多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置
【課題】 安価でかつ小型化および薄型化を図ることができると共にキートップの設計自由度が高く、誤作動も少ない多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置を提供する。
【解決手段】 上面に下部電極部2がパターン形成された下基板3と、下部電極部2の直上を除いて下基板3上に設置された薄板状のスペーサー4と、該スペーサー4上に設置され下面かつ下部電極部2の直上に上部電極部5がパターン形成された可撓性の上基板6と、を備え、下部電極部2が、円環状に配列された複数の下側固定接点Xで構成され、上部電極部5が、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されている。
【解決手段】 上面に下部電極部2がパターン形成された下基板3と、下部電極部2の直上を除いて下基板3上に設置された薄板状のスペーサー4と、該スペーサー4上に設置され下面かつ下部電極部2の直上に上部電極部5がパターン形成された可撓性の上基板6と、を備え、下部電極部2が、円環状に配列された複数の下側固定接点Xで構成され、上部電極部5が、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機の操作ボタン等に好適な多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器では、小型化及び薄型化に伴って操作ボタンもサイズが小さくされてきた。従来、このような電子機器では、カーソル移動用などのために複数方向を指示して入力可能な多方向入力スイッチが採用されている。
例えば、特許文献1では、揺動部材の基部を上下部材間に複数方向に揺動自在に配置し、上部材の下面および下部材の上面であって揺動部材に設けた押圧部に押圧される位置にそれぞれスイッチ接点を配置した多方向押圧型スイッチが提案されている。このスイッチでは、周囲に4つのドームスイッチであるスイッチ接点が設置されていると共に中央にもドームスイッチであるスイッチ接点が設置されている。
【0003】
また、特許文献2では、基板上に複数の固定接点を多方向に配設すると共に、該固定接点に対応させて可動接点を設け、該可動接点を複数の固定接点に選択的に接触させることにより該固定接点を導通させるように構成されて成る多方向入力キー装置において、複数の固定接点を切片状に形成すると共に、該複数の固定接点を放射状に配設し、可動接点によって隣接する該固定接点を選択的に導通させるように構成した多方向入力接点機構が提案されている。この機構では、略円板状のラバートップの下部に可動接点が固着され、該ラバートップの下部中央部に該ラバートップの傾動支点となる凸部が下方に突設されており、凸部を支点としてラバートップが傾動して可動接点の一部が隣接する2つの固定接点に接触してこれら固定接点が導通するようになっている。なお、特許文献3にも同様の機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−261349号公報
【特許文献2】特開2002−367486号公報
【特許文献3】特開2003−272486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
近年、スイッチサイズのさらなる小型化及び薄型化が要望されているが、特許文献1に記載の技術では、多方向の入力を可能にするために複数のドームスイッチを設置するスペースが必要であるため、小型化に限界があると共に部材コストが増大してしまう問題がある。また、中央のドームスイッチを押し下げる際にレバーが傾いて周囲のドームスイッチも一緒に押してしまうおそれがあり、デバイス操作時に誤作動が発生し易いという問題があった。
また、特許文献2および3に記載の技術では、ラバートップ等のキートップに可動接点を設ける必要があると共に、キートップの下部中央部に凸部を設けて該凸部を支点にしてキートップを傾動させなければ可動接点と固定接点との接触を図ることができないため、キートップの形状が制限されて設計自由度が低いと共に凸部によってキートップが厚くなってしまう問題があった。
なお、静電容量方式を採用したタッチパッドや光学式を採用したトラックボールなどのポインティングデバイスも知られているが、得られたアナログ信号を特殊なICによって演算処理して所定の入力信号に変換する必要があり、特殊ICの採用により高コストになってしまう不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、安価でかつ小型化および薄型化を図ることができると共にキートップの設計自由度が高く、誤作動も少ない多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の多方向入力スイッチ部材は、上面に下部電極部がパターン形成された下基板と、前記下部電極部の直上を除いて前記下基板上に設置された薄板状のスペーサーと、該スペーサー上に設置され下面かつ前記下部電極部の直上に上部電極部がパターン形成された可撓性の上基板と、を備え、前記下部電極部が、円環状に配列された複数の下側固定接点で構成され、前記上部電極部が、対応する前記下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されていることを特徴とする。
【0008】
この多方向入力スイッチ部材では、可撓性の上基板に形成された上部電極部が、スペーサーによる隙間を介して、対応する下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されているので、上部電極部がキートップ部材等を介して部分的に押し下げられると複数の上側可動接点の一部が撓んで対応する下側固定接点に接触して特定の接点同士だけが導通される。
すなわち、円環状に配置された複数の上側可動接点に対応した特定方向を、一つまたは複数選択してスイッチ操作が可能である。特に、可撓性の上基板にパターン形成された上側可動接点を採用したことにより、静電容量式や光学式に近いスムーズな操作感を得ることができる。
したがって、この多方向入力スイッチ部材では、可撓性の上基板に複数の上側可動接点をパターン形成しているので、複数のドームスイッチを円周上に個別に設置する場合に比べて小型化および低コスト化を図ることができる。また、選択された上側可動接点と下側固定接点との接触で特定方向を選択する入力操作が可能なデジタル方式であるため、特殊なICが必要な従来のアナログ方式に比べて低コストで済む。さらに、キートップ部材に可動接点を設けたり傾動させるための凸部などが不要となり、薄型化が可能であると共にキートップ部材の高い設計自由度を得ることができる。
【0009】
また、本発明の多方向入力スイッチ部材は、前記上基板の下面に、対応する前記上側可動接点に接続された複数の上基板側配線部がパターン形成され、前記スペーサーに、対応する前記上基板側配線部の直下に配された複数のスペーサー側貫通孔が形成され、前記下基板に、対応する前記スペーサー側貫通孔の直下に配された複数の可動接点用貫通孔と、対応する前記下側固定接点の直下に配された複数の固定接点用貫通孔と、が形成され、前記スペーサー側貫通孔、前記可動接点用貫通孔および前記固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されていることを特徴とする。
【0010】
この多方向入力スイッチ部材では、スペーサー側貫通孔、可動接点用貫通孔および固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されているので、スペーサー側貫通孔内および可動接点用貫通孔内の導電性充填材を介して上側可動接点が下基板の下面にまで導通されていると共に、固定接点用貫通孔内の導電性充填材を介して下側固定接点が下基板の下面にまで導通されている。すなわち、スペーサー側貫通孔および可動接点用貫通孔が上側可動接点導通用のスルーホールとなると共に、固定接点用貫通孔が下側固定接点導通用のスルーホールとなり、下基板の下面側に配した回路基板と上記接点との電気的接続を容易に図ることができる。
【0011】
本発明の多方向入力スイッチ装置は、プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心を配して前記中央スイッチ用基板上に配された上記本発明の多方向入力スイッチ部材と、前記プッシュスイッチの直上に配された中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、前記多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、プッシュスイッチの直上に配された中央部と上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えているので、キートップ部材の外周部の一部を押圧することにより多方向入力スイッチ部材で特定方向を選択する入力操作(以下、外周操作とも称す)が可能であると共に、中央部を押圧することによって多方向入力スイッチ部材全体を押し下げてプッシュスイッチを押し下げることができる。したがって、多方向入力スイッチ部材がプッシュスイッチと連動して押し下げられる機構であるため、中央のプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0013】
