説明

多成分系、その製造方法およびその使用

少なくとも以下の成分を含有するか、または該成分からなる多成分系:(I)少なくとも1の油中水型分散液、これは水および少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2つのイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解して、および/または分散して含有する;(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる液状の成分;および(III)水、または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する、少なくとも1の水性成分;その製造方法および熱により、または熱および化学線により硬化可能な油中水型分散液を製造するためのその使用ならびに被覆、接着層またはシーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の多成分系に関する。さらに本発明は多成分系の新規の製造方法に関する。さらに本発明は新規の多成分系の使用および熱により、または熱と化学線とにより硬化可能な水中油型分散液を製造するための新規の方法により製造された多成分系の使用に関する。特に本発明は被覆、接着層およびシーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料としての熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液の使用に関する。
【0002】
少なくとも以下の成分を含有しているか、または以下の成分からなる、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造するための水性多成分系は、米国特許US5,466,754A1、国際特許出願WO97/14731、ドイツ国特許出願DE4421823A1、DE19855125A1、DE19855167A1、DE19914899A1またはDE19904317A1あるいは欧州特許EP1056786B1から公知である:
(I′)水を含有せず、少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2つのイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解するか、かつ/または分散して含有する少なくとも1の液状の成分;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、もしくはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の液状の成分;および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、かつ/または溶解して含有する少なくとも1の水性成分。
【0003】
周知のとおり、相応する熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造するためには少なくとも1の成分(I′)、少なくとも1の成分(II)および少なくとも1の成分(III)を相互に混合する。その際、通常はまず水を含有していない液状の成分(I′)および(II)を相互に混合し、その後、得られる混合物(I′/II)を水性成分(III)と合する。得られる硬化可能な水中油型分散液は特に被覆、接着層およびシーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料として使用される。
【0004】
この場合、国際特許出願WO97/14731A1の比較試験からさらに、まず少なくとも1のバインダー(A)を含有する成分(III)を、水を含有しない成分(I′)と混合して水性−有機性の成分(I′/III)が得られる方法が公知であるが、しかしこれはその高い含水率に基づいて油中水型分散液ではない。水性−有機性の成分(I′/III)を引き続き成分(II)と混合する。従って水性−有機性の成分(I′/III)および成分(II)は二成分系を形成する。しかし、得られる、熱により硬化可能な水性混合物は、濁り、灰色の線状(Grauschleier)および劣ったレベリングを有するクリアコーティングを生じる(WO97/14731A1、第58頁、第1表を参照のこと)。
【0005】
さらにUS5,466,754A1(米国特許US5,075,370A1を直接参照)の比較試験である例1および2、第11欄第62行目〜第13欄、第21行目から、バインダー(A)の水性分散液または溶液を成分(I″)として、つまり水中油型分散液として、ならびに成分(II)および(III)を含有する三成分系が公知である。しかしこの三成分系は、不均一で濁っており、かつ攪拌後に相分離を生じるか、または不安定であり、かつすでに1〜2時間後に沈殿物を形成する、熱により硬化可能な水性混合物を生じる。
【0006】
国際特許出願WO98/38230A1から、40質量%の含水率を有する水性−有機性成分(I″)ならびに成分(II)および(III)を含有する三成分系が公知である。該水性−有機性成分(I″)は、その高い含水率に基づいて油中水型分散液(I)ではない。熱により硬化可能な水中油型分散液を製造するために、成分(I″)を成分(II)と混合してこの工程で油中水型分散液が得られる。油中水型分散液は水でさらに希釈されて水中油型分散液が得られる。国際特許出願の記載によれば、該分散液は安定しており、比較的長い可使時間を有しており、かつ比較的低い揮発性有機化合物(VOC)の含有率を有する。該分散液により、ピンホール(Mikroblaesen)をほとんど有していないか、または有していない、高い透明性および高い光沢の被覆、特にクリアコーティングが得られる。
【0007】
公知の多成分系から公知の熱により硬化可能な水性混合物を製造する場合、成分(I′)〜(III)を混合し、かつ得られた混合物を均質化する際に、比較的高い剪断力を使用しなくてはならないため、この方法は攪拌機または溶解機のような混合装置を用いて実施することができるのみである。しかしまた、補修用コーティング、特に自動車の補修用コーティングは比較的少量の、熱により、または熱および化学線により硬化可能な多成分系からなる水中油型分散液を手作業で製造することができるものでなくてはならない。しかしこれは公知の多成分系の場合、不可能であるか、または必要とされる範囲では不可能である。
