説明

多発性骨髄腫の処置のためのアンタゴニスト抗CD40モノクローナル抗体の使用

多発性骨髄腫に対して被験体を処置するための治療方法が提供される。この方法は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを、それらを必要とする患者に投与する工程を包含する。そのアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、有意なアゴニスト活性を有さないが、その抗体がヒトCD40発現細胞のCD40抗原に結合する場合にアンタゴニスト活性を示す。抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントのアンタゴニスト活性は、ヒトCD40発現多発性骨髄種細胞の増殖および/または分化を有利に阻害する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、アンタゴニスト抗CD40モノクローナル抗体を用いる多発性骨髄腫の処置のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
多発性骨髄腫(MM)は、低い増殖性指数および長い寿命を有する分泌性形質細胞の骨髄における潜在蓄積によって特徴付けられる、B細胞悪性疾患である。この疾患は、最終的に骨および骨髄を攻撃し、骨格系のいたるところに多発性腫瘍および病変を生じる。全ての癌の約1%および全ての血液学的な悪性疾患の10%強は、多発性骨髄腫が原因であり得る。MMの発病率は、老年層で増大し、診断時での中央値の年齢は約61歳である。現在の処置プロトコル(このようなプロトコルとしては、ビンクリスチン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、アドリアマイシンとプレドニゾンまたはデキサメタゾンとのような化学治療剤の組み合わせが挙げられる)は、わずか約5%の完全寛解率をもたらし、そして診断時からの生存期間の中央値は約36ヶ月間〜約48ヶ月間である。自己由来の骨髄または末梢血液前駆細胞(PBMC)移植後の高用量化学療法を用いる近年の発展は、完全寛解率および寛解期間を増大した。それにもかかわらず、全般的な生存はわずかに延期されたに過ぎず、かつ、治療についての証拠は得られていない。最終的に、全てのMM患者は、インターフェロンα(IFN−α)単独またはステロイドとの併用による維持療法下でさえ、再発する。
【0003】
MMに対する利用可能な化学療法の処置レジメンの有効性は、低い細胞増殖率および多剤耐性の発達により制限される。90%より多いMM患者に対し、この疾患は化学療法抵抗性となる。その結果、表面抗原(例えば、形質細胞上のCD20およびCD40)を標的化する養子免疫療法に狙いを定めた代替の処置レジメンが求められる。
【0004】
CD40は、正常なヒトB細胞および腫瘍性のヒトB細胞の両方、樹状細胞、抗原提示細胞(APC)、内皮細胞、単球細胞ならびに上皮細胞の表面に存在する55kDaの細胞表面抗原である。B細胞表面上のCD40抗原へのCD40リガンドの結合はB細胞を刺激し、B細胞を高レベルの可溶性免疫グロブリンを分泌する形質細胞へと成熟させる。B細胞系統の1個または数個の腫瘍に由来する悪性B細胞は、高レベルのCD40を発現し、そして生存および増殖のためのCD40シグナル伝達に依存するようである。例えば、低グレードおよび高グレードのB細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、骨髄芽球性白血病およびホジキン病を有する患者からの形質転換細胞は、CD40を発現する。重要なことに、CD20に比べて、CD40は多発性骨髄腫の高い割合で見出される(非特許文献1)。
【非特許文献1】Maloneyら「Semin.Hematol.」(1999年)第36巻(補遺3):p.30−33
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多発性骨髄腫を有する患者に対する不十分な予後を考慮すると、代替的な処置プロトコルが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
多発性骨髄腫を有するヒト被験体を処置するための方法が提供され、この方法は、ヒトCD40発現細胞のCD40抗原に結合される場合に有意なアゴニスト活性を有さない抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントをその被験体に投与する工程を包含する。CD40抗原を発現する多発性骨髄腫細胞の増殖を阻害するための方法もまた提供される。
【0007】
本発明の方法において使用するのに適切なアンタゴニスト抗CD40抗体は、CD40に対して強力な親和性を有し、少なくとも10−6M、好ましくは少なくとも約10−7M〜約10−8M、より好ましくは少なくとも約10−8M〜約10−12Mの解離平衡定数(K)によって特徴付けられる。これらのモノクローナル抗体およびその抗原結合フラグメントは、ヒト細胞の表面で発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し得る。それらは有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒト細胞上のCD40抗原に結合される場合にアンタゴニスト活性を示す。1つの実施形態において、抗CD40抗体またはそのフラグメントは、正常なヒトB細胞上のCD40抗原に結合される場合にアンタゴニスト活性を示す。
別の実施形態において、この抗CD40抗体またはそのフラグメントは、悪性のヒトB細胞上のCD40抗原に結合される場合にアンタゴニスト活性を示す。適切なモノクローナル抗体はヒト定常領域を有し;好ましくは適切なモノクローナル抗体はまた、全体的なヒト化フレームワーク領域または部分的なヒト化フレームワーク領域を有し;最も好ましくは、完全なヒト抗体またはその抗原結合フラグメントである。
【0008】
