説明

多発性硬化症を処置するための方法

特定の投薬計画およびプロトコールを使用してCD20抗体により多発性硬化症(MS)を処置する方法を説明する。このような方法において使用するための製造物も説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の投与計画およびプロトコールを使用して被験体における多発性硬化症(MS)を処置するための方法およびこのような使用のための指示を伴う製造物に関する。
【0002】
発明の背景
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、ヒト中枢神経系(CNS)の炎症性および脱髄変性疾患である。それは、合衆国の約300,000人の人々を罹病させている世界的な疾患であり;それは若い成人の疾患であり、70%〜80%は20〜40歳で発症する(Anderson et al. Ann Neurology 31 (3): 333-6 (1992); Noonan et al. Neurology 58: 136-8 (2002))。MSは、臨床的経過、磁気共鳴画像化(MRI)スキャン評価および生検および剖検物質の病理分析に基づく不均一な障害である(Lucchinetti et al. Ann Neurol 47: 707-17 (2000))。この疾患は、脊髄、脳幹、脳神経、小脳、大脳および認知症候群を含む欠損(deficits)の多数の可能な組合せにおいて現れる。進行性障害(progressive disability)は、特に25年の見通しが含まれるとき、MSを有する大部分の患者の宿命である。MS患者の半分は疾患発症から15年以内に歩行するのに杖を必要とする。MSは、若い成人および中年の成人における神経学的障害の主要な原因であり、そして過去10年間まで、有益な処置は知られていない。MSは診断するのが困難である。その理由は、MRIスキャン、誘発電位および脳脊髄液(CSF)の研究からなるいくつかの技術的進歩を含む高度に体系化された診断基準を発展させた非特異的臨床所見の故である。すべての診断基準は、異なる時間に起こりそして感染、血管障害または自己免疫疾患などの他の病因により説明されない中枢白質における散在した病変の一般的原理に頼っている(McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001)。MSは疾患の4つのパターンを有する:再発−寛解MS(RRMS;発症時の症例の80%〜85%)、一次進行性MS(PPMS;発症時に10%〜15%)、進行性再発MS(PRMS;発症時に5%)および二次進行性MS(SPMS)(Kremenchutzky et al. Brain 122 (Pt 10): 1941-50 (1999); Confavreux et al. N Engl J Med 343 (20): 1430-8 (2000))。RRMSを有する患者の見積もられた50%は、10年でSPMSに進展し、そしてRRMS患者の90%までが最終的にSPMSに進展するであろう(Weinshenker et al. Brain 112 (Pt 1): 133-46 (1989)。
【0003】
現在4つのクラスの6つの薬物がRRMSの処置のために合衆国で認可されており、これに対してPPMSについては薬物は認可されていない。RRMS処置は、下記のものを含む:インターフェロンクラス、IFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標))およびIFN−β−1b(BETASERON(登録商標));酢酸グラチラマー(COPAXONE(登録商標))、ポリペプチド;ナタリズマブ(natalizumab)(TYSABRI(登録商標));およびミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標))、細胞毒性作用物質(cytotoxic agents)を含む。コルチコステロイド、メトトレキセート、シクロホスファミド、アザチオプリンおよび静脈内(IV)免疫グロブリンを含む他の薬物が、さまざまな程度の成功を伴い使用された。現在認可されている処置の利益は、2つの最近のメタアナリシスにより示唆されるとおりRRMSにおける再発率および障害の防止について相対的に中程度である(〜30%)(Filippini et al. Lancet 361: 545-52 (2003))。
【0004】
他の臨床的研究は、腫瘍壊死因子α阻害剤および変化したペプチドリガンドを含む、MSにおける他の免疫修飾剤(immunomodulatory agents)を評価したが、これらはMSを改善するよりはむしろ悪化させた(Lenercept Multiple Sclerosis Study Group and the University of British Columbia MS/MRI Neurology 53: 457-65 (1999); Bielekova et al. Nat Med 2000; 6: 1167-75 (2000), erratum appears in Nat Med 6: 1412 (2000))。
【0005】
MS病態生理学の主要な見解は、炎症が主としてCD4Th1 T細胞により媒介されることを確信した。IFN−βおよび酢酸グラチラマーなどのこの理論に基づく治療アプローチは障害の増悪または蓄積の発生を減少させるが、完全には防止しない。
【0006】
ヒトMSにおける体液性成分の存在は、MSの診断基準において、CSFオリゴクローナルバンドの包含および増加した鞘内IgG合成により証明されるとおり、10年間に暗黙の内に認められてきた(Siden A . J Neurol 221: 39-51 (1979); McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001); Anderson et al. Eur J Neurol 9: 243-51 (2002); O'Connor, P. Neurology 59: S1-33 (2002))。オリゴクローナルバンドの存在、増加した遊離L鎖および増加した鞘内IgM合成は、MS疾患活性と相関しておりそしてより重度の結果の予測材料であることができる(Rudick et al. Mult Scler 1: 150-5 (1995); Zeman et al. Acta Cytol 45: 51-9 (2001); Izquierdo et al. Acta Neurol Scand 105: 158-63 (2002); Wolinsky J.J Neurol Sci 206: 145-52 (2003); Villar et al. Ann Neurol 53: 222-6 (2003))。
【0007】
抗ミエリン抗体(ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)が、進行性および再発型のMSを有する患者の血清において検出された(Reindl et al. Brain 122: 2047-56 (1999); Egg et al. Mult Scler 7 (5): 285-9 (2001))。抗ミエリン抗体は、MS患者のCSFにおいても検出された(Reindl et al. Brain 122: 2047-56 (1999); Egg et al. Mult Scler 7 (5): 285-9 (2001); Andersson et al. Eur J Neurol 9: 243-51 (2002))。抗ガングリオシド抗体または抗ニューロフィラメント抗体などの追加の型の抗体がMSを有する患者で観察された(Meta et al. Mult Scler 5: 379-88 (1999); Sadatipour et al. Ann Neurol 44: 980-3 (1998))。最近の報告は、血清抗MOG抗体および抗MBP抗体の存在は、臨床的に孤立した脱髄事象から明白なRRMSへの進行の強い予測材料であることを示した(Berger et al. N Engl J Med 349: 139-45 (2003))。再燃を経験することについて調整された危険率(adjusted hazard ratio)は、両抗体について血清ボジティブである患者で76.5でありそして抗MOGについてのみ血清ポジティブである患者では31.6であった。
【0008】
国際病理協会は、ミエリンに結合した抗体がMSを有する大多数の患者に存在し、MS病変に見出される形質細胞およびB細胞も、MSにおける体液性役割に対する追加の証拠を与えることを見出した(Prineas and Wright, Lab Invest 38: 409-21 (1978); Esiri M.Neuropathol Appl Neurobio l6: 9-21 (1980); Genain et al. Nat Med 5: 170-5 (1999); Lucchinetti et al. Ann Neurol 47: 707-17 (2000); Wingerchuk et al.Lab Invest 81: 263-81 (2001))。B細胞はMSを有する患者のCSFにおいて検出可能であり、そしてB細胞の相対的に高い割合の存在はより重度の障害進行を予測することができる(Cepok et al. Brain 124 (Pt 11): 2169-76 (2001))。
【0009】
RRMSまたは眼球クローヌス−ミオクローヌス症候群を有する被験体において、リツキシマブ(Rituximab)は、すべての被験体において末梢B細胞を激減させそしてある患者においてはCSF B細胞の数を減少させると報告されている(Pranzatelli et al. Neurology 60 (Suppl1)PO5.128: A395 (2003); Cross et al. "Preliminary Results from a Phase II Trial of Rituximab in MS" (abstract) Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis ACTRIMS20-1 (October, 2003))。Cree et al. "Tolerabolity and Effects of Rituximab" Anti-CD20 Antibody "in Neuromyelitis Optica and Rapidly Worsening Multiple Sclerosis" Meeting of the Am.Acad.Neurol. (April,2004)も参照。
【0010】
CD20抗体およびそれによる治療
リンパ球は、造血のプロセス期間中に骨髄で産生される多くのタイプの白血球の1つである。2つの主要なリンパ球の集団:Bリンパ球(B細胞)およびTリンパ球(T細胞)がある。本発明では特に関心のあるリンパ球はB細胞である。
【0011】
B細胞は、骨髄内で成熟しそして骨髄を去ってそれらの細胞表面に抗原結合性抗体を発現する。ナイーブB細胞が、その膜結合型抗体に対して特異的な抗原に最初に遭遇すると、細胞は急速に分裂し始め、そしてその子孫は記憶B細胞および「形質細胞」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。記憶B細胞はより長い寿命を有しそして元の親細胞と同じ特異性を有する膜結合型抗体を発現し続ける。形質細胞は、膜結合型抗体を産生しないが、その代わりに分泌されうる形態で抗体を産生する。分泌された抗体は体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0012】
CD20抗原(ヒトBリンパ球拘束性分化抗原、Bp35とも呼ばれる)は、プレBリンパ球および成熟Bリンパ球上に位置した約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通型タンパク質である(Valentine et al.J.Biol. Chem.264 (19): 11282-11287 (1989); およびEinfeld et al. EMBO J.7 (3): 711-717 (1988))。この抗原は、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%よりも多くにおいても発現されるが(Anderson et al.Blood63 (6): 1424-1433 (1984))、しかし造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞または他の正常な組織上には見出されない(Tedder et al. J.Immmunol. 135 (2): 973-979 (1985))。CD20は、細胞サイクル開始および分化のための活性化プロセスにおける早期段階(1つまたは複数)を調節し(Tedder et al., supra)そして場合によりカルシウムイオンチャンネルとして機能する(Tedder et al. J. Cell. Biochem. 14D: 195 (1990))。
【0013】
B細胞リンパ腫におけるCD20の発現を考えれば、この抗原は、このようなリンパ腫の「ターゲティング」のための候補として役立つことができる。本質的に、このようなターゲティングは、下記のように一般化することができる:B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体を患者に投与する。これらの抗CD20抗体は、正常なB細胞および悪性B細胞の両方の(うわべは)CD20抗原に特異的に結合し;CD20表面抗原に結合した抗体は腫瘍B細胞(neoplastic B cells)の破壊および減少をもたらすことができる。さらに、腫瘍を破壊するための潜在力を有する化学作用物質または放射性標識を、該作用物質が腫瘍B細胞に特異的に「送達される」ように抗CD20抗体にコンジュケートさせることができる。このアプローチにもかかわらず、第一の目標は、腫瘍を破壊することであり;この特異的アプローチは利用される特定の抗CD20抗体により決定されることができ、従って、CD20抗原をターゲティングするための利用可能なアプローチは相当変わることができる。
【0014】
リツキシマブ(Rituximab(登録商標))抗体は、CD20抗原に対して指向させた遺伝子工学的に作成されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体である。リツキシマブは、1998年4月7日に発行されたUS Patent No. 5,736,137において「C2B8」と呼ばれる抗体である(Anderson et al.)。RITUXAN(登録商標)は、再発したまたは難治性の低悪性度または濾胞性CD20ポジティブB細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の処置のために適用される。インビトロ作用機構の研究は、RITUXAN(登録商標)がヒト補体に結合しそして補体依存性細胞毒性(CDC)によりリンパ球B細胞系を溶解させることを証明した(Reff et al. Blood 83 (2): 435-445 (1994))。さらに、それは抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)のアッセイにおいて有意な活性を有する。もっと最近では、RITUXAN(登録商標)は、トリチウム化チミジン組み込みアッセイにおいて、抗増殖効果を有しそして直接アポトーシスを誘導することが示されたが、他の抗CD19抗体および抗CD20抗体は示さなかった(Maloney et al. Blood 88 (10): 637a (1996))。RITUXAN(登録商標)と化学療法と毒素間の協力作用も実験で観察された。特に、RITUXAN(登録商標)は薬物耐性ヒトB細胞リンパ腫細胞系をドキソルビシン、CDDP、VP−16、ジフテリア毒素およびリシン(ricin)の細胞毒性作用に対して感作させる(Demidem et al. Cancer Chemotherapy & Radiopharmaceuticals 12 (3): 177-186 (1997))。インビボ症状発現前の研究は、RITUXAN(登録商標)は、多分補体および細胞媒介プロセスにより、カニクイザルの末梢血、リンパ節および骨髄からB細胞を減少させることを示した(Reff et al. Blood 83 (2): 435-445 (1994))。
【0015】
リツキシマブは、再発したまたは難治性の低悪性度または濾胞性CD20B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者を、4用量として1週間に375mg/m2の用量で処置することについて1997年11月に合衆国で認可された。2001年4月に、食品医薬品協会(FAD)は、低悪性度NHLの処置のための追加の請求を認可した:再処置(1週間に4用量として)および追加の投薬計画(1週間に8用量として)。単独療法としてまたは免疫抑制剤もしくは化学療法薬物との組合せにおいてリツキシマブへの300,000人より多くの患者の暴露があった。患者は、2年までの間維持治療としてやはりリツキシマブで処置された(Hainsworth et al. J Clin Oncol 21: 1746-51 (2003); Hainsworth et al. J Clin Oncol 20: 4261-7 (2002))。
【0016】
リツキシマブは、B細胞および自己抗体が疾患病態生理学において役割を果たすと思われる多様な非悪性自己免疫障害においても研究された(Edwards et al. Biochem Soc Trans 30: 824-8 (2002))。リツキシマブは、慢性関節リウマチ(RA)(Leandro et al. Ann Rheum Dis.61-: 883-8 (2002); Emery et al Arthritis Rheum 48 (9): S439 (2003);ループス (Eisenberg R. Arthritis Res Ther 5: 157-9 (2003); Leandro et al. Arthritis Rheum 46: 2673-7 (2002))、免疫血小板減少症(D'Arena et al. Leuk Lymphoma 44: 561-2 (2003))、自己免疫貧血(Zaja et al. Haematologica 87: 189-95 (2002) (erratum appears in Haematologica 87: 336 (2002))、自己免疫神経障害(Pestronk et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 74: 485-9 (2003))、腫瘍外性眼球クローヌス−ミオクローヌス症候群(Pranzatelli et al. Neurology 60 (Suppl1)PO5.128: A395 (2003))および再発−寛解多発性硬化症(RRMS)(Cross et al. (abstract)Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis 20-1 (2003))の兆候および症状を潜在的に軽減することが報告された。
【0017】
フェーズIIの研究(WA16291)が慢性関節リウマチ(RA)を有する患者において行われ、リツキシマブの安全および有効性に関する48週の追跡データを与えた(Emery et al. Arthritis Rheum 48 (9): S439 (2003); Szczepanski et al. Arthritis Rheum 48 (9): S121 (2003))。総計161人の患者を、4つの処置アームに一様に無作為化した:メトトレキセート、リツキシマブ単独、リツキシマブ+メトトレキセート、リツキシマブ+シクロホスファミド(CTX)。リツキシマブの処置計画では、1日目および15日目に静脈内に1g投与された。RAを有する大部分の患者におけるリツキシマブの注入は、大部分の患者により十分に許容され、患者の36%はそれらの最初の注入期間中に少なくとも1つの有害な事象を経験している(プラシボを受け取る患者の30%と比較して)。全体として、大多数の有害な事象は、重症度において軽〜中程度であると考えられそしてすべての処置グループにわたりよくバランスしていた。48週における4つのアームにわたり総計19人の重度の有害な事象があり、これはリツキシマブ/CTXグループにおいては僅かにより高い頻度であった。感染の発生率は、すべてのグループにわたりよくバランスしていた。このRA患者集団における重い感染症の平均率は、4.66/100患者−年であり、これは、地域社会をベースとする疫学的研究で報告されたRA患者における入院を必用とする感染の率(9.57/100患者−年)より低い(Doran et al. Arthritis Rheum 46: 2287-93 (2002))。
【0018】
自己免疫神経障害(Pestronk et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 74: 485-9 (2003))、眼球クローヌス/ミオクローヌス症候群(Pranzatelli et al. Neurology 60 (Suppl1)PO5.128: A395 (2003))およびRRMS(Cross et al. Preliminary results from a phase II trial of Rituximab in MS (abstract) Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis 20-1 (2003))を含む神経学的障害を有する少数の患者におけるリツキシマブの報告された安全性プロフィルは、腫瘍学またはRAにおいて報告されたそれと同様であった。RRMSを有する被験体におけるインターフェロンβ(IFN−β)または酢酸グラチラマーと組み合わせたリツキシマブの進行中の研究者支援の治験(IST)において、10人の処置された被験体のうち1人は、リツキシマブの最初の注入の後に中程度の熱および悪寒を経験した後夜通し観察のために病院に入院し、そして他の9人は、なんらの報告される有害な事象なしに4注入計画を完了した。
【0019】
CD20抗体に関する特許および特許刊行物は、US Patent Nos. 5,776,456、5,736,137、 5,843,439、 6,399,061および 6,682,734、ならびにUS2002/0197255、US2003/0021781、US2003/0082172、US2003/0095963、US2003/0147885 (Anderson et al.); US Patent No. 6,455,043、US2003/0026804およびWO2000/09160 (Grillo-Lopez,A); WO2000/27428 (Grillo - Lopez and White); WO2000/27433およびUS2004/0213784 (Grillo - Lopez and Leonard); WO2000/44788 (Braslawsky et al.); WO2001/10462 (Rastetter, W.); WO01/10461 (Rastetter and White); WO2001/10460 (White and Grillo-Lopez); US2001/0018041、US2003/018092、WO2001/34194 (Hanna and Hariharan); US2002/0006404およびWO2002/04021 (Hanna and Hariharan); US2002/0012665およびWO2001/74388 (Hanna,N.); US2002/0058029 (Hanna, N.); US2003/0103971 (Hariharan and Hanna); US2002/0009444およびWO2001/80884 (Grillo-Lopez,A.); WO2001/97858 (White, C.); US2002/0128488 およびWO2002/34790 (Reff, M.); WO2002/060955 (Braslawsky et al.); WO2002/096948 (Braslawsky et al.); WO2002/079255 (Reff and Davies); US Patent No. 6,171,586およびWO1998/56418 (Lam et al.); WO1998/58964 (Raju, S.); WO1999/22764 (Raju, S.); WO1999/51642、US Patent No. 6,194,551、US Patent No. 6,242,195、US Patent No. 6,528,624およびUS Patent No. 6,538,124 (Idusogie et al.); WO2000/42072 (Presta, L.); WO2000/67796 (Curd et al.); WO2001/03734 (Grillo-Lopez et al.); US2002/0004587およびWO2001/77342 (Miller and Presta); US2002/0197256 (Grewal, I.); US2003/0157108 (Presta, L.); WO04/056312 (Lowman et al.); US2004/0202658およびWO2004/091657 (Benyunes,K.); WO2005/000351 (Chan, A.); US2005/0032130A1 (Beresini et al.); US2005/0053602A1 (Brunetta,P.); US Patent Nos.6,565,827、6,090,365、6,287,537、6,015,542、5,843,398および5,595,721, (Kaminski et al.); US Patent Nos.5,500,362、5,677,180、5,721,108、6,120,767および6,652,852 (Robinson et al.); US Patent No. 6,410,391 (Raubitschek et al.); US Patent No. 6,224,866およびWO00/20864 (Barbera-Guillem, E.); WO2001/13945 (Barbera-Guillem, E.); US2005/0079174A1 (Barbera-Guillem et al.); WO2000/67795 (Goldenberg); US2003/0133930およびWO2000/74718 (Goldenberg and Hansen); US2003/0219433およびWO2003/68821 (Hansen et al.); WO2004/058298 (Goldenberg and Hansen); WO2000/76542 (Golay et al.); WO2001/72333 (Wolin and Rosenblatt); US Patent No. 6,368,596 (Ghetie et al.); US Patent No. 6,306,393およびUS2002/0041847 (Goldenberg, D.); US2003/0026801 (Weiner and Hartmann); WO2002/102312 (Engleman, E.); US2003/0068664 (Albitar et al.); WO2003/002607 (Leung, S.); WO2003/049694、US2002/0009427およびUS2003/0185796 (Wolin et al.); WO2003/061694 (Sing and Siegall); US2003/0219818 (Bohen et al.); US2003/0219433およびWO2003/068821 (Hansen et al.); US2003/0219818 (Bohen et al.); US2002/0136719 (Shenoy et al.); WO2004/032828 (Wahl et al.)およびWO2002/56910 (Haydon-Ledbetter)を含む。US Patent No. 5,849,898およびEP 330,191 (Seed et al.); EP332,865,A2 (Meyer and Weiss); US Patent No. 4,861,579 (Meyer et al.); US2001/0056066 (Bugelski et al.); WO1995/03770 (Bhat et al.); US2003/0219433A1 (Hansen et al.); WO2004/035607 (Teeling et al.); US2004/0093621 (Shitara et al.); WO2004/103404 (Watkins et al.); WO2005/000901 (Tedder et al.); US2005/0025764 (Watkins et al.); WO2005/016969およびUS2005/0069545 A1 (Carr et al.); WO2005/014618 (Chang et al.)も参照。これらのあるものはとりわけ多発性硬化症の処置を含む。
【0020】
リツキシマブによる治療に関する刊行物は、Perotta and Abuel "Response of chronic relapsing ITP of 10 years duration to Rituximab" Abstract # 3360 Blood 10 (1) (part1-2): p.88B (1998); Stashi et al. "Rituximab chimeric anti-CD20 monoclonal antibody treatment for adults with chronic idiopathic thrombocytopenic purpura" Blood 98 (4): 952-957 (2001); Matthews, R. "Medical Heretics" New Scientist (7 April, 2001); Leandro et al. "Clinical outcome in 22 patients with rheumatoid arthritis treated with B lymphocyte depletion" Ann Rheum Dis 61: 833-888 (2002); Leandro et al. "Lymphocyte depletion in rheumatoid arthritis: early evidence for safety, efficacy and dose response. Arthritis and Rheumatism 44 (9): S370 (2001); Leandro et al. "An open study of B lymphocyte depletion in systemic lupus erythematosus", Arthritis & Rheumatism 46 (1): 2673-2677 (2002); Edwards and Cambridge "Sustained improvement in rheumatoid arthritis following a protocol designed to deplete B lymphocytes" Rhematology 40: 205-211 (2001); Edwards et al. "B-lymphocyte depletion therapy in rheumatoid arthritis and other autoimmune disorders" Biochem. Soc. Trans. 30 (4): 824-828 (2002); Edwards et al. "Efficacy and safety of Rituximab, a B-cell targeted chimeric monoclonal antibody: A randomized, placebo controlled trial in patients with rheumatoid arthritis. Arthritis and Rheumatism 46 (9): S197 (2002); Levine and Pestronk "IgM antibody-related polyneuropathies: B-cell depletion chemotherapy using Rituximab" Neurology 52: 1701-1704 (1999); Devita et al. "Efficacy of selective B cell blockade in the treatment of rheumatoid arthritis" Arthritis & Rheum 46: 2029-2033 (2002); Hidashida et al. "Treatment of DMARD-Refractory rheumatoid arthritis with Rituximab." Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA2002; Tuscano,J. "Successful treatment of Infliximab-refractory rheumatoid arthritis with Rituximab" Presented at the Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; new Orleans, LA2002; Specks et al. "Response of Wegener's granulomatosis to anti-CD20 chimeric monoclonal antibody therapy" Arthritis and Rheumatism 44 (12): 2836-2840 (2001); Anolik et al., "B lymphocyte Depletion in the Treatment of Systemic Lupus (SLE): PhaseI/II Trial of Rituximab (RITUXAN (登録商標)) in SLE" Arthritis And Rheumatism 46 (9), S289-S289 Abstract 717 (October, 2002), and Albert et al., "A Phase I Trial of Rituximab (Anti-CD20)for Treatment of Systemic Lupus Erythematosus" Arthritis And Rheumatism 48 (12): 3659-3659, Abstract LB9 (December,2003); Martin and Chan "Pathogenic Roles of B cells in Human Autoimmunity: Insights from the Clinic" Immunity 20: 517-527 (2004)。