【0008】
本発明の課題は、従来技術の欠点をもはや有さず、容易に製造することができ、かつ熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を複数の成分から手作業により混合することによって問題なく、かつ極めて良好に再現可能に製造することができる新規の多成分系を提供することである。
【0009】
得られる、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液は安定であるべきであり、実地に即した数時間の可使時間またはポットライフを有し、かつ特に被覆材料、特にクリアコート、接着剤および封止材料として使用することができるべきである。
【0010】
該被覆材料、特にクリアコートにより、特に高い光沢、高い清澄性、高い透明性、極めて良好なレベリングおよび完全に、もしくはほぼ完全に表面欠陥を有していない被覆、特にクリアコーティングが得られる。
【0011】
該接着剤により、支持体と困難な、および/または迅速に、極端に変化する気候条件の下で継続的に相互に結合する接着層が得られるべきである。
【0012】
該被覆材料は困難な、および/または迅速に、極端に変化する条件の下で、および高い圧力においても、攻撃的な化学薬品に対して継続的に封止することができるシーラントが得られるべきである。
【0013】
これに応じて、少なくとも以下の成分を含有するか、または該成分からなる新規の多成分系が判明した:
(I)少なくとも1の油中水型分散液、これは水および少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2つのイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解して、および/または分散して含有する;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる液状の成分;および
(III)水、または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する、少なくとも1の水性成分。
【0014】
以下では新規の多成分系を「本発明による多成分系」とよぶ。
【0015】
さらに、少なくとも
(I′)水を含有せず、少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解して、かつ/または分散して含有する少なくとの1の液状成分;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の液状成分;および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する少なくとも1の水性成分
を含有する多成分系から、本発明による多成分系を製造する新規の方法が判明し、この方法の場合、少なくとも1の成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と混合して少なくとも1の油中水型分散液(I)が得られ、かつ以下ではこの方法を「本発明による方法1」とよぶ。
【0016】
さらに、少なくとも以下の成分を含有するか、または以下の成分からなる多成分系を使用する、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造する新規の方法が判明した:
(I′)水を含有せず、少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解して、かつ/または分散して含有する少なくとの1の液状成分;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の液状成分;および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する少なくとも1の水性成分、
この場合、少なくとも1の成分(I′)、少なくとも1の成分(II)および少なくとも1の成分(III)を相互に混合し、かつその際
(1)少なくとも1の成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と混合して少なくとも1の油中水型分散液(I)が得られ、
(2)該油中水型分散液(I)を少なくとも1の成分(II)と混合し、かつ
(3)得られる混合物(I/II)を水または少なくとも1の成分(III)と混合して少なくとも1の水中油型分散液が得られる。
【0017】
以下では熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造するための新規の方法を「本発明による方法2」とよぶ。
【0018】
さらに、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造するための、本発明による多成分系および本発明による方法1により製造された本発明による多成分系ならびに本発明による方法2の新規の使用が判明した。
【0019】
さらに、
本発明による多成分系から製造される、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液、
本発明による方法1を用いて製造される本発明による多成分系から得られた熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液ならびに
本発明による方法2を用いて製造された熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液の、被覆、接着層およびシーラントを製造するための、被覆材料、接着剤および封止材料としての新規の使用が判明した。
【0020】
従来技術を顧慮すると、本発明の根底にある課題を、本発明による多成分系、本発明による方法1および本発明による方法2を用いて解決できたことは意外であり、かつ当業者に予想できるものではなかった。
