアパタイトを25〜55%含有する複合材料マトリックスからなる。
【0054】
図3に示される実施形態では、下層4は、コラーゲンを95〜75%、ヒドロキシアパタイトを5〜25%含有する複合材料マトリックスからなり、少なくとも下層5はコラーゲンを75〜45%、ヒドロキシアパタイトを25〜55%含有する複合材料マトリックス、少なくとも下層6は、コラーゲンを45〜25%、ヒドロキシアパタイトを55〜75%含有する複合材料マトリックスからなる。
【0055】
多層構造1は、コラーゲンを95〜70%含有する下層3の100%のコラーゲンが存在する上層2から、最下層、たとえばコラーゲン量が10%未満となる下層10に至るまで広がる、コラーゲン勾配の存在を特徴とする。ヒドロキシアパタイト量は、コラーゲン量と相関していることは明白である。
【0056】
たとえば、上層2の厚さは、1〜10mm、好ましくは2〜8mm、さらにより好ましくは3〜5mmである。
【0057】
下層3〜10は同一あるいは異なる厚さを有する場合があり、それらの間には特に規定はない。下層の厚さは、1〜10mmの範囲内、好ましくは2〜8mm、さらにより好ましくは3〜5mmである。
【0058】
本発明の範囲においては、コラーゲンという用語によって、細胞外マトリックスのうちより大きな成分を意図しており、コラーゲン、ムコ多糖類の線維性タンパク質を意味する。コラーゲンは、人体の結合組織のなかで最も重要な構成単位と考えられている。コラーゲンという用語によって、実際には、構造的な機能に加え、細胞粘着および器官や組織の発達過程での分化などの直接的・間接的な、その他の重要な生理的機能や役割をもちうる不均質特性をもつ高分子系の分子を意図している。脊椎動物の場合、異なる機能を有する、少なくとも15種類の天然コラーゲンが存在する。三重らせん分子構造は全コラーゲンタイプに共通している。oc鎖と呼ばれる3本の単鎖から構成され、それぞれ、特徴的な配列をもつアミノ酸を含有している。
【0059】
これらの3本の単鎖が互いに巻き付いて、典型的な三重らせん構造となっている。
【0060】
この構造は、水素結合が存在することで安定化されている。さらに、コラーゲンの三重らせんは、特定のアミノ酸配列によって小型化され安定化されている。アミノ酸3個ごとに、グリシンが配列され、これ以外のアミノ酸の多くが、プロリンまたはヒドロキシプロリンである。I型のコラーゲンは、自然界により多量に存在するタイプのコラーゲンであり、真皮、骨、腱および角膜などいくつかの成人の結合組織に存在している。本発明に使用されるコラーゲンは、I型またはII型またはVI型またはそれらを混合したものであり、その由来も、ウシ、ブタ、ウマ由来の抽出物など、異なる場合がある。
【0061】
あるいは、使用するコラーゲンは、たとえば組み替え型などのような合成コラーゲンでもよい。
【0062】
本発明の範囲においては、骨の無機・鉱物成分はナトリウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸イオンおよびクエン酸イオンで形成されるため、ヒドロキシアパタイトという用語により、一般に、結晶化度が高低さまざまなヒドロキシアパタイトCa10(PO46(OH)2、および化学的置換のあるヒドロキシアパタイトの双方と理解されている。
【0063】
合成ヒドロキシアパタイトは、外科手術で最も使用頻度の高い代替骨である。しかしながら、新規形成骨量として表される臨床結果は、常に良好ではない。その欠点は、主に合成ヒドロキシアパタイトは、生化学的にはコラーゲン小線維の無機化プロセスに伴って形成されるヒトヒドロキシアパタイトと同一の特性をもたないという事実に関連している。このため、いずれも、異なる化学組成と高分子構造を有し、いずれもコラーゲンまたは他の天然もしくは合成ポリマーに基づく有機成分に付随して、無機鉱物成分を合成する生体模倣のアプローチが、広く利用されている。高分子マトリックスは、主に、鋳型として機能し、主軸に沿って10〜20nmサイズ(天然のヒトリン灰石のサイズと完全類似の基準)に保たれた結晶の成長を妨げることにより、無機成分の配向堆積物を誘引する。コラーゲンとHAとの反応により、B位での自発的な炭酸化が誘因され、リン灰石の生体模倣能および生体への利用性の度合いがさらに高められる。有機高分子成分およびヒドロキシアパタイトの物理化学的特性は、形状および形態を与えるだけでなく、本発明の医療用具の生体力学特性を規定する2成分間の化学反応および構造的構成の影響を受ける。
【0064】
本発明の好ましい実施形態においては、たとえば図1、2または3の上層2など、特にコラーゲン層で形成される部分に高度な機械的特性および粘弾性を与える目的で、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、エーテル、ビスエポキシドおよびヒアルロン酸などの架橋剤を使用した。
【0065】
添付の図1、2および3に例示されているような多層構造2は、コラーゲンを含有した有機マトリックスで形成される上層2と、ヒドロキシアパタイトおよびコラーゲンを含有する複合材料マトリックスで形成される1以上の下層とともに得られる。たとえばゲル状の上層2および下層3が接合され、その後、多層構造1には凍結乾燥または乾燥工程が施される。
【0066】
好ましい実施形態において、多層構造1は以下を伴う可能性がある:
1. たとえば、ヒアルロン酸および誘導体(架橋体、エステル類、硫酸化体)、ケラタン硫酸、コンドロイチン硫酸などの親水性のバイオポリマーへの浸漬または外部コーティングにより、軟骨構造および/または骨格に存在するいくつかの成分。
2. バイオポリマー。たとえば、通常、軟骨性の結合組織および骨結合組織の細胞外マトリックスにそれぞれ15%および5%程度含まれるプロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンなど。こうした添加によって、生体適合特性および粘弾特性を改善し、同時に荷重による圧力を低減することができる。