【0021】
発明の要約
本発明は、少なくとも部分的に、PPMSまたはRRMSなどの多発性硬化症を有する被験体における安全で活性な処置計画を与えるCD20抗体の用量の選択を含む。
【0022】
従って、本発明は、有効量のCD20抗体を被験体に投与して約0.5〜4グラムの最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4グラムの第2抗体暴露を与え、該第2暴露は最初の暴露から約16〜60週まで与えられず、そして抗体暴露の各々は1または2用量の抗体として被験体に与えられる、ことを含む被験体における多発性硬化症を処置する方法に関する。
【0023】
さらに、本発明は、(a)CD20抗体を含む容器;および(b)被験体における多発性硬化症を処置するための指示を有するパッケージインサートを含み、該指示は、約0.5〜4グラムの最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4グラムの第2抗体暴露を与えるのに有効な量の抗体を被験体に投与し、該第2暴露は最初の暴露から約16〜60週まで行われず、そして抗体暴露の各々は1または2用量の抗体として被験体に与えられることを指示する、製造物に関する。
【0024】
好ましい態様の詳細な説明
I.定義
「B細胞」は、骨髄内で成熟するリンパ球であり、そしてナイーブB細胞、記憶B細胞またはエフェクターB細胞(形質細胞)を含む。本明細書でのB細胞は正常なまたは非悪性B細胞であることができる。
【0025】
本明細書で「B細胞表面マーカー」または「B細胞表面抗原」は、B細胞の表面に発現された抗原であって、それに結合する抗体でターゲティングされうるB細胞の表面に発現された抗原である。例示的なB細胞表面マーカーは、CD10、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD40、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85およびCD86白血球表面マーカー(記載については、The Leukocyte Antigen Facts Book, 2nd Edition.1997,ed. Barclay et al. Academic Press, Harcourt Brace & Co., New Yorkを参照のこと)を含む。他のB細胞表面マーカーは、RP105、FcRH2、B−cellCR2、CCR6、P2X5、HLA−DOB、CXCR5、FCER2、BR3、Btig、NAG14、SLGC16270、FcRH1、IRTA2、ATWD578、FcRH3、IRTA1、FcRH6、BCMAおよび239287を含む。本発明で特に関心のあるB細胞表面マーカーは、哺乳動物の他の非B細胞組織に比較してB細胞上に優先的に発現され、そして前駆B細胞および成熟B細胞の両方に発現されうる。本発明で好ましいB細胞表面マーカーはCD20である。
【0026】
「CD20」抗原または「CD20」は、末梢血またはリンパ系器官からの90%より多くのB細胞の表面に見出される約35kDの非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、正常なB細胞および悪性B細胞の両方に存在するが、幹細胞には発現されない。文献におけるCD20の他の名称は、「Bリンパ球拘束性抗原」および「Bp35」を含む。CD20抗原は、例えばClark et al. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82: 1766 (1985)に記載されている。
【0027】
本明細書で「抗体アンタゴニスト」は、B細胞上のB細胞表面マーカーに結合すると、哺乳動物におけるB細胞を破壊するかもしくは減少させ、および/または、例えばB細胞により誘発される体液性応答を減少または阻止することにより、1種または複数のB細胞機能に干渉する抗体である。抗体アンタゴニストは、好ましくは、それにより処置された哺乳動物においてB細胞を激減させる(即ち、循環しているB細胞レベルを減少させる)ことができる。このような減少は、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および/または補体依存性細胞毒性(CDC)、B細胞増殖の抑制および/またはB細胞死の誘導(例えばアポトーシスによる)などの種々の機構により達成されうる。
【0028】
「抗体依存性細胞性細胞毒性」および「ADCC」は、Fc受容体(FcRs)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞上の結合された抗体を認識し、次に標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介するための一次細胞、NK細胞はFcγRIIIのみを発現し、これに対して単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。関心のある分子のADCC活性を評価するために、インビトロADCCアッセイ、例えばUS Patent No. 5,500,362または5,821,337に記載のアッセイを行うことができる。このようなアッセイのための有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。替わりに、または追加的に、関心のある分子のADCC活性は、例えばClynes et al. PNAS (USA)95: 652-656 (1988)に開示された動物モデルなどの動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。
【0029】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つまたは複数のFcRsを発現しそしてエフェクター機能を行う白血球である。好ましくは、この細胞は少なくともFcγRIIIを発現しそしてADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例は、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞および好中球を含み;PBMCsおよびNK細胞が好ましい。
【0030】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表すのに使用される。好ましいFcRは、ネイティブ配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するFcR(γ受容体)でありそしてFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらはこれらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的にスプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「抑制受容体」)を含み、これらは主としてその細胞質ドメインにおいて異なる類似したアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースド活性化モチーフ(ITAM)を含有する。抑制受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースド抑制モチーフ(ITIM)を含有する。(Daaeron, Annu. Rev. Immunol. 15: 203-234 (1997)参照)。FcRsは、Ravetch and Kinet, Annu.Rev.Immunol 9: 457-92 (1991); Capel et al., Immunomethods4: 25-34 (1994); およびde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41 (1995)に概説されている。将来同定されるべきFcRを含む他のFcRsは、本明細書では用語「FcR」により包含される。この用語は、胎児への母体IgGsの移送の責任を持つ新生児の受容体、FcRnも含む(Guyer et al., J. Immunol. 117: 587 (1976)およびKim et al., J. Immunol. 24: 249 (1994))。
【0031】
「補体依存性細胞毒性」または「CDC」は、補体の存在下に分子の標的を溶解する能力を指す。補体活性化経路は、同種抗原と複合した分子(例えば抗体)への補体系の第1成分(C1q)の結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えばGazzano-Santoro et al., J.Immunol.Methods 202: 163 (1996)に記載のCDCアッセイを行うことができる。
【0032】
「成長抑制性」抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止または減少させる抗体である。例えば、抗体はインビトロおよび/またはインビボでのB細胞の増殖を防止または減少させることができる。
【0033】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化および/または膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成などの、標準アポトーシスアッセイにより決定された、例えはB細胞のプログラムされた細胞死を誘導する抗体である。
【0034】
本明細書における用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、そして特定的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクト抗体(intact antibodies)から形成された多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および所望の生物学的活性を示す限りは抗体断片を含む。
【0035】
「抗体断片」は、好ましくはインタクト抗体の抗原結合領域を含む、インタクト抗体の部分を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFv断片;二重特異性抗体;線状抗体;一本鎖抗体分子;および抗体断片から形成された多重特異性抗体を含む。
【0036】
本発明の目的のために、「インタクト抗体」は、H可変ドメイン(heavy variable domains)およびL可変ドメイン(light variable domains)ならびにFc領域を含むインタクト抗体である。
【0037】
「ネイティブ抗体」は、通常、2つの同じ軽(L)鎖よび2つの同じ重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各L鎖は、1つのジスルフィド共有結合によりH鎖に連結されており、ジスルフィド結合の数は異なる免疫グロブリンアイソタイプのH鎖に従って変わる。各H鎖およびL鎖は規則的に間隔をおいて配置された鎖内ジスルフィド橋も有する。各H鎖は、一端に可変ドメイン(VH)、続く多数の定常ドメインを有する。各L鎖は、一端に可変ドメイン(VL)およびその他端に定常ドメインを有し;L鎖の定常ドメインはH鎖の第1定常ドメインとアラインしており、そしてL鎖可変ドメインはH鎖の可変ドメインとアラインしている。特定のアミノ酸残基がL鎖可変ドメインとH鎖可変ドメインとの境界面を形成していると考えられる。
【0038】
用語「可変」は、可変ドメインのある部分は抗体間で配列が大幅に異なりそしてその特定の抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用される事実をいう。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体にわたり一様には分布していない。それは、L鎖可変ドメインおよびH鎖可変ドメインの両方において超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FRs)と呼ばれる。ネイティブH鎖およびL鎖の可変ドメインは、各々4つのFRsを含み、これらは、主に3つの超可変領域により連結されたβシート配置を採用し、3つの超可変領域はβシート構造を連結するループを形成しそしてある場合にはβシート構造の一部を形成する。各鎖の超可変領域は、FRsにより相互に極めて接近して保持されており、そして他の鎖からの超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接には関与していないが、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)における抗体の参加などの種々のエフェクター機能を示す。
【0039】
抗体のパパイン消化は、各々単一の抗原結合部位を有する“Fab”断片と呼ばれる2つの同じ抗原結合性断片と、残りの「Fc」断片であって、その名前がその容易に結晶化する能力を反映する「Fc」断片を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しそして依然として抗原を架橋することができるF(ab’)2断片を生じる。
【0040】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。この領域は、堅く非共有結合会合している1つのH鎖可変ドメインと1つのL鎖可変ドメインの二量体からなる。それは、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してVH−VL二量体の表面における抗原結合部位を規定するこの配置にある。まとめると、6つの超可変領域は、抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかしながら、1つの可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても、全体の結合部位よりは低いアフィニティーではあるけれども、抗原を認識しそして結合する能力を有する。
【0041】
Fab断片は、L鎖の定常ドメインとH鎖の第1定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むH鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における少数の残基が加わることによりFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(1つまたは複数)が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書における命名である。F(ab’)2抗体断片は、もともとFab’断片間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0042】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「L鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つの明白に異なるタイプの1つに割り当てられることができる。
【0043】
それらのH鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体は、異なるクラスに割り当てられることができる。5つの主要なクラスのインタクト抗体:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、そしてこれらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2にさらに分けられうる。抗体の異なるクラスに相当するH鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元配置は周知されている。
【0044】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とするVHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)参照。
【0045】
用語「二重特異性抗体(diabody)」は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であって、同じポリペプチド鎖におけるL鎖可変ドメイン(VL)に結合したH鎖可変ドメイン(VH)を含む抗体断片(VH−VL)を指す。同じ鎖における2つのドメイン間でペア形成を可能とするにはあまりにも短いリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインとペアを形成しそして2つの抗原結合部位を創生するように強制される。二重特異性抗体は、例えばEP404,097; WO93/11161; およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)にさらに完全に記載されている。
【0046】
本明細書で使用された用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、即ち、モノクローナル抗体の産生期間中に生じうる可能な変異体(このような変異体は一般に少量で存在する)を除いて、集団を構成する個々の抗体が同一であるかおよび/または同じエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向させられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して指向させられる。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、モノクローナル抗体が他の免疫グロブリンにより汚染されていないという点で有利である。修飾句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるままの抗体の性質を示し、そして任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとみなされるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature,256: 495 (1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により産生することができ、または組換えDNA法により産生することができる(例えばUS Patent No. 4,816,567参照)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al, Nature, 352: 624-628 (1991)およびMarks et al., J.Mol.Biol., 222: 581-597 (1991)に記載の技術を使用するファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0047】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、特に、H鎖の一部および/またはL鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは相同性であるが、鎖(1つまたは複数)の残部は他の種に由来する抗体または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるかまたは相同性である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を含み、ならびにこのような抗体の断片が所望の生物学的活性を示す限りこのような抗体の断片を含む(US Patent No. 4,816,567; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。本明細書で関心のあるキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、例えば、ヒヒ、アカゲザルまたはカニクイザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化抗体」("primatized" antibodies)を含む(US Patent No. 5,693,780)。
【0048】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えばマウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。大体において、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、アフィニティーおよび能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種の(ドナー抗体)の超可変領域からの残基により置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに精密化するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに相当し、そしてFRsのすべてまたは実質的にすべてが、上記したFR置換(1つまたは複数)を除いて、ヒト免疫グロブリン配列のFRsである、少なくとも1つの、典型的には少なくとも2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むであろう。ヒト化抗体は、場合により、免疫グロブリン定常領域、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域、の少なくとも一部も含むであろう。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1989); およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992)を参照されたい。
【0049】
本明細書で使用された用語「超可変領域」は、抗原結合の責任を負う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は,L鎖可変ドメインにおける「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、L鎖可変ドメインにおける残基24−34(L1)、50−56(L2)および89−97(L3)ならびにH鎖可変ドメインにおける31−35(H1)、50−65(H2)および95−102(H3); Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991))および/または「超可変ループ」からのこれらの残基(例えば、L鎖可変ドメインにおける残基26−32(L1)、50−52(L2)および91−96(L3)ならびにH鎖可変ドメインにおける26−32(H1)、53−55(H2)および96−101(H3);Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987))を含む。「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されたとおり超可変領域残基以外のこれらの可変ドメイン残基である。
【0050】
「裸の抗体」は、細胞毒性部分または放射性標識などの異種分子にコンジュゲートされていない抗体(本明細書で定義されたとおりの)である。
【0051】
CD20抗原に結合する抗体の例は、今や「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と呼ばれる「C2B8」;IDEC Pharmaceuticals, Inc.から市販されている「Y2B8」または「イブリツモマブチウキセタン(Ibritumomab Tiuxetan)」(ZEVALIN(登録商標))と命名されたイットリウム−[90]−標識された2B8マウス抗体(US Patent No. 5,736,137; 1993年6月22日に受託番号HB11388の下にATCCに寄託された2B8);Corixaから市販されている、場合により131Iで標識されて「131I−B1」または「ヨウ素I131 トシツモマブ」抗体(BEXXAR(登録商標))を発生する、「トシツモマブ(Tositumomab)」とも呼ばれるマウスIgG2a「B1」(US Patent No. 5,595,721も参照);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press et al. Blood 69 (2): 584-591 (1987)および「フレームワークパッチされた(framework patched)」またはヒト化IF5を含むその変異体(WO03/002607, Leung,S; ATTC寄託 HB-96450);マウス2H7およびキメラ2H7抗体(US Patent No. 5,677,180);ヒト化2H7;huMax-CD20 (Genmab, Denmark, WO2004/035607);AME−133(Applied Molecular Evolution);A20抗体またはその変異体、例えばキメラもしくはヒト化A20抗体(それぞれ、cA20、hA20)またはIMMU−106(US2003/0219433, Immunomedics);US 2005/0069545A1およびWO2005/16969 (Carr et al.)における如く、場合によりIL2とコンジュゲートさせた、エピトープ欠乏したLeu−16、1H4または2B8を含む、CD20結合性抗体;CD22およびCD20に結合する二重特異性抗体、例えばhLL2xhA20 (WO2005/14618, Chang et al.); International Leukocyte Typing Workshopから入手可能なモノクローナル抗体L27、 G28-2、 93-1B3、 B-C1または NU-B2 (Valentine et al., In: Leukocyte Typing III (McMichael, Ed., p. 440, Oxford University Press (1987)); 1H4 (Haisma et al. Blood 92: 184 (1998));抗CD20アウリスタチンEコンジュゲート(Seattle Genetics);抗CD20−IL2(EMD/Biovation/City of Hope);抗CD20MAb治療(EPiCyte);および抗CD20抗体TRU015(Trubion)。
【0052】
本明細書において用語「リツキシマブ」または「RITUXAN(登録商標)」は、CD20抗原に対して指向させられそしてUS Patent No. 5,736,137において「C2B8」と命名された、遺伝子工学的に作成されたキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体(CD20に結合する能力を保持するその断片を含む)を指す。リツキシマブは、Genentechから市販されている。
【0053】
純粋に本発明の目的で且つ特記しない限り、「ヒト化2H7」は、ヒトCD20に結合するヒト化抗体またはその抗原結合性断片を指し、該抗体はインビボで霊長類B細胞を激減させるのに有効であり、該抗体は、そのH鎖可変領域(VH)において抗ヒトCD20抗体からの少なくとも配列番号12のCDR H3配列(図1B)および実質的にヒトH鎖サブグループIII(VHIII)のヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基を含む。好ましい態様では、この抗体は、配列番号10のH鎖CDR H1配列および配列番号11のCDR H2配列をさらに含み、そしてさらに好ましくは、配列番号4のL鎖CDR L1配列、配列番号5のCDR L2配列、配列番号6のCDR L3配列および実質的にヒトL鎖サブグループI(VI)のヒトコンセンサスフレームワーク(FR)残基をさらに含み、該VH領域はヒトIgG鎖定常領域に連結させることができ、この領域は、例えば、IgG1またはIgG3であることができる。好ましい態様では、このような抗体は、配列番号8のVH配列(図1Bに示されたv16)を含み、場合により配列番号2のVL配列(図1Aに示されたv16)も含み、これは該H鎖におけるD56AおよびN100Aのアミノ酸置換ならびにL鎖におけるS92A(v96)のアミノ酸置換を有していてもよい。好ましくは、抗体は、図2および3に示された、それぞれ、配列番号13および14のL鎖およびH鎖アミノ酸配列を含むインタクト抗体である。他の好ましい態様では、抗体が、図2および4に示された、それぞれ、配列番号13および15のL鎖およびH鎖アミノ酸配列を含む2H7.v31である。本発明における抗体は、ADCCおよび/またはCDC活性を改良するFc領域における少なくとも1つのアミノ酸置換、例えばアミノ酸置換がS298A/E333A/K334Aであるアミノ酸置換をさらに含むことができ、さらに好ましくは、配列番号15のH鎖アミノ酸配列(図4に示された)を有する2H7.v31を含むことができる。これらの抗体のいずれも、CDC活性を減少するFc領域における少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含むことができ、例えば、少なくとも置換K322Aを含む。US Patent No. 6,528,624B1 (Idusogie et al)参照。
【0054】
好ましいヒト化2H7は、可変L鎖配列:
【表1】


