多層紙壁紙及びその製造方法
【課題】複数の壁紙原紙を複数設けて多層にした多層紙壁紙であって、上層の壁紙原紙を剥がして更新した場合に、更新された壁紙原紙層の上層に合成樹脂の保護層が形成されている多層の壁紙を提供する。
【解決手段】壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面である多層紙壁紙。
【解決手段】壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面である多層紙壁紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙壁紙に関する。特に、複数の壁紙原紙層を備え、壁に貼りつけた後、最表層から剥がして更新して使用することができる多層紙壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙壁紙は、一般住居や事務室、貸し室、レストラン、ホテル、病院等において室内の美麗化のために壁に貼付されて、きわめて一般的に使用される内装材である。
壁紙は、転居や模様替えによって張り替えられ、更新される。特に、賃貸物件やレストラン、客室などの業務用では、その頻度が高くなる。
古い紙壁紙を一旦除去し、新しい紙壁紙を貼り付ける更新作業に適した紙壁紙について、本出願人は継続して提案してきている。
【0003】
特許文献1(特開2004−124270号公報)には、嵩高パルプ層及び天然パルプを主成分とする支持層とから構成される多層紙を上層紙とし、前記支持層側に裏打ち紙を貼合した紙壁紙であって、上層紙の支持層と嵩高パルプ層との間の界面あるいは嵩高パルプ層内部の層間において、剥離性を持たせることにより、張り替え時に剥がし易いだけでなく、剥がした後に壁面に残る紙層が均一であって、特に下地処理をしなくても容易にその上から新たに貼ることができ、紙壁紙が開示されている。
特許文献2(特開2005−314861号公報)には、紙中に高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物の4級アンモニウム塩、高級脂肪酸とポリアミノポリアミドとエピクロルヒドリン縮合物の4級アンモニウム塩等の脂肪酸系誘導体を含有させ、好ましくはステキヒトサイズ度が10秒以上で、紙層間強度が20N/m以上40N/m以下で、水溶性樹脂バインダー及び/または水分散性樹脂バインダーを主成分とする塗液を少なくとも片面に塗工した壁紙用裏打ち紙であって、壁紙施工時に要求されるオープンタイムが長く、壁紙の張り替え時に剥がしやすく、張り替えた後、壁に残る裏打ち紙層が均一である壁紙用裏打ち紙が開示されている。
また、多層にした壁紙を順次剥がして更新できる壁紙の提案もなされている。特許文献3(実公昭59−9036号公報)には、裏面に接着剤層を有する複数の壁紙を表面から順次別離し得るように貼り合わせる着想が開示されている。又、特許文献4(特開2006−144143号公報)にはポリエチレン合成繊維と木材パルプ繊維とからなる混抄紙とポリプロピレン合成繊維と木材繊維からなる混抄紙を交互に積層した後、熱プレスして得られる多層の壁紙が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−124270号公報
【特許文献2】特開2005−314861号公報
【特許文献3】実公昭59−9036号公報
【特許文献4】特開2006−144143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3や特許文献4に記載されている多層壁紙においては、表層の壁紙を剥がした後に表面に現れる新しい壁紙表面は紙面が露出するため、耐汚染性や耐水性が劣るという問題があった。そこで、本願発明は、複数の壁紙原紙を複数設けて多層にした多層紙壁紙であって、上層の壁紙原紙を剥がして更新した場合に、更新された壁紙原紙層の上層に合成樹脂の保護層が形成されている多層の壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紙層と合成樹脂層を交互に積層した多層紙壁紙であって、紙層と紙層の間に設ける合成樹脂層を複数の熱可塑性合成樹脂層から形成し、該熱可塑性合成樹脂層間の界面を剥離可能に設けて、上層(壁に貼り合わせた際に表層となる)の紙層を剥がした場合に更新される新しい表面には熱可塑性合成樹脂層が現れるように工夫した多層紙壁紙を提案する。本発明の主な構成は以下のとおりである。
【0007】
(1)壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面であることを特徴とする多層紙壁紙。
(2)前記剥離可能界面は、互いに相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂からなる2つの熱可塑性樹脂層から形成されることを特徴とする(1)記載の多層紙壁紙。
(3)前記剥離可能界面は厚みが異なる2つの熱可塑性合成樹脂層から形成され、上層側の熱可塑性樹脂層の厚みと下層側の熱可塑性樹脂層の厚みの差が5μm以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の多層紙壁紙。
(4)前記剥離可能界面を形成するいずれか一つの熱可塑性合成樹脂層に、剥離可能界面の剥離強度を調整する添加剤が含有されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(5)前記合成樹脂層の厚みが40μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(6)上層側に設けられた合成樹脂層中の剥離可能界面の剥離強度が、下層側に設けられた合成樹紙層中の剥離可能界面の剥離強度より小さいことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(7)エンボス加工を施したことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(8)最上層の壁紙原紙の表面に塗工層が設けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(9)壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙層を複数備えた多層紙壁紙をサンドラミネーション手段により製造する方法であって、前記合成樹脂層は複数の異なる熱可塑性樹脂を共押出して設け、かつ、前記複数の熱可塑性合成樹脂層間に1つの剥離可能界面を形成することを特徴とする多層紙壁紙の製造方法。
(10)熱可塑性合成樹脂層間の界面に形成した剥離可能界面を剥離強度が、3〜30N/mであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の更新可能多層紙壁紙。
(11)各層の紙壁紙には、模様が形成されていることを特徴とする(1) 〜(8)のいずれかに記載の更新可能多層紙壁紙。
【発明の効果】
【0008】
1.複層設けた壁紙原紙層の内、上層の紙層を剥がすことにより容易に新しい壁紙面を露出させることができる。そして、更新面が合成樹脂層となるので、紙面が露出することなく、対汚染性、耐水性を有する更新面が得られる。
2.複数設けた熱可塑性合成樹脂層中にある界面の接着強度を調整することにより、熱可塑性合成樹脂層の界面から剥離できる。これにより、上層(壁に貼り合わせた際に表層となる)の紙層を引き剥がした場合に合成樹脂層間から剥離させることができる。
3.多層紙壁紙を構成する紙層と紙層の間に設けられた各合成樹脂層中の、熱可塑性合成樹脂層間の界面の接着強度を調整することにより、上層側にある壁紙原紙から順に剥離が容易となるように構成することができる。剥離界面を形成する手段として、相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂の組み合わせ、層厚の異なる樹脂層を設けること、添加剤を用いること等を採用することにより、実現することが可能である。一方、コロナ処理やプラズマ処理などを紙側に施すことにより、紙と樹脂の接着強度を向上させることができ、確実に、更新面側に熱可塑性合成樹脂層を残すことができる。
4.紙層と合成樹脂層を接合する手段として、別途に接着剤を用いることなく、積層し、かつ合成樹脂層の界面に剥離面を形成することができたものである。
5.紙面に模様を印刷することができ、更新した場合に、新規な模様面を表現することができる。季節感を出すこともでき、接客スペースなどの雰囲気にあった模様替えも容易となる。紙層を多層にするのでエンボスによる凹凸模様付けを下層まで設けることができ、更新してもエンボス模様を表出することができる。
6.サンドラミネーション工程のみにより、容易に接着力に差を設けた多層紙壁紙を製造することができる。工程数を増加させる必要が無く、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本出願は、紙層と複数にした合成樹脂層とを交互に積層し、複数にした合成樹脂層の中間界面から剥がすことができ、更新された新しい表面には合成樹脂層が現れるように工夫した多層紙壁紙に関する発明を提案する。本発明は、剥離して表出した下層を更新面とすることができる多層紙壁紙であって、基材層となる壁紙原紙の表面側に保護層となる合成樹脂層が形成されるように剥離性をコントロールした多層紙壁紙である。本発明に係る多層紙壁紙は、壁紙原紙である紙層と複層にした合成樹脂を交互に接着積層したものであって、その接着機能は、接着剤を必要とすることなく順次剥離可能に界面接着力をコントロールした多層紙壁紙である。
【0010】
<多層紙壁紙の層構成>
