説明

多層発泡体

【課題】 ウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の合成樹脂発泡体とポリイミド樹脂発泡体層の積層を試みたが、ポリイミド樹脂発泡体層の有する耐熱性が大幅に損なわれるため、軽量化が可能で、しかもポリイミド樹脂発泡体層成形体自体の耐熱性が大幅に損なわれることがなく、特性が良好な多層発泡造体を提供する。
【解決手段】ポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とを粘着剤あるいは接着剤を介して面接着あるいは点接着によって接合してなる多層発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多層発泡体に関し、さらに詳しくはポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とを接合してなる多層発泡体に関する。
【0002】
従来、メラミン樹脂は、主原料であるメラミンとホルムアルデヒド又はそれらの前縮合体に、触媒及び乳化剤などを配合し、混合することにより容易に生成させることができることが知られている。また、これらの原料にさらに発泡剤を添加し、混合した後、電子線を照射する等の方法により発泡してメラミン樹脂発泡体が得られることが知られている。
【0003】
また、他の合成樹脂発泡体としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の発泡体が広く使用されている。
また、耐熱性発泡体として、ポリイミド系発泡体が種々検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
特に、ガラス転移温度が300℃以上のポリイミドからなるポリイミド樹脂発泡体層が提案された(例えば、特許文献3参照。)。
また、前記のポリイミド樹脂発泡体層の発泡倍率を制御したポリイミド樹脂発泡体層およびその製法が提案された(例えば、特許文献4参照。)。
一方、従来の発泡体の成形加工性を改良した吸音・緩衝材が提案された(例えば、特許文献5参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平2−24326号公報
【特許文献2】特開平4−211440号公報
【特許文献3】特開2002−012688号公報
【特許文献4】特開2003−082100号公報
【特許文献5】特開平11−210108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の合成樹脂発泡体はいずれも100℃程度の耐熱性しかなく、また発泡倍率を大きくすることが困難であり軽量化の点でも問題がある。また、メラミン樹脂発泡体は比較的耐熱性は高いが十分ではない。
さらに、高耐熱性のポリイミド樹脂発泡体は、単位体積当たりのコストが高く一部の用途にしか使用できない。
このため、前記のウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の合成樹脂発泡体とポリイミド樹脂発泡体層の積層を試みたが、ポリイミド樹脂発泡体層の有する耐熱性が大幅に損なわれる。
従って、この発明の目的は、軽量化が可能で、しかもポリイミド樹脂発泡体層成形体自体の耐熱性が大幅に損なわれることがなく、特性が良好な多層発泡造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とを粘着剤あるいは接着剤を介して面接着あるいは点接着によって接合してなる多層発泡体に関する。
【発明の効果】
【0007】
この発明の多層発泡体は、ポリイミド樹脂発泡体層の耐熱性が大幅に損なわれることがなく、高温で長時間の使用に耐えることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施の形態を次に示す。
1)ポリイミド樹脂発泡体層が、高い温度と接する面側に配置されてなる上記の多層発泡体。
2)粘着材あるいは接着剤が、接合する前には表面にタック性を有する上記の多層発泡体。
3)ポリイミド樹脂発泡体層が、シ−ト状あるいはパイプ状である上記の多層発泡体。
4)粘着材あるいは接着剤が、接合後に100℃以上の耐熱温度を有する上記の多層発泡体。
5)粘着材あるいは接着剤が、接合する前の形状においてフィルム状である上記の多層発泡体。
【0009】
6)ポリイミド樹脂発泡体層が、300℃以上のガラス転移温度を有するポリイミドからなる上記の多層発泡体。
7)ポリイミド樹脂発泡体層が、テトラカルボン酸成分の出発物としてとして2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて得られたポリイミドからなるものである上記の多層発泡体。
