説明

多様な極性/非極性溶媒混和性のイオン性液体及びその製造方法

【課題】多様な極性/非極性溶媒混和性のイオン性液体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】化学式:(Cat)(R’COO)で表示される化合物を1種または2種以上含むことを特徴とするイオン性液体である。ここで、該Catは、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、スルホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、またはそれらのうち2以上の混合物から選択される陽イオンであり、該R’は、1以上の不飽和結合を含み、かつ4ないし30個の炭素原子を有する炭化水素である。該イオン性液体及びその製造方法は、多様な極性及び/または非極性溶媒に部分的にまたは完全に混和性があり、常温及び低温で、溶媒、溶媒添加剤、電解質、熱媒体、荷電体、熱媒体添加物、荷電体添加物、及び相移動触媒として使われ、製造コストが節減されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性液体及びその製造方法に係り、さらに詳細には、多様な極性及び/または非極性溶媒に、部分的にまたは完全に混和性があって、常温で相移動触媒(phase transfer catalyst)として使われ、製造コストが節減されうるイオン性液体及びその製造方法に関する。前記極性または非極性溶媒の例としては、水、アルコール類、酸類、オレフィン類、パラフィン類、芳香剤類、脂肪酸化合物類、アミン類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、ニトリル類及びニトロアルカン類のような多様な有機溶媒がある。
【背景技術】
【0002】
一般的にイオン性液体は、100℃以下で溶ける塩と定義されるが、かような低い融点特性のためにイオン性液体は、反応時に単独で、または他の物質と混合し、溶媒または共溶媒として使われている。イオン性液体は、陽イオンと陰イオンとから構成されており、それら陽イオン及び陰イオンの性質を変化させることによって、その物理的及び化学的特性が容易に調節できるので、多様な分野に広範囲に使われている。
【0003】
特許文献1、特許文献1、特許文献3には、非水溶性電池、電気化学キャパシタ、電気メッキ、触媒作用(catalysis)及び化学的分離の分野に使われうる特定タイプのイオン性液体が開示されている。イオン性液体は、分子ではない、単に一対のイオン(陽イオン及び陰イオン)から構成されるために、一般的な有機溶媒に比べ、高い選択性及び反応性を有するなど、かなり特異な特徴を示す。
【0004】
融点、沸点、粘度、溶解度及び極性のような溶媒特性は、化学反応だけではなく、他の使用分野の全体的な性能にも影響を及ぼす。これにより、イオン性液体の特性を使用分野に合うように調節するための多くの努力が傾けられてきた。前記特許文献2及び非特許文献1は、メタルハライドを含有する低温イオン性液体を開示している。イオン性液体のかような低い融点は、メタルハライドと四級アンモニウム塩との共融効果(eutectic effect)によって得られたものである。しかし、前記イオン性液体は低融点を有するが、メタル及びハライドのイオンの存在によって極性調節においては限界を示す。
【0005】
疎水性と親水性との均衡を調節することが、反応工学において他の重要な争点である。一般的なイオン性液体で、疎水性を調節するために、二種の伝統的な方法が使われてきた。まず、イオン性液体の疎水性は、イオン性液体において、陽イオンサイト(cation site)のアルキル鎖の長さを長くすることに増大することが可能である。択一的に、イオン性液体の陰イオンを他の陰イオンにイオン交換することによって、疎水性をさらに調節できる。例えば、BF、PF、または(CFSOのような陰イオンを有するイオン性液体が、水と容易に混ざらない強い疎水性を頻繁に示す。しかし、かような方法は、しばしばイオン性液体の融点と粘度とを増加させる問題点がある。
【0006】
最近には、一般的な有機溶媒の代替物質として、イオン性液体が大なる関心を集めている。このために、イオン性液体は、多様な使用環境でそれぞれの使用条件に合う安定性及び溶解度をいずれも具備せねばならない。ほとんどのイオン性液体は、室温で極性物質または非極性物質に選択的に混和性を有する。また、これまで極性物質と非極性物質とにいずれも混和性を有するイオン性液体は、ほとんど報告されていない。
【0007】
特許文献4は、アルキルスルフェート陰イオンを含有するイオン性液体を開示しており、ここで、前記イオン性液体は、相移動触媒として使われる。特に、前記イオン性液体の場合、非極性溶媒との混和性は、有機陽イオンまたはスルフェート陰イオンに位置するアルキル基により決定される。しかし、商業化の観点において、かようなイオン性液体は、高価なアルキルスルフェート陰イオンのために、経済的ではない。
【0008】
前述の溶媒特性を考慮するとき、化学反応及び電気化学的使用のための溶媒、及び/または熱/電荷伝達媒体などとして多様に使用するためには、多様な物質と混和性のあるイオン性液体が望ましい。さらに、従来技術に比べて低コストで製造できるイオン性液体がさらに望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,827,602号明細書
【特許文献2】米国特許第5,731,101号明細書