このようなモノクローナル抗体の例は、以下である:本明細書中に5.9およびCHIR−12.12として表される抗体であり、これらは組換え的に作製され得る;131.2F8.5.9(本明細書中で細胞株5.9と称される)および153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書中で細胞株12.12と称される)で表されるハイブリドーマ細胞株によって産生されるモノクローナル抗体;配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6と配列番号7とに示される両方の配列、および配列番号6と配列番号8とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;ならびに、ヒトCD40に特異的に結合する能力を保持し、かつ有意なアゴニスト活性を有さないがヒト細胞上のCD40抗原に結合した場合にアンタゴニスト活性を有する、これらのモノクローナル抗体の抗原結合フラグメント。このようなモノクローナル抗体の例としてはまた、ハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;配列番号10または配列番号12に示されるアミノ酸配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;ならびにCHIR−12.12モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体、または上述のモノクローナル抗体の任意のものが挙げられ、ここで、このフラグメントはヒトCD40抗原に対して特異的に結合する能力を保持する。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、処置の方法は、患者に適切なアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、治療有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含する。抗CD40抗体またはそのフラグメントの治療有効用量は、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、または約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲である。この処置の方法は、上記アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの、治療有効用量の一回投与または治療有効用量の複数回投与を包含し得ることが認識される。
【0010】
本発明の方法における使用に適切であるとして本明細書中に同定されるアンタゴニスト抗CD40抗体は、改変され得る。これらのアンタゴニスト抗CD40抗体の改変としては、免疫学的に活性なキメラ抗CD40抗体、ヒト化抗CD40抗体、および免疫学的に活性なマウス抗CD40抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
「腫瘍」とは、本明細書中で使用される場合、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての腫瘍性の細胞成長(growth)および細胞増殖(proliferation)、ならびに全ての前癌および癌の、細胞および組織をいう。
【0012】
用語「癌」および「癌性の」とは、代表的には、制御されていない細胞増殖によって特徴付けられる、哺乳動物における生理学的な状態をいうか、または説明する。癌の例としては、リンパ腫、多発性骨髄種および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
「抗体」および「免疫グロブリン」(Ig)は、同一の構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体が抗原に対する結合特異性を示す一方で、免疫グロブリンは抗体および抗原特異性を欠く他の抗体様分子の両方を包含する。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低いレベルで産生され、骨髄腫によって増加したレベルで産生される。
【0014】
用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、完全に組み立てられた抗体、抗原に結合し得る抗体フラグメント(例えば、Fab’、F’(ab)、Fv、単鎖抗体、二重特異性抗体(diabody))および上記のものを含む組換えペプチドを包含する。
【0015】
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で使用される場合、実質的に同質の抗体(すなわち、微量に存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて集団を構成する個々の抗体が同一である)の集団から得られる抗体をいう。
【0016】
「天然の抗体」および「天然の免疫グロブリン」は、通常は、2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖とからなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各々の軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されるが、ジスルフィド連結の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変わる。各々の重鎖および軽鎖はまた、規則的に間隔の空いた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各々の重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、次にいくつかの定常ドメインが続く。各々の軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、その他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間で界面を形成すると考えられる。
【0017】