8)ポリイミド樹脂発泡体層が、発泡倍率1.5〜300倍である上記の多層発泡体。
9)多層発泡体の形状が、シ−ト状またはパイプ状である上記の多層発泡体。
10)多層発泡体の構成が、ポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層との合計の厚みの1/2以上がメラミン樹脂発泡体層である上記の多層発泡体。
【0010】
この発明におけるポリイミド樹脂発泡体層は、ポリイミド、好適にはガラス転移温度が275℃以上、好適には300℃以上のポリイミドからなり、シ−ト状、パイプ状、箱状、立方体状などの形状、好適にはシ−ト状またはパイプ状に成形したものである。前記の発泡体としては、発泡倍率が1.5〜300倍(密度900〜5kg/mに相当する。)、特に100〜300倍のシ−ト状またはパイプ状に成形したものが好ましく、場合によっては一軸プレスによって、特に300℃以上450℃以下の温度で、圧縮加工して、発泡倍率を制御したポリイミド樹脂発泡体層であってもよい。ポリイミド樹脂発泡体層は層の厚みが0.1〜100mmであることが好ましい。
【0011】
前記のポリイミド樹脂発泡体層は、テトラカルボン酸成分とジアミン、好適には芳香族ジアミンおよびアミン成分中0.1〜10モル%のジアミノシロキサンを成分とするジアミンとを反応させて得られるポリイミド前駆体を加熱して発泡およびイミド化させたポリイミド樹脂発泡体を所望の形状に成形することによって得ることができる。
【0012】
前記のテトラカルボン酸成分としては、例えば2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物などが挙げられる。
【0013】
前記の芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、メチルパラフェニレンジアミン、メチルメタフェニレンジアミン、ジメチルパラフェニレンジアミン、ジメチルメタフェニレンジアミン、トリメチルパラフェニレンジアミン、トリメチルメタフェニレンジアミン、テトラメチルパラフェニレンジアミン、テトラメチルメタフェニレンジアミン、トリフルオロメチルパラフェニレンジアミン、トリフルオロメチルメタフェニレンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)パラフェニレンジアミン、ビス(トリフルオロメチル)メタフェニレンジアミン、メトキシパラフェニレンジアミン、メトキシメタフェニレンジアミン、カルボキシパラフェニレンジアミン、カルボキシメタフェニレンジアミン、メトキシカルボニルパラフェニレンジアミン、メトキシカルボニルメタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ビス(アミノメチルフェニル)メタン、ビス(アミノエチルフェニル)メタン等が挙げられる。
前記のジアミノシロキサンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを挙げることができる。
【0014】
前記のポリイミド樹脂発泡体層は、好適には次の工程によって得ることができる。すなわち、先ずテトラカルボン酸二無水物とエステル化溶媒、例えばメタノ−ル、エタノ−ル、n−プロパノ−ル、n−ブタノ−ルなどの低級一級アルコ−ル、好適にはメタノ−ルあるいはエタノ−ルとを均一混合し、溶解する第一の工程によって得られるハ−フエステルである芳香族テトラカルボン酸ジエステルと前記の芳香族ジアミンを主とし、発泡均一化のための成分であるジアミノジシロキサンおよびさらに必要ならばテトラアミノビフェニルのような分子内に3個以上のアミノ基を有するアミン化合物、例えば芳香族トリアミン化合物または芳香族テトラアミン化合物を高分子量のポリイミドとなるような組成比で混合、反応させてポリイミド前駆体溶液を得る。
【0015】
このポリイミド前駆体溶液には、イミド化触媒、例えば1,2−ジメチルイミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、置換ピリジンなどを加えてもよい。
また、他の公知の添加剤、例えば、無機フィラ−、無機あるいは有機顔料などを加えてもよい。
【0016】
次いで、上記ポリイミド前駆体溶液を蒸発乾固し、粉末化を行う。工業的にはスプレ−ドライヤ−などで行う。この蒸発温度は100℃未満好ましくは80℃以下の状態が保たれることが好ましい。高温乾燥では発泡性が極端に低下する。乾燥の際、常圧でも、加圧下でも、あるいは減圧下でもよい。