本発明の多層壁紙の一例の概略図を図1に示す。表層側から塗工層、壁紙原紙a層、合成樹脂層a1・合成樹脂層a2、壁紙原紙b層、合成樹脂層b1・合成樹脂層b2、壁紙原紙c層・・・・と壁紙原紙層と複数設けられた合成樹脂層が交互に積層された多層紙壁紙である。図示中に示す壁面は、積層方向性を示すために表示したものであって、本発明の多層紙壁紙を構成する要素ではない。この多層紙壁紙は、上下の壁紙原紙の間に設けられた複数の合成樹脂層の間に形成された剥離可能界面1,2,・・・から引き剥がして、壁紙原紙b、cの表面に設けられた合成樹脂層a2、b2・・を新しい面として更新することができる。
【0011】
合成樹脂層間に剥離可能界面を形成する手段としては、合成樹脂層を複数の熱可塑性合成樹脂層からなる層とする方法を採用し、相溶性が小さい熱可塑性樹脂を組み合わせる方法、紙層と合成樹脂層間の接着力を大きくする方法、熱可塑性樹脂層に剥離強度を調整する添加剤を配合する方法で、剥離可能界面の剥離性を調整できる。また合成樹脂層が複数ある場合は、上方(壁に貼りつけたときは最表層となる)の剥離可能界面の剥離強度を下方のそれより大きくする方法を適用して設計する。
【0012】
本発明の多層紙壁紙は、2枚の壁紙原紙間に熱可塑性合成樹脂を共押出ししながら圧着して2枚の壁紙原紙を接合するサンドラミネーション手法により積層状態を作り出すことができる。
図2にサンドラミネーション手法によって積層する模式図を示す。左右から壁紙原紙2、5を供給しつつ中央に設けたTダイ6から熱可塑性樹脂3、4を供給し、下方に配置したクーリングロール8とニップロール7により、圧着を完成することができる。右側から供給される壁紙原紙5を下層側とする。また、左側から供給される壁紙原紙2の表面側に予め塗工処理を施し塗工層1を形成しておくこともできる。このサンドラミネーションを2段、3段に行うことにより、多層化が可能となる。図2中に示す層構成は図1に当てはめると壁紙原紙2、5が壁紙原紙a、bに、熱可塑性樹脂3、4が熱可塑性樹脂a1、a2に塗工層1が塗工層に相当する。また、コロナ処理11は、必要に応じて適用することができる。
【0013】
<壁紙原紙>
本発明の壁紙用原紙に使用する紙基材は、針葉樹材の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)を単独、または任意の配合率で混合して抄紙したものである。
本発明の壁紙用原紙に使用する紙基材には、不透明度を向上させるために、填料を紙基材当たり1〜30重量%含有させることが好ましい。上記填料としては、ビニルペースト塗工時のブリスター(裏打ち紙と塩化ビニル層との間の膨れ)の発生を抑制することが可能である、焼成クレー、カオリン、イライトから選択された少なくとも1種を含有することが好ましい。また、これら以外に、クレー、デラミネーティッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料を使用してもよい。
壁紙用原紙表面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理を施すと被処理面と熱可塑性合成樹脂面との接着強度を向上させることができる。したがって、このような表面処理の有無によって、界面の剥離強度に差を付けることができる。また、処理の程度によっても剥離力に違いを出すことが可能である。このような紙の表面処理と熱可塑性樹脂の組成や表面処理などと組み合わせることにより、多層に配した壁紙用原紙を表面から剥離できるように順位付けることが可能となる。
【0014】
<コロナ処理及びフレーム処理>
コロナ処理とは、原紙表面上にコロナ放電する処理であり、電圧×電流/(電極幅×フィルム走行速度)(W・min/m2)によって算出されるコロナ放電処理密度は、1〜200W・min/m2であることが好ましく、5〜150W・min/m2であることがより好ましく、10〜100W・min/m2であることがさらに好ましい。コロナ放電処理密度が高いほど被処理面と熱可塑性樹脂面の接着強度を向上させることができる。前述したコロナ処理を、熱可塑性樹脂層と接着する任意の表面に施すことにより、合成樹脂層と紙層との接着強度を調整することができる。
【0015】
フレーム処理は、天然ガスやプロパン等を燃焼させたときに生じる火炎にフィルム表面を接することで処理が行われる。プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【0016】
<熱可塑性合成樹脂>
本発明は、少なくとも上下の壁紙原紙の間に、中間層として合成樹脂層を設け、その層が2層以上の熱可塑性樹脂層からなる。
そして、上記の壁紙原紙/合成樹脂層(=複数の熱可塑性樹脂層)/壁紙原紙の3層のうち、合成樹脂層の間にある熱可塑性樹脂層界面から剥離(擬似接着)できるものである。疑似接着した熱可塑性樹脂層界面から上部の壁紙原紙を剥離したときに熱可塑性合成樹脂層に被覆された次の壁紙原紙が現れるものである。
【0017】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂層としては、押出しラミネートが可能であれば結晶性樹脂、非結晶性樹脂のどちらも使用することができる。結晶性樹脂としては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、PPS樹脂等を挙げることができる。非結晶性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、変性PPE、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、壁紙原紙との接着性が良好であることから、ポリエチレンが好ましく用いられる。ポリエチレンは、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンに区分される。密度としては、直鎖状低密度ポリエチレンは888〜910kg/m3、低密度ポリエチレンは910〜925kg/m3、中密度ポリエチレンは925〜940kg/m3、さらに高密度ポリエチレンは940〜970kg/m3程度である。その他の熱可塑性樹脂の密度としては特に限定されるものではなく公知の物を用いてもかまわない。
【0018】
また、熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、上記した中でもポリメチルペンテンも好適である。ポリメチルペンテンは他の熱可塑性樹脂との接着性が比較的弱く、従来は共押し出しすると界面間で剥離しやすいことが欠点であったが、本発明ではこの性質を逆に利用することを見出したものである。
また、ポリスチレン、ポリカーボネートは押出しラミネートの加工適性に優れ好ましく用いられる。特に、ポリスチレンは安価に入手可能で工業的にも有利であり、一般に、汎用ポリスチレン(以下GPPS)と耐衝撃性を付与したハイインパクトポリスチレン(以下HISP)との2つに大きく分類され、本発明においてはいずれも使用可能である。
【0019】
<剥離界面を形成する熱可塑性樹脂の組み合わせの例>
本発明の合成樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、互いに相溶性の小さい樹脂を用い接着性を調整することが好ましい。なお、樹脂の相溶性が小さいとは、樹脂を溶融状態で混合したとき、完全に混ざり合わず白濁する場合をいう。
例えば、ポリエチレンとポリメチルペンテン、ポリエチレンとポリスチレン、ポリエチレンとポリエステル、ポリエチレンとポリカーボネート、ポリプロピレンとポリカーボネート、ポリプロピレンとポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリスチレン、ポリプロピレンとポリエステル、高密度ポリエチレンとポリプロピレン等が挙げられる。なお、同じ樹脂同士であっても、後述する接着性調整の手段を適宜用いることにより、界面を剥離可能とすることができる。
【0020】
<剥離強度調整用添加剤>
また、剥離強度は、一方の熱可塑性樹脂層に無機填料を添加し調整することができる。
無機填料の種類としては、炭酸カルシウム、クレー、タルム、シリカ、など1種類以上使用することができる。無機填料の含有量が多いと剥離が軽くなるので、所望の接着性に応じて含有量を適宜決定すればよいが、熱可塑性樹脂に対し1〜10重量%、好ましくは3〜6重量%程度が適当である。
【0021】
また熱可塑性樹脂にα−オレフィン共重合体、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体の水素添加誘導体、又は後述する変性ポリオレフィンを混合することもできる。α−オレフィン共重合体は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良く、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体又はその水素添加誘導体としては、水添スチレン・ブタジエン・ラバーやスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体が挙げられる。中でも、水添スチレン・ブタジエン・ラバー(例えばJSR社製商品名ダイナロン1320P)が好ましい。
【0022】
(変性ポリオレフィン)
変性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では特に、低温度における紙基材との接着性に優れることから、エチレンメタアクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
