説明

多数個取り配線基板および配線基板

【課題】母基板を各配線基板領域のバリを低減して分割できる多数個取り配線基板およびバリ等が抑制された配線基板を提供する。
【解決手段】多数個取り配線基板10によれば、四角形状の複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された平板状の下部母基板と、下部母基板の上面に積層された、配線基板領域2において搭載部の周辺に壁部5を形成するための上部母基板とからなる母基板1の、配線基板領域2の1つの辺側で、隣り合った配線基板領域2との間にダミー領域4が配置され、配線基板領域2の1つの辺で、上部母基板が非形成とされ、下部母基板の上面が配線基板領域2からダミー領域4まで露出し、母基板1の上面の配線基板領域2の境界に分割溝が形成されている。壁部5となる上部母基板を非形成とした部分で分割溝を十分な深さにして、バリやクラックを抑制し、配線基板への分割が容易な多数個取り配線基板10できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や撮像素子等の電子部品を搭載するための搭載部を有し、搭載部の周辺に平面視でコの字状に壁部が形成された配線基板と、この配線基板が縦横の並びに配列された多数個取り配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や撮像素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板は、酸化アルミニウム質焼結体やガラスセラミック焼結体等のセラミック焼結体からなり、上面に電子部品を搭載するための搭載部を有する四角平板状の基板部と、セラミック焼結体からなり、搭載部を取り囲むように基板部の上面に積層された枠状の壁部とを備えている。
【0003】
このような配線基板は、一般に、1枚の広面積の母基板から複数個の配線基板を同時集約的に得るようにした、いわゆる多数個取り配線基板の形態で製作されている。多数個取り配線基板は、上記のような配線基板となる配線基板領域が母基板に縦横の並びに配列されてなり、隣り合う配線基板領域の基板部同士および壁部同士は互いにつながっている。
【0004】
上記従来の配線基板および多数個取り配線基板では、搭載部と壁部とにより電子部品を気密封止するための凹部(いわゆるキャビティ)が形成され、例えば蓋体を壁部の上面に接合して凹部を塞ぐことで、搭載部に搭載された電子部品が気密封止される。
【0005】
なお、多数個取り配線基板においては、配線基板領域の境界に沿って分割溝が形成されており、この分割溝を挟んで母基板に曲げ応力を加えて母基板を破断させることによって、個片の配線基板への分割が行なわれる。分割溝は、未焼成の母基板の上面に、隣り合う配線基板領域の壁部同士の境界にカッター刃等を用いて所定の深さで切り込みを入れることによって形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−283645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、搭載部を外部に開放させるように、基板部上に積層された壁部を部分的に非形成として、搭載部が開放された配線基板が用いられるようになってきている。このような配線基板を、例えば特許文献1の図7に示すように多数個取り配線基板の形態で作製する。このように多数個取り配線基板から配線基板を作製するときには、搭載部が外部に開放した辺に沿ってカッター刃を用いて分割溝を形成しようとすると、壁部にカッター刃が深く入って壁部が変形してしまうので、搭載部が外部に開放した辺に沿ってカッター刃を十分な深さまで入れることが難しい。そのため、壁部が非形成とされた部分で分割溝が十分な深さで形成されず、分割するときに配線基板領域にバリやクラック等が発生しやすかった。また、壁部の端部分に機械的な破壊が生じたり、この端部分が個片の配線基板の搬送や電子部品の搭載等の取り扱い時の妨げになったりする可能性もある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、配線基板領域の1つの辺において搭載部を外部に開放させるように壁部に非形成の部分を設けた多数個取り配線基板であって、バリやクラック等を発生させることなく個片の配線基板に分割することが容易な多数個取り配線基板、およびこの多数個取り配線基板が個片に分