【特許文献3】米国特許第7,208,605号明細書
【特許文献4】米国特許第7,252,791号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Chem.-Eur.J.13,6495(2007),A.P.Abbott,J.C.Barron,K.S.Ryder,D.Wilson
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、多様な極性及び/または非極性溶媒に、部分的にまたは完全に混和性のあるイオン性液体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は常温で、相移動触媒として使われうるイオン性液体及びその製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、製造コストが節減しうるイオン性液体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記のような課題を解決するために本発明は、下記化学式1で表示される化合物を1種または2種以上含むイオン性液体を提供する:
【0015】
(化1)
(Cat)(R’COO
【0016】
前記Catは、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、スルホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、またはそれらのうち2以上の混合物から選択される陽イオンであり、前記R’は、1以上の不飽和結合を含み、かつ4ないし30個の炭素原子を有する炭化水素である。
【0017】
本発明の一具現例によれば、前記Catは、下記化学式2で表示される陽イオンである:
【0018】
(化2)
(R
【0019】
前記Zは窒素またはリンであり、前記R、R、R、及びRは、それぞれ線形または分枝型のアルキル基、アルキレン基、アリル基、ベンジル基、フェニル基またはシクロアルキル基である。
【0020】
本発明の他の具現例によれば、前記R’COO−は、クロトネート(crotonate)基、ウンデシレネート(undecylenate)基、ミリストレイン酸(myristoleate)基、パルミトレイン酸(palmitoleate)基、オレイン酸(oleate)基、リノール酸(linoleate)基、リノレン酸(linolenate)基、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoate)基、エルケート(erucate)基、アラキドン酸(arachidonate)基、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoate)基及びそれらの混合物からなる群から選択される陰イオンである。
【0021】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記イオン性液体は、30℃以下の融点を有する。
【0022】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記イオン性液体は、溶媒、溶媒の添加剤、相移動触媒、電解液、熱媒体または荷電体、または熱媒体または荷電体の添加物として使われる。
【0023】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記イオン性液体は、水、アルコール類、酸類、オレフィン類、パラフィン類、芳香剤類、脂肪酸化合物類、アミン類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、ニトリル類、ニトロアルカン類、またはそれらの混合物を含む溶媒と混和性がある。
【0024】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記イオン性液体は、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、アリルトリブチルアンモニウムウンデシレネート、トリエチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルブチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルプロピルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、及びヘキシルトリブチルアンモニウムオレエートからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の望ましい具現例によるイオン性液体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0026】
本具現例によるイオン性液体は、下記化学式1で表示される化合物を1種または2種以上含む。
【0027】
(化1)
(Cat)(R’COO
【0028】
ここで、前記Catは、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、スルホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、またはそれらのうち2以上の混合物から選択される陽イオンである。
【0029】
具体的に、前記Catは、下記化学式2で表示される陽イオンである。
【0030】
(化2)
