説明

多方向操作スイッチ

【課題】主に自動車内の各種電子装置の操作に用いられる多方向操作スイッチに関し、簡易な構成で、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】釦体26の外周に外方へ延出する複数のアーム部26Aを設けると共に、保持体22上面にアーム部26Aに対向した規制部22Cを設け、アーム部26A下面に突部26Bを、規制部22C上面に溝部22Dを各々形成し、操作体25が中立状態のときは、全ての突部26Bと溝部22Dを対向して配置させ、釦体26が下方へ移動可能となると共に、操作体25が揺動したときには、揺動方向を除く配置の突部26Bが溝部22D以外の当接部22Eに対向して、釦体26の下方への移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車内の各種電子装置の操作に用いられる多方向操作スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車において、ステアリングホイール近傍に所謂ステアリングスイッチを装着し、ハンドルを握ったまま指でこのスイッチを操作して、オーディオ装置やエアコン等の電子装置を操作することが広く行われており、操作が良好で、スイッチ操作が確実なものが求められている。
【0003】
このような従来の多方向操作スイッチについて、図9及び図10を用いて説明する。
【0004】
図10は従来の多方向操作スイッチの断面図であり、同図において、1は略箱状のケース、2はケース1下面に配置された保持体で、略枠状の第一の駆動体3の軸孔3Aが保持体2上面の左右に各々突出した軸支部2Aに回動可能に軸支されている。
【0005】
そして、略円筒状の第二の駆動体4が第一の駆動体3の内側に配置され、第二の駆動体4の前後方向に設けられた軸部(図示せず)が第一の駆動体3の軸孔(図示せず)に軸支されて、第二の駆動体4が第一の駆動体3に対し回動可能に保持されている。
【0006】
また、5は略円盤状の操作体、6は略円筒状の釦体で、操作体5がケース1内の第二の駆動体4の外周に係止されると共に、釦体6が第二の駆動体4の内側と操作体5の開口内を挿通して上下動可能に保持されている。
【0007】
さらに、7はプッシュスイッチ等の中央スイッチ接点、8は同じくプッシュスイッチ等の複数の外スイッチ接点で、配線基板9上に中央スイッチ接点7を中心として外スイッチ接点8が例えば左右前後の4方向に所定の等距離の位置に配置されている。
【0008】
そして、10は押圧体で、第二の駆動体4の揺動に伴い、第二の駆動体4の外周に突出した押圧部4Aが押圧体10を介して対応する外スイッチ接点8の電気的接離が、釦体6の上下動に伴い、釦体6内に延出した押圧部6Aが下方の押圧体10を介して、下方の中央スイッチ接点7の電気的接離が、各々行われるようにして多方向操作スイッチ11が構成されている。
【0009】
そして、このように構成された多方向操作スイッチ11が、図9のステアリングの平面図に示すように、操作体5の上面を手前にして、ステアリングホイール15と中央のパッド15Aの間の、例えば、左側のスポーク15Bに取付けられて自動車に装着されると共に、中央スイッチ接点7や外スイッチ接点8等がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0010】
以上の構成において、ステアリングホイール15を握りながら親指を伸ばし、釦体6を押圧操作すると、押圧体10を介して下方の中央スイッチ接点7がON動作して、例えば、ラジオや音楽CDなどの入力モードが切換わる。
【0011】
また、図10に示す中立状態で、前後左右の操作部5Aの内、例えば左側の操作部5Aを押圧操作すると、操作体5と共に第二の駆動体4が左下方へ揺動し、左側の外スイッチ接点8がON動作して、これに応じて車両の電子回路によって、例えば、オーディオの選曲やラジオの周波数が切換わるように構成されていた。
【0012】
なお、操作体5が揺動した状態で誤って釦体6を押圧操作すると、釦体6は下方へ移動して中央スイッチ接点7がON動作し、意図せず入力モードが切換わってしまうという誤操作が生じる可能性があった。