【0021】
特に本発明による多成分系が従来技術の欠点をもはや有さず、本発明による方法1を用いて容易な方法で、優れて再現可能に製造することができたことは意想外であった。
【0022】
さらに本発明による多成分系および本発明による方法1を用いて製造された多成分系により、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液が成分(I)〜(III)から手作業により混合することによって問題なく、かつ優れて再現可能に製造することが可能である。
【0023】
特に本発明による方法2により、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液が成分(I′)〜(III)から手作業により混合することによって問題なく、かつ優れて再現可能に製造することが可能である。
【0024】
得られる、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液は安定であり、実地に即した数時間の可使時間またはポットライフを有し、かつ特に被覆材料、特にクリアコート、接着剤および封止材料として有利に使用することができた。
【0025】
該被覆材料、特にクリアコートにより、特に高い清澄性、高い透明度、高い透明性、極めて良好なレベリングおよび完全に、もしくはほぼ完全に表面欠陥を有していない被覆、特にクリアコーティングが得られる。
【0026】
該接着剤により、支持体と困難な、および/または迅速に、極端に変化する気候条件の下で継続的に相互に結合する接着層が得られる。
【0027】
該被覆材料は困難な、および/または迅速に、極端に変化する条件の下で、および高い圧力においても、攻撃的な化学薬品に対して継続的に封止することができるシーラントが得られる。
【0028】
本発明による多成分系は少なくとも成分(I)〜(III)を含有する。
【0029】
さらに本発明による多成分系は少なくとも1の別の成分、たとえばドイツ国特許出願公開DE19904317A1、第3頁第6行目〜第8頁第10行目に詳細に記載されている、少なくとも1の、特に1の、場合により水溶性もしくは水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーのバインダー(A)を含有するか、または該バインダーからなる微粒子状の固体成分(IV)を含有していてもよい。
【0030】
成分(I)〜(III)ならびに場合により存在する別の成分は、たとえば複数の異なった着色された成分(I)をベースコートとして含有しており、従って比較的少量のベースコートから混色式を用いて被覆材料を製造することができ、異なった色調および光学的効果を有する被覆を生じる混合系またはモジュール系(たとえばドイツ国特許出願公開DE19904330A1を参照のこと)の形でも提供することができる。
【0031】
本発明による多成分系は少なくとも1の、特に1の油中水型分散液(I)を成分(I)として含有しており、該分散液は水を分散相として、および有機相を連続相として含有する。場合によりなお微粒子状の固体粒子、たとえば顔料が別の分散相として存在していてもよい。
【0032】
油中水型分散液(I)の含水率は広い範囲で異なっていてよいが、重要なことは転相につながる含水量(Wasserberg)を超えないことである。転相につながる含水量の状態は油中水型分散液(I)中に含有されている成分、特にバインダー(A)およびその中和度によっても影響を受ける。一般に、含水率が、特に以下に記載されるバインダー(A)の中和度が>50%、<40、有利には<30および特に<20質量%である場合に転相は生じない。
【0033】
有利には含水率は少なくとも5、有利には少なくとも10および特に少なくとも15質量%である。
【0034】
油中水型分散液(I)はさらに、少なくとも1の水溶性および/または水分散性の、オリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2、有利には少なくとも3および特に少なくとも4のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解および/または分散して含有している。
【0035】
油中水型分散液もしくは成分(I)中で使用するために適切なバインダー(A)の例はドイツ国特許出願公開
DE4421823A1、第4頁第4行目〜第11頁第17行目、
DE19855125A1、第3頁、第14頁〜第4頁第1行目ならびに第4頁第2行目〜第11頁第39行目、
DE19855167A1、第3頁段落[0032]〜第12頁段落[0121]、
DE19904317A1、第3頁第6行目〜第12頁第19行目または
DE19914899A1、第3頁第15行目〜第8頁第32行目ならびに第8頁第32行目〜第17頁第6行目、
国際特許出願
WO97/14731A1、第10頁第30行目〜第36頁第5行目または
WO98/38230A1、第10頁第15行目〜第13頁第20行目または
米国特許
US5,466,745A1、第5欄第43行目〜第7欄第6行目から公知である。
【0036】
有利には油中水型分散液(I)はバインダー(A)を、たとえばドイツ国特許出願公開
DE4421823A1、第11頁第9行目〜17行目、
DE19855125A1、第12頁第23行目〜36行目、
DE19855167A1、第12頁、段落[0121]、
DE19904317A1、第12頁第12行目〜第19行目または
DE19914899A1、第16頁第66行目〜第17頁第6行目
に記載されているような量で含有する。
【0037】
油中水型分散液(I)の製造、貯蔵およびその後の加工の条件下でバインダー(A)と、または水と反応しない全ての有機溶剤が適切である。以下に記載する成分(II)のポリイソシアネートに関して有機溶剤は不活性であっても、反応性であってもよい。有機溶剤はさらに、化学線による硬化が関与する場合に反応性であってもよい。有機溶剤が反応性である場合、これは前記の反応性希釈剤である。適切な有機溶剤の例はドイツ国特許出願公開DE19914899A1、第17頁第23行目〜33行目から、第11頁第47行目〜第12頁第8行目との関連において、またはドイツ国特許出願公開DE19818735A1、第7欄、第1行目〜第25行目を参照するDE10129970A1、第11頁、段落[0102]から公知である。有利には有機溶剤は水で希釈可能である。
