説明

多発性硬化症および治療応答の同定および予測のための方法

個体における多発性硬化症(「MS」)またはMSの素因もしくはリスクの診断、および個体におけるMS治療に対する応答の予測のための方法および組成物。具体的には、予後指標、診断マーカー、またはMS治療に対する応答の予測因子としての臨床的マーカー、神経放射線学的マーカー、遺伝子マーカー、生物学的マーカー、および/または免疫学的マーカーの使用のための方法および化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多発性硬化(MS)症およびMS治療応答の予後指標、診断マーカー、または予測因子としての臨床的、遺伝学的、生物学的、および/または免疫学的マーカーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
MSは中枢神経系(CNS)に影響を与える自己免疫疾患である。CNSは脳、脊髄、および視神経から成る。CNSの神経線維はミエリンと呼ばれる脂質組織に取り囲まれて保護されており、このミエリンは神経線維の電気インパルス伝導の助けとなっている。MSでは、複数の部位でミエリンが損失し、硬化と呼ばれる瘢痕組織が残される。これらの損傷部位はプラークまたは病変としても知られる。場合によっては神経線維そのものが損傷または破壊されている。ミエリンまたは神経線維が破壊または損傷されると、神経が脳との間で電気インパルスを送受信する能力が阻害され、種々のMSの症状が引き起こされる。
【0003】
MSは疾病経過、神経病理学、および性差による偏向が一様ではない、複雑な疾患である。障害は自己免疫、炎症、神経変性、および再生不全を特徴とする。現在、顕著な神経病理が疾病の進行および再発状態と関連づけられつつある。病因学的には、MSは遺伝性疾患ではないが、遺伝学が役割を担っていると考えられる。しかしながら、MSへの感受性を増加しうる、特定の病原体への暴露または損傷機構のようないくつかの環境的要因もある。
【0004】
MS患者は4つの臨床的疾病経過のうちの1つにあると期待され、それらの経過はそれぞれ、軽度、中度、または重度に分けられる。これらには再発寛解型(RR)、一次進行型(PP)、二次進行型(SP)、および進行再発型(PR)がある。RR MS患者は明らかな特徴をもつ再発(ぶり返し、発作、または憎悪とも呼ばれる)が見られる。これらは神経学的機能の急性悪化の症状の出現である。これに続いて疾病が進行しない、部分的または完全な回復期(寛解)が起こる。PP MS患者では、発症から緩慢ではあるがほとんど持続的な疾病の悪化が見られ、明らかな再発または寛解は見られない。しかしながら、一定期間にわたる進行、不定期な安定期、および一時的な軽度の改善が、種々の速度で見られる。SP MS患者は最初に疾病の再発・寛解期間があり、その後一定した疾病悪化期間があり、これには不定期な再発、軽度の回復(寛解)、または安定期が伴うか、または伴わない。PR MS患者は発症から一定した疾病の悪化を示すが、明らかな急性再発(発作または憎悪)も見られ、これには回復が伴うか、または伴わない。RR MSとは対照的に、再発と再発の間の期間は持続的な疾病の進行を特徴とする。
【0005】
患者は急速に進行して数ヶ月で死に至る場合もあり、また、数回の再発を示した後、数十年にわたって臨床的に安定したままである場合もある。いずれの患者が進行し、いずれが相対的に安定な状態を保つかを予測することは困難である。疾病が良性なままであることが明らかな患者もいるが、患者の疾病がいずれの経過をたどるかを予測することは非常に困難である。
【0006】
今のところ、MSの治療法は存在しない。使用可能な薬剤で治療を行っても、患者の多くは最終的にSP病期に進行し、重度の障害に至る。インターフェロンおよびグラチラマー(glitiramer)酢酸塩(Copaxone(登録商標))による治療は中度の有効性を示すが、頻繁に皮下または筋肉内注射をする必要があり、また、不良な忍容性プロファイル(インフルエンザ様症状など)を示す。ナタリズマブ(Tysabri(登録商標)、ヒト化モノクローナル抗体)によるMSの治療はより有効性が高く、より忍容性が良好であるが、インターフェロンとの併用療法を受けていた患者で起こった致死的な副作用に対する懸念から、現在では、インターフェロンで効果がなかった場合の第二選択薬となっている。
【0007】
現在、正確にMSを診断し、MSの臨床的な特性評価を行い、MS治療に対する応答を予測する、信頼性のある臨床的、遺伝子的、生物学的、および/または免疫学的マーカーは存在しない。インターフェロンおよびCopaxone(登録商標)は明らかに有益であるが、治療効果は時間とともに低減し、また、有意数の患者は1つまたはそれ以上の現在可能な他の選択肢に応答しない。応答を予測するための臨床的マーカー、遺伝子マーカー、生物学的マーカー、および/または免疫学的マーカーが存在しない限り、臨床医は多くの場合、試行錯誤によって治療を行い、これによって患者は、副作用に耐え、投与対有効性を選択することを強いられる。信頼性のあるMSの診断および特性評価、およびMS治療のための1つまたはそれ以上の療法に対する臨床応答の予後指標は非常に有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の詳細な説明
本明細書に開示する方法および組成物のために使用できる、それらと共に使用できる、それらの調製に使用できる、またはそれらの製品である、分子、物質、組成物、および成分を開示する。これら、および他の物質を本明細書に開示するが、理解されるように、これらの物質の組み合わせ、亜群、相互作用、群などを開示する場合、これらの分子および化合物の様々な個別および集合的な組み合わせおよび順列を具体的に記述して開示しないかもしれないが、それらはそれぞれ本明細書において具体的に企図および開示される。例えばヌクレオチドまたは核酸を開示および言及し、そのヌクレオチドまたは核酸を含む多くの分子に施与できる多くの改変について言及する場合、ヌクレオチドまたは核酸のそれぞれ、および全ての組み合わせおよび順列、および可能な改変は、特にそうでない旨の記載がない限り、具体的に企図される。この概念は、本明細書(限定されるわけではないが、開示する分子および組成物の生成および使用の方法における段階を含む)の全ての観点に適用される。従って、実施できる種々の更なる段階がある場合、理解されるように、これらの更なる段階はそれぞれ、開示する方法の任意の特定の態様または態様の組み合わせを用いて実施することができ、それらの組み合わせはそれぞれ具体的に企図され、開示されるものと見なされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本明細書に開示するMSに関係するSNPおよびSEQ ID NO:1-171(各配列内のSNP対立遺伝子をカギ括弧で示す)を示す。
【図2】図2は、抗-TG陽性および陰性患者間の差異を示す。
【図3】図3は、抗-TPO陽性および陰性患者間の差異を示す。
【図4】図4は、MS家系において有意な連鎖を有する染色体領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載する方法および組成物の特定の態様の多くの同等物が当業者に認識される、または日常の実験の範囲内で解明される。それらの同等物は別記の特許請求の範囲に包含されると意図される。
【0011】
理解されるように、開示される方法および組成物は記載する特定の方法論、プロトコル、および試薬に限定されるものではなく、種々であり得る。また、理解されるように本明細書で使用する専門用語は単に特定の態様を記述するためのものであり、本発明の範囲(これは添付の特許請求の範囲によってのみ制限される)を制限することを意図するものではない。
【0012】
特に記載しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本明細書との関連で当業者に一般的に理解される意味を有する。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形(「a」、「an」、および「the」)は、特に明記しない限り、複数形も包含することに留意する必要がある。従って、例えば「ヌクレオチド(a nucleotide)」という記載は複数のそれらヌクレオチドを含み、「ヌクレオチド(the nucleotide)」という記載は1つまたはそれ以上のヌクレオチドおよび当業者に知られる同等物などをいう。
【0014】
「必要に応じた」または「必要により」とは、それに続いて記載する事象、状況、または物質が発生または存在してもしなくてもよく、その記述は事象、状況、または物質が発生または存在する場合、および発生または存在しない場合を含む。
【0015】
本明細書において、範囲は「およそ」ある特定の値から、そして/または「およそ」別の特定の値までとして表される場合がある。それらの範囲を表す場合、別の態様はある特定の値から、そして/または他の特定の値までを含む。同様に、理解されるように、前述の「およそ」を使用することによって値を近似値で表す場合、特定の値は別の態様をなす。更に理解されるように、範囲のそれぞれの端点は他方の端点との関係においても、他方の端点と独立してでも、有意である。更に理解されるように、多くの数値を本明細書に開示し、それぞれの数値はその数値自体に特定の数値も加えた「約」としても開示される。例えば「10」という数値を開示する場合、「約10」も開示される。また理解されるように、数値を、その数値「と同じか、またはそれ未満」と開示する場合、「その数値と同じか、またはそれ以上」および数値間の可能な範囲も開示され、これは当業者に適切に理解されるとおりである。例えば「10」という数値を開示する場合、「10またはそれ未満」並びに「10またはそれ以上」も開示される。また、理解されるように、本明細書を通して、データは多くの異なる形式で提供され、このデータは終点および開始点、およびデータ・ポイントの任意の組み合わせでの範囲を表す。例えば特定のデータ・ポイント「10」および特定のデータ・ポイント「15」を開示する場合、これは10および15より大きい、それと同じかまたはそれ以上、それ未満、それと同じかまたはそれ未満、およびそれと同じであるか、10および15の間であると見なされる。また、理解されるように2つの特定の単位間のそれぞれの単位も開示される。例えば10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される。
【0016】
本明細書で使用する「被験体」という用語は任意の投与標的を意味する。被験体は脊椎動物、例えば哺乳動物であってもよい。従って、被験体はヒトであってもよい。用語は特定の年齢または性別を示すものではない。従って成体および新生被験体、並びに胎仔(児)のオスまたはメスのいずれも包含されると意図される。患者とは、疾病または障害に罹患した被験体をいう。特に記載しない限り、「患者」という用語はヒトおよび脊椎動物被験体を含む。
【0017】
本明細書で使用する「バイオマーカー」または「生物学的マーカー」という用語は生物学的状態の指標を意味し、正常な生物学的過程、病理過程、または治療もしくは他の介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定される特性を含みうる。ある態様では、バイオマーカーは、個体における疾病のリスクもしくは進行または疾病の感受性と関係するタンパク質の発現または状態の変化を示すことができる。ある態様では、バイオマーカーは以下のものを1つまたはそれ以上含んでもよい:遺伝子、タンパク質、糖タンパク質、代謝物、サイトカイン、および抗体。
【0018】
