説明

多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法

【課題】加熱脱着装置付きGC/MS法でPAHsの回収率を正しく求めることができる多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法を提供する。
【解決手段】DEPが付着した石英フィルタ又は石英ウールを加熱脱着チューブ12に収容し、その加熱脱着チューブ12を加熱脱着装置付きGC/MS10でPAHsが検出されなくなるまで分析し、その後、加熱脱着チューブ12a内で、炭素のみ残った石英フィルタ15Bに、各PAHの濃度が既知のPAHs標準物質を一定量注入し、その状態で加熱脱着装置付きGC/MS10で標準PAHsを分析し、その分析値と、PAHs標準物質の各PAHの標準濃度を比較して、分析する目的のPAH毎の回収率を求めるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル排気粒子中の多環芳香族炭化水素類をガスクロ分析する際の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル排気粒子(Diese1 Exhaust Particle、以下DEPと略す)は、燃料や潤滑油の未燃成分であり、炭素の周りに有機溶媒に溶解する有機可溶性成分(Soluble 0rganic Fraction、以下SOFと略す)と、有機溶媒には溶解しない硫酸塩及び硝酸塩、元素状炭素、金属等(Insoluble 0rganic Fraction、以下ISOFと略す)が吸着している集合体である。また、その組成については燃料や潤滑油、エンジン種の影響を強く受けることが知られている。
【0003】
多環芳香族炭化水素類(Polycyclic 0rganic Hydrocarbons、以下PAHsと略す)は、DEP中SOFの中に含まれており、非常に微量でありながら発癌性が高いことから、ここ十数年程でその分析方法が研究、確立されてきた。
【0004】
従来、ディーゼル粒子の分析には、排ガスをテフロン(登録商標)コーティングガラス繊維ろ紙を通してディーゼル粒子を吸着させ、そのろ紙を折りたたむなどして小さくし、有機溶媒で抽出してガスクロマトグラフィによる分析を行うものであるが、ディーゼル粒子中PAHsの定量には、2日半程度の分析前処理が必要である。
【0005】
この分析前処理法とは、有機溶媒を用いたSOF分離のための抽出工程、分析感度向上のための濃縮・乾固工程、最終分析溶媒への溶解工程という3つの工程が基本となっており、広く用いられている。
【0006】
また、前記抽出工程はソックスレ抽出法を用いるのが一般的であるが、簡易方法として超音波抽出があり、大学等で用いられている。
【0007】
しかし、このような有機溶媒を用いた前処理は、分析対象物がロスするだけでなく、工程途中で汚染物質の混入(コンタミネーション)が起こりやすく、労作時間が長くかかる。
【0008】
そこで、フィルタを有機溶媒で抽出する代わりに、市販の加熱脱着装置と、質量検出器(Mass Spectrometer、以下MS)付ガスクロマトグラフ(Gas Chromatograph、以下GC)とを連結させた加熱脱着装置付きGC/MSで分析することを検討した。
【0009】
この加熱脱着装置付きGC/MSは、従来大気や室内の揮発性有機化合物(以下Volatile 0rganic Compounds;VOC)の分析に用いられてきたが、本発明者等は、PAHsも分析出来る技術を確立させた(柴田慶子ら,第49回大気環境学会,2008)。
【0010】
この加熱脱着装置付きGC/MSは、ディーゼル粒子を吸着させ、所定サイズに打ち抜いたサンプルをパイレックス(登録商標)製加熱脱着チューブに収容し、加熱脱着装置で加熱してPAHsをガス化させ、これを一旦冷却した後、急速に再加熱してガス化させてカラムに通し、このガス成分をMSで検出することで定量分析するものである。
【0011】
加熱脱着装置付きGC/MSによる、分析技術確立の確認に必要な分析バリデーションは、主に検量線の直線性と範囲、分析繰り返し再現性、検出限界と定量限界、回収率等を確認することであり、これらが良好な場合、その分析法は技術的に確立した信頼性の高い分析法と言うことができる。
【0012】
PAHsの添加回収率を調べるために、従来の有機溶媒抽出とガスクロ分析との組合せによる方法では、試料が存在しない状態で、前処理工程の第一工程である抽出工程で用いる有機溶媒の中に、あらかじめ濃度がわかっている液体のPAHs標準物質を一定量添加し、通常の前処理を行い、最終的に分析で得られた値が添加した濃度に対して、何%回収出来たかを計算で求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−46814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、加熱脱着装置付きGC/MS法では、加熱脱着装置とGC/MSが一体になっているために、前処理が不要であり、有機溶媒抽出のような分析法のようにPAHsの回収率を求めることが難しい。
【0015】
すなわち、加熱脱着装置付きGC/MS法で、PAHsの分析回収率を調べるには、液体標準物質を石英フィルタにマイクロシリンジで注入し、これを加熱脱着チューブに入れて、加熱脱着装置のオートサンプラーのトレイに置き、自動分析させたときに得られたPAHsの分析値が、市販されている液体標準物質の保証値と同じと仮定し、キャリブレーションを行っている。