割されてなる、バリやクラック等が抑制された配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の多数個取り配線基板は、セラミック焼結体からなり、上面の中央部に電子部品の搭載部を有する四角形状の複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された平板状の下部母基板と、セラミック焼結体からなり、前記下部母基板の上面に積層された、それぞれの前記配線基板領域において前記搭載部の周辺に壁部を形成するための上部母基板とからなる母基板で構成された多数個取り配線基板であって、前記配線基板領域の1つの辺側で、隣り合って配列された前記配線基板領域との間にダミー領域が配置されており、前記配線基板領域の前記1つの辺において、前記上部母基板が非形成とされて、前記下部母基板の上面が前記配線基板領域から前記ダミー領域まで露出しており、前記母基板の上面の前記配線基板領域の境界に沿って分割溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の配線基板は、セラミック焼結体からなり、上面の中央部に電子部品の搭載部を有する四角平板状の下部基板と、セラミック焼結体からなり、前記下部基板の上面に積層された、該下部基板の3つの辺において前記搭載部の周辺に壁部を形成する平面視でコの字状の上部基板とを備え、前記壁部が形成されていない他の1つの辺において前記下部基板が前記上部基板の両端を結ぶ線よりも外側に張り出した部分を有し、前記張り出した部分の上面に外部端子が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の多数個取り配線基板によれば、四角形状の複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された平板状の下部母基板と、下部母基板の上面に積層された、それぞれの配線基板領域において搭載部の周辺に壁部を形成するための上部母基板とからなる母基板の、配線基板領域の1つの辺側で、隣り合って配列された配線基板領域との間にダミー領域が配置されており、配線基板領域の1つの辺において、上部母基板が非形成とされて、下部母基板の上面が配線基板領域からダミー領域まで露出しており、母基板の上面の配線基板領域の境界に沿って分割溝が形成されていることから、壁部となる上部母基板を非形成とした部分においても分割溝を十分な深さで形成することができ、バリやクラック等を発生させることなく個片の配線基板に分割することが容易な多数個取り配線基板とすることができる。
【0012】
本発明の配線基板によれば、上部基板が非形成とされて、配線基板の張り出した部分の上面と外部回路基板とを接合して電気的に接続するので、配線基板に素子を実装して外部回路基板に接合した電子部品モジュールを低背化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の一例を示す上面図である。
【図2】図1に示す多数個取り配線基板のA部を拡大して示す斜視図である。
【図3】本発明の多数個取り配線基板の実施の形態の他の例を示す上面図である。
【図4】(a)および(b)はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す上面図および斜視図である。
【図5】(a)および(b)はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す上面図および斜視図である。
【図6】(a)および(b)はそれぞれ本発明の配線基板の実施の形態の他の例を示す上面図および斜視図である。
【図7】(a)は図5に示す配線基板に電子部品を実装した撮像モジュールの実施の形態の一例を示す断面図であり、(b)は配線基板に電子部品を実装した撮像モジュールの実施の形態の他の例である。