本明細書で使用する「インビトロ診断」という用語は、疾病、症状、感染、および/または治療応答の存在、素因、またはリスクを検出する、または示すために使用することができる診断検査を意味する。ある態様では、インビトロ診断を研究または他の医療設定に使用してもよい。別の態様では、消費者が自宅でインビトロ診断を使用してもよい。インビトロ診断製品は、疾病またはその後遺症を治癒、緩和、治療、または予防するために疾病または他の症状のインビトロ診断(健康状態の確認を含む)に使用することを意図する試薬、装置、およびシステムである。ある態様では、インビトロ診断製品は人体から採取した標本の回収、調製、および検査に使用することを意図してもよい。ある態様では、インビトロ診断製品は1つまたはそれ以上の臨床検査、例えば1つまたはそれ以上のインビトロ診断検査を含んでもよい。本明細書で使用する「臨床検査」という用語は、体内の血液、尿、または他の組織もしくは物質のサンプルを試験することを含む、1つまたはそれ以上の医学的または実験的手技を意味する。
【0019】
ある態様では、本明細書に記載する方法およびインビトロ診断製品を使用して、リスクのある患者、MSと関係する可能性のある非特異的症状を有する患者、および/または最初のエピソードからなる症候群(Clinically Isolated Syndrome)を有する患者におけるMS診断を行うことができる。別の態様では、本明細書に記載する方法およびインビトロ診断製品を使用して、リスクがある状態、MSと関係する可能性のある非特異的症状、および/または最初のエピソードからなる症候群から完全に診断されたMSへ進行するリスクをスクリーニングすることができる。ある態様では、本明細書に記載する方法およびインビトロ診断製品を使用して、MSと共通した症状をもつ疾病および障害を除外するためのスクリーニングを行うことができる。更に別の態様では、本明細書に記載する方法およびインビトロ診断製品によって、MSに罹患した疑いのある患者において現在の診断評価に含めるべき診断情報を明らかにすることができる。
【0020】
薬剤または医薬品とは、疾病の予防、診断、緩和、治療、または治癒に使用される任意の物質を意味する。これらの用語には、例えばワクチンが含まれる。本発明はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で本発明の多型を含むMS関連遺伝子の相補的領域にハイブリダイズする能力のあるオリゴヌクレオチドである核酸分子を含む。核酸はDNAまたはRNAであってもよく、また、1本鎖または2本鎖であってもよい。オリゴヌクレオチドは天然に存在するのもであっても合成でもよいが、一般的に合成法によって調製される。本発明の好ましいオリゴヌクレオチドはDNAのセグメントまたはその相補体を含む。セグメントは通常、5から100個の連続する塩基であり、多くの場合、5、10、12、15、20、または25ヌクレオチドから10、15、30、25、20、50、または100ヌクレオチドの範囲である。5-10、5-20、10-20、12-30、15-30、10-50、20-50、または20-100塩基の核酸が一般的である。多型部位はセグメントのいずれの位置に存在してもよい。
【0021】
本発明のオリゴヌクレオチドはRNA、DNA、またはいずれかの誘導体であってもよい。それらのオリゴヌクレオチドの最小サイズは、オリゴヌクレオチドと本発明の核酸分子上の相補的配列の間で安定なハイブリッドが形成されるのに必要なサイズである。本発明は、例えば核酸分子の同定のためのプローブまたは核酸分子の生成のためのプライマーとして使用できるオリゴヌクレオチドを含む。好ましいオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、本発明の1塩基変化多型または同じ位置にある野生型ヌクレオチドを含む。好ましくは、目的のヌクレオチドがプローブの中央に位置する。
【0022】
ある態様では、目的のヌクレオチドはプライマーの3'位に位置する。本発明の別の態様では、オリゴヌクレオチド・アレイを提供し、アレイ上の分離した位置は1つまたはそれ以上の所定の多型配列に相補的である。それらのアレイは一連のオリゴヌクレオチドを含み、そのそれぞれが異なる多型に特異的にハイブリダイズすることができる。目的のアレイは、薬理学的スクリーニングのために他の遺伝子配列、特に、他の目的とする配列(多型を含む)を更に含んでもよい。他のヒト多型でのように、本発明の多型はより一般的な方面、例えば法医学、父子鑑定、連鎖解析、およびポジショナルクローニングも適用される。
【0023】
MSの診断、MSの臨床的特徴付け、およびMS治療のための1つまたはそれ以上の療法に対する応答を予測または推定するための方法を本明細書に記載する。ある態様では、本明細書に開示する方法を用いて被験体におけるMSを診断することができる。ある態様では、本明細書に開示する方法を用いて被験体におけるMSの臨床経過または状態の特徴付けを行うことができる。ある態様では、本明細書に開示する方法を用いて被験体における既存のMS治療または開発中もしくは未開発のMS治療に対する応答を予測することができる。ある態様では、方法を用いて患者の免疫療法に対する応答性がより高いか否かを判定することができる。ある態様では、この方法を用いて1つまたはそれ以上のインターフェロンによる治療に対する応答を予測することができる。別の態様では、本明細書に記載する方法を用いて1つまたはそれ以上の免疫学的物質による治療に対する応答を予測することができる。別の態様では、方法を用いてCopaxone(登録商標)での治療に対する応答を予測することができる。別の態様では、本明細書に記載する方法を用いてTysabri(登録商標)での療法に対する応答を予測することができる。
【0024】
ある態様では、特定のマーカー(例えば臨床的マーカー、バイオマーカー、神経放射線学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカー)の存在または不在を用いてMSの素因を有しうる、またはMS発症のリスクもしくは感受性のより高い個体を同定してもよい。更に別の態様では、臨床的マーカー、神経放射線学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーを用いて、1つまたはそれ以上のMS療法に対する予測される応答に従ってMS患者の階層化を行ってもよい。別の態様では、臨床的マーカー、神経放射線学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーを用いて1つまたはそれ以上のMS治療または療法に対する被験体の応答を予測してもよい。
【0025】
それらの態様の一つでは、MSに関係する特定の遺伝子マーカーの存在または不在を用いて1つまたはそれ以上のMS療法に対する応答を予測してもよい。更に別の態様では、MSに関係する特定の免疫学的マーカーまたは抗体の存在または不在を用いて1つまたはそれ以上のMS療法に対する応答を予測してもよい。更に別の態様では、特定の表現型変異体(variables)の存在または不在をMSに関係する特定の遺伝子マーカーと併用して、被験体におけるMSを診断してもよい。更に別の態様では、表現型マーカーおよび/または遺伝子マーカーの存在または不在を用いてMS患者の臨床状態および患者が特定のMS療法によって好ましい臨床転帰を有する可能性がより高いか否かを確認してもよい。
【0026】
ある態様では、MS患者における特定の型の抗体の存在または不在を用いて1つまたはそれ以上の治療または療法に対する被験体の応答を予測することができる。それらの態様の一つでは、特定の分子に対する抗体がMSの病状またはMS治療に対する臨床応答の指標または予測因子であってもよい。別の態様では、それ自体に対する抗体(または自己抗体)を、特定のMS患者集団の同定に用いる、そして/またはMS療法に対する応答の予測因子として用いてもよい。ある態様では、特定の抗体の存在または不在を用いて、被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定してもよい。それらの態様の一つでは、抗甲状腺抗体(またはATAb)の存在または不在を用いてMS患者の同定または階層化を行い、特定のMS治療または療法に対する応答を予測してもよい。例えば、ペルオキシダーゼおよびサイログロブリンに対するATAbを用いてMS患者の特定の亜群の階層化、特徴付け、および同定を行うか、あるいは被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定してもよい。本明細書で使用する「感受性」または「感受性が高い」という用語は、個体がMSを有するか、またはMSの素因を有する、もしくはMS発症のリスクがあることを意味する。
【0027】
ある態様では、ATAb(例えば抗チロポエチン(抗-TPO))を本明細書に記載する方法に使用することができる。別の態様では、抗サイログロブリン(抗-TG)を本明細書に記載する方法に従って使用してもよい。更に別の態様では、抗-TPOおよび抗-TGの両方を、特定のMS患者集団の同定に用いる、そして/またはMS療法に対する応答の予測因子として用いてもよい。別の態様では、抗-TPOおよび抗-TGを用いて被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定してもよい。ある態様では、ATAb陽性の個体を、1つまたはそれ以上のMS療法に対する予測可能な応答を有するMS患者集団のメンバーとして同定してもよい。ある態様では、ATAb陽性の個体を、更なる健康状態および/または疾病も有する、または有する素因のある可能性または見込みがあるMS患者集団のメンバーとして同定してもよい。例えば、1つまたはそれ以上のATAbが陽性である個体を、甲状腺疾患および/または他の疾病もしくは症状を有する可能性がより高い、またはより低い個体として同定してもよい。別の態様では、1つまたはそれ以上のATAbが陰性である個体を、MS治療または療法に対する予測可能な応答を有するMS患者の亜群として同定してもよい。更に別の態様では、ATAb陽性または陰性の個体をより軽度の、またはより重度の疾患を有するMS患者集団の一部として同定または階層化してもよい。
【0028】
ある態様では、個体における特定の臨床的マーカー、神経放射学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーの存在または不在が、疾病もしくは疾病転帰の存在または特定のMS療法に対する個体の応答を予測するための別の症状または基準に関係してもよい。ある態様では、特定の臨床的マーカー、神経放射学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーの存在または不在を歩行状態、神経学的状態、性別、および他の状態または症状と併せて、MS疾患の予後または1つもしくはそれ以上のMS療法もしくは治療に対する個体の応答を予測してもよい。例えば、特定の臨床的マーカー、神経放射学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーが陽性であり自力歩行ができる個体をより重篤度の低い疾病状態を有すると予測してもよい。あるいはまた、特定の臨床的マーカー、神経放射学的マーカー、遺伝子マーカー、および/または免疫学的マーカーが陰性であり自力歩行ができる個体をより重篤度の低い疾病状態を有すると予測してもよい。
【0029】