【0013】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−87290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の多方向操作スイッチ11においては、操作体5の操作部5Aを押圧操作して操作体5を揺動操作させたときに、誤って釦体6を押圧操作すると、釦体6が下方の中央スイッチ接点7をON動作し、例えば入力モードが意図せず切換わってしまうという誤操作が生じる可能性があるという課題があった。
【0016】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作体が揺動操作したときには、釦体の下方への移動が規制されて、中央スイッチ接点が動作することがなく、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能な多方向操作スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、操作体の開口部内に上下動可能に配置された釦体の外周に、外方へ延出する複数のアーム部を設けると共に、保持体上面にアーム部に対向した規制部を設け、アーム部下面または規制部上面のいずれか一方に突部を、他方に溝部を形成し、操作体が中立状態では、全ての突部と溝部を対向配置させ、釦体が保持体に対し下方へ移動可能となると共に、操作体が揺動したときには、揺動方向を除く配置の突部が溝部以外の箇所に対向して、釦体の下方への移動を規制するようにして多方向操作スイッチを構成したものであり、操作体が中立状態にあるときには、釦体を押圧操作すると、例えば釦体のアーム部に設けた全ての突部が規制部の溝部に挿入して釦体が下方へ移動し、中央スイッチ接点の電気的接離が行われ、操作体が揺動したときには、揺動方向を除く配置のアーム部の突部が溝部以外の箇所に対向して、釦体を押圧操作するとアーム部の突部が規制部の溝部以外の箇所に当接して、釦体の下方への移動が規制されるため、操作体を揺動操作している状態では釦体を誤って押下げて、意図せず中央スイッチ接点が動作することがなく、簡易な構成で、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能な多方向操作スイッチを得ることができるという作用を有する。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、操作体と釦体を一体に形成したものであり、部品点数が少なく、組立ても簡易で安価なものにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、簡易な構成で、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能な多方向操作スイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態による多方向操作スイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同要部断面図
【図4】同釦体を押圧操作時の断面図
【図5】同操作体を揺動操作時の断面図
【図6】同要部平面図
【図7】同他実施の形態による多方向操作スイッチの要部平面図
【図8】同他実施の形態による多方向操作スイッチの要部斜視図
【図9】ステアリングの平面図
【図10】従来の多方向操作スイッチの断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9を用いて説明する。
【0023】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による多方向操作スイッチの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、21は上面に開口孔21Aを有する略箱状でポリカーボネート(以降、PCと記載する)やアクリロニトリルブタジエンスチレン(以降、ABSと記載する)などの絶縁樹脂製のケース、22はケース21下面に配置されたABSやポリブチレンテレフタレート(以降、PBTと記載する)あるいはポリオキシメチレン(以降、POMと記載する)等の絶縁樹脂製の保持体である。
【0025】
そして、23は外形が略四角形の略枠状でPOMやPBT等の絶縁樹脂製の第一の駆動体で、対向する両側壁に設けられた一対の軸孔23Aが、保持体22上面に背中合わせで対向した一対の軸支部22Aに軸支されて、第一の軸線22Bが構成され、第一の駆動体23が保持体22に対し第一の軸線22B回りに回動可能に保持されている。
【0026】
