説明

多層構造ライナーおよびその製造方法

【課題】
本発明の解決課題は、表層に古紙が多く含有されていても、長期に亘って撥水性に優れる多層構造ライナーと、古紙由来の灰分を除去することによって、多層構造ライナーを安価に製造することができる多層構造ライナー製造方法とを提供することである。
前記多層構造ライナーにおいては、その表層に乾燥重量で0.1〜2g/mの撥水剤が塗工されているのが好ましい。
【解決手段】
本発明の課題を解決するための第1の手段は、
古紙含有率が60質量%以上であって、灰分が7質量%以下、かつ、密度が0.78g/cm以上である表層を有することを特徴とする多層構造ライナーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールに用いられる多層構造ライナーおよびその製造方法に関し、更に詳しくは、古紙含有量が多くても、撥水性に優れる多層構造ライナー及びこれを安価に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減や資源の再利用等の観点から、ライナーの表層に古紙を多く利用するようになってきている。このように、古紙を使用してライナーを抄造した場合、古紙に含まれる薬剤により、加工後のライナーの撥水性が低下してしまい、このライナーを用いた段ボール箱は水濡れに弱いという問題があった。特に、青果物に用いる場合は、朝採り野菜が露で濡れているので、水濡れによる強度低下防止のため、原紙メーカ、または段ボールメーカでライナーに撥水性を付与することが行われている。
【0003】
しかしながら、撥水性を付与するため、撥水剤塗工後にコルゲーター処理をすると、コルゲーターからライナーに加えられる熱で、ライナー表面の撥水成分が紙層内部へ浸透してしまい、その結果、段ボールの撥水性能が低下してしまうという問題が生じていた。特に、最近では、ライナー表層に古紙が多く使用されるようになったため、古紙に含まれる薬剤、填料等により、撥水剤の紙層内部への浸透が促進されているという問題がある。
これに対して、例えば、抄紙機工程内でライナー表面に撥水剤を塗布し、ライナー紙面のpHを3.5〜6.0にした段ボール用ライナーの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。また、撥水剤を塗布する前に、カチオン性サイズ剤を塗布することにより、撥水剤の紙層内部への浸透を抑えることが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
一方、撥水塗工工程および乾燥工程を経たライナーが、ロールに巻き取られる際に、ロールの巻圧により、撥水塗工層にひび割れが生じてしまい、撥水能力が低下するという問題がある。これに対し、例えば、撥水原体としてパラフィンワックス等を含有する混合物エマルションと、特定の数値範囲のTg(ガラス転移温度)を有する合成樹脂エマルションと、を含有する紙用撥水剤組成物を段ボールの外装ライナーに塗工する工程を備えた撥水段ボールの製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
しかし、上記文献に記載された方法では、表面処理剤を増添しなければならず、薬品費が増加してしまい、製造コストがアップするという問題があった。また、リサイクルする際には、撥水剤がより少ない方が好ましい。
【特許文献1】特開2005−200772号公報
【特許文献2】特開2005−133257号公報
【特許文献3】特開2004―183165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、表層に古紙が多く含有されていても、撥水性に優れる多層構造ライナーと、多層構造ライナーを安価に製造することができる多層構造ライナー製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、表層の古紙含有量、灰分含有量および密度を最適値に設定することにより、上記課題が解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、以下の(1)、(2)の構成を採用する。
(1)古紙含有率が60質量%以上であって、灰分含有率が7質量%以下、かつ、密度が0.78g/cm以上である表層を有することを特徴とする多層構造ライナーである。