ある態様では、抗体(例えばATAb)を当該分野で知られる方法、例えば化学発光法によって検出することができる。ATAbレベルが約25 IU/mlから約150 IU/ml、約150 IU/ml、または約150 IU/ml以上の範囲である場合に、患者が1つまたはそれ以上のATAbについて陽性であると見なすことができる。ある態様では、ATAb陽性患者は1つまたはそれ以上のATAbが約25 IU/ml、30 IU/ml、35 IU/ml、40 IU/ml、45 IU/ml、50 IU/ml、55 IU/ml、60 IU/ml、65 IU/ml、70 IU/ml、75 IU/ml、80 IU/ml、85 IU/ml、90 IU/ml、95 IU/ml、100 IU/ml、105 IU/ml、110 IU/ml、115 IU/ml、120 IU/ml、125 IU/ml、130 IU/ml、135 IU/ml、140 IU/ml、145 IU/ml、および150 IU/mlまたはそれ以上であってもよい。必要により、ATAb陽性患者は1つまたはそれ以上のATAbが0-3 IU/mL、0-4 IU/mL、0-5 IU/mL、0-10 IU/mL、0-15 IU/mL、および0-20 IU/mLであってもよい。それらの態様の一つでは、抗-TPOレベルが約75 IU/mlから約100 IU/ml以上の範囲の値と等しいか、またはそれより高い場合に、被験体は抗-TPO陽性であると見なしてもよい。別の例では、抗-TGレベルが約25 IU/mlから50 IU/ml以上の範囲の値と等しいか、またはそれより高い場合に、被験体は抗-TG陽性であると見なしてもよい。別の例では、ATAbレベルが約150 IU/mlと等しいかそれより高い場合にATAb陽性、レベルが約50 IU/mlより低い場合にATAb陰性と見なしてもよい。
【0030】
ある態様では、個体における特定のタイプの免疫調節因子の血漿レベルをバイオマーカーとして用い、被験体における1つまたはそれ以上の治療または療法に対する応答を予測することができる。それらの態様の一つでは、特定のサイトカインの血漿レベルが被験体におけるMSの指標もしくは予測因子、またはMS療法に対する臨床応答の予測因子であってもよい。別の態様では、特定のサイトカインの血漿レベルを1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在または不在と併用して、被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定してもよい。更に別の態様では、特定のサイトカインの血漿レベルを1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在または不在と併用して、MS患者の同定または階層化、および特定のMS治療または療法に対する応答を予測してもよい。それらの態様の一つでは、特定のリンホカイン、インターロイキン、およびケモカインの血漿レベルを1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在と併用して、MS患者の診断および特定のMS療法に対する応答を予測してもよい。サイトカインは、本明細書に開示するものと同様に、タンパク質、ペプチド、および糖タンパク質であってもよい。特定の態様では、サイトカインは腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1-β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-13(IL-13)、インターロイキン-γ(IFN-γ)、インターロイキン-2(IL-2)、およびインターロイキン-12(IL-12)を含んでもよい。ある態様では、1つまたはそれ以上のサイトカインをTH1型(IFN-γ、IL-2、IL-12など)、TH2型(IL-4、IL-5、IL-10、IL-13など)、およびモノカイン(TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8など)に分類してもよい。別の態様では、更なる免疫調節因子(例えばCD-40リガンド(CD-40L)およびインターロイキン-2レセプター(IL-2r))を特定の遺伝子マーカーの存在または不在と併用してMS患者の診断および特定のMS療法に対する応答の予測を行ってもよい。
【0031】
ある態様では、1つまたはそれ以上のサイトカインおよび免疫調節因子(例えばTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、およびIL-2r)の血漿レベルを用いてMS患者の特定の亜群の階層化、特徴付け、もしくは同定を行うか、あるいは被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定することができる。それらの態様の一つでは、健常個体の1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルをMS検査を行う被験体のサイトカインレベルと比較して、被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定してもよい。例えば1つまたはそれ以上のサイトカインおよび免疫調節因子(例えばTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、およびIL-2r)の血漿レベルを1検体またはそれ以上の健常個体において測定し、正常サイトカインレベルをMS検査を行う被験体のサイトカインレベルと比較してもよく、ここで、このサイトカインレベルと正常サイトカインレベルとの差異はMS、あるいはMS発症の素因またはリスクもしくは感受性の指標である。
【0032】
ある態様では、1つまたはそれ以上のサイトカインの血漿レベルを用いて被験体の臨床状態を明らかにすることができる。それらの態様の一つでは、1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルによって、被験体を再発寛解型(RR)、一次進行型(PP)、二次進行型(SP)、および進行再発型(PR)から成る4つの臨床的疾病経過の1つに階層化または特徴付けしてもよい。
【0033】
ある態様では、個体におけるサイトカインおよび免疫調節要素の血漿レベルは約0.0 pg/mlから1000 pg/mlの範囲であってもよい。ある態様では、集団における1つまたはそれ以上のサイトカインおよび免疫調節因子の血漿レベルの平均値は約0.1 pg/mlから約500 pg/mlまたはそれ以上の範囲であってもよい。ある態様では、MS集団における1つまたはそれ以上のサイトカインの血漿レベルの平均値は約0.1 pg/mlから約40 pg/mlの範囲であってもよい。
【0034】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIFN-γの血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mL、2 pg/mlから10 pg/ml、より好ましくは4 pg/mlから8 pg/ml、更に好ましくは5 pg/mlから6 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIFN-γの血漿レベルの平均値は0.0 pg/mlから2 pg/ml、より好ましくは0.1 pg/mlから1 pg/ml、更に好ましくは0.15 pg/mlから0.5 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIFN-γの血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は2 pg/mlから5 pg/mlの範囲、RR MS患者は4 pg/mlから7 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は2 pg/mlから5 pg/mlの範囲。
【0035】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-12の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから6 pg/mL、0.1 pg/mlから15 pg/ml、より好ましくは4 pg/mlから12 pg/ml、更に好ましくは6 pg/mlから10 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-12の血漿レベルの平均値は0.0 pg/mlから8 pg/ml、より好ましくは0.5 pg/mlから3 pg/ml、更に好ましくは1 pg/mlから2 pg/mlであってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-12の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は0.1 pg/mlから1 pg/mlの範囲、RR MS患者は8 pg/mlから12 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は4 pg/mlから7 pg/mlの範囲。
【0036】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-2の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから12 pg/mLの範囲、0.1 pg/mlから15 pg/mlの範囲、より好ましくは4 pg/mlから10 pg/mlの範囲、更に好ましくは6 pg/mlから8 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-2の血漿レベルの平均値は0.0 pg/mlから8 pg/mlの範囲、より好ましくは0.5 pg/mlから3 pg/mlの範囲、更に好ましくは1 pg/mlから2 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-2の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は0.1 pg/mlから1 pg/mlの範囲、RR MS患者は6 pg/mlから10 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は1 pg/mlから4 pg/mlの範囲。
【0037】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-4の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mLの範囲、0.1 pg/mlから6 pg/mlの範囲、より好ましくは1 pg/mlから6 pg/mlの範囲、更に好ましくは2 pg/mlから4 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-4の血漿レベルの平均値は0 pg/mlから1 pg/mlの範囲、より好ましくは0.05 pg/mlから0.5 pg/mlの範囲、更に好ましくは0.06 pg/mlから0.2 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-4の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は0.1 pg/mlから1 pg/mlの範囲、RR MS患者は1 pg/mlから6 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は0.5 pg/mlから4 pg/mlの範囲。
【0038】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-5の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mLの範囲、0.1 pg/mlから8 pg/mlの範囲、より好ましくは1 pg/mlから6 pg/mlの範囲、更に好ましくは2 pg/mlから5 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-5の血漿レベルの平均値は1 pg/mlから8 pg/mlの範囲、より好ましくは2 pg/mlから6 pg/mlの範囲、更に好ましくは3 pg/mlから5 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-5の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は0.1 pg/mlから2 pg/mlの範囲、RR MS患者は2 pg/mlから7 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は1 pg/mlから4 pg/mlの範囲。
