説明

多段キャップ

【課題】変更注出口部材や天蓋の着脱を容易にするとともに、それらの紛失を防止すること、内容物により手や衣服等を汚さないようにすること、製品のコストダウンを図ること。
【解決手段】標準注出口14の付いた遮断壁15を有し、容器50口部に装着される装着筒12と、前記遮断壁に重合され、前記標準注出口に連結される変更注出口22を有する変更注出口部材20と、該変更注出口部材と前記装着筒を連結する下ヒンジ30と、前記変更注出口部材に重合され、前記変更注出口を封鎖する天蓋37と、該天蓋と前記変更注出口部材を連結する上ヒンジ44と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マヨネーズ、サラダ油、ホイップクリーム、接着剤等を収容する、容器のキャップに関するものであり、更に述べると、内容物の注出量や注出形状等を変更できる、多段キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ用チューブには、キャップが装着されているが、このキャップには、円形の注出口が形成されている。このチューブ内のマヨネーズは、前記注出口から注出されるため、注出量や注出形状は一定となる。そのため、広い範囲に少量のマヨネーズを絞り出したり、絞り出し断面形状を変更したりすることができない。
【0003】
そこで、この問題を解決するため、従来、図8に示すようなキャップが用いられている。このキャップ9は、容器2の口部3に変更注出口部材6の筒壁6a内周面を螺着し、該筒壁6aに天蓋8の筒壁8a内周面を螺着している。前記口部3には、標準注出口3aが設けられ、又、変更注出口部材6には、前記標準注出口とは大きさ及び形状の異なる、変更注出口5が形成されている。
【0004】
このキャップ9では、内容物を標準量注出する時は、変更注出口部材6を容器2の口部3から外し、又、前記以外の注出量を注出する時には、変更注出口部材6を前記口部3に螺着した後、天蓋8を外して使用している(例えば、特許文献1、参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−211599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のキャップには、次のような問題がある。
(1)変更注出口部材6、天蓋8は、ねじにより着脱されるので、その取り付け、取り外しが面倒である上、それを外したときに紛失してしまうことがある。又、前記着脱時に手や衣服等を汚すことがある。
【0007】
(2)容器の口部3に変更注出口部材6を装着した後、該容器2を傾けて絞ると、内容物は標準注出口3a、変更注出口5を通って器外に注出される。そして、注出終了後、該容器を元の状態に戻すと、キャップ内の内容物は筒壁6aの内周面に付着したり、該内周面と遮断壁9との間の段部10に溜まったりしながら容器2内に戻る。そのため、標準量の注出を行うため、前記変更注出口部材6を前記口部3から外すと、内容物が口部3外表面に流出し、テーブル、手、衣服などに付着し、汚してしまうので、衛生的に好ましくない。
【0008】
(3)変更注出口部材6、天蓋8は、互いに分離独立しているので、それぞれ別個独立に形成しなければならない。そのため、制作費が嵩み製品のコストアップとなる。
【0009】
この発明は、上記事情に鑑み、変更注出口部材や天蓋の着脱を容易にすると共に、それらの紛失を防止することを目的とする。他の目的は、内容物により手や衣服等を汚さないようにすることを目的とする。更に他の目的は、製品のコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、標準注出口の付いた遮断壁を有し、容器口部に装着される装着筒と、前記遮断壁に重合され、前記標準注出口に直結される変更注出口を有する変更注出口部材と、該変更注出口部材と前記装着筒を連結する下ヒンジと、前記変更注出口部材に重合され、前記変更注出口を封鎖する天蓋と、該天蓋と前記変更注出口部材を連結する上ヒンジと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明の下ヒンジと上ヒンジは、キャップの中心軸に関し互いに反対側に位置していることを特徴とする。この発明の標準注出口及び変更注出口は、筒状に形成されていることを特徴とする。この発明の標準注出口は、遮断壁に穴状に形成されて、変更注出口は、筒状に形成されていることを特徴とする。この発明の標準注出口及び変更注出口は、遮断壁に穴状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、装着筒と変更注出口部材をヒンジ結合し、又、前記変更注出口部材と天蓋をヒンジ結合したので、装着筒と変更注出口部材と天蓋は、常時連結されている。そのため、従来例と異なり、変更注出口部材や天蓋の着脱操作を迅速、且つ、確実に行うことができるとともに、変更注出口部材等が紛失する恐れもない。
【0013】
この発明の変更注出口部材の変更注出口は、標準注出口と連結されているので、変更注出口使用後に天蓋を装着し、傾けた容器を元の状態に戻すと、キャップ内の内容物は、標準注出口から遮断壁上に漏出することなく、前記容器内に戻される。そのため、変更注出口部材を外して標準注出口を使用する際に、従来例と異なり、手や衣服等を汚すことがない。
