説明

多座β−ケトイミネートの金属錯体の調製方法

【課題】第2族金属含有多座β−ケトイミネートの製造方法を提供する。
【解決手段】ROHおよび(OH)(式中、RおよびRは、アルキル基およびアリール基から独立して選択される。)から成る群から選択された少なくとも1種を含むアルコールと、三座ケトイミン配位子とを含む反応混合物中でM(Mg、Ca、Sr、およびBaから成る群から選択される金属)を反応させることを含む、第2族金属含有多座β−ケトイミネートの製造方法。ある態様において、この反応混合物は、有機溶媒をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年3月11日出願の米国仮特許出願第61/159、237号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造業界では、ケイ素、金属窒化物、金属酸化物およびこれらの金属含有前駆体を使用する他の金属含有層等の基材上にコンフォーマルな(conformal)金属含有膜を加工するための原子層堆積を含む化学気相堆積法のための、金属源を含む前駆体への要求が続いてある。この目的を達成するために、以前の調製方法に比較してより高い収率、およびある例において、以前の方法より低いコストの金属源を含む前駆体を調製するための方法は、半導体製造業界に望ましいであろう。また望ましいのは、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびそれらの組み合わせ等であるが、これらに限られない調製プロセスの間に導入される場合がある潜在的な金属不純物を最小化しながら、金属源を含む前駆体が調製されるこれらの前駆体を調製するための方法である。
【0003】
多座β−ケトイミネート配位子を調製するための以前の方法は、ナトリウムアミドまたは水素化ナトリウム等の強塩基の存在下で、嵩高いケトンとエチルエステルとのクライゼン縮合等の周知の手段、次ぎに続いて次式1:
【化1】

式1
として記載された多段階スキームにおいて下記に示された等のアルキルアミノアルキルアミンとのシッフ塩基縮合反応等の別の周知の手段を使用して行われ、
【0004】
次式2に示された等のアンモニア、金属アミド、金属水素化物、または金属アルコキシドの存在下で、三座β−ケトイミネート配位子と第2族金属とを反応させることを含む金属含有錯体を調製するための別の方法である。
【化2】

式2
【0005】
金属含有錯体はまた、配位子のリチウムまたはカリウム塩を提供するために、多座β−ケトイミネート配位子とアルキルリチウムまたは水素化カリウムとを反応させることを経由し、次に次式3:
【化3】

式3
に示された等の式MX(X=Cl、Br、I)金属ハロゲン化物との反応によって調製できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、アンモニアをバブリングすることは、面倒なプロセスであり、そして反応収率は、典型的には非常に低いので、アンモニアの存在下で、第2族金属を使用する式2等の反応は、より大スケールプロセスのために好適でない場合がある。さらに、試薬として水素化ナトリウムまたは水素化カリウムを含む式1および式3等の反応は、最終製品中におけるナトリウムまたはカリウムの不純物に加えて、潜在的に火災を起こす場合があるそれらの高い反応性のために望ましくない。式2等の試薬として金属アミドまたはアルコキシドを用いるまた別の反応は、試薬が高すぎるので、実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に記載されているのは、多座β−ケトイミネートが、イミノ基中に窒素または酸素官能性を取り込む、第2族金属含有多座β−ケトイミネートを調製するための方法である。一態様では、第2族金属多座β−ケトイミネートは、以下の構造A:
【化4】

構造A
によって表わされる基から選択される。
【0008】
構造Aにおいて、Mは、Mg、Ca、Sr、およびBaから成る群から選択される金属であり;R、R、R、およびRは、アルキル基、フルオロアルキル基、脂環式基、およびアリール基から独立して選択され;Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、脂環式基、およびアリール基から選択され;そしてRは、アルキエニル架橋(alkyenyl bridge)である。一態様では、Rは、2つまたは3つの炭素原子を含む基等であるが、これらに限られないアルキエニル架橋であり、それによって金属中心へ5員または6員配座環を作る。この態様または他の態様において、任意の1種または2種以上の置換基R、R、R、R、およびRは、環を形成するために接続されていることができる。この態様または他の態様において、この環は、炭素、酸素、および/または窒素原子をさらに含むことができる。
【0009】
一つの形態では、以下の構造A:
【化5】