【0039】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-10の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから18 pg/mLの範囲、12 pg/mlから25 pg/mlの範囲、より好ましくは14 pg/mlから20 pg/mlの範囲、更に好ましくは16 pg/mlから19 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-10の血漿レベルの平均値は5 pg/mlから12 pg/mlの範囲、より好ましくは7 pg/mlから11 pg/mlの範囲、更に好ましくは9 pg/mlから10 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-10の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は1 pg/mlから4 pg/mlの範囲、RR MS患者は12 pg/mlから20 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は8 pg/mlから112 pg/mlの範囲。
【0040】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-13の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mLの範囲、1 pg/mlから10 pg/mlの範囲、より好ましくは2 pg/mlから8 pg/mlの範囲、更に好ましくは4 pg/mlから6 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-13の血漿レベルの平均値は0.0 pg/mlから3 pg/mlの範囲、より好ましくは0.2 pg/mlから1.5 pg/mlの範囲、更に好ましくは0.5 pg/mlから1 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-13の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は1 pg/mlから4 pg/mlの範囲、RR MS患者は12 pg/mlから20 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は8 pg/mlから112 pg/mlの範囲。
【0041】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-1βの血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから36 pg/mLの範囲、25 pg/mlから45 pg/mlの範囲、より好ましくは30 pg/mlから40 pg/mlの範囲、更に好ましくは33 pg/mlから37 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-1βの血漿レベルの平均値は5 pg/mlから20 pg/mlの範囲、より好ましくは10 pg/mlから15 pg/mlの範囲、更に好ましくは12 pg/mlから15 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-1βの血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は5 pg/mlから10 pg/mlの範囲、RR MS患者は30 pg/mlから40 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は20 pg/mlから30 pg/mlの範囲。
【0042】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-6の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mLの範囲、5 pg/mlから20 pg/mlの範囲、より好ましくは8 pg/mlから16 pg/mlの範囲、更に好ましくは10 pg/mlから14 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-6の血漿レベルの平均値は1 pg/mlから10 pg/mlの範囲、より好ましくは2 pg/mlから6 pg/mlの範囲、更に好ましくは3 pg/mlから5 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-6の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は1 pg/mlから10 pg/mlの範囲、RR MS患者は4 pg/mlから12 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は1 pg/mlから10 pg/mlの範囲。
【0043】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインIL-8の血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから5 pg/mLの範囲、1 pg/mlから8 pg/mlの範囲、より好ましくは1.5 pg/mlから5 pg/mlの範囲、更に好ましくは2 pg/mlから4 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインIL-8の血漿レベルの平均値は1 pg/mlから10 pg/mlの範囲、より好ましくは2 pg/mlから6 pg/mlの範囲、更に好ましくは3 pg/mlから5 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインIL-8の血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は1 pg/mlから8 pg/mlの範囲、RR MS患者は0.5 pg/mlから5 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は0.5 pg/mlから6 pg/mlの範囲。
【0044】
ある態様では、MS集団におけるサイトカインTNF-αの血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから22 pg/mLの範囲、0.5 pg/mlから8 pg/mlの範囲、より好ましくは1 pg/mlから5 pg/mlの範囲、更に好ましくは2 pg/mlから4 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるサイトカインTNF-αの血漿レベルの平均値は0.1 pg/mlから5 pg/mlの範囲、より好ましくは0.5 pg/mlから4 pg/mlの範囲、更に好ましくは1 pg/mlから2 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のサイトカインTNF-αの血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は0.0 pg/mlから2 pg/mlの範囲、RR MS患者は0.5 pg/mlから5 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は0.5 pg/mlから6 pg/mlの範囲。
【0045】
別の態様では、1つまたはそれ以上の免疫調節因子(例えばCD-40LおよびIL-2r)の血漿レベルを用いてMS患者の特定の亜群の階層化、特徴付け、もしくは同定を行うか、あるいは被験体におけるMS発症の素因またはリスクもしくは感受性を測定することができる。それらの態様の一つでは、MSに罹患した被験体における1つまたはそれ以上の免疫調節因子の血漿レベルの平均値が約50 pg/mlから約500 pg/mlの範囲であってもよい。ある態様では、MS集団におけるCD-40Lの血漿レベルの平均値は約20 pg/mlから100 pg/mlの範囲、より好ましくは40 pg/mlから80 pg/mlの範囲、更に好ましくは50 pg/mlから70 pg/mlの範囲であってもよい。必要により、CD-40Lの血漿レベルは0 pg/mLから244 pg/mL未満の範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるCD-40Lの血漿レベルの平均値は60 pg/mlから100 pg/mlの範囲、より好ましくは70 pg/mlから90 pg/mlの範囲、更に好ましくは75 pg/mlから85 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のCD-40Lの血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は100 pg/mlから130 pg/mlの範囲、RR MS患者は45 pg/mlから65 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は40 pg/mlから60 pg/mlの範囲。
【0046】
ある態様では、MS集団におけるIL-2rの血漿レベルの平均値は約0 pg/mLから1033 pg/mL、350 pg/mlから500 pg/mlの範囲、より好ましくは430 pg/mlから480 pg/mlの範囲、更に好ましくは450 pg/mlから470 pg/mlの範囲であってもよい。別の態様では、健常コントロール集団におけるIL-2rの血漿レベルの平均値は400 pg/mlから600 pg/mlの範囲、より好ましくは450 pg/mlから550 pg/mlの範囲、更に好ましくは475 pg/mlから525 pg/mlの範囲であってもよい。更に別の態様では、4つの臨床的疾病経過からの被験体のIL-2rの血漿レベルの平均値は以下であってもよい:PP MS患者は400 pg/mlから500 pg/mlの範囲、RR MS患者は400 pg/mlから500 pg/mlの範囲、そしてSP MS患者は450 pg/mlから550 pg/mlの範囲。
【0047】
本明細書では、MSに関係する遺伝子または染色体領域における一連の多型を開示する。多型の検出は、MSおよび他の関連症状に関する遺伝的リスクまたは感受性を評価するための診断アッセイの設計および実施に有用である。多型の分析は、MS治療に合わせてカスタマイズした予防および治療計画の設計にも有用である。多型の検出はMS治療のための薬剤の臨床試験の実施にも有用である。本明細書には、被験体におけるMSの臨床スクリーニングおよび診断、特定の治療に対して応答する可能性が最も高い患者の同定、MS療法の結果のモニタリング、そして薬剤スクリーニングおよび創薬のための方法および組成物も提供する。
【0048】
多型とは、集団における2つまたはそれ以上の遺伝的に決定される選択的配列または対立遺伝子の発生をいう。多型遺伝子マーカーまたは部位は、相違が起こる遺伝子座にある。ある態様では、遺伝子マーカーは少なくとも2つの対立遺伝子を有し、それぞれが所定の集団の1%を超える頻度で、より好ましくは10%または20%を超える頻度で起こる。多型遺伝子座は、小さいものでは1塩基対であってもよい。