また、第一の駆動体23の一対の軸孔23Aと略直交した方向に一対の軸孔23Bが設けられている。
【0027】
そして、24は略中空円筒状でPOMやPBT等の絶縁樹脂製の第二の駆動体で、第一の駆動体23の一対の軸孔23Bに対応して一対の軸部24Aが外方に突出すると共に、軸部24Aが軸孔23Bに各々軸支されて、第二の軸線24Bが構成され、第二の駆動体24が第一の駆動体23に対し第二の軸線24B回りに回動可能に保持されている。
【0028】
つまり、保持体22に対し第一の駆動体23が第一の軸線22B回りに回動すると共に、第二の駆動体24が第一の駆動体23に対し、第一の軸線22Bと略直交する配置の第二の軸線24B回りに回動することによって、第二の駆動体24は保持体22上面に対し、複数方向へ揺動可能に保持されている。
【0029】
また、24Dは第二の駆動体24の外周から突出した押圧部で、一対の軸部24Aの配置方向から45度、すなわち第一の軸線24Bから45度傾いた4箇所の位置に配置されている。
【0030】
さらに、25は略円盤状でPC等の絶縁樹脂製の操作体で、略中央には略筒状の開口部25Aが設けられると共に、開口部25Aの周囲には前後左右に所定の記号や文字などが表示された操作部25Bが各々形成され、開口部25Aの下部に設けた孔状の係止部25Cが、下方の第二の駆動体24外側面の係合部24Cに係合して、操作体25が第二の駆動体24に係止固定されている。
【0031】
そして、26は略円筒状でPCやABS等の絶縁樹脂製の釦体で、第二の駆動体24の内側と操作体25の開口部25A内を挿通して、釦体26の係合孔26Cに第二の駆動体24内側面の係止部24Eが係合し、釦体26が第二の駆動体24内に所定範囲を上下動可能に保持されている。
【0032】
なお、釦体26外周の前後左右の4方向には、第二の駆動体24の押圧部24Dと上下方向に対向する位置に、外方へアーム部26Aが各々延出している。
【0033】
そして、アーム部26Aの先端部下面には下方へ突出する略リブ状の突部26Bが各々形成され、これらのアーム部26Aに対向した下方には、保持体22の上面から略壁状の規制部22Cが上方へ各々突出している。
【0034】
また、図3の前側のアーム部26A先端部における断面図に示すように、規制部22C上面には突部26Bと上下方向に対向し、所定幅で所定深さの溝部22Dが形成されると共に、溝部22Dの両側には溝部22D上端から下方へ略円弧状または略直線状に傾斜した当接部22Eが形成されている。
【0035】
さらに、22Fは略L字状のリブが溝部22Dを中心として対称に立設した案内部で、アーム部26Aの先端部近傍の外周に沿って対向した案内部22Fの幅W1は、アーム部26Aの先端部の幅より僅かに広く形成されている。
【0036】
そして、27はプッシュスイッチ等の中央スイッチ接点、28は同じくプッシュスイッチ等の複数の外スイッチ接点で、押釦27Aや押釦28Aが上方へ付勢されて中央スイッチ接点27や外スイッチ接点28の上部に各々設けられている。
【0037】
また、29は紙フェノールやガラス入りエポキシ等の配線基板で、上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成され、配線基板29上面には、中央スイッチ接点27を中心として、外スイッチ接点28が互いに直交した前後左右の4方向に所定の等距離の位置で、第二の駆動体24の押圧部24Dに各々対向して配設されると共に、LED等の発光素子33等が所定位置に実装されている。
【0038】
さらに、30はPOM等の絶縁樹脂製の押圧体で、上部が略円柱状で下部が略円板状に形成され、保持体22の中央ガイド部22Gや外ガイド部22H内を上下動可能に各々挿通している。
【0039】
そして、釦体26内側の下方へ延出した押圧部26Dが押圧体30を介して中央スイッチ接点27の押釦27Aに当接すると共に、第二の駆動体24の押圧部24Dが押圧体30を介して外スイッチ接点28の押釦28Aに各々当接している。
【0040】
また、釦体26を押圧操作すると、釦体26が第二の駆動体24内側にガイドされて下方へ移動し、押圧部26Dを介して中央スイッチ接点27の押釦27Aを押下げて、中央スイッチ接点27の電気的接離が行われ、操作体25を揺動操作して、第二の駆動体24を第一の軸線22Bと第二の軸線24Bの略中間方向へ揺動させると、押圧部24Dが対向する外スイッチ接点28の押釦28Aを押下げて、外スイッチ接点28の電気的接離が行われるようになっている。