構造A
(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、およびBaから成る群から選択される金属であり;R、R、R、およびRは、アルキル基、フルオロアルキル基、脂環式基、およびアリール基から独立して選択され;Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、脂環式基、およびアリール基から選択され;そしてRはアルキエニル架橋であり、三座ケトイミン配位子と、ROHおよび(OH)(式中、RおよびRは、アルキル基およびアリール基から独立して選択される。)から成る群から選択された少なくとも1種を含むアルコールとを含む反応混合物中でMを反応させることを含む。)によって表わされる第2族金属含有多座β−ケトイミネートを製造するための方法が提供される。ある態様において、反応混合物は、有機溶媒をさらに含む。
【0010】
下記の利点の少なくとも1つは、金属含有多座β−ケトイミネートを調製するために記載された方法によって達成でき、そして:
これまで手に入れることができた調製方法より高い収率で、反応性金属含有多座β−ケトイミネートを生成できる能力;
リチウム、ナトリウム、またはカリウム等であるが、これらに限られない金属含有多座β−ケトイミネートにおいて、潜在的な金属不純物を除去する能力;
以前の方法における金属ハロゲン化物の代わりに純粋な金属を使用することにより、金属含有多座における潜在的なハロゲン化物の不純物を除去する能力;および/または、
プロセスを簡素化し、それによって製造のコストを低下させる能力、
を含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に記載された方法は、収率の損失、遅い反応時間および/または最終製品中への不純物の導入の問題を避けることができる第2族金属含有多座β−ケトイミネートの調製のための方法である。本明細書中に記載された方法は、例えば、純粋な第2族金属等の金属、アルコール、および三座ケトイミン配位子を反応混合物中に導入することによって、これらの問題を回避する。反応混合物中のアルコールの存在は、in situで金属アルコキシドを生成し、この金属アルコキシドが、三座ケトイミネート配位子とさらに反応して多座β−ケトイミネート最終製品を生成すると考えられている。以前の調製方法は、出発材料として純粋なSr金属を使用して金属含有多座β−ケトイミネート、特にストロンチウム錯体を製造することは不可能と教示していた。このように、Sr金属、イソプロピルアルコール(IPA)等の1種または2種以上のアルコール、および三座ケトイミン配位子を含む反応混合物を使用してストロンチウム錯体等の金属含有多座β−ケトイミネート錯体を調製し、80%超等の比較的高収率で最終製品を提供することは、驚くべきであり、そして予期されていない。ある態様において、Sr金属等の第2族金属は、純粋な金属である。用語「純粋」は、本明細書中で使用される場合、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)によって決定された99%以上の第2族金属を含むことを意味する。
【0012】
本明細書中に記載された方法は、現在手に入れることができる他の方法論に対して、1つもしくは2つ以上のまたは以下の利点を提供する。第1に、この方法は、比較的よりコストの低い試薬の使用を可能にできる。例えば、ある態様において、この方法は、第2族金属アミド等の一般的に使用される試薬よりむしろ第2族金属を使用できる。現在のところ、その純粋な形態での第2族金属は、金属ハロゲン化物とナトリウムアミドまたはカリウムアミドとの間の反応を用いて典型的には調製される金属アミドより費用効率が高い。第2に、本明細書中に記載された方法は、第2族金属アミドを生成させるために、水素化ナトリウムまたは水素化カリウムの使用を避けることができる。代わりに、本明細書中に記載された方法では、純粋な第2族金属と三座ケトイミンとの反応副生成物は、最終製品混合物からさらに容易に除去され、そして/または最終製品混合物において有害な不純物ではない水素である。アルコールは、in situで2金属アルコキシド反応基を生成する反応の間に、反応性混合物内で還流を提供し、そして三座ケトイミン配位子とさらに反応し、それによって最終製品を生成すると考えられている。ある態様において、アルコールおよび未反応の三座ケトイミン配位子、および溶媒は、蒸留、分別、回収、または他の手段を使用して反応混合物から容易に除去できる。
【0013】
第2族金属含有多座β−ケトイミネートは、以下の構造A:
【化6】