および可変H鎖配列:
【表2】


を含むインタクト抗体または抗体断片である。
【0055】
ヒト化2H7抗体がインタクト抗体であるときは、好ましくはそれはL鎖アミノ酸配列:
【表3】


およびH鎖アミノ酸配列:
【表4】


またはH鎖アミノ酸配列:
【表5】


を含む。
【0056】
本発明の好ましい態様では、2H7バージョン16に基づく変異体の可変領域は、下表に示されるアミノ酸置換の位置を除いてv16のアミノ酸配列を有するであろう。特記しない限り、2H7変異体は、v16のL鎖と同じL鎖を有するであろう。
【表6】

【0057】
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から同定されそして分離されおよび/または回収された抗体である。その天然の環境の汚染物成分は、抗体の診断的使用または治療的使用を妨害する物質であり、そして酵素、ホルモンおよび他のタンパク質溶質または非タンパク質溶質を含むことができる。好ましい態様では、抗体は、(1)Lowry法により決定される抗体95重量%より高く、最も好ましくは99重量%より高く、(2)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)の使用によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を使用する還元または非還元条件下にSDS−PAGEによる均一性まで精製されるであろう。単離された抗体は、インサイチューで組換え細胞内に抗体を含む。何故ならば、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分は存在しないからである。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製段階により調製されるであろう。
【0058】
本明細書において「被験体」はヒト被験体である。一般に、被験体は、多発性硬化症の処置のために選ばれるのにふさわしい。本発明における目的のために、このような選ばれるのにふさわしい被験体は、多発性硬化症の1つまたは複数の兆候、症状または他の指標を経験しつつあるまたは経験したことがあるまたは経験しそうな被験体;例えば、新規に診断されようと(「新規に発症した」MSを有すると)、以前に新たな再発または再燃を有すると診断されようと、以前に診断されそして寛解等にあろうと、多発性硬化症と診断された被験体;および/または多発性硬化症を発生する危険がある被験体である。多発性硬化症に罹患しているまたは罹患する危険にある被験体は、場合により、血清、脳脊髄液(CSF)および/またはMS病変(1つまたは複数)におけるCD20ポジティブB細胞の高められたレベルについてスクリーニングされた被験体としておよび/または自己抗体を検出するためのアッセイを使用ことについてスクリーニングされ、定性的に評価されそして好ましくは定量的に評価される被験体として同定されうる。多発性硬化症と関連した例示的なこのような自己抗体は、抗ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、抗ガングリオシドおよび/または抗ニューロフィラメント抗体を含む。このような自己抗体は、被験体の血清、脳脊髄液(CSF)及び/又はMS病変において検出されうる。本明細書において「高められた」自己抗体またはB細胞レベル(1つまたは複数)は、MSのない個体におけるレベル(1つまたは複数)を有意に超えるこのような自己抗体またはB細胞のレベル(1つまたは複数)を意味する。
【0059】
本明細書における被験体の「処置」は、治療処置および予防または防止手段の両方を指す。処置を必用としている被験体は、すでに多発性硬化症を有する被験体および多発性硬化症が防止されるべき被験体を含む。従って、被験体は多発性硬化症を有すると診断されていてもよく、または多発性硬化症の素質があるかもしくは多発性硬化症にかかりやすくてもよい。
【0060】
MSの「症状」は、被験体により経験されそしてMSを示す、任意の病的現象(morbid phenomenon)または構造、機能または感覚における正常からの逸脱である。
【0061】
「多発性硬化症」は、ミエリンの進行性破壊により特徴付けられる中枢神経系の慢性のそしてしばしば機能障害疾患(disabling disease)を指す。MSの4つの国際的に認められた形態、即ち、一次進行性多発性硬化症(PPMS)、再発−寛解多発性硬化症(RRMS)、二次進行性多発性硬化症(SPMS)および進行性再発多発性硬化症(PRMS)がある。
【0062】
「一次進行性多発性硬化症」または「PPMS」は、再発と寛解が全然重ならないで疾患がその発症から徐々に進行することにより特徴付けられる。疾患の活性が安定化する(leveling off)期間があってもよく、そして良好なおよび悪い日または週があってもよい。PPMSは、発症が典型的には30代後期または40代早期にあり、男性は女性と同じように発生しそうであり、そして初期疾患活性はしばしば脊椎にありそして脳にはないという点でRRMSおよびSPMSと異なる。PPMSは、しばしば脳に移行するが、RRMSまたはSPMSよりは脳区域の損傷が少ないようであり;例えば、PPMSを有する人々は、認知問題を生じることがより少ないようである。PPMSは、MRIスキャンにおける炎症性(ガドリニウム増強)病変を示すことが最も少ないようであるMSのサブタイプである。疾患の一次進行性形態は、多発性硬化症を有するすべての人々の10〜15%を罹患させる。PPMSは、McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001)における基準に従って定義されうる。本明細書において処置されたPPMSを有する被験体は、通常、PPMSの可能性のある診断または明白な診断を有する被験体である。
【0063】
「再発−寛解多発性硬化症」または「RRMS」は、再発(再燃としても知られている)により特徴付けられ、この再発期間中は新たな症状が現れることがありそして古い症状が再び現れたり悪化することがある。再発に続いて、寛解の期間があり、この寛解期間中は、ヒトは再発中に獲得した欠損(deficits)から完全にまたは部分的に回復する。再発は、数日間、数週間または数ヶ月続くことがあり、そして回復はゆっくりおよび徐々に起こるかまたは殆ど即座に起こることがある。MSを有する大多数の人々は最初RRMSと診断される。これは典型的には、診断はより早期にまたは後で知られるとしても、彼らは20代または30代にあるときである。男性よりも2倍多くの女性がこのサブタイプのMSにかかる。再発期間中、中枢神経系(CNS)の白質領域における神経線維(ニューロン)のまわりの保護絶縁鞘は、身体の自身の免疫系により炎症性応答において損傷されうる。これは、CNSのどの区域が損傷されるかに依存して相当変わる多様な神経学的症候を引き起こす。再発の直後、炎症性応答は消え(dies down)、そしてCNSにおける特定のタイプのグリア細胞(オリゴデンドロサイトと呼ばれる)が、再髄鞘形成(remyelination)、即ち、軸索のまわりのミエリン鞘を修復することができるプロセスを支持する。寛解の原因となりうるのはこの再髄鞘形成である。RRMSを有する患者の約50%が疾患発症から10年以内にSPMSに転換する。30年後、この数字は90%に上昇する。いずれかの時点で、再発−寛解型の疾患はMSを有するすべての人々の約55%になる。
【0064】
「二次進行性多発性硬化症」または「SPMS」は、再発および僅かな寛解および停滞期状態(plateaux)が重なりまたは重ならないで臨床神経学的損傷の定常的進行により特徴付けられる。SPMSを発生するヒトは、2〜40年以上のいずれかの期間持続していてもよい以前に経験したRRMSの期間を有するであろう。いかなる重なった再発および寛解も時間がたつとしだいに消えていく傾向がある。疾患の二次進行性相の発症から、機能障害が始まって、RRMS期間中に進行するよりもはるかに速く進行する。しかしこの進行はある個体では依然として極めてゆっくりしていることもある。10年後、RRMSを有する人々の50%はSPMSを発生するであろう。25〜30年までに、その数字は90%に上昇するであろう。SPMSは、RRMSにおけるよりも低いレベルの炎症性病変形成と関連している傾向があるが、疾患の全体的苦しみは増大し続ける。いずれかの時点で、SPMSは多発性硬化症を有するすべての人々の約30%に達する。
【0065】
「PRMS」で表される「進行性再発多発性硬化症」は、再発と寛解が重なり合った臨床神経学的損傷の定常的な進行により特徴付けられる。再発の直後有意な回復があるが、再発の間に徐々に悪化する症候がある。PRMSは多発性硬化症を有する人々の約5%に達する。ある神経学者は、PRMSはPPMSの変異体であると考えている。
【0066】
表現「有効量」は、多発性硬化症を予防、軽減または処置するために有効な抗体(または他の薬物)の量を指す。このような有効量は、一般に、MSの兆候、症状または他の指標の改善、例えば再発率の減少、機能障害の防止、脳MRI病変の数および/または容積の減少、時間を計った25フィート歩行(timed 25-foot walk)の改善、疾患進行への時間の延長(例えば、拡大障害状態尺度(Expanded Disability Status Scale)、EDSSを使用して)等をもたらすであろう。
【0067】
「抗体暴露」は、本明細書においては約1〜20日の期間にわたり投与される1つまたは複数の用量で抗体と接触させることまたは抗体に暴露することを指す。用量は、この暴露期間にわたり1回でまたは一定のもしくは不規則な時間間隔で与えられうる。最初の抗体暴露と後の(例えば第2または第3)抗体暴露は、本明細書で詳細に述べられたとおり互いに時間的に分離される。
【0068】
補助的治療について本明細書で使用される用語「免疫抑制剤」は、本発明で処置されるべき哺乳動物の免疫系を抑制または遮断するように作用する物質を指す。これは、サイトカイン産生を抑制し、自己抗原発現をダウンレギュレーションするかもしくは抑制し、またはMHC抗原を遮断する(mask)物質を含むであろう。このような作用物質の例は、2−アミノ−6−アリール−5−置換されたピリミジン(US Patent No. 4,665,077を参照のこと);非ステロイド抗炎症性薬物(NSAIDs);ガンシクロビル、タクロリムス、グルココルチコイド、例えばコルチゾールもしくはアルドステロン、抗炎症剤、例えばシクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、もしくはロイコトリエン受容体アンタゴニスト;プリンアンタゴニスト、例えばアザチオプリンもしくはミコフェノレートモフェチル(MMF);アルキル化剤、例えばシクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド(US Patent No. 4,120,649に記載のとおりMHC抗原を遮断する);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;ステロイド、例えばコルチコステロイドもしくはグルココルチコステロイドまたはグルココルチコイドアナログ、例えばプレドニソン、メチルプレドニソロンおよびデキサメタゾン;ジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、例えばメトトレキセート(経口または皮下);ヒドロキシクロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト(これは抗インターフェロンα抗体、抗インターフェロンβ抗体もしくは抗インターフェロンγ抗体、抗腫瘍壊死因子α抗体(インフリキシマブまたはアダリムマブ)、抗TNF−αイムノアヘシン(anti-TNF-alpha-immunoahesin)(エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子β抗体、抗インターロイキン2抗体および抗IL−2受容体抗体を含む);抗LFA−1抗体(これは抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む);抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;pan−T抗体、好ましくは抗CD3抗体もしくは抗CD4/CD4a抗体;LFA−3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド(90年7月26日に公開されたWO90/08187);ストレプトキナーゼ;TGF−β;ストレプトドルナーゼ;宿主からのRNAもしくはDNA;FK506;RS−61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(Cohen et al., US Patent No. 5,114,721);T細胞受容体断片(Offner et al., Science, 251: 430-432 (1991); WO90/11294; Ianeway, Nature, 341: 482 (1989); およびWO91/01133);およびT細胞受容体抗体(EP340,109)、例えばT10B9を含む。
【0069】
本明細書で使用される用語「細胞毒性作用物質」は、細胞の機能を抑制または妨害するおよび/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えばAr211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位元素)、化学療法剤および毒素、例えば小分子毒素または、バクテリア、真菌、植物もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素またはその断片を含むことを意図する。
【0070】
「化学療法剤」は、癌の処置において有用な化合物である。化学療法剤の例は、アルキル化剤、例えばチオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボクオン(carboquone)、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamines)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンを含む);アセトゲニン(特にブルラタシン(bullatacin)およびブルラタシノン(bullatacinone));カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189および CB1−TM1を含む);エロイテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン;サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェンエステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロスウレア(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン;抗生剤、例えばエネジイン抗生剤(例えばカリチェアミシン、特にカリチェアミシンγ1IおよびカリチェアミシンωI1(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183-186 (1994)参照);ダイネミシンAを含むダイネミシン;ビスホスホネート、例えばクロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連したクロモプロテインエネジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシン、、例えばミトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン:抗アドレナール(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デホファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジクオン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(“Ara−C”);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE(登録商標)パクリタキセルのクレモホールを含まないアルブミン処理された(albumin-engineered)ナノ粒子配合物(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、およびTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金アナログ、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ(xeloda);イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体を含む。
【0071】
腫瘍に対するホルモン作用を調節または抑制するように作用する抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン(NOVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018;オナプリストンおよびFARESTONトレミフェンを含む抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERMs);副腎におけるエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲステロール、AROMASIN(登録商標)エクセメスタン、ホルメスタニエ(formestanie)、ファドロゾール(fadrozole)、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾール;および抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異所細胞増殖(abherant cell proliferation)に関与するシグナリング経路における遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、例えばPKC−α、RA1fおよびH−Ras;ワクチン、例えば遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼI阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;および上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体もこの定義に含まれる。
【0072】
用語「サイトカイン」は、細胞間メデイエータとして他の細胞に対して作用する1つの細胞集団により放出されるタンパク質の一般的用語である。このようなサイトカインの例はリンホカイン、モノカイン;インターロイキン(ILs)、例えばIL−1、IL−1α、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−11、IL−12、IL−15;腫瘍壊死因子、例えばTNF−αまたはTNF−β;ならびにLIFおよびキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。本明細書で使用される用語サイトカインは、天然のソースまたは組換え細胞培養物からのタンパク質、ならびに合成により産生される小分子化合物およびその薬学的に許容される誘導体および塩を含む、ネイティブ配列サイトカインの生物学的に活性な同等物を含む。
【0073】
用語「ホルモン」は、一般に管を有する腺器官により分泌されるポリペプチドホルモンを指す。例えば成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH);プロラクチン、胎盤性ラクトゲン、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、インヒビン;アクチビン;ミュラー管抑制物質;およびトロンボポイエチンはホルモンに含まれる。本明細書で使用された用語ホルモンは、天然のソースまたは組換え細胞培養物からのタンパク質、ならびに合成により産生される小分子化合物およびその薬学的に許容される誘導体および塩を含む、ネイティブ配列ホルモンの生物学的に活性な同等物を含む。
【0074】
用語「成長因子」は、成長を促進するタンパク質を指し、そして例えば肝成長因子;繊維芽細胞成長因子;血管上皮成長因子;神経成長因子、例えばNGF−β;血小板由来の成長因子;トランホーミング増殖因子(TGFs)、例えばTGF−αおよびTGF−β;インスリン様成長因子−Iおよび−II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン、例えばインターフェロン−α、−βおよび−γ;ならびにコロニ−刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ−CSF(M−CSF)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);および顆粒球−CSF(G−CSF)を含む。本明細書で使用される、用語成長因子は、天然ソースからまたは組換え細胞培養物からのタンパク質、ならびに合成により産生される小分子化合物およびその薬学的に許容される誘導体および塩を含む、ネイティブ配列成長因子の生物学的に活性な同等物を含む。
【0075】
用語「インテグリン」は、細胞が細胞外マトリックスに結合および応答することを可能としそして傷治癒、細胞分化、腫瘍細胞のホーミングおよびアポトーシスなどの種々の細胞機能に関与する受容体タンパク質を指す。それらは、細胞−細胞外マトリックス相互作用および細胞−細胞相互作用に関与する細胞接着受容体の大きなファミリーの一部である。機能的インテグリンは、非共有結合的に結合している、αおよびβと呼ばれる2つの膜貫通糖タンパク質サブユニットからなる。αサブユニットは、βサブユニットと同様に、すべて互いにある相同性を共有する。受容体は、常に1つのα鎖と1つのβ鎖を含有する。例は、α6β1、α3β1、α7β1、LFA−1、α4インテグリン等を含む。本明細書で使用された用語インテグリンは、天然ソースからまたは組換え細胞培養物からのタンパク質、ならびに合成により産生される小分子化合物およびその薬学的に許容される誘導体および塩を含む、ネイティブ配列インテグリンの生物学的に活性な同等物を含む。
【0076】
本明細書において「インテグリンアンタゴニストまたは抗体」の例は、LFA−1抗体、例えばGenentechから市販されているエファリズマブ(Efalizumab)(RAPTIVA(登録商標));α4インテグリン抗体、例えばBiogenから入手可能なナタリズマブ(TYSABRI(登録商標));ジアザサイクリックフェニルアラニン誘導体(WO2003/89410);フェニルアラニン誘導体(WO2003/70709、WO2002/28830、WO2002/16329およびWO2003/53926);フェニルプロピオン酸誘導体(WO2003/10135);エナミン誘導体(WO2001/79173);プロパン酸誘導体(WO2000/37444);アルカン酸誘導体(WO2000/32575);置換されたフェニル誘導体(US Patent Nos.6,677,339および 6,348,463);芳香族アミン誘導体(US Patent No. 6,369,229);およびADAMディスインテグリンドメインポリペプチド(US2002/0042368)、αvβ3インテグリンに対する抗体(EP 633945);アザ橋かけされた二環式アミノ酸誘導体(WO2002/02556)等を含む。
【0077】
本発明の目的のために、「腫瘍壊死因子α(TNF−α)」は、Pennica et al., Nature, 312: 721 (1984)またはAggarwal et al., JBC, 260: 2345 (1985)に記載のアミノ酸配列を含むヒトTNF−α分子を指す。
【0078】
本明細書における「TNF−α阻害剤」は、一般にTNF−αに結合しそしてその活性を中和することにより、TNF−αの生物学的機能をある程度阻害する作用物質である。本明細書で特に意図されるTNF阻害剤の例は、エタネルセプト(Etanercept)(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))を含む。
【0079】
「疾患修飾抗リウマチ薬物」または「DMARDs」の例は、ヒドロキシクロロキン、サルファサラジン、メトトレキセート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ(+経口および皮下メトロトレキセート)、アザチオプリン、D−ペニシラミン、金(経口)、金(筋肉内)、ミノサイクリン、シクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質A免疫吸着(それらの塩および誘導体を含む)などを含む。
【0080】
「非ステロイド抗炎症性薬物」または「NSAIDs」は、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン(それらの塩または誘導体を含む)などを含む。
【0081】
「コルチコステロイド」は、天然に存在するコルチコステロイドの効果を模倣するかまたは増大させるステロイドの一般的化学構造を有するいくつかの合成のまたは天然に存在する物質のいずれかを指す。合成コルチコステロイドの例は、プレドニソン、プレドニソロン(メチルプレドニソロンを含む)、デキサメタゾン、グルチコルチコイドおよびβメタゾンを含む。
【0082】
「パッケージインサート」は、適応、使用、用量、投与、禁忌、パッケージされる製造物と組み合わされるべき他の治療製造物および/またはこのような治療製造物の使用に関する警告等に関する情報を含有する治療製造物の市販パッケージに普通に含まれる指示を指すために使用される。
【0083】
II.治療
本発明は、B細胞表面マーカーに結合する有効量の抗体(好ましくはCD20抗体)を多発性硬化症に罹患している被験体に投与することを含む、多発性硬化症に罹患している被験体における多発性硬化症を処置する方法を提供する。本発明において処置されるべきMSは、一次進行性多発性硬化症(PPMS)、再発−寛解多発性硬化症(RRMS)、二次進行性多発性硬化症(SPMS)および進行性再発多発性硬化症(PRMS)を含むが、PPMSまたはRRMSの治療は本発明では好ましい態様である。
【0084】
好ましい投薬プロトコールに従えば、この方法は、有効量のCD20抗体を多発性硬化症被験体に投与して、約0.5〜4グラム(好ましくは約1.5〜2.5グラム)の最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4グラム(好ましくは約1.5〜2.5グラム)の第二抗体暴露を与え、第二抗体暴露は、最初の抗体暴露から約16〜60週間まで与えられない、ことを含む。本発明の目的で、第二抗体暴露は、被験体が最初の抗体暴露の後CD20抗体で処理される次の回であり、最初の暴露と第二の暴露との間に入るCD20抗体処理または暴露はない。
【0085】
最初の抗体暴露と第二または次の抗体暴露との間の間隔は、最初の抗体暴露の第1用量または第2用量から測定することができるが、好ましくは最初の抗体暴露の第1用量から測定することができる。
【0086】
本発明における好ましい態様では、抗体暴露は約24週もしくは6ヶ月離れているかまたは約48週もしくは12ヶ月離れている。
【0087】
1つの態様では、第二抗体暴露は、最初の暴露から約20〜30週まで与えられず、場合により次いで約0.5〜4グラム(好ましくは約1.5〜2.5グラム)の第三抗体暴露が与えられ、第三抗体暴露は最初の抗体暴露から約46〜60週(好ましくは約46〜54週)まで行われず、次いで好ましくはさらなる抗体暴露は最初の抗体暴露から少なくとも約70〜75週まで与えられない。
【0088】