【0038】
さらに、油中水型分散液または成分(I)は通常および公知の添加剤、たとえば中和剤、前記のバインダー(A)とは異なる物理的に硬化可能なバインダー、顔料、分子分散性の可溶性着色剤、光安定剤、たとえばUV吸収剤および可逆的なラジカル捕捉剤(HALS)、酸化防止剤、湿潤剤、乳化剤、スリップ助剤、重合防止剤、熱による架橋のための触媒、熱に不安定なラジカル開始剤、光開始剤および補助開始剤、付着助剤、レベリング剤、塗膜形成助剤、レオロジー助剤またはレオロジー調節剤(増粘剤および構造粘性のサグ調節剤:SCA)、難燃剤、腐食防止剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤および/または艶消し剤を有効量で含有していてもよい。適切な添加剤の別の例は、ドイツ国特許出願公開
DE4421823A1、第11頁第18行目〜第30行目、および第11頁第35行目〜第12頁第3行目、
DE19914899A1、第17頁第35行目〜第43行目、第17頁第39行目〜第18頁第37行目および第19頁第10行目〜第66頁、
DE10129970A1、第11行目、段落[0106]〜第12頁、段落[0121]ならびに第12頁段落[0123]または
Johan Bielemanの教科書のLackadditive、Wiley−VCH、Weinheim、New York、1998年
に記載されている。
【0039】
水を含有していない液状の成分(II)は少なくとも1、特に1のポリイソシアネート(B)を含有している。ポリイソシアネート(B)は、化学線により活性化可能であり、従って化学線による硬化に関与することができる反応性の官能基を有していてもよい。このようなポリイソシアネート(B)を以下では「デュアル・キュア・ポリイソシアネート(B)」と呼ぶ。
【0040】
液状の成分(II)は無水である。つまり、該成分は水を含有しないか、または成分(II)を製造および/または取り扱う際に意図しないで持ち込まれた痕跡量の水を含有するのみである。
【0041】
成分(II)中で使用するために適切なポリイソシアネート(B)の例はドイツ国特許出願公開
DE4421823A1、第12頁第4行目〜第35行目または
DE19914899A1、第18行目第40行目〜第19頁第9行目および第19頁第67行目〜第20頁第12行目から公知である。
【0042】
成分(II)中で使用するために適切なデュアル・キュア・ポリイソシアネート(B)の例は、欧州特許出願公開EP0928800を参照するドイツ国特許出願公開DE10129970A1の第2頁、段落[0008]、ならびに第6頁、段落[0042]〜第11頁、段落[0099]から公知である。
【0043】
前記のポリイソシアネート(B)以外に、成分(II)は前記の有機溶剤、有利には不活性の、水で希釈可能な溶剤、遊離イソシアネート基を有していないその他の架橋剤、たとえばドイツ国特許出願公開DE19914899A1、第19頁第10行目〜第66行目に記載されている架橋剤、および/または前記の添加剤、有利にはイソシアネート反応性の官能基を有していない添加剤を含有していてよい。
【0044】
成分(III)は水、有利には脱イオン水である。水は効果的な量で前記の添加剤(ドイツ国特許出願公開DE4421823A1、第12頁第63行目〜第13頁第3行目を参照のこと)、特にレオロジー助剤またはレオロジー調節剤を含有していてもよい。
【0045】
成分(III)は、少なくとも1の前記のバインダー(A)を水中に分散および/または溶解して含有している水性の成分(III)であってもよい。有利にはこの水性成分(III)は少なくとも1の前記の添加剤(国際特許出願WO97/14731A1、第43頁第18行目〜第46頁第30行目も参照のこと)、特にレオロジー助剤またはレオロジー調節剤を含有する。
【0046】
有利には本発明による多成分系は本発明による方法1を用いて製造する。
【0047】
本発明によれば、この場合、少なくとも
(I′)少なくとも1の水溶性および/または水分散性の、オリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解および/または分散して含有しており、上記の意味で無水である少なくとも1の、特に1の成分、
(II)少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1、特に1の無水の液状成分、および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散および/または溶解して含有する少なくとも1、特に1の水性成分を含有する多成分系から出発する。
【0048】
有利には自体公知の多成分系、特に三成分系または四成分系、たとえば国際特許出願WO97/14731A1、ドイツ国特許出願DE4421823A1、DE19855125A1、DE19855167A1またはDE19904317A1または米国特許US5,466,754A1に詳細に記載されているものを使用する。
【0049】
本発明によれば前記の通り、少なくとも1、特に1の成分(III)の一部を、少なくとも1、特に1の成分(I′)と混合して、少なくとも1、特に1の油中水型分散液(I)が得られる。その際、成分(III)の量は、水中油型分散液への転相が生じ得ないように選択する。これは本発明による方法2の範囲でも実施することができる。
【0050】
方法論的に成分(I)〜(III)の製造、つまり本発明による多成分系の製造は特別なところはなく、前記の成分を通例かつ公知の混合法および装置、たとえば攪拌容器、攪拌ミル、押出機、混練機、ウルトラツラックス、インライン溶解機、スタチックミキサー、歯車式分散装置、放圧ノズルおよび/またはマイクロ液化装置を用いて、得られる成分(I)〜(III)が、化学線により活性化可能である成分を含有している場合には、場合により化学線の排除下に、混合および均一化することによって行う。
【0051】
本発明による多成分系は硬化可能な水中油型分散液を製造するために使用される。