【0016】
しかし通常、4環以上の蒸気圧が低めの多環芳香族炭化水素類(PAHs)は、炭素の周りに吸着した状態で大気へ排出される。従って分析対象はDEPに吸着されたPAHsであり、DEPに吸着されたPAHsを、その状態で分析したときの回収率を求めたいが、石英フィルタに付着しているDEP量もそのDEPに吸着されているPAHsも未知である。従って、単に石英フィルタに市販されているDEP標準物質(例えば、NIST製SRM1650bや2975など、SRM;Standard Reference Material)を載せて分析しても、目的の分析対象のPAHの他に、それと分子量が全く同じである異性体も含まれており、通常のGC/MSでは、これら異性体分離まで行うのは難しいため、加熱脱着装置付きGC/MS法でPAHsの回収率を正しく求めることが出来なかった。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、加熱脱着装置付きGC/MS法でPAHsの回収率を正しく求めることができる多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、フィルタで、ディーゼル排気粒子(DEP)を捕捉し、その捕捉したDEPの周りに吸着している多環芳香族炭化水素類(PAHs)を、加熱脱着装置と質量検出器(MS)付きガスクロマトグラフ(GC)を連結させた加熱脱着装置付きGC/MSで分析する際の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法において、DEPが付着した石英フィルタ又は石英ウールを加熱脱着チューブに収容し、その加熱脱着チューブを加熱脱着装置付きGC/MSでPAHsが検出されなくなるまで分析し、その後、加熱脱着チューブ内で、炭素のみ残った石英フィルタに、各PAHの濃度が既知のPAHs標準物質を一定量注入し、その状態で加熱脱着装置付きGC/MSで標準PAHsを分析し、その分析値と、PAHs標準物質の各PAHの標準濃度を比較して、分析する目的のPAH毎の回収率を求めることを特徴とする多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法である。
【0019】
請求項2の発明は、加熱脱着チューブは、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で400℃、1時間加熱し、石英フィルタおよび石英ウール700℃、2時間加熱して汚染物質を除去しておく請求項1記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法である。
【0020】
請求項3の発明は、ディーゼルエンジン或いはディーゼル車を運転させて、排気管から採取したDEP或いは市販のDEP標準物質を秤量し、これを石英フィルタおよび石英ウールに付着させて加熱脱着チューブに収容して回収率評価用のサンプルを作製する請求項1又は2記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法である。
【0021】
請求項4の発明は、前記加熱脱着装置で、前記加熱脱着チューブを加熱して、炭素に吸着したPAHsを揮発させた後、これを冷却し、しかる後再加熱してガス化してカラムに通し、そのカラムから分子量220以上のPAHsをSIMモードにて質量分析する請求項1記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、PAHsの回収率を、90〜110%程度の範囲にして、加熱脱着装置付きGC/MSでの分析が行えるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で用いる、液体PAHs標準物質として市販されている16PAHsの構造式を示す図である。
【図2】本発明の方法を説明する図である。
【図3】本発明の方法に用いる加熱脱着装置付きGC/MSの概略図である。
【図4】本発明の方法によりPAHsの回収率の評価結果を示す図である。
【図5】通常のGC/MS法で、NIST製SRM1650bをそのまま分析した場合の回収率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
先ず図1に、16種の多管芳香族炭化水素(PAH)の構造式を示した。
【0026】
次に、図3により、加熱脱着装置付きGC/MS10を説明する。
【0027】
オートサンプラーとしてのサンプルボックス11には、分析に用いる加熱脱着チューブ12が多数収容され、ガスクロマトグラフ13にセットされる。
【0028】
サンプルボックス11内の加熱脱着チューブ12は、加熱脱着部14に自動的にセットされ、そこで350℃に加熱され、加熱脱着チューブ12内の石英フィルタ15Bや石英ウール15aに付着されたDEP15に吸着したPAHsがDEP(炭素)から脱着、揮発しガス化する。この揮発ガスは、クライオフォーカス部16で液体窒素により−100℃に冷却されて脱着、揮発ガスのほぼ全てを一旦回収して濃縮し、その後、回収した脱着、揮発ガスを、325℃まで、50℃/secで再加熱し、そのガスをカラム17を通し、質量分析器(MS)20でその脱着ガスを分析する。なお、18は、不要のガスを排出するスプリットラインである。