特に、ポリイミド前駆体として、発泡界面活性剤を含有しないテトラカルボン酸のハ−フエステル、ジアミンおよびメチルアルコ−ルから得られる混合溶液からなるポリイミド前駆体溶液を液体の粒子として噴霧し、40℃以下の乾燥温度で噴霧乾燥することによって得られる発泡成形用ポリイミド前駆体粉末を使用することがポリイミド樹脂発泡体層の均一性の観点から好ましい。
【0017】
次いで、適当なグリ−ン体を作成する工程からなる。例えば、室温での圧縮成形、スラリ−溶液として流延乾固、マイクロ波に不活性な容器への充填を行う。この際に、蓋はしなくともよい(すなわち、完全に固める必要はない。)。概略均一な状態のグリ−ン体であれば、発泡時の均一化は達成できる。
【0018】
次いで、好適にはマイクロ波加熱によって加熱する。この際に、一般的には2.45GHzで行う。これは日本の国内(電波法)に基く。粉末重量当たりのマイクロ波出力を目安とすることが好ましく、100g/1kW程度で約1分で発泡を開始し、2〜3分で発泡は収束することが好ましい。この状態では非常に脆い発泡体である。
【0019】
上記成形体を熱風等の加熱により、200℃程度から徐々に昇温する(一応の目安として、100℃/10分程度の昇温速度)。最終は(Tg+α)℃の温度にて5〜60分間、好適には10分間程度加熱する。
上記の各工程によって加熱発泡することによって、形状は不定形とはなるが、均一な発泡状態の弾力性がありかつ復元力に優れたポリイミド樹脂発泡体が得られる。このポリイミド樹脂発泡体は連続孔を形成している。適当な形状に切断する事により前記の形状を有するポリイミド樹脂発泡体層を得ることができる
【0020】
前記のポリイミド樹脂発泡体を得る工程において、固体状態のポリイミド前駆体の加熱を、発泡のための加熱と熱固定(高分子量化)のための加熱の2段階とすることが好ましい。
また、前記のポリイミド樹脂発泡体層を得る工程において、発泡のための加熱を、加熱均一性向上のためにマイクロ波加熱によって行うことが好ましい。この発泡の際に、ガスが通過する遮蔽版を置いて圧縮力を加えることにより、機械的緻密化を併せて行い発泡倍率を制御してもよい。
そして、熱固定(高分子量化)のための加熱を、ポリイミド樹脂発泡体層のガラス転移温度(Tg)以上の温度で行うことが好ましく、これによってポリイミド樹脂発泡体のアウトガス量を低減させることができる。
【0021】
前記の発泡工程の好適例によって得られるポリイミド樹脂発泡体層は、唯一のポリイミド樹脂発泡体(SOLIMIDE:INSPEC社販売)市販品のサンプル(Tg=250℃)と比較して、耐熱性、引張り強度および復元力が良好である。
【0022】
前記の工程においては、前記のポリイミド樹脂発泡体層、好適には発泡倍率が1.5〜300倍(密度900〜5kg/mに相当する。)、好適には50以上(密度27kg/m以下に相当する。)300倍以下、特に100倍以上(密度13.5kg/m以下に相当する。)300倍以下のポリイミド樹脂発泡体層が得られる。このポリイミド樹脂発泡体層から圧縮加工によって、発泡倍率を1.5〜100倍(密度900〜13.5kg/mに相当する。)に制御してもよく、圧縮加工しなくてもよい。
前記の圧縮加工は、好適にはポリイミド樹脂発泡体層を一軸プレスによって行うことができる。
前記の圧縮加工は、300℃以上450℃以下の温度で行うことが好ましい。
【0023】
前記の発泡体から任意の成形機、例えば切断機を使用して任意の形状、例えばシ−ト状、パイプ状、箱状、立方体状、好適にはシ−ト状またはパイプ状に成形してポリイミド樹脂発泡体層を得ることができる。
【0024】
前記の方法によれば、ガラス転移温度が275℃以上、特に300℃以上のポリイミドからなり、発泡倍率が1.5〜300倍(密度900〜5kg/mに相当する。)であり、前記の形状を有する厚みが0.1〜100mm、特に0.1〜50mmのポリイミド樹脂発泡体層、その中でも特にシ−ト状あるいはパイプ状のポリイミド樹脂発泡体層、特に引張強度が0.05〜3MPaであるポリイミド樹脂発泡体層を得ることができる。
【0025】
この発明におけるメラミン樹脂発泡体は、主原料であるメラミンとホルムアルデヒドとから得られる前縮合体に、触媒、乳化剤及び発泡剤などを配合し、混合した後、加熱、或いは電子線の照射等、適宜の手段によって、発泡、硬化させて得られる。前縮合体を生成させるためのメラミンとホルムアルデヒドとのモル比は、メラミン:ホルムアルデヒドが1:1.5〜4、特に1:2〜3.5とすることが好ましい。また、数平均分子量が200〜1000、特に200〜400の前縮合体が好ましい。尚、ホルムアルデヒドとしては、通常、その水溶液であるホルマリンが使用される。
【0026】