【0052】
有利には硬化可能な水中油型分散液は固体含有率、つまり混合物から製造される被覆、接着層またはシーラントを構成する成分の含有率が、そのつど硬化可能な水中油型分散液に対して10〜90質量%、有利には20〜80質量%、および特に30〜70質量%を有する。
【0053】
有利には硬化可能な水中油型分散液は、その中に含有されている水およびその中に含有されている有機溶剤の全量に対して、50質量%より多く、有利には少なくとも55質量%および特に少なくとも60質量%の水を含有しており、従って溶解特性は実質的に水により特徴付けられる。
【0054】
硬化可能な水中油型分散液は熱硬化性である。これは、該分散液を室温で、または高めた温度で硬化させることができることを意味している。その際、通例かつ公知の装置、たとえば換気炉、熱風送風装置または放射放熱器、特にNIR線もしくはIR線またはマイクロ波放射装置を使用することができる。
【0055】
硬化可能な水中油型分散液は、専門業界でデュアル・キュアと呼ばれるように、熱および化学線により硬化可能であってもよい。化学線とは、電磁線、例えば近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線又はガンマ線、特にUV線、および粒子線、例えば電子線、ベータ線、中性子線、陽子線またはアルファ線、特に電子線であると解釈される。硬化のために通例かつ公知の装置、たとえばUVランプまたは電子線源を使用することができる(ドイツ国特許出願公開DE10129970A1、第13頁、段落[0132]も参照のこと)。
【0056】
硬化可能な水中油型分散液の製造は、本発明による多成分系の少なくとも成分(I)〜(III)を、
(1)少なくとも成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と混合して、少なくとも1の油中水型分散液(I)が得られ、
(2)該油中水型分散液(I)を少なくとも1の成分(II)と混合し、かつ
(3)得られる混合物(I/II)を水または少なくとも1の成分(III)と混合し、少なくとも1の硬化可能な水中油型分散液が得られる
本発明による方法2の範囲で行う。
【0057】
有利にはこの場合、イソシアネート基対イソシアネート反応性の基の当量比が2:1〜1:2、有利には1.5:1〜1:1.5および特に1.2:1〜1:1.2であるように、成分(I)および(II)の量を選択する。
【0058】
有利には本発明による方法2の範囲で、得られる混合物(I/II)を迅速にその後の加工に供する。
【0059】
混合のために、前記の混合装置を使用することができる。しかし本発明による多成分系、本発明による方法1および本発明による方法2の特別な利点は、混合を手作業でも行うことができ、その際、このことによって硬化性の油中水型分散液の適用技術的な特性面に否定的な影響を与えないことである。
【0060】
総じて本発明による多成分系、本発明による方法1および本発明による方法2により、特殊な問題、たとえば塗装された支持体、たとえば自動車の車両における小さい損傷の補修用塗装、小さい支持体の接着または少量のシーラントを製造するという問題を解決するために、硬化性の水中油型分散液を少量で適切に製造することが可能である。
【0061】
本発明による方法で製造した硬化性の水中油型分散液は数時間のポットライフまたは可使時間を有する。このことによりユーザにとって作業計画が著しく容易なものになる。
【0062】
従って該分散液は極めて広い範囲で使用することができる。特に該分散液は、優れた適用技術的な特性を有する被覆、接着層、シーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料として適切である。
【0063】
特に被覆材料は単層および多層のクリアコーティング、ならびに単層および多層の着色および/または効果を付与する、導電性の、磁気遮閉性の、および/または蛍光被覆を、特に着色されたベースコート、特に水性ベースコートを支持体の表面に施与し、その後、得られるベースコート層を硬化させずに乾燥させ、かつクリアコート層で被覆するウェット・オン・ウェット法により製造するために好適である。引き続き両方の層を一緒に硬化させる。
【0064】
本発明による方法を用いて製造される水性の硬化性混合物、特に被覆材料、接着剤および封止材料の適用は、方法論的に特別なところはなく、たとえば噴霧塗布、ナイフ塗布、刷毛塗り、流し塗り、浸漬塗布、散布またはローラー塗布のような、全ての通例の適用方法により行うことができる。場合により水性の硬化性混合物、特に被覆材料、接着剤および封止材料の早すぎる架橋を回避するために、化学線の排除下で作業することが推奨される。
【0065】
従って被覆材料、接着剤および封止材料は、任意の種類の支持体、特に電動の、および/または筋力により運転される移動手段を含む移動手段、たとえば乗用車、輸送用車両、バス、自転車、鉄道車両、船舶および航空機の車体およびこれらの部材、建築物およびこれらの部材、ドア、窓、家具、工業用の小部品、機械的、光学的および電子的な部材、コイル、コンテナ、包装材料、ガラス中空品および日用品の被覆、接着および封止のために使用することができる。
【0066】
実施例
製造例1
水溶性または水分散性のメタクリレートコポリマー(A)の有機溶液の製造
攪拌機、還流冷却器および3つの供給容器を備えた特殊鋼反応器中に、エチルエトキシプロピオネート402.7質量部を装入し、かつ130℃に加熱した。引き続きこの温度で装入物に撹拌下に2.5時間にわたり、第一の供給容器から、スチレン50質量部、メチルメタクリレート20.5質量部、ラウリルメタクリレート26.6質量部、ヒドロキシエチルアクリレート56.9質量部、t−ブチルアクリレート41.4質量部およびブチルメタクリレート46.1質量部からなるモノマー混合物を計量供給した。同時に2.5時間にわたって、第二の供給容器から、エチルエトキシプロピオネート34.6質量部およびt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート21.2質量部からなる開始剤溶液を均一に計量供給した。得られる反応混合物を130℃で1時間攪拌した。
【0067】