別の態様では、第二抗体暴露は最初の暴露から約46〜60週まで与えられず、そして次の抗体暴露は、もしあるとすれば、前の抗体暴露から約46〜60週まで与えられない。
【0089】
本発明における任意の1つまたは複数の抗体暴露は、単一用量の抗体としてまたは2つの別々の用量の抗体として(即ち第1用量および第2用量を構成する)、被験体に与えられることができる。各抗体暴露のために使用される用量の特定の数(1であろうが2であろうが)は、例えば、処置されるMSのタイプ、使用される抗体のタイプ、第2の医薬が使用されるかどうかおよびどのタイプの第2の医薬が使用されるか、ならびに投与の方法および頻度に依存する。2つの別々の用量が投与される場合には、第2用量は第1の用量が投与されたときから約3〜17日、さらに好ましくは約6〜16日、最も好ましくは約13〜16日に投与されるのが好ましい。2つの別々の用量が投与される場合には、抗体の第1および第2用量は、好ましくは約0.5〜1.5グラム、さらに好ましくは約0.75〜1.3グラムである。
【0090】
1つの態様では、被験体は、抗体の少なくとも約3回のまたは少なくとも4回の暴露、例えば約3〜60回、さらに特定的には約3〜40回、最も特定的には約3〜20回の暴露を与えられる。好ましくは、このような暴露は約24週もしくは6ヶ月、または48週もしくは12ヶ月の間隔で行なわれる。1つの態様では、各抗体暴露は単一用量の抗体として与えられる。別の態様では、各抗体暴露は、2つの別々の用量の抗体として与えられる。しかしながら、すべてではない抗体暴露が、単一用量としてまたは2つの別々の用量として与えられる必要がある。
【0091】
抗体は、裸の抗体であることができ、または他の分子、例えば細胞毒性作用物質、例えば放射性化合物とコンジュゲートを形成していてもよい。本発明における好ましい抗体は、リツキシマブ、ヒト化2H7(例えば配列番号2および8における可変ドメイン配列を含む)または配列番号23および24における可変ドメイン配列を含むヒト化2H7、またはhuMAX−CD20(Genmab)である。
【0092】
1つの態様では、被験体は、多発性硬化症を処置するために、薬物(1つまたは複数)、例えば免疫抑制剤(1つまたは複数)により前もって決して処置されておらず、および/またはB細胞表面マーカーに対する抗体により前もって決して処置されていない(例えばCD20抗体により前もって決して処置されない)。
【0093】
抗体は、非経口的、局所的、皮下、腹腔内、肺内、鼻内および/または病巣内投与を含む適当な手段により投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下投与を含む。鞘内投与も意図される(例えばCD20抗体の鞘内送達に関してはUS Patent Appln No. 2002/0009444, Grillo-Lopez, A 参照)。さらに、抗体は、パルス注入、例えば抗体の減退性用量(declining doses)により適当に投与することができる。好ましくは、投薬は、静脈内に、皮下にまたは鞘内に、最も好ましくは静脈内注入(1つまたは複数)により与えられる。
【0094】
CD20抗体は多発性硬化症を処置するために被験体に投与される唯一の薬物であることができるが、場合により第2医薬、例えば細胞毒性作用物質、化学療法剤、免疫抑制剤、サイトカイン、サイトカインアンタゴニストまたは抗体、成長因子、ホルモン、インテグリン、インテグリンアンタゴニストもしくは抗体(例えば、LFA−1抗体、例えばGenentechから市販されているエファリズマブ(RAPTIVA(登録商標))またはBiogenから入手可能なナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))等を、B細胞表面マーカーに結合する抗体と共に(例えばCD20抗体と共に)投与してもよい。
【0095】
組合せ治療の好ましい態様では、抗体は、インターフェロンクラス薬物、例えばIFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標))またはIFN−β−1b(BETASERON(登録商標));オリゴペプチド、例えば酢酸グラチラマー(COPAXONE(登録商標));細胞毒性作用物質、例えばミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標));メトトレキセート、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン;静脈内免疫グロブリン(γグロブリン);リンパ球欠乏化治療(例えば、ミトキサントロン、シクロホスファミド、カムパス(Campath)、抗CD4、クラドリビン、全身照射、骨髄移植);全身性コルチコステロイド治療を含むコルチコステロイド(例えばメチルプレドニソロン、プレドニソン、デキサメタゾンまたはグルコルチコイド);非リンパ球欠乏化免疫抑制治療(例えばマイコフェノレートモフェティル(MMF)またはシクロスポリン);セリバスタチン(BAYCOL(登録商標))、フルバスタチン(LESCOL(登録商標))、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標))、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標))、プラバスタチン(PRAVACHOL(登録商標));シムバスタチン(ZOCOR(登録商標))を含む「スタチン」クラスのコレステロール低下薬物;エストラジオール;テストステロン(場合により高められた投与量で;Stuve et al. Neurology 8: 290-301 (2002));ホルモン置換治療;二次またはMSに関する症状(例えば、けい直、失禁、痛み、疲労)のための処置;TNF阻害剤;疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD);非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID);プラズマフェレーシス;レボチロキシン;シクロスポリンA;ソマトスタチンアナログ;サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト;代謝拮抗物質;免疫抑制剤;リハビリテーション手術;放射性ヨウ素;甲状腺摘出術;他のB細胞表面アンタゴニスト/抗体;等と組み合わされる。
第2医薬は、CD20抗体の最初の暴露および/または後の暴露と共に投与され、このような組み合わせた投与は別々の処方剤(separate formulations)もしくは単一の医薬処方剤(single pharmaceutical formulation)を使用する共投与、およびいずれかの順序での連続的投与(consecutive administration)であって、その際好ましくは時間間隔があるが、両(またはすべての)有効作用物質が同時にそれらの生物学的活性を及ぼす、連続的投与を含む。
【0096】
被験体への抗体の投与の他に、本願は、遺伝子治療による抗体の投与を意図する。抗体をコードする核酸のこのような投与は、「有効量」の抗体を投与する発現により包含される。例えば細胞内抗体を発生させるための遺伝子治療の使用に関しては、1996年3月14日に公開されたWO96/07321参照。
【0097】
被験体の細胞に核酸(場合によりベクターに含まれた)を入れるための2つの主要なアプローチがあり、即ちインビボおよびエクスビボである。インビボ送達のために、核酸は通常抗体が必要とされる部位で直接被験体に注射される。エクスビボ処置のためには、被験体の細胞を取り出し、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、そして修飾された細胞を被験体に直接投与するか、または例えば被験体に移植される多孔性膜内にカプセル化する(US Patent Nos. 4,892,538および5,283,187参照)。核酸を生きている細胞に導入するための多様な技術がある。この技術は、核酸をインビトロで培養された細胞に導入するかまたは意図する宿主の細胞にインビボで導入するかどうかに依存して変わる。インビボで哺乳動物細胞への核酸の導入のために適当な技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法等の使用を含む。遺伝子のエクスビボ送達のために普通に使用されるベクターはレトロウイルスである。
【0098】
最近の好ましいインビボ核酸導入技術は、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス、I型単純ヘルペスウイルスまたはアデノ随伴ウイルス)および脂質をベースとするシステム(遺伝子の脂質媒介導入のために有用な脂質は、例えばDOTMA、DOPEおよびDC-Cholである)によるトランスフェクションを含む。ある状況では、核酸ソースに、標的細胞を標的化する作用物質、例えば細胞表面膜タンパク質または標的細胞に対して特異的な抗体、標的細胞上の受容体に対するリガンド等を与えることが望ましい。リポソームが使用される場合には、エンドサイトーシスと関連した細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、例えば特定の細胞型を指向するキャプシドタンパク質またはその断片、環化におけるインターナリゼーションを受けるタンパク質のための抗体および細胞内局在化を標的化しそして細胞内半減期を高めるタンパク質を、標的化するためおよび/または取り込みを促進するために使用することができる。受容体媒介エンドサイトーシスの技術は、例えばWu et al., J.Biol. Chem.262: 4429-4432 (1987);およびWagner et al., Proc. Natl.Acad.Sci.USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。最近知られた遺伝子標識および遺伝子治療プロトコールの概観については、Anderson et al., Science 256: 808-813 (1992)参照。WO93/25673およびそれに引用された文献も参照されたい。
【0099】
III 抗体の産生
本発明の方法および製造物は、B細胞表面マーカーに結合する抗体、特にCD20に結合する抗体を使用するかまたは含む。従って、このような抗体を発生させるための方法をここに説明する。
【0100】
抗体の産生、またはスクリーニングのために使用されるべきB細胞表面マーカーは、例えば、所望のエピトープを含有するマーカーまたはその一部の可溶性形態であることができる。替わりにまたは追加的に、それらの細胞表面にマーカーを発現する細胞を使用して抗体を発生させまたはスクリーニングすることができる。抗体を発生させるのに有用なB細胞表面マーカーの他の形態は当業者には明らかであろう。
【0101】
本発明に従って使用される抗体の産生のための例示的技術についての説明は下記のとおりである。
(i)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは、適切な抗原およびアジュバントの多重皮下(SC)または腹腔内(ip)注射により動物において生じさせられる。それは、二官能性作用物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は異なるアルキル基である)を使用して、免疫されるべき種において免疫原性であるタンパク質、例えばスカシ貝ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤に適切な抗原をコンジュゲートさせるのに有用でありうる。
【0102】
動物を、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して、例えば100μgまたは5μgの該タンパク質またはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスについて)を3容積の完全フロイントアジュバントと組合せそしてその溶液を多重部位で皮内に注射することにより、免疫感作させる。1ヶ月後に、動物を、完全フロイントアジュバント中の最初の量の1/5〜1/10の量のペプチドまたはコンジュゲートで多重部位での皮下注射によりブーストする。7〜14日後に、動物を出血させそして血清を抗体力価についてアッセイする。力価が停滞状態(plateaus)に達するまで動物をブーストする。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであって、しかし異なるタンパク質におよび/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートされたコンジュゲートでブーストする。コンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養において作成することもできる。免疫応答を増強するためにみょうばんなどの凝集剤も適当に使用する。
【0103】
(ii)モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる、即ち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の製造期間中に生じる可能な変異体(このような変異体は一般に少量存在する)を除いては、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。従って、修飾語「モノクローナル」は、別個の抗体またはポリクローナル抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。
【0104】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256: 495 (1975)により記載されたハイブリドーマ法を使用して作成することができ、または組換えDNA法により作成することができる(US Patent No. 4,816,567)。
【0105】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを、上記に記載のとおりに免疫感作させて、免疫感作のために使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘発させる。または、リンパ球をインビトロで免疫感作させることができる。次いでリンパ球を、適当な融合剤、例えばポリエチレングリコールを使用してミエローマ細胞に融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice,pp.59-103 (Academic Press, 1986)。
【0106】
このようにして作成されたハイブリドーマ細胞を、融合されなかった親ミエローマ細胞の成長または増殖を阻害する1種または複数の物質を好ましくは含有する適当な培養培地中に播種しそして成長させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠いているならば、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含むであろう(HAT培地)。これらの物質はHGPRT欠失細胞の成長を阻止する。
【0107】
好ましいミエローマ細胞は、有効に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの産生を支持しそしてHAT培地などの培地に感受性であるミエローマ細胞である。これらの中でも、好ましいミエローマ細胞系は、マウスミエローマ細胞系、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, California USAから入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するマウスミエローマ細胞系ならびにAmerican Type Culture Collection, Rockville, Maryland USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞である。ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133.3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Deckker, Inc., New York, 1987))。
【0108】
ハイブリドーマ細胞を増殖させる培養培地は、抗原に対して指向されたモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈殿により又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合イムノアブソーベントアッセイ(ELISA)により決定される。
【0109】
モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えばMunson et al., Anad. Biochem., 107: 220 (1980)のスキャッチャード分析により決定されうる。
【0110】
所望の特異性、アフィニティーおよび/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈法によりサブクローニングしそして標準方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principle and Practice,pp.59-103 (Academic Press, 1986))。この目的に適当な培養培地は、例えばD−MEMまたはRPMI−1640培地を含む。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。
【0111】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、培養培地、腹水または血清から、慣用の免疫グロブリン精製手順、例えばプロテインA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーにより適当に分離される。
【0112】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、慣用の手順(例えば、マウス抗体のH鎖およびL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)を使用して容易に単離されそして配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましいソースとして役立つ。一旦単離されると、DNAは、発現ベクター中に配置することができ、発現ベクターは次いで宿主細胞、例えばE.coli細胞、類人サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または他の場合には免疫グロブリンタンパク質を産生しないミエローマ細胞中にトランスフェクションして、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAのバクテリアにおける組換え発現に関する概説論文は、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5: 256-262 (1993)およびPlueckthum, Immunol. Revs., 130: 151-188 (1992)を含む。
【0113】
さらなる態様では、McCafferty et al., Nature, 348: 552-554 (1990)に記載の技術を使用して抗体ファージライブラリーから抗体又は抗体断片を単離することができる。Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)およびMarks et al., J.Mol.Biol., 222: 581-597 (1991)は、それぞれ、ファージライブラリーを使用するマウスおよびヒト抗体の単離を記載している。その後の刊行物は、鎖シャッフリング(Marks et al., Bio/Technology,10: 779-783 (1992))ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するためのストラテジーとしてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換え(Waterhouse et al., Nuc. Acids. Res., 21: 2265-2266 (1996))による高アフィニティー(nM範囲)ヒト抗体の産生を記載している。かくして、これらの技術はモノクローナル抗体の単離のための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に替わる実用的な代替方法である。
【0114】
DNAは、例えば相同性マウス配列の代わりにヒトH鎖およびL鎖定常ドメインのコード配列を置換することにより(US Patent No. 4,816,567; Morrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 81: 6851 (1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列のすべてまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合により結合させることにより、修飾することもできる。
【0115】
典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換され又はそれらは抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位および異なる抗原に対する特異性を有する他の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を創り出す。
【0116】
(iii)ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒトに適合させるための方法は、当技術分野において記載されている。好ましくは、ヒト化抗体は、非ヒトであるソースからそれに導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「輸入」残基("import" residues)と呼ばれ、これは典型的には「輸入」可変ドメインから取られる。ヒト適合化は、本質的に、ヒト抗体の対応する配列の代わりに超可変領域配列を置き換えることにより、Winterおよび共同研究者の方法 (Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature,332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988))に従って行うことができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインより実質的に少ない配列が非ヒト種からの対応する配列により置換されている、キメラ抗体である(US Patent No. 4,816,567)。実際に、ヒト化抗体は、典型的には、ある超可変領域残基及び場合によりいくらかのFR残基がげっ歯類抗体における類似部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0117】
ヒト化抗体を作成するために使用されるべきL鎖及びH鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるのに非常に重要である。いわゆる「最善に適合した("best-fit")方法に従えば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列が、既知のヒト可変ドメイン配列の全体ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近似したヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れられる(Sims et al., J.Immunol., 151: 2296 (1993); Chothia et al., J.Mol. Biol., 196: 901) (1987))。他の方法は、L鎖又はH鎖可変領域の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークは、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4285 (1992); Presta et al., J.Immunol., 151: 2623 (1993))。
【0118】
抗体が、抗原に対する高いアフィニティーおよび他の有利な生物学的性質を保持してヒトに適合されることはさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従えば、ヒト化抗体は、親のそしてヒトに適合した配列の三次元モデルを使用して、親配列および種々の概念のヒトに適合した産物の分析方法により作成される。三次元免疫グロブリンモデルは普通に入手可能でありそして当業者に熟知されている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な(probable)三次元コンホーメーション構造を図解しそしてディスプレーするコンピュータープログラムが入手可能である。これらのディスプレーの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基の見込みのある役割(likely role)の分析、即ち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を与える残基の分析を可能とする。この方法では、FR残基は、所望の抗体特性、例えば、標的抗原(1種または複数)に対する増加したアフィニティーが達成されるように、レシピエントおよび輸入配列から選択されそして組み合わされることができる。一般に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を与えることに直接且つ最も実質的に関与している。
【0119】
(iv)ヒト抗体
ヒトへの適合に替わるものとして、ヒト抗体を発生させることができる。例えば、免疫感作されると、内在性免疫グロブリン産生の不存在下に完全なレパートリーのヒト抗体を産生することができるトランスジェニック動物(例えばマウス)を作成することが今や可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系突然変異体マウスにおける抗体H鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失(homozygous deletion)が内在性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系突然変異体マウスへのヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレーの導入は、抗原チャレンジするとヒト抗体の産生をもたらすであろう。例えば、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362: 255-258 (1993); Bruggermann et al., Year in Immuno., 7: 33 (1993); およびUS Patent Nos.5,591,669、5,589,369および5,545,807を参照されたい。
【0120】