単独重合体あるいは共重合体の例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・ペンテン-1共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体及びエチレン-ブテン-1共重合体等を挙げることできる。単独重合体あるいは共重合体の変性剤として使用される極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のようなカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、無水クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の酸無水物及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の酸無水物のような無水カルボン酸類;(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、テトラヒドロフタル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、マレイン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、イタコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、フマル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、クロトン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、ノルボルネンジカルボン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)のアルキルエステル及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のアルキルエステルのようなエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートのようなヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステル類; 10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール及びグリセリンモノアルコールのような水酸基含有化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、イタコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、アリルコハク酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン及びビニルシクロヘキセンモノオキシドのようなエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル及びメタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートモノメタノールアミノハーフソルのような(メタ)アクリル酸のアルキルアミノエステル;N-ビニルジエチルアミン及びN-アセチルビニルアミンのようなビニルアミン類;アリルアミン、メタクリルアミン、N-メチルアクリルアミン、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアリルアミン類;アクリルアミド及びN-メチルアクリルアミドのようなアクリルアミド類;p-アミノスチレンのようなアミノスチレン化合物;並びに6-アミノヘキシルコハク酸イミド及び2-アミノエチルコハク酸イミドのようなアミノアルキルコハク酸イミド類を挙げることができる。これらの変性剤は、単独で使用することもできるし、また変性剤の特性が損なわれない範囲内で組み合わせて使用することもできる。これらの変性剤の中では(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
<オゾン処理>
オゾン処理は、Tダイから押し出された熱可塑性合成樹脂の溶融膜の片面にオゾン含有空気を吹き付けることにより行われ、このオゾン処理した面と壁紙原紙表面の接着強度を向上させることができる。オゾン処理の条件は、例えば、樹脂の溶融膜の積層速度100m/分、エアギャップ130mm、オゾン濃度40g/m3、オゾン流量2m3/時で行うことができる。
【0024】
<剥離可能界面の生成>
2層以上の熱可塑性樹脂を上下壁紙原紙にラミネート(サンドラミネーション)し、ポリエチレンとポリメチルペンテンなどを組み合わせた2層構成とした樹脂層を積層することにより、樹脂層間を剥離可能にすることができる。また紙の表面処理した方はラミネート樹脂が強固に接着し、反表面処理面(即ち、裏面)側は熱可塑性樹脂面との密着性が相対的に弱くなり剥離が可能となる。
例えば、壁紙原紙a/TPXa1、LDPEa2/壁紙原紙bの場合、TPX層a1とLDPE層a2との界面に剥離可能部分を形成することになる。この場合、TPXとLDPEの相溶性が小さいことを剥離界面の生成に利用した。また壁紙原紙aのb表面側にコロナ処理などを施すことにより、熱可塑性樹脂と壁紙原紙の接着強度を強くすることができる。したがって、相対的に樹脂間の界面の剥離性を高めることができる。また合成樹脂層を厚くする程剥離性が悪くなる傾向があるので、下の層で合成樹脂層を厚くすると、界面剥離に順位をつけることができる。
【0025】
また壁紙原紙a/熱可塑性樹脂a1、熱可塑性樹脂a2/壁紙原紙b/熱可塑性樹脂b1、熱可塑性樹脂b2/壁紙原紙cの場合は、表層の壁紙原紙より下層(即ち 壁側)に向かうにつれ、剥離強度を強くする必要がある。この手法として、前述のコロナ処理やオゾン処理を組み合わせることのほか、熱可塑性樹脂層の厚みを増すことによって、接着強度を向上させることができる。例えば、熱可塑性樹脂a1、a2を6μmとし、熱可塑性樹脂b1、b2を8μmとすることにより、熱可塑性樹脂b1、b2側の接着強度を高くすることができる。また、熱可塑性合成樹脂層に炭酸カルシウムなどの無機填料を添加すると、接着強度を弱くすることができ、低密度ポリエチレン樹脂に変成ポリオレフィンなどを添加すると接着強度を強くすることができる。
したがって、層間の接着強度調節の因子としては、熱可塑性樹脂の種類、層厚、熱可塑性樹脂層中に添加剤を含有させるか否か、その種類及び使用量、紙基材層表面に対するコロナ処理の強度、熱可塑性樹脂層表面に対するオゾン処理の強度、壁紙原紙のプレヒート温度、樹脂押し出し温度等を挙げることができる。接着強度調節の因子のうちコロナ処理とオゾン処理とは、大きい接着強度を得るために開発された手法であるが、本発明では、これらの処理を中間層各々に対して、適宜使い分けることによって、剥離容易な積層シートを製造することができる。
このような、手段を組み合わせて用いることにより、多層紙壁紙の層剥離を順次表層の壁紙原紙裏面側の界面から剥離可能となるようにコントロールする。
【0026】
<デコレーション>
壁紙は、意匠性の他、汚れにくい耐汚染性などが求められ、エンボス加工やパターン模様が付与されている。本発明の紙壁紙は、更新しても樹脂層が表面に露出するので、耐水性、対汚染性を満足することができる。
紙壁原紙として、予め模様を印刷した壁紙原紙を使用することにより、更新した新しい面に模様を表出することができる。利用者の嗜好性や使用環境に応じた多層紙壁紙を供給することができる。例えば、レストランやホテルなど四季に合わせた演出が容易となる。
エンボス加工は、多層に積層した後に、全体に施すことにより下層までエンボスの凹凸を設けることが可能である。
更に、最表面は塗工層を設けた壁紙原紙を使用することにより、模様や表面保護層を設けることが可能であるし、出荷後、表面に再加工することも可能である。そして、壁に直接貼り付けられる裏面は、再加湿性接着糊などを付着させる加工を施すが、壁の種類などに応じて、従来行われている処理を適用することができる。
【0027】
<多段サンドラミネーション>
図2に基本的なサンドラミネーション手法による 壁紙原紙/熱可塑性合成樹脂/壁紙原紙 の3層構成を示した。これは、左側から表面側の壁紙原紙a、左側から次層の壁紙原紙bを供給し、中央に配置した熱可塑性合成樹脂を2つのTダイかつ2種類の熱可塑性合成樹脂の溶融膜を押し出して、下方に配置されたニップロールとクーリングロールで押圧して接合積層する。必要に応じて接着強度を高めるために左側から供給する壁紙原紙bの表面にコロナ処理を施すことができる。
図3はこれを連続して、多段に構成した例を示した多段ラミネーションを示す。なお、接着強度に変化を持たせる手段として、コロナ処理を各段に表記しているが、コロナ処理のみによって格段の接着強度を変化させることを意味しているものではなく、模式的にしめしたものであって、オゾン処理や熱可塑性合成樹脂の添加剤配合などと組み合わせて行われることは前述のとおりである。下層側から積層し、必要な回数のサンドラミネーションを施して、上層を形成することが好ましい。図3は左側から最下層の壁紙原紙eの表面にコロナ処理を施しながら、中央から供給される合成樹脂d1、d2と右側から供給される壁紙原紙dをまず最初にサンドラミネーションして、接合して、次の段において、左側から供給される壁紙原紙dの表面に、合成樹脂c1、c2と右側から供給される壁紙原紙cをサンドラミネーションして接合する。次々とこの操作を繰り返すことにより壁紙原紙a、b、c、d、eの5層をもつ多層紙壁紙を製造することができることとなる。
【0028】
<更新処理>
本発明の多層紙壁紙は、表層側から紙層を引き剥がすことにより、更新することができる。更新された表面には、合成樹脂層が設けられているので、耐水性、耐汚染性が保たれている。
【0029】
<適用箇所>
適用箇所は特に限定されることはない。四季ごとに定期的に模様替えするなどを計画する場合には、予め、色や模様を設定することができ、観光地、ホテルやレストラン、外食業など業務用などに適している。また、転居の多いアパートや賃貸マンション、ウイークリーマンションなど、短期間にリフォームが必要な業態には適している。
【実施例1】
【0030】