【0041】
なお、第一の軸線22Bと第二の軸線24Bは操作体25が中立状態で保持体22上面と略平行となる同一平面上に配置されると共に、第一の軸線22Bと第二の軸線24Bの交点を、押圧部26Dとこれに当接する押圧体30の当接位置に略一致させている。
【0042】
このことによって、操作体25を各方向へ揺動操作した際に、押圧部26Dの先端が所定の位置に安定して留まり、上下方向や横方向に移動し難いため、操作体25の揺動操作に伴って釦体26先端部が下方へ移動し、押圧体30を介して押釦27Aを押下げて、中央スイッチ接点27を動作させるようなスイッチ接点の誤動作は生じ難い。
【0043】
なお、保持体22の軸支部22Aに軸支され、第一の軸線22B回りに回動する第一の駆動体23と、第一の軸線22Bと直交する第二の軸線24B回りに回動する第二の駆動体24を設けて、操作体25とこれに係止された第二の駆動体24を、第一の軸線22Bと第二の軸線24Bとの略中間の方向へ揺動させる構成とすることによって、多方向操作スイッチをより小形のものにすることができる。
【0044】
つまり、第一の軸線22Bや第二の軸線24B方向に操作体25を揺動させる構成とした場合には、軸支部22Aと規制部22Cや押圧部24D及び外ガイド部22Hを、中央ガイド部22Gを中心として外方へ延びる同一直線上に順次配置する必要性から、多方向操作スイッチ全体が大きくなるのに対し、上述したように、保持体22の一対の軸支部22Aを、前後左右に配置された規制部22Cや押圧部24D及び外ガイド部22Hの配置方向の間の略中間位置に配置できるため、多方向操作スイッチ全体がより小形のものとなる。
【0045】
また、31は複数のビス、32はPBTやABS等の絶縁樹脂製のカバーで、カバー32が配線基板29の下面を覆うと共に、ビス31によってケース21や保持体22、配線基板29及びカバー32が締結固定されて多方向操作スイッチ40が構成されている。
【0046】
そして、このように構成された多方向操作スイッチ40が、図9のステアリングの平面図に示すように、操作体25の上面を手前にして、ステアリングホイール15と中央のパッド15Aの間の、例えば、左側のスポーク15Bに取付けられて自動車に装着されると共に、中央スイッチ接点27や外スイッチ接点28等がコネクタやリード線(図示せず)等を介して、車両の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0047】
以上の構成において、ステアリングホイール15を握りながら親指を伸ばし、図1に示すように、操作体25がいずれの方向へも傾いていない中立状態で、釦体26上面を押圧操作すると、図4(a)、(b)の断面図に示すように、釦体26は前後左右へ延出した全てのアーム部26Aの突部26Bが、下方に対向した規制部22Cの溝部22D内に挿入して、釦体26が第二の駆動体24内側にガイドされて下方へ移動すると共に、押圧部26Dが押圧体30を介して押釦27Aを押下げて、中央スイッチ接点27のON動作が行われ、例えば、ラジオや音楽CDなどの入力モードが順次切換わる。
【0048】
また、操作体25が中立状態から、前後左右の操作部25Bの内、例えば左側の操作部25Bを押圧操作すると、操作体25に係止された第二の駆動体24が第一の駆動体23に対し第二の軸線24B回りに回動すると共に、第一の駆動体23が保持体22に対し第一の軸線22B回りに回動して、第二の駆動体24が第一の軸線22Bと第二の軸線24Bとの略中間方向である左側に揺動する。
【0049】
そして、このとき、図5(a)の断面図に示すように、第二の駆動体24と一体に揺動した釦体26は、左側のアーム部26Aの突部26Bが対向する規制部22Cの溝部22D内に挿入して、釦体26と第二の駆動体24がさらに左下方に揺動すると共に、左側のアーム部26Aの直下の押圧部24Dが下方へ傾いて、押圧体30を介して左側の押釦28Aを押下げ、外スイッチ接点28がON動作し、これに応じて車両の電子回路によって、例えば、オーディオ装置の音楽CD内の選曲やラジオの周波数が降順に切換わる。
【0050】
また、このように操作体25が左側に揺動したときには、図5(b)に示すように、釦体26の揺動方向と直交する方向である前後方向のアーム部26Aは、下方の規制部22Cに対し左方向へ移動すると共に、突部26Bも溝部22Dの上方からずれて溝部22D左方向の当接部22Eに対向するため、このとき誤って釦体26を押圧操作したとしても、突部26Bは下方の当接部22Eに当接して、これ以上、釦体26が下方へ移動できないように規制されている。