3. アルギン酸ナトリウム、 ジェラン、キトサン、ゼラチン、ポリ乳酸(PLLG)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)などの天然および合成高分子。
【0067】
有利には、本発明の実施形態において、多層構造は、再生医療技術に使用または併用され、in vitroで培養された自家軟骨細胞の使用、in vitroで前培養して拡張させた、または骨芽細胞または軟骨芽細胞雰囲気内で前分化もしくは完全分化させた骨髄由来の間葉細胞の使用、そのままの使用または濃縮を前提として手術中の患者の骨髄から抽出した細胞等を含む場合がある。
【0068】
有利には、本発明の別の実施形態においては、軟骨代替物および骨軟骨代替物は、たとえば、軟骨部が骨環で囲まれた硝子軟骨で構成されている脊椎の椎骨体部骨端の薄膜等において、軟骨表面および骨表面の復元が求められる手術に使用される場合がある。
【0069】
有利には、本発明の別の実施形態においては、軟骨代替物および骨軟骨代替物は、大腿関節領域、足首の関節領域、顎骨顔面領域(関節丘-下顎分枝の復元を行う場合)、骨軟骨異常、肩の手術、および元々存在したが後天的に損傷を受けたり、外科的に取り除かれた組織を再生/置換するために、新しい骨組織および軟骨組織の形成が必要とされるあらゆる整形外科手術において、使用される場合がある。
【0070】
有利には、本発明の別の実施形態において、新規の三次元複合材料であり、多層で生体活性のある生体模倣構造体は、軟骨代替物および骨軟骨代替物として使用される場合がある。損傷/退化している軟骨および副軟骨区域において、外科的に配置される三次元マトリックスまたは「足場材」であるこのような構造体は、再生プロセス(軟骨形成および骨形成)を促し、生体構造、形態および正常な関節表面の骨軟骨組織の機械的特性の復元を可能とする。
【0071】
多層構造1の複合材料マトリックスは、それぞれ、各層の厚みとは無関係に、異なる量のコラーゲンと核形成するヒドロキシアパタイトとを含有する各下層3〜10間のヒドロキシアパタイト/コラーゲン「勾配」を示す。
【0072】
このため、所望の勾配(割合)形式に応じて、異なる量のリン灰石相を有する複合材料の合成を同時に進めることができる。あらかじめ固定化されたコラーゲン線維上にヒドロキシアパタイトを直接核形成する手順を実行した。この核形成反応は水中またはSBF(人工生理液)中で、コラーゲン線維がナノサイズのリン灰石の核を取り込み得るpH条件にて行う。
【0073】
複合材料が得られたすぐに、残存している可能性のある酸性または塩基性の反応残留物を除去・精製するために、繰り返し洗浄を行い、薄いメッシュふるいを用いてろ過し、不純物を除去しやすいような面に広げる。その後、型内で単層を層状にし互いに圧接させる。このように得られた多層を凍結乾燥し、所望の厚さと勾配をもつ、多孔質であるが耐久性のある小型の材料を得る。
【0074】
下層については、操作中に軟骨下骨表面に親密に接している構成要素であり、できる限りヒトの骨に似た構造体を得ることが好ましい。コラーゲンおよびヒドロキシアパタイトおよび関連する混合物などが知られている。逆に、ヒトの骨組織に類似した特性をもつ、複合有機セラミックの三次元マトリックスを作製する方法は知られていない。
【0075】
本発明の利点は、ヒトの骨と同様の形態的特徴をもつ下層(コラーゲン上に核形成しているヒドロキシアパタイト)を有する三次元の代替物の提供である。
【0076】
このような利点は、ヒドロキシアパタイトの形成を促進するカルシウム塩の溶液が、酸性懸濁液中でコラーゲン様天然ポリマーと反応する、コラーゲン線維へのリン灰石相の直接的な核形成プロセスにより実現される。カルシウム塩の混合水溶液に、予めコラーゲン様ポリマーの酸性懸濁液を添加したリン成分の水溶液が滴下される。続いて、こうして得られた生成物を、凍結乾燥および/またはろ過乾燥させる。コラーゲン様天然ポリマーの構造が、人体で起きているように、ヒドロキシアパタイトを化学的に置換することができる情報を分子レベルで転写する。すなわち炭酸塩画分および反応混合液に存在しているリン酸塩等のイオン画分等の置換体が入ってくる。こうしたプロセスを経て得られた生成物は、そのような置換体の存在により、得られる複合材料の構造においてヒト骨組織と同じ特性を有する。
【0077】
直接的な核形成は、人体で起きているように、コラーゲン原線維に沿った軸に平行に配向して増大するヒドロキシアパタイトのナノ結晶を形成することにより、生物傾向のメカニズムとして機能する。そして、ほぼ無定形で可溶性の非常に高い、結晶化度の低い無機成分を発生させる。こうして形成された結晶は、増大化しないが、ナノメートル単位のサイズには留まっている。コラーゲンへのヒドロキシアパタイトの核形成には、無機相の炭酸化、すなわち、天然の骨組織石灰化と同様に、同じBサイトでの核形成の間にヒドロキシアパタイト格子におけるCO32-基の取り込みが行われる。しかも、石灰化は主にB位で行われる。ヒドロキシアパタイトとコラーゲンの相互作用は、おそらく−OH基への接近をブロックすることにより、A位での石灰化を阻害する。この化学量論からの逸脱は、天然の骨組織との類似性を驚異的に増大するため、微細構造だけでなく得られる人工組織の構成も天然の骨組織と厳密に同一のものとなる。得られる人工の骨組織の生物活性と生分解性が、結果的に非常に向上するため、B位での石灰化は、A位での石灰化に対して有利である。これらの特性は、生理液と骨形成にイオンを使用する細胞との間で継続的な動的交換を可能とするので、石灰化にとって必須の特性である。
【0078】
【化1】

【0079】