また、本発明の多方向入力スイッチ装置は、前記プッシュスイッチが、前記中央スイッチ用基板の上面に形成された収納凹部と、前記収納凹部内の中央に設けられた中央接点及び前記収納凹部の内周縁側に設けられた周辺接点と、前記中央接点を中央直下に配して前記周辺接点上に架設され押圧によって弾性反転して下方の前記中央接点に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネと、前記収納凹部の開口部を閉塞して前記中央スイッチ用基板上に接着された可撓性の支持シートと、該支持シートの上面かつ前記可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部を備えているので、キートップ部材の中央部が押し下げられた際に多方向入力スイッチ部材が上部突起部を押し下げるので、上部突起部が常に可動接点バネの頭頂部、すなわち中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明の多方向入力スイッチ装置は、一端が前記多方向入力スイッチ部材に固定され前記上部電極部および前記下部電極部に電気的に接続されていると共に他端が前記中央スイッチ用基板に固定され前記プッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、上部電極部および下部電極部に電気的に接続されていると共にプッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えているので、上下動する多方向入力スイッチ部材と中央スイッチ用基板との配線を行うことができる。
【0017】
本発明の多方向入力スイッチ装置は、プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心部を配して前記中央スイッチ用基板上に設置された上記本発明の多方向入力スイッチ部材と、前記プッシュスイッチの直上に配され下方に突出した中央凸部を有する中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材と、を備え、前記多方向入力スイッチ部材が、前記プッシュスイッチの直上かつ前記上部電極部および前記下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、前記中央凸部が、前記中央貫通孔を挿通して前記プッシュスイッチの頭頂部に当接していることを特徴とする。
【0018】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、多方向入力スイッチ部材が、プッシュスイッチの直上かつ上部電極部および下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、キートップ部材の中央凸部が、中央貫通孔を挿通してプッシュスイッチの頭頂部に当接しているので、中央凸部を押し下げることで中央凸部の下端で直接プッシュスイッチを押し下げることができる。また、中央貫通孔内にプッシュスイッチを配して多方向入力スイッチ部材を中央スイッチ用基板上に直接設置することができるので、少なくともプッシュスイッチの高さ分だけ全体を薄型化することができる。さらに、キートップ部材は、中央凸部と外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられているので、中央凸部によるプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明に係る多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置によれば、可撓性の上基板に形成された上部電極部が、対応する下側固定接点の直上に円環状に配された複数の上側可動接点で構成されているので、円環状に配置された上側可動接点の一部を押圧して撓ませて直下の下側固定接点に接触させることで、これに対応した特定方向を、一つまたは複数選択して入力可能である。そして、この多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置では、可撓性の上基板に複数の上側可動接点をパターン形成しているので、小型化、薄型化および低コスト化を図ることができると共に、キートップ部材の高い設計自由度を得ることができる。
したがって、本発明の多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置を備えた携帯電話機等の電子機器では、多方向入力スイッチ部分が低コストで小型かつ薄型であると共に、誤動作も少ない良好かつ安定した多方向入力操作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態において、キートップ部材を除くと共に内部の上部電極部を破線で示した多方向入力スイッチ装置の斜視図である。
【図3】第1実施形態において、キートップ部材を除く多方向入力スイッチ装置を示す分解斜視図(フレキシブルプリント基板のみ平面図)である。
【図4】第1実施形態において、上基板を示す裏面図である。
【図5】第1実施形態において、スペーサーを示す平面図である。
【図6】第1実施形態において、下基板を示す平面図および裏面図である。
【図7】第1実施形態において、中央スイッチ用基板を示す平面図および裏面図である。
【図8】第1実施形態において、上側可動接点と下側固定接点との位置関係を説明するための上側可動接点および下側固定接点の配置を示す説明図である。
【図9】本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図10】第2実施形態において、キートップ部材を除くと共に内部の上部電極部を破線で示した多方向入力スイッチ装置の斜視図である。
【図11】第2実施形態において、キートップ部材を除く多方向入力スイッチ装置を示す分解斜視図である。
【図12】第2実施形態において、上基板を示す裏面図である。
【図13】第2実施形態において、スペーサーを示す平面図である。
【図14】第2実施形態において、下基板を示す平面図および裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第1実施形態を、図1から図8を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0022】
本実施形態における多方向入力スイッチ部材1は、図1から図3に示すように、上面に下部電極部2がパターン形成された下基板3と、下部電極部2の直上を除いて下基板3上に設置された薄板状のスペーサー4と、該スペーサー4上に設置され下面かつ下部電極部2の直上に上部電極部5がパターン形成された可撓性の上基板6と、を備えている。
上記下部電極部2は、円環状に配列された複数の下側固定接点Xで構成され、上記上部電極部5は、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されている。
【0023】
また、本実施形態における多方向入力スイッチ装置10は、プッシュスイッチ11が上面に設けられた中央スイッチ用基板12と、プッシュスイッチ11の直上に下部電極部2の中心を配して中央スイッチ用基板12上に配された上記多方向入力スイッチ部材1と、プッシュスイッチ11の直上に配された中央部13Aと該中央部13Aの外周に設けられ上側可動接点Yの直上に配された外周部13Bとが一体に形成されたキートップ部材13と、多方向入力スイッチ部材1を上下動可能に支持するガイド枠部材14と、を備えている。
【0024】
また、多方向入力スイッチ装置10は、一端が多方向入力スイッチ部材1に固定され上部電極部5および下部電極部2に電気的に接続されていると共に他端が中央スイッチ用基板12に固定されプッシュスイッチ11の電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板15を備えている。
【0025】
上記上基板6は、可撓性シートであるフレキシブルプリント基板(FPC)で形成されていると共に、上記下基板3は、ガラスエポキシ樹脂等のプリント基板(PCB)で形成されている。
なお、上基板6および下基板3に形成される各電極および配線パターンは、いずれも銅箔等によるパターン形成やカーボン印刷等によって形成されている。
また、上記スペーサー4は、耐熱性の熱硬化型両面テープで形成されており、円環状の下部電極部2の外周側に設置される部分と内周側に設置される円環状の部分とで構成されている。
【0026】
上基板6の下面には、図4に示すように、対応する上側可動接点Yに接続された複数の上基板側配線部8aがパターン形成されている。
また、上記スペーサー4には、図5に示すように、対応する上基板側配線部8aの直下に配された複数のスペーサー側貫通孔4aが形成されている。
【0027】
さらに、下基板3には、図6に示すように、対応するスペーサー側貫通孔4aの直下に配された複数の可動接点用貫通孔7aと、対応する下側固定接点Xの直下に配された複数の固定接点用貫通孔7bと、が形成されている。
そして、スペーサー側貫通孔4a、可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7b内には、Agペースト等の導電性充填材(図示略)が充填されている。
【0028】
すなわち、スペーサー側貫通孔4a、可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7b内に、導電性充填材が充填されているので、スペーサー側貫通孔4a内および可動接点用貫通孔7a内の導電性充填材を介して上側可動接点Yが下基板3の下面にまで導通されていると共に、固定接点用貫通孔7b内の導電性充填材を介して下側固定接点Xが下基板3の下面にまで導通されている。
【0029】
上記プッシュスイッチ11は、中央スイッチ用基板12の上面に形成された収納凹部12aと、収納凹部12a内の中央に設けられた中央接点12b及び収納凹部12aの内周縁側に設けられた周辺接点12cと、中央接点12bを中央直下に配して周辺接点12c上に架設され押圧によって弾性反転して下方の中央接点12bに接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネ16と、収納凹部12aの開口部を閉塞して中央スイッチ用基板12上に接着された可撓性の支持シート17と、該支持シート17の上面かつ可動接点バネ16の頭頂部の直上に形成された上部突起部18と、を備えている。