【0014】
この発明の下ヒンジと上ヒンジはキャップの中心軸に関して互いに反対側に位置するので、上ヒンジを中心にして天蓋37を回転させても、変更注出口部材は下ヒンジを介して装着筒に連結されているので、該変更注出口部材が天蓋に引っ張られて持ち上げられることはない。そのため、天蓋を円滑に外すことができる。
【0015】
この発明の装着筒と変更注出口部材と天蓋は、ヒンジを介して繋がっている状態で形成できるので、ヒンジを中心にして変更注出口部材と天蓋を回転させれば組み立てが完了するので、組み立てが容易となる。そのため、製品のコストダウン化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の第1実施の形態を図1〜図3により説明する。
装着筒12の上端には、標準注出口14の付いた遮断壁15が設けられている。この注出口14は、遮断壁部15から突出する注出筒18の先端部に、円形状に形成されている。
【0017】
遮断壁15には、変更注出口部材20が重合されている。この変更注出口部材20は、変更注出口22の付いた遮断壁24と、該遮断壁24に連続する連結筒26と、を備えている。
【0018】
遮断壁24の下面には、シールリング28が突設されているが、このシールリング28は前記標準注出口14と変更注出口22間を気密状態にする。連結筒26は下ヒンジ30を介して装着筒12に連結されている。この連結筒26の下端部には、指掛部32が設けられているが、この指掛部32は、キャップKの中心軸Cに関して前記下ヒンジ30の反対側に位置している。
【0019】
指掛部32の内面側には、前記遮断壁部15の係止溝に係合する、突起部33が形成されている。遮断壁24の上面側には、変更注出筒35が突設され、その注出筒35の先端部が変更注出口22となっている。この変形注出口22は、標準注出口24と形状や大きさ等が異なる注出口であり、例えば、円形状に形成され、その口径は前記標準注出口14の口径の半分位である。
【0020】
遮断壁24には、天蓋37が被着されているが、この天蓋37は、天板部39と筒部40とを備えている。天板部39の内面中央部には、変更注出口22に密接するシールリング42が突設されている。
【0021】
前記筒部40は、上ヒンジ44を介して前記連結筒26に連結されている。上ヒンジ44は、指掛部32の上方に設けられているが、この上ヒンジ44は、キャップKの中心軸Cに関し前記下ヒンジ30の反対側に位置している。
【0022】
前記筒部40の下端部には、指掛部45が設けられているが、この指掛部45は、下ヒンジ30の上方に位置しており、この位置は、キャップKの中心軸Cに関し前記上ヒンジ44の反対側に位置している。指掛部45の内面側には、前記遮断壁24の係止溝に係合する突起部47が形成されている。
【0023】
次に、この実施例の作動について説明する。
キャップの製作:
キャップは、上及び下ヒンジを水平に開いた状態で成形するので、各ヒンジを所定方向に回転させ、装着筒の上に変更注出口部材20を重ね、該変更注出口部材20に天蓋37を被せるだけで、セットされたキャップKが、簡単に完成する。
【0024】
キャップの装着:
内容物、例えば、マヨネーズをチューブ50内に充填した後、該チューブ50の口部にキャップKを螺着し、密封する。
【0025】
標準量の注出:
標準量を注出する場合には、指掛部32に指をかけて上方に押し上げる。そうすると、図3に示すように、変更注出口部材20は、下ヒンジ30を中心にして回転し、標準注出口14が露出する。この時、連結筒26は下ヒンジ30を介して装着筒12に連結されているので、該変更注出口部材20を紛失することはない。
【0026】
この状態でチューブ50を絞ると、内容物は標準注出口14から器外に排出される。所望量注出後、変更注出口部材20を前記と逆方向に回して元の状態に戻し、シールリング28を注出筒18に密着させる。
【0027】
変更量の注出:
標準量より少量注出する場合には、指掛部45に指をかけて上方に押し上げる。そうすると、図2に示すように、天蓋37は、上ヒンジ44を中心にして回転し、変更注出口22が露出する。
【0028】
この時、天蓋37は、上ヒンジ44を介して変更注出口部材20に連結されているので、該天蓋37を紛失することはない。又、変更注出口部材20は、装着筒12とヒンジ結合されているので、指掛部45を押し上げても、一緒に持ち上がることはない。
【0029】
この状態でチューブ50を絞ると、内容物は標準注出口14を通り、変更注出口22から器外に排出される。この時、その注出量や注出断面形状は変更注出口22により規制される。
所望量注出後、天蓋37を前記と逆方向に回して元の状態に戻し、シールリング42を変更注出筒35に密着させる。
【0030】
この時、標準注出口14と変更注出口22とは、直接連結されシールリング28によりシールされているので、内容物の注出中は勿論、キャップ内の内容物がチューブ50内に戻る場合にも、内容物が遮断壁15上に漏出することはない。
【0031】
そのため、変更注出口部材20を回して変更注出口22を露出させる際に、遮断壁15上に内容物が存在しないので、手や衣服等を汚すことなく、衛生的に注出操作を行うことができる。