(2)前記表層に乾燥重量で0.1〜2g/mの撥水剤が塗工されてなることを特徴とする(1)項に記載の多層構造ライナーである。
(3)表層内の灰分含有率が7質量%以下となるように古紙パルプを洗浄する洗浄工程および洗浄搾液の処理工程と、表層内の古紙含有率が60質量%以上になるように調製し、かつ、パルプ繊維を叩解する調成工程と、表層の密度が0.78g/cm以上になるように抄紙する抄紙工程とを備えることを特徴とする多層構造ライナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、灰分の除去により、撥水剤の浸透を防止することができるので、古紙含有率が高くても、撥水効果が良好な多層構造ライナーを提供することができる。また、撥水剤、撥水助剤等の薬品の添加量を削減することができるので、多層構造ライナーを安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の多層構造ライナーは、表層内の古紙含有率が60質量%以上であって、灰分含有率が7質量%以下、かつ、密度が0.78g/cm以上である表層を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に使用される古紙パルプとしては、新聞紙もしくはチラシ等の新聞巻取紙、非塗工紙、微塗工紙もしくは塗工紙等の印刷情報用紙または未晒包装紙もしくは晒包装紙等の包装用紙等から調成されたパルプや、白板紙もしくは色板紙等の紙器板紙または段ボール等から調成されたパルプおよび前記古紙パルプを脱墨したパルプを挙げることができる。
【0012】
本発明においては、多層構造ライナーの表層内の古紙含有率、すなわち、表層全体に対する古紙の含有率が60質量%以上である限り、古紙パルプ単独で、または古紙パルプとバージンパルプとを混合して用いることができる。なお、多層構造ライナー表層の古紙含有率が上記数値範囲内である限り、古紙パルプとバージンパルプの混合割合については特に制限はない。前記バージンパルプとしては、晒クラフトパルプ(BKP)もしくは未晒クラフトパルプ(UKP)等の化学パルプ(CP)、機械パルプ(GP)またはセミケミカルパルプ(SCP)を挙げることができる。
【0013】
前記バージンパルプの原料としては、ヒノキ、ヒバ、アカマツ、エゾマツ、スギ、モミ、トウヒ、ダグラスファーもしくはラジアータパイン等の針葉樹(N)、ブナ、カバ、ナラ、ケヤキ、トチノキ、ハンノキ、カエデ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ラワン、アスペンもしくはゴム等の広葉樹(L)、または、葦、マニラ麻、亜麻、ジュート、ケナフ、タケ、バガス、麦わら、こうぞ、三椏、ガンピもしくはコットンリンター等の非木材を挙げることができる。
【0014】
本発明の多層構造ライナーは、層の数には特に制限はなく、2層以上の多層構造を有し、好ましくは3層以上の多層構造を有するものであり、少なくとも、表層、中層および裏層から構成されることが好ましい。本発明の多層構造ライナーは、上述した3層構造を有するものだけでなく、4層構造または5層構造を有してもよい。少なくとも3層構造の多層構造ライナーは段ボール加工において、表層は撥水適性、裏層は貼合適性、中層は強度というように機能性を付与できるので、この3層構造ライナーから形成された段ボールは、防水性を備え、かつ、軽量化を図ることができるので青果物等の運搬作業性に適して都合がよい。
なお、本発明においては、表層の古紙含有率が60質量%以上であればよく、その他の層、例えば、中層および裏層の古紙含有率については、特に制限はない。
【0015】
本発明において、JIS P 8251に準拠した方法で求めた多層構造ライナー表層の灰分含有率は、7質量%以下であることが好ましい。より好ましくは6質量%以下である。前記灰分含有率が7質量%より多いと、多層構造ライナーの撥水度が低下してしまい、その結果、多層構造ライナーで形成された段ボールの撥水効果を得ることができない。一方、灰分含有率が7質量%以下であると、撥水剤や撥水助剤の塗工量を削減することができ、製造コストを抑えることができるので都合が良い。
【0016】
本発明において、JIS P 8118に準拠した方法で測定した多層構造ライナー表層の密度は、0.78g/cm以上であることが、特に好ましい。前記密度が0.78g/cmよりも低いと、多層構造ライナー表層の強度が低くなってしまい、多層構造ライナーから形成された段ボールは運搬用に適さず、好ましくない。