引き続き第三の供給容器からこの温度で装入物に撹拌下に1.5時間にわたってスチレン30質量部、メチルメタクリレート12.3質量部、ラウリルメタクリレート16質量部、ヒドロキシエチルアクリレート72.3質量部、ブチルメタクリレート27.6質量部、t−ブチルアクリレート24.9質量部およびアクリル酸18.3質量部からなるモノマー混合物を均一に計量供給した。同時に第二の供給容器から2時間にわたって、、エチルエトキシプロピオネート25.7質量部およびt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート15.7質量部からなる開始剤溶液の均一な計量供給を開始した。
【0068】
得られる反応混合物を130℃で2時間攪拌した。引き続き100℃で80質量%の固体含有率が達成されるまで、真空下でエチルエトキシプロピオネートを留去した。60℃でブチルグリコール40.2質量部を添加した後で、エチルエトキシプロピオネートを用いて75質量%の固体含有率を調整した。メタクリレートコポリマー(A)は、30mgKOH/g固体樹脂の酸価および3.5dPasの粘度(23℃でエチルエトキシプロピオネート中55%)を有していた。
【0069】
メタクリレートコポリマー(A)を成分(I)の製造のために使用した。
【0070】
製造例2
水溶性もしくは水分散性のポリウレタン(A)の水性分散液の製造
重縮合反応のために適切な特殊鋼反応器中に、ヒドロキシピバル酸ネオペンチルグリコールエステル297.2質量部、無水フタル酸32.8質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−1,3 5.7質量部、ネオペンチルグリコール133.5質量部およびイソフタル酸346.5質量部ならびに共留剤11.2質量部を秤量した。引き続き反応混合物を撹拌下に加熱し、その際、3.5mgKOH/gの酸価が達成されるまで、縮合水を連続的に除去した。得られるポリエステルを60℃に冷却し、かつメチルエチルケトンで80質量%の固体含有率に調整した。ポリエステルの粘度は3.5dPasであった(23℃でエチルエトキシプロピオネート中60%)。
【0071】
ポリウレタン合成のために適切な特殊鋼反応器中に、ポリエステル264.7質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール−1,3 2.3質量部、ジメチロールプロピオン酸24.4質量部およびm−テトラメチルキシリリデンジイソシアネート(TMXDI)112.4質量部を装入し、かつ82℃で一定のイソシアネート含有率になるまで反応させた。引き続きトリメチロールプロパン36.2質量部を添加し、その後、反応混合物を反応が終了するまでさらに加熱した。メチルエチルケトン44.5質量部を添加した後に、反応混合物をジメチルエタノールアミン13質量部で中和し、かつ60℃の温かい脱イオン水480質量部中に分散させた。引き続きメチルエチルケトンを真空下で留去した。ポリウレタン分散液(A)を脱イオン水で固体含有率40質量%に調整した。該分散液は30mgKOH/g固体樹脂および7.2のpH値を有していた。
【0072】
ポリウレタン(A)の水性分散液を成分(III)の製造のために使用した。
【0073】
製造例3
水溶性または水分散性のメタクリレートコポリマー(A)の分散液の製造
攪拌機、還流冷却器および3つの供給容器を備えた特殊鋼反応器中に、メチルイソブチルケトン94質量部を装入し、かつ110℃に加熱した。引き続きこの温度で該装入物に第一の供給容器から3時間にわたりスチレン32.9質量部、メチルメタクリレート38.3質量部、ラウリルメタクリレート22質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート49.5質量部およびブチルメタクリレート43.9質量部からなるモノマー混合物を均一に計量供給した。同時に第二の供給容器から3時間にわたって、メチルイソブチルケトン25.8質量部およびt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート11.3質量部からなる開始剤溶液の均一な計量供給を開始した。得られる反応混合物を110℃で1時間攪拌した。
【0074】
引き続きこの温度で該装入物に第三の供給容器から1.5時間にわたりスチレン14.1質量部、メチルメタクリレート16.4質量部、ラウリルメタクリレート9.4質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート52.4質量部、ブチルメタクリレート18.8質量部およびアクリル酸15.9質量部からなるモノマー混合物を計量供給した。同時に第二の供給部から2時間にわたって、メチルイソブチルケトン16.6質量部およびt−ブチルペルオキシエチルヘキサノエート7.5質量部からなる開始剤溶液の均一な計量供給を開始した。得られる反応混合物を2時間にわたり110℃に維持し、かつ引き続きジメチルエタノールアミン17.5質量部を添加した。
【0075】
引き続き反応混合物を80℃で脱イオン水149.5質量部中に分散させた。得られる分散液を1時間にわたり80℃に維持した。脱イオン水330質量部を添加し、かつメチルイソブチルケトンを真空下で留去した。
【0076】
得られるメタクリレートコポリマー(A)の分散液を脱イオン水で固体含有率40質量%に調整した。該分散液は7.5のpH値および40mgKOH/g固体樹脂の酸価を有していた。
【0077】
メタクリレートコポリマー(A)の分散液を成分(III)の製造のために使用した。
【0078】
製造例4
低分子量の疎水性ポリエステルの製造
特殊鋼反応器中にヘキサヒドロフタル酸無水物308質量部およびトリメチロールプロパン134質量部を秤量し、かつ150℃に加熱した。引き続き該装入物に1時間にわたりCardura(R)E10(バーサチック酸(R)−グリシジルエステル)457質量部を計量供給した。反応混合物を<3mgKOH/gの酸価が達成されるまで150℃に維持し、かつ引き続き120℃でブチルグリコールアセテートで固体含有率が80質量%になるまで溶解した。該溶液の粘度は28dPas(23℃)であった。
【0079】
低分子量の疎水性ポリエステルを成分(I)の製造のために使用した。
