説明

多機能マットおよび多機能マットを用いた施工方法

【課題】脱着取替が容易で防水性、抗アレルゲン機能に優れ、ペットと人が快適に共生できる住宅等に最適な多機能マットおよび多機能マットを用いた施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】繊維からなる表面化粧層と中間防水層と裏面吸着層からなり、表面化粧層には繊維全体のうち抗アレルゲン機能を有する繊維が20〜30重量%混入されている多機能マットを床面上に敷設する際に、隣接する多機能マット同士の継目となる位置に予め防水層と吸着層からなるテープをその吸着層を床面に向けて設置した後、前記テープ上に前記多機能マットを脱着可能に固定することにより、複数枚の前記多機能マットを隣接させながら敷設することで、交換可能な多機能マットの施工が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱着取替が容易で防水性、抗アレルゲン機能に優れ、ペットと人が快適に共生できる住宅等に最適な多機能マットおよび多機能マットを用いた施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年ペットの室内での飼育が増えており、住宅建材もペット飼育に適したものが開発されている。床材では木質フローリングは滑りやすいためカーペットが好んで使われているが、カーペットはペットの抜け毛が絡み付いて掃除機の吸引では簡単に取り除くことができない。そこで、特許文献1に記載された敷物のように、ペットの抜け毛を効率よく付着させて、かつ容易に除去できるように表面層が傾斜パイル群とした提案が開示されている。これにより敷物に抜け毛を付着させ室内への飛散を防止し、一旦付着した抜け毛が衣服等の他の繊維に再度付着することを防止できると共に、同様の傾斜パイル群を用いた掃除手段を用いることによって掃除が容易となり敷物を清潔に保つことができる。
【0003】
また、敷物の施工方法としては、タイルカーペットの裏面に予め接着テープを貼着し隣接するタイルカーペットを連結しながら敷設する方法が特許文献2に開示されている。これにより床面を接着剤で汚したり、接着剤の有機溶剤による害を受けることなく簡易な施工が行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90044号公報
【特許文献2】特開平5−163825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記敷物によれば、抜け毛対策を行うことはできるが、糞尿(ペットを室内で飼育する場合は、躾やトイレ用品だけでは対応できない)や、アレルゲン物質の原因となるノミ、ダニ等を掃除したり、清潔に保持することが難しい。また、前記タイルカーペットの施工方法では、ペットの糞尿(特に液体)が目地から侵入し裏面側まで浸透して、既存の床材を汚したり腐食の原因になる等不具合が発生する。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、防水性に優れると共に、ダニ、花粉、ペットの毛や皮脂(ふけ)等に起因するアレルゲン物質を不活性化することができ、アレルギー疾患の発生の抑制に効果がある多機能マットおよび多機能マットを用いた施工方法を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を解決するために、請求項1に係る多機能マットの発明は、繊維からなる表面化粧層と中間防水層と裏面吸着層からなり、表面化粧層には繊維全体のうち抗アレルゲン機能を有する繊維が20〜30重量%混入されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る多機能マットを用いた施工方法の発明は、請求項1に記載の多機能マットを床面上に敷設する際に、隣接する多機能マット同士の継目となる位置に予め防水層と吸着層からなるテープをその吸着層を床面に向けて設置した後、前記テープ上に前記多機能マットを脱着可能に固定することにより、複数枚の前記多機能マットを隣接させながら敷設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、繊維からなる表面化粧層と中間防水層と裏面吸着層からなるので、ペットの飼育に適した繊維状の表面化粧層を有するマットでありながら、室内で飼育する場合に万一マット上に糞尿をされても中間防水層により下へ浸透しない。また、裏面吸着層によって床面に脱着可能に設置できるので、汚れた場合も1枚単位で簡単に交換できる。さらに、表面化粧層には繊維全体のうち抗アレルゲン機能を有する繊維が20〜30重量%混入されているので、ダニ、花粉、ペットの毛や皮脂(ふけ)等に起因するアレルゲン物質を不活性化することができ、アレルギー疾患の発生の抑制に効果がある。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の多機能マットを具体的に施工する方法であって、多機能マットを床面上に敷設する際に、多機能マット同士の継目となる位置に予め防水層と吸着層からなるテープを吸着層を床面に向けて設置しているので、多機能マット同士の継目の位置に必ず防水層を有するテープが位置するので、中間防水層では防水できない継目部分から漏れた液体の浸透を阻止し、既存の床材を汚したり腐食させたりすることを防止できる。また、予めテープを床面に設置した際にも、表面は防水層であって吸着性はないため両面テープのように汚れて吸着性が落ちることはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】多機能マットの断面図。