【0029】
脱着ガスの分析の際、MS20は、SIM(Selected Ion Monitoring)法で、主イオン(分子量)が220以上のPAHsを測定する。
【0030】
この分子量220以上のPAHsは、図1の多管芳香族炭化水素(PAH)の構造式中、ベンゾ(a)アントラセン(BaA)からベンゾ(ghi)ペリレンの8種類(8PAHs)が質量分析される。
【0031】
ここで、分析に用いる加熱脱着チューブ12(外径6mm、内径4mm、長さ17.8mmのパイレックスチューブ)は、あらかじめヘリウムなどの不活性雰囲気下オーブンで400℃、1時間加熱し、石英フィルタ15Bや石英ウール15aは電気炉で700℃、2時間加熱してそれぞれ汚染物質を除去しておく。
【0032】
実際の分析では、ディーゼルエンジンあるいはディーゼル車を運転させて、石英フィルタ15Bでディーゼル排気粒子15を採取した後、これをポンチで10mmφに打ち抜き、内部標準物質であるChrysene−d12を添加注入し、これをピンセット23にて適宜の大きさに折り畳んで加熱脱着チューブ12に入れて分析する。
【0033】
本発明の回収率の評価においては、上述のように採取したDEP或いは市販のDEP標準物質(例えば、NIST製SRM1650bや2975など)を20μg秤量し、用意した石英フィルタ15Bにまぶし、それでもとりきれない場合は用意した石英ウール15aでまぶしとって、加熱脱着チューブ12に入れ、内部標準物質を添加して、これをサンプルボックス11に収容し、加熱脱着装置付きGC/MS10でPAHs分析の条件下、分析を繰り返す。
【0034】
繰り返し分析のたびに、分析対象PAHの濃度減少を確認しながら、最終的に分析対象PAHが検出できなくなるまで分析を繰り返す。同じ試料で5回ほど分析を繰り返すと分析対象PAHが検出されなくなるので、その状態ですぐに、加熱脱着チューブ12a内に、液体のPAHs標準物質(例えば16PAHsが混合されているNIST製1647eなど)を一定量シリンジ24にて、石英フィルタ15B+対象PAHsを含有しないDEP15の上に注入した後、DEPに吸着させ、さらに加熱脱着チューブ12a内にヘリウムガスを注入してDEPに吸着していないPAHsをパージさせ、その回収率評価用サンプルとしての加熱脱着チューブ12aを加熱脱着装置付きGC/MS10で、上述と同条件で分析する。
【0035】
この石英フィルタ15Bは分析対象PAHを含有しないDEPと液体PAHs標準物質が混合されており、分析試料のディーゼル排気粒子に似た状態を作り出すことで、目的のPAHごとの回収率を正しく求めることが出来る。
【実施例】
【0036】
図2で説明したように、石英フィルタ15Bに付着させるDEPは、NIST製SRM2975やSRM1650bの標準DEPを用いる。但しこの標準DEPの代わりにディーゼルエンジンまたはディーゼル車を運転させた後にテールパイプから採取したDEPを用いても良い。
【0037】
先ず加熱脱着装置付きGC/MS10によるPAHs分析方法では、一般に知られている内部標準法を用いる。内部標準法はキャピラリーカラムを用いて、広い沸点範囲にわたる多くの試料成分混合物を分析する場合に多用され、最も簡便かつ精密に定量できる方法であるといわれる。内部標準法によれば、試料中にガスクロマトグラフィで検出できない不揮発成分が存在しても、定量ができる(特許文献1参照)。
【0038】
内部標準法では、目的の試料を分析する前に、各PAHと内部標準物質の面積比と濃度比(どちらがX軸・Y軸でも良い)の検量線を作成しておく。その検量線は、あとで未知濃度の試料を分析した場合に、内部標準物質との面積比から濃度比を求めるのに用いる。この濃度比に既知である内部標準物質濃度を乗じると各PAHの濃度がわかる。
【0039】
さて、本発明において、加熱脱着装置付きGC/MSによるPAHsの回収率を正しく求めるためには、市販されているDEP標準物質(NIST製1650bあるいは2975)もしくは、実際のディーゼルエンジンやディーゼル車を運転させてテールパイプから採取したDEPを加熱脱着装置付きGC/MSで繰り返し分析にかけ、Benzo(a)anthracene(ベンゾ(a)アントラセン;BaA),Chrysene(クリセン;CHR),Benzo(k)fluoranthene(ベンゾ(k)フルオランテン;BkF),Benzo(b)fluoranthene(ベンゾ(b)フルオランテン;BbF)、 Benzo(a)pyrene(ベンゾ(a)ピレン;BaP),Indeno(123−cd)pyrene(インディノ(123−cd)ピレン;IcdP),Dibenzo(a,h)anthracene(ジベンゾ(a,h)アントラセン;DahA),Benzo(ghi)pelyrene(ベンゾ(ghi)ペリレン;BghiP)の8PHAsが検出できない状態になったときすぐに、液体のPAHs標準物質(例えば16PAHsが混合されているNIST製1647eなど)を一定量、石英フィルタ+対象PAHsを含有しないDEPの上に注入し、同条件で分析する。
【0040】
この石英フィルタは分析対象PAHを含有しないDEPと液体PAHs標準物質が混合されており、分析試料のディーゼル排気粒子に似た状態を作り出すことで、目的のPAHごとの回収率を正しく求めることが出来る。
【0041】