【0030】
上記中央スイッチ用基板12は、図3に示すように、ガラスエポキシ樹脂板等で形成された絶縁性基板部12Aと、該絶縁性基板部12Aの上面に貼り付けられ収納凹部12aとなる円形孔が形成された接着シート12Bと、で構成されている。この接着シート12Bは、両面接着シートであり、この上に支持シート17が接着される。
【0031】
上記中央接点12b及び周辺接点12cは、収納凹部12aの底面にパターン形成された銅箔等で形成されている。例えば、中央接点12bは、収納凹部12aの底面中央に円形状に形成され、周辺接点12cは、中央接点12bの周囲に円環状に形成されている。なお、周辺接点12cは、収納凹部12aの底面周縁であって中央接点12bを中心とした点対称の位置に形成された一対又は複数対の矩形状又は円弧状の接点としても構わない。また、中央接点12b及び周辺接点12cは、絶縁性基板部12Aの下面および側端面に形成された対応する複数の端子電極12dに電気的に接続されている。
【0032】
上記下基板3の下面には、図6に示すように、フレキシブルプリント基板15の一端が接続されるFPC用電極部3aが形成されていると共に、FPC用電極部3aと対応する固定接点用貫通孔7b若しくは可動接点用貫通孔7aとを接続する複数の下基板下面配線3bがパターン形成されている。
上記絶縁性基板部12Aの下面には、図7に示すように、フレキシブルプリント基板15の他端が接続されるFPC用電極部12eが形成されていると共に、FPC用電極部12eと対応する端子電極12dとを接続する複数の絶縁性基板下面配線12fがパターン形成されている。
【0033】
また、接着シート12Bおよび支持シート17には、フレキシブルプリント基板15を通す配線用孔15a,15bがそれぞれ形成されている。
上記ガイド枠部材14は、四角枠状の両面シートである固定シート19を介して中央スイッチ用基板12の外周部に設置されている。このガイド枠部材14には、内側に突出し、多方向入力スイッチ部材1の外縁上部に当接することで多方向入力スイッチ部材1の上方への移動を規制する内側突出部14aが形成されている。
【0034】
上記可動接点バネ16は、下方に押圧されて所定の押圧力を超えると、節度感を伴って下方に向けて弾性反転する断面円弧状の板バネである。
上記支持シート17は、接着シート12B上に円形孔を覆って貼り付けられている。
この支持シート17は、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂フィルムで形成された保護シートであって防水シートとしても機能しており、収納凹部12a内を密封状態としている。
上記上部突起部18は、硬質な樹脂で円板状に形成されている。
【0035】
上記キートップ部材13は、樹脂等で形成された硬質な上層部13aとゴム材等の弾性材料で形成された軟質な下層部13bとの二層構造とされ、中央部13Aと外周部13Bとが一体に成形されたラバーキーである。上層部13aは、外周部13Bと該外周部13Bの周囲の支持部13Cとの境界で分断されており、軟質な下層部13bで支持部13Cとキートップ部材13とが連結されていて、下層部13bの弾性によってキートップ部材13を下方に押し下げ可能になっている。
【0036】
このキートップ部材13の中央部13Aは、図1に示すように、下方に突出して上基板6の中央(上部電極部5の中心)に当接している中央凸部13cを有している。また、キートップ部材13の外周部13Bは、その下部に下方に突出した突条部13dが中央凸部13cを中心にした環状に形成されており、外周部13Bが押し下げられた際に突条部13dが上側可動接点Yを下方に押し下げるように配置されている。
なお、上基板6の中央およびスペーサー4の中央には、キートップ部材13の中央凸部13Cが挿通する上基板貫通孔6aおよびスペーサー貫通孔4bが設けられている。
【0037】
次に、上側可動接点Yと下側固定接点Xとの位置関係およびスイッチング動作について、図8を参照して説明する。
【0038】
上側可動接点Yは、図8の(a)に示すように、上部電極部5が周方向に等間隔に6分割されて円周上に並べられている。また、下側固定接点Xは、図8の(b)に示すように、下部電極部2を周方向に10°刻みで等間隔に36分割されて円周上に並べられ、それぞれが矩形状とされている。さらに、下側固定接点Xは、図6に示すように、6個おきに互いに電気的に接続されており、電気的には6つに分割されている。
【0039】
例えば、上側可動接点Yを、図8の(a)に示すように、パターンY1〜Y6に分割し、下側固定接点Xを、図8の(b)に示すように、電気的にパターンX1〜X6に分けている場合で説明する。すなわち、上側可動接点Yは、周方向右回転でパターンY1、Y2,Y3,Y4,Y5,Y6の順に並べられている。また、下側固定接点Xは、周方向右回転でパターンX1、X2,X3,X4,X5,X6の順に繰り返し並べられている。
【0040】
このような接点配置の場合、キートップ部材13の外周部13Bの右側を押すと、上基板6の右側が下方に撓んで上側可動接点YのパターンY5と下側固定接点XのパターンX4とが接触する。これら接点の接触による電気信号をソフトウエア上の処理で「Y5+X4=右」と判別することで、選択された右方向の信号が入力される。
このように、上側可動接点YのパターンY1〜Y6と下側固定接点XのパターンX1〜X6とプッシュスイッチ11の中央接点12b及び周辺接点12cとで、全体として14のスイッチ用電極が設けられている。
【0041】
なお、複数箇所が同時に押された場合には、ソフトウエア上の処理で押された箇所の平均箇所(中心部)を算出して方向を特定するように設定しても構わない。また、爪先で押した場合のように狭い領域が押された場合と指先の腹部分で押した場合のように比較的広い領域が押された場合とで、接触する接点の数が異なるので、接触した接点の数に応じて割り付ける操作や命令を変更するように設定しても構わない。
【0042】
上述したように本実施形態の多方向入力スイッチ部材1では、可撓性の上基板6に形成された上部電極部5が、スペーサー4による隙間を介して、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されているので、上部電極部5がキートップ部材13を介して部分的に押し下げられると複数の上側可動接点Yの一部が撓んで対応する下側固定接点Xに接触して特定の接点同士だけが導通される。
【0043】
すなわち、円環状に配置された複数の上側可動接点Yに対応した特定方向を、一つまたは複数選択して入力が可能である。特に、可撓性の上基板6にパターン形成された上側可動接点Yを採用したことにより、静電容量式や光学式に近いスムーズな操作感を得ることができる。
したがって、この多方向入力スイッチ部材1では、可撓性の上基板6に複数の上側可動接点Yをパターン形成しているので、複数のドームスイッチを円周上に個別に設置する場合に比べて小型化および低コスト化を図ることができる。また、選択された上側可動接点Yと下側固定接点Xとの接触で特定方向を選択する入力操作が可能なデジタル方式であるため、特殊なICが必要な従来のアナログ方式に比べて低コストで済む。さらに、キートップ部材13に可動接点を設けたり傾動させるための凸部などが不要となり、薄型化が可能であると共にキートップ部材13の高い設計自由度を得ることができる。
【0044】
また、スペーサー側貫通孔4aおよび可動接点用貫通孔7aが上側可動接点導通用のスルーホールとなると共に、固定接点用貫通孔7bが下側固定接点導通用のスルーホールとなるので、下基板3の下面側に配した回路基板と上記接点との電気的接続を容易に図ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態の多方向入力スイッチ装置10では、プッシュスイッチ11の直上に配された中央部13Aと上側可動接点Yの直上に配された外周部13Bとが一体に形成されたキートップ部材13と、多方向入力スイッチ部材1を上下動可能に支持するガイド枠部材14と、を備えているので、外周部13Bの一部を押圧することにより多方向入力スイッチ部材1で外周操作が可能であると共に、中央部13Aを押圧することによって多方向入力スイッチ部材1全体を押し下げてプッシュスイッチ11を押し下げることができる。
【0046】
したがって、多方向入力スイッチ部材1がプッシュスイッチ11と連動して押し下げられる機構であるため、中央のプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0047】
また、支持シート17の上面かつ可動接点バネ16の頭頂部の直上に形成された上部突起部18を備えているので、キートップ部材13の中央部13Aが押し下げられた際に多方向入力スイッチ部材1が上部突起部18を押し下げるので、上部突起部18が常に可動接点バネ16の頭頂部、すなわち中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。
【0048】
さらに、上部電極部5および下部電極部2に電気的に接続されていると共にプッシュスイッチ11の電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板15を備えているので、上下動する多方向入力スイッチ部材1と中央スイッチ用基板12との配線を行うことができる。
【0049】