【0049】
多型遺伝子マーカーには一塩基多型(SNP)、制限断片長多型、タンデム反復数多型(variable number of tandem repeats:VNTR)、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチド反復、トリヌクレオチド反復、テトラヌクレオチド反復、単純配列反復、および挿入因子がある。
【0050】
一塩基多型(SNP)は1つのヌクレオチドが占める多型部位(対立遺伝子配列間で変化する部位)に起こる。一塩基多型は多型部位において1個のヌクレオチドが別のもので置換されて起こる。トランジション(transition)は1個のプリンの他のプリンでの置換、または1個のピリミジンの別のピリミジンでの置換である。トランスバージョン(transversion)はプリンのピリミジンでの置換、またはその逆である。一塩基多型は、参照対立遺伝子と比較して1個のヌクレオチドが欠失するか、または1個のヌクレオチドが挿入されるかによっても起こる。
【0051】
ある態様では、1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在または不在によって、個体がMSのリスクを有するか否か、または感受性が高いか否かを予測することができる。それらの態様の一つでは、1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーを、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の使用によって疾病表現型と関連付けてもよい。当業者に一般的に知られているように、GWASは目的(例えばMS)の特性または表現型との遺伝学的関係を同定するために設計された、所定のゲノムの全長にわたる遺伝子多型分析である。MSを有する人々において遺伝子多型の頻度がより高ければ、変異はMSに「関係する」と言われる。MSに関係する多型は、疾病表現型を直接引き起こすか、または疾病表現型における個体差に影響を与える近傍の遺伝子変異と共に連鎖不平衡である場合もある。本明細書で使用する連鎖不平衡は、2つまたはそれ以上の遺伝子座における対立遺伝子座のランダムでない関連性である。
【0052】
ある態様では、当該分野で知られるDNAマイクロアレイを用いてGWASを行ってもよい。アレイに基づく検出を行って遺伝子多型を検出することができる。市販のアレイ(例えばAffymetrix社(カリフォルニア州サンタクララ市)または他の製造者のもの)を用いて多型を検出してもよい。核酸アレイの操作に関する総説には以下がある:Sapolskyら(1999) “High-throughput polymorphism screening and genotyping with high-density oligonucleotide arrays.” Genetic Analysis: Biomolecular Engineering 14:187-192; Lockhart (1998) “Mutant yeast on drugs” Nature Medicine 4:1235-1236;Fodor (1997) “Genes, Chips and the Human Genome.” FASEB Journal 11:A879;Fodor (1997) “Massively Parallel Genomics.” Science 277: 393-395;およびCheeら(1996) “Accessing Genetic Information with High-Density DNA Arrays.” Science 274:610-614(これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0053】
当該分野で知られるように、種々のプローブアレイを使用して、目的の表現型に相関しうる多型の検出を行うことができる。ある態様では、DNAプローブアレイチップ、または、より大きなDNAプローブアレイ・ウエハー(個々のチップはこのウエハーを分割して得られる)を使用してもよい。そのような態様の一つでは、DNAプローブアレイ・ウエハーは、DNAプローブ(短いDNAセグメント)が高密度に配列されたガラスウエハーを含んでもよい。これらのウエハーはそれぞれ、例えば、(例えば目的の多型を含みうる個体または集団由来の)サンプルDNA配列を認識するのに使用される数百万のDNAプローブを保持できる。ガラスウエハー上の一連のDNAプローブによるサンプルDNAの認識は、DNAハイブリダイゼーションによって行われる。DNAサンプルがDNAプローブのアレイとハイブリダイズする場合、サンプルは、サンプルDNA配列に相補的であるこれらのプローブに結合する。ある個体でサンプルDNAがいずれのプローブに最も強く結合するかを評価することにより、サンプル中に既知の核酸配列が存在するか否かを確認し、それによって核酸中に見られる多型が存在するか否かを確認することができる。
【0054】
ある態様では、対立遺伝子の情報を得るためのDNAプローブアレイの使用は、一般に以下の段階を含む:DNAプローブアレイの設計および製造、サンプルの調製、サンプルDNAのアレイへのハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション事象の検出、および配列決定のためのデータ分析。それらの態様の一つでは、半導体製造から改変した工程を用いてウエハーを製造して費用対効果および高品質を実現させてもよく、それらは例えばAffimetrix社(カリフォルニア州サンタクララ市)から入手できる。
【0055】
ある態様では、MSに関係し、MSの素因または高リスクもしくは感受性、あるいはMS療法に対する応答の診断に用いられる遺伝子マーカーは、1つまたはそれ以上のSNPを含んでもよい。本明細書で開示するように、SNPはその名称または特定の配列内での位置によって表してもよい。図1のSEQ ID NOで同定されたSNPを角括弧で示す。例えば図1のSEQ ID NO:1のSNP“[C/G]”は配列中のその位置にあるヌクレオチド塩基(または対立遺伝子)がシトシンまたはグアニンでありうることを示す。図1の各SEQ ID NOのSNPに隣接するヌクレオチドは、ゲノム中のSNPの位置を同定するのに使用しうる隣接配列である。
【0056】
本明細書で使用するように、本明細書に開示するヌクレオチド配列は該ヌクレオチド配列の相補体も包含する。更に、本明細書で使用する“SNP”という用語は、一連の対立遺伝子のうちの任意の対立遺伝子を包含する。“対立遺伝子”という用語は、SNPを特徴づけるヌクレオチドの選択肢の中の特定のヌクレオチドをいう。
【0057】
本明細書に記載するSNPは、SEQ ID NO:1-171で示す配列およびSEQ ID NO:1-171で示す配列の相補体からなる群から選択される配列内に位置するSNPを含む単離されたポリヌクレオチドを含んでもよい;ここで、SNPの特定の対立遺伝子(特定のヌクレオチド塩基)の存在はMS発症の傾向を示すか、またはMSを有する被験体を同定するのに用いてもよい。ある態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-171で示す配列およびSEQ ID NO:1-171で示す配列の相補体からなる群から選択される。別の態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:1-171で示す配列およびSEQ ID NO:1-171で示す配列の相補体からなる群から選択される配列の少なくとも一部を含む。
【0058】
ある態様では、MSに関係し、MSの素因もしくは高リスク、またはMS療法に対する応答の診断に用いられる多型は、染色体の特定の領域に位置する1つまたはそれ以上の遺伝子座を含んでもよい。ある態様では、MSに関係する多型は以下を含む1つまたはそれ以上の染色体領域から選択してもよい:1p21.1、2p23.2-p23.1(ALK遺伝子)、3q13.31(ZBTB20遺伝子)、6p21.33-p21.32(HLA領域)、6p21.33(TRIM40遺伝子)、6q16.3-q21, 8q12.1(RP1遺伝子)、9q21.13、12q12-q13.11(ANO6遺伝子)、14q32.11(TTC7B遺伝子)、15q26.2(BC037497遺伝子)、15q22(TPM1遺伝子)、16p13.13(KIAA0350/CLEC16A遺伝子)、16q12.1、18q11.2、18q21.1(ZBTB7C遺伝子)、およびXq21.1(ITM2A遺伝子の近傍)。
【0059】
ある態様では、本明細書に開示する方法は、個体における1つまたはそれ以上の多型の存在のアッセイを含んでもよく、これには当該分野で知られる方法が含まれうる。それらの態様の一つでは、個体における遺伝子多型をアッセイする方法は、1つまたはそれ以上の遺伝子型同定アッセイ、例えばSNPアレイ、PCRによるSNP遺伝子型同定、DNAハイブリダイゼーション、蛍光顕微鏡、および当該分野で知られる他の方法を用いて、MSに関係するSNPの存在または不在に関して個体をアッセイすることを含んでもよい。別の態様では、MSに関係する1つまたはそれ以上のSNPマーカーの存在または不在をアッセイする方法は、個体由来のヌクレオチドサンプルの提供、および1つまたはそれ以上のSNPマーカーの存在または不在に関するヌクレオチドサンプルのアッセイを含んでもよい。それらの態様の一つでは、ヌクレオチドサンプルには、例えば生体液または組織が含まれる。生体液の例には、例えば全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、涙、または唾液がある。組織の例には、例えば結合組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織、およびそれらを組み合わせたものがある。
【0060】
ある態様では、MSを有する被験体またはMS発症の素因もしくはリスクがある個体を同定する方法を提供する。別の態様では、MS治療または療法に対する応答を予測する方法を提供する。ある態様では、方法は以下の段階:被験体からサンプルを得ること;1つまたはそれ以上のバイオマーカー(例えば本明細書に開示するサイトカイン、免疫調節因子、および抗体)の血漿レベルを測定すること;およびMSに関係する対立遺伝子、多型、遺伝子マーカーの1つまたはそれ以上を検出することを含み、ここでバイオマーカーが一定の血漿レベルであり、MSに関係する1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーが同定されれば、これは被験体がMSを有するか、または個体がMS発症の素因もしくはリスクを有することを示す。例えば被験体から試験サンプルを得、本明細書に記載する1つまたはそれ以上のサイトカインまたは免疫調節因子の血漿レベルを試験し、また、1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在または不在を試験してもよい。その後、サイトカインレベルおよび1つまたはそれ以上の遺伝子マーカーの存在または不在を示す試験結果を用いて、MS患者の特定の亜集団を明らかにするか、あるいは被験体におけるMS発症の素因もしくはリスクの測定またはMS療法に対する応答の予測を行ってもよい。試験サンプルは、例えば生体液または組織であってもよい。生体液の例には、例えば全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、涙、または唾液がある。組織の例には、例えば結合組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織、およびそれらを組み合わせたものがある。