【0051】
つまり、操作体25が中立状態では、釦体26を押圧操作すると釦体26は下方へ移動して、中央スイッチ接点27に対するスイッチ操作が可能であるが、操作体25を揺動操作したときには、誤って釦体26に触れてこれを押圧操作しても、釦体26は揺動方向とは異なる配置のアーム部26Aの突部26Bが、規制部22Cの溝部22D以外の当接部22Eに当接して、釦体26の下方への移動が規制されるため、中央スイッチ接点27に対する誤操作が生じないようになっている。
【0052】
そして、同様に操作体25を右側や前側または後側を押圧操作すると、第二の駆動体24と釦体26が同じく右側や前後側の下方へ揺動すると共に、第二の駆動体24の揺動方向の押圧部24Dが対向する外スイッチ接点28をON動作して、例えば、右側への揺動操作に伴い音楽CD内の選曲やラジオの周波数が昇順に切換わり、また、前後側への揺動操作に伴い、オーディオ装置の音量が増減するなど、操作体25の左右または前後への押圧操作に応じて、オーディオ装置の各種操作がステアリングホイール15を握りながら親指等で容易に行われる。
【0053】
なお、操作体25を前後左右の正規の揺動方向の内、例えば左側へ揺動操作したときには、図6(a)の操作体25を除いた平面図に示すように、釦体26が中立状態から、図6(b)に示すように、釦体26の揺動方向となる左側のアーム部26Aの先端部は、対向する規制部22C上部の案内部22Fの外周側の幅W1に案内されて、正規の揺動方向へ揺動するが、例えば、図6(c)に示すように、左後側の斜め方向へ操作体25を揺動操作したときには、アーム部26Aの先端部が左側と後側の案内部22Fの外周部の各内側に当接して、これ以上斜め方向へ揺動できないように規制され、左側と後側の二つの外スイッチ接点28が誤って同時に動作することがなく、正規の揺動方向へ揺動操作したときのみ、対応する所定の外スイッチ接点28のみが動作するように構成されている。
【0054】
また、対称に配置された略L字状のリブからなる案内部22Fを、図7の平面図に示すように、強度上はやや弱くはなるが、溝部22Dの両側の外周側に幅W1を有する一対の略長方形状のリブで形成してもよい。
【0055】
このように本実施の形態によれば、釦体26の外周に外方へ延出する複数のアーム部26Aを設けると共に、保持体22上面にアーム部26Aに対向した規制部22Cを設け、アーム部26A下面に突部26Bを、規制部22C上面に溝部22Dを各々形成し、操作体25が中立状態のときには、全ての突部26Aと溝部22Dを対向して配置させ、釦体26が保持体22に対し下方へ移動可能となると共に、操作体25が揺動したときには、揺動方向を除く配置の突部26Bがずれて溝部22D以外の当接部22Eに対向して、釦体26の下方への移動を規制して多方向操作スイッチを構成することによって、操作体26が中立状態にあるときには、アーム部26Aに設けた突部26Bが規制部22Cの溝部22Dに挿入して釦体26が下方へ移動し、中央スイッチ接点27の動作が可能で、操作体25が揺動したときには、揺動方向を除く配置のアーム部26Aの突部26Bが当接部22Eに対向して、釦体26を押圧操作したとしても突部26Bが溝部22D以外に当接部22Eに当接して、釦体26の下方への移動が規制されるため、操作体25を揺動操作している状態では誤って釦体26を押圧操作しても、意図せず中央スイッチ接点27が動作することがなく、簡易な構成で、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能な多方向操作スイッチを実現することができる。
【0056】
また、以上の説明では、操作体25の開口部25Aに釦体26を配置して、釦体26への押圧操作に伴い釦体26が上下動して下方の中央スイッチ接点27を動作させるものとして説明したが、図8の要部斜視図に示すように、操作体と釦体の個別の部品を係止固定したり、あるいは操作体と釦体を一金型で樹脂成形するなどして、これらを一体に形成した操作体35としても、本発明の実施は可能であり、操作体35が中立状態で操作体35上面を押圧操作すると、操作体35全体が下方へ移動して中央スイッチ接点27と複数の外スイッチ接点28の動作が行われるようにすることによって、さらに部品点数が少なくでき、組立ても簡易なものにすることができる。
【0057】