構造A
によって表わされる群から選択される。
【0014】
構造Aにおいて、Mは、Mg、Ca、Sr、およびBaから成る群から選択される金属であり;R、R、R、およびRは、アルキル基、フルオロアルキル基、脂環式基、およびアリール基から独立して選択され;Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、脂環式基、およびアリール基から選択され;そしてRは、アルキエニル架橋である。構造Aおよび記載を通して、用語「アルキル」は、1〜20個の、または1〜12個のまたは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖、または環状の官能基を意味する。例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル、イソペンチル、およびtert−ペンチルを含むが、これらに限られない。用語「アルキル」はまた、ハロアルキル、フルオロアルキル、アルカリール、またはアラルキル等の他の基に含まれるアルキル部分に適用される。構造Aおよび記載を通して、用語「フルオロアルキル」は、1〜20個の、または1〜12個または1〜6個の炭素原子および少なくとも1個のフッ素原子を有する直鎖、分枝鎖、または環状官能基を意味する。構造Aおよび記載を通して、用語「脂環式基」は、脂肪族である基を意味し、そして3〜20個の、または3〜12個または3〜6個の炭素原子を有する飽和または不飽和である少なくとも1つの環状基を含む。構造Aおよび記載を通して、用語「アリール」は、6〜12個の炭素原子を有する環状官能基を意味する。例示的なアリール基は、フェニル、ベンジル、トリル、およびo−キシリルを含むが、これらに限られない。構造Aおよび記載を通して、用語「アルキエニル」は、2つの窒素原子に接続されて架橋を形成する基を意味し、そして2〜20個または2〜12個または2〜6個の炭素原子を有し、そして環内の原子(単数または複数)に結合できる。例示的なアルキエニル基は、−(CH−、−(CH−、−CH(Me)CH−、−CHCH(Me)−(式中、「Me」は、メチルである)を含むが、これらに限られない。構造Aおよび記載を通して、用語「アルコキシ」は、酸素原子(例えば、R−O)に結合したアルキル基を意味し、そして1〜20個、または1〜12個、または1〜6個の炭素原子を有することができる。例示的なアルコキシ基は、メトキシ(−OCH)およびエトキシ基(−OCHCH)を含むが、これらに限られない。ある態様において、1種もしくは2種以上のアルキル基、アリール基、および/またはアルコキシ基は、置換もしくは非置換であることができ、または水素原子の代わりに置換された1つもしくは2つ以上の原子もしくは基を有することができる。例示的な置換基は、酸素、硫黄、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、I、またはBr)、窒素、およびリンを含むが、これらに限られない。
【0015】
一態様では、Rは、2個または3個の炭素原子を含む基等であるが、これらに限られないアルキエニル架橋であり、それによって金属中心に5員または6員配位環を作る。置換基Rは、直鎖のアルキエニル架橋または分枝鎖のアルキエニル架橋であることができる。一態様では、Rは、−(CHCH)−および−(CHCHCH)−等であるが、これらに限られない直鎖のアルキエニル架橋である。別の態様では、Rは、−CH(Me)CH−および−CHCH(Me)−等であるが、これらに限られない分枝鎖のアルキエニル架橋である。用語「Me」は、本明細書中で使用される場合、メチル基を意味する。この態様または他の態様において、任意の1種または2種以上の置換基R、R、R、R、およびRは、接続されて環を形成できる。この態様または他の態様において、この環は、炭素、酸素、および/または窒素原子をさらに含むことができる。
【0016】
第2族金属含有多座β−ケトイミネートは、以下の構造B:
【化7】