【図2】床面上にテープを設置した図。
【図3】図2の床面上に多機能マットを設置した図。
【図4】テープの構造を示す断面図。
【図5】多機能マットの継目部分を示す断面図。
【図6】アレルゲン低減製品のアレルゲン濃度低減率の測定結果を示す図。
【図7】アンモニア消臭性能比較の測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための実施形態を図1から図5を用いて説明する。もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0013】
本発明に係る多機能マット1は、表面化粧層11と中間防水層12と裏面吸着層13からなり、表面化粧層11は繊維からなるカーペットであるため、木質フローリングと比較して防音性に優れ、冬期には足の冷えを防ぎ、ペットが歩行しても滑ることないが、テクスチャーや製法は特に限られるものではない。また、抗アレルゲン効果、消臭効果をねらって繊維全体のうち20〜30重量%が抗アレルゲン機能を有する繊維からなる。
【0014】
抗アレルゲン機能を有する繊維としては、(1)繊維自体が抗アレルゲン機能を有するもの:例えば、アニオン性官能基を利用したアクリレート系繊維からなるもの、(2)普通の繊維をアレルギー不活性化剤で処理したもの:例えば、綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル等の繊維表面に、ジルコニウム塩、タンニン、カテキン等のアレルギー不活性化剤で処理したものが用いられる。
【0015】
表面化粧層11に設けられる抗アレルゲン機能を有する繊維の添加量が繊維全体のうち20重量%未満であれば抗アレルゲン効果、消臭効果が実用上十分ではなく、30重量%を超えても実用上の性能はあまり変わらずコストアップとなるため20〜30重量%が好ましい。なお、その他の抗アレルゲン機能を有する繊維以外の繊維としては、一般的にカーペット等に用いられるものであれば良く、綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル等が用いられる。
【0016】
中間防水層12は多機能マット1の下面側にあって、多機能マット1上に溢した水やペットの尿等が浸透し、下地である既存の床面3を汚して、不潔な状態になったり、腐食させたりという状態を防止することができる。中間防水層12は床材として床面3に沿い易い柔軟性のある材料が好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等の合成樹脂のシートやフィルムが用いられる。
【0017】
裏面吸着層13は、多機能マット1を脱着自在に床に固定するために設けており、多機能マット1が動いたり浮き上がったりしないだけの十分な固定力を有すると共に、従来の両面テープのように剥がす際に既存の床材の表面の塗膜が剥がれる危険もなくなる。裏面吸着層13は、アクリル、ウレタン、エチレン−酢酸ビニル等を発泡させ、微小な気泡による吸盤機能を有する発泡合成樹脂が用いられる。また、裏面吸着層13の配置や形状としては、例えば、多機能マット1の裏面全面、畑状に一定間隔を空けて帯状(図1)、四周等の1部だけに用いる等、特に限定されるものではない。
【0018】
多機能マット1の寸法としては、縦横が300mm角〜600mm角程度、厚さが3mm〜10mm程度で一般のタイルカーペットと同様のものが用いられるが、例えば畳同様の大きな寸法のものでも良い。
【0019】
多機能マット1を床面3に施工する際に用いるテープ2は、防水層21と吸着層22を複合したものからなる。防水層21は防水性を有し、多機能マット1の裏面に配された裏面吸着層13が密着してしっかり固定され、かつ、脱着し易いように平滑な面を形成し、吸着層22には裏面吸着層13と同様に発泡合成樹脂が用いられるが、テープ自体の段差が発生し難く施工時に不陸がなく歩き易い床が得られるために厚みの薄いものが好ましく、例えば10〜40μm程度のPET樹脂フィルムからなる防水層21と200μm程度のアクリル発泡樹脂からなる吸着層22を一体化して200〜400μm程度の厚みを有し、また、十分な固定強度を有するために幅50mm前後が好ましい。
【0020】
図2に示すように、床面3に多機能マット1同士を隣接して設置した場合の継目となる位置に、予めテープ2を吸着層を床面に向けて設置する。施工面全体にテープ2を設置した後、図3に示すように、テープ2の中心線上に多機能マット1の四周を合わせるようにして載置すれば、多機能マット1の裏面吸着層13が防水層21に密着して吸着され脱着自在に固定される。テープ2の表面は防水層21で吸着性がなく平滑面で汚れが付き難いので、予め床面3全面にテープ2を設置したまましばらく放置しても問題ない。

【0021】
床面3に格子状に設置した前記テープ2の幅方向のほぼ中心線上に多機能マット1の四周端面を合わせて載置することにより、テープ2の平滑な防水層に多機能マット1の裏面吸着層13が密着して固定される。複数枚の多機能マット1が隣接して敷き詰められることで、浮き上がりや横方向の移動は防止できると共に、1枚単位で自由に脱着することができるので、濡れたり汚れたりした時は簡単に交換ができる。