【0032】
この発明の第2実施例を図4により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、次の通りである。
(1)遮断壁15の標準注出口14aが、注出筒の先端部に形成される代わりに、遮断壁15に穴状に形成されていること。
(2)標準注出口14aの内周面52が、シールリング28の外周面に当接すること。
【0033】
この発明の第3実施例を図5により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、次の通りである。
(1)変更注出口部材20の変更注出口22aが、注出筒の先端部に形成される代わりに、遮断壁24に穴状に形成されていること。
(2)変更注出口22aは、円形の代わりに、星形をしていること。この注出口22aは、主にホイップクリームなどの装飾材の注出に適している。
【0034】
この発明の第4実施例を図6により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、次の通りである。
(1)遮断壁15の標準注出口14aが、注出筒の先端部に形成される代わりに、遮断壁15に穴状に形成されていること。
【0035】
(2)変更注出口部材20の変更注出口22aが、注出筒の先端部に形成される代わりに、遮断壁24に穴状に形成されていること。
(3)標準注出口14aの内周面52が、シールリング42の外周面に当接すること。
この実施例では、注出筒が存在しないので、キャップの高さを、第1実施例に比べ、格段に低くすることができる。
【0036】
この発明の第5実施例を図7により説明するが、図1〜図3と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施例と第1実施例との相違点は、チューブ50の開口部に頂壁55が設けられ、この頂壁55に開口57が形成されていることである。
【0037】
この開口57の直径は、標準注出口14、変更注出口22のそれよりも大きく形成されている。そのため、チューブ50に螺着されているキャップを外すと、この開口57により内容物の流量規制を行うことができるので、結局、3種類の注出量規制が可能となる。
【0038】
この発明の実施例は、上記に限定されるものではなく、例えば、標準注出口や変更注出口の大きさ、形状等は、必要に応じて適宜選択することができる。又、変更注出口部材を複数、例えば、3段に重合し、それらをヒンジ結合することにより、更に他種類の注出口を形成することが可能である。
なお、前記実施例では、スクリュー式キャップについて述べたが、打栓式キャップでも良いことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1実施例を示す縦断面図である。
【図2】開蓋状態を示す斜視図である。
【図3】図2と異なる、開蓋状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の第2実施例を示す一部断面正面図である。
【図5】この発明の第3実施例を示す縦断の要部拡大図である。
【図6】この発明の第4実施例を示す縦断の要部拡大図である。
【図7】この発明の第5実施例を示す一部断面正面図である。
【図8】従来例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
12 装着筒
14 標準注出口
15 遮断壁
18 注出筒
20 変更注出口部材
22 変更注出口
24 遮断壁
30 下ヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準注出口の付いた遮断壁を有し、容器口部に装着される装着筒と、
前記遮断壁に重合され、前記標準注出口に連結される変更注出口を有する変更注出口部材と、
該変更注出口部材と前記装着筒を連結する下ヒンジと、
前記変更注出口部材に重合され、前記変更注出口を封鎖する天蓋と、
該天蓋と前記変更注出口部材を連結する上ヒンジと、
を備えていることを特徴とする多段キャップ。
【請求項2】
下ヒンジと上ヒンジは、キャップの中心軸に関し互いに反対側に位置していることを特徴とする請求項1記載の多段キャップ。
【請求項3】
標準注出口及び変更注出口は、注出筒状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の多段キャップ。
【請求項4】
標準注出口は、遮断壁に穴状に穿設され、変更注出口は、筒状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の多段キャップ。
【請求項5】
標準注出口及び変更注出口は、遮断壁に穴状に穿設されていることを特徴とする請求項1記載の多段キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137478(P2006−137478A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330355(P2004−330355)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(304046328)
【Fターム(参考)】