【図8】(a)は図4に示す配線基板に電子部品を実装した他の例を示す上面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多数個取り配線基板および配線基板について、添付の図面を参照しつつ説明する。図1〜図8において、1は母基板、1aは上部母基板、1bは下部母基板、2は配線基板領域、3は搭載部、3bは下面の搭載部、4はダミー領域、4bは第2のダミー領域、5は壁部、6aは上部母基板1aの分割溝、6bは下部母基板1bの分割溝、7は配線導体、8は外部端子、9は貫通孔、10は多数個取り配線基板、11は絶縁基板、11aは上部基板、11bは下部基板、12は撮像素子、12aは受光部、13は透明板材、14はレンズ、15はレンズ固定部材、16は外部回路基板、17はアンダーフィル材、18aはチューナーIC、18bはOFDMチップである。なお、図2には、個々の配線導体7、外部端子8、貫通孔9は図示していない。
【0015】
本発明の多数個取り配線基板10は、搭載部3を有する複数の配線基板領域2が縦横の並びに配列された下部母基板1bに上部母基板1aが積層されて母基板1が構成され、母基板1に、配線基板領域2の境界に沿って分割溝6a,6bが形成されて構成されている。
【0016】
このような母基板1は、セラミック焼結体からなり、配線基板領域2が四角形状に形成されている。また、上部母基板1aは搭載部3の周辺に壁部5を形成するための枠状に形成されている。さらに、縦および横の少なくとも一方の並びに隣り合って配列された配線基板領域2の間にダミー領域4が配置されている。
【0017】
つまり上部母基板1aは、1つの配線基板領域2に対してはコの字状であり、搭載部3の周囲を取り囲む枠状ではないが、配線基板領域2と配線基板領域2の一つの辺側のダミー領域4とをまとめて枠状に取り囲んでおり、全体として枠状になっている。
【0018】
なお、配線基板領域2の1つの辺において、上部母基板1aが非形成とされた部分は、図1〜図3に示す例のように、配線基板領域2の一つの辺および、この一つの辺側のダミー領域4の一部である。すなわち、配線基板領域2から、上部母基板1aが非形成とされた辺の方向に、ダミー領域4の途中まで、上部母基板1aが非形成とされている。例えば、図1および図3に示す例においては、配線基板領域2から、配線基板領域2の横方向の一方側に隣接するダミー領域4の横方向の途中まで、上部母基板1aが非形成とされている。
【0019】
上記のように枠状の上部母基板1aが、配線基板領域2の1つの辺において非形成とされて、この1つの辺で下部母基板1bの上面が配線基板領域2からダミー領域4まで露出して複数の配線基板領域2が配列されている。すなわち、従来技術の多数個取り配線基板に比べて、壁部5の端部分が、配線基板領域2の境界から離れるように切り欠かれた形状になっており、壁部5が形成されていない部分が配線基板領域2の境界に沿って、ダミー領域4まで達するように続いている。
【0020】
母基板1は、ガラスセラミック焼結体,酸化アルミニウム質焼結体,窒化アルミニウム質焼結体,炭化珪素質焼結体,窒化珪素質焼結体,ムライト質焼結体等のセラミック焼結体により形成されている。なお、この実施の形態の例において、多数個取り配線基板10の母基板1の外周には、配列された複数の配線基板領域2を取り囲むように第2のダミー領域4bが設けられている。
【0021】
母基板1は、例えば下部母基板1bと上部母基板1aとが一体焼成されて作製されている。すなわち、ホウケイ酸系ガラス,酸化ケイ素および酸化アルミニウム等の原料粉末に適当な有機溶剤およびバインダを添加してシート状に成形して複数のセラミックグリーン
シートを作製し、この一部のものについて打ち抜き加工を施して枠状に成形した後、打ち抜き加工を施していない平板状のセラミックグリーンシートの上に枠状のセラミックグリーンシートを積層し、この積層体を一体焼成すれば、ホウケイ酸ガラス−酸化アルミニウム系のガラスセラミック焼結体からなる母基板1を作製できる。この場合、平板状のセラミックグリーンシートが下部母基板1bになり、枠状のセラミックグリーンシートが上部母基板1aになる。
【0022】
下部母基板1bに配列された複数の配線基板領域2は、中央部等に電子部品の搭載部3を有しており、それぞれが個片の配線基板の下部基板11bとなる領域である。この下部母基板1bの上に枠状の上部母基板1aが積層されて母基板1が形成されている。上部母基板1aは、搭載部3の周辺に壁部5を形成するためのものであり、個片の配線基板の上部基板11aとなるものである。壁部5は、搭載部3に搭載される電子部品を保護するためのものである。