【実施例1】
【0022】
実施例1の多機能マットは、表面側から第1層目:起毛不織布で、ポリエステル繊維70重量%、抗アレルゲンアクリレート系繊維30重量%(表面化粧層)、第2層目:ポリエステル不織布、第3層目:SBR樹脂バッキング、第4層目:ポリエチレン樹脂(防水層)、第5層目:ポリエステル不織布(アクリル樹脂の塗布ベース)、第6層目:アクリル樹脂発泡層(裏面吸着層)の6層で構成され、厚さ約6.5mmで450mm角である。
【実施例2】
【0023】
実施例2の多機能マットは実施例1と比較して、厚みを薄くするため3層構造としている。表面側から第1層目:フェルト不織布で、ポリエステル繊維80重量%、抗アレルゲンアクリレート系繊維20重量%(表面化粧層)、第2層目:ポリエチレン樹脂(防水層)、第3層目:アクリル樹脂発泡層(裏面吸着層)からなり、厚さ約4mmで450cm角である。
性能試験
【0024】
前記実施例に係る多機能マットから試験片を準備して、アレルゲン低減性能及び消臭性能を測定した。また、実際に施工試験を行い施工性を調査した。
【0025】
アレルゲン低減性能については、一般的に用いられているELISA法によりダニの抽出液を用いて行った。比較品として以下の製品を用いた。なお、以下の数字は図6に記載のアレルゲン低減製品資料番号と同じである。(1.抗アレルゲン加工剤X、2.抗アレルゲン加工ストッキング、3.抗アレルゲン加工剤Y、4.抗アレルゲン加工ワックス、5.抗アレルゲン加工スプレー、6.空清フィルターA社、7.空清フィルターB社、8.空清フィルターC社、9.抗アレルゲン加工マスク、10.抗アレルゲン加工ピロケース、11.抗アレルゲン加工敷布団、12.抗アレルゲン加工掛布団、13.抗アレルゲン加工カーペット、14.本発明品)
【0026】
実施例1の多機能マット及び比較品を細かく裁断して試験片とし、夫々0.5gを飼育ダニ抽出液を所定濃度に希釈したアレルゲン溶液と共に15mlの遠沈管に投入し馴染むまで攪拌した後、4℃の冷蔵庫で24時間静置し反応させた。その後アレルゲン溶液を取り出して遠心分離を行い上澄み液をELIZA用溶液とし、ELIZA法で未反応サンプルとの濃度比較を行い低減率を計算した。
【0027】
消臭性能については、実施例1の多機能マット及び比較品から5cm×5cmの試験片を切り出し、1.5Lの臭気気体(アンモニア又は酢酸)と共にテドラーバックに入れて一定時間後の臭気濃度を検知管で測定した。
【0028】
図6に本発明品と比較品のアレルゲン低減率の測定結果を示す。ストッキング(2)、マスク(9)、布団類(10、11、12)、カーペット(13)においては、今回測定したダニアレルゲン低減率が50%以下のものもあるが、大部分は60%以上であり本発明品においても90%以上の低減率を示し、市販のカーペット(44%)に比べて非常に効果が高い。
【0029】
図7はアンモニアを臭気気体とした場合の消臭性能を示したもので、本発明品は30秒で5ppmまで4分後にはほぼ0ppmまで吸収され、比較品(他社の消臭加工カーペット)が4分後も20〜50ppmまでしか消臭されないことと比較しても本発明品の効果は高い。
【0030】
本発明品を図3に示すように床面に施工した場合、多機能マットの裏面吸着層が床面に予め設置されたテープの平滑な防水層と脱着自在に吸着されるので、多機能マットの取付、取外しを繰り返しても既存の床面の表層部分が剥がれたり汚れたりすることはなかった。また、本発明品に水を溢したが、多機能マットの全面に配置される中間防水層と、多機能マットの目地部の隙間に配置されるテープの防水層により完全に防水され、既存の床面が濡れることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
既存の床面上に脱着可能に設置できる多機能マットで防水性にも優れ、また、抗アレルゲン機能や消臭機能を有し、ペットを室内で飼育するのに最適なだけでなく、小さな子供や要介護者がいる家庭、保育所、幼稚園、病院、介護施設等で効果のある多機能マットを提供できる。

【符号の説明】
【0032】
1 多機能マット
2 テープ
3 床面
11 表面化粧法
12 中間防水層
13 裏面吸着層
21 防水層
22 吸着層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維からなる表面化粧層と中間防水層と裏面吸着層からなり、表面化粧層には繊維全体のうち抗アレルゲン機能を有する繊維が20〜30重量%混入されていることを特徴とする多機能マット。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能マットを床面上に敷設する際に、隣接する多機能マット同士の継目となる位置に予め防水層と吸着層からなるテープをその吸着層を床面に向けて設置した後、前記テープ上に前記多機能マットを脱着可能に固定することにより、複数枚の前記多機能マットを隣接させながら敷設することを特徴とする多機能マットの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−38303(P2011−38303A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186270(P2009−186270)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】