構造B
によって表わされた三座ケトイミンを含む反応混合物中で調製される。
【0017】
構造Bにおいて、置換基R、R、R、R、R、およびRのうちの1つは、それぞれ独立して構造Aで上記に記載したのと同じである。
【0018】
本明細書中に記載された方法において、第2族金属と三座ケトイミン配位子との間の反応少なくともの一部分は、少なくとも1種のアルコール試薬の存在下で生じる。この点で、完全なアルコールの充填、もしくはそれらの一部を反応開始前に、もしくは反応ステップの間に連続して、またはそれらの組み合わせて加えることができる。好適なアルコールは、以下の式I:ROHを有するものを含む。式(I)において、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、およびそれらの異性体等であるが、これらに限られない直鎖、分枝鎖、または環状である1〜20個、または1〜12個、または1〜6個の炭素原子を含むアリールまたはアルキル部分である。ある態様において、このアルコールは、n−ブタノール、イソプロパノール、エタノール、n−プロパノール、メタノール、プロパノール、イソブタノール、ペンタノール、イソアミルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1−ブタノールおよびそれらの組み合わせであることができる。さらにアルコール試薬は、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(プロピレングリコール)、1、4−ブタンジオール、およびそれらの組み合わせ等であるが、これらに限られないオリゴマーのまたはポリマーのアルコールまたはポリオールを含む。さらに例示的なアルコール試薬は、以下の式(II):(OH)、(式中、Rは、任意のアリール、任意の直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、環状アルキル、または置換または非置換であることができる、アルキル基および/またはアルケニル基の組み合わせであり、そしてnは、結合したヒドロキシル基の数である。)を有するこれらの化合物を含む。用語「置換」は、本明細書中で使用される場合、アルキル基および/またはアルケニル基が、炭素原子以外の他の原子および/または酸素、窒素、硫黄等の1種または2種以上の他の元素の原子を含むことができることを意味する。ある態様において、アルキル基および/またはアルケニル基の1つまたは2つ以上は、酸素原子酸素原子で置換されていることができる。好適なR基の例は、−(CH11−CH、−CH−CH−CH−、−[CH−CH−CH−CH−O]−CH−CH−CH−CH−、および−[CH−CH−O]−CH−CH−(式中、mは繰り返し単位の数を意味する。)を含むことができるが、これらに限られない。先のものの中では、反応混合物内のアルコール試薬が、最終製品に損傷を与えることなく、最終製品混合物から容易に除去されることが好ましい。ほかの態様において、アルコールは、最終製品混合物の5重量%以下、または最終製品混合物の0.5重量%以下の量で、最終製品混合物中に存在できる。反応混合物中に存在するアルコールの量は、1モルの第2族金属M当たり0.1〜5.0の範囲であることができ、2.0の金属Mに対するアルコールの比であることができる。
【0019】
ある態様において、反応混合物は、1種または2種以上の溶媒をさらに含む。好適な溶媒の例は、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、エーテルおよびアセトン等であるが、これらに限られない有機溶媒を含む。ある態様において、溶媒またはそれらの混合物は、反応混合物中で試薬、反応生成物、またはそれらの組み合わせの1種または2種以上が少なくとも部分的に可溶性であるように、選択されることが好ましい。他の態様において、反応混合物内のアルコールは、試薬および溶媒の両者として機能する。
【0020】
本明細書中に記載された方法のある特定の態様において、第2族金属含有多座β−ケトイミネートは、有機溶媒または有機溶媒の混合物中に、純粋な第2族金属、三座ケトイミン配位子、およびアルコール試薬を含む反応混合物中で調製される。ある態様において、金属および三座ケトイミン配位子が、有機溶媒中に加えられ、そして次にアルコールが加えられる。この態様または他の態様において、アルコールは、突然の発熱反応を避ける面、反応混合物に「少しずつ(portion wise)」加えられる。用語「少しずつ」は、本明細書中で使用される場合、アルコールの全量の一部分(純粋であるか、または有機溶媒で希釈されているかのいずれか)が、アルコールの全量が加えられるまで、追加の漏斗を用いて、反応混合物(例えば、金属、三座ケトイミン配位子、および有機溶媒)を含む反応容器に加えられることを意味する。この点で、アルコールの量は、突然の発熱反応を避けるために、少しずつ徐々に増加しながら加えられる。ある態様において、それぞれの部分は、例えば、10ミリリッター(ml)〜100mlの範囲であることができる。しかし、反応混合物に充填されたアルコールの部分の量は、生産のスケールによって変化できる。この態様または他の態様において、反応混合物は、有機溶媒の沸点で還流される。ある特定の態様において、純粋な金属、三座ケトイミン配位子、IPA等の1種または2種以上のアルコール、およびテトラヒドロフラン(THF)等の溶媒を含む反応混合物の還流、続くろ過および全ての揮発性の除去は、式4:
【化8】