次に、本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第2実施形態について、図9から図14を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0050】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、中央部13Aと外周部13Bとが一体に成形されたキートップ部材13に対応した多方向入力スイッチ部材1および多方向入力スイッチ装置10であるのに対し、第2実施形態の多方向入力スイッチ部材21および多方向入力スイッチ装置20は、図9から図11に示すように、中央部23Aと外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられたセパレートタイプのキートップ部材23に対応したものである点である。
【0051】
すなわち、第2実施形態の多方向入力スイッチ装置20は、プッシュスイッチ11の直上に下部電極部2の中心部を配して中央スイッチ用基板12上に設置された多方向入力スイッチ部材21と、プッシュスイッチ11の直上に配され下方に突出した中央凸部23cを有する中央部23Aと該中央部23Aの外周に設けられ上側可動接点Yの直上に配された外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材23と、を備えている。
【0052】
また、第2実施形態の多方向入力スイッチ部材21は、プッシュスイッチ11の直上かつ上部電極部5および下部電極部2の中心に形成された中央貫通孔21aを有している。
そして、中央凸部23cは、中央貫通孔21aを挿通してプッシュスイッチ11の頭頂部に当接している。
【0053】
なお、上記中央貫通孔21aは、上基板26の中央に形成された上基板貫通孔6aと、スペーサー4の中央に形成されたスペーサー貫通孔4bと、下基板23の中央に形成された下基板貫通孔23aと、固定シート29の中央に形成された固定シート貫通孔29aと、で構成されている。
上記キートップ部材23は、中央部23Aと外周部23Bとの境界で上層部13aと下層部13bとが分断されており、互いに独立して上下動可能になっている。
【0054】
上記多方向入力スイッチ部材21は、中央スイッチ用基板12上に直接設置されており、下基板23の下面と中央スイッチ用基板12の上面とに形成された互いに対応する各電極が半田等で接合されている。すなわち、第2実施形態では、多方向入力スイッチ部材21と中央スイッチ用基板12とは互いにフレキシブルプリント基板15を使わずに電気的に接続されている。
【0055】
なお、第2実施形態の固定シート29および支持シート27には、対応する可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bの直下に導通用貫通孔29bおよび導通用貫通孔27aがそれぞれ形成されている。また、中央スイッチ用基板22の絶縁性基板部22Aおよび接着シート22Bには、対応する可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bの直下に導通用貫通孔22aおよび導通用貫通孔22bがそれぞれ形成されている。さらに、互いに連通する導通用貫通孔29b,27a,22a,22b内には、Agペースト等の導電性充填材(図示略)が充填されている。
【0056】
すなわち、互いに連通する導通用貫通孔29b,27a,22a,22b内に充填された導電性充填材によって可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bが絶縁性基板部22Aの下面まで配線されている。
なお、第2実施形態では、多方向入力スイッチ部材21が中央スイッチ用基板12上に固定されているので、ガイド枠部材14が不要である。
【0057】
上述したように第2実施形態の多方向入力スイッチ装置20では、多方向入力スイッチ部材21が、プッシュスイッチ11の直上かつ上部電極部5および下部電極部2の中心に形成された中央貫通孔21aを有し、キートップ部材13の中央凸部23cが、中央貫通孔21aを挿通してプッシュスイッチ11の頭頂部に当接しているので、中央凸部23cを押し下げることで中央凸部23cの下端で直接プッシュスイッチ11を押し下げることができる。
【0058】
また、中央貫通孔21a内にプッシュスイッチ11を配して多方向入力スイッチ部材21を中央スイッチ用基板22上に直接設置することができるので、少なくともプッシュスイッチ11の高さ分だけ全体を薄型化することができる。さらに、キートップ部材23は、中央凸部23cと外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられているので、中央凸部23cによるプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0059】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0060】
例えば、上記各実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1,21…多方向入力スイッチ部材、2…下部電極部、3,23…下基板、4…スペーサー、4a…スペーサー側貫通孔、5…上部電極部、6,26…上基板、7a…可動接点用貫通孔、7b…固定接点用貫通孔、8a…上基板側配線部、10,20…多方向入力スイッチ装置、11…プッシュスイッチ、12,22…中央スイッチ用基板、12a…収納凹部、12b…中央接点、12c…周辺接点、13,23…キートップ部材、13A,23A…キートップ部材の中央部、13B,23B…キートップ部材の外周部、13c,23c…キートップ部材の中央凸部、14…ガイド枠部材、15…フレキシブルプリント基板、16…可動接点バネ、17,27…支持シート、18…上部突起部、21a…中央貫通孔、X…下側固定接点、Y…上側可動接点
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機の操作ボタン等に好適な多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器では、小型化及び薄型化に伴って操作ボタンもサイズが小さくされてきた。従来、このような電子機器では、カーソル移動用などのために複数方向を指示して入力可能な多方向入力スイッチが採用されている。
例えば、特許文献1では、揺動部材の基部を上下部材間に複数方向に揺動自在に配置し、上部材の下面および下部材の上面であって揺動部材に設けた押圧部に押圧される位置にそれぞれスイッチ接点を配置した多方向押圧型スイッチが提案されている。このスイッチでは、周囲に4つのドームスイッチであるスイッチ接点が設置されていると共に中央にもドームスイッチであるスイッチ接点が設置されている。
【0003】
また、特許文献2では、基板上に複数の固定接点を多方向に配設すると共に、該固定接点に対応させて可動接点を設け、該可動接点を複数の固定接点に選択的に接触させることにより該固定接点を導通させるように構成されて成る多方向入力キー装置において、複数の固定接点を切片状に形成すると共に、該複数の固定接点を放射状に配設し、可動接点によって隣接する該固定接点を選択的に導通させるように構成した多方向入力接点機構が提案されている。この機構では、略円板状のラバートップの下部に可動接点が固着され、該ラバートップの下部中央部に該ラバートップの傾動支点となる凸部が下方に突設されており、凸部を支点としてラバートップが傾動して可動接点の一部が隣接する2つの固定接点に接触してこれら固定接点が導通するようになっている。なお、特許文献3にも同様の機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−261349号公報
【特許文献2】特開2002−367486号公報
【特許文献3】特開2003−272486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
近年、スイッチサイズのさらなる小型化及び薄型化が要望されているが、特許文献1に記載の技術では、多方向の入力を可能にするために複数のドームスイッチを設置するスペースが必要であるため、小型化に限界があると共に部材コストが増大してしまう問題がある。また、中央のドームスイッチを押し下げる際にレバーが傾いて周囲のドームスイッチも一緒に押してしまうおそれがあり、デバイス操作時に誤作動が発生し易いという問題があった。
また、特許文献2および3に記載の技術では、ラバートップ等のキートップに可動接点を設ける必要があると共に、キートップの下部中央部に凸部を設けて該凸部を支点にしてキートップを傾動させなければ可動接点と固定接点との接触を図ることができないため、キートップの形状が制限されて設計自由度が低いと共に凸部によってキートップが厚くなってしまう問題があった。
なお、静電容量方式を採用したタッチパッドや光学式を採用したトラックボールなどのポインティングデバイスも知られているが、得られたアナログ信号を特殊なICによって演算処理して所定の入力信号に変換する必要があり、特殊ICの採用により高コストになってしまう不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、安価でかつ小型化および薄型化を図ることができると共にキートップの設計自由度が高く、誤作動も少ない多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の多方向入力スイッチ部材は、上面に下部電極部がパターン形成された下基板と、前記下部電極部の直上を除いて前記下基板上に設置された薄板状のスペーサーと、該スペーサー上に設置され下面かつ前記下部電極部の直上に上部電極部がパターン形成された可撓性の上基板と、を備え、前記下部電極部が、円環状に配列された複数の下側固定接点で構成され、前記上部電極部が、対応する前記下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されていることを特徴とする。