(R
【0031】
ここで、前記Zは窒素またはリンであり、前記R、R、R及びRは、それぞれ線形または分枝型のアルキル基(望ましくは、C−Cアルキル基)、アルキレン基、アリル基、ベンジル基、フェニル基またはシクロアルキル基(望ましくは、C−Cシクロアルキル基)である。
【0032】
さらに具体的には、前記Catは、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム及びそれらの混合物からなる群から選択されたヘテロ環四級陽イオンでありうる。
【0033】
前記陽イオンは、対称または非対称の構造を有することができ、特に非対称構造を有する場合、前記陽イオンは、窒素またはリンを中心原子として、少なくとも1つの置換基が、残りの置換基と異なる複数個の置換基(R、R、R、R)を有する。
【0034】
前記R’は、1以上の不飽和結合を含み、かつ4ないし30個の炭素原子を有する炭化水素である。
【0035】
具体的に、前記R’COOは、クロトネート(crotonate)基、ウンデシレネート(undecylenate)基、ミリストレイン酸(myristoleate)基、パルミトレイン酸(palmitoleate)基、オレイン酸(oleate)基、リノール酸(linoleate)基、リノレン酸(linolenate)基、エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoate)基、エルケート(erucate)基、アラキドン酸(arachidonate)基、ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoate)基及びそれらの混合物からなる群から選択される陰イオンである。ウンデシレネート基またはオレイン酸基が望ましい。
【0036】
前記R’COOがウンデシレネート基である場合、前記イオン性液体は、下記化学式3で表示されうる。





















【0037】
【化3】

【0038】
本具現例によるイオン性液体は、(i)Cat(陽イオン)含有化合物を合成する段階、(ii)前記陽イオン含有化合物を陰イオン交換させてヒドロキシ化合物を生成する段階、(iii)前記ヒドロキシ化合物を定量する段階、及び/または(iv)前記ヒドロキシ化合物をカルボン酸含有不飽和酸で中和させる段階を含む3段階または4段階以上の過程を経て製造される。前記イオン性液体の陰イオンを形成するために使われるカルボン酸含有不飽和酸は、安価であるために、前記イオン性液体の製造コストは大幅に節減されうる。
【0039】
前記陰イオン交換段階で、反応生成物の容易であって早い分離のために、溶媒としてはメタノールを使用することが望ましい。一般的に、かような陰イオン交換段階で、イオン性液体:イオン交換樹脂の使用比は、イオン当量基準で1:2〜1:10であって、イオン性液体を多量使用することが望ましい。
【0040】
本発明のイオン性液体は、1種以上の陽イオン及び1種の陰イオンから構成されるか、または1種の陽イオン及び1種以上の陰イオンから構成されうる。特に、1種の陰イオン及び1種以上の陽イオンから構成されたイオン性液体の場合、溶媒、溶媒の添加剤、相移動触媒、電解液、熱媒体または荷電体への使用時に多くのメリットがある。特に、本発明のイオン性液体が相移動触媒として使われうる理由は、前記イオン性触媒が後述するように、2以上の溶媒に部分的にまたは完全に混和性があるためである。
【0041】
前記の通りに製造されたイオン性液体は、望ましくは、30℃以下の融点を有する。
【0042】
かようなイオン性液体は、溶媒、溶媒の添加剤、相移動触媒、電解液、熱媒体または荷電体、または熱媒体または荷電体の添加物として使われうる。
【0043】
また、前記イオン性液体は、水、アルコール類、酸類、オレフィン類、パラフィン類、芳香剤類、脂肪酸化合物類、アミン類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、ニトリル類、ニトロアルカン類、またはそれらの混合物を含む溶媒と混和性がある。
【0044】
具体的に、かようなイオン性液体の例は、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、アリルトリブチルアンモニウムウンデシレネート、トリエチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルブチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルプロピルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、及びヘキシルトリブチルアンモニウムオレエートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことができる。
【0045】
以下、望ましい実施例を例に、発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は、それらによって制限されるものではない。
【実施例】
【0046】
(イオン性液体の製造)
【0047】
実施例1:ジメチルブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネートの製造
【0048】
1)1段階:ジメチルブチルヘキシルアンモニウムブロミドの合成
【0049】