式4
に示された等の良好な収率でターゲットの錯体を提供することが見いだされた。
【0021】
反応混合物は、第2族金属含有多座β−ケトイミネートを含む最終製品混合物を提供するのに充分な条件に曝される。本明細書中に記載された方法を行うことができる多くの様式がある。ある好ましい態様において、反応混合物は、そこに含まれる試薬が反応し、そして最終製品混合物を生成するのに充分な温度および時間で加熱される。反応混合物内に含まれる試薬によって、反応温度は、室温から200℃の範囲であることができ、または還流温度または用いられる溶媒の沸点であることができる。反応時間は、約0時間もしくは即座から約100時間、または約0から約60時間、または約4から約48時間の範囲であることができる。ある態様において、反応後の揮発物は、蒸留、クロマトグラフィー、結晶化、および/または滴定等の標準の手順によって最終製品混合物から除去できる。この態様または他の態様において、最終製品混合物内の存在する未反応材料の量は、材料の揮発性により、充分に低い(例えば、最終製品混合物の5%重量%以下)ことができるか、または材料が製品中に受け入れることができる不純物であるので、最終製品混合物中に残ることができる。
【0022】
一態様では、反応混合物は、第2族金属とアルコール、多座ケトイミン、または両方の大幅な反応を達成するために、充分な時間の間、全還流の条件下で、適当な温度及び圧力において反応できる。この転化は、その揮発性が操作性または収率に関して、もはや問題とならない点まで、反応器中のケトイミンの濃度がいったん低下れば充分である。
【0023】
本明細書中に記載された方法の教示は、大スケール(1000標準リッターを超える生産速度)、中規模ベンチスケール(1000〜10標準リッターの間の生産速度)、小スケール(10標準リッター未満の生産速度)、およびそれらの間の全てのための適用性を有する。
【0024】
本明細書中に記載された方法を使用して調製できる金属含有多座β−ケトイミネートの例は、ビス(2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウム、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウム、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−エチルメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウム、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−メチエチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウム、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジエチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウム、およびビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジエチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含むが、これらに限られない。
【0025】
本明細書中に記載された方法は、課題を解決するための手段および請求項における等のあるアルファベットを使用して記載できる。これは、時間軸に従うことを意味することを意図しているのではない。実際、そうでないと特定しない限り、方法またはプロセスステップは、種々の異なる順番、例えば、同時に、連続して等で行うことができる。
【0026】
本明細書中に記載された方法は、以下の例を参照してさらに詳細に具体的に説明されるであろうが、しかし当然のことながら、この方法は、それらに限定されるとみなされない。
【実施例】
【0027】
比較例1
ストロンチウムアミドを用いたビス(2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムの合成
40.0g(0.066mol)のSr(N(SiMe.2THFを、100mlTHFと共に、500mLシュレンクフラスコに充填した。このフラスコに100mLのTHF中29.0g(0.14mol)のワックス状2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノンを滴下して加えた。生じた淡黄色の透明溶液を一晩室温で攪拌した。すべての揮発物を次に真空下で除去して、100mLの熱ヘキサン中に溶解された黄色の固体を与えた。捕捉された揮発性液体のGC/MS分析は、この液体がTHFおよび副生成物のヘキサメチルシリルアミンを含むことを示した。THF中に溶解された黄色固体のGC/MSは、THF以外には2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノンのみがあることを明らかにし、固体が、三座β−ケトイミネート配位子を含むことを示した。ヘキサン溶液を、次に約30mLに濃縮して、底に白色結晶を沈殿させた。フラスコを20℃に保ち、さらに無色結晶を与えた。26.1gの結晶を集め、そして真空下で乾燥させた。収率は、ストロンチウム基準で77%であった。
