説明

多層配線基板の短絡防止構造

【課題】多層配線基板の裏面を溶融半田にディップしたときに、スルーホールを上昇した溶融半田が、スルーホールの上方に配置されて実装されている縦型コネクタの露出したコネクタ端子に接触し、スルーホールの信号ラインと縦型コネクタの信号ラインが短絡して誤動作が生じるのを防止することができる、多層配線基板の短絡防止構造を提供する。
【解決手段】底面に端子4aが露出した縦型コネクタ4をスルーホール3の上方に接触しないように配置して基板表面に実装した多層配線基板1において、スルーホール3の少なくとも基板裏面側の端子のランド部3bをレジスト膜8で被覆した、多層配線基板の短絡防止構造とする。レジスト膜8で溶融半田がスルーホール3を上昇して縦型コネクタ4の端子4aに接触するの防止し、誤動作をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層配線基板の短絡防止構造に関し、更に詳しくは、スルーホール上方に配置されて多層配線基板に実装された縦型コネクタの底面の端子とスルーホールの信号ラインとの短絡を防止することができる多層配線基板の短絡防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の各種電子機器は小型化される傾向にあり、それに伴って電子機器に組み込まれるメインの多層配線基板も小型化せざるを得なくなると共に、電子部品の実装も高密度化せざるを得なくなってきた。そのため、図2に示すように、多層配線基板1の両面の配線パターン2a,2bを接続するスルーホール3の上方に、縦型コネクタ4を隙間をあけて接触しないように配置し、そのコネクタ端子4aをリフロー半田5で多層配線基板1の表面のランド部6に半田付けして実装するケースがふえてきた。なお、図2では、配線パターンを覆うレジスト膜などは図示していない。
【0003】
しかしながら、上記の多層配線基板1の裏面を溶融半田にディップして基板裏面の半田付けを行うと、溶融半田7がスルーホール3の基板裏面側の端子のランド部3bからスルーホール3の内面を伝って、図2に仮想線で示すようにスルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aまで上昇し、この上昇した半田7が温度やフラックスの影響で、縦型コネクタ4の底面に露出しているコネクタ端子4aに接触することにより、スルーホール3の信号ライン(配線パターン2a,2b)とコネクタ4の信号ライン(配線パターン2c)が短絡して誤動作を生じる恐れがあった。
【0004】
ところで、基板両面の導体回路を接続するスルーホールを形成する共に、スルーホールの表面に半田より高融点の金属メッキ層を形成し、基板の一方の面に導体回路とスルーホールを覆うレジストを、他方の面にスルーホールを覆わないレジストを形成することによって、スルーホール内にメッキ処理液が残留しないようにし、スルーホールの接続信頼性を維持させたプリント配線基板が知られている(特許文献1)
【0005】
また、基板のフットプリント部表面から裏面に貫通するスルーホールを設けると共に、その内面を導電材料で被覆してバイアホールとし、基板両面の半田付け不要部分とバイアホール内面に感光性レジストを塗布、感光硬化させることによって、バイアホールの半田吸込みをなくしたプリント配線基板も知られている(特許文献2)。
【0006】
更に、SMTプリント基板の片面に形成された部品搭載用パッドにバイアホールを形成すると共に、このバイアホールで反対面のスルーホールパターンと接続し、SMTプリント基板の両面の部品搭載用パッド及びスルーホールパターンのスルーホールを除くプリント基板全面にわたってレジストコートを施すことにより、プリント基板をリフロー炉で加熱した時に、部品搭載用パッドからバイアホールを介してスルーホールパターンに流れ込む半田を最小限に食い止めるようにしたSMTプリント基板も知られている(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、これら特許文献1〜3のプリント配線基板の発明は、スルーホールの信号ラインと、スルーホール上方に配置して実装された縦型コネクタの信号ラインの短絡を防止するものではないため、前述した図2に示す従来の多層配線基板における短絡の問題を解決する手段として採用し難いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−142845号公報
【特許文献2】特開平7−131128号公報
【特許文献3】特開平4−291988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情の下になされたもので、その解決しようとする課題は、多層配線基板の裏面を溶融半田にディップしたときに、スルーホールを上昇した溶融半田が、スルーホールの上方に配置されて実装されている縦型コネクタの露出したコネクタ端子に接触し、スルーホールの信号ラインと縦型コネクタの信号ラインが短絡して誤動作が生じるのを防止することができる、多層配線基板の短絡防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る多層配線基板の短絡防止構造は、底面に端子が露出した縦型コネクタをスルーホールの上方に接触しないように配置して基板表面に実装した多層配線基板において、スルーホールの少なくとも基板裏面側の端子のランド部をレジスト膜で被覆したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る多層配線基板の短絡防止構造においては、スルーホールの基板裏面側と基板表面側の双方の端子のランド部をレジスト膜で被覆することがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る多層配線基板の短絡防止構造のように、スルーホールの少なくとも基板裏面側の端子のランド部をレジスト膜で被覆してあると、多層配線基板の裏面を溶融半田にディップして基板裏面の半田付けを行うときに、スルーホールの基板裏面側の端子のランド部に溶融半田が付着しないので、スルーホールの内面を伝って溶融半田がスルーホールを上昇し難くなる。従って、従来のように上昇した半田が温度やフラックスの影響で、縦型コネクタの底面に露出しているコネクタ端子に接触し、スルーホールの信号ラインと縦型コネクタの信号ラインが短絡して誤動作を生じる恐れが解消される。