【0008】
この多方向入力スイッチ部材では、可撓性の上基板に形成された上部電極部が、スペーサーによる隙間を介して、対応する下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されているので、上部電極部がキートップ部材等を介して部分的に押し下げられると複数の上側可動接点の一部が撓んで対応する下側固定接点に接触して特定の接点同士だけが導通される。
すなわち、円環状に配置された複数の上側可動接点に対応した特定方向を、一つまたは複数選択してスイッチ操作が可能である。特に、可撓性の上基板にパターン形成された上側可動接点を採用したことにより、静電容量式や光学式に近いスムーズな操作感を得ることができる。
したがって、この多方向入力スイッチ部材では、可撓性の上基板に複数の上側可動接点をパターン形成しているので、複数のドームスイッチを円周上に個別に設置する場合に比べて小型化および低コスト化を図ることができる。また、選択された上側可動接点と下側固定接点との接触で特定方向を選択する入力操作が可能なデジタル方式であるため、特殊なICが必要な従来のアナログ方式に比べて低コストで済む。さらに、キートップ部材に可動接点を設けたり傾動させるための凸部などが不要となり、薄型化が可能であると共にキートップ部材の高い設計自由度を得ることができる。
【0009】
また、本発明の多方向入力スイッチ部材は、前記上基板の下面に、対応する前記上側可動接点に接続された複数の上基板側配線部がパターン形成され、前記スペーサーに、対応する前記上基板側配線部の直下に配された複数のスペーサー側貫通孔が形成され、前記下基板に、対応する前記スペーサー側貫通孔の直下に配された複数の可動接点用貫通孔と、対応する前記下側固定接点の直下に配された複数の固定接点用貫通孔と、が形成され、前記スペーサー側貫通孔、前記可動接点用貫通孔および前記固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されていることを特徴とする。
【0010】
この多方向入力スイッチ部材では、スペーサー側貫通孔、可動接点用貫通孔および固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されているので、スペーサー側貫通孔内および可動接点用貫通孔内の導電性充填材を介して上側可動接点が下基板の下面にまで導通されていると共に、固定接点用貫通孔内の導電性充填材を介して下側固定接点が下基板の下面にまで導通されている。すなわち、スペーサー側貫通孔および可動接点用貫通孔が上側可動接点導通用のスルーホールとなると共に、固定接点用貫通孔が下側固定接点導通用のスルーホールとなり、下基板の下面側に配した回路基板と上記接点との電気的接続を容易に図ることができる。
【0011】
本発明の多方向入力スイッチ装置は、プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心を配して前記中央スイッチ用基板上に配された上記本発明の多方向入力スイッチ部材と、前記プッシュスイッチの直上に配された中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、前記多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、プッシュスイッチの直上に配された中央部と上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えているので、キートップ部材の外周部の一部を押圧することにより多方向入力スイッチ部材で特定方向を選択する入力操作(以下、外周操作とも称す)が可能であると共に、中央部を押圧することによって多方向入力スイッチ部材全体を押し下げてプッシュスイッチを押し下げることができる。したがって、多方向入力スイッチ部材がプッシュスイッチと連動して押し下げられる機構であるため、中央のプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0013】
また、本発明の多方向入力スイッチ装置は、前記プッシュスイッチが、前記中央スイッチ用基板の上面に形成された収納凹部と、前記収納凹部内の中央に設けられた中央接点及び前記収納凹部の内周縁側に設けられた周辺接点と、前記中央接点を中央直下に配して前記周辺接点上に架設され押圧によって弾性反転して下方の前記中央接点に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネと、前記収納凹部の開口部を閉塞して前記中央スイッチ用基板上に接着された可撓性の支持シートと、該支持シートの上面かつ前記可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、支持シートの上面かつ可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部を備えているので、キートップ部材の中央部が押し下げられた際に多方向入力スイッチ部材が上部突起部を押し下げるので、上部突起部が常に可動接点バネの頭頂部、すなわち中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明の多方向入力スイッチ装置は、一端が前記多方向入力スイッチ部材に固定され前記上部電極部および前記下部電極部に電気的に接続されていると共に他端が前記中央スイッチ用基板に固定され前記プッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、上部電極部および下部電極部に電気的に接続されていると共にプッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えているので、上下動する多方向入力スイッチ部材と中央スイッチ用基板との配線を行うことができる。
【0017】
本発明の多方向入力スイッチ装置は、プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心部を配して前記中央スイッチ用基板上に設置された上記本発明の多方向入力スイッチ部材と、前記プッシュスイッチの直上に配され下方に突出した中央凸部を有する中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材と、を備え、前記多方向入力スイッチ部材が、前記プッシュスイッチの直上かつ前記上部電極部および前記下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、前記中央凸部が、前記中央貫通孔を挿通して前記プッシュスイッチの頭頂部に当接していることを特徴とする。
【0018】
すなわち、この多方向入力スイッチ装置では、多方向入力スイッチ部材が、プッシュスイッチの直上かつ上部電極部および下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、キートップ部材の中央凸部が、中央貫通孔を挿通してプッシュスイッチの頭頂部に当接しているので、中央凸部を押し下げることで中央凸部の下端で直接プッシュスイッチを押し下げることができる。また、中央貫通孔内にプッシュスイッチを配して多方向入力スイッチ部材を中央スイッチ用基板上に直接設置することができるので、少なくともプッシュスイッチの高さ分だけ全体を薄型化することができる。さらに、キートップ部材は、中央凸部と外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられているので、中央凸部によるプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明に係る多方向入力スイッチ部材およびこれを備えた多方向入力スイッチ装置によれば、可撓性の上基板に形成された上部電極部が、対応する下側固定接点の直上に円環状に配された複数の上側可動接点で構成されているので、円環状に配置された上側可動接点の一部を押圧して撓ませて直下の下側固定接点に接触させることで、これに対応した特定方向を、一つまたは複数選択して入力可能である。そして、この多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置では、可撓性の上基板に複数の上側可動接点をパターン形成しているので、小型化、薄型化および低コスト化を図ることができると共に、キートップ部材の高い設計自由度を得ることができる。
したがって、本発明の多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置を備えた携帯電話機等の電子機器では、多方向入力スイッチ部分が低コストで小型かつ薄型であると共に、誤動作も少ない良好かつ安定した多方向入力操作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態において、キートップ部材を除くと共に内部の上部電極部を破線で示した多方向入力スイッチ装置の斜視図である。
【図3】第1実施形態において、キートップ部材を除く多方向入力スイッチ装置を示す分解斜視図(フレキシブルプリント基板のみ平面図)である。
【図4】第1実施形態において、上基板を示す裏面図である。
【図5】第1実施形態において、スペーサーを示す平面図である。
【図6】第1実施形態において、下基板を示す平面図および裏面図である。
【図7】第1実施形態において、中央スイッチ用基板を示す平面図および裏面図である。
【図8】第1実施形態において、上側可動接点と下側固定接点との位置関係を説明するための上側可動接点および下側固定接点の配置を示す説明図である。
【図9】本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第2実施形態を示す断面図である。