この本発明の評価方法によるPAHs回収率の結果を表1および図4に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
表1において、8PAHsの回収率と、SRM1647eのPAHsの標準濃度と分子量を記載し、図4は、8PAHsの回収率をグラフにしたものである。
【0044】
この表1と図4より、8PAHsの回収率は、94.1〜109.4%と良好な結果が得られた。
【0045】
本発明の方法を用いず、市販のDEP標準物質(NIST1650b)の回収率を、加熱脱着装置付きGC/MS分析から求めた結果を図5に示す。
【0046】
なお図5では、図5の8PAHsの他に、図1の構造式で示したFLA(分子量202)、PYR(分子量202)も、僅かに検出されたのであわせて示した。
【0047】
この図5において、Benzo(b)fluoranthene(BbF)の回収率が405.9%とかなり高い結果となった。
【0048】
この理由として、Benzo(b)fluorantheneと同じ分子量で異性体のBenzo(j)fluorantheneがこのピークと重なっている可能性があると考えられた。
【0049】
DEP標準物質(NIST1650b)のBenzo(b)fluoranthene含有保証値は6.77±0.84(mg/kg)、Benzo(j)fluorantheneの含有保証値は、3.24±0.42(mg/kg)であり、Benzo(b)fluorantheneの半分程度の含有量があり、それらのピークが重なって大きめのピークになった可能性が高い。
【0050】
以上より、他含有物質の妨害がない状態にしてから回収率を評価しないと妨害物質により、実際より大きいピーク面積になってしまうため、本発明の方法を使うのが良いと判断される。
【0051】
以上より、本発明では、PAHsの正しい回収率を評価でき、加熱脱着装置付きGC/MS法によるPAHs分析の信頼性が増すことが可能となる。
【0052】
また、分析技術確立の確認に必要な分析バリデーションは、主に検量線の直線性と範囲、分析繰り返し再現性、検出限界と定量限界、回収率等を確認することであり、これらが良好な場合、その分析法は技術的に確立している信頼性が高いことになる。これらの項目のうち回収率が90〜110%程度の範囲で成立しないと分析法自体の確立・信頼性を疑うことになるが、本発明は、回収率以外のバリデーション項目が成立しているのに、回収率だけが成立しないという課題を解決するものである。
【符号の説明】
【0053】
10 加熱脱着装置付きGC/MS
12 加熱脱着チューブ
13 ガスクロマトグラフ(GC)
15 DEP
15B 石英フィルタ
20 質量分析器(MS)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタで、ディーゼル排気粒子(DEP)を捕捉し、その捕捉したDEPの周りに吸着している多環芳香族炭化水素類(PAHs)を、加熱脱着装置と質量検出器(MS)付きガスクロマトグラフ(GC)を連結させた加熱脱着装置付きGC/MSで分析する際の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法において、DEPが付着した石英フィルタ又は石英ウールを加熱脱着チューブに収容し、その加熱脱着チューブを加熱脱着装置付きGC/MSでPAHsが検出されなくなるまで分析し、その後、加熱脱着チューブ内で、炭素のみ残った石英フィルタに、各PAHの濃度が既知のPAHs標準物質を一定量注入し、その状態で加熱脱着装置付きGC/MSで標準PAHsを分析し、その分析値と、PAHs標準物質の各PAHの標準濃度を比較して、分析する目的のPAH毎の回収率を求めることを特徴とする多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法。
【請求項2】
加熱脱着チューブは、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気下で400℃、1時間加熱し、石英フィルタおよび石英ウール700℃、2時間加熱して汚染物質を除去しておく請求項1記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法。
【請求項3】
ディーゼルエンジン或いはディーゼル車を運転させて、排気管から採取したDEP或いは市販のDEP標準物質を秤量し、これを石英フィルタおよび石英ウールに付着させて加熱脱着チューブに収容して回収率評価用のサンプルを作製する請求項1又は2記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法。
【請求項4】
前記加熱脱着装置で、前記加熱脱着チューブを加熱して、炭素に吸着したPAHsを揮発させた後、これを冷却し、しかる後再加熱してガス化してカラムを通し、そのカラムから分子量220以上のPAHsをSIMモードにて質量分析する請求項1記載の多環芳香族炭化水素類の回収率評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249647(P2010−249647A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99103(P2009−99103)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】