本発明では、負に帯電しているコラーゲンカルボキシル基が、ヒドロキシアパタイトのカルシウムイオンと結合する能力を利用することで、天然骨のナノ結晶に似た自己集合性のコラーゲン原線維上にヒドロキシアパタイトのナノ結晶を合成するのに、生物傾向のアプローチを用いる。このアプローチ後に、生体系が分子レベルの情報を保存し処理することを証明することに成功した。このため、テロペプチドをもたず、グルコシル化領域がなく、架橋剤なしに原線維内で自己凝集が可能なI型のコラーゲン分子を出発材料として使用した。
【0080】
コラーゲン調製
I型のコラーゲンは、規格品として市販されている。精製プロセス後に、適量の酢酸に、I型のコラーゲンを溶解し(コラーゲン1%)、均質混濁液を得る。
【0081】
好ましい実施形態においては、好ましくは、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムを含む群から選択されるカルシウム塩の水溶液またはSBF(合成体液)を使用し、ヒドロキシアパタイト形成を促進する。より好ましくは、水酸化カルシウムを使用する。さらに、ウマの腱、マウスの尾、カンガルーの尾から抽出した動物コラーゲンまたはコラーゲン様合成ポリマーまたは化学的に架橋したゼラチンを処理することにより得られるコラーゲン様天然ポリマーの酸性懸濁液を使用する。また、使用する リン酸成分は、リン酸の水溶液もしくはSBF、またはリン酸陰イオンPO43-、リン酸一水素イオンHPO42-もしくはリン酸二水素イオンH2PO4-を含有するカルシウム、アンモニウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウム塩の水溶液から選択される。より好ましくは、リン酸H3PO4を使用する。本発明で使用するカルシウム塩は、1〜4gm/Lの範囲内であり、リン酸成分は2〜4gm/Lの範囲内である。
【0082】
より好ましくは、本発明において使用するカルシウム塩は、2〜3gm/Lの範囲内であり、リン酸成分は3〜4gm/Lの範囲内である。
【0083】
直接的な核形成工程は、好ましくはpH9〜12、より好ましくはpH9〜11(反応後のpHは7〜8.5、より好ましくは7〜7.5でなくてはならない)かつ好ましくは25〜45℃、より好ましくは35〜40℃の温度で行われる。
【0084】
好ましい実施形態では、Ca(OH)2の水溶液またはSBF溶液(300ccのH2O に147gmのCa(OH)2を含有)に、リン酸溶液(200ccのH2O に1.17gmのH3PO4を含有)および50gmのコラーゲンの酢酸溶液を滴下する。このプロセス中のpHは7〜10であり、温度は約25℃に調整されている。リン酸溶液のカルシウム塩の水溶液とコラーゲンの酸性懸濁液の混合液への滴下時間は15〜60分に調整されているため、滴下速度は、好ましくは0.0133〜0.0033L/分、より好ましくは0.0100〜0.0060L/分である。
【0085】
HA/Col nuc. col.とコードされる生成物について、続いて凍結乾燥または乾燥工程を行う。
【0086】
したがって、複合材料は、X線回析計(理学電機製ミニフレックス)による結晶回析により同定される。配向を解析するために、変化の少ない試験槽を用いて(常にCu-Kα放射線を照射)、標品・フィルム間距離70mmで、いくつかの回析グラフを写真で記録した。
【0087】
アルミナるつぼを用いて、空気中で加熱速度10℃/分にて熱重量分析(Polymer STA 1660)を行い、複合材料を分析した。
【0088】
複合材料の分析
コラーゲン原線維へのヒドロキシアパタイトの直接的な核形成による本発明の方法に従って調製した複合材料では、ヒドロキシアパタイト/コラーゲン複合組成式は重量比80/20〜10/90であった。しかしながら、熱重量分析により、実際の組成式はそれぞれ70/30〜10/90であることがわかった。この矛盾は、反応収率が100%未満となることによる。複合物の含水量は、純粋のコラーゲン(10%)とほぼ同様である。この分析は、コラーゲン原線維とミネラル分として機能する無機相との構造的関係がどう変更されたかを知るうえで、役に立った。これまでは、このような分析は、七面鳥の足の屈筋腱について実施され、石灰化プロセスのパターンとして使用されてきた。
【0089】
実際に、TG-DTGグラフでは、ヒドロキシアパタイト/コラーゲン複合体について変化がみられ、無機相とコラーゲン線維との相互関係が示されている。この種の相互関係は、自然発生的な石灰化プロセスと比較できる。この比較は、骨理論パターンとして使用される七面鳥の腱の石灰化に関するTG-DTGグラフを用いて行われる。いずれの場合においても、450〜500℃におけるDTGピークは「ショルダーが広がって」消える傾向があるため、明らかに近似する。
【0090】
コラーゲンにヒドロキシアパタイトが直接的に核形成されると、複合材料は天然の石灰化組織のようにふるまうと考えられる。
【0091】
XRD結晶図は、結晶化度の低いヒドロキシアパタイトの典型的なグラフであり、軸に沿って形成されると推定される結晶のサイズは、12〜15nmである。核形成は、天然の骨に特有のプロセスに従って起きる。核形成においては、ナノサイズの結晶がグラフの反転部の拡張の原因である。さらに、約25℃で反応を行ったため、単結晶ヒドロキシアパタイトのナノ結晶を形成する限界以内で広範囲に反応を行うことができた。このようなナノ結晶は、コラーゲン線維内に形成され、好ましくは線維の配向方向に対して平行に配向するc軸を有する。実際に、石灰化した原線維からなるサンプルから、広角X線回折グラフが得られる。
【0092】
TEMマイクログラフに、コラーゲン原線維内に形成され、原線維に平行に拡大していくナノ核が示されている。こうした分析技法から、コラーゲン化合物およびヒドロキシアパタイト化合物間の強力な相互作用、およびこの複合材料と石灰化する天然組織との完全な類似がわかる。
【0093】