用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体間で広範囲にわたって配列が異なり、その特定の抗原に対する各々の特定の抗体の結合および特異性に使用される事実をいう。しかし、その可変性は、抗体の可変ドメインの全体にわたって均一に分布しない。可変性は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方で相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中する。可変ドメインのうちより高度に保存される部分は、フレームワーク(FR)領域と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは、各々、4つのFR領域を含み、これらの領域は、大部分はβシート配置をとり、βシート構造に結合する(場合によってはβシート構造の一部分を形成する)ループを形成する3つのCDRによって結合される。各々の鎖におけるCDRは、他の鎖由来のCDRと共にFR領域によって近接して一緒に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら(1991)NIH Publ.No.91−3242,Vol.I,647−669頁を参照のこと)。
【0018】
定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接的に関連しないが、種々のエフェクター機能(例えば、Fcレセプター(FcR)結合、抗体依存性の細胞の毒性における抗体の関与、オプソニン作用、補体依存性細胞毒性の惹起、および肥満細胞脱顆粒)を示す。
【0019】
用語「超可変領域」は、本明細書中で使用される場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基をいう。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(L1)、残基50〜56(L2)および残基89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける残基31〜35(H1)、残基50〜65(H2)および残基95〜102(H3);Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest(第5版、Public Health Service,National Institute of Health,Bethesda,MD))ならびに/あるいは「超可変ループ」に由来するアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける残基26〜32(L1)、残基50〜52(L2)および残基91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける残基26〜32(H1)、残基53〜55(H2)および残基96〜101(H3);ClothiaおよびLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を含む。「フレームワーク」または「FR」残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0020】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖状抗体(Zapataら(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062);単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する2つの同一の抗原結合フラグメント(「Fab」フラグメントと呼ばれる)、および残りの「Fc」フラグメント(この名称は、容易に結晶化する能力を反映する)が生成される。ペプシン処理により、F(ab’)2フラグメントが得られ、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と架橋結合し得る。
【0021】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。2本の鎖(two−chain)のFv種では、この領域は、固く非共有結合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとのダイマーからなる。単鎖のFv種では、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとが、その軽鎖と重鎖とが2本の鎖のFv種における構造に類似する「ダイマーの」構造に会合し得るように、フレキシブルなペプチドリンカーによって共有結合され得る。この構成において、各々の可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−Vダイマーの表面における抗原結合部位を規定する。合わせて、6つのCDRが抗体に対する抗原結合特異性を与える。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でも、抗原を認識し結合する能力を有するが、完全な結合部位よりは親和性は低い。
【0022】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第一の定常ドメイン(C1)を含む。Fabフラグメントは、抗体のヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖C1ドメインのカルボキシ末端において、いくつかの残基が付加されている点でFab’フラグメントと異なる。Fab’−SHは、本明細書中で、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有するFab’についての呼称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、もともと、それらの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として生成された。抗体フラグメントの他の化学結合もまた公知である。
【0023】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明らかに異なる型(カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる)の一方に割り当てられ得る。