ジメチルブチルアミン(0.14mol)をアセトニトリル(80mL)に溶かし、室温で激しく撹拌した。ここに、ヘキシルブロミド(0.14mol)をゆっくり添加した後、24時間還流させた。その後、前記反応混合物を室温に冷却させた後、蒸留濃縮機(rotary evaporator)を使用し、溶媒(アセトニトリル)を除去した。精製のために、残っている未反応物質をジエチルエーテル(150mL)を使用して3回抽出した。得られた生成物を真空下で24時間乾燥させた。結果として、黄色液体(38g)を得た。前記液体のNMR分析結果は下記の通りであった。
【0050】
NMR分析結果:1H NMR(CDCl、400MHz)3.42(m、4H)、3.25(s、6H)、1.59(m、4H)、1.28(m、8H)、0.88(t、3H)、0.77(t、3H)
【0051】
2)2段階:ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドの製造
【0052】
カラム(250ml容量のガラス)に充填された陰イオン交換樹脂(LANXESS、M800−KR、100mL)をpHが中性になるまで蒸溜水で洗浄した。次に、前記陰イオン交換樹脂をメタノールでさらに洗浄した。次に、前記1段階で合成したジメチルブチルヘキシルアンモニウムブロミド(0.038mol)を少量のメタノール(50ml)に溶かし、陰イオン交換樹脂カラムにゆっくり通過させた。次に、多量のメタノールを陰イオン交換樹脂のpHが中性になるまで、陰イオン交換樹脂カラムに通過させた。陰イオン交換樹脂カラムを通過した後、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムブロミドは、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドに転換された。生成物確認のために、生成物(crude product)のうち3mLを取り、蒸留濃縮機を使用し、メタノールを蒸発させてこれを完全に除去した。次に、真空乾燥後、NMRを使用し、前記生成物がジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドであることを確認した。
【0053】
3)3段階:ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドの定量
【0054】
ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドを中和させるために必要な酸の量(stoichiometric amount)を知るために、前記2段階で得たジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドを含有するメタノール溶液を1N HClで滴定した。滴定結果、前記メタノール溶液のうち、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、(0.1)Mであった。
【0055】
4)4段階:ジメチルブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネートの製造
【0056】
ジメチルブチルヘキシルアンモニウムヒドロキシドとウンデシレン酸とを1:1のモル比で混合した後、1時間撹拌した。ここで、前記3段階の滴定結果を基にして、ウンデシレン酸の量を計算した。蒸留濃縮機を使用し、前記反応混合物中のメタノールを除去した。次に、追加的な精製のために、反応混合物を真空下で12時間乾燥させた。結果として、透明な褐色液体を得た。前記液体のNMR分析結果は、下記の通りであった。
【0057】
NMR分析結果:1H NMR(CDCl、400MHz)5.70(m、1H)、4.90(dd、2H)、3.32(m、4H)、3.25(s、6H)、2.06(t、2H)、1.91(m、2H)、1.57(m、4H)、1.27(m、20H)、0.90(t、3H)、0.80(t、3H)
【0058】
実施例2〜3
前記実施例1の1段階で、表1に示されているようなアミン(RN)及びアルキルブロミド(R−Br)を使用し、生成物をジエチルエーテルで洗浄した後、前記生成物の分離のために、さらに濾過を行ったことを除いては、実施例1と同じ方法でイオン性液体を製造した。すなわち、ここで、精製前に白色固体状態の生成物を得たために、前記生成物をジエチルエーテルで洗浄した後、これを回収するためにさらに濾過を行った。
【0059】
実施例4〜6及び8〜9
前記実施例1の1段階で、表1に示されているようなアミン(RN)及びアルキルブロミド(R−Br)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でイオン性液体を製造した。
【0060】
実施例7
前記実施例1の1段階で、表1に示されているようなアミン(RN)及びアルキルブロミド(R−Br)を使用し、4段階でウンデシレン酸の代わりに、オレイン酸を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でイオン性液体を製造した。






【0061】
【表1】

【0062】
実施例2〜9の1段階及び4段階でそれぞれ得た生成物のNMR結果は、下記の通りであった。
【0063】
実施例2の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.33(m、6H)、3.11(m、2H)、1.70(m、2H)、1.15(m、19H)、0.71(t、3H)
【0064】