【0080】
製造例5
成分(II)の製造
成分(II)をヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(Bayer AG社のDesmodur(R)XP2410)70質量部およびブチルグリコールアセテート30質量部とを混合し、かつ得られた混合物を攪拌容器中で均質化することにより製造した。
【0081】
製造例6
成分(III)の製造
成分(III)を以下に記載する成分を記載の順序で混合し、かつ得られる混合物を攪拌機を備えた混合機中で均質化することにより製造した:
脱イオン水33.9質量部、
市販のレオロジー助剤(Dapral(R)T210)0.4質量部、
製造例3に記載の水溶性もしくは水分散性のメタクリレートコポリマー(A)の分散液20質量部、
製造例2に記載の水溶性もしくは水分散性のポリウレタン(A)の分散液3.44質量部、
ジメチルエタノールアミン0.2質量部および
ブチルグリコール1.5質量部。
【0082】
例1
多成分系を使用する硬化性水中油型分散液(クリアコート)の製造
まず油中水型分散液または成分(I)を以下の記載する成分を記載の順序で混合し、かつ得られる混合物を攪拌機を備えた攪拌容器中で均質化することにより製造した:
製造例1に記載の水溶性もしくは水分散性のメタクリレートコポリマー(A)の有機溶液52質量部、
製造例4に記載の低分子量の疎水性ポリエステル17.5質量部、
ブチルグリコールアセテート8.3質量部、
ブチルグリコール2質量部、
市販の湿潤剤(Deuterol (R) 201E)6質量部、
ポリエーテル変性されたジメチルシロキサンコポリマーをベースとする市販のレベリング剤(Byk Chemie社のByk (R) 331)1質量部、
立体障害アミン(HALS)をベースとする市販の光安定剤(Ciba Specialty Chemicals社のTinuvin (R) 292)0.7質量部、
市販のUV吸収剤(Ciba Specialty Chemicals社のTinuvin (R) 1130)0.7質量部、
ジメチルエタノールアミン1.8質量部および
脱イオン水10質量部。
【0083】
油中水型分散液(I)は輸送可能であり、かつ貯蔵安定性であった。
【0084】
油中水型分散液(I/II)を製造するために、成分(II)25質量部を油中水型分散液(I)25質量部に添加した。混合は手作業により行った。
【0085】
水中油型分散液もしくはクリアコートを製造するために、油中水型分散液(III)を成分(III)50質量部と手作業により混合した。クリアコートは25質量部の脱イオン水を用いて手作業で噴霧粘度に調整した。該クリアコートは数時間の可使時間を有しており、かつ問題なく適用可能であった。
【0086】
例2
多成分系を使用する硬化性水中油型分散液(クリアコート)の製造
まず油中水型分散液(I)を以下に記載する成分を記載の順序で混合し、かつ得られる混合物を攪拌機を備えた攪拌容器中で均質化することにより製造した:
製造例1に記載の水溶性もしくは水分散性のメタクリレートコポリマー(A)の有機溶液48質量部、
製造例4に記載の低分子量の疎水性ポリエステル17.5質量部、
ブチルグリコールアセテート8.3質量部、
ブチルグリコール2質量部、市販の湿潤剤(Deuterol (R) 201 E)6質量部、
ポリエーテル変性されたジメチルシロキサンコポリマーをベースとする市販のレベリング剤(Byk Chemie社のByk (R) 331)1質量部、
立体障害アミン(HALS)をベースとする市販の光安定剤(Ciba Specialty Chemicals社のTinuvin (R) 292)0.7質量部、
市販のUV吸収剤(Ciba Specialty Chemicals社のTinuvin (R) 1130)0.7質量部、
ジメチルエタノールアミン1.8質量部および
製造例6に記載の成分(III)14質量部。
【0087】
油中水型分散液(I)は輸送可能であり、かつ貯蔵安定性であった。
【0088】
混合物もしくは油中水型分散液(I/II)を製造するために、成分(II)25質量部を油中水型分散液(I)25質量部に添加した。混合は手作業により行った。
【0089】
水中油型分散液もしくはクリアコートを製造するために、油中水型分散液(I/II)を成分(III)50質量部と手作業により混合した。クリアコートは25質量部の脱イオン水を用いて手作業で噴霧粘度に調整した。該クリアコートは数時間の可使時間を有しており、かつ問題なく適用可能であった。
【0090】
例3および例4
多層コーティングの製造
例3の多層コーティングを製造するために例1のクリアコートを使用した。例4の多層コーティングを製造するために例2のクリアコートを使用した。
【0091】
市販のリン酸塩処理された鋼板を電着塗装およびサーフェイサー塗装により被覆し、通例かつ公知の、欧州特許出願EP0279813A1に記載の黒色の水性ベースコートにより被覆した。得られる水性ベースコート層を室温で5分間フラッシュオフし、かつ60℃で10分間乾燥させた。乾燥した水性ベースコート層を2つの噴霧工程で3〜4分間、中間的にフラッシュオフし、クリアコートで被覆した。得られるクリアコート層を室温で10分間フラッシュオフし、かつ換気炉中60℃で45分間乾燥させた。得られる多層コーティングは12〜15μmの乾燥膜厚のベースコーティングおよび50μmの乾燥膜厚のクリアコーティングを有していた。
【0092】
クリアコーティングは透明であり、かつ濁りおよびピンホールやクレーターのような表面欠陥を有していなかった。該コーティングは極めて良好な濡れおよび極めて良好なレベリングを有していた。視覚による全体の印象(目視による)は優れていた。DIN67530による光沢(20゜)および曇りは87および11.4単位(例3)もしくは88および10.9単位(例4)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の成分を含有するか、または該成分からなる多成分系:
(I)少なくとも1の油中水型分散液、これは水および少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2つのイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解して、および/または分散して含有する;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の液状の成分;および
(III)水、または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する、少なくとも1の水性成分。
【請求項2】
油中水型分散液(I)が<40質量%の含水率を有することを特徴とする、請求項1記載の多成分系。
【請求項3】
少なくとも
(I′)少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解および/または分散して含有している少なくとも1の水を含有しない液状の成分、
(II)少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の水を含有しない液状の成分、および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散および/または溶解して含有している少なくとも1の水性成分
を含有する多成分系から請求項1または2記載の多成分系を製造する方法において、少なくとも1の成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と混合して少なくとも1の油中水型分散液(I)が得られることを特徴とする、請求項1または2記載の多成分系を製造する方法。
【請求項4】
少なくとも1の成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と手作業により混合することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも次の成分を含有するか、または次の成分からなる多成分系:
(I′)水を含有せず、少なくとも1の水溶性および/または水分散性のオリゴマーおよび/またはポリマーの、少なくとも2のイソシアネート反応性の官能基を有するバインダー(A)を少なくとも1の有機溶剤中に溶解するか、かつ/または分散して含有する少なくとも1の液状成分;
(II)水を含有せず、少なくとも1のポリイソシアネート(B)を含有するか、またはポリイソシアネート(B)からなる少なくとも1の液状成分;および
(III)水または少なくとも1のバインダー(A)を水中に分散して、および/または溶解して含有する少なくとも1の水性成分、
を使用する、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造する方法であって、少なくとも1の成分(I′)、少なくとも1の成分(II)および少なくとも1の成分(III)を相互に混合する方法において、
(1)少なくとも1の成分(III)の一部を少なくとも1の成分(I′)と混合して少なくとも1の油中水型分散液(I)が得られ、
(2)該油中水型分散液(I)を少なくとも1の成分(II)と混合し、かつ
(3)得られる混合物(I/II)を水または少なくとも1の成分(III)と混合して少なくとも1の水中油型分散液が得られることを特徴とする、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造する方法。
【請求項6】
油中水型分散液(I)が<40質量%の含水率を有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
混合物(I/II)が油中水型分散液であることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
工程(2)を手作業により実施することを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(3)を手作業により実施することを特徴とする、請求項5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
被覆、接着層およびシーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料としての請求項5から9までのいずれか1項記載の方法により製造される、熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液の使用。
【請求項11】
熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液を製造するための請求項1または2記載の多成分系および請求項3または4記載の方法により製造される多成分系の使用。
【請求項12】
被覆、接着層およびシーラントを製造するための被覆材料、接着剤および封止材料としての熱により、または熱および化学線により硬化可能な水中油型分散液の請求項11記載の使用。
【請求項13】
被覆材料がクリアコーティングの製造に使用されるクリアコートである、請求項10から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
被覆材料、接着剤および封止材料を、電動の、および/または筋力により運転される移動手段を含む移動手段、たとえば乗用車、輸送用車両、バス、自転車、鉄道車両、船舶および航空機の車体およびこれらの部材、建築物およびこれらの部材、ドア、窓、家具、工業用の小部品、機械的、光学的および電子的な部材、コイル、コンテナ、包装材料、ガラス中空品および日用品の被覆、接着および封止のために使用する、請求項10から13までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2007−524748(P2007−524748A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500203(P2007−500203)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050385
【国際公開番号】WO2005/082965
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】