さらに、光学顕微鏡下の分析により、直接的な核形成後に空気乾燥し、その後凍結乾燥を行うことにより得られるヒドロキシアパタイト/コラーゲン複合材料の異なる結晶形態がわかる。凍結乾燥した複合材料は、綿および毛と類似した非常に大きな細孔分布に特徴がある、三次元の網状組織となる。サンプルを空気ろ過器上で乾燥すると、逆に、二次元の網状構造が形成され、ガーゼ材と似たような構造となる。
【0094】
本発明による人工の骨組織は、ヒドロキシアパタイト/コラーゲン量の異なる、さまざまな形状で形成することが可能であり、複数の臨床用途に適している。このような人工の骨組織は、本発明の軟骨・骨軟骨代替物のHA-コラーゲン下層の構成要素、置換骨や骨充填の補綴材料、整形外科や歯科治療、顎顔面手術における再生膜や再生止血組織などとして使用することができる。
【0095】
有利には、上述の代替物は、アウターブリッジ等級3および4の軟骨異常、またはアウターブリッジ等級4強の軟骨異常に対応する骨軟骨代替物として、使用することができる。
【0096】
実験
以下、添付の図や画像を参照しながら、実験について説明するが、これらは、非限定的な実施形態の一例である:
- 図4に、調製工程で架橋剤を添加しなかったプロトタイプA’のコラーゲン構造を示す。プロトタイプA’は、単に、調製工程で架橋剤を添加しなかったサンプルである。図4の(1)はコラーゲン層の多孔構造の詳細、(2)はコラーゲン層の多孔構造の拡大、(3)はコラーゲン層とHA勾配/コラーゲンとの接触面を示している;
- 図5に、調製工程でヒアルロン酸を添加したコラーゲン層B’の多孔性を示す。プロトタイプB’は、調製工程でヒアルロン酸を添加したサンプルである。図5の(1)はコラーゲン層の多孔構造の詳細、(2)はコラーゲン層の多孔構造の大幅な拡大、(3)はコラーゲン表面-HA勾配/コラーゲンとの接触面を示している;
- 図6に、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)の添加による架橋反応の起きたサンプルCの多孔構造を示す。図6の(1)は垂直方向に配向する多孔構造の詳細、(2)は気孔壁の垂直方向に配向している多孔構造の大幅な拡大の詳細、(3)はHA勾配/コラーゲンの接触面を示している;
- 図7に、グルタルアルデヒド蒸気処理による架橋反応を経たプロトタイプD’のコラーゲン多孔構造を示す。図7の(1)はコラーゲン層の多孔構造の大幅な拡大の詳細、(2)はコラーゲン層-HA勾配/コラーゲンの接触面を示している;
- 図8に、ウマの右関節丘の概略図を示す。図8の(A)は、2個の勾配を有する発明品(軟骨代替物、形状I)と軟骨側面の損傷および微少摩耗を、(B)は、3個の勾配を有する足場材(骨軟骨代替物、形状II)と骨軟骨中央の損傷および出血を示している。;
- 図9に、ウマの左関節丘の概略図を示す。図9の(A)は、3個の勾配を有する足場材(骨軟骨代替物)と骨軟骨中央の損傷および出血を、(B)は、2個の勾配を有する発明品(軟骨代替物)と軟骨側面の損傷および微少摩耗を示している;
- 図10に、切開した解剖領域を示す;
- 図11に、関節丘表面の露出を示す;
- 図12に、軟骨下骨の露出した軟骨表面の損傷を示す;
- 図13に、発明品の設置例を示す。
- 図14に、8週間後の組織学的分析(ヘマトキシリン/エオシン染色)を示す。図14は、コラーゲン単独の勾配1に対応して繊維組織が存在していることを示している。より深層においては、ヒドロキシアパタイト成分がより多く含有される勾配3に対応して、骨の新規形成が起きていることが確認できる;
- 図15に、関節鏡視下「セカンドルック」を示す;
- 図16に、動物番号1の「セカンドルック」を示す。図16は、側軟骨の損傷AおよびDと、中央骨軟骨の損傷BおよびCの結合組織の再発達を示している;
- 図17(A〜H)に、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【0097】
本発明の軟骨または骨軟骨代替物(足場材)は、より弾性に富み、親水性が高いために、手術者による処置過程で上層2の下表面2bと下層3の上表面3aとの接触面において層間剥離が起きにくい、あらゆる一般的な構造を提供できるように、化学的に変性されていた。
【0098】
層の剥離現象は、調製後に代替物を水和させたときに起こる問題である。層間剥離は、必ず克服すべき問題である。
【0099】
多層構造1には、I型コラーゲンからなる上層2と、ヒドロキシアパタイト/I型コラーゲン(40%−60%)からなる下層3とがある。
【0100】
別の多層構造1には、I型コラーゲンからなる上層2と、ヒドロキシアパタイト/I型コラーゲン(40%−60%)からなる下層3と、ヒドロキシアパタイト/コラーゲン(70%−30%)からなる下層4とがある。
【0101】
2個の多層形状のそれぞれについて、図1および2に凍結乾燥後の化学的・幾何学的特性を示した4個のプロトタイプを用意した。
【0102】
各プロトタイプを、ペトリ皿で凍結乾燥した(−40℃まで急冷し、完全に凍結させてから、約7×102ピラーニ(1ピラーニ=l×10-3mBar)の真空に置き、真空度を保つため30℃まで加熱する。さらに、鋭いナイフを用いて各々12cm2ずつに4分割した。プロトタイプはいずれも、単一包装され、25kGyのγ線で滅菌された。
【0103】
滅菌処理された物は、以下の試験に使用された:
- 乾燥処理;
- 湿潤性;
- 光学顕微鏡法;
- SEM構造解析
【0104】
滅菌後、一部について、羊、およびウマの死体から取った球節軟骨に対するin vitroおよびin vivo試験、in vivoハンドリング試験を行った。最後に、さらに試験および化学分析を行うために分割して保存した。
【0105】
サンプルBおよびCは、弾性特性に優れ、親水性が高いことから、本来の用途により適しているという結果が得られた:
- ハンドリングに対する弾性流れは、その使用を促進させる特性である;