まず基材として、下方の壁紙原紙にコロナ処理を施しながら、ポリメチルペンテン(TPX)20μmと低密度ポリエチレ(LDPE)ン15μmの2層からなる熱可塑性樹脂層を上側壁紙原紙と同時にラミネート(サンドラミネート)を行って2層の紙壁紙を作成した。構成を図4に示す。なお、上層側の壁紙原紙にはコロナ処理は未処理である。ラミネートする樹脂温度は300℃であった。図4に示す「←P」は、TPX(ポリメチルペンテン)とLDPE(低密度ポリエチレン)との接合界面から剥離可能であることを示している(以下、図5〜10も同様である)。その剥離可能界面を二重線で模式的に表記している。またなお、図4中に示す「壁」は上下を表すために便宜的に示すものであって、実施例1の多紙壁紙の構成ではない(以下、図5〜10も同様)。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同様の方法で行い、ポリメチルペンテンをポリカーボネートに変更した以外実施例1と同様に行った。構成を図5に示す。
【実施例3】
【0032】
実施例1と同様の方法で行い、ポリメチルペンテンをポリスチレンに変更した以外実施例1と同様に行った。加工温度は250℃で行い、ポリスチレン/LDPE/エチレンメタアクリル酸共重合体/の構成で行った。構成を図6に示す。
【実施例4】
【0033】
実施例1と同様の方法で行い、低密度ポリエチレンに無水マレイン酸変性ポリオレフィンを8重量%添加した以外、実施例1と同様に行った。構成を図7に示す。
【実施例5】
【0034】
実施例1と同様の方法で行い、中間層の熱可塑性樹脂の樹脂構成としては、ポリプロピレン40μm、高密度ポリエチレンを40μm多層同時ラミネートとした。なお高密度ポリエチレンには炭カル8重量%添加し剥離強度を調整した。構成を図8に示す。
【実施例6】
【0035】
実施例1で得られた多層壁紙に塗工層を設けた。構成を図9に示す。
【実施例7】
【0036】
樹脂温度を285℃とした以外実施例1と同様に行った。構成を図10に示す。
【0037】
[参考例1]
実施例1の構成で行い2層の熱可塑性樹脂のラミネート厚みをそれぞれ23μmとした以外、実施例1と同様に行った。構成を図11に示す。
参考例1は2層の熱可塑性樹脂を中間層に使用したが、各層の厚みが厚く、剥離強度がアップ、壁紙原紙の紙層で剥離したため、剥離が困難となった。
【0038】
[参考例2]
実施例1の構成で行い、2層の熱可塑性樹脂のラミネートし、厚みをポリメチルペンテン30μm、低密度ポリエチレン10μmとした以外、実施例1と同様に行った。構成を図12に示す。参考例2は2層の熱可塑性樹脂を中間層に使用したが、ポリメチルペンテンの層が厚く、樹脂自体が硬いため、エンボス加工適性が悪化、多層壁紙原紙として使用が困難であった。
【0039】
[層間剥離強度、エンボス加工について]
1.層間剥離強度の測定方法
予め剥離のきっかけを作った幅10mmのサンプルについて、JIS Z 0237に準じて、疑似接着の状態にある熱可塑性樹脂層間における90度剥離に要する力を測定した。
2.エンボス加工方法
サンドラミしたサンプル(10×20cm)をエンボス溝がついた加熱金属ロールとゴムロール(溝無し)でニップし、エンボス加工した。加工条件を以下に示す。なお評価は目視評価を行った。
加工条件
加工速度:5m/min
ニップ圧力:10kg/cm2
金属ロール表面温度:85℃
評価
◎:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が均一であり良好であっ た。
○:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が多少不均一であるものの 多層壁紙としては使用可能である。
△:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態がやや不均一であるものの 多層壁紙としては使用可能である。
×:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が不均一であり多層壁紙と しては使用不可能である。
【0040】
層間剥離強度及びエンボス加工適性についての各実施例及び各参考例に関するデータを表1に示す。
各実施例では樹脂層間で剥離可能であった。実施例1と参考例1とは層を形成する合成樹脂の種類は同じであるが、参考例1は実施例1に比べて、各層の厚みが厚いため熱可塑性樹脂層間の接着強度が強く、壁紙原紙の紙層と熱可塑性樹脂層の間で剥離したため、剥離が困難となったと考えられる。参考例2も樹脂の種類は実施例1と同じであって、参考例1に比較して低密度ポリエチレンを薄くした分界面剥離が可能となったと考えられるが、ポリメチルペンテンの層が厚く、樹脂自体が硬いため、エンボス加工適性が悪化したので 壁紙原紙として適性が低下する。
実施例1〜7は、壁紙原紙を2層にした例であるが、各実施例に示されるように樹脂層間剥離強度は3.9〜30N/mと様々な値を示しており、樹脂構成の変更やコロナ処理、添加剤などにより剥離強度を調整できることは前述の通りである。したがって、これらの工夫を講ずることにより、図1に示す多層の壁紙原紙を備え、上から順に剥離容易に順位付けた更新可能な多層紙壁紙を実現することが可能である。
【0041】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】多層紙壁紙の層構成を示す概略図1である。
【図2】サンドラミネーションによる積層模式図である。
【図3】多段サンドラミネーション模式図である。
【図4】実施例1の層構成を示す模式図である。
【図5】実施例2の層構成を示す模式図である。
【図6】実施例3の層構成を示す模式図である。
【図7】実施例4の層構成を示す模式図である。
【図8】実施例5の層構成を示す模式図である。
【図9】実施例6の層構成を示す模式図である。
【図10】実施例7の層構成を示す模式図である。
【図11】参考例1の層構成を示す模式図である。
【図12】参考例2の層構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 塗工層
2 壁紙原紙a
3 熱可塑性合成樹脂層a1
4 熱可塑性合成樹脂層a2
5 壁紙原紙b
6 Tダイ
7 ニップロール
8 クーリングロール
9 押し出し機
10 押し出し機
11 コロナ処理
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙壁紙に関する。特に、複数の壁紙原紙層を備え、壁に貼りつけた後、最表層から剥がして更新して使用することができる多層紙壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙壁紙は、一般住居や事務室、貸し室、レストラン、ホテル、病院等において室内の美麗化のために壁に貼付されて、きわめて一般的に使用される内装材である。
壁紙は、転居や模様替えによって張り替えられ、更新される。特に、賃貸物件やレストラン、客室などの業務用では、その頻度が高くなる。
古い紙壁紙を一旦除去し、新しい紙壁紙を貼り付ける更新作業に適した紙壁紙について、本出願人は継続して提案してきている。
【0003】
特許文献1(特開2004−124270号公報)には、嵩高パルプ層及び天然パルプを主成分とする支持層とから構成される多層紙を上層紙とし、前記支持層側に裏打ち紙を貼合した紙壁紙であって、上層紙の支持層と嵩高パルプ層との間の界面あるいは嵩高パルプ層内部の層間において、剥離性を持たせることにより、張り替え時に剥がし易いだけでなく、剥がした後に壁面に残る紙層が均一であって、特に下地処理をしなくても容易にその上から新たに貼ることができ、紙壁紙が開示されている。
特許文献2(特開2005−314861号公報)には、紙中に高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物の4級アンモニウム塩、高級脂肪酸とポリアミノポリアミドとエピクロルヒドリン縮合物の4級アンモニウム塩等の脂肪酸系誘導体を含有させ、好ましくはステキヒトサイズ度が10秒以上で、紙層間強度が20N/m以上40N/m以下で、水溶性樹脂バインダー及び/または水分散性樹脂バインダーを主成分とする塗液を少なくとも片面に塗工した壁紙用裏打ち紙であって、壁紙施工時に要求されるオープンタイムが長く、壁紙の張り替え時に剥がしやすく、張り替えた後、壁に残る裏打ち紙層が均一である壁紙用裏打ち紙が開示されている。
また、多層にした壁紙を順次剥がして更新できる壁紙の提案もなされている。特許文献3(実公昭59−9036号公報)には、裏面に接着剤層を有する複数の壁紙を表面から順次別離し得るように貼り合わせる着想が開示されている。又、特許文献4(特開2006−144143号公報)にはポリエチレン合成繊維と木材パルプ繊維とからなる混抄紙とポリプロピレン合成繊維と木材繊維からなる混抄紙を交互に積層した後、熱プレスして得られる多層の壁紙が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−124270号公報
【特許文献2】特開2005−314861号公報
【特許文献3】実公昭59−9036号公報
【特許文献4】特開2006−144143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3や特許文献4に記載されている多層壁紙においては、表層の壁紙を剥がした後に表面に現れる新しい壁紙表面は紙面が露出するため、耐汚染性や耐水性が劣るという問題があった。そこで、本願発明は、複数の壁紙原紙を複数設けて多層にした多層紙壁紙であって、上層の壁紙原紙を剥がして更新した場合に、更新された壁紙原紙層の上層に合成樹脂の保護層が形成されている多層の壁紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、紙層と合成樹脂層を交互に積層した多層紙壁紙であって、紙層と紙層の間に設ける合成樹脂層を複数の熱可塑性合成樹脂層から形成し、該熱可塑性合成樹脂層間の界面を剥離可能に設けて、上層(壁に貼り合わせた際に表層となる)の紙層を剥がした場合に更新される新しい表面には熱可塑性合成樹脂層が現れるように工夫した多層紙壁紙を提案する。本発明の主な構成は以下のとおりである。