実施例2の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.56(m、1H)、4.69(dd、2H)、3.21(m、8H)、2.96(m、2H)、1.94(m、2H)、1.78(m、2H)、1.35(m、4H)、1.09(m、29H)、0.64(t、3H)
【0065】
実施例3の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.36(m、8H)、1.69(m、8H)、1.45(q、2H)、1.00(m、12H)
【0066】
実施例3の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.75(m、1H)、4.88(dd、2H)、3.21(m、8H)、2.13(t、2H)、1.97(q、2H)、1.62(m、10H)、1.33(m、12H)、0.97(m、12H)
【0067】
実施例4の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.08(m、8H)、1.50(m、8H)、1.12(m、6H)、0.83(t、3H)、0.67(t、3H)
【0068】
実施例4の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.74(m、1H)、4.87(dd、2H)、3.25(m、8H)、2.12(t、2H)、1.96(m、2H)、1.62(m、8H)、1.25(m、18H)、0.98(t、9H)、0.84(t、3H)
【0069】
実施例5の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.29(m、8H)、1.67(m、6H)、1.22(m、10H)、0.97(t、9H)、0.78(t、3H)
【0070】
実施例5の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.69(m、1H)、4.83(dd、2H)、3.19(m、8H)、2.13(t、2H)、1.91(m、2H)、1.64(m、10H)、1.18(m、20H)、0.92(t、9H)、0.77(t、3H)
【0071】
実施例6の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.10(m、8H)、1.50(m、8H)、1.20(m、6H)、0.73(m、12H)
【0072】
実施例6の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.74(m、1H)、4.90(dd、2H)、3.27(m、8H)、2.11(t、2H)、1.96(q、2H)、1.61(m、8H)、1.30(m、18H)、0.94(m、12H)
【0073】
実施例7の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.27(m、8H)、1.57(m、8H)、1.26(m、12H)、0.90(t、9H)、0.78(t、3H)
【0074】
実施例7の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.74(m、1H)、4.87(dd、2H)、3.31(m、8H)、2.19(m、2H)、1.98(q、2H)、1.58(m、8H)、1.37(m、24H)、0.90(m、9H)、0.88(m、3H)
【0075】
実施例8の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.33(m、8H)、1.64(m、8H)、1.18(m、18H)、0.97(t、9H)、0.84(t、3H)
【0076】
実施例8の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.74(m、1H)、4.87(dd、2H)、3.28(m、8H)、2.11(t、2H)、1.96(m、2H)、1.58(m、10H)、1.33(m、28H)、0.94(t、9H)、0.82(t、3H)
【0077】
実施例9の1段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)3.27(m、8H)、1.57(m、8H)、1.34(m、12H)、0.90(t、3H)、0.78(t、3H)
【0078】
実施例9の4段階:
1H NMR(CDCl、400MHz)5.29(m、2H)、3.26(m、8H)、2.20(t、2H)、1.96(m、4H)、1.59(m、10H)、1.38(m、40H)、0.95(t、3H)、0.83(m、9H)
【0079】
(イオン性液体の溶解度評価)
【0080】
前記実施例1〜9で製造したイオン性液体と、水または下記表2に示されているような多様な非極性有機溶媒とをモル比基準で1:1で混合し、それら水または非極性有機溶媒でのイオン性液体の溶解度を評価した。イオン性液体、及び水または非極性有機溶媒の使用量は、それぞれ0.003モルであり、良好な混合のために、50℃で1日混合された状態で放置した後で室温に冷却し、それぞれの場合での溶解度を観察した。水または有機溶媒で、各実施例で製造したイオン性液体の溶解度の結果を表2に表した。一方、かようなイオン性液体がほとんどの極性溶媒と完全に混ざるという事実は、当技術分野で周知であるために、ここでは、メタノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、またはエチルアセテートのような極性有機溶媒での前記イオン性液体の溶解度は、別途に評価しなかった。