【0024】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンが異なるクラスに割り当てられ得る。ヒト免疫グロブリンの5つの主要なクラスが存在する:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、そしてこれらの1または数個か、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2)に分けられ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は周知である。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有する。例えば、ヒトIgG1アイソタイプおよびIgG3アイソタイプは、抗体依存性の細胞媒介性細胞毒性(ADCC)の活性を媒介する。
【0025】
語句「標識」とは、本明細書中で使用される場合、「標識された」抗体を生成するように抗体に直接的または間接的に結合される検出可能な化合物または組成物をいう。標識は、それ自体で検出可能である(例えば、放射性同位体標識もしくは蛍光標識)か、または酵素標識の場合には、検出可能な基質化合物もしくは組成物の化学的変化を触媒し得る。検出可能な標識として機能し得る放射性核種としては、例えば、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212およびPd−109が挙げられる。標識はまた、毒素のような検出可能で無い実体でもよい。
【0026】
用語「アンタゴニスト」は、最も広い意味で使用され、本明細書中に開示される天然の標的の生物学的活性またはその転写もしくは翻訳を、部分的もしくは完全にブロック、阻害、または中和する任意の分子を包含する。
【0027】
「キャリア」は、本明細書中で使用される場合、使用される投薬量および濃度でそのキャリアに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定剤を包含する。多くの場合、生理学的に受容可能なキャリアは、pH緩衝化水溶液である。生理学的に受容可能なキャリアの例としては、緩衝液(例えば、リン酸、クエン酸、コハク酸および他の有機酸);抗酸化物質(アルコルビン酸が挙げられる);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンが挙げられる);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);塩を形成する対イオン(例えば、ナトリウム);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)およびPluronics)が挙げられる。1種以上のさらなる治療剤と「併用して」投与することは、同時(simultaneous(concurrent))投与および任意の順序での連続投与を包含する。
【0028】
「宿主細胞」とは、本明細書中で使用される場合、組換えベクターまたは他の転移ポリヌクレオチドのためのレシピエントとして使用され得るかもしくは使用される単細胞性実体として培養された微生物または真核細胞もしくは細胞株をいい、トランスフェクトされた元の細胞の子孫を包含する。単一の細胞の子孫は、天然の変異、偶発的な変異または意図的な変異に起因して、形態またはゲノムもしくは全DNA相補体において元の親と必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。
【0029】
「ヒト効果細胞」は、1以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、その細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、抗原依存性の細胞媒介性細胞毒性(ADCC)のエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、好酸球および好中球が挙げられ、PBMCおよびNK細胞が好ましい。ADCC活性を有する抗体は、代表的には、抗体のIgG1アイソタイプまたはIgG3アイソタイプである。IgG1抗体およびIgG3抗体を単離することに加えて、このようなADCCを媒介する抗体は、非ADCC抗体由来の可変領域またはIgG1アイソタイプもしくはIgG3アイソタイプ定常領域に対する可変領域フラグメントを操作することによって作製され得ることに注意すること。
【0030】
用語「Fcレセプター」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを表すために使用される。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(γレセプター)であり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスのレセプター(これらのレセプターの対立遺伝子改変体および代替的スプライス形態を含む)が挙げられる。FcγRIIレセプターとしてはFcγRIIA(「活性化レセプター」)およびFcγRIIB(「阻害レセプター」)が挙げられ、これらは、類似のアミノ酸配列を有し、その細胞質ドメインが主に異なる。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron(1997)Annu.Rev.Immunol.15:203−234を参照のこと)。FcRは、RavetchおよびKinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991);Capelら(1994)Immunomethods 4:25−34;およびde Haasら(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330−341で概説される。他のFcR(将来同定されるものを含む)が、本明細書中の用語「FcR」に包含される。この用語はまた、新生児レセプターであるFcRnを包含し、これは、母性IgGの胎児への転移を担う(Guyerら(1976)J.Immunol.117:587およびKimら(1994)J.Immunol.24:249(1994))。