【0007】
(1)壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面であることを特徴とする多層紙壁紙。
(2)前記剥離可能界面は、互いに相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂からなる2つの熱可塑性樹脂層から形成されることを特徴とする(1)記載の多層紙壁紙。
(3)前記剥離可能界面は厚みが異なる2つの熱可塑性合成樹脂層から形成され、上層側の熱可塑性樹脂層の厚みと下層側の熱可塑性樹脂層の厚みの差が5μm以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の多層紙壁紙。
(4)前記剥離可能界面を形成するいずれか一つの熱可塑性合成樹脂層に、剥離可能界面の剥離強度を調整する添加剤が含有されることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(5)前記合成樹脂層の厚みが40μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(6)上層側に設けられた合成樹脂層中の剥離可能界面の剥離強度が、下層側に設けられた合成樹紙層中の剥離可能界面の剥離強度より小さいことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(7)エンボス加工を施したことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(8)最上層の壁紙原紙の表面に塗工層が設けられていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の多層紙壁紙。
(9)壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙層を複数備えた多層紙壁紙をサンドラミネーション手段により製造する方法であって、前記合成樹脂層は複数の異なる熱可塑性樹脂を共押出して設け、かつ、前記複数の熱可塑性合成樹脂層間に1つの剥離可能界面を形成することを特徴とする多層紙壁紙の製造方法。
(10)熱可塑性合成樹脂層間の界面に形成した剥離可能界面を剥離強度が、3〜30N/mであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の更新可能多層紙壁紙。
(11)各層の紙壁紙には、模様が形成されていることを特徴とする(1) 〜(8)のいずれかに記載の更新可能多層紙壁紙。
【発明の効果】
【0008】
1.複層設けた壁紙原紙層の内、上層の紙層を剥がすことにより容易に新しい壁紙面を露出させることができる。そして、更新面が合成樹脂層となるので、紙面が露出することなく、対汚染性、耐水性を有する更新面が得られる。
2.複数設けた熱可塑性合成樹脂層中にある界面の接着強度を調整することにより、熱可塑性合成樹脂層の界面から剥離できる。これにより、上層(壁に貼り合わせた際に表層となる)の紙層を引き剥がした場合に合成樹脂層間から剥離させることができる。
3.多層紙壁紙を構成する紙層と紙層の間に設けられた各合成樹脂層中の、熱可塑性合成樹脂層間の界面の接着強度を調整することにより、上層側にある壁紙原紙から順に剥離が容易となるように構成することができる。剥離界面を形成する手段として、相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂の組み合わせ、層厚の異なる樹脂層を設けること、添加剤を用いること等を採用することにより、実現することが可能である。一方、コロナ処理やプラズマ処理などを紙側に施すことにより、紙と樹脂の接着強度を向上させることができ、確実に、更新面側に熱可塑性合成樹脂層を残すことができる。
4.紙層と合成樹脂層を接合する手段として、別途に接着剤を用いることなく、積層し、かつ合成樹脂層の界面に剥離面を形成することができたものである。
5.紙面に模様を印刷することができ、更新した場合に、新規な模様面を表現することができる。季節感を出すこともでき、接客スペースなどの雰囲気にあった模様替えも容易となる。紙層を多層にするのでエンボスによる凹凸模様付けを下層まで設けることができ、更新してもエンボス模様を表出することができる。
6.サンドラミネーション工程のみにより、容易に接着力に差を設けた多層紙壁紙を製造することができる。工程数を増加させる必要が無く、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本出願は、紙層と複数にした合成樹脂層とを交互に積層し、複数にした合成樹脂層の中間界面から剥がすことができ、更新された新しい表面には合成樹脂層が現れるように工夫した多層紙壁紙に関する発明を提案する。本発明は、剥離して表出した下層を更新面とすることができる多層紙壁紙であって、基材層となる壁紙原紙の表面側に保護層となる合成樹脂層が形成されるように剥離性をコントロールした多層紙壁紙である。本発明に係る多層紙壁紙は、壁紙原紙である紙層と複層にした合成樹脂を交互に接着積層したものであって、その接着機能は、接着剤を必要とすることなく順次剥離可能に界面接着力をコントロールした多層紙壁紙である。
【0010】
<多層紙壁紙の層構成>
本発明の多層壁紙の一例の概略図を図1に示す。表層側から塗工層、壁紙原紙a層、合成樹脂層a1・合成樹脂層a2、壁紙原紙b層、合成樹脂層b1・合成樹脂層b2、壁紙原紙c層・・・・と壁紙原紙層と複数設けられた合成樹脂層が交互に積層された多層紙壁紙である。図示中に示す壁面は、積層方向性を示すために表示したものであって、本発明の多層紙壁紙を構成する要素ではない。この多層紙壁紙は、上下の壁紙原紙の間に設けられた複数の合成樹脂層の間に形成された剥離可能界面1,2,・・・から引き剥がして、壁紙原紙b、cの表面に設けられた合成樹脂層a2、b2・・を新しい面として更新することができる。
【0011】
合成樹脂層間に剥離可能界面を形成する手段としては、合成樹脂層を複数の熱可塑性合成樹脂層からなる層とする方法を採用し、相溶性が小さい熱可塑性樹脂を組み合わせる方法、紙層と合成樹脂層間の接着力を大きくする方法、熱可塑性樹脂層に剥離強度を調整する添加剤を配合する方法で、剥離可能界面の剥離性を調整できる。また合成樹脂層が複数ある場合は、上方(壁に貼りつけたときは最表層となる)の剥離可能界面の剥離強度を下方のそれより大きくする方法を適用して設計する。
【0012】
本発明の多層紙壁紙は、2枚の壁紙原紙間に熱可塑性合成樹脂を共押出ししながら圧着して2枚の壁紙原紙を接合するサンドラミネーション手法により積層状態を作り出すことができる。
図2にサンドラミネーション手法によって積層する模式図を示す。左右から壁紙原紙2、5を供給しつつ中央に設けたTダイ6から熱可塑性樹脂3、4を供給し、下方に配置したクーリングロール8とニップロール7により、圧着を完成することができる。右側から供給される壁紙原紙5を下層側とする。また、左側から供給される壁紙原紙2の表面側に予め塗工処理を施し塗工層1を形成しておくこともできる。このサンドラミネーションを2段、3段に行うことにより、多層化が可能となる。図2中に示す層構成は図1に当てはめると壁紙原紙2、5が壁紙原紙a、bに、熱可塑性樹脂3、4が熱可塑性樹脂a1、a2に塗工層1が塗工層に相当する。また、コロナ処理11は、必要に応じて適用することができる。
【0013】
<壁紙原紙>
本発明の壁紙用原紙に使用する紙基材は、針葉樹材の晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹の晒しクラフトパルプ(LBKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)を単独、または任意の配合率で混合して抄紙したものである。
本発明の壁紙用原紙に使用する紙基材には、不透明度を向上させるために、填料を紙基材当たり1〜30重量%含有させることが好ましい。上記填料としては、ビニルペースト塗工時のブリスター(裏打ち紙と塩化ビニル層との間の膨れ)の発生を抑制することが可能である、焼成クレー、カオリン、イライトから選択された少なくとも1種を含有することが好ましい。また、これら以外に、クレー、デラミネーティッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などの無機填料、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂等の有機填料を使用してもよい。
壁紙用原紙表面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理を施すと被処理面と熱可塑性合成樹脂面との接着強度を向上させることができる。したがって、このような表面処理の有無によって、界面の剥離強度に差を付けることができる。また、処理の程度によっても剥離力に違いを出すことが可能である。このような紙の表面処理と熱可塑性樹脂の組成や表面処理などと組み合わせることにより、多層に配した壁紙用原紙を表面から剥離できるように順位付けることが可能となる。
【0014】
<コロナ処理及びフレーム処理>
コロナ処理とは、原紙表面上にコロナ放電する処理であり、電圧×電流/(電極幅×フィルム走行速度)(W・min/m2)によって算出されるコロナ放電処理密度は、1〜200W・min/m2であることが好ましく、5〜150W・min/m2であることがより好ましく、10〜100W・min/m2であることがさらに好ましい。コロナ放電処理密度が高いほど被処理面と熱可塑性樹脂面の接着強度を向上させることができる。前述したコロナ処理を、熱可塑性樹脂層と接着する任意の表面に施すことにより、合成樹脂層と紙層との接着強度を調整することができる。