【0017】
本発明の多層構造ライナーの表層表面には撥水剤および撥水助剤を塗布することができる。撥水剤としては、ワックス、合成樹脂またはこれらの混合物を用いることができる。撥水剤の塗布量としては、乾燥重量で0.1〜2.0g/mが好ましく、更に、0.2〜1.0g/mが好ましい。より好ましくは0.3〜0.8g/mである。塗布量が上記範囲内であると、効率よく撥水させることができる。
また、撥水助剤としては、硫酸バンド、カチオン系表面サイズ剤、その他カチオン系混合物を用いることができる。
特に、本発明においては、古紙パルプを洗浄し、表層中の灰分含有率を7質量%以下にするので、撥水剤および撥水助剤の使用量を削減することができる。
撥水剤は、塗布する際の粘度を調整して塗布性を向上させるため、水溶性樹脂と混合して用いることもできる。前記水溶性樹脂としては、例えば、澱粉、変性デンプン、ポリビニルアルコール、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂、アクリルアミド またはポリエステル等を挙げることができる。
【0018】
次に、本発明の多層構造ライナーの製造方法について説明する。
【0019】
古紙パルプは、段ボール古紙等を離解、粗選、精選した後、洗浄工程に導入後、灰分含有率が7質量%以下になるように、洗浄される。
灰分含有率を7質量%以下にすることにより、本発明の多層構造ライナーの撥水性を向上させることができ、撥水剤、撥水助剤の使用量を削減することができる。灰分含有率が7質量%よりも多いと、多層構造ライナー表層に撥水性能を付与するために、多量の撥水剤、撥水助剤を使用しなければならず、その結果、製造コストが嵩み、好ましくない。
灰分と撥水性との関係については、表層内部に無機物質が多量に存在すると撥水剤のパルプ繊維への定着が阻害され、表層表面に存在する撥水剤成分が表層内部へ浸透してしまうため、表層表面の撥水性が低下してしまうと考えられる。
【0020】
洗浄工程で用いられる洗浄装置としては、デッカーマシン、傾斜スクリーン、エキスト、スクリュープレスまたはフローテーター等を挙げることができ、なかでも濾過型の洗浄装置が好ましい。特に、DNTウォッシャー(相川鉄工社製)、バリオスプリット、コンパクトウォッシャ(IHIフォイトペーパーテクノロジー社製)、フォールウォッシャー(栄工機社製)を用いると、比較的短いパルプ繊維(カヤニ数平均繊維長0.1mm以下)が除去されるので、洗浄工程を経たパルプには比較的長いパルプ繊維(カヤニ数平均繊維長1.0mm以上)が多く存在し、その結果、抄紙の際の脱水効果が向上し、表層密度を上げることができる。更に、叩解を行い、紙力を増加することができるようになる。
洗浄装置に導入されるパルプの濃度としては、0.5〜4.0質量%が好ましく、更に、1.8〜3.2質量%がより好ましい。また、洗浄されたパルプの出口濃度は11〜16質量%に濃縮される。
【0021】
洗浄工程で除去された灰分や短いパルプ繊維は、加圧浮上分離装置により灰分を含むパルプ短繊維とクリア水に分けられる。クリア水は洗浄濃縮されたパルプの希釈用として使用することができる。灰分を含むパルプ短繊維は本発明の多層構造ライナーにおける中層や裏層の原料として利用することができる。
【0022】
洗浄工程を経たパルプは、調成工程に導入され、公知の攪拌混合装置を用いて、古紙含有率が60質量%以上になるようにバージンパルプと混合される。
【0023】
次いで、混合して得られたパルプは、叩解機により、叩解度250〜400ml(CSF)になるように叩解される。上記数値範囲であると、抄紙工程におけるプレスパートでの脱水性を維持しつつ、その結果、表層の密度が上がり、表層の破裂強さおよび引張り強さ等の紙力を向上させることができる。その結果、紙力増強剤やバージンパルプの使用量を減らすことができる。
叩解度は、JIS P 8121に規定されるカナダ標準ろ水度試験方法(CSF)で測定したフリーネスである。
叩解機としては、ダブルディスクリファイナーもしくはケミファイナー等のディスクリファイナー、ハイドラファイナーもしくはスーパーリファイナー等のコニカルリファイナーまたは円筒型叩解機等を挙げることができる。
【0024】