【図10】第2実施形態において、キートップ部材を除くと共に内部の上部電極部を破線で示した多方向入力スイッチ装置の斜視図である。
【図11】第2実施形態において、キートップ部材を除く多方向入力スイッチ装置を示す分解斜視図である。
【図12】第2実施形態において、上基板を示す裏面図である。
【図13】第2実施形態において、スペーサーを示す平面図である。
【図14】第2実施形態において、下基板を示す平面図および裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第1実施形態を、図1から図8を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面の一部では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0022】
本実施形態における多方向入力スイッチ部材1は、図1から図3に示すように、上面に下部電極部2がパターン形成された下基板3と、下部電極部2の直上を除いて下基板3上に設置された薄板状のスペーサー4と、該スペーサー4上に設置され下面かつ下部電極部2の直上に上部電極部5がパターン形成された可撓性の上基板6と、を備えている。
上記下部電極部2は、円環状に配列された複数の下側固定接点Xで構成され、上記上部電極部5は、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されている。
【0023】
また、本実施形態における多方向入力スイッチ装置10は、プッシュスイッチ11が上面に設けられた中央スイッチ用基板12と、プッシュスイッチ11の直上に下部電極部2の中心を配して中央スイッチ用基板12上に配された上記多方向入力スイッチ部材1と、プッシュスイッチ11の直上に配された中央部13Aと該中央部13Aの外周に設けられ上側可動接点Yの直上に配された外周部13Bとが一体に形成されたキートップ部材13と、多方向入力スイッチ部材1を上下動可能に支持するガイド枠部材14と、を備えている。
【0024】
また、多方向入力スイッチ装置10は、一端が多方向入力スイッチ部材1に固定され上部電極部5および下部電極部2に電気的に接続されていると共に他端が中央スイッチ用基板12に固定されプッシュスイッチ11の電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板15を備えている。
【0025】
上記上基板6は、可撓性シートであるフレキシブルプリント基板(FPC)で形成されていると共に、上記下基板3は、ガラスエポキシ樹脂等のプリント基板(PCB)で形成されている。
なお、上基板6および下基板3に形成される各電極および配線パターンは、いずれも銅箔等によるパターン形成やカーボン印刷等によって形成されている。
また、上記スペーサー4は、耐熱性の熱硬化型両面テープで形成されており、円環状の下部電極部2の外周側に設置される部分と内周側に設置される円環状の部分とで構成されている。
【0026】
上基板6の下面には、図4に示すように、対応する上側可動接点Yに接続された複数の上基板側配線部8aがパターン形成されている。
また、上記スペーサー4には、図5に示すように、対応する上基板側配線部8aの直下に配された複数のスペーサー側貫通孔4aが形成されている。
【0027】
さらに、下基板3には、図6に示すように、対応するスペーサー側貫通孔4aの直下に配された複数の可動接点用貫通孔7aと、対応する下側固定接点Xの直下に配された複数の固定接点用貫通孔7bと、が形成されている。
そして、スペーサー側貫通孔4a、可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7b内には、Agペースト等の導電性充填材(図示略)が充填されている。
【0028】
すなわち、スペーサー側貫通孔4a、可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7b内に、導電性充填材が充填されているので、スペーサー側貫通孔4a内および可動接点用貫通孔7a内の導電性充填材を介して上側可動接点Yが下基板3の下面にまで導通されていると共に、固定接点用貫通孔7b内の導電性充填材を介して下側固定接点Xが下基板3の下面にまで導通されている。
【0029】
上記プッシュスイッチ11は、中央スイッチ用基板12の上面に形成された収納凹部12aと、収納凹部12a内の中央に設けられた中央接点12b及び収納凹部12aの内周縁側に設けられた周辺接点12cと、中央接点12bを中央直下に配して周辺接点12c上に架設され押圧によって弾性反転して下方の中央接点12bに接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネ16と、収納凹部12aの開口部を閉塞して中央スイッチ用基板12上に接着された可撓性の支持シート17と、該支持シート17の上面かつ可動接点バネ16の頭頂部の直上に形成された上部突起部18と、を備えている。
【0030】
上記中央スイッチ用基板12は、図3に示すように、ガラスエポキシ樹脂板等で形成された絶縁性基板部12Aと、該絶縁性基板部12Aの上面に貼り付けられ収納凹部12aとなる円形孔が形成された接着シート12Bと、で構成されている。この接着シート12Bは、両面接着シートであり、この上に支持シート17が接着される。
【0031】
上記中央接点12b及び周辺接点12cは、収納凹部12aの底面にパターン形成された銅箔等で形成されている。例えば、中央接点12bは、収納凹部12aの底面中央に円形状に形成され、周辺接点12cは、中央接点12bの周囲に円環状に形成されている。なお、周辺接点12cは、収納凹部12aの底面周縁であって中央接点12bを中心とした点対称の位置に形成された一対又は複数対の矩形状又は円弧状の接点としても構わない。また、中央接点12b及び周辺接点12cは、絶縁性基板部12Aの下面および側端面に形成された対応する複数の端子電極12dに電気的に接続されている。
【0032】
上記下基板3の下面には、図6に示すように、フレキシブルプリント基板15の一端が接続されるFPC用電極部3aが形成されていると共に、FPC用電極部3aと対応する固定接点用貫通孔7b若しくは可動接点用貫通孔7aとを接続する複数の下基板下面配線3bがパターン形成されている。
上記絶縁性基板部12Aの下面には、図7に示すように、フレキシブルプリント基板15の他端が接続されるFPC用電極部12eが形成されていると共に、FPC用電極部12eと対応する端子電極12dとを接続する複数の絶縁性基板下面配線12fがパターン形成されている。
【0033】
また、接着シート12Bおよび支持シート17には、フレキシブルプリント基板15を通す配線用孔15a,15bがそれぞれ形成されている。
上記ガイド枠部材14は、四角枠状の両面シートである固定シート19を介して中央スイッチ用基板12の外周部に設置されている。このガイド枠部材14には、内側に突出し、多方向入力スイッチ部材1の外縁上部に当接することで多方向入力スイッチ部材1の上方への移動を規制する内側突出部14aが形成されている。
【0034】
上記可動接点バネ16は、下方に押圧されて所定の押圧力を超えると、節度感を伴って下方に向けて弾性反転する断面円弧状の板バネである。
上記支持シート17は、接着シート12B上に円形孔を覆って貼り付けられている。
この支持シート17は、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂フィルムで形成された保護シートであって防水シートとしても機能しており、収納凹部12a内を密封状態としている。
上記上部突起部18は、硬質な樹脂で円板状に形成されている。
【0035】
上記キートップ部材13は、樹脂等で形成された硬質な上層部13aとゴム材等の弾性材料で形成された軟質な下層部13bとの二層構造とされ、中央部13Aと外周部13Bとが一体に成形されたラバーキーである。上層部13aは、外周部13Bと該外周部13Bの周囲の支持部13Cとの境界で分断されており、軟質な下層部13bで支持部13Cとキートップ部材13とが連結されていて、下層部13bの弾性によってキートップ部材13を下方に押し下げ可能になっている。
【0036】
このキートップ部材13の中央部13Aは、図1に示すように、下方に突出して上基板6の中央(上部電極部5の中心)に当接している中央凸部13cを有している。また、キートップ部材13の外周部13Bは、その下部に下方に突出した突条部13dが中央凸部13cを中心にした環状に形成されており、外周部13Bが押し下げられた際に突条部13dが上側可動接点Yを下方に押し下げるように配置されている。
なお、上基板6の中央およびスペーサー4の中央には、キートップ部材13の中央凸部13Cが挿通する上基板貫通孔6aおよびスペーサー貫通孔4bが設けられている。
【0037】
次に、上側可動接点Yと下側固定接点Xとの位置関係およびスイッチング動作について、図8を参照して説明する。
【0038】
上側可動接点Yは、図8の(a)に示すように、上部電極部5が周方向に等間隔に6分割されて円周上に並べられている。また、下側固定接点Xは、図8の(b)に示すように、下部電極部2を周方向に10°刻みで等間隔に36分割されて円周上に並べられ、それぞれが矩形状とされている。さらに、下側固定接点Xは、図6に示すように、6個おきに互いに電気的に接続されており、電気的には6つに分割されている。
【0039】
例えば、上側可動接点Yを、図8の(a)に示すように、パターンY1〜Y6に分割し、下側固定接点Xを、図8の(b)に示すように、電気的にパターンX1〜X6に分けている場合で説明する。すなわち、上側可動接点Yは、周方向右回転でパターンY1、Y2,Y3,Y4,Y5,Y6の順に並べられている。また、下側固定接点Xは、周方向右回転でパターンX1、X2,X3,X4,X5,X6の順に繰り返し並べられている。