【0031】
ヒト抗体を作製するための多くの方法が存在する。例えば、分泌細胞は、エプスタイン−バーウイルス(EBV)による感染によって不死化され得る。しかし、EBVに感染した細胞は、クローニングするのが困難であり、通常は、わずかに比較的低い収量の免疫グロブリンしか産生しない(JamesおよびBell(1987)J.Immunol.Methods 100:5−40)。将来、ヒトB細胞の不死化は、形質転換遺伝子の規定された組み合わせを導入することによって達成される可能性がある。そのような可能性は、H−rasのSV40の大きな腫瘍性タンパク質および発癌性対立遺伝子とともにテロメラーゼ触媒サブユニットの発現が正常なヒト上皮細胞および線維芽細胞の腫瘍変換を生じたという最近の実証によって強調されている(Hahnら(1999)Nature 400:464−468)。現在、免疫の際に外因性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが可能である(Jakobovitsら(1993)Nature 362:255−258;LonbergおよびHuszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93;Fishwildら(1996)Nat.Biotechnol.14:845−851;Mendezら(1997)Nat.Genet.15:146−156;Green(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23;Tomizukaら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:722−727;Littleら(2000)Immunol.Today 21:364−370に概説される)。例えば、キメラマウスおよび生殖細胞変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(joining region)(J)遺伝子のホモ接合欠失が外因性抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている(Jakobovitsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551−2555)。このような生殖細胞変異マウスにおけるヒト生殖細胞免疫グロブリン遺伝子アレイの転移は、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生を生じる(Jakobovitsら(1993)Nature 362:255−258)。Mendezら(1997)(Nature Genetics 15:146−156)は、抗原でチャレンジされる場合に高親和性の完全ヒト抗体を生成するトランスジェニックマウスの系統を産生した。これは、上で記載されるように、メガベースのヒト重鎖遺伝子座およびヒト軽鎖遺伝子座を、外因性Jセグメントへの欠失を有するマウスに生殖細胞統合することによって達成された。これらのマウス(XenoMouse(登録商標)II技術(Abgenix;Fremont、California))は、約66のV遺伝子、完全なD領域およびJ領域、ならびに3つの異なる定常領域を含む1,020kbのヒト重鎖遺伝子座を含み、また、32のVκ遺伝子、JκセグメントおよびCκ遺伝子を含む800kbのヒトκ遺伝子座を含む。これらのマウスで産生される抗体は、あらゆる点(遺伝子再配列、組立て、レパートリーを含む)で、ヒトで見られるものと酷似する。ヒト抗体は、マウス遺伝子座において遺伝子再配列を妨げる外因性セグメントにおける欠失に起因して、外因性抗体よりも優先的に発現される。このようなマウスは、特定の目的の抗原で免疫され得る。
【0032】
そのような免疫動物由来の血清は、初期抗原に対する抗体反応性についてスクリーニングされ得る。リンパ球は、リンパ節または脾臓細胞から単離され得、そしてさらにCD138陰性細胞およびCD19陽性細胞に対して選択することによってB細胞に対して選択され得る。一局面において、そのようなB細胞培養物(BCC)は、骨髄腫細胞に融合されて上で詳述されるようなハイブリドーマを生成し得る。
【0033】
別の局面において、そのようなB細胞培養物は、好ましくは、初期抗原に対する反応性についてさらにスクリーニングされ得る。そのようなスクリーニングは、標的/抗原タンパク質を用いるELISA、目的の抗原に結合する公知の抗体を用いる競合アッセイ、および一過性にトランスフェクトされたCHOもしくは標的抗原を発現する他の細胞に対するインビトロ結合を含む。
【0034】
本発明は、多発性骨髄腫を有するヒト被験体を処置するための組成物および方法に関する。この方法は、本明細書中に記載される抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントによる処置を含み、ここで、その抗体またはその抗原結合フラグメントの投与はこの治療方法を受ける被験体内のポジティブな治療応答を促進する。本発明の方法において使用するのに適切な抗CD40抗体は、CD40を発現する正常なヒトB細胞および腫瘍性のヒトB細胞について実証されているように、ヒト細胞の表面に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し、有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒトCD40発現細胞におけるCD40抗原に結合される場合にアンタゴニスト活性を示す。これらの抗CD40抗体およびその抗原結合フラグメントは、本明細書中でアンタゴニスト抗CD40抗体として参照される。そのような抗体としては、以下に記載される完全なヒトモノクローナル抗体5.9およびヒトモノクローナル抗体CHIR−12.12、ならびにモノクローナル抗体5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12の結合特性を有するモノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。組換え的に産生され得るこれらのモノクローナル抗体は、以下で議論され、そして発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」である、2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日に出願され、それぞれ、米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件番号PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件番号PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710号(代理人事件番号PP20107.003(035784/277214))と割り当てられた同時係属中の仮特許出願で開示されており、その各々の内容はその全体が参考として本明細書中に援用される。