または、ファージディスプレー技術(McCafferty et al., Nature 348: 552-553 (1990))は、免疫感作されていないドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体および抗体断片を産生するために使用することができる。この技術に従えば、抗体Vドメイン遺伝子を、繊維状バクテリオファージ、例えばM13またはfdのメジャーまたはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングし(cloned in-frame)、そしてファージ粒子の表面に機能的抗体断片としてディスプレーされる。繊維状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能的性質に基づく選択は、これらの性質を示す抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。従って、ファージは、B細胞の性質のいくらかを模倣する。ファージディスプレーは種々のフォーマットで行うことができ;それらの概説については、例えば、Johnson, Kevin S and Chiswell, David J., Current Opinion in Structural Biology 3: 564-571 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかのソースをファージディスプレーのために使用することができる。Clackson et al., Nature, 352: 624-628 (1991)は、免疫感作されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリーから抗オキサゾロン抗体の多様なアレーを単離した。Marks et al., J. Mol. Biol.222: 581-597 (1991)またはGriffith et al., EMBO J. 12: 725-734 (1993)により記載された技術に従って、免疫感作されていないヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができそして抗原(自己抗原を含む)の多様なアレーに対する抗体を、本質的に単離することができる。US Patent No. 5,565,332および5,573,905も参照されたい。
【0121】
ヒト抗体はインビトロで活性化されたB細胞により発生させることもできる(US Patents 5,567,610および 5,229,275参照)。
【0122】
(v) 抗体断片
抗体断片の産生のために種々の技術が開発された。伝統的には、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解消化により誘導された(例えば、Morimoto et al., Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24: 107-117 (1992)およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)参照)。しかしながら、これらの断片は、今や組換え宿主細胞により直接産生されうる。例えば、抗体断片は、上記した抗体ファージライブラリーから単離することができる。または、Fab’−SH断片はE.coliから直接回収することができ、そして化学的にカップリングさせてF(ab’)2 断片を形成することができる(Carter et al., Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。他のアプローチに従えば、F(ab’)2 断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体断片を産生するための他の技術は当業者には明らかであろう。他の態様では、えり抜きの抗体は一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185; US Patent No. 5,571,894; およびUS Patent No. 5,587,458参照。抗体断片は、例えばUS Patent No. 5,641,870に記載の「線状抗体」であることもできる。このような線状抗体断片は単一特異性又は二重特異性であることができる。
【0123】
(vi)二重特異性抗体
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2つの異なるエピトープに結合することができる。他のこのような抗体は、B細胞表面マーカーに結合することができ、そしてさらに第2の異なるB細胞表面マーカーに結合することができる。または、抗B細胞表面マーカー結合アーム(anti-B cell surface marker binding arm)を、白血球上のトリガリング分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD2もしくはCD3)、またはIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせて、細胞防御機構をB細胞に集中させることができる。二重特異性抗体を使用して細胞毒性作用物質をB細胞に局在させることもできる。これらの抗体は、B細胞表面マーカー結合アームおよび細胞毒性作用物質(例えばサポリン、抗インターフェロンα、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキセートまたは放射性同位元素ハプテン)に結合するアームを有する。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2 二重特異性抗体)として調製されうる。
【0124】
二重特異性抗体を製造するための方法は当技術分野で知られている。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリンH鎖−L鎖ペアーの共発現に基づいており、その際2つの鎖は異なる特異性を有している(Millstein et al., Nature, 305: 537-539 (1983))。免疫グロブリンH鎖及びL鎖の無作為の取り合わせのゆえに、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、そのうちの唯1種が正しい二重特異性構造を有する。通常アフィニティークロマトグラフィー段階によりなされる正しい分子の精製は、どちらかといえば厄介であり、そして産物の収率は低い。同様な手順がWO93/08829およびTraunecker et al., EMBO J., 10: 3655-3659 (1991)に開示されている。
【0125】
異なるアプローチに従えば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、好ましくは、少なくともヒンジの一部、CH2およびCH3領域を含む免疫グロブリンH鎖定常ドメインとの融合である。融合体の少なくとも1つに存在する、L鎖結合のために必用な部位を含有する第1H鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリンH鎖融合物及び所望により免疫グロブリンL鎖をコードするDNAsを別々の発現ベクターに挿入しそして適当な宿主生物に共トランスフェクションする。これは、構築において使用される3つのポリペプチド鎖の等しくない割合が最適収率を与える態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合を調節するのに大きな融通性を与える。しかしながら、等しい割合の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらすとき又は割合が特別な意味を持たないとき、1つの発現ベクターに2つまたはすべての3つのポリペプチド鎖のためのコード配列を挿入することが可能である。
【0126】
このアプローチの好ましい態様では、二重特異性抗体は、1つのアームにおける第1結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリンH鎖および他のアームにおけるハイブリッド免疫グロブリンH鎖−L鎖ペア(第2結合特異性を与える)からなる。この非対称性構造は、望まない免疫グロブリン鎖の組み合わせから所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。何故ならば、二重特異性分子の半分のみに免疫グロブリンL鎖が存在することは容易な分離方法を与えるからである。このアプローチはWO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を発生させることの更なる詳細については、例えば、Suresh et al., Methods in Enzymology, 121: 210 (1986)を参照されたい。
【0127】
US Patent No. 5,731,168に記載の他のアプローチに従えば、抗体分子のペアの間の界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大にするために操作することができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの1つまたは複数の小さなアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きいアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより、第2抗体分子の界面に、大きな側鎖(1つまたは複数)と同じまたは同様なサイズの補償「空洞」(compensatory "cavities")が創り出される。これは、ホモ二量体などの他の望まれない最終産物を超えるヘテロ二量体の収率を増加させる機構を与える。
【0128】
二重特異性抗体は、架橋した抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の1つはアビジンにカップリングさせることができ、他方の抗体はビオチンにカップリングさせることができる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望まない細胞に標的化するために提唱され(US Patent No. 4,676,980)、そしてHIV感染の処置のために提唱された(WO91/00360 、WO92/200373および EP03089)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の便利な架橋法を使用して作成することができる。適当な架橋剤は、多数の架橋技術と共に、当技術分野で周知されておりそしてUS Patent No. 4,676,980に開示されている。
【0129】
抗体断片から二重特異性抗体を発生させる技術も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は化学結合を使用して調製することができる。Brennan et al., Science, 229: 81 (1985)は、インタクト抗体をタンパク質分解により開裂してF(ab’)2断片を発生させる方法を記載している。これらの断片を、ジチオール複合化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下に還元して近接ジチオールを安定化させそして分子間ジスルフィド形成を防止する。次いで発生したFab’断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換する。次いでFab’−TNB誘導体の1つをメルカプトエチルアミンによる還元によってFab’−チオールに再転換し、そして等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して二重特異性抗体を形成させる。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための作用物質として使用することができる。
【0130】
組換え細胞培養物から直接二重特異性抗体断片を作成しそして単離するための種々の技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して産生された。Kostelny et al., J. Immunol., 148 (5): 1547-1533 (1992)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドは遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して一量体を形成を形成し、次いで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のために利用することもできる。Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により記載された「二重特異性抗体(diabody)」技術は、二重特異性抗体断片を作成するための別の機構を与えた。断片を、同じ鎖上の2つのドメイン間でペアの形成を可能とするにはあまりにも短すぎるリンカーによりL鎖可変ドメイン(VL)に連結されたH鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVHおよびVLドメインは、他の断片の相補性VLおよびVHドメインとペアを形成するように強制され、それにより2つの抗原結合部位を形成する。単一鎖Fv(sFv)二量体の使用による二重特異性抗体断片を作成するための他のストラテジーも報告されている。Gruber et al., J. Immunol., 152: 5368 (1994)参照。
【0131】
2より多くの結合価を有する抗体が意図される。例えば、三重特異的抗体を作成することができる。Tutt et al., J.Immunol. 147: 60 (1991)。
【0132】
IV 抗体のコンジュゲートおよび他の修飾
本明細書において方法で使用される抗体または製造物に含まれる抗体は、場合により細胞毒性作用物質にコンジュゲートされる。例えば、抗体は、WO2004/032828に記載のとおりの薬物にコンジュゲートさせることができる。
【0133】
このような抗体−細胞毒性作用物質コンジュゲートの発生に有用な化学療法剤は上記した。
【0134】
抗体と1種または複数の小分子毒素、例えばカリチェアミシン、メイタンシン(US Patent No. 5,208,020)、トリコテン(trichothene)およびCC1065とのコンジュゲートも本発明において意図される。本発明の1つの態様では、抗体を1つまたは複数のメイタンシン分子にコンジュゲートさせる(例えば抗体分子当たり約1〜約10個のメイタンシン分子)。メイタンシンは、例えば、May−SS−Meに転換することができ、これをMay−SH3に還元しそして修飾された抗体と反応させて(Chari et al. Cancer Research 52: 127-131 (1992))メイタンシノイド−抗体コンジュゲートを発生させることができる。
【0135】
または、抗体を1つまたは複数のカリチェアミシン分子にコンジュゲートさせる。カリチェアミシンファミリーの抗生物質は、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断を生じさせることができる。使用することができるカリチェアミシンの構造的アナログは、γ1、α2、α3、N−アセチル−γ1、PSAGおよびθ1を含むが、それらに限定されるわけではない(Hinman et al. Cancer Research 53: 3336-3342 (1993)およびLode et al. Cancer Research 53: 2925-2928 (1998))。
【0136】
使用することができる酵素的に活性な毒素およびその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(Pseudomonas aeruginosaからの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、Aleurites fordiiプロテイン、ジアンシンプロテイン(dianthin proteins)、Phytolaca americanaプロテイン(PAPI、PAPIIおよびPAP−S)、momordica charantia阻害剤、クルシン、クロチン(crotin)、sapaonaria officinalis阻害剤、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、およびトリコテセン類(tricothecenes)を含む。例えば、1993年10月28日に公開されたWO93/21232参照。
【0137】
本発明は、核酸分解活性(nucleolytic activity)を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)とコンジュゲートした抗体をさらに意図する。
【0138】
放射性コンジュゲートした抗体(radioconjugated antibodies)の産生のための種々の放射性同位元素が利用可能である。例は、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位元素を含む。
【0139】
抗体と細胞毒性作用物質とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタレルデヒド(glutareldehyde))、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトリレン 2,6−ジイソシアネート)およびビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作成することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al. Science 238: 1098 (1987)に記載されたように調製することができる。炭素14標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミノペンタ酢酸(MX−DTPA)は、抗体に対する放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的キレート剤である。WO94/11026参照。リンカーは、細胞における細胞毒性薬物の放出を容易にする「開裂可能なリンカー」であることができる。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al. Cancer Research 52: 127-131 (1992))を使用することができる。
【0140】
または、抗体と細胞毒性作用物質を含む融合タンパク質を、例えば組換え技術またはペプチド合成により作成することができる。
【0141】
さらに他の態様では、抗体−受容体コンジュゲートを被験体に投与し、次いで結合しなかったコンジュゲートを清浄化剤を使用して循環から除去し、次いで細胞毒性作用物質(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされる「リガンド」(例えばアビジン)を投与する、腫瘍予備ターゲティングにおいて利用するために、抗体を「受容体(例えばストレプトアビジン)にコンジュゲートさせることができる。
【0142】
本発明の抗体は、プロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、WO81/01145参照)を活性な抗癌薬物に転換するプロドラッグ活性化酵素とコンジュゲートさせることもできる。例えばWO88/07378およびUS Patent No. 4,975,278参照。
【0143】
このようなコンジュゲートの酵素成分は、プロドラッグをそのより活性な細胞毒性形態に転換するようにプロドラッグに作用することができる任意の酵素を含む。
【0144】
本発明の方法において有用な酵素は、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物(free drugs)に転換するために有用なアルカリホスファターゼ;サルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に転換するために有用なアリールスルファターゼ;無毒性5−フルオロシトシンを抗癌薬物、5−フルオロウラシルに転換するために有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に転換するために有用なプロテアーゼ、例えばセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、ズブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(例えばカテプシンBおよびL);D−アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを転換するために有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離薬物に転換するために有用な炭水化物開裂酵素、例えばβ−ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼ;β−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に転換するために有用なβ−ラクタマーゼ;およびそれぞれフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基でペニシリンのアミン窒素において誘導体化された薬物を遊離薬物に転換するために有用なペニシリンアミダーゼ、例えばペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼを含むが、それらに限定されるわけではない。または、「アブザイム」としても当技術分野で知られている、酵素活性を有する抗体を使用して本発明のプロドラッグを遊離活性薬物に転換させることができる(Massey, Nature 328: 457-458 (1987)。抗体−アブザイムコンジュゲートは、腫瘍細胞集団へのアブザイムの送達について本明細書で記載されたようにして調製することができる。
【0145】
本発明の酵素は、当技術分野で周知の技術により、例えば上記したヘテロ二官能性架橋試薬の使用により抗体に共有結合させることができる。または、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性な部分に結合させた本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、当技術分野で周知の組換えDNA技術を使用して構築することができる(例えばNeuberger et al., Nature, 312: 604-608 (1984)参照)。
【0146】
本発明において抗体の他の修飾が意図される。例えば、抗体を、種々の非タンパク質ポリマーの1つ、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーに結合させることができる。1つまたは複数のPEG分子に結合させた抗体断片、例えばFab’は、本発明の特に好ましい態様である。
【0147】
本明細書で開示された抗体は、リポソームとして処方されてもよい。抗体を含有するリポソームは当技術分野で知られた方法、例えば、Epstein et al., Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980); US Patent Nos.4,485,045および4,544,545; ならびに1997年10月23日に公開されたWO97/38731に記載の方法により調製される。高められた循環時間を有するリポソームは、US Patent No. 5,013,556に開示されている。
【0148】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG−誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物により逆相蒸発法により発生させることができる。リポソームは、規定されたポアサイズのフィルターを通して押し出されて所望の直径を有するリポソームを生じる。本発明の抗体のFab’断片は、ジスルフィド交換反応によりMartin et al. J.Biol.Chem.257: 286-288 (1982)に記載されたとおりリポソームにコンジュゲートさせることができる。化学療法剤が場合によりリポソーム内に含有される。Gabizon et al. J.National Cancer Inst. 81 (19)1484 (1989)参照。
【0149】
抗体のアミノ酸配列修飾(1つまたは複数)が意図される。例えば、抗体の結合アフィニティーおよび/または他の生物学的性質を改良することが望ましいことがある。抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することによりまたはペプチド合成により調製される。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内残基への挿入および/または抗体のアミノ酸配列内残基の置換を含む。欠失、挿入および置換の任意の組合せは、最終構築物が所望の特性を有するという条件下に、最終構築物に達するようになされる。アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置を変えることなどの、抗体の翻訳後のプロセスを変えることもある。
【0150】
突然変異誘発のための好ましい位置である抗体のある残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham and Wells Science, 244: 1081-1085 (1989)により記載された「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここでは、残基又は標的残基のグループを同定し(例えば、arg、asp、his、lysおよびgluなどの帯電した残基)そして中性の又は負に帯電したアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)により置換してアミノ酸の抗原との相互作用に影響を与える。置換に対する機能的感受性を証明するこれらのアミノ酸位置は、次いでさらなるもしくは他の変異体を置換の部位に、または置換の部位に対して、導入することにより精密化される。従って、アミノ酸配列変異を導入するための部位は予備決定されるが、突然変異自体の性質は予備決定される必要はない。例えば、与えられた部位における突然変異の性能を分析するために、alaスキャニングまたはランダム突然変異誘発を標的コドンまたは領域で行い、そして発現された抗体変異体を所望の活性についてスクリーニングする。
【0151】
アミノ酸配列挿入は、長さにおいて1残基から100または100より多くの残基を含有するポリペプチドまで長さが変動するアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合ならびに、単一または多重アミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体または細胞毒性ポリペプチドに融合された抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体のN末端またはC末端への酵素の融合または抗体の血清半減期を増加するポリペプチドの融合を含む。
【0152】
他のタイプの変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基により置換された抗体分子における少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。抗体(1つまたは複数)の置換突然変異誘発のための最大の関心のある部位は、超可変領域を含むが、FR変化も意図される。保存性置換は、「好ましい置換」の題目の下に表1に示される。このような置換が生物学的活性の変化をもたらすならば、表1において「例示的置換」と命名されたまたはアミノ酸クラスに関してさらに下記するごとき、より多く実質的な変化を導入することができそして産物をスクリーニングすることができる。
【0153】
【表7】