なお、以上の説明では、アーム部26A下面に突部26Bを、規制部22C上面に溝部22Dを各々設けた構成として説明したが、アーム部下面に溝部とその両側に当接部を、規制部22C上面に突部を各々設けたものとしても本発明の実施は可能である。
【0058】
また、以上の説明では、第二の駆動体24に係止された操作体25が、第一の軸線22Bと第二の軸線24Bの二軸により揺動操作する多方向操作スイッチとして説明したが、例えば操作体単独あるいは操作体が係止される駆動体とこれを揺動保持する保持体において、保持体の上面部と操作体または駆動体の下面部が互いに略球面状で摺動し合い、多方向へ揺動操作する構成など、様々な構成の多方向操作スイッチにおいても本発明の実施は可能である。
【0059】
さらに、中央スイッチ接点27や外スイッチ接点28の押釦27A、28Aは押圧体30を介して押圧部26Dや24Dにより押圧操作されるものとして説明したが、押釦を上方へ延出して、押圧体と押釦を一体形成し、釦体や第二の駆動体の押圧部が直接、各スイッチ接点の押釦を押圧操作して各スイッチ接点を動作させる構成としてもよい。
【0060】
そして、操作体25が前後左右の4方向へ揺動操作するものとして説明したが、方向に応じて保持体の規制部や釦体のアーム部、外スイッチ接点等を適宜配設して、4方向以外の6方向あるいは8方向など、複数の操作方向へ揺動操作可能なものとしても、本発明の実施は可能である。
【0061】
そして、中央スイッチ接点27や外スイッチ接点28として、単品のプッシュスイッチを用いた構成として説明したが、配線基板の上面にカーボン等によって固定接点を形成し、この上方に略ドーム状で導電金属薄板製の可動接点を載置したものや、あるいは、下面に可動接点が形成された略ドーム状の可撓性のゴム接点を用いたもの等、様々なスイッチ接点を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明による多方向操作スイッチは、簡易な構成で、スイッチ接点の誤操作を防ぎ、確実な操作が可能なものにすることができ、主に自動車の各種電子装置の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0063】
21 ケース
21A 開口孔
22 保持体
22A 軸支部
22B 第一の軸線
22C 規制部
22D 溝部
22E 当接部
22F 案内部
22G 中央ガイド部
22H 外ガイド部
23 第一の駆動体
23A、23B 軸孔
24 第二の駆動体
24A 軸部
24B 第二の軸線
24C 係合部
24E、25C 係止部
24D、26D 押圧部
25、35 操作体
25A 開口部
25B 操作部
26 釦体
26A アーム部
26B 突部
26C 係合孔
27 中央スイッチ接点
27A、28A 押釦
28 外スイッチ接点
29 配線基板
30 押圧体
31 ビス
32 カバー
33 発光素子
40 多方向操作スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略中央に開口部が設けられた操作体と、この操作体の下方に配置され、前記操作体を複数方向へ揺動可能に保持する保持体と、前記操作体の揺動操作により、各々電気的接離が行われる複数の外スイッチ接点と、前記操作体の前記開口部内に上下動可能に配置された釦体と、この釦体の上下動により電気的接離が行われる中央スイッチ接点からなり、前記釦体の外周に外方へ延出する複数のアーム部を設けると共に、前記保持体上面に前記アーム部に対向した規制部を設け、前記アーム部下面または前記規制部上面のいずれか一方に突部を、他方に溝部を形成し、前記操作体が中立状態では、全ての前記突部と前記溝部を対向配置させ、前記釦体が前記保持体に対し下方へ移動可能となると共に、前記操作体が揺動したときには、揺動方向を除く配置の前記突部が前記溝部以外の箇所に対向して、前記釦体の下方への移動を規制した多方向操作スイッチ。
【請求項2】
操作体に釦体を一体に形成した請求項1に記載の多方向操作スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−48876(P2012−48876A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187818(P2010−187818)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】