【0015】
フレーム処理は、天然ガスやプロパン等を燃焼させたときに生じる火炎にフィルム表面を接することで処理が行われる。プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【0016】
<熱可塑性合成樹脂>
本発明は、少なくとも上下の壁紙原紙の間に、中間層として合成樹脂層を設け、その層が2層以上の熱可塑性樹脂層からなる。
そして、上記の壁紙原紙/合成樹脂層(=複数の熱可塑性樹脂層)/壁紙原紙の3層のうち、合成樹脂層の間にある熱可塑性樹脂層界面から剥離(擬似接着)できるものである。疑似接着した熱可塑性樹脂層界面から上部の壁紙原紙を剥離したときに熱可塑性合成樹脂層に被覆された次の壁紙原紙が現れるものである。
【0017】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂層としては、押出しラミネートが可能であれば結晶性樹脂、非結晶性樹脂のどちらも使用することができる。結晶性樹脂としては高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、PPS樹脂等を挙げることができる。非結晶性樹脂としては、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ABS樹脂、アクリル樹脂、変性PPE、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、非結晶性ポリエチレンテレフタレート(PET)等を挙げることができる。
また、熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、壁紙原紙との接着性が良好であることから、ポリエチレンが好ましく用いられる。ポリエチレンは、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンに区分される。密度としては、直鎖状低密度ポリエチレンは888〜910kg/m3、低密度ポリエチレンは910〜925kg/m3、中密度ポリエチレンは925〜940kg/m3、さらに高密度ポリエチレンは940〜970kg/m3程度である。その他の熱可塑性樹脂の密度としては特に限定されるものではなく公知の物を用いてもかまわない。
【0018】
また、熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、上記した中でもポリメチルペンテンも好適である。ポリメチルペンテンは他の熱可塑性樹脂との接着性が比較的弱く、従来は共押し出しすると界面間で剥離しやすいことが欠点であったが、本発明ではこの性質を逆に利用することを見出したものである。
また、ポリスチレン、ポリカーボネートは押出しラミネートの加工適性に優れ好ましく用いられる。特に、ポリスチレンは安価に入手可能で工業的にも有利であり、一般に、汎用ポリスチレン(以下GPPS)と耐衝撃性を付与したハイインパクトポリスチレン(以下HISP)との2つに大きく分類され、本発明においてはいずれも使用可能である。
【0019】
<剥離界面を形成する熱可塑性樹脂の組み合わせの例>
本発明の合成樹脂層を形成する熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、互いに相溶性の小さい樹脂を用い接着性を調整することが好ましい。なお、樹脂の相溶性が小さいとは、樹脂を溶融状態で混合したとき、完全に混ざり合わず白濁する場合をいう。
例えば、ポリエチレンとポリメチルペンテン、ポリエチレンとポリスチレン、ポリエチレンとポリエステル、ポリエチレンとポリカーボネート、ポリプロピレンとポリカーボネート、ポリプロピレンとポリメチルペンテン、ポリプロピレンとポリスチレン、ポリプロピレンとポリエステル、高密度ポリエチレンとポリプロピレン等が挙げられる。なお、同じ樹脂同士であっても、後述する接着性調整の手段を適宜用いることにより、界面を剥離可能とすることができる。
【0020】
<剥離強度調整用添加剤>
また、剥離強度は、一方の熱可塑性樹脂層に無機填料を添加し調整することができる。
無機填料の種類としては、炭酸カルシウム、クレー、タルム、シリカ、など1種類以上使用することができる。無機填料の含有量が多いと剥離が軽くなるので、所望の接着性に応じて含有量を適宜決定すればよいが、熱可塑性樹脂に対し1〜10重量%、好ましくは3〜6重量%程度が適当である。
【0021】
また熱可塑性樹脂にα−オレフィン共重合体、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体の水素添加誘導体、又は後述する変性ポリオレフィンを混合することもできる。α−オレフィン共重合体は、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良く、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1−4−メチルペンテン−1共重合体等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体又はその水素添加誘導体としては、水添スチレン・ブタジエン・ラバーやスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体又はその水素添加誘導体が挙げられる。中でも、水添スチレン・ブタジエン・ラバー(例えばJSR社製商品名ダイナロン1320P)が好ましい。
【0022】
(変性ポリオレフィン)
変性ポリオレフィンとしては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体あるいは共重合体を極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーでグラフト変性した変性物を使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では特に、低温度における紙基材との接着性に優れることから、エチレンメタアクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
単独重合体あるいは共重合体の例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度線状ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・ペンテン-1共重合体、エチレン・4-メチルペンテン-1共重合体及びエチレン-ブテン-1共重合体等を挙げることできる。単独重合体あるいは共重合体の変性剤として使用される極性基及びエチレン性二重結合を有するモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸、クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のようなカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、無水クロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の酸無水物及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の酸無水物のような無水カルボン酸類;(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、テトラヒドロフタル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、マレイン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、イタコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、フマル酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、クロトン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、ノルボルネンジカルボン酸の(モノ又はジ)アルキルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)のアルキルエステル及びエンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)のアルキルエステルのようなエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート及び2-(6-ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレートのようなヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステル類; 