【0154】
抗体の生物学的性質における実質的な修飾は、(a)例えばシートまたはらせん状コンホメーションとして、置換の区域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のかさばりを維持することに関するその効果において有意に異なる置換を選ぶことにより達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の性質の類似性に従って分類することができる(A.L. Lehninger, in Biochemistry, second ed., pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
または、天然に存在する残基は、共通の側鎖性質に基づいてグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Gln;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0155】
非保存性置換は、これらのクラスの1つのメンバーを他のクラスで置き換えることを含むであろう。
【0156】
抗体の適切なコンホメーションを維持することに関与していない任意のシステイン残基を、一般にセリンで置換して分子の酸化安定性を改良しそして異常な架橋を防止することもできる。反対に、システイン結合(1つまたは複数)を抗体に付加してその安定性を改良する(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合に)ことができる。
【0157】
特に好ましいタイプの置換変異体は、親抗体の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる発展のために選択された得られる変異体(1つまたは複数)は、変異体を発生させる親抗体に比較して生物学的性質を改良したであろう。このような置換変異体を発生させるための便利な方法は、ファージディスプレーを使用するアフィニティー成熟である。簡単に言えば、いくつかの超可変領域部位(例えば6〜7部位)を突然変異させて各部位におけるすべての可能なアミノ置換を発生させる。このようにして発生させた抗体変異体を、各粒子内にパーケージされたM13の遺伝子III産物に対する融合物として繊維状ファージ粒子から一価方式でディスプレーする。ファージディスプレーされた変異体を、次いで本明細書に開示されたとおりそれらの生物学的活性(例えば結合アフィニティー)についてスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。替わりにまたは追加的に、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原との接触点を同定することは有益でありうる。このような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳細に述べた技術に従う置換の候補である。このような変異体が発生すると、変異体のパネルを本明細書に記載のとおりのスクリーニングに供し、そして1つまたは複数の適切なアッセイにおいて優れた性質を有する抗体を選択してさらに発展させることができる。
【0158】
抗体の他のタイプのアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを変える。このような変化は、抗体に見出される1つまたは複数の炭水化物部分を欠失させることおよび/または抗体に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位を加えることを含む。
【0159】
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的にはN−結合であるか又はO−結合である。N−結合されたとは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−トレオニン(式中Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素による結合のための認識配列である。従って、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的グリコシル化部位を創り出す。O−結合したグリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も普通にはセリンまたはトレオニンへの糖N−アセチルガラクトサミン、ガラクトースまたはキシロースの1つの結合を指す。但し5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンを使用することもできる。
【0160】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列が1つまたは複数の上記したトリペプチド配列を含有するようにアミノ酸配列を変えることにより便利に達成される(N−結合したグリコシル化部位の場合)。この変化は、元の抗体の配列への1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加、又は元の抗体に対する1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基による置換によってもなされうる(O−結合したグリコシル化部位の場合)。
【0161】
抗体がFc領域を含む場合には、それに結合した炭水化物を変えることができる。例えば、抗体のFc領域に結合したフコースを欠いている成熟した炭水化物構造を有する抗体は、US Patent Appl No. US2003/0157108 A1, Presta, L に記載されている。CD20抗体組成に関してはUS2004/0093621 A1 (Kyowa Hakko Kogyo Co., Ltd)も参照されたい。抗体のFc領域に結合した炭水化物におけるバイセクティングN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)(bisecting N-acetylglucosamine (GlcNAc))を有する抗体は、WO03/011878, Jean-Mairet et al. and US Patent No. 6,602,684, Umana et al.に言及されている。抗体のFc領域に結合したオリゴ糖における少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体は、WO97/30087, Patel et al.に報告されている。抗体のFc領域に結合した変化した炭水化物を有する抗体に関してはWO98/58964 (Raju, S.)および WO99/22764 (Raju, S.)も参照。
【0162】
本発明における好ましいグリコシル化変異体は、Fc領域に結合した炭水化物構造がフコースを欠いているFc領域を含む。このような変異体は改良されたADCC機能を有する。場合により、Fc領域は、ADCCをさらに改良するFc領域における1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333および/または334(残基のEu番号付け)における置換を含む。「脱フコシル化された」または「フコースを欠失した」抗体に関連する刊行物の例は、US Pat Appl. No. US2003/0157108 A1, Presta, L; WO00/61739A1; WO01/29246A1; US2003/0115614A1; US2002/0164328A1; US2004/0093621A1; US2004/0132140A1; US2004/0110704A1; US2004/0110282A1; US2004/0109865A1; WO03/085119A1; WO03/084570A1; WO2005/035778; WO2005/035586(フコシル化のRNA阻害(RNAi)を記載する);Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336: 1239-1249 (2004); Yamane Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)を含む。脱フコシル化された抗体を産生する細胞系の例は、タンパク質フコシル化に欠けているLec13CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249: 533-545 (1986); US Pat Appl No US 2003/0157108 A1,Presta, L; および WO2004/056312 A1, Adams et al., 特に実施例11における)、ならびにノックアウト細胞系、例えばα−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004))を含む。
【0163】
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野に知られている種々の方法により調製される。これらの方法は、天然のソースからの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合に)またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的な)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、ならびに抗体の以前に調製された変異体又は非変異体バージョンのカセット突然変異誘発を含むが、それらに限定されるわけではない。
【0164】
例えば、抗体の抗原依存性細胞性細胞毒性(ADCC)および補体依存性細胞毒性(CDC)を増強するように、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましいことがありうる。これは、抗体抗体のFc領域に1つまたは複数アミノ酸置換を導入することにより達成されうる。替わりにまたは追加的に、システイン残基(1つまたは複数)をFc領域に導入することができ、それによりこの領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能とする。このようにして発生させたホモ二量体抗体は、改良されたインターナリゼーション能力および/または増加した補体媒介細胞死滅および抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を有することができる。Caron et al., J.Exp med. 176: 1191-1195 (1992)およびShopes, B.J.Immunol. 148: 2918-2922 (1992)参照。増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff et al. Cancer Research 53: 2560-2565 (1993)に記載されたとおりヘテロ二官能性架橋リンカーを使用して調製することもできる。または、二重Fc領域を有し、それにより増強された補体溶解およびADCC能力を有することができる抗体を工学的に作ることができる。Stevenson et al. Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989)参照。
【0165】
WO00/42072 (Presta,L.)は、抗体がそのFc領域にアミノ酸置換を含む、ヒトエフェクター細胞の存在下に改良されたADCC機能を有する抗体を記載している。好ましくは、改良されたADCCを有する抗体は、Fc領域の位置298、333および/または334に置換を含む。好ましくは、変化したFc領域は、これらの位置の1つ、2つまたは3つに置換を含むかまたは置換からなるヒトIgG1Fc領域である。
【0166】
変化したC1q結合および/または補体依存性細胞毒性(CDC)を有する抗体は、WO99/51642, US Patent No. 6,194,551B1, US Patent No. 6,242,195B1; US Patent No. 6,528,624B1およびUS Patent No. 6,538,124 (Idusogie et al.)に記載されている。抗体は、そのFc領域のアミノ酸位置270、322、326、327、329、313、333および/または334の1つまたは複数の位置にアミノ酸置換を含む。
【0167】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えばUS Patent 5,739,277に記載されたとおり抗体(特に抗体断片)にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことができる。本明細書で使用された、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させる責任を持つIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。そのFc領域に置換を有しそして増加した血清半減期を有する抗体は、WO00/42072 (Presta, L.)にも記載されている。
【0168】
3個または3個より多くの(好ましくは4つの)機能的抗原結合部位を有する工学的に作られた抗体も意図される(US Appln No. US2002/0004587 A1, Miller et al.)。
【0169】
v.医薬処方
本発明に従って使用される抗体の治療処方剤は、所望の純度を有する抗体を場合により使用する薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合することにより、凍結乾燥された処方剤又は水溶液剤の形態で保存用に調製される。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに対して無毒性でありそして緩衝剤、例えばリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10より少ない残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン;単糖類、二糖類およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成性対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn−タンパク質複合体);および/または非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0170】
例示的抗CD20抗体処方剤はWO98/56418に記載されている。この刊行物は、40mg/mLリツキシマブ、25mMアセテート、150mMトレハロース、0.9%ベンジルアルコール、0.02%ポリソルベート20を含み、2〜8℃で2年保存の最小寿命を有するpH5.0の液体多重用量処方剤を記載している。関心のある他の抗CD20処方剤は、9.0mg/mL塩化ナトリウム、7.35mg/mL無水クエン酸ナトリウム、0.7mg/mLポリソルベート80および注射用の無菌水pH6.5中の10mg/mLリツキシマブを含む。
【0171】
皮下投与に適合した凍結乾燥された処方剤はUS Patent No. 6,267,958 (Andya et al)に記載されている。このような凍結乾燥された処方剤は、適当な希釈剤により高タンパク質濃度に再構成することができ、そして再構成された処方剤は本発明で処置されるべき哺乳動物に皮下投与されうる。
【0172】
該抗体のまたは抗体の結晶化された形態も意図する。例えば、US2002/0136719A1 (Shenoy et al)参照。
【0173】
本発明における処方剤は、処置されるべき特定の適用のために必要な1種より多くの活性化合物、好ましくは互いに不利に影響を与えない相補的活性を有する活性化合物を含有することもできる。例えば、細胞毒性作用物質;化学療法剤;免疫抑制剤;サイトカイン;サイトカインアンタゴニストもしくは抗体;成長因子;ホルモン;インテグリン;インテグリンアンタゴニストもしくは抗体(例えばLFA−1抗体、例えばGenentechから市販のエファリズマブ(efalizumab)/RAPTIVAまたはα4インテグリン抗体、例えばBiogenから入手可能なナタリズマブ(natalizumab)/TYSABRI(登録商標));インターフェロンクラス薬物、例えばIFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標)またはIFN−β−1b(BETASERON(登録商標);オリゴペプチド、例えば酢酸グラチラマー(COPAXONE(登録商標);細胞毒性作用物質、例えばミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標))、メトトレキセート、シクロホスファミド、クロラムブシルまたはアザチオプリン;静脈内免疫グロブリン(γグロブリン);リンパ球欠乏化薬物(例えばミトキサントロン、シクロホスファミド、カムパス(Campath)、抗CD4、またはクラドリビン);非リンパ球欠乏化免疫抑制薬物(例えばミコフェノレートモフェチル(MMF)またはシクロスポリン);「スタチン」クラスのコレステロール低下薬物;エストラジオール;テストステロン;ホルモン置換治療;二次症状またはMSに関連した症候(例えばけい直、失禁、痛み、疲れ)を処置する薬物;TNF阻害剤;疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD);非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID);コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニソロン、プレドニソン、デキサメタゾンまたはグルコルチコイド);レボチロキシン;シクロスポリンA;ソマトスタチンアナログ;サイトカインアンタゴニスト;代謝拮抗物質;免疫抑制剤;インテグリンアンタゴニストもしくは抗体(例えばLFA−1抗体、例えばエファリズマブもしくはα4インテグリン抗体、例えばナタリズマブ);または他のB細胞表面アンタゴニスト/抗体;等を処方剤中にさらに与えることは望ましいことでありうる。このような他の作用物質のタイプおよび有効量は、例えば処方剤中に存在する抗体の量、処置されるべき多発性硬化症のタイプおよび被験体の臨床的パラメータに依存する。これらは、一般に先に使用されたのと同じ投薬量および投与経路でまたは前に使用された投薬量の約1〜99%で使用される。
【0174】
有効成分は、例えばコアセルベーション技術によりまたは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルション中に閉じ込める(entrapped)こともできる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))に開示されている。
【0175】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適当な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、該マトリックスは成形された物品、例えばフイルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(US Patent No. 3,773,919)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
【0176】
インビトロ投与のために使用されるべき処方剤は無菌でなければならない。これは無菌濾過膜を通す濾過により容易に達成される。
【0177】
VI.製造物
本発明の他の態様では、上記した多発性硬化症の処置のために有用な物質を含有する製造物が提供される。好ましくは、製造物は:(a)容器内にB細胞表面マーカーに結合する抗体(例えばCD20抗体)および薬学的に許容されうる担体または希釈剤を含む組成物を含む容器;および(b)多発性硬化症に罹患している被験体に該組成物を投与して、約0.5〜4グラムの最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4の第二抗体暴露を与え、第二抗体暴露を最初の抗体暴露から約16〜60週まで与えない、指示;またはPPMSに罹患している被験体に組成物を投与するための指示を有するパッケージインサートを含む。
【0178】
製造物は、容器、および該容器上のまたは該容器と関連したラベルまたはパッケージインサートを含む。適当な容器は、例えばボトル、バイアル、注射器等を含む。容器は、種々の材料、例えばガラスまたはプラスチックから形成されうる。容器は、多発性硬化症を処置するために有効な組成物を保持し又は含有し、そして無菌の出入り口を有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿刺可能な栓を有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであることができる)。組成物中の少なくとも1種の有効作用物質は抗体である。ラベルまたはパッケージインサートは、与えられるべき抗体および任意の他の薬物の投薬量および間隔に関する特定の手引きにより多発性硬化症に罹患している被験体において多発性硬化症を処置するために組成物を使用することを指示する。製造物は、薬学的に許容されうる希釈剤緩衝剤、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液を含む第2容器をさらに含むことができる。製造物は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針および注射器を含む商業的およびユーザーの観点から望ましい他の物質をさらに含むことができる。