- 水和性は、骨髄由来の間葉幹細胞の足場材内への移行を促進するため、非常に重要なパラメータである。したがって、これは、足場材内での、細胞分化および修復すべき組織の再生を可能とする。
【0106】
乾燥状態においては、プロトタイプが小さくまとまっていることが観察された。I型、II型のどちらについても、明らかに、プロトタイプBおよびCは、より弾性および圧縮流が大きかった。プロトタイプ Dについては、おそらくグルタルアルデヒド蒸気処理が原因となる黄変傾向がみられたが、剛性が確認された。
【0107】
各足場材の一部を水に浸し、水中で処理をして再水和する湿潤試験を行い、1週間にわたり観察した。いずれの場合についても、最大2日間の安定性が観察された。プロトタイプBおよびCは、プロトタイプ AおよびDよりも、迅速な水和性と高い膨潤性を示した。プロトタイプDは、剛性が高かった。
【0108】
実験3日目に、プロトタイプAでは、線維の損失や勾配の境界で部分的に層間剥離が起きるなど、安定性が目立って減少した。一方、プロトタイプBおよびCにおいては、線維の損失はごくわずかに見られるだけであった。プロトタイプDは処理時には原型を保っていた。
【0109】
7日目には、プロトタイプAにおいて、層間剥離はほぼ全層にわたって起きていた。一方、BおよびCについては、コラーゲン線維の損失と部分的な層間剥離が見られた。プロトタイプDでは、最初の形状が保たれていた。
【0110】
光学顕微鏡およびESEM
各形状の2mmの矢状断面について、12倍の光学顕微鏡による観察を行った。ESEM画像は25倍と100倍で撮影した。
【0111】
図4の画像は、走査型電子顕微鏡のみで撮った、足場材の形状がIのすべてのプロトタイプに関する一連の画像である。
【0112】
図4において、プロトタイプA’のコラーゲン構造には、むしろ規則的な多孔性(1)があるが、より拡大してみると、気孔壁はギザギザしているようだった(2)。コラーゲン-ヒドロキシアパタイト勾配/コラーゲン40/60の接触面がはっきり見える(3)。
【0113】
図5は、プロトタイプB’のコラーゲン層の多孔性を示している。規則的で、しかもプロトタイプA’の気孔と比べると、サイズが小さい。この小型化はおそらく、この構造(1)に含まれるヒアルロン酸の作用というよりは、むしろ足場材の切断時の刃の動きによる人為的なものと考えられる。より拡大した場合でも、気孔の規則性の保持が認められ、内壁の表面平滑性についても同様に保持されていた(2)。気孔には特別な配向性は見られない。一方、コラーゲン-HA勾配/コラーゲン(3)の接触面においては、均一性が高く構造の小型化が見られるようである。
【0114】
図6では、プロトタイプC’の観察結果が示されている。このプロトタイプC’の観察結果において興味深い要素は、垂直方向に配向しているコラーゲンの多孔質構造である(1)。
【0115】
親細胞または足場材(2)に付加されたであろう軟骨細胞の軟骨細胞方向への移行および分化を促進し、配向させうる、幅の広いラメラ構造が見られる。また、この場合、コラーゲン-HA 勾配/コラーゲンの接触面は、非常によく接合しているようにみえる(3)。
【0116】
図7では、プロトタイプD’のコラーゲンの多孔質構造の観察結果が拡大表示されている。図7から、他のすべてのプロトタイプと比較してより小型化されていることが観察される(1)。多孔性は明らかにこれまで分析してきたどの構造よりも低い。また、この場合、2層間の接触面は足場材(2)の高さが減少していることから、はるかに小さくなる。
【0117】
足場材の調製工程中の可塑剤または架橋剤の添加により、その構造はより高い安定性をもつようになる。
【0118】
コラーゲン系の足場材の設計の可否によらず、安定性要件は決定的要素である。
【0119】
この開発工程において、中程度の分子量を有するヒアルロン酸、ビスエポキシド類に属する架橋剤(ジグリシジルエーテル)およびグルタルアルデヒド蒸気またはその誘導体を、構造物の水和性および可塑性を上昇可能な添加剤として使用した。
【0120】
「ハンドリング」試験およびESEM観察による予備結果から、コラーゲン安定性を示す最良の形態は、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)による架橋によって得られることがわかる。以下に、本発明の骨軟骨の足場材の作用を確認するために行ったin vivoおよびin vitro試験に関する実験について説明する。
【0121】
本実験の目的は、軟骨および骨軟骨の足場材構成のin vivoでの作用を確認することである。各々2個の勾配を有する構成(軟骨代替物)および3個の勾配を有する構成(骨軟骨代替物)に対して、作製過程でBDDGE(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)による架橋を行った。
【0122】
選択した動物モデルは:
1) ヌードマウスに対する、骨髄由来のヒツジ間質親細胞(BMSC)を添加した3勾配構成の足場材(骨軟骨の足場材)の移植;
2) ウマ大腿骨関節丘における軟骨性および骨軟骨性の損傷後に行う2勾配構成の足場材の移植。
【0123】
1) BMSC添加した足場材の移植
本試験の目的は、骨髄血由来のヒツジ間質親細胞(BMSC)を添加した3相足場材または構成IIを有する足場材(勾配1:I型コラーゲン、勾配2:I型コラーゲン/ヒドロキシアパタイト比70%/30%、勾配3:I型コラーゲン/ヒドロキシアパタイト比30%/70%)による骨および軟骨の新規形成を確認することである。足場材は、骨軟骨の足場材の勾配内での組織分化を確認する目的で、免疫を抑制したヌードマウスの筋肉内部(骨格外部または関連部位)に移植された。
1) 勾配3内での骨性の細胞分化;
2) コラーゲンのみからなる勾配1内での軟骨性の細胞分化。
【0124】
2) 軟骨性および骨軟骨性の損傷後のウマに行う足場材の移植