10-ウンデセン-1-オール、1-オクテン-3-オール、2-メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N-メチロールアクリルアミド、2-(メタ)アクロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2-ブテン-1,4-ジオール及びグリセリンモノアルコールのような水酸基含有化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、イタコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、ブテントリカルボン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、シトラコン酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、エンド-シス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2-メチル-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸TM)の(モノ又はジ)グリシジルエステル、アリルコハク酸の(モノ又はジ)グリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル、3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-エポキシ-1-ペンテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン及びビニルシクロヘキセンモノオキシドのようなエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物;アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル及びメタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートモノメタノールアミノハーフソルのような(メタ)アクリル酸のアルキルアミノエステル;N-ビニルジエチルアミン及びN-アセチルビニルアミンのようなビニルアミン類;アリルアミン、メタクリルアミン、N-メチルアクリルアミン、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのようなアリルアミン類;アクリルアミド及びN-メチルアクリルアミドのようなアクリルアミド類;p-アミノスチレンのようなアミノスチレン化合物;並びに6-アミノヘキシルコハク酸イミド及び2-アミノエチルコハク酸イミドのようなアミノアルキルコハク酸イミド類を挙げることができる。これらの変性剤は、単独で使用することもできるし、また変性剤の特性が損なわれない範囲内で組み合わせて使用することもできる。これらの変性剤の中では(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
<オゾン処理>
オゾン処理は、Tダイから押し出された熱可塑性合成樹脂の溶融膜の片面にオゾン含有空気を吹き付けることにより行われ、このオゾン処理した面と壁紙原紙表面の接着強度を向上させることができる。オゾン処理の条件は、例えば、樹脂の溶融膜の積層速度100m/分、エアギャップ130mm、オゾン濃度40g/m3、オゾン流量2m3/時で行うことができる。
【0024】
<剥離可能界面の生成>
2層以上の熱可塑性樹脂を上下壁紙原紙にラミネート(サンドラミネーション)し、ポリエチレンとポリメチルペンテンなどを組み合わせた2層構成とした樹脂層を積層することにより、樹脂層間を剥離可能にすることができる。また紙の表面処理した方はラミネート樹脂が強固に接着し、反表面処理面(即ち、裏面)側は熱可塑性樹脂面との密着性が相対的に弱くなり剥離が可能となる。
例えば、壁紙原紙a/TPXa1、LDPEa2/壁紙原紙bの場合、TPX層a1とLDPE層a2との界面に剥離可能部分を形成することになる。この場合、TPXとLDPEの相溶性が小さいことを剥離界面の生成に利用した。また壁紙原紙aのb表面側にコロナ処理などを施すことにより、熱可塑性樹脂と壁紙原紙の接着強度を強くすることができる。したがって、相対的に樹脂間の界面の剥離性を高めることができる。また合成樹脂層を厚くする程剥離性が悪くなる傾向があるので、下の層で合成樹脂層を厚くすると、界面剥離に順位をつけることができる。
【0025】
また壁紙原紙a/熱可塑性樹脂a1、熱可塑性樹脂a2/壁紙原紙b/熱可塑性樹脂b1、熱可塑性樹脂b2/壁紙原紙cの場合は、表層の壁紙原紙より下層(即ち 壁側)に向かうにつれ、剥離強度を強くする必要がある。この手法として、前述のコロナ処理やオゾン処理を組み合わせることのほか、熱可塑性樹脂層の厚みを増すことによって、接着強度を向上させることができる。例えば、熱可塑性樹脂a1、a2を6μmとし、熱可塑性樹脂b1、b2を8μmとすることにより、熱可塑性樹脂b1、b2側の接着強度を高くすることができる。また、熱可塑性合成樹脂層に炭酸カルシウムなどの無機填料を添加すると、接着強度を弱くすることができ、低密度ポリエチレン樹脂に変成ポリオレフィンなどを添加すると接着強度を強くすることができる。
したがって、層間の接着強度調節の因子としては、熱可塑性樹脂の種類、層厚、熱可塑性樹脂層中に添加剤を含有させるか否か、その種類及び使用量、紙基材層表面に対するコロナ処理の強度、熱可塑性樹脂層表面に対するオゾン処理の強度、壁紙原紙のプレヒート温度、樹脂押し出し温度等を挙げることができる。接着強度調節の因子のうちコロナ処理とオゾン処理とは、大きい接着強度を得るために開発された手法であるが、本発明では、これらの処理を中間層各々に対して、適宜使い分けることによって、剥離容易な積層シートを製造することができる。
このような、手段を組み合わせて用いることにより、多層紙壁紙の層剥離を順次表層の壁紙原紙裏面側の界面から剥離可能となるようにコントロールする。
【0026】
<デコレーション>
壁紙は、意匠性の他、汚れにくい耐汚染性などが求められ、エンボス加工やパターン模様が付与されている。本発明の紙壁紙は、更新しても樹脂層が表面に露出するので、耐水性、対汚染性を満足することができる。
紙壁原紙として、予め模様を印刷した壁紙原紙を使用することにより、更新した新しい面に模様を表出することができる。利用者の嗜好性や使用環境に応じた多層紙壁紙を供給することができる。例えば、レストランやホテルなど四季に合わせた演出が容易となる。
エンボス加工は、多層に積層した後に、全体に施すことにより下層までエンボスの凹凸を設けることが可能である。
更に、最表面は塗工層を設けた壁紙原紙を使用することにより、模様や表面保護層を設けることが可能であるし、出荷後、表面に再加工することも可能である。そして、壁に直接貼り付けられる裏面は、再加湿性接着糊などを付着させる加工を施すが、壁の種類などに応じて、従来行われている処理を適用することができる。
【0027】
<多段サンドラミネーション>
図2に基本的なサンドラミネーション手法による 壁紙原紙/熱可塑性合成樹脂/壁紙原紙 の3層構成を示した。これは、左側から表面側の壁紙原紙a、左側から次層の壁紙原紙bを供給し、中央に配置した熱可塑性合成樹脂を2つのTダイかつ2種類の熱可塑性合成樹脂の溶融膜を押し出して、下方に配置されたニップロールとクーリングロールで押圧して接合積層する。必要に応じて接着強度を高めるために左側から供給する壁紙原紙bの表面にコロナ処理を施すことができる。
図3はこれを連続して、多段に構成した例を示した多段ラミネーションを示す。なお、接着強度に変化を持たせる手段として、コロナ処理を各段に表記しているが、コロナ処理のみによって格段の接着強度を変化させることを意味しているものではなく、模式的にしめしたものであって、オゾン処理や熱可塑性合成樹脂の添加剤配合などと組み合わせて行われることは前述のとおりである。下層側から積層し、必要な回数のサンドラミネーションを施して、上層を形成することが好ましい。図3は左側から最下層の壁紙原紙eの表面にコロナ処理を施しながら、中央から供給される合成樹脂d1、d2と右側から供給される壁紙原紙dをまず最初にサンドラミネーションして、接合して、次の段において、左側から供給される壁紙原紙dの表面に、合成樹脂c1、c2と右側から供給される壁紙原紙cをサンドラミネーションして接合する。次々とこの操作を繰り返すことにより壁紙原紙a、b、c、d、eの5層をもつ多層紙壁紙を製造することができることとなる。
【0028】
<更新処理>
本発明の多層紙壁紙は、表層側から紙層を引き剥がすことにより、更新することができる。更新された表面には、合成樹脂層が設けられているので、耐水性、耐汚染性が保たれている。
【0029】
<適用箇所>
適用箇所は特に限定されることはない。四季ごとに定期的に模様替えするなどを計画する場合には、予め、色や模様を設定することができ、観光地、ホテルやレストラン、外食業など業務用などに適している。また、転居の多いアパートや賃貸マンション、ウイークリーマンションなど、短期間にリフォームが必要な業態には適している。
【実施例1】
【0030】
まず基材として、下方の壁紙原紙にコロナ処理を施しながら、ポリメチルペンテン(TPX)20μmと低密度ポリエチレ(LDPE)ン15μmの2層からなる熱可塑性樹脂層を上側壁紙原紙と同時にラミネート(サンドラミネート)を行って2層の紙壁紙を作成した。構成を図4に示す。なお、上層側の壁紙原紙にはコロナ処理は未処理である。ラミネートする樹脂温度は300℃であった。図4に示す「←P」は、TPX(ポリメチルペンテン)とLDPE(低密度ポリエチレン)との接合界面から剥離可能であることを示している(以下、図5〜10も同様である)。その剥離可能界面を二重線で模式的に表記している。またなお、図4中に示す「壁」は上下を表すために便宜的に示すものであって、実施例1の多紙壁紙の構成ではない(以下、図5〜10も同様)。
【実施例2】
【0031】
実施例1と同様の方法で行い、ポリメチルペンテンをポリカーボネートに変更した以外実施例1と同様に行った。構成を図5に示す。
【実施例3】
【0032】
実施例1と同様の方法で行い、ポリメチルペンテンをポリスチレンに変更した以外実施例1と同様に行った。加工温度は250℃で行い、ポリスチレン/LDPE/エチレンメタアクリル酸共重合体/の構成で行った。構成を図6に示す。
【実施例4】
【0033】
実施例1と同様の方法で行い、低密度ポリエチレンに無水マレイン酸変性ポリオレフィンを8重量%添加した以外、実施例1と同様に行った。構成を図7に示す。