【0179】
場合により、本発明における製造物は、処置のための抗体以外の作用物質を含む容器をさらに含み、そしてこのような作用物質による哺乳動物の処置に関する指示をさらに含み、このような作用物質は、好ましくは、化学療法剤もしくは免疫抑制剤、インターフェロンクラス薬物、例えばIFN−β−1a(REBIF(登録商標)およびAVONEX(登録商標)またはIFN−β−1b(BETASERON(登録商標));オリゴペプチド、例えば酢酸グラチチラマー(COPAXONE(登録商標));細胞毒性作用物質、例えばミトキサントロン(NOVANTRONE(登録商標))、メトトレキセート、シクロホスファミド、クロラムブシルまたはアザチオプリン;静脈内免疫グロブリン(γグロブリン);リンパ球欠乏化薬物(例えばミトキサントロン、シクロホスファミド、カムパス(Campath)、抗CD4、またはクラドリビン);非リンパ球欠乏化免疫抑制薬物(例えばミコフェノレートモフェチル(MMF)またはシクロスポリン);「スタチン」クラスのコレステロール低下薬物;エストラジオール;ホルモン置換療法;二次またはMSに関連した症状(例えばけい直、失禁、痛み、疲れ)を処置する薬物;TNF阻害剤;疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD);非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID);コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニソロン、プレドニソン、デキサメタゾンまたはグルコルチコイド);レボチロキシン;シクロスポリンA;ソマトスタチンアナログ;サイトカインもしくはサイトカイン受容体アンタゴニスト;代謝拮抗物質;免疫抑制剤;インテグリンアンタゴニストもしくは抗体(例えばLFA−1抗体、例えばエファリズマブもしくはα4インテグリン抗体、例えばナタリズマブ);および他のB細胞表面マーカー抗体;等である。
【0180】
本発明のさらなる詳細は、下記の非限定的実施例により説明される。明細書におけるすべての引用文献の開示は明白に参照により本明細書に組み込まれる。
【0181】
実施例1
一次進行性多発性硬化症(PPMS)の処置
McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001)により定義されたPPMSの診断を有する被験体を、この実施例においてCD20抗体で処置する。
【0182】
Genentechから市販されているリツキシマブを、9.0mg/mL塩化ナトリウム、0.7mg/mLポリソルベート80、7.35mg/mL無水クエン酸ナトリウムおよび注射用無菌水(pH6.5)中に無菌産物としてIV投与するために処方する。
【0183】
最初のコースの処置は、1日目と15日目の各々に投与された1g静脈内(IV)リツキシマブの用量からなる。被験体は、アセトアミノフェン(1g)およびジフェンヒドラミンHCL(50mg)または同等物を、各注入の開始の30〜60分前に口により受け取る。
【0184】
その後のコースの処置は、24週(169日目)、48週(337日)および72週(505日)に開始して行われるであろう。その後のコ−スの処置の第2注入は、最初の注入の14±1日後であろう。
【0185】
最初の再発を経験する被験体は、IVまたは経口コルチコステロイドにより救助処置を受けることができる。全身性コルチコステロイドを、MS再発に対して適切な処置の曝露又は期間を超えない投与計画を使用して投与されうる。再発は下記のすべてとして定義される:
●少なくとも24時間続く神経学的異常の急性出現
●熱、感染、外傷、付随する薬剤処理(concomitant medications)または他の病因に帰することができない変化
●下記のFS尺度:錐体、脳神経、小脳、知覚、視覚、歩行の1つにおける最小1ポイントの変化を含む盲検研究者による検査における他覚的変化を伴う事象。
【0186】
コルチコステロイドの下記の投与計画を使用することができる:3日間毎日の1gIVメチルプレドニソロン、続く5日間毎日の60mgプレドニソンおよびその後各日に10mg増分だけ減少させる。IVメチルプレドニソロンが入手可能でないならば、3日間毎日の150mgIVデキサメタゾンで代替することができる。コルチコステロイドの唯一のコースは増悪に対して投与されるべきである。その後の免疫学的研究およびMRIスキャンはコルチコステロイド投与計画の完了の少なくとも4週間後に得られるべきである。コルチコステロイド吸入器(経口および鼻)または動脈内注射を使用することができる。
【0187】
場合によりCD20抗体と組み合わされるべき追加の処置はIFN−β、酢酸グラチラマー、メトトレキセート、シクロホスファミドまたはミトキサントロンを含む。
【0188】
主効果アウトカム評価基準(primary efficacy outcome measure)は、確認された疾患進行に対する時間である。疾患進行は、変化が他の病因(例えば熱、併発した病気、MS再発もしくは再燃、または付随する薬剤処理)に帰することはできない場合について、もしベースラインEDSSが2.0〜5.5ポイント(両数字も含む)であるならば、ベースライン拡大障害状態尺度(Expanded Disability Status Scale)(EDSS)(Kurtzke J. Neurology 33 (11): 1444-52 (1983))から≧1.0ポイントの増加として定義され、又はベースラインEDSSが≧5.5ポイント(この数字を含む)であるならば、≧0.5ポイントの増加として定義される。疾患進行の確認は、最初の進行の少なくとも12週(84日)後である規則的にスケジュールされた診察において行うことができる。
【0189】
副効果アウトカム評価基準は、:
−脳MRIスキャンにおけるT2病変の全容積のベースラインから96週までの変化、
−脳MRIスキャンにおける脳容積のベースラインから96週までの変化、
場合により以下の内任意の1つまたは複数の改善:
−多発性硬化症機能的複合尺度(Multiple Sclerosis Functional Composite Scale (MSFCS))、
−EDSS、
−EDSSを使用して決定された96週における確認された疾患進行を有する被験体の割合、
−9ホールペグ試験(9-Hole Peg Test)(MSFCSの副尺度)により測定された上肢機能(upper extremity function)、
−25フート歩行時間(Timed 25-Foot Walk)(MSFCSの副尺度)により測定された歩行、
−定速聴覚連続加算検査(Paced Auditory Serial Addition Test)(3秒のみ;MSFCSの副尺度)により測定された認知、
−MRIスキャンにおける脳T2病変の全容積(48週および122週)、
−MRIスキャンにおける脳T1病変の全容積、
−MRIスキャンにおける頚部脊髄の横断面積、
−MRIスキャンにおける脳容積(48週および122週)、
を含む。
【0190】
本明細書に記載されたリツキシマブで処理された被験体は、上記アウトカム評価基準の任意の1つまたは複数に従うPPMSの兆候、症状または他の指標の改善を示すであろう。
【0191】
実施例2
再発−寛解多発性硬化症の処置
McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001)により定義されたRRMSを有する被験体を、この実施例でCD20抗体で処置し、抗体曝露は約6ヶ月離れている。
【0192】
Genentechから市販されているリツキシマブを、9.0mg/mL塩化ナトリウム、0.7mg/mLポリソルベート80、7.35mg/mL無水クエン酸ナトリウムおよび注射用無菌水(pH6.5)中に無菌産物としてIV投与するために処方する。
【0193】
最初のコースの処置は、1日目と15日目の各々に投与された1g静脈内(IV)リツキシマブの用量からなる。被験体は、アセトアミノフェン(1g)およびジフェンヒドラミンHCL(50mg)または同等物を、各注入の開始の30〜60分前に口により受け取る。
【0194】
その後のコースの処置は、24週(169日)、48週(337日)および72週(505日)に開始して行われるであろう。その後のコ−スの処置の第2注入は、最初の注入の14±1日後であろう。
【0195】
好ましくは、リツキシマブはRRMSを処置するために投与される唯一の作用物質である。しかしながら、被験体は、場合によりIVまたは経口コルチコステロイド、IFN−β、酢酸グラチラマー、メトトレキセート、シクロホスファミドまたはミトキサントロンを受け取ることができる。
【0196】
最初の再発を経験する被験体はIVまたは経口コルチコステロイドによる救助処置を受けることができる。全身性コルチコステロイドは、MS再発に対して適切な曝露または処置の期間を超えない投与計画を使用して投与されうる。この実施例における再発は:
少なくとも30日間相対的に安定なもしくは改善している神経学的状態にあった被験体において48時間より長く続くMSと合致した新しいもしくは反復した神経学的症状の出現として定義される。神経学的症状の変化は、EDSSで少なくとも半段階の増加、または適切な機能系スコア(FSS)の1つにおける2ポイントの増加又は適切なFSSの2つまたは2つより多くにおける1ポイントの増加と合致した他覚的な神経学的悪化を伴わなければならない。変化は、検査している研究者により証明されなければならずそして選択されたFS尺度(例えば、錐体、歩行、小脳、脳幹、感覚または視覚)に影響を与えなければならない。症状は、≧24時間持続しなければならずそして混乱させる臨床的因子(例えば熱、感染、損傷(injury)、付随する薬物投与に対する有害な反応)に帰することができないものであるべきである。発作性症状(例えば緊張性痙攣)の単一エピソードは再発ではなくて、少なくとも24時間にわたる発作性症候が多数回起こる新たな発症は、もし新たな対応する他覚的発現が伴っているならば、再発であることができる。臨床的検査、疲労、気分変化、または膀胱もしくは腸促迫(urgency)もしくは失禁に関する変化を伴わない感覚症状は、再発を証明するのには十分ではないであろう。
【0197】
主効果アウトカム評価基準は、ガドリニウム増強病変のMRIエンドポイント、または確認された疾患進行に対する時間(ベースライン拡大障害状態尺度(EDSS)から≧1.0ポイントの増加として定義された;Kurtzke J. Neurology 33 (11): 1444-52 (1983))である。首効果エンドポイントは、12,16,20および24週における脳の逐次MRIスキャンで観察されたガドリニウム増強T1病変の総数であることができる。
【0198】
副効果アウトカム評価基準は、再発の頻度;脳MRIスキャンにおけるT2病変の全容積のベースラインから96週までの変化(例えば、スクリーニングから24週および36週までの脳のMRAスキャンにおけるT2病変の全容積の変化);脳MRIスキャンにおける脳容積のベースラインから96週までの変化;多発性硬化症機能複合尺度(Multiple Sclerosis Functional Composite Scale)(MSFCS)およびその副尺度;9ホールペグ試験(MSFCSの副尺度)により測定された上肢機能;25フート歩行時間(Timed 25-Foot Walk)(MSFCSの副尺度)により測定された歩行、定速聴覚連続加算検査(MSFCSの副尺度)により測定された認知;多発性硬化症クオリティーオブライフ−54(MSQOL−54)質問表;MRIスキャンにおける脳T1病変の全容積(例えば、20、28および36週における脳の逐次MRAスキャンで観察されるガドリニウム増強T1病変の総数);MRIスキャンにおける頚部脊髄の横断面積;24週まで(即ち0〜24週)および36週まで(即ち0〜36週)に再発する被験体の割合;24および36週における組み合わせた特徴的活性評価基準(Combined Unique Activity Measure)を含む。
【0199】
上記したリツキシマブで処置された患者は、上記アウトカム評価基準の任意の1つまたは複数における改善を示すであろう。
【0200】
実施例3
再発−寛解多発性硬化症の処置
McDonald et al. Ann Neurol 50: 121-7 (2001)により定義されたRRMSを有する被験体を本発明においてCD20抗体で処置する。この実施例では、抗体暴露は約1年離れている。
【0201】
Genentechから市販されているリツキシマブを、9.0mg/mL塩化ナトリウム、0.7mg/mLポリソルベート80、7.35mg/mL無水クエン酸ナトリウムおよび注射用無菌水(pH6.5)中に無菌産物としてIV投与用に処方する。
【0202】
最初のコースの処置は、1日目と15日目の各々に投与された1g静脈内(IV)リツキシマブの用量からなる。被験体は、アセトアミノフェン(1g)およびジフェンヒドラミンHCL(50mg)または同等物を、各注入の開始の30〜60分前に口により受け取る。
【0203】
その後のコースの処置は、48週および96週に開始して行われるであろう。その後のコ−スの処置の第2注入は、最初の注入の14±1日後であろう。
【0204】
好ましくは、リツキシマブはRRMSを処置するために投与される唯一の作用物質である。しかしながら、被験体は、場合によりIVまたは経口コルチコステロイド、IFN−β、酢酸グラチラマー、メトトレキセート、シクロホスファミドまたはミトキサントロンを受け取ることができる。
【0205】
最初の再発を経験する被験体はIVまたは経口コルチコステロイドによる救助処置を受けることができる。全身性コルチコステロイドは、MS再発に対して適切な曝露または処置の期間を超えない投与計画を使用して投与されうる。この実施例における再発は:少なくとも30日間相対的に安定なもしくは改善している神経学的状態にあった被験体において48時間より長く続くMSと合致した新しいもしくは反復した神経学的症状の出現として定義される。神経学的症状の変化は、EDSSで少なくとも半段階の増加、または適切な機能系スコア(FSS)の1つにおける2ポイントの増加又は適切なFSSの2つまたは2つより多くにおける1ポイントの増加と合致した他覚的な神経学的悪化を伴わなければならない。変化は、検査している研究者により証明されなければならずそして選択されたFS尺度(例えば、錐体、歩行、小脳、脳幹、感覚または視覚)に影響を与えなければならない。症状は、≧24時間持続しなければならずそして混乱させる臨床的因子(例えば熱、感染、損傷、付随する薬物投与に対する有害な反応)に帰することができないものであるべきである。発作性症候(例えば緊張性痙攣)の単一エピソードは再発ではなくて、少なくとも24時間にわたる発作性症状が多数回起こる新たな発症は、もし新たな対応する他覚的発現が伴っているならば、再発であることができる。臨床的検査における変化、疲労、気分変化、または膀胱もしくは腸促迫もしくは失禁を伴わない感覚症状は、再発を証明するのには十分ではないであろう。
【0206】
主効果アウトカム評価基準は、ガドリニウム増強病変のMRIエンドポイント、または確認された疾患進行に対する時間(ベースライン拡大障害状態尺度(EDSS)から≧1.0ポイントの増加として定義された;Kurtzke J. Neurology 33 (11): 1444-52 (1983))である。主効果エンドポイントは、12,16,20および24週における脳の逐次MRIスキャンで観察されたガドリニウム増強T1病変の総数であることができる。
【0207】
副効果アウトカム評価基準は、再発の頻度;脳MRIスキャンにおけるT2病変の全容積のベースラインから96週までの変化(例えば、スクリーニングから24週および36週までの脳のMRAスキャンにおけるT2病変の全容積の変化);脳MRIスキャンにおける脳容積のベースラインから96週までの変化;多発性硬化症機能複合尺度(MSFCS)およびその副尺度;9ホールペグ試験(MSFCSの副尺度)により測定された上肢機能;25フート歩行時間(MSFCSの副尺度)により測定された歩行;定速聴覚連続加算検査(MSFCSの副尺度)により測定された認知;多発性硬化症クオリティーオブライフ−54(MSQOL−54)質問表;MRIスキャンにおける脳T1病変の全容積(例えば、20、28および36週における脳の逐次MRAスキャンで観察されるガドリニウム増強T1病変の総数);MRIスキャンにおける頚部脊髄の横断面積;24週まで(即ち0〜24週)および36週まで(即ち0〜36週)に再発する被験体の割合;24および36週における組み合わせた特徴的活性評価基準を含む。
【0208】
上記したリツキシマブで処置された患者は、上記アウトカム評価基準の任意の1つまたは複数における改善を示すであろう。
【0209】
実施例4
ヒト化2H7変異体
この実施例は、本明細書で開示された方法で使用するためのヒト化2H7抗体変異体を説明する。ヒト化2H7抗体は、好ましくは、下記のCDR配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つを含む:
CDR L1配列RASSSVSYXH(式中XはMまたはL(配列番号18)である)、例えば配列番号4(図1A)、
配列番号5のCDR L2配列(図1A)、
CDR L3配列QQWXFNPPT(式中XはSまたはA(配列番号19)である)、例えば配列番号6(図1A)、
配列番号10のCDR H1配列(図1B)、
AIYPGNGXTSYNQKFKG(式中XはDまたはA(配列番号20)である)のCDR H2配列、例えば配列番号11(図1B)、および
VVYYSXXYWYFDV(式中、位置6のXはN、A、Y、WまたはDでありそして位置7のXはSまたはR(配列番号21)である)のCDR H3配列、例えば配列番号12(図1B)。
【0210】
上記CDR配列は、実質的にヒトL鎖κサブグループI(VL6I)のヒトコンセンサスFR残基、および実質的にヒトH鎖サブグループIII(VHIII)のヒトコンセンサスFR残基などのヒト可変Lおよび可変Hフレームワーク配列内に一般に存在する。WO2004/056312(Lowman et al.)も参照。
【0211】
可変H領域は、ヒトIgG鎖定常領域に連結させることができ、該領域は例えば、ネイティブ配列および変異体定常領域を含むIgG1またはIgG3であることができる。
【0212】
好ましい態様では、このような抗体は、配列番号8の可変Hドメイン配列(図1Bに示されたv16)を含み、場合により配列番号2の可変Lドメイン配列(図1Aに示された v16)も含み、そして場合により可変Hドメインにおける位置56、100および/または100aにおける1つまたは複数のアミノ酸置換、例えばD56A、N100A、N100Y、および/またはS100aR、および可変Lドメインにおける位置32および/または92における1つまたは複数のアミノ酸置換、例えばM32Lおよび/またはS92Aを含む。好ましくは、抗体は配列番号13または16のL鎖アミノ酸配列および配列番号14、15、17、22または25のH鎖アミノ酸配列を含むインタクト抗体である。
【0213】
好ましいヒト化2H7抗体はオクレリズマブ(ocrelizumab)(Genentech)である。
【0214】
本発明における抗体は、Fc領域にADCC活性を改善する少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含むことができ、例えばアミノ酸置換が位置298、333および334にあるアミノ酸置換、好ましくはH鎖残基のEu番号付けを使用して、S298A、E333AおよびK334Aであるアミノ酸置換をさらに含むことができる。US Patent No. 6,737,056B1, Prestaも参照。
【0215】
これらの抗体のいずれもFc領域にFcRn結合または血清半減期を改良する少なくとも1つの置換を含むことができ、例えば、H鎖位置434における置換、例えばN434Wを含むことができる。US Patent No. 6,737,056B1,Prestaも参照。
【0216】
これらの抗体のいずれもFc領域にCDC活性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸置換をさらに含むことができ、例えば、位置326における少なくとも1つの置換、好ましくはK326AまたはK326Wを含むことができる。US Patent No. 6,528,624B1 (Idusogie et al)も参照。
【0217】
いくらかの好ましいヒト化2H7変異体は、配列番号2の可変Lドメインおよび配列番号8の可変Hドメインを含む変異体(これらはFc領域(もし存在すれば)に置換を伴うかまたは伴わない変異体を含む)、ならびに配列番号8における変化N100A;またはD56AおよびN100A;またはD56A、N100YおよびS100aRを有する可変Hドメイン、および配列番号2における変化M32L;またはS92A;またはM32LおよびS92Aを有する可変Lドメインを含む変異体である。
【0218】
2H7.v16の可変HドメインにおけるM34は、抗体安定性の潜在的ソースとして同定されそして置換のための他の潜在的候補である。
【0219】
本発明のいくらかの種々の好ましい態様の要約において、2H7.v16に基づく変異体の可変領域は、下表に示されるアミノ酸置換の位置を除いてv16のアミノ酸配列を含む。特記しない限り、2H7変異体はv16のL鎖と同じL鎖を有するであろう。
【0220】
【表8】