【0023】
この上部母基板1aが非形成とされた部分では、配線基板領域2からダミー領域4まで露出している部分の下部母基板1bの上面の配線基板領域2の境界に分割溝6bが形成されている。また、上部母基板1aが形成されている部分では、配線基板領域2の境界に沿って、上部母基板1aの上面に分割溝6aが形成されている。これらの分割溝6a,6bは、母基板1となるセラミックグリーンシートの積層体に、下部母基板1bとなるセラミックグリーンシートの露出させた上面、および上部母基板1aとなるセラミックグリーンシートの上面に、配線基板領域2の境界に沿ってカッター刃等で切り込みを入れることによって形成されている。
【0024】
分割溝6a,6bは、母基板1をこの分割溝6a,6bに沿って破断させ、個片の配線基板に分割するためのものである。上記したように、分割溝6a,6bには、上部母基板1aの上面に形成されている分割溝6aと、下部母基板1bの上面に形成されている分割溝6bとがある。これらの分割溝6a,6bは、配線基板領域2の同じ一続きの境界上にあるもの同士は、平面視で一直線上に続いていることが好ましい。
【0025】
分割溝6a,6bの深さは、下部母基板1bや上部母基板1aの材料や厚み、配線基板領域2の大きさ等の割れやすさに影響を与える条件に応じて適宜設定すればよい。例えば、配線基板領域2が、1辺の長さが約2.5〜10mm程度のときに、母基板1を構成する上
部母基板1aおよび下部母基板1bがいずれもホウケイ酸系ガラスと酸化アルミニウム質焼結体とを主成分とするガラスセラミック焼結体からなり、母基板1の厚みが約0.3〜1.5mm程度の場合であれば、上部母基板1aの分割溝6aの深さを約0.25〜0.3mm程度と
し、下部母基板1bの分割溝6bの深さを約0.1〜0.2mm程度とすればよい。
【0026】
また、母基板1の下面、つまり下部母基板1bの下面にも、配線基板領域2の境界に沿って下面側分割溝(図示せず)を形成するようにしてもよい。この下面側分割溝は、分割溝6a,6bと平面視で重なる位置に形成されることになるが、上部母基板1aの分割溝6aと平面視で重なる位置に形成されたものの深さを、下部母基板1bと平面視で重なる位置に形成されたものの深さよりも深くしておいてもよい。このように下面側分割溝の深さを設定しておけば、上部母基板1aの上面に分割溝6aが形成されている部位における母基板1の機械的な強度を低くして、母基板1の分割をより容易にできる。
【0027】
上記であることから、下部母基板1bの上面が配線基板領域2からダミー領域4まで露出しているため、この露出した下部母基板1bの上面に分割溝6bを、十分な深さに形成できる。したがって、バリやクラック等を発生させることなく配線基板に分割できる。
【0028】
図1および図3に示す例では、壁部5の端部分が配線基板領域2とダミー領域4との境
界から離れるように切り欠かれた形状になっており、壁部5が形成されていない部分が配線基板領域2からダミー領域4まで達するように続いているため、ダミー領域4と配線基板領域2との境界に沿って分割する際に壁部5の端部が破損することを低減することもできる。
【0029】
図1に示す例では、配線基板領域2の1つの辺側で、隣り合って配列された配線基板領域2との間にダミー領域4が配置され、1つの辺と隣接する2つの辺側で隣り合って配列された配線基板領域2同士は隣接しており、配線基板領域2の1つの辺において、上部母基板1aが非形成とされて、下部母基板1bの上面が配線基板領域2からダミー領域4まで露出しており、母基板1の上面の配線基板領域2の境界に沿って分割溝が形成されている。すなわち、図1に示す例では、上部母基板1aが非形成とされた部分は、上記1つの辺側(横方向の1つの辺側)で縦方向につながっている。このような構成とすると、複数の配線基板領域2の、上部母基板1aが非形成とされた部分が縦または横のいずれか一方の方向(図1に示す例では縦方向)に繋がっており、面一な部分に分割溝を形成するので、下部母基板1bの分割溝6bを正確に形成するのに有効である。
【0030】