上記のメラミンおよびホルムアルデヒドの他に、この単量体を100質量部とした場合に、50質量部まで、特に、20質量部までの各種の単量体を使用することができる。メラミンに対応する他の単量体としては、アルキル置換メラミン、尿素、ウレタン、カルボン酸アミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホン酸アミド、脂肪族アミン、フェノ−ル及びその誘導体などを使用することができる。また、アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、トリメチロ−ルアセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフロ−ル、グリオキサ−ル、フタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒドなどを用いることができる。
【0027】
上記メラミン樹脂発泡体用の発泡剤としては、ペンタン、ヒドロキシフルオロエ−テル等を使用することができる。特に、ペンタンは少量でも容易に発泡体を得ることができる。なお、ペンタンは揮発引火性を有し、爆発の恐れもある危険物であり、その取り扱いには十分な注意を要する。更に、これら従来の発泡剤では、発泡体のセル径は150〜250μmが限度であり、より微細な構造を有する発泡体とすることは困難である。
【0028】
このため、前記のヒドロキシフルオロエ−テルが好適に使用される。ヒドロキシフルオロエ−テルとしては、CFCFOCH、(CFCFOCH、CF(CFOCH、CF(CFOC及び(CFCFCFOCH等が挙げられる。これらのうちでは、沸点が低いCFCFOCH(沸点;34℃)及び(CFCFOCH(沸点;29℃)が、セル径が小さく、微細構造を有する発泡体とするうえで特に好ましい。また、上記触媒としては、通常、ギ酸が用いられる。更に、乳化剤としては、スルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤などを使用することができる。
【0029】
前記のヒドロキシフルオロエ−テルは、前縮合体を100質量部とした場合に、1〜80質量部、特に10〜70質量部、更には20〜60質量部、その中でも30〜50質量部とすることがより好ましく、セル径の小さい発泡体を安定して得ることができ、吸水性、浸透性及び、保水性に優れたメラミン樹脂発泡体を容易に得ることができる。このヒドロキシフルオロエ−テルを発泡剤として使用することにより微細な構造の発泡体とすることができる。
【0030】
上記の発泡において、成形型を使用することが好ましく、通常は電子線が透過し得る材質からなり、且つ水の気化、及び発泡原料の発泡、硬化にともなう昇温に耐えられるだけの耐熱性を有するものを使用することができる。耐熱温度は、通常、150℃以上であるものが好ましい。
成形型への発泡原料の注入量は、オ−プン発泡によって得られる発泡体の密度をもとに調整される。オ−プン発泡とは、型を、閉じた空間とすることなく、開放面を設け大気圧下で自由に発泡させた発泡体及び発泡方法をいい、この密度は、上部が開放された筐体に所定量の発泡原料を投入し、電子線を照射して発泡体とし、この発泡体の重量と体積との比、即ち、嵩密度として算出される。そして、この嵩密度に基づいて発泡原料の注入量が調整され、所望の密度を有する発泡体が得られる。
【0031】
前記の電子線の照射は、その電力消費量が発泡原料に対して500〜1000kW、特に600〜800kWとなるように調整する。この電力消費量が過少であると発泡せず、低密度の硬化体が得られるにすぎない。また、電力消費量が過多である場合は、発泡時の圧力が著しく高くなり、型の消耗が激しいばかりか、爆発の危険性すらあり、好ましくない。
前記の方法によって、密度が0.002〜0.015g/cm程度となり、セル径が同じくらいの従来のメラミン樹脂発泡体と比べて低密度となるメラミン樹脂発泡体を得ることができる。
【0032】
前記の発泡体から任意の成形機、例えば切断機を使用して任意の形状、例えばシ−ト状、パイプ状、箱状、立方体状、好適にはシ−ト状またはパイプ状に成形してポリイミド樹脂樹脂発泡体層と接し、好適にはポリイミド樹脂樹脂発泡体層の外層を構成するメラミン樹脂発泡体層を得ることができる。
【0033】
この発明の多層発泡体は、前記のポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とを粘着剤あるいは接着剤を介して面接着あるいは点接着によって接合することによって得ることができる。