【0061】
ある態様では、以下を含む段階によって、MS療法に対する応答を予測するか、あるいは、MSまたはMS発症の素因もしくはリスクを有する個体を同定することができる:被験体からの試験サンプルの回収、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、IL-2rのうちの1つまたはそれ以上の血漿レベルの測定、1つまたはそれ以上のMSに関係する遺伝子マーカーの存在の検出(ここで、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、またはIL-2rのレベルおよび1つまたはそれ以上のMSに関係する遺伝子マーカーの存在は、MSまたはMS発症の素因もしくはリスクを有する個体を表す。別の態様では、以下を含む段階によって、MS療法に対する応答を予測するか、あるいは、MSまたはMS発症の素因もしくはリスクを有する個体を同定してもよい:被験体からの試験サンプルの回収、抗TPO抗体もしくは抗TG抗体、またはそれらの組み合わせの存在の測定、1つまたはそれ以上のMSに関係する遺伝子マーカーの存在の検出(ここで、抗TPO抗体または抗TG抗体の存在および1つまたはそれ以上のMSに関係する遺伝子マーカーの存在は、MSまたはMS発症の素因もしくはリスクを有する個体を表すか、あるいはMS療法への応答を予測する)。
【0062】
以下の実施例によって本発明の種々の態様を例証する。理解されるように、以下の実施例は例証のために提供するものであり、本発明に従ってなされる多くの態様の総体的な範囲を制限するものと見なすべきではない。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は単に例証を目的として提供するものであって、いかなる点においても本明細書に記載する組成物および方法の範囲を制限することを意図しない。それぞれの例では、特に記載しない限り、標準的な物質および方法を用いて、提供する実施例に記載する操作を実施した。本明細書で引用する全ての特許および参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
本発明の実施には、特に記載しない限り、当該分野で知られる化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、免疫学、細胞生物学、細胞培養、およびトランスジェニック生物学の慣例的な技術を使用する(例えばManiatis, T.ら(1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.);Sambrook, J.ら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.);Ausubel, F. M.ら(1992) Current Protocols in Molecular Biology, (J. Wiley and Sons, NY);Glover, D. (1985) DNA Cloning, I and II (Oxford Press);Anand, R. (1992) Techniques for the Analysis of Complex Genomes, (Academic Press);Guthrie, G.およびFink, G. R. (1991) Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology (Academic Press);HarlowおよびLane (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.);Jakoby, W. B.およびPastan, I. H.編,(1979) Cell Culture. Methods in Enzymology, Vol. 58 (Academic Press, Inc., Harcourt Brace Jovanovich (NY); Nucleic Acid Hybridization (B. D. HamesおよびS. J. Higgins編 1984);Transcription And Translation (B. D. HamesおよびS. J. Higgins編 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);論文, Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. MillerおよびM. P. Calos編, 1987, Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wuら編), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編, Academic Press, London, 1987);Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編, 1986);Hoganら(編) (1994) Manipulating the Mouse Embryo. A Laboratory Manual,第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)。ヒト遺伝子マッピング(ヒト第1染色体のマッピングを含む)の技術および試料についての一般的な考察は、例えばWhiteおよびLalouel (1988) Ann. Rev. Genet. 22:259 279に記載されている。本発明の実施には、特に記載しない限り、当該分野で知られる化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、遺伝学、および免疫学の慣例的な技術を使用する(例えばManiatisら, 1982;Sambrookら, 1989;Ausubelら, 1992;Glover, 1985;Anand, 1992;GuthrieおよびFink, 1991参照)。
【0065】
本明細書の記載はいずれも、本発明が先の発明によってそれらの開示に先行する資格がないと認めていると解釈されるべきではない。いずれの参考文献も先行技術を構成すると認めるものではない。参考文献の考察はその著者の主張を示すものであり、出願人は引用文献の正確さおよび適切さに異議を唱える権利を有する。明らかに理解されるように、本明細書において多くの文献を引用するが、それらの引用は、これらの文献が当該分野の一般的な知見の一部を構成すると認めるものではない。
【0066】
実施例1
多発性硬化症は、他の自己免疫疾患(例えば自己免疫性甲状腺疾患)を伴いうる複合性自己免疫疾患である。甲状腺不全は通常、甲状腺機能低下または亢進の発症率として医療機関で報告される。多くの場合、これらの甲状腺症状の自己免疫性発症機序を裏付ける診断試験は存在しない。
【0067】
ユタ大学での臨床的に確定診断されたMS(CDMS)患者の人口調査では、橋本甲状腺炎およびグレーブス病を含む甲状腺の自己免疫疾患以外、自己免疫疾患の極度の存在(over presentation)は明らかではなかった。これは、時折MSに伴って観察される他の免疫疾患、例えば全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、シェーグレン病、炎症性腸疾患、抗リン脂質骨体症候群、B12欠乏、およびI型糖尿病と対照的であった。CDMS患者における自己免疫についてより深い知見を得るために、抗甲状腺抗体(ATAb)のレベル、並びに自己免疫性甲状腺疾患の臨床診断、MSの持続期間、性別、および歩行状態とATAbとの関連性を測定した。
【0068】
方法
患者集団:
640人のCDMS患者から成る患者集団を、ユタ大学多発性硬化症クリニックから募集した。CDMSの判定にはマクドナルド基準を使用した。疾病の持続期間は0から>30年の範囲であった。患者の歩行状態は、自力歩行(unassisted)、要介助歩行(assisted)、または要車イスとして特徴づけた。患者の構成は女性485人、男性155人であった(F/M=3.15)。
【0069】
抗甲状腺抗体分析:
総数640人のCDMS患者を、抗甲状腺抗体(ATAb)(抗チロポエチン(抗TPO)および抗サイログロブリン(抗TG)抗体を含む)の存在について試験した。ATAb陽性の結果は、抗TPO、抗TG、またはその両方が陽性であることを意味する。甲状腺抗原に対する抗体を、化学発光微粒子免疫アッセイ(Abbot, Diagnostics Division)によって測定した。文献に報告されているように、抗TPO抗体 >100 IUおよび抗TG抗体 >50 IUのレベルを陽性とした(表1))。より具体的には、この研究には以下に報告されている基準および方法を使用した:Polman C,ら, Interferon beta 1b does not induce autoantibodies, Neurology 2005; 64:996-1000;Munteis, E,ら, Prevalence of autoimmune thyroid disorders in a Spanish multiple sclerosis cohort, European Journal of Neurology 2007; 14: 1048-1052;およびRamagopalan S,ら, Autoimmue disease in families with multiple sclerosis: a population based study, Lancet Neurology; 6, 575-576。各文献の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
【表1】

【0071】
結果
ATAb基準の検証:
基準の信頼性を検証するために、ATAb陽性および陰性患者間の平均値の相違を試験した。図2および図3に示すように、基準の妥当性を抗TPOおよび抗TG抗体の両方によって確認した(p<0.0001)。
【0072】
CDMS患者におけるATAb:
CDMS患者のうち72/640(11.25%)がATAb陽性であった(女性64人、男性8人。F/M=8.0)。これらの患者では、MSの持続期間は因子としなかった。
【0073】
ATAb陽性CDMS患者における甲状腺疾患の診断:
これらのATAb陽性CDMS患者のうち31/72(43%)が橋本甲状腺炎またはグレーブス病と診断された(女性30人、男性1人)。
【0074】
性別とATAb:
表2に示すように、ATAbおよび抗TG抗体は女性での頻度が有意に高かった。抗TPO抗体だけでは、有意差はなかった。
【0075】
【表2】

【0076】
歩行とATAb:
疾病の重篤度およびATAbを評価するために、歩行状態を観察した。自力歩行可能な患者を、要介助歩行および要車イス患者と比較したところ、抗TPOのデータは、これらの抗体と歩行レベルの高さが関連性を有する可能性があることを示唆していた(フィッシャー正確確率片側検定、p値 <0.05)。
【0077】
結論
ATAbは性差と関係し(F/M比=8.0)、臨床的に診断された甲状腺疾患(橋本甲状腺炎またはグレーブス病が43%)の頻度は女性の方が男性より有意に高かった(30:1)。抗TPO抗体は、歩行状態によって重篤度が低いと見なされる疾患と関連しうる。ATAb陽性患者はより全身性の自己免疫を有するMS患者の亜集団を成す。従って、ATAbのある観点は、多発性硬化症に関係する遺伝子を決定する過程におけるMS患者の階層化への使用であってもよい。ATAbの存在を用いて自己免疫の傾向が高いMS患者を識別できるため、免疫応答よび自己免疫に関係する特定の経路を発見し、それによって既存の治療の最適な選択および新しい治療法の開発を行いうる。それらの抗体(および他の表現型変異体)の存在または不在を疾患に関係する遺伝子変化と併用して、改善されたMS診断を行ってもよい。