【0081】
【表2】


Y:混和性あり、N:混和性なし、P:部分的に混和性あり
【0082】
前記表2を参照すれば、実施例1〜9で製造した本発明のイオン性液体が、水またはほとんどの非極性有機溶媒と良好に混ざるという事実を確認することができる。すなわち、本発明によれば、ほとんどの極性及び非極性溶媒と部分的にまたは完全に混和性のあるイオン性液体を製造できる。
【0083】
以上、本発明について実施例を参考に説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、当技術分野で当業者ならば、それらから多様な変形及び均等な他実施例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決まるものである。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の多様な極性/非極性溶媒混和性のイオン性液体及びその製造方法は、例えば、溶媒、溶媒添加剤、電解質、熱媒体、荷電体、熱媒体添加物、荷電体添加物、及び相移動触媒関連の技術分野に効果的に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される化合物を1種または2種以上含むイオン性液体:
(化1)
(Cat)(R’COO
前記Cat+は、四級アンモニウム、四級ホスホニウム、スルホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピラゾリウム、ピペリジニウム、ピロリウム、ピロリジニウム、トリアゾリウム、またはそれらのうち2以上の混合物から選択される陽イオンであり、
前記R’は、1以上の不飽和結合を含み、かつ4ないし30個の炭素原子を有する炭化水素である。
【請求項2】
前記Catが下記化学式2で表示される陽イオンであることを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体:
(化2)
(R
前記Zは窒素またはリンであり、前記R、R、R及びRは、それぞれ線形または分枝型のアルキル基、アルキレン基、アリル基、ベンジル基、フェニル基またはシクロアルキル基である。
【請求項3】
前記R’COOは、クロトネート基、ウンデシレネート基、ミリストレイン酸基、パルミトレイン酸基、オレイン酸基、リノール酸基、リノレン酸基、エイコサペンタエン酸基、エルケート基、アラキドン酸基、ドコサヘキサエン酸基及びそれらの混合物からなる群から選択される陰イオンであることを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体。
【請求項4】
前記イオン性液体は、30℃以下の融点を有することを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体。
【請求項5】
前記イオン性液体は、溶媒、溶媒の添加剤、相移動触媒、電解液、熱媒体または荷電体、または熱媒体または荷電体の添加物として使われることを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体。
【請求項6】
前記イオン性液体は、水、アルコール類、酸類、オレフィン類、パラフィン類、芳香剤類、脂肪酸化合物類、アミン類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アルデヒド類、アミド類、ニトリル類、ニトロアルカン類、またはそれらの混合物を含む溶媒と混和性のあることを特徴とする請求項1に記載のイオン性液体。
【請求項7】
前記イオン性液体は、ジメチルブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、アリルトリブチルアンモニウムウンデシレネート、トリエチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルブチルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリプロピルオクチルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルプロピルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルヘキシルアンモニウムウンデシレネート、トリブチルオクチルアンモニウムウンデシレネート、及びヘキシルトリブチルアンモニウムオレエートからなる群から選択された少なくとも1種を含むことを請求項1に記載の特徴とするイオン性液体。
【請求項8】
Cat(陽イオン)含有化合物を製造する段階と、
前記陽イオン含有化合物を陰イオン交換させてヒドロキシ化合物を生成する段階と、
前記ヒドロキシ化合物をカルボン酸含有不飽和酸で中和させる段階とを含むイオン性液体の製造方法。

【公開番号】特開2009−249379(P2009−249379A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86133(P2009−86133)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(509091505)三星エンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】