【実施例5】
【0034】
実施例1と同様の方法で行い、中間層の熱可塑性樹脂の樹脂構成としては、ポリプロピレン40μm、高密度ポリエチレンを40μm多層同時ラミネートとした。なお高密度ポリエチレンには炭カル8重量%添加し剥離強度を調整した。構成を図8に示す。
【実施例6】
【0035】
実施例1で得られた多層壁紙に塗工層を設けた。構成を図9に示す。
【実施例7】
【0036】
樹脂温度を285℃とした以外実施例1と同様に行った。構成を図10に示す。
【0037】
[参考例1]
実施例1の構成で行い2層の熱可塑性樹脂のラミネート厚みをそれぞれ23μmとした以外、実施例1と同様に行った。構成を図11に示す。
参考例1は2層の熱可塑性樹脂を中間層に使用したが、各層の厚みが厚く、剥離強度がアップ、壁紙原紙の紙層で剥離したため、剥離が困難となった。
【0038】
[参考例2]
実施例1の構成で行い、2層の熱可塑性樹脂のラミネートし、厚みをポリメチルペンテン30μm、低密度ポリエチレン10μmとした以外、実施例1と同様に行った。構成を図12に示す。参考例2は2層の熱可塑性樹脂を中間層に使用したが、ポリメチルペンテンの層が厚く、樹脂自体が硬いため、エンボス加工適性が悪化、多層壁紙原紙として使用が困難であった。
【0039】
[層間剥離強度、エンボス加工について]
1.層間剥離強度の測定方法
予め剥離のきっかけを作った幅10mmのサンプルについて、JIS Z 0237に準じて、疑似接着の状態にある熱可塑性樹脂層間における90度剥離に要する力を測定した。
2.エンボス加工方法
サンドラミしたサンプル(10×20cm)をエンボス溝がついた加熱金属ロールとゴムロール(溝無し)でニップし、エンボス加工した。加工条件を以下に示す。なお評価は目視評価を行った。
加工条件
加工速度:5m/min
ニップ圧力:10kg/cm2
金属ロール表面温度:85℃
評価
◎:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が均一であり良好であっ た。
○:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が多少不均一であるものの 多層壁紙としては使用可能である。
△:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態がやや不均一であるものの 多層壁紙としては使用可能である。
×:表層のエンボス深さと剥離後のエンボス深さの状態が不均一であり多層壁紙と しては使用不可能である。
【0040】
層間剥離強度及びエンボス加工適性についての各実施例及び各参考例に関するデータを表1に示す。
各実施例では樹脂層間で剥離可能であった。実施例1と参考例1とは層を形成する合成樹脂の種類は同じであるが、参考例1は実施例1に比べて、各層の厚みが厚いため熱可塑性樹脂層間の接着強度が強く、壁紙原紙の紙層と熱可塑性樹脂層の間で剥離したため、剥離が困難となったと考えられる。参考例2も樹脂の種類は実施例1と同じであって、参考例1に比較して低密度ポリエチレンを薄くした分界面剥離が可能となったと考えられるが、ポリメチルペンテンの層が厚く、樹脂自体が硬いため、エンボス加工適性が悪化したので 壁紙原紙として適性が低下する。
実施例1〜7は、壁紙原紙を2層にした例であるが、各実施例に示されるように樹脂層間剥離強度は3.9〜30N/mと様々な値を示しており、樹脂構成の変更やコロナ処理、添加剤などにより剥離強度を調整できることは前述の通りである。したがって、これらの工夫を講ずることにより、図1に示す多層の壁紙原紙を備え、上から順に剥離容易に順位付けた更新可能な多層紙壁紙を実現することが可能である。
【0041】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】多層紙壁紙の層構成を示す概略図1である。
【図2】サンドラミネーションによる積層模式図である。
【図3】多段サンドラミネーション模式図である。
【図4】実施例1の層構成を示す模式図である。
【図5】実施例2の層構成を示す模式図である。
【図6】実施例3の層構成を示す模式図である。
【図7】実施例4の層構成を示す模式図である。
【図8】実施例5の層構成を示す模式図である。
【図9】実施例6の層構成を示す模式図である。
【図10】実施例7の層構成を示す模式図である。
【図11】参考例1の層構成を示す模式図である。
【図12】参考例2の層構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 塗工層
2 壁紙原紙a
3 熱可塑性合成樹脂層a1
4 熱可塑性合成樹脂層a2
5 壁紙原紙b
6 Tダイ
7 ニップロール
8 クーリングロール
9 押し出し機
10 押し出し機
11 コロナ処理
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、
前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面であることを特徴とする多層紙壁紙。
【請求項2】
前記剥離可能界面は、互いに相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂からなる2つの熱可塑性樹脂層から形成されることを特徴とする請求項1記載の多層紙壁紙。
【請求項3】
前記剥離可能界面は厚みが異なる2つの熱可塑性合成樹脂層から形成され、上層側の熱可塑性樹脂層の厚みと下層側の熱可塑性樹脂層の厚みの差が5μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層紙壁紙。
【請求項4】
前記剥離可能界面を形成するいずれか一つの熱可塑性合成樹脂層に、剥離可能界面の剥離強度を調整する添加剤が含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項5】
前記合成樹脂層の厚みが40μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項6】
上層側に設けられた合成樹脂層中の剥離可能界面の剥離強度が、下層側に設けられた合成樹紙層中の剥離可能界面の剥離強度より小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項7】
エンボス加工を施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項8】
最上層の壁紙原紙の表面に塗工層が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項9】
壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙層を複数備えた多層紙壁紙をサンドラミネーション手段により製造する方法であって、前記合成樹脂層は複数の異なる熱可塑性樹脂を共押出して設け、かつ、前記複数の熱可塑性合成樹脂層間に1つの剥離可能界面を形成することを特徴とする多層紙壁紙の製造方法。
【請求項1】
壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙の層を複数備えた多層紙壁紙であって、
前記合成樹脂層は複数の熱可塑性合成樹脂層から構成され、前記合成樹脂層を構成する熱可塑性合成樹脂層間の1つの界面が剥離可能界面であることを特徴とする多層紙壁紙。
【請求項2】
前記剥離可能界面は、互いに相溶性が小さい異なる種類の熱可塑性樹脂からなる2つの熱可塑性樹脂層から形成されることを特徴とする請求項1記載の多層紙壁紙。
【請求項3】
前記剥離可能界面は厚みが異なる2つの熱可塑性合成樹脂層から形成され、上層側の熱可塑性樹脂層の厚みと下層側の熱可塑性樹脂層の厚みの差が5μm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の多層紙壁紙。
【請求項4】
前記剥離可能界面を形成するいずれか一つの熱可塑性合成樹脂層に、剥離可能界面の剥離強度を調整する添加剤が含有されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項5】
前記合成樹脂層の厚みが40μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項6】
上層側に設けられた合成樹脂層中の剥離可能界面の剥離強度が、下層側に設けられた合成樹紙層中の剥離可能界面の剥離強度より小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項7】
エンボス加工を施したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項8】
最上層の壁紙原紙の表面に塗工層が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の多層紙壁紙。
【請求項9】
壁紙原紙と合成樹脂層を交互に積層して壁紙原紙層を複数備えた多層紙壁紙をサンドラミネーション手段により製造する方法であって、前記合成樹脂層は複数の異なる熱可塑性樹脂を共押出して設け、かつ、前記複数の熱可塑性合成樹脂層間に1つの剥離可能界面を形成することを特徴とする多層紙壁紙の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−46974(P2010−46974A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215002(P2008−215002)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】
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