このin vivo試験の目的は、ウマ第三中手骨(球節)の遠位骨端における軟骨性および骨軟骨性の損傷後の動物番号2において、ヒドロキシアパタイトナノ粒子によるコラーゲン線維への核形成プロセスを経て形成され、BDDGEによる架橋プロセス(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)の対象となった、2勾配構成および3勾配構成の足場材の作用)を確認することである。これら2形式の足場材には、軟骨損傷の治療に用いる軟骨代替物の足場材として使用される構成Iまたは2相足場材(2勾配)と、重度または深部の骨軟骨の損傷の治療に用いる骨軟骨代替物の足場材として使用される構成 IIまたは3相足場材(3勾配)とがある。
【0125】
以下の評価を行った。
1) 3ヶ月後の関節鏡視下検査による足場材の安定性(固定、移植先での耐久性);
2) あらかじめ除去しておいた軟骨性の覆いの再生、移植から少なくとも6ヶ月後に採取された生検の放射線解析および組織学的分析
【0126】
手術手順
順応および薬物治療の実施前期間として7日間の後、2動物が放射線検査を受け、関節に病理学的変化がないことが確認された。ウマには、手術前12時間エサを与えなかった。
【0127】
外科手術時は、3gmのチオペンタールナトリウムを含有するグアヤコールグリセリングルコース5%溶液で、動物を麻酔した。酸素混合物中にallotaneがあっても、麻酔の維持は保証されていた。
【0128】
動物を側臥位にした後、両前肢の血液の循環を止めて手根の血管を空にした。無菌状態で、中手骨III°(図10)の末端と接する球節の背面について、指の背面伸筋の腱に対して側面におよび上側で小関節切開を行った。側位球節に、中央から上述の腱まで小関節切開を行った。
【0129】
球節を曲げた状態におくことで、側面関節丘(上部球節)および中央関節丘(側位球節)の末端部が露出された(図11)。適切な動力駆動のフライス盤を用いて、軟骨下骨が完全に露出するまで、1.0cm2 大で関節軟骨に円形欠陥を与えた。このとき、軟骨の損傷の場合には約5mmの深さで、骨軟骨の損傷の場合には8〜10mmの深さとした。いずれの場合においても、ミクロ剥離(図12)を行った。このような損傷は、足場材がその構成要素を収められるサイズとした。
【0130】
穴傷内に足場材を設置し、その位置に、損傷壁に固定されたことが確認できる隆起が起きるまで、数秒間指圧した(図13)。
【0131】
手術の最後に、外科的切開部について、ポリグリコール酸No.0による関節包のスポット状の縫合、ポリグリコール酸No.00による指状の筋膜の連続縫合、およびナイロンNo.0による皮膚のスポット状の縫合を行った。
【0132】
次に、このウマの測位を反転させて、反対側の中手骨部についてもこの手順を同様の方法で繰り返した。合計で、各動物について、4個所の小関節切開と、4個(2個の軟骨の足場材:構成Iおよび2個の骨軟骨の足場材:構成II)の足場材の移植を行った。手術の最後に、蹄から手根まで半硬質の包帯を当てた。各動物に対する手術および治療のパターンは、以下のとおりである。
【0133】
図8には、左関節丘が示されている:
A. 軟骨側面の損傷+ミクロ剥離に2勾配の発明品(軟骨代替物:構成 I)を設置;
B. 骨軟骨中央の損傷+出血に3勾配の足場材(骨軟骨代替物:構成 II)を設置。
【0134】
図9には、右関節丘が示されている:
C. 骨軟骨中央の損傷+出血に3勾配の足場材(骨軟骨代替物)を設置;
D. 軟骨側面の損傷+ミクロ剥離に2勾配の発明品(軟骨代替物)を設置。
【0135】
外科手術の最後に、これらの動物に対して、抗生物質および抗炎症剤を投与した。覚醒時には、すぐに負荷をかけて通常どおり遊歩させた。
【0136】
結果
1) BMSCを添加した足場材の移植
8週間後の組織学的分析
8週間後、動物を屠殺し、移植部位を正確に除去し、ヘマトキシリン/エオシン染色で処理した。顕微鏡観察により、ヒドロキシアパタイト成分(勾配3)が多く含有されている勾配内で骨の新規形成が見られることがわかった。一方、軟骨の新規形成が想定されていたコラーゲン部分(勾配1)には、骨が達していないことが観察された。
【0137】
このデータは、ヒドロキシアパタイトがいかに「起爆剤」的機能を果たすことができるかということを示している。すなわち、ヒドロキシアパタイトが、より深層においては骨性の細胞分化プロセスを活性化する一方で、より表層においては、足場材のコラーゲン成分が、軟骨性の細胞分化を誘導していることを示す。
【0138】
2) 軟骨性および骨軟骨性の損傷後に行った、ウマに対する足場材の移植
2回目の関節鏡視
最初の術日から3ヶ月後に、関節鏡視下の確認を行った。画像から、両前肢の軟骨および骨軟骨の損傷部位内に、見たところ一貫性のある結合組織の新規形成があることがわかったが、線維組織とは判別がつかなかった。手術表面の領域には、足場材の跡が明らかな領域もあった。側面に損傷を与えた動物番号2に関する関節鏡視下の観察結果から、炎症性の反応や発明品の離脱は見られなかった(図15)。
【0139】
安楽死をさせた際の目視評価
平均して214±11日後に、動物を屠殺した。一般的な麻酔薬を投与後にTanax溶液を静注して、動物を安楽死させた。
【0140】
各動物について、関節(球節)に対して遠位部20cmで両肢を切断した。これは外科手術を行った部分にあたる。
【0141】
関節丘はどちらも、中央域および側面域の手術表面を保護しながら丁寧に露出させた。足場材の移植域における新規形成組織を、目視評価した。
【0142】
中央の移植領域において(骨軟骨性の足場材)、健康な軟骨レベルまでの組織の治癒に加え、明色の結合組織の十分な新規形成が見られる。軟骨性の移植に対応する関節軟骨表面においては(側面の関節丘)、中央の関節丘と同様の状態となっており、結合組織が形成されて穴傷が完全に塞がれているのが観察できた(図16)。
【0143】