また、調成工程においては、必要に応じ、内添サイズ剤および紙力増強剤等の内添薬品を所望量添加することができる。内添サイズ剤としては、例えば、ロジン、スチレン−アクリル共重合体、スチレン―マレイン酸共重合体、アルケニル無水コハク酸またはアルキルケテンダイマー等を挙げることができ、紙力増強剤としては、変性デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアミド―エピクロルヒドリン樹脂、メラミン―ホルムアルデヒド樹脂、尿素―ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることができる。
【0025】
調成工程を経たパルプは、抄紙工程に導入され、抄紙機により、密度が0.78g/cmになるように多層構造ライナーの表層が抄造される。抄紙機としては、長網抄紙機または円網抄紙機等の公知の抄紙機が用いられる。
【0026】
更に、その他の層、例えば、中層および裏層は、表層とほぼ同じ工程で抄造されるが、中層および裏層には撥水性は要求されない。したがって、原料として古紙パルプを利用しても、灰分の除去が不要であるため、洗浄工程は不要である。また、中層および裏層の古紙パルプ含有率、灰分含有率および密度は、所望に応じて決定することができる。
【0027】
以上のようにして抄造された表層とその他の層、例えば、表層、中層および裏層は、湿紙の状態で、必要に応じて層間接着剤を用いて抄き合わせ、乾燥して、本発明の多層構造ライナーが形成される。層間接着剤としては、層間の剥離が生じない限りにおいて特に制限はなく、例えば、生澱粉、糊化した澱粉もしくはPVA等の水溶性接着剤またはアクリルアミド樹脂等の紙力増強剤等を用いることができる。
【0028】
次いで、多層構造ライナー表面に撥水剤が塗工される。必要に応じて、特許文献2のように撥水剤を塗工する前に、PVA等のバリア剤または撥水助剤を塗工することもできる。塗工方法としては、スプレー方式、ロールコート方式もしくはこれらを併用した方式のオンマシン加工法またはオフマシン加工法を用いることができる。塗工装置としては、カレンダー、バーコーター、ロッドコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーターまたはエアナイフコーター等の公知の塗工装置を用いることができる。
以上にようにして抄造された多層構造ライナーは必要に応じて、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置を用いて平滑化処理を行ってもよい。
【0029】
このようにして得られた多層構造ライナーは、通常の段ボールに使用される中芯紙を組み合わせて、段ボールとして利用される。本発明の多層構造ライナーは、2枚のライナーで波状形状の中芯紙を挟持してなる3層構造の段ボールとして用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「%」、「部」とは、断りのない限り「質量%」、「質量部」を表す。
【0031】
<実施例1>
以下のようにして、多層構造ライナーを抄造した。抄造した表層の灰分含有率、密度、撥水度および比破裂強さを、以下の方法により測定した。測+定結果を表1に示す。
<原材料の調成>
パルパーにて段ボール古紙を離解し、0.25mmのスリットスクリーンを通したパルプを中裏用のパルプAとした。このパルプAの525℃灰分は13%、フリーネスは360ml(CFS)であった。さらに、パルプAをDNTウォッシャーに通し、灰分の除去を行い、525℃灰分6%のパルプB(フリーネス460ml(CFS))を得た。得られたパルプBを叩解し、フリーネス320ml(CSF)のパルプCを得た。
<配合>
(1)表層
NUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ:灰分1%、フリーネス360ml(CSF))10部とパルプC(灰分6%、フリーネス320ml(CSF))90部からなるパルプスラリーに、さらに、パルプ固形分に対して、サイズ剤(商品名:AL1300/星光PMC社製)0.6%(固形分換算)、硫酸バンド2.5%(固形分換算)をそれぞれ添加して得た紙料を調成した。
(2)中層
雑誌古紙(フリーネス350ml(CSF))10部とパルプA(フリーネス360ml(CSF))90部からなるパルプスラリーに、硫酸バンド1.2%(固形分換算)をそれぞれ添加して得た紙料を調成した。
(3)裏層