図3に示す例では、それぞれの配線基板領域2の周囲を取り囲むようにダミー領域4および上部母基板1aが配置されており、上部母基板1aが非形成とされた1つの辺同士の間(縦方向の非形成とされた部分同士の間)には上部母基板1aが配置されている。このような構成とすると、多数個取り配線基板10の強度を高くできるので、搬送時に分割されてしまうことを抑制するのに有効である。多数個取り配線基板10が薄いときには特に有効である。
【0031】
また、母基板1の外周に第2のダミー領域4bを設けておけば、最外周の配線基板領域2の並びにおいて上部母基板1aの一部を非形成とすることが容易である。例えば、図1に示す例のように、上部母基板1aに縦方向につながった非形成の部分を設けても、第2のダミー領域4bによって、上部母基板1aが外周でつながっているので、上部母基板1aとなるセラミックグリーンシートを作製する際に、上部母基板1aとなるセラミックグリーンシートに搭載部となる部分および非形成部となる部分に貫通孔を形成すればよい。また、図3に示す例においては、上部母基板1aの非形成の部分を小さくしているので、上部母基板1aとなるセラミックグリーンシートに形成する貫通孔も小さくでき、セラミックグリーンシートの取り扱いや搬送が容易になり、セラミックグリーンシートの変形も抑えることができる。
【0032】
上部母基板1aを非形成とする部分の幅は、壁部5の幅と同じ程度である。例えば、配線基板領域2が、平面視で1辺の長さが約3〜10mm程度の四角形状であり、搭載部3の面積を約4〜80mm程度確保する場合であれば、壁部5の幅は約0.25〜0.5mm程度に
設定されるので、配線基板領域2の1つの辺において上部母基板1aを、上記の壁部5の幅と同じ程度の幅で非形成とすればよい。
【0033】
また、上部母基板1aを非形成として配線基板領域2からダミー領域4まで下部母基板1bの上面を露出させているので、下部母基板1bの上面、つまり電子部品が搭載される搭載部3の面積を十分に広く確保することも容易である。
【0034】
なお、上記したような多数個取り配線基板10は、個片に分割したときに上部母基板1aの端部分が細く外側に突出するようなこともないため、個片の配線基板の取り扱い時の妨げになったりすることがない。
【0035】
この実施の形態の例において、配線導体7は、各配線基板領域2の下部母基板1bにおいて、搭載部3から、上部母基板1aが非形成とされた辺側の上面または下部母基板1b
の下面にかけて形成され、外部端子8に電気的に接続されている。
【0036】
また、配線基板においては、配線導体7は、搭載部3から下部基板11bの壁部5が非形成とされた辺側の上面または、下部基板11bの下面にかけて形成され、外部端子8に電気的に接続されている。配線導体7および外部端子8は、搭載部3に搭載される電子部品を外部電気回路に電気的に接続するための導電路となる。
【0037】
配線導体7および外部端子8は、例えば銅や銀,パラジウム,金,白金,タングステン,モリブデン,マンガン等の金属材料からなる。配線導体7および外部端子8は、例えば銅からなる場合であれば、銅の粉末に有機溶剤およびバインダを添加して作製した金属ペースト(図示せず)を母基板1となるセラミックグリーンシートに所定パターンに塗布しておき、同時焼成することによって形成できる。
【0038】
なお、配線導体7および外部端子8の露出する表面には、ニッケル,金等の耐蝕性に優れる金属めっきが電解めっき法または無電解めっき法によって被着され、厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層とが接続電極または外部端
子電極となる。これによって、配線導体7および外部端子8が腐食することを効果的に抑制できるとともに、配線導体7と電子部品との接合、配線導体7とボンディングワイヤとの接合、および外部端子8と外部回路基板16の配線との接合を強固にできる。
【0039】
ここで、本発明の多数個取り配線基板10の効果を、ホウケイ酸ガラス−酸化アルミニウム系のガラスセラミック焼結体からなる厚みが約0.3mmの下部母基板1bに厚みが約0.2mmの上部母基板1aを積層して形成した母基板1に、1辺の長さが約5mmの正方形状の配線基板領域2を配列した場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0040】
すなわち、上記の例において、配線基板領域2の1つの辺において、上部母基板1aを非形成として露出させた下部母基板1bの上面に分割溝6bを約0.1mmの深さで形成し