【0040】
このような接点配置の場合、キートップ部材13の外周部13Bの右側を押すと、上基板6の右側が下方に撓んで上側可動接点YのパターンY5と下側固定接点XのパターンX4とが接触する。これら接点の接触による電気信号をソフトウエア上の処理で「Y5+X4=右」と判別することで、選択された右方向の信号が入力される。
このように、上側可動接点YのパターンY1〜Y6と下側固定接点XのパターンX1〜X6とプッシュスイッチ11の中央接点12b及び周辺接点12cとで、全体として14のスイッチ用電極が設けられている。
【0041】
なお、複数箇所が同時に押された場合には、ソフトウエア上の処理で押された箇所の平均箇所(中心部)を算出して方向を特定するように設定しても構わない。また、爪先で押した場合のように狭い領域が押された場合と指先の腹部分で押した場合のように比較的広い領域が押された場合とで、接触する接点の数が異なるので、接触した接点の数に応じて割り付ける操作や命令を変更するように設定しても構わない。
【0042】
上述したように本実施形態の多方向入力スイッチ部材1では、可撓性の上基板6に形成された上部電極部5が、スペーサー4による隙間を介して、対応する下側固定接点Xの直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点Yで構成されているので、上部電極部5がキートップ部材13を介して部分的に押し下げられると複数の上側可動接点Yの一部が撓んで対応する下側固定接点Xに接触して特定の接点同士だけが導通される。
【0043】
すなわち、円環状に配置された複数の上側可動接点Yに対応した特定方向を、一つまたは複数選択して入力が可能である。特に、可撓性の上基板6にパターン形成された上側可動接点Yを採用したことにより、静電容量式や光学式に近いスムーズな操作感を得ることができる。
したがって、この多方向入力スイッチ部材1では、可撓性の上基板6に複数の上側可動接点Yをパターン形成しているので、複数のドームスイッチを円周上に個別に設置する場合に比べて小型化および低コスト化を図ることができる。また、選択された上側可動接点Yと下側固定接点Xとの接触で特定方向を選択する入力操作が可能なデジタル方式であるため、特殊なICが必要な従来のアナログ方式に比べて低コストで済む。さらに、キートップ部材13に可動接点を設けたり傾動させるための凸部などが不要となり、薄型化が可能であると共にキートップ部材13の高い設計自由度を得ることができる。
【0044】
また、スペーサー側貫通孔4aおよび可動接点用貫通孔7aが上側可動接点導通用のスルーホールとなると共に、固定接点用貫通孔7bが下側固定接点導通用のスルーホールとなるので、下基板3の下面側に配した回路基板と上記接点との電気的接続を容易に図ることができる。
【0045】
さらに、本実施形態の多方向入力スイッチ装置10では、プッシュスイッチ11の直上に配された中央部13Aと上側可動接点Yの直上に配された外周部13Bとが一体に形成されたキートップ部材13と、多方向入力スイッチ部材1を上下動可能に支持するガイド枠部材14と、を備えているので、外周部13Bの一部を押圧することにより多方向入力スイッチ部材1で外周操作が可能であると共に、中央部13Aを押圧することによって多方向入力スイッチ部材1全体を押し下げてプッシュスイッチ11を押し下げることができる。
【0046】
したがって、多方向入力スイッチ部材1がプッシュスイッチ11と連動して押し下げられる機構であるため、中央のプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0047】
また、支持シート17の上面かつ可動接点バネ16の頭頂部の直上に形成された上部突起部18を備えているので、キートップ部材13の中央部13Aが押し下げられた際に多方向入力スイッチ部材1が上部突起部18を押し下げるので、上部突起部18が常に可動接点バネ16の頭頂部、すなわち中心を押圧して弾性反転させることができる。したがって、良好なクリック感で正確にスイッチ操作が行われると共に、動作寿命を向上させることができる。
【0048】
さらに、上部電極部5および下部電極部2に電気的に接続されていると共にプッシュスイッチ11の電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板15を備えているので、上下動する多方向入力スイッチ部材1と中央スイッチ用基板12との配線を行うことができる。
【0049】
次に、本発明に係る多方向入力スイッチ部材および多方向入力スイッチ装置の第2実施形態について、図9から図14を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0050】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、中央部13Aと外周部13Bとが一体に成形されたキートップ部材13に対応した多方向入力スイッチ部材1および多方向入力スイッチ装置10であるのに対し、第2実施形態の多方向入力スイッチ部材21および多方向入力スイッチ装置20は、図9から図11に示すように、中央部23Aと外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられたセパレートタイプのキートップ部材23に対応したものである点である。
【0051】
すなわち、第2実施形態の多方向入力スイッチ装置20は、プッシュスイッチ11の直上に下部電極部2の中心部を配して中央スイッチ用基板12上に設置された多方向入力スイッチ部材21と、プッシュスイッチ11の直上に配され下方に突出した中央凸部23cを有する中央部23Aと該中央部23Aの外周に設けられ上側可動接点Yの直上に配された外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材23と、を備えている。
【0052】
また、第2実施形態の多方向入力スイッチ部材21は、プッシュスイッチ11の直上かつ上部電極部5および下部電極部2の中心に形成された中央貫通孔21aを有している。
そして、中央凸部23cは、中央貫通孔21aを挿通してプッシュスイッチ11の頭頂部に当接している。
【0053】
なお、上記中央貫通孔21aは、上基板26の中央に形成された上基板貫通孔6aと、スペーサー4の中央に形成されたスペーサー貫通孔4bと、下基板23の中央に形成された下基板貫通孔23aと、固定シート29の中央に形成された固定シート貫通孔29aと、で構成されている。
上記キートップ部材23は、中央部23Aと外周部23Bとの境界で上層部13aと下層部13bとが分断されており、互いに独立して上下動可能になっている。
【0054】
上記多方向入力スイッチ部材21は、中央スイッチ用基板12上に直接設置されており、下基板23の下面と中央スイッチ用基板12の上面とに形成された互いに対応する各電極が半田等で接合されている。すなわち、第2実施形態では、多方向入力スイッチ部材21と中央スイッチ用基板12とは互いにフレキシブルプリント基板15を使わずに電気的に接続されている。
【0055】
なお、第2実施形態の固定シート29および支持シート27には、対応する可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bの直下に導通用貫通孔29bおよび導通用貫通孔27aがそれぞれ形成されている。また、中央スイッチ用基板22の絶縁性基板部22Aおよび接着シート22Bには、対応する可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bの直下に導通用貫通孔22aおよび導通用貫通孔22bがそれぞれ形成されている。さらに、互いに連通する導通用貫通孔29b,27a,22a,22b内には、Agペースト等の導電性充填材(図示略)が充填されている。
【0056】
すなわち、互いに連通する導通用貫通孔29b,27a,22a,22b内に充填された導電性充填材によって可動接点用貫通孔7aおよび固定接点用貫通孔7bが絶縁性基板部22Aの下面まで配線されている。
なお、第2実施形態では、多方向入力スイッチ部材21が中央スイッチ用基板12上に固定されているので、ガイド枠部材14が不要である。
【0057】
上述したように第2実施形態の多方向入力スイッチ装置20では、多方向入力スイッチ部材21が、プッシュスイッチ11の直上かつ上部電極部5および下部電極部2の中心に形成された中央貫通孔21aを有し、キートップ部材13の中央凸部23cが、中央貫通孔21aを挿通してプッシュスイッチ11の頭頂部に当接しているので、中央凸部23cを押し下げることで中央凸部23cの下端で直接プッシュスイッチ11を押し下げることができる。
【0058】
また、中央貫通孔21a内にプッシュスイッチ11を配して多方向入力スイッチ部材21を中央スイッチ用基板22上に直接設置することができるので、少なくともプッシュスイッチ11の高さ分だけ全体を薄型化することができる。さらに、キートップ部材23は、中央凸部23cと外周部23Bとが互いに個別に上下動可能に設けられているので、中央凸部23cによるプッシュスイッチ操作時に不要な外周操作がされてしまう誤動作を防止することができる。
【0059】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0060】