【0028】
元素分析:(C2446Srで計算した):C、56.49;N、10.98;H、9.09。検出:C、56.34;N、11.32;H、8.91.HNMR(500MHz、C):δ=5.16(s、2H)、2.97(t、4H)、2.26(b、4H)、1.89(s、12H)、1.77(s、6H)、1.37(s、18H)。
【0029】
例1
純粋なSr金属およびイソプロパノールを用いたビス(2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムの合成
44.30g(505.63mmol)のストロンチウム金属に、175mLのTHF中214.69g(1011.26mmol)の2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノンを直接加えた。次に滴下ロートを用いて60.78g(1011.26mmol)のイソプロパノールの添加をゆっくりと行った。反応フラスコにコンデンサーを付け、そしてアルゴン源下で換気した。反応混合物を16時間還流させ、その後、反応混合物が、フラスコの底に少量の粒子を生じた。反応を室温まで冷却させ、そして中程度の多孔度フリットの上にあるセライト(Celite)(512媒体)の薄層を通してろ過した。橙黄色のろ液を真空下、一晩ポンプで引いて、97%の粗収率で250gの重量の黄色固体を与えた。ヘキサンからの再結晶化で、プロトンNMRおよびTGAによって比較例1に記載されたのと同じ化合物と確認された純粋な製品を与えた。
【0030】
比較例2
ストロンチウムアミドを用いたビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムの合成
10mLのTHF中1g(1.81mmol)のSr(N(SiMe.(THF)の溶液に、10mLのTHF中0.82g(3.62mmol)の2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノンを室温で滴下して加えた。反応性混合物を16時間攪拌した。THFを真空下で蒸発させて、ヘキサン中の溶液として回収された真っ白でない固体を与えた。ヘキサンを除去して、ペンタン中室温で再結晶化された固体を与えた。0.48gの透明な針状結晶を得た(Srに基準で50%の収率)。
【0031】
元素分析:(C2650Srで計算した):C、58.01;N、10.40;H、9.36。検出:C、56.07;N、10.10;H、8.86.HNMR(500MHz、C):δ=5.12(s、1H)、3.42(m、1H)、3.32(t、1H)、1.96(b、2H)、1.83(s、6H)、1.72(b、2H)、1.41(s、9H)、0.94(d、3H)。
【0032】
例2
純粋なSr金属およびイソプロパノールを用いたビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムの合成
250mLのTHF中43.42g(495.55mmol)のストロンチウム金属に、179.48g(792.88mmol)の2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノンを加え、直後に60.70mL(792.88mmol)のイソプロパノールを加えた。反応混合物を16時間還流し、そして完了後に反応は、アンバ−レッドの溶液となり、そして室温まで冷却された。反応混合物を、中程度の多孔度のフリット上の中位グレードのセライトの薄層を通してろ過した。ろ液からTHFを真空下ポンプで引き、粘性のある深赤色のオイルを与えた。オイルをヘキサン中に溶解し、そして残留するTHFをポンプで除去するための手段として再び真空下にポンプで引いた。この製品は、90%の収率で240.04gの重量のタール状のオイルを残した。オクタンからの再結晶は、プロトンNMRおよびTGAによって、比較例2に記載された化合物と同じであると確認された純粋な製品を提供した。
【0033】
例3
純粋なSr金属およびtert−ブタノールを用いたビス(2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムの合成
75mLのTHF中2.02g(23.05mmol)のストロンチウム金属片に、8.68g(46.11mmol)のtert−ブタノールを加え、直後に50mLTHF中10.44g(46.11mmol)の2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノンを、カニューレ(canula)を用いて加えた。反応を3日間還流させ、その後に灰緑色懸濁液となった。反応を冷却させ、そしてろ過した。ろ液を減圧下で蒸発させて、94%の粗収率の11.0gの重量のベージュのワックス状の固体を与えた。ヘキサンからの再結晶化で、プロトンNMRおよびTGAにより比較例2に記載されたのと同じ化合物であることが確認された純粋な製品を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造A:
【化1】