前記の粘着材あるいは接着剤としては、耐熱性、特に接合後に100℃以上の耐熱性を有するものであれば特に制限はなく一般に耐熱性の粘着剤あるいは接着剤として使用されているものが挙げられる。例えば、耐熱性を有する粘着剤あるいは接着剤として、一液性シリコンゴム粘着剤(商品名:RTVゴム KE3417/信越シリコ−ン社製)、二液性シリコンゴム粘着剤(商品名:RTVゴム KE1204/信越シリコ−ン社製)、二液性エポキシ接着剤(商品名:セメダイン ハイス−パ−5/セメダイン社製)、二液性エポキシ接着剤(商品名:セメダイン EP001/セメダイン社製)などを好適に使用することができる。
前記の粘着材あるいは接着剤は接合部の厚みが0.0001〜2mm程度であることが好ましい。
前記の粘着材あるいは接着剤は接合前にフィルム状であると各層の接合時の取り扱い上有利な場合がある。
また、点接着の場合は、接合間隔が2〜100mm程度、特に10〜50mm程度であることが好ましい。
【0034】
この発明の多層発泡体は、前記のポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層との合計の厚みの1/2以上、好適には1/3以上、特に1/3以上で4/5以下がメラミン樹脂発泡体層となるようにすることが好ましい。
この発明の多層発泡体は、高いレベルの耐熱性(高温および長時間の使用に耐え得ることを意味する。)および小さい熱伝導性を同時に満足させることができる。
すなわち、極めて高い温度と接する面側にポリイミド樹脂発泡体層を配置し、反対面側にメラミン樹脂発泡体層を配置し両層を粘着剤あるいは接着剤を介して接合することによって、高いレベルの耐熱性および小さい熱伝導性を同時に満足させることができるのである。
【0035】
実施例および比較例における物性測定法を以下に示す。
ガラス転移温度:DSC(セイコ−電子工業社製、DSC220C)を用い、N雰囲気下、20℃/分の昇温速度にて測定。
発泡倍率:真密度/見かけ密度より算出。
真密度は、同一組成のポリイミドフィルムを常法により作製し、密度勾配管を用いて測定した値を用いた。
アウトガス量は、TDS分析によって求めた。
【0036】
見かけ密度は、立方体または四角形シ−ト状に切断したものをノギスにより計測して体積を求め、また天秤により質量を計測し、質量/体積により求めた。
引張強度:テンシロン(東洋測器製UTM−5T)を用い、ASTM D3574(TestE)により測定。
【0037】
以下の記載において、各略号は次の化合物を意味する。
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル
DADSi:1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン
DMZ:1,2−ジメチルイミダゾ−ル
【0038】
参考例1
ポリイミド樹脂発泡体層の形成
a−BPDA55.31kg(188モル)、BTDA15.14kg(47モル)とメタノ−ル100kgを500L反応釜に仕込み、攪拌しながら加熱昇温し、約65℃で2時間還流下で攪拌を行った。終了後、溶液を冷却し、20℃以下の温調下でPPD25.16kg(232.65モル)を添加し完溶させた。ついで、DADSi0.63kg(2.35モル)を添加した。更に、DMZ2.90kg(モル)を添加し、メタノ−ル40kgを加え45質量%のポリイミド前駆体溶液を得た。
この溶液をミストドライヤ−(MDP−050:藤崎電機株式会社製)(以下MDP−050)を用いて、送液量0.43L/分、送風量26m/分、温度35℃で噴霧乾燥し、ポリイミド前駆体粉末を得た。
この処理条件で行ったところ、13kg/Hrの処理量であり、生産性も良好であった。
この粉末は、平均粒径6μmであり20μmを超えるものはなかった。
【0039】
この粉末を用いて、マイクロ波加熱装置(MOH−3000:ミクロ電子株式会社製)を用い、3kWで6分間発泡成形を行った。次に、この発泡成形品を熱風オ−ブン(STPH−201:タバイエスペック株式会社製)で窒素雰囲気下、段階的に昇温し、最終温度400℃で10分間加熱処理を行いポリイミド発泡体を得た。
この発泡体断面を、マイクロスコ−プ(以下MS)(VH−5000C:株式会社キ−エンス社製)で観察したところ、気泡径のバラツキの少ない良好なポリイミド発泡体であった。
得られた発泡体は、発泡倍率155倍、ガラス転位温度(Tg)373℃で、アウトガスは0.1Pa・l/s/g(300℃)、引張強度が約0.1MPaであった。
【実施例1】
【0040】
前記の発泡体をカットした形状が100mmx100mmx20mm(厚み)のポリイミド樹脂発泡体層と、市販のメラミン樹脂発泡体(イノアック社、白色)から同一形状にカットしたメラミン樹脂発泡体層とを、エポキシ系接着剤(東亞合成社、商品名:BX−60)を使用して点接着して(接合間隔:25mm)接合して、3層構造(ポリイミド樹脂発泡体層/エポキシ系接着剤/メラミン樹脂発泡体層)の多層発泡体(各層の厚み構成:20mm/0.01mm/20mm)を得た。