例えば、上記各実施形態では、絶縁性基板部に接着シートを貼り付けて接着シートの円形孔によって収納凹部を形成すると共に支持シートを接着シートに貼り付けているが、接着シートを用いず、絶縁性基板部自体に円形状の穴部(収納凹部)を形成して、支持シートを絶縁性基板部の上面に接着剤等で直接貼り付けても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1,21…多方向入力スイッチ部材、2…下部電極部、3,23…下基板、4…スペーサー、4a…スペーサー側貫通孔、5…上部電極部、6,26…上基板、7a…可動接点用貫通孔、7b…固定接点用貫通孔、8a…上基板側配線部、10,20…多方向入力スイッチ装置、11…プッシュスイッチ、12,22…中央スイッチ用基板、12a…収納凹部、12b…中央接点、12c…周辺接点、13,23…キートップ部材、13A,23A…キートップ部材の中央部、13B,23B…キートップ部材の外周部、13c,23c…キートップ部材の中央凸部、14…ガイド枠部材、15…フレキシブルプリント基板、16…可動接点バネ、17,27…支持シート、18…上部突起部、21a…中央貫通孔、X…下側固定接点、Y…上側可動接点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に下部電極部がパターン形成された下基板と、
前記下部電極部の直上を除いて前記下基板上に設置された薄板状のスペーサーと、
該スペーサー上に設置され下面かつ前記下部電極部の直上に上部電極部がパターン形成された可撓性の上基板と、を備え、
前記下部電極部が、円環状に配列された複数の下側固定接点で構成され、
前記上部電極部が、対応する前記下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されていることを特徴とする多方向入力スイッチ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向入力スイッチ部材において、
前記上基板の下面に、対応する前記上側可動接点に接続された複数の上基板側配線部がパターン形成され、
前記スペーサーに、対応する前記上基板側配線部の直下に配された複数のスペーサー側貫通孔が形成され、
前記下基板に、対応する前記スペーサー側貫通孔の直下に配された複数の可動接点用貫通孔と、対応する前記下側固定接点の直下に配された複数の固定接点用貫通孔と、が形成され、
前記スペーサー側貫通孔、前記可動接点用貫通孔および前記固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されていることを特徴とする多方向入力スイッチ部材。
【請求項3】
プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、
前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心を配して前記中央スイッチ用基板上に配された請求項1または2に記載の多方向入力スイッチ部材と、
前記プッシュスイッチの直上に配された中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、
前記多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項4】
プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、
前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心部を配して前記中央スイッチ用基板上に設置された請求項1または2に記載の多方向入力スイッチ部材と、
前記プッシュスイッチの直上に配され下方に突出した中央凸部を有する中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材と、を備え、
前記多方向入力スイッチ部材が、前記プッシュスイッチの直上かつ前記上部電極部および前記下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、
前記中央凸部が、前記中央貫通孔を挿通して前記プッシュスイッチの頭頂部に当接していることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項5】
請求項3に記載の多方向入力スイッチ装置において、
前記プッシュスイッチが、前記中央スイッチ用基板の上面に形成された収納凹部と、
前記収納凹部内の中央に設けられた中央接点及び前記収納凹部の内周縁側に設けられた周辺接点と、
前記中央接点を中央直下に配して前記周辺接点上に架設され押圧によって弾性反転して下方の前記中央接点に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネと、
前記収納凹部の開口部を閉塞して前記中央スイッチ用基板上に接着された可撓性の支持シートと、
該支持シートの上面かつ前記可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項6】
請求項3又は5に記載の多方向入力スイッチ装置において、
一端が前記多方向入力スイッチ部材に固定され前記上部電極部および前記下部電極部に電気的に接続されていると共に他端が前記中央スイッチ用基板に固定され前記プッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項1】
上面に下部電極部がパターン形成された下基板と、
前記下部電極部の直上を除いて前記下基板上に設置された薄板状のスペーサーと、
該スペーサー上に設置され下面かつ前記下部電極部の直上に上部電極部がパターン形成された可撓性の上基板と、を備え、
前記下部電極部が、円環状に配列された複数の下側固定接点で構成され、
前記上部電極部が、対応する前記下側固定接点の直上にそれぞれ配されて円環状に配置された複数の上側可動接点で構成されていることを特徴とする多方向入力スイッチ部材。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向入力スイッチ部材において、
前記上基板の下面に、対応する前記上側可動接点に接続された複数の上基板側配線部がパターン形成され、
前記スペーサーに、対応する前記上基板側配線部の直下に配された複数のスペーサー側貫通孔が形成され、
前記下基板に、対応する前記スペーサー側貫通孔の直下に配された複数の可動接点用貫通孔と、対応する前記下側固定接点の直下に配された複数の固定接点用貫通孔と、が形成され、
前記スペーサー側貫通孔、前記可動接点用貫通孔および前記固定接点用貫通孔内に、導電性充填材が充填されていることを特徴とする多方向入力スイッチ部材。
【請求項3】
プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、
前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心を配して前記中央スイッチ用基板上に配された請求項1または2に記載の多方向入力スイッチ部材と、
前記プッシュスイッチの直上に配された中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが一体に形成されたキートップ部材と、
前記多方向入力スイッチ部材を上下動可能に支持するガイド枠部材と、を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項4】
プッシュスイッチが上面に設けられた中央スイッチ用基板と、
前記プッシュスイッチの直上に前記下部電極部の中心部を配して前記中央スイッチ用基板上に設置された請求項1または2に記載の多方向入力スイッチ部材と、
前記プッシュスイッチの直上に配され下方に突出した中央凸部を有する中央部と該中央部の外周に設けられ前記上側可動接点の直上に配された外周部とが互いに個別に上下動可能に設けられたキートップ部材と、を備え、
前記多方向入力スイッチ部材が、前記プッシュスイッチの直上かつ前記上部電極部および前記下部電極部の中心に形成された中央貫通孔を有し、
前記中央凸部が、前記中央貫通孔を挿通して前記プッシュスイッチの頭頂部に当接していることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項5】
請求項3に記載の多方向入力スイッチ装置において、
前記プッシュスイッチが、前記中央スイッチ用基板の上面に形成された収納凹部と、
前記収納凹部内の中央に設けられた中央接点及び前記収納凹部の内周縁側に設けられた周辺接点と、
前記中央接点を中央直下に配して前記周辺接点上に架設され押圧によって弾性反転して下方の前記中央接点に接触する上方凸形のドーム状金属薄板である可動接点バネと、
前記収納凹部の開口部を閉塞して前記中央スイッチ用基板上に接着された可撓性の支持シートと、
該支持シートの上面かつ前記可動接点バネの頭頂部の直上に形成された上部突起部と、を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【請求項6】
請求項3又は5に記載の多方向入力スイッチ装置において、
一端が前記多方向入力スイッチ部材に固定され前記上部電極部および前記下部電極部に電気的に接続されていると共に他端が前記中央スイッチ用基板に固定され前記プッシュスイッチの電極に電気的に接続されているフレキシブルプリント基板を備えていることを特徴とする多方向入力スイッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−165412(P2011−165412A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24910(P2010−24910)
【出願日】平成22年2月6日(2010.2.6)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月6日(2010.2.6)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】
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