構造A
(式中、Mは、Mg、Ca、Sr、およびBaから成る群から選択される金属であり;R、R、R、およびRは、アルキル基、フルオロアルキル基、脂環式基、およびアリール基から独立して選択され;Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、脂環式基、およびアリール基から選択され;そしてRは、アルキエニル架橋である。)によって表わされた第2族金属含有多座β−ケトイミネートを調製するための方法、
ここで、該方法は、ROHおよび(OH)(RおよびRは、アルキル基およびアリール基から独立して選択される。)から成る群から選択された少なくとも1種を含むアルコールと、三座ケトイミン配位子とを含む反応混合物中で、Mを反応させることを含む。
【請求項2】
Mが、ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項3】
該三座ケトイミン配位子が、以下の構造B:
【化2】

構造B
(式中、R、R、R、およびRは、アルキル基、フルオロアルキル基、脂環式基、およびアリール基から独立して選択され;Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、脂環式基、およびアリール基から選択され;そしてRは、アルキエニル架橋である。)によって表わされた化合物を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
該アルコールが、式ROHを有するアルコールを含む、請求項1の方法。
【請求項5】
該アルコールが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、neo−ペンタノール、tert−ペンタノール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4の方法。
【請求項6】
該反応混合物中の該アルコールに対するMのモル比が、約0.1〜5の範囲である、請求項1の方法。
【請求項7】
該反応混合物が、有機溶媒をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項8】
該有機溶媒が、トルエンおよびヘキサンを含む、請求項7の方法。
【請求項9】
該有機溶媒が、テトラヒドロフランを含む、請求項7の方法。
【請求項10】
該反応させるステップが、該三座ケトイミン配位子および該アルコールの少なくとも1種が、少なくとも部分的に可溶性である有機溶媒の存在下で行われる、請求項7の方法。
【請求項11】
該金属および該三座ケトイミン配位子が、該有機溶媒中に加えられ、そして次に該アルコールが加えられる、請求項7の方法。
【請求項12】
該アルコールが、該反応混合物部分に、突然の発熱反応を避けるために、少しずつ加えられる、請求項11の方法。
【請求項13】
該反応混合物が、該有機溶媒の沸点で還流される、請求項7の方法。
【請求項14】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(ジメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項15】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジメチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項16】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−エチルメチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項17】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−メチエチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項18】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジエチルアミノエチルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。
【請求項19】
該金属含有多座β−ケトイミネートが、ビス(2、2−ジメチル−5−(1−ジエチルアミノ−2−プロピルイミノ)−3−ヘキサノナト−N、O、N’)ストロンチウムを含む、請求項1の方法。

【公開番号】特開2010−209067(P2010−209067A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−53471(P2010−53471)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】