図14に、8週間後の組織学的分析(ヘマトキシリン/エオシン染色)を示す。コラーゲン単独からなる勾配1(Grad.1)において線維組織が見られる。ヒドロキシアパタイト成分が多く含まれる勾配3(Grad.3)に相当する深層部においては、骨の新規形成が確認できる。
【0144】
図15は、関節鏡視下「セカンドルック」に関する。
【0145】
図16は、動物番号1の関節鏡視下「セカンドルック」に関する。側面の軟骨の損傷AおよびD、ならびに、骨軟骨の中央の損傷BおよびCにおいて結合組織の再成長。
【0146】
図17は、軟骨の移植片(動物1)をトルイジンブルー染色して、異なる倍率で拡大させた組織学的分析に関する。
【0147】
上記の組織学的画像は(図17A〜H)、動物番号1の軟骨の移植片に付随する側面の損傷に関する。
【0148】
手術域は、損傷周辺の健康な軟骨部とともに丁寧に除去した。
【0149】
各回収片を2分割して、中央から周辺部まで薄切刀で切断し、顕微鏡観察のためにトルイジンブルーで染色した。
【0150】
顕微鏡観察により、軟骨性の足場材の下部および深部において骨形成が多く起こっていることがわかる。コラーゲン層の表面には、健康な軟骨組織との区別が可能な線維軟骨組織が定着しているが、骨組織はこの領域内には伸長してきていないことがわかる。
【0151】
約1cm3大の分析サンプルは、移植レベルまで回収され、関節軟骨周辺の領域を含んでいる。サンプルを脱灰して、パラフィンに含有させた。切片を厚み約10μmで切断してトルイジンブルーで染色した。
【0152】
写真は移植片の2末端、すなわち、健康な関節軟骨と移植片との接触面にある目的の区域に関する。
【0153】
線維軟骨の出現から新たに形成された組織と隣接する関節軟骨の残余区域が認められることがある。
【0154】
移植片自体には、表面的に繊維軟骨および繊維状結合組織が形成されているようであり、関節および骨組織の奥の軟骨に形態上帰属しうる組織の形跡はみられない。
【0155】
新規に形成された骨組織(AおよびBにて目視可能)は、周辺の骨とよく同化しているようにみえる。軟骨組織には、元々存在していた関節軟骨から新たに形成された線維軟骨までの経路の跡を残す境界線(矢印)をはっきり残している。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、第一の実施形態に係る多層構造の透視図を示している。
【図2】図2は、第二の実施形態に係る多層構造の透視図を示している。
【図3】図3は、第二の実施形態に係る多層構造の透視図を示している。
【図4】図4に、調製工程で架橋剤を添加しなかったプロトタイプA’のコラーゲン構造を示す。
【図5】図5に、調製工程でヒアルロン酸を添加したコラーゲン層B’の多孔性を示す。
【図6】図6に、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)の添加による架橋反応の起きたサンプルCの多孔構造を示す。
【図7】図7に、グルタルアルデヒド蒸気処理による架橋反応を経たプロトタイプD’のコラーゲン多孔構造を示す。
【図8】図8に、ウマの右関節丘の概略図を示す。
【図9】図9に、ウマの左関節丘の概略図を示す。
【図10】図10に、切開した解剖領域を示す。
【図11】図11に、関節丘表面の露出を示す。
【図12】図12に、軟骨下骨の露出した軟骨表面の損傷を示す。
【図13】図13に、発明品の設置例を示す。
【図14】図14に、8週間後の組織学的分析(ヘマトキシリン/エオシン染色)を示す。
【図15】図15に、関節鏡視下「セカンドルック」を示す。
【図16】図16に、動物番号1の「セカンドルック」を示す。
【図17A】図17Aに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17B】図17Bに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17C】図17Cに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17D】図17Dに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17E】図17Eに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17F】図17Fに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17G】図17Gに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。
【図17H】図17Hに、トルイジンブルー染色により軟骨移植片の増大の違いを表す(動物1)、組織学的分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンを含有する有機基質からなる最上層(2)と、
ヒドロキシアパタイト(水酸リン灰石)及びコラーゲンを含有する複合材料マトリックスからなる1以上の下層(3、4、・・・10)と、を含む多層構造(1)。
【請求項2】
少なくとも下層(3)が95〜75重量%のコラーゲンと、5〜25重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなる請求項1に記載の多層構造。
【請求項3】
少なくとも下層(3)が95〜75重量%のコラーゲンと、5〜25重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなり、かつ
少なくとも下層(4)が75〜45重量%のコラーゲンと、25〜55重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなる請求項1に記載の多層構造。
【請求項4】
少なくとも下層(3)が95〜75重量%のコラーゲンと、5〜25重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなり、