【0078】
これらのデータはATAb患者における、より良好な歩行転帰を示している。これらの抗体によって、既存の療法、開発中の療法、および発見されうる将来の治療法で標的とされうる免疫および炎症経路に関係する重要な自己抗体を保有するMS患者集団が識別される。ATAbの開発は、T細胞調節および調節性T細胞(Tregs)の改変に関係しうる。従ってT調節機能を改変する治療は、異常レベルのATAbを特徴とするCDMS患者の亜集団において特に有用である。
【0079】
従って、CDMS患者におけるATAbの存在によって、それらの患者が免疫療法により高い応答性を示すと予想されることが明らかとなる。ATAbの存在は、より良好な予後とも関係する。
【0080】
実施例2
集団に基づくSNP関係の検討
症例/対照全ゲノム分析
MS症例および対照の遺伝子型同定を、Affymetrix 6.0アレイにより、標準的な手順およびプロトコルに従って行った(Affymetrix社、カリフォルニア州サンタクララ市)。サンプルを4つのバッチで分析した(合計1248検体、500症例および748コントロール。全てユタ集団から抽出)。Affymetrix 6.0アレイから得られたサンプルデータファイルを、Golden Helix SNP & Variation Suite(Golden Helix社、 モンタナ州ボーズマン市)で分析した。優性および劣性相関関係/傾向関連検査を、常染色体マーカーで行った。
【0081】
量的形質遺伝子座関係試験:
500件のMS症例の各個体を、総数15の表現型について採点した。採点した表現型は抗-TPO抗体(0-3.9 IU/mL)、抗-TG抗体(0-14.4 IU/mL)、CD-40L(<244 pg/mL)、IL-2r (0-1033 pg/mL)、TNF-α(0-22 pg/mL)、IL-1β(0-36 pg/mL)、IL-6(0-5 pg/mL)、IL-8(0-5 pg/mL)、IL-4(0-5 pg/mL)、IL-5(0-5 pg/mL)、IL-10(0-18 pg/mL)、IL-13(0-5 pg/mL)、IFN-γ(0-5 pg/mL)、IL-2(0-12 pg/mL)、およびIL-12(0-6 pg/mL)である。
【0082】
結果
図1に、症例対照関連分析および量的形質遺伝子座(QTL)関連試験を用いて発見された有意な染色体領域およびSNPを示す。
【0083】
QTL分析では、Chr12q12 において、4つのSNP、rs1118300(SEQ ID NO: 147)、rs7977798(SEQ ID NO: 148)、rs1050626(SEQ ID NO: 149)、およびrs7965912(SEQ ID NO: 150)は、-log10p=6である表現型を少なくとも1つ有した。
【0084】
p値が最大で1e-06であった表現型はIL-1β(4つのSNPマーカー全て)、IL-2(最後の2つのマーカー)、IL-6(2番目のマーカー以外全て)、TNF-α(最後のマーカーのみ)であった。これらは全て、ANO6遺伝子中にある。
【0085】
Chr15q22.2領域において、TPM1遺伝子中の2つのSNP、rs4556745(SEQ ID NO: 154)およびrs2729827(SEQ ID NO: 155)は、-log10p=6である表現型を少なくとも1つ有した。p値が最大で1e-06である表現型はいずれの15番染色体SNPマーカーでもIL-4であった。
【0086】
実施例3
MS:家系連鎖分析
MSの罹患率が高い55家系からの234個体からなるMS家系を用いて、家系連鎖分析を行った。これらの家系には、総数102人の非罹患被験体および132人の確定診断されたMS患者が含まれ、これらの家系のうちの5家系には4人以上の罹患個体が、1家系には10人のMS患者が含まれた。
【0087】
GeneHunter(easyLinkage-Plus, LindnerおよびHoffmann, 21, 3565-3567, Bioinformatics 2005)を用いたマルチポイント連鎖解析により、3つの主なピークが明らかになった(図4)。各遺伝子座は少なくとも3つの家系で同定された。更に、12番染色体上のある領域はVitaleらによって既に報告されており(11, 295-300, Human Molecular Genetics, 2002)、12番染色体の12q12.3-q12領域内のST8SIA1遺伝子がMSに関係するSNPを含有することが報告されており、それによって本明細書に開示する発見はより意義深いものとなっている。例えば12番染色体上の領域、12q12.3-q12は末梢脱髄疾患、CMT4Hを引き起こすことが知られているFGD4遺伝子を含有する。更に、16番染色体上の領域、16q21-q22.3はTRADDを含有する。この遺伝子の産物は、MSのリスク因子として知られるTNFRSF1A遺伝子産物と相互作用する。
【0088】
実施例4
バイオマーカーおよび疾病状態によるMS
バイオマーカー(サイトカイン・バイオマーカーおよび免疫調節バイオマーカーを含む)の血漿レベルを、健常コントロールサンプルとMS患者サンプル間で比較した。アッセイしたサイトカイン・バイオマーカーはTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12であった。アッセイした免疫調節バイオマーカーはCD-40LおよびIL-2rであった。
【0089】
方法
バイオマーカーに結合するモノクローナル抗体を捕捉抗体として調製し、サンプル集団中のバイオマーカーをアッセイした。バイオマーカーのアッセイは、当該分野で知られる方法(例えばH.R. Hill, T.B. Martins, Methods 38 (2006) 312-316(参照により本明細書に組み込まれる)に報告されている)によって行った。具体的には、モノクローナル抗体をカップリングバッファー(50mM 2-[N-モルホリノ]エタンスルホン酸 (Mes) (Sigma, ミズーリ州セントルイス市), pH 5.0)で50-100μg/mLの濃度範囲に希釈し、2段階カルボジイミド反応を用いて、カルボキシル化されたLuminexマイクロスフェア(Luminex社、テキサス州オースチン市)に共有結合させた。多重アッセイのための内部コントロールは、個々のビーズセットを正常マウスおよびラットIgG(50μg/mL;Sigma、ミズーリ州セントルイス市)またはプールした正常マウス血清(100μg/mL;Sigma)でコーティングして調製した。カルボキシル化したマイクロスフェアをPBS(pH 6.1)中、6.25x106/mLの濃度で、5mg/mLの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびN-ヒドロキシ-スルホ-スルホスクシンイミド(Pierce-Endogen、イリノイ州、ロックフォード市)を用いて20分間活性化した。次いで、活性化したマイクロスフェアをカップリングバッファーで洗浄し、上記のモノクローナル抗体と共に室温で2時間、シーソー型攪拌機(rocker)上でインキュベートした。その後、カップリングしたマイクロスフェアをブロッキング−保存バッファー(PBS、0.1% BSA、0.02% Tween、0.05% アジド、pH 7.4)で2回洗浄し、1mLのブロッキング−保存バッファーに再懸濁した。次いで、マイクロスフェアをシーソー型攪拌機上で30分間インキュベートして未反応部位のブロッキングを行い、PBS中、4℃で保存した。ビーズを同定するのに用いられる蛍光色素は光感受性であるため、全ての活性化、遠心分離、およびインキュベーションは暗所で行った。
【0090】
RPMI-1640培養液中に既知量の組換えヒト・サイトカインIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、およびIFN-γを混合して各バイオマーカーの標準曲線を作成し、培養上清アッセイに用いた。血清/血漿アッセイ用には、4つの更なるサイトカイン/受容体、IL-2受容体、TNF-α、IL-8、およびIL-1βを含有させた。血清/血漿サンプル希釈液は、10% v/vウシ胎児血清(FBS)および5% v/v マウス血清、そしてPBST(PBS、0.02% Tween 20、pH 7.4)(0.05% Proclin (Sigma)含有)に希釈した2.5% v/v ラット血清(Sigma)を含有した。典型的なダイナミックレンジは0から10,000 pg/mLであり、7点検量線で表した。標準は高濃度、中濃度、および低濃度のサイトカインを含む3つのコントロールと共に、2重測定で行った。反応毎に、各モノクローナル抗体をカップリングさせた捕捉抗体のマイクロスフェアが5000個になるような濃度で、マイクロスフェアを混合した。合一したマイクロスフェア混合物50μLを100μLの組織培養上清または150μLの希釈血清のいずれかに添加した。その後、サイトカイン標準、コントロール、組織培養上清、または血清およびコーティングしたマイクロスフェアを96ウェル・フィルターマイクロタイタープレート(Millipore社、マサチューセッツ州ベッドフォード市)中、室温で20分間(培養上清)または2時間(血清/血漿)、ローテーター上でインキュベートした。その後、マイクロスフェアを200μLのPBSTで3回洗浄し、吸引ろ過した。次いで各バイオマーカーに特異的なビオチン化ポリクローナルまたはモノクローナル抗体100μLを、2次抗体の最終濃度が1から2μg/mL の範囲となるように添加した。攪拌機上で20分間インキュベートした後、マイクロタイタープレートを吸引ろ過によって洗浄し、100μLの10μg/mLストレプトアビジン-コンジュゲートR-フィコエリトリン(Molecular Probes社、オレゴン州ユージーン市)を各ウェルに添加した。10分間のインキュベーションおよび最終洗浄段階の後、マイクロスフェアを96ウェル・マイクロタイタープレート中で100μLのPBSTに再懸濁し、これをXYプラットフォームの付いたLuminex 100に配した。その後、マイクロスフェアを計数し、分析した。この抗体サンドイッチ法によってマイクロスフェアに結合したサイトカインの量を、レポーター分子の蛍光強度の中央値によって測定した。励起波長532nmではフィコエリトリンは575nmで発光するが、Luminex社がマイクロスフェアの標識に使用している2つの異なる色素は、635nmレーザーで励起され、658および712nmの異なる波長で発光する。色素の比率を用いて、最大100の異なる蛍光プロファイルを持つビーズを同定できる。Luminex 100分析器は、各マイクロスフェアをその既定の蛍光発光に従って分類し、レポーター分子に結合した第3のフルオロフォアにより成分の定量が可能となる。
【0091】
結果
表3に、健常コントロールサンプル(n=109)およびMS患者サンプル(n=647)におけるバイオマーカーの血漿レベルの平均値を示す。また、サンプル集団のバイオマーカーレベルの比較の際に算出されたp値も示す。表3に示すように、IFN-γ(p=.0019)、IL-2(p=0.0005)、IL-4(p=<.0001)、IL-13(p=<.0001)、IL-1β(p=<.0001)、IL-8(p=>.0001)、TNF-α(p=0.0142)、CD-40L(p=<.0001)、およびIL-2r(p=0.0121)では、MSおよびコントロール集団の血漿レベルの間には有意な差異がある。結果は、特定のサイトカインおよび免疫調節因子の血漿レベルが正常およびMS患者集団間で差異を有することを示している。
【0092】
【表3】

【0093】