、上部母基板1aの上面に約0.25mmの深さで分割溝6aを形成して、これを分割溝6a,6bに沿って分割して、バリやクラックの発生の有無を目視(倍率約20倍)により確認した。
【0041】
なお、母基板1は、1辺の長さが約70mmの正方形状であり、配線基板領域2を6×7個の並びに縦横に配列した。また、比較例として、特許文献1に示したような従来技術の多数個取り配線基板、すなわち、配線基板領域の搭載部を開放させる辺において壁部が隣り合う配線基板領域の間でつながっている形状の多数個取り配線基板を準備し、同様に分割溝に沿って分割してバリやクラックの発生の有無を確認した。本発明の具体例の多数個取り配線基板10、および比較例の多数個取り配線基板ともに、試験した個数は8個(個片の配線基板が336個)とした。
【0042】
その結果、本発明の多数個取り配線基板10では、バリやクラックの発生が見られなかったのに対し、比較例の多数個取り配線基板では3個の配線基板においてバリの発生が見られた。これにより、本発明の多数個取り配線基板10におけるバリやクラックの発生を抑制する効果を確認することができた。
【0043】
本発明の配線基板は、例えば上記本発明の多数個取り配線基板10が分割溝6a,6bに沿って分割されてなり、上面の中央部に電子部品の搭載部3を有する四角平板状の下部基板11bと、セラミック焼結体からなり、下部基板11bの上面に積層された、下部基板11bの3つの辺において搭載部3の周辺に壁部5を形成する平面視でコの字状の上部基板11a
とが積層された絶縁基板11を備えている。壁部5が形成されていない1つの辺において下部基板11bが上部基板11aの両端を結ぶ線よりも外側に張り出した部分(張り出し部分)
の上面に外部端子が配置されている。
【0044】
このような配線基板によれば、例えば本発明の多数個取り配線基板10が個片に分割されてなり、下部基板11bが上部基板11aの両端を結ぶ線よりも外側に張り出していることから、配線基板の張り出した部分の上面と外部回路基板16とを接合して電気的に接続するので、配線基板に素子を実装して外部回路基板16に接合した電子部品モジュールを低背化できる。また、電子部品の搭載部3の面積の確保等が容易で、例えば樹脂封止の下部基板11bに対する接合面積を確保した配線基板を提供できる。
【0045】
この下部基板11bの外側への張り出しの長さは、上部基板11aの幅と同程度であり、例えば、約0.25〜0.5mm程度である。
【0046】
配線基板は、図4に示す例のように搭載部3に電極が形成されているときには、素子をフリップチップ実装できる。また、図5に示す例のように搭載部3に貫通孔9が形成されているときには、平面視で貫通孔9に受光部が位置するように撮像素子を実装することができる。あるいは、貫通孔9に金属等の放熱部材を配置して、この放熱部材に素子を接合して実装することもできる。
【0047】
本発明の配線基板は、図4および図5に示す例のような形状に限らず、他の形状であってもよい。例えば、図6に示した例では、上部母基板1aの内周に段状の部分が設けられ、この段状の部分の上面に配線導体7が形成されている。配線導体7は、例えばこの段状の部分の上面から下部基板11bの下面にかけて形成されており、搭載部3に搭載される電子部品を外部電気回路に電気的に接続するための導電路となる。
【0048】
なお、図6に示す例のような配線基板は、対応する多数個取り配線基板10において、配線基板領域2のそれぞれについて、その上に積層される上部母基板1aの形状を図6に示す例のような段状としておき、これを個片に分割すれば製作できる。上部母基板1aの形状を上記のようにするには、上部母基板1aを2層等の複数の枠状のセラミックグリーンシートで形成するようにして、上側のセラミックグリーンシートの枠部分の内周の寸法を、下側のセラミックグリーンシートの枠部分の内周の寸法よりも小さくして、この寸法差に応じて段状の部分が生じるように積層すればよい。
【0049】
このような多数個取り配線基板10を分割して得られる配線基板は、例えば図7(a)に示す例のような撮像装置等に使用される。図7(a)に示す例は、図5に示す例の配線基板の搭載部3に素子として撮像素子12を搭載した撮像装置を、外部回路基板16に実装した撮像装置モジュールを示している。
【0050】