【0221】
1つの好ましいヒト化2H7は、2H7.v16可変Lドメイン配列:
【表9】


および2H7.v16可変Hドメイン配列:
【表10】


を含む。
【0222】
ヒト化2H7.v16抗体がインタクト抗体である場合には、それはL鎖アミノ酸配列:
【表11】


および配列番号14のH鎖アミノ酸配列または;
【表12】


を含むことができる。
【0223】
他の好ましいヒト化2H7抗体は、2H7.v511可変Lドメイン配列:
【表13】


および2H7.v511可変Hドメイン配列:
【表14】


を含む。
【0224】
ヒト化2H7.v511抗体がインタクト抗体である場合には、それは、L鎖アミノ酸配列:
【表15】


および配列番号17のH鎖アミノ酸配列または:
【表16】


を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1A】マウス2H7(配列番号1)、ヒト化2H7.v16変異体(配列番号2)およびヒトκL鎖サブグループI(配列番号3)の各々のL鎖可変ドメイン(VL)のアミノ酸配列を比較する配列アラインメントである。2H7およびhu2H7.v16のVLのCDRsは下記のとおりである:CDR1(配列番号4)、CDR2(配列番号5)およびCDR3(配列番号6)。
【図1B】マウス2H7(配列番号7)、ヒト化2H7.v16変異体(配列番号8)およびH鎖サブグループIIIのヒトコンセンサス配列(配列番号9)の各々のH鎖可変ドメイン(VH)のアミノ酸配列を比較する配列アラインメントである。2H7およびhu2H7.v16のVHのCDRsは下記のとおりである:CDR1(配列番号10)、CDR2(配列番号11)およびCDR3(配列番号12)。 図1Aおよび図1Bにおいて、各鎖のCDR1、CDR2およびCDR3は、括弧内に囲まれており、示されたとおり、フレームワーク領域FR1−FR4によりフランキングされている。2H7はマウス2H7抗体を指す。2つの列の間の星印は、2つの配列間で異なっている位置を示す。残基番号付けは、Kabat et al. Sequences of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)に従っており、挿入はa、b、c、dおよびeとして示されている。
【図2】成熟2H7.v16 L鎖(配列番号13)のアミノ酸配列を示す。
【図3】成熟2H7.v16 H鎖(配列番号14)のアミノ酸配列を示す。
【図4】成熟2H7.v31 H鎖(配列番号15)のアミノ酸配列を示す。2H7.v31のL鎖は2H7.v16の L鎖と同じである。
【図5】成熟2H7.v16および2H7.v511 L鎖(それぞれ配列番号13および16)のアラインメントを示し、Kabat可変ドメイン残基番号付けおよびEu定常ドメイン残基番号付けによる。
【図6】成熟2H7.v16および2H7.v511 H鎖(それぞれ配列番号14および17)のアラインメントを示し、Kabat可変ドメイン残基番号付けおよびEu定常ドメイン残基番号付けによる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のCD20抗体を被験体に投与して約0.5〜4グラムの最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4グラムの第2抗体暴露を与え、第2抗体暴露は最初の抗体暴露から約16〜60週まで与えられず、そして抗体暴露の各々は1または2用量の抗体として被験体に与えられる、ことを含む被験体における多発性硬化症を処置する方法。
【請求項2】
最初の抗体暴露から約20〜30週まで第二抗体暴露を与えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
最初の抗体暴露および第二抗体暴露を、各々約1.5〜2.5グラムの量で与える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有効量のCD20抗体を被験体に投与して約0.5〜4グラムの第3抗体暴露を与え、第3抗体暴露は最初の抗体暴露から約40〜60週まで行わない、ことをさらに含む、請求項2〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
第三抗体暴露を、約1.5〜2.5グラムの量で与える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
最初の抗体暴露から約46〜54週まで第三抗体暴露を与えない、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
さらなる抗体曝露を、最初の抗体暴露から少なくとも約70〜75週まで与えない、請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
最初の抗体暴露から約46〜60週まで第二抗体暴露を与えない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
抗体暴露の各々を1用量の抗体として被験体に与える、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
抗体暴露の各々を2用量の抗体として被験体に与え、該2用量は第1用量と第2用量を構成する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
第1用量が投与された時から約3〜17日に、第2用量を投与する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1用量が投与された時から約6〜16日に、第2用量を投与する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1用量が投与された時から約13〜16日に、第2用量を投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1用量の抗体および第2用量の抗体が各々約0.5〜1.5グラムである、請求項10〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
第1用量の抗体および第2用量の抗体が各々約0.75〜1.3グラムである、請求項10〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
3回又は3回より多くの抗体暴露を被験体に対して行う、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
4回又は4回より多くの抗体暴露を被験体に対して行う、請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
第2医薬を最初の抗体暴露又は後の抗体暴露と共に投与し、CD20抗体が第1医薬である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
第2医薬が、インターフェロン、酢酸グラチラマー、細胞毒性作用物質、化学療法剤、ミトキサントロン、メトトレキセート、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、γグロブリン、カムパス(Campath)、抗CD4、クラドリビン、コルチコステロイド、ミコフェノレートモフェチル(MMF)、シクロスポリン、スタチンクラスのコレステロール低下薬物、エストラジオール、テストステロン、ホルモン置換薬物、TNF阻害剤、疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD)、非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)、レボチロキシン、シクロスポリンA、ソマトスタチン(somatastatin)アナログ、サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、インテグリンアンタゴニストもしくは抗体、LFA−1抗体、エファリズマブ、α4インテグリン抗体、ナタリズマブおよび他のB細胞表面マーカー抗体からなる群より選ばれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
多発性硬化症が再発−寛解多発性硬化症(RRMS)である、請求項1〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
多発性硬化症が一次進行性多発性硬化症(PPMS)である、請求項1〜19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
被験体はCD20抗体により決して前もって処置されていない、請求項1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
抗体が裸の抗体である、請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
抗体が他の分子とコンジュゲートしている、請求項1〜22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
他の分子が細胞毒性作用物質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗体を静脈内に投与する、請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
抗体を、各抗体暴露のために静脈内に投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体を皮下に投与する、請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
抗体を鞘内に投与する、請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
CD20抗体が、多発性硬化症を処置するために被験体に投与される唯一の医薬である、請求項1〜29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
抗体がリツキシマブである、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
抗体が、配列番号2および8における可変ドメイン配列を含むヒト化2H7である、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
抗体が、配列番号23および24における可変ドメイン配列を含むヒト化2H7である、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
被験体が、高められた抗ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、抗ガングリオシドおよび/または抗ニューロフィラメント抗体レベル(1つまたは複数)を有する、請求項1〜34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
高められたレベルのB細胞が、被験体の脳脊髄液(CSF)、多発性硬化症病変または血清中に存在する、請求項1〜34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
(a)CD20抗体を含む容器、および
(b)被験体の多発性硬化症を処置するための指示を有するパッケージインサートであって、該指示は、約0.5〜4グラムの最初の抗体暴露を与え、次いで約0.5〜4グラムの第2抗体暴露を与えるのに有効な量の抗体を被験体に投与し、最初の抗体暴露から約16〜60週まで第2抗体暴露を行わず、そして抗体暴露の各々は1または2用量の抗体として被験体に与えられることを指示している、パッケージインサート、
を含む製造物。
【請求項37】
第2医薬を含む容器をさらに含み、CD20抗体が第1医薬であり、そして第2医薬により被験体を処置するためのパッケージインサートにおける指示をさらに含む、請求項36に記載の製造物。
【請求項38】
第2医薬が、インターフェロン、酢酸グラチラマー、細胞毒性作用物質、化学療法剤、ミトキサントロン、メトトレキセート、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、γグロブリン、カムパス(Campath)、抗CD4、クラドリビン、コルチコステロイド、ミコフェノレートモフェチル(MMF)、シクロスポリン、スタチンクラスのコレステロール低下薬物、エストラジオール、テストステロン、ホルモン置換薬物、TNF阻害剤、疾患改変抗リウマチ薬物(DMARD)、非ステロイド抗炎症性薬物(NSAID)、レボチロキシン、シクロスポリンA、ソマトスタチン(somatastatin)アナログ、サイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、および他のB細胞表面マーカー抗体からなる群より選ばれる、請求項37に記載の製造物。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−501712(P2008−501712A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515637(P2007−515637)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/019641
【国際公開番号】WO2005/117978
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】