雑誌古紙(フリーネス350ml(CSF))20部とパルプA(フリーネス360ml(CSF))80部からなるパルプスラリーに、パルプ固形分に対して、サイズ剤(商品名:AL1300/星光PMC社製)0.22%(固形分換算)、硫酸バンド1.2%(固形分換算)をそれぞれ添加して得た紙料を調成した。
【0032】
<製造方法>
上記紙料を用いて、抄紙速度650m/minで3層抄きを行い、坪量180g/mの多層構造ライナーを得た。また、各層の坪量を、表層40g/m、中層90g/m、裏層50g/mとした。
続いて、得られた多層構造ライナーの表面に、乾燥重量で0.5g/mの撥水剤(商品名:星光PMC社製、WR3906)を塗工して撥水ライナーとした。
【0033】
<実施例2>
実施例1において、表層をNUKP35部、パルプC65部としたこと以外同様に多層構造ライナーを得て、更に撥水ライナーとした。
【0034】
<実施例3>
実施例2において、撥水剤の塗工量を0.3g/mとしたこと以外同様に撥水ライナーを得た。
【0035】
<比較例1>
実施例1において、表層のパルプCに替えて、パルプA(灰分13%)を使用したこと以外同様に多層構造ライナーを得て、更に撥水ライナーとした。
【0036】
<比較例2>
比較例1において、表層をNUKP60部、パルプA40部としたこと以外同様に多層構造ライナーを得て、更に撥水ライナーとした。
【0037】
<比較例3>
比較例1において、撥水剤を塗布する前に、カチオン性表面サイズ剤(商品名:SS2710/星光PMC社製)を0.4g/m塗工すること以外同様に撥水ライナーを得た。
【0038】
<灰分含有率>
灰分含有率は、JIS P 8251に準拠した方法により測定した。表層の灰分は得られたライナーを水道水に24時間浸漬後、表層を剥がし、乾燥後JIS P 8251による。
【0039】
<密度>
密度は、JIS P 8118に準拠した方法で測定した。表層の密度は以下の方法にて測定した。光学顕微鏡を用いてライナーの断面写真を撮影し、表層の厚さを10ヶ所測定して平均し、表層の厚みとした。次いで、ライナーを25cm×40cmの大きさに断裁し、水道水に24時間浸漬した。浸漬したライナーを取り出し、表層を剥がし、熱風乾燥機を用いて105±2℃の温度で乾燥した。次いで、JIS P 8111に定める標準状態(23℃、50%r.h.)で重量を測定した。厚さ及び重量より表層の密度を算出した。
【0040】
<比破裂強さ>
比破裂強さは、JIS P 8131に準拠した方法で測定した。
【0041】
<撥水度>
撥水度はJAPAN TAPPI No.68により測定した。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示されるように、表層古紙灰分7%以下で古紙配合60%以上の実施例は、比較例のようにバージンパルプを多配合したり、カチオンサイズ剤塗工するというコストアップもなく、撥水度が高いと同時に、強度が高い。また、撥水剤の塗工量減も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の多層構造ライナーは、青果物、魚介類、冷凍品または冷蔵品等の輸送用段ボールとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙含有率が60質量%以上であって、灰分含有率が7質量%以下、かつ、密度が0.78g/cm以上である表層を有することを特徴とする多層構造ライナー。
【請求項2】
前記表層に乾燥重量で0.1〜2g/mの撥水剤が塗工されてなることを特徴とする請求項1に記載の多層構造ライナー。
【請求項3】
表層内の灰分含有率が7質量%以下となるように古紙パルプを洗浄する洗浄工程および洗浄搾液を処理する工程と、表層内の古紙含有率が60質量%以上になるように調製し、かつ、パルプ繊維を叩解する調成工程と、表層の密度が0.78g/cm以上になるように抄紙する抄紙工程と、を備えることを特徴とする多層構造ライナーの製造方法。

【公開番号】特開2007−297728(P2007−297728A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124575(P2006−124575)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(503072126)王子板紙株式会社 (4)
【Fターム(参考)】