配線基板を撮像装置に用いる場合には、図7(a)に示す例のように、貫通孔9が形成された配線基板に、平面視で撮像素子12の受光部12aが貫通孔9内に位置するように撮像素子12を搭載する。撮像素子12の電極と配線導体7とは、はんだによる接合やAuバンプによる超音波接合、あるいは異方性導電性樹脂による接着によってフリップチップ接合させるとともに、貫通孔9を透明板材13によって封止して撮像装置を形成すればよい。なお、はんだやAuバンプによるフリップチップ接合を行う場合には、撮像素子12の電極と配線導体7との接合を補強するとともに、貫通孔9内を封止して受光部12aを保護するためにアンダーフィル材17を充填することが好ましい。そして、下部基板11bの貫通孔9の上方にレンズ14が配置されている。このような構成とすることによって、小型かつ薄型で高画質な画像信号を出力することが可能な撮像装置を作製できる。
【0051】
透明板材13は、水晶やガラスあるいはエポキシ樹脂等の樹脂等から成り、熱硬化型や紫外線硬化型等のエポキシ樹脂やガラス等の接着剤により下部基板11bに接合される。例え
ば下部基板11bの上面の貫通孔9の周囲あるいは透明板材13の外縁部に、紫外線硬化型のエポキシ樹脂をディスペンス法によって塗布し、下部基板11bの上に透明板材13を載置して紫外線を照射することで接着剤が硬化して封止される。
【0052】
レンズ14は、ガラスあるいはエポキシ樹脂等からなり、レンズ固定部材15の開口部に取り付けられ、レンズ14を透過した光を受光部12aに入射させることができる。
【0053】
レンズ固定部材15は樹脂や金属等から成り、エポキシ樹脂や半田等の接着剤により下部基板11bの上面に固定される。あるいはレンズ固定部材15に予め設けられた鉤部等によって下部基板11bに固定される。
【0054】
このような撮像装置は、外部端子8が配線基板の張り出し部分の上面に設けられている。したがって、図7(a)に示す例のように、撮像装置は、外部回路基板16に実装する際に、配線基板の張り出した部分の上面が外部回路基板16の外縁に接合される。よって本発明の撮像装置を用いた撮像モジュールは、従来の撮像装置を撮像装置の主面が外部回路基板16の主面に接合された従来の撮像装置モジュールに比べて、低背化できる。また、撮像素子12の周囲を外部回路基板16および壁部5で取り囲んで、撮像素子12に横方向からものが当たって衝撃が加わることを抑制できる。また、撮像素子12を実装した後、例えばエポキシ樹脂等を用いて撮像素子12を保護する場合に比べて、壁部の高さ方向の精度に優れたものになる。また、樹脂が硬化する際の応力によって撮像素子12を変形させることを低減できる。
【0055】
なお、撮像装置は、図7(b)に示す例のように、撮像素子12と配線導体7とがワイヤボンディングによって電気的に接続されていてもよい。このような場合も、上記した図7(a)に示す例のような撮像装置の場合と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、多数個取り配線基板10を分割して得られる配線基板は、例えば図8に示す例のように、携帯電話用テレビチューナーモジュール等の用途に使用してもよい。図8(a)は、図4に示す例の配線基板の搭載部3に電子部品であるチューナーIC18aを搭載し、これを樹脂等の封止材(図示せず)で被覆して封止した状態を示す上面図であり、図8(b)は、図8(a)のA−A線における断面図である。なお、図8に示す例において、下部母基板1bの下面にも電子部品の搭載部3bを設け、この搭載部3bに他の電子部品としてOFDM(orthogonal freqeuncy division multiplex:直交周波数分割多重方式)チ
ップ18bを搭載している。
【0057】
この図8に示す例において、チューナーIC18aの電極(図示せず)がはんだ(図示せず)を介して配線導体7と電気的に接続されており、OFDM18bの電極(図示せず)がボンディングワイヤ(符号なし)を介して配線導体7と電気的に接続されている。
【0058】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。例えば、下部基板11bの上面に、コンデンサ等の小型の電子部品を搭載していてもよい。このような場合には、電子部品は、平面視で上部基板11aと重なる領域に、上部基板11aおよび下部基板11bの少なくとも一方に凹部を形成し、この凹部内に搭載されていてもよい。