少なくとも下層(4)が75〜45重量%のコラーゲンと、25〜55重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなり、かつ
少なくとも下層(5)が45〜25重量%のコラーゲンと、55〜75重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなる請求項1に記載の多層構造。
【請求項5】
少なくとも下層(3)が95〜75重量%のコラーゲンと、5〜25重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなり、
少なくとも下層(4)が75〜45重量%のコラーゲンと、25〜55重量%のヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなり、かつ
下層(10)が5重量%未満のコラーゲンと、100重量%となるヒドロキシアパタイトとを含有する複合材料マトリックスからなる請求項1に記載の多層構造。
【請求項6】
95〜75%のコラーゲンを含有する下層(3)のコラーゲンが100%存在している上層(2)から、コラーゲン含有量が5%未満である最下層(10)まで広がるコラーゲン勾配がある請求項1〜5のいずれかに記載の多層構造。
【請求項7】
前記複合材料マトリックス中の前記ヒドロキシアパタイトは、直接コラーゲン繊維に核を形成している請求項1〜6のいずれかに記載の多層構造。
【請求項8】
前記コラーゲンは、I型、II型、VI型またはそれらの混合から選択される請求項1〜7のいずれかに記載の多層構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の多層構造を含む軟骨代替物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の多層構造を含む骨軟骨代替物。
【請求項11】
前記多層構造がin situ結合および間葉細胞の分化の足場材である請求項9または10に記載の代替物。
【請求項12】
前記多層構造は、骨髄血由来の濃縮物、濃縮血小板(PRP)、成長因子、指向性および細胞分化を促進可能な、TGF、EGF、BMPなどの因子に、生体外で取り込まれる請求項9または10に記載の代替物。
【請求項13】
前記多層構造は、未分化の間葉細胞、または骨芽細胞および軟骨細胞の母細胞の増殖および/または分化に必要な時間培養液中で培養された間葉細胞に、生体外で取り込まれる請求項9または10に記載の代替物。
【請求項14】
前記多層構造に、抗炎症性コルチコステロイド、FANS、免疫抑制剤、抗生物質、抗芽球化、抗増殖剤および抗ウィルス剤から選択される薬理的活性物質を添加する請求項9または10に記載の代替物。
【請求項15】
コラーゲンを含有する有機基質からなる最上層(2)が、ヒドロキシアパタイト及びコラーゲンを含有する複合材料マトリックスからなる1以上の下層(3、4、・・・10)と接合する工程を少なくとも含む請求項1〜8のいずれかに記載の多層構造の作製方法。
【請求項16】
前記多層構造は、好ましくは分子量が10,000〜2,000,000の範囲にあるヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、またはその誘導体と架橋している請求項9〜14のいずれかに記載の代替物。
【請求項17】
前記多層構造はBDDGEまたはその誘導体と架橋している請求項9〜14のいずれかに記載の代替物。
【請求項18】
前記多層構造はグルタルアルデヒドもしくはその誘導体、またはビスエポキシド類(ジグリシジルエーテル)から選択される架橋剤と架橋している請求項9〜14のいずれかに記載の代替物。
【請求項19】
冷凍乾燥状または乾燥状の請求項9〜18のいずれかに記載の代替物。
【請求項20】
無菌状の請求項9〜18のいずれかに記載の代替物。
【請求項21】
請求項9〜20のいずれかに記載の軟骨代替物または骨軟骨代替物の作製への請求項1〜8のいずれかに記載の多層構造の使用。
【請求項22】
関節軟骨異常および骨軟骨異常の治療、または軟骨組織および/または軟骨下骨組織の新規形成用の、請求項9〜20のいずれかに記載の軟骨代替物または骨軟骨代替物の作製への請求項1〜8のいずれかに記載の多層構造の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【図17E】
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【図17F】
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【図17G】
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【図17H】
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【公表番号】特表2008−531171(P2008−531171A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557618(P2007−557618)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000452
【国際公開番号】WO2006/092718
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(508019403)
【氏名又は名称原語表記】FIN−CERAMICA FAENZA S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via Granarolo,177/3,I−48018 Faenza,Italy
【Fターム(参考)】