この多層発泡体のポリイミド樹脂発泡体層を面状ヒ−タ−で300℃に加熱し、100時間保持した。100時間加熱後のポリイミド樹脂発泡体層およびメラミン樹脂発泡体層間の剥離強度とメラミン樹脂発泡間体層側の温度を測定した。
その結果、剥離強度の測定時にポリイミド樹脂発泡体層で破壊し、接着剤の劣化は認められなかった。また、メラミン樹脂発泡間体層側の温度は53℃であった。
【実施例2】
【0041】
実施例1におけるポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とをエポキシ系接着剤を使用して点接着して(接合間隔:25mm)接合して、5層構造(ポリイミド樹脂発泡体層/エポキシ系接着剤/メラミン樹脂発泡体層/エポキシ系接着剤/ポリイミド樹脂発泡体層)の多層発泡体(各層の構成:20mm/0.01mm/20mm/0.01mm/20mm)を得た。
この多層発泡体のポリイミド樹脂発泡体層を面状ヒ−タ−で300℃に加熱し、100時間保持した。100時間加熱後のポリイミド樹脂発泡体層およびメラミン樹脂発泡体層間の剥離強度とメラミン樹脂発泡間体層側の温度を測定した。
その結果、剥離強度の測定時にポリイミド樹脂発泡体層で破壊し、接着剤の劣化は認められなかった。また、メラミン樹脂発泡間体層側の温度は53℃であった。
【0042】
比較例1
メラミン樹脂発泡体に代えて市販のウレタン樹脂発泡体(イノアック社)を使用した他は実施例1と同様にして、3層構造(ポリイミド樹脂発泡体層/エポキシ系接着剤/ウレタン樹脂発泡体層の多層発泡体を得た。
この多層発泡体のポリイミド樹脂発泡体層を面状ヒ−タ−で300℃に加熱し、100時間保持した。
その結果、ウレタン樹脂発泡体層が接着面で劣化し黒色に変色していた。剥離強度についてはウレタン樹脂発泡体層側で自然剥離した。ウレタン樹脂発泡体層側の表面温度が115℃であり断熱性も損なわれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層とを粘着剤あるいは接着剤を介して面接着あるいは点接着によって接合してなる多層発泡体。
【請求項2】
ポリイミド樹脂発泡体層が、高い温度と接する面側に配置されてなる請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項3】
粘着材あるいは接着剤が、接合する前には表面にタック性を有する請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項4】
ポリイミド樹脂発泡体層が、シ−ト状あるいはパイプ状である請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項5】
粘着材あるいは接着剤が、接合後に100℃以上の耐熱温度を有する請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項6】
粘着材あるいは接着剤が、接合する前の形状においてフィルム状である請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項7】
ポリイミド樹脂発泡体層が、300℃以上のガラス転移温度を有するポリイミドからなる請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項8】
ポリイミド樹脂発泡体層が、テトラカルボン酸成分の出発物としてとして2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いて得られたポリイミドからなるものである請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項9】
ポリイミド樹脂発泡体層が、発泡倍率1.5〜200倍である請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項10】
多層発泡体の形状が、シ−ト状またはパイプ状である請求項1に記載の多層発泡体。
【請求項11】
多層発泡体の構成が、ポリイミド樹脂発泡体層とメラミン樹脂発泡体層との合計の厚みの1/2以上がメラミン樹脂発泡体層である請求項1に記載の多層発泡体。

【公開番号】特開2007−90588(P2007−90588A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281190(P2005−281190)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】