【0059】
また、配線基板は、撮像モジュールに用いられるときには、レンズ固定部材15と接合される部分に凹部が形成されていてもよく、このような構成とすることによって撮像モジュールを低背化できる。
【0060】
また、レンズ固定部材15が、レンズ14をその光軸に沿った方向に動かすための駆動装置
および電子部品の少なくとも一方を備えていてもよい。このような場合には、配線基板とレンズ固定部材15とを電気的に接続しておけばよい。
【0061】
また、レンズ固定部材15は、張り出し部分に接合されていても構わない。このような場合には、より広い面積でレンズ固定部材15と母基板1とが接合されて、接合強度を高くできる。なお、このような場合には、レンズ固定部材15の高さ方向の位置合わせは、張り出し部分を用いずに行われることが好ましい。すなわち、レンズ固定部材15の壁部5は、張り出し部分に当接しないように、張り出し部分に対応する領域に凹みが設けられていることが好ましい。
【0062】
また、図7(a)および図7(b)に示す例のような撮像装置は、壁部5が開放されて張り出した部分に小型の電子部品を搭載してもよい。このような場合には、外部回路基板16に電子部品を搭載する場合と比べて撮像素子12と小型の電子部品との間の配線導体7の配線の長さを短くできる。
【0063】
また、多数個取り配線基板10の個々の配線基板領域2の搭載部3に、電子部品素子を搭載した後、個片の配線基板(配線基板に電子部品が搭載されてなる個々の電子装置)に分割するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1・・・母基板
1a・・上部母基板
1b・・下部母基板
2・・・配線基板領域
3・・・搭載部
3b・・下面の搭載部
4・・・ダミー領域
4b・・・第2のダミー領域
5・・・壁部
6a・・上部母基板1aの分割溝
6b・・下部母基板1bの分割溝
7・・・配線導体
10・・・多数個取り配線基板
11・・・絶縁基板
11a・・上部基板
11b・・下部基板
12・・・撮像素子
12a・・受光部
13・・・透明板材
14・・・レンズ
15・・・レンズ固定部材
16・・・外部回路基板
17・・・アンダーフィル材
18a・・チューナーIC
18a・・OFDMチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック焼結体からなり、上面の中央部に電子部品の搭載部を有する四角形状の複数の配線基板領域が縦横の並びに配列された平板状の下部母基板と、セラミック焼結体からなり、前記下部母基板の上面に積層された、それぞれの前記配線基板領域において前記搭載部の周辺に壁部を形成するための上部母基板とからなる母基板で構成された多数個取り配線基板であって、
前記配線基板領域の1つの辺側で、隣り合って配列された前記配線基板領域との間にダミー領域が配置されており、前記配線基板領域の前記1つの辺において、前記上部母基板が非形成とされて、前記下部母基板の上面が前記配線基板領域から前記ダミー領域まで露出しており、前記母基板の上面の前記配線基板領域の境界に沿って分割溝が形成されていることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
セラミック焼結体からなり、上面の中央部に電子部品の搭載部を有する四角平板状の下部基板と、セラミック焼結体からなり、前記下部基板の上面に積層された、該下部基板の3つの辺において前記搭載部の周辺に壁部を形成する平面視でコの字状の上部基板とを備え、前記壁部が形成されていない他の1つの辺において前記下部基板が前記上部基板の両端を結ぶ線よりも外側に張り出した部分を有し、前記張り出した部分の上面に外部端子が配置されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191054(P2012−191054A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54363(P2011−54363)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】