【0013】
特に、スルーホールの基板裏面側と基板表面側の双方の端子のランド部をレジスト膜で被覆してある場合は、たとえ溶融半田がスルーホールを上昇したとしても、半田がスルーホールの基板表面側の端子のランド部まで上昇して付着することはないので、縦型コネクタの端子との接触が二重に防止されることになり、短絡による後動作の恐れが一層確実に解消されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る多層配線基板の短絡防止構造の一実施形態を示す断面図である。
【図2】スルーホールの上方に縦型コネクタを配置して基板表面に実装した従来の多層配線基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明に係る多層配線基板の短絡防止構造の一実施形態を説明する。
【0016】
図1に示す多層配線基板1は、両面に配線パターン2a,2b,2cを有する二層配線基板(両面配線基板)であって、基板表面の配線パターン2aと基板裏面の配線パターン2bを電気的に接続するスルーホール3が基板を貫通して形成されている。配線パターン2a,2b,2cとスルーホール3の両端の端子のランド部3a,3bは、基板両面に積層した銅箔層をフォトエッチングすることによって形成されており、このスルーホール3の内面には銅メッキ層が形成されている。
【0017】
スルーホール4の上方には、縦型コネクタ4がスルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aとの間に間隔をあけて接触しないように配置され、縦型コネクタ4の底面から露出して導出されたコネクタ端子4aの先端部が基板表面の半田付け用のランド部6にリフロー半田5で半田付けされて、基板表面に実装されている。この縦型コネクタ4は内部にコンタクト4b,4bを有する雌コネクタであり、相手方の雄コネクタ(不図示)を上方から差込むと、電気的に接続されるようになっている。
【0018】
スルーホール3の基板裏面側の端子のランド部3bは、基板裏面の配線パターン2bと共に、レジスト膜(ソルダーレジストの皮膜)8で被覆されており、スルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aも、基板表面の配線パターン2aと共に、レジスト膜8で被覆されている。そして、縦型コネクタ4が接続される基板表面の配線パターン2cもレジスト膜8で被覆されている。
【0019】
スルーホール3の両端のランド部3a,3bを被覆するレジスト膜8は、両面配線基板1の裏面を溶融半田にディップする工程において、溶融半田がスルーホール3の基板裏面側の端子のランド部3bに付着し、スルーホール3の銅メッキされた内面を伝って上昇するのを阻止するためのものであるから、スルーホール3の少なくとも基板裏面側の端子のランド部3bを被覆すればよいのであるが、この実施形態のように、スルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aもレジスト膜8で被覆してあると、たとえ溶融半田がスルーホール3を上昇したとしても、スルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aまで上昇して付着するのを確実に防止できる利点がある。
【0020】
この実施形態では、スルーホール3の両端の開口部を除いてランド部3a,3bのみをレジスト膜8で被覆しているが、スルーホール3の両端の開口部とランド部3a,3bをレジスト膜8で一体的に被覆して、スルーホール3の開口部を閉塞してもよい。また、この実施形態では、多層配線基板1として両面に配線パターンを形成した二層配線基板(両面配線基板)を用いたが、三層もしくはそれ以上の多層配線基板を用いてもよいことは勿論である。
【0021】
なお、図1には図示されていないが、両面配線基板1の表面の配線パターンの上から、必要に応じてシルク印刷による印刷層が形成されることは言うまでもない。
【0022】
上記の多層配線基板1の短絡防止構造のように、スルーホール3の基板裏面側と基板表面側の双方の端子のランド部3a,3bをレジスト膜8で被覆してあると、多層配線基板1の裏面を溶融半田にディップして半田付けを行うときに、スルーホール3の基板裏面側の端子のランド部3bに溶融半田が付着しないので、スルーホール3の銅メッキされた内面を伝って溶融半田がスルーホール3を上昇し難くなり、たとえ溶融半田がスルーホール3を上昇することがあったとしても、スルーホール3の基板表面側の端子のランド部3aまで上昇して付着することは確実に防止される。従って、従来のように上昇した半田が温度やフラックスの影響で、縦型コネクタ4の底面に露出しているコネクタ端子4aに接触し、スルーホール3の信号ライン(配線パターン2a,2b)と縦型コネクタ4の信号ライン(配線パターン2c)が短絡して誤動作が生じる恐れを確実に解消することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 多層配線基板
2a,2b,2c 配線パターン
3 スルーホール
3a スルーホールの基板表面側の端子のランド部
3b スルーホールの基板裏面側の端子のランド部
4 縦型コネクタ
4a コネクタ端子
8 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に端子が露出した縦型コネクタをスルーホールの上方に接触しないように配置して基板表面に実装した多層配線基板において、スルーホールの少なくとも基板裏面側の端子のランド部をレジスト膜で被覆したことを特徴とする多層配線基板の短絡防止構造。
【請求項2】
スルーホールの基板裏面側と基板表面側の双方の端子のランド部をレジスト膜で被覆したことを特徴とする請求項1に記載の短絡防止構造。

【図1】
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【図2】
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