表4に、健常コントロールサンプル(n=97)およびMS患者サンプル(臨床疾病状態に従ってPP(N=16)、RR(n=371)、およびSP(n=104)に階層化される)におけるバイオマーカーの血漿レベルの平均値を示す。
【0094】
【表4】

【0095】
当業者に認識されるように、上記の態様の詳細に、本発明の根本的な原理から逸脱することなく、多くの改変を施与することができる。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】

【図1−7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における多発性硬化症(MS)への感受性を測定する方法であって、
個体においてMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在についてアッセイすることを含み、ここで、MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子はSEQ ID NO:1-171の配列から成る群から選択される配列内に位置し;
個体におけるMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在は、個体がMSへの感受性を有することを表す、上記方法。
【請求項2】
さらに、個体においてMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在または不在をアッセイすることを含み、個体におけるMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在と、個体におけるMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在とは、個体がMSへの感受性を有することを表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのバイオマーカーは、少なくとも1つの抗甲状腺抗体、少なくとも1つのサイトカイン、および少なくとも1つの免疫調節因子、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのバイオマーカーは、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、およびIL-2rの少なくとも1つである、請求項2記載の方法。
【請求項5】
個体における少なくとも1つのバイオマーカーの存在のアッセイは、健常コントロール集団における少なくとも1つのバイオマーカーの平均血漿レベルよりほぼ高い範囲のレベルにあるTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13、IFN-γ、IL-2、IL-12、CD-40L、およびIL-2rの少なくとも1つの血漿レベルをアッセイすることを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つのバイオマーカーは、IL-1β、IL-2、IL-6、TNF-α、およびIL-4から成る群から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子は、SEQ ID NO: 147、SEQ ID NO: 148、SEQ ID NO: 149、およびSEQ ID NO: 150のヌクレオチド配列、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される配列内に位置し、少なくとも1つのバイオマーカーは、IL-1β、IL-2、IL-6、TNF-αから成る群から選択される、請求項2記載の方法。
【請求項8】
MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子は、SEQ ID NO: 155、およびSEQ ID NO: 156のヌクレオチド配列、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される配列内に位置し、少なくとも1つのバイオマーカーはIL-4である、請求項2記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのバイオマーカーがIL-1βであり、健常コントロール集団におけるIL-1βの平均血漿レベルよりほぼ高い範囲の血漿レベルで検出される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
IL-1βが約35pg/mL の血漿レベルで検出される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのバイオマーカーがIL-2であり、健常コントロール集団におけるIL-2の平均血漿レベルよりほぼ高い範囲の血漿レベルで検出される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
IL-2が約7pg/mLの血漿レベルで検出される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのバイオマーカーがIL-6であり、健常コントロール集団におけるIL-6の平均血漿レベルよりほぼ高い範囲の血漿レベルで検出される、請求項7記載の方法。
【請求項14】
IL-6が約12pg/mLの血漿レベルで検出される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのバイオマーカーがTNF-αであり、健常コントロール集団におけるTNF-αの平均血漿レベルよりほぼ高い範囲の血漿レベルで検出される、請求項7記載の方法。
【請求項16】
TNF-αが約2pg/mLの血漿レベルで検出される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
IL-4が健常コントロール集団におけるIL-4の平均血漿レベルよりほぼ高い範囲の血漿レベルで検出される、請求項8記載の方法。
【請求項18】
IL-4が約3pg/mLの血漿レベルで検出される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
個体のMS疾病状態を測定する方法であって、
個体をMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子に関してアッセイし、ここで、MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子はSEQ ID NO:1-171の配列から成る群から選択される配列内に位置し;そして
個体においてMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子を検出する、
ことを含み、ここで、個体中のMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の検出は個体がMS疾病状態にあることを表し、MS疾病状態は、再発寛解型(RR)、一次進行型(PP)、二次進行型(SP)、および進行再発型(PR)から成る群から選択される、上記方法。
【請求項20】
さらに、個体においてMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在または不在をアッセイすることを含み、ここで、個体におけるMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の検出、および個体における少なくとも1つのバイオマーカーの存在の検出は、個体がMS疾病状態にあることを表す、請求項19記載の方法。
【請求項21】
抗甲状腺抗体は、抗チロポエチンおよび抗サイログロブリンの少なくとも1つである、請求項3記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つのMS療法に対する個体の応答を予測する方法であって、
個体において少なくとも1つの抗甲状腺抗体を検出することを含み、
少なくとも1つの抗甲状腺抗体の存在は、少なくとも1つのMS療法への応答を示す、上記方法。
【請求項23】
抗甲状腺抗体は、抗-チロポエチンおよび抗サイログロブリンの少なくとも1つである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗甲状腺抗体が抗-チロポエチンであり、100 IUまたはそれ以上のレベルで検出される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
抗甲状腺抗体が抗サイログロブリンであり、50 IUまたはそれ以上のレベルで検出される、請求項23記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの抗甲状腺抗体の存在または不在の検出は、個体の歩行能力転帰の改善を表す、請求項22記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのMS療法に対する個体の応答の予測は、個体のMS患者亜集団への割り当てを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つのMS療法は少なくとも1つの免疫療法である、請求項22記載の方法。
【請求項29】
インビトロ用診断製品であって、
個体においてMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在をアッセイするための少なくとも1つの臨床検査、ここで、MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子はSEQ ID NO:1-171の配列から成る群から選択される配列内に位置しており;および
個体においてMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在または不在をアッセイするための少なくとも1つの臨床検査;
を含む、上記製品。
【請求項30】
個体におけるMSへの感受性を示すためのインビトロ用診断製品であって、
個体においてMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在をアッセイするための少なくとも1つの臨床検査、ここで、MSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子はSEQ ID NO:1-171の配列から成る群から選択される配列内に位置しており;および
個体においてMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在または不在をアッセイするための少なくとも1つの臨床検査;
を含み、個体におけるMSに関係するSNPの少なくとも1つの対立遺伝子の存在と、個体におけるMSに関係する少なくとも1つのバイオマーカーの存在とは、個体がMSへの感受性を有することを表す、上記製品。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−502665(P2012−502665A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528051(P2011−528051)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/057740
【国際公開番号】WO2010/033951
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500189230)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデーション (11)
【出願人】(510330367)リニアゲン,インク. (2)
【Fターム(参考)】