【0035】
モノクローナル抗体5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12の結合特性を有する抗体としては、CD40の結合と競合的に干渉し、そして/または5.9およびCHIR−12.12と同じエピトープに結合する抗体が挙げられる。当業者は、当該分野で公知の標準的な方法を用いて、抗体が5.9またはCHIR−12.12と競合的に干渉するかどうかを決定し得る。
【0036】
これらの抗体がヒト細胞(例えば、ヒトB細胞)の表面に提示されたCD40に結合する場合、その抗体は有意なアゴニスト活性を有さない;いくつかの実施形態において、ヒト細胞の表面に提示されるCD40に対するそれらの結合は、これらのヒト細胞の増殖および分化の阻害を生じる。従って、本発明の方法において使用するのに適切なアンタゴニスト抗CD40抗体は、細胞表面CD40抗原を発現する正常なヒト細胞および悪性のヒト細胞に対するアンタゴニスト活性を示し得るモノクローナル抗体を含む。
【0037】
(アンタゴニスト抗CD40抗体)
モノクローナル抗体5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12は、本発明の方法において使用するのに適切なアンタゴニスト抗CD40抗体を示す。5.9抗体お12.2抗体は、ハイブリドーマ細胞株131.2F8.5.9(本明細書中で細胞株5.9と称される)および153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書中で細胞株12.12と称される)から産生されるIgGアイソタイプの完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体である。これらの細胞株は、ヒトIgG重鎖遺伝子座およびヒトK鎖遺伝子座を含む免疫異種マウス(XenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California))由来の脾細胞を用いて作製された。その脾臓細胞は、マウス骨髄腫SP2/0細胞と融合された(Sierra BioSource)。得られたハイブリドーマは1回または数回サブクローニングされて、安定なモノクローナル細胞株5.9およびモノクローナル細胞株12.12が作製された。本発明の他の抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座についてトランスジェニックであるマウスを用いてか、または当該分野で公知および/もしくは本明細書中に記載される他の方法によって同様に調製され得る。
【0038】
CHIR−12.12抗体の可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、ならびに5.9抗体の可変領域のアミノ酸配列は、発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」である、2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日に出願され、それぞれ、米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件番号PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件番号PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710号(代理人事件番号PP20107.003(035784/277214))と割り当てられた同時係属中の仮特許出願に開示され、その各々の内容はその全体が参考として本明細書中に援用される。mAb CHIR−12.12の軽鎖ならびに重鎖についてのリーダー領域、可変領域および定常領域のアミノ酸配列は、それぞれ、図1Aおよび図1Bに示される。また、配列番号2(mAb CHIR−12.12の軽鎖についての完全配列)、配列番号4(mAb CHIR−12.12の重鎖についての完全配列)、および配列番号5(配列番号4に示されるmAb CHIR−12.12の重鎖の改変体についての完全配列、ここで、この改変体は配列番号4の位置153においてアラニン残基に対するセリン置換を含む)を参照のこと。mAb CHIR−12.12についての軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列は、それぞれ、図2Aおよび図2Bに示される。また、配列番号1(mAb CHIR−12.12の軽鎖についてのコード配列)、および配列番号3(mAb CHIR−12.12の重鎖についてのコード配列)を参照のこと。5.9 mAbの軽鎖ならびに重鎖についてのリーダー領域、可変領域および定常領域のアミノ酸配列は、それぞれ、図3Aおよび図3Bに示される。また、配列番号6(mAb 5.9の軽鎖についての完全配列)、配列番号7(mAb 5.9の重鎖についての完全配列)、および配列番号8(配列番号7に示されるmAb 5.9の重鎖の改変体についての完全配列、ここで、配列番号7の位置158においてアラニン残基に対するセリン置換を含む)を参照のこと。さらに、5.9抗体およびCHIR−12.12抗体を発現するハイブリドーマは、それぞれ、PTA−5542およびPTA−5543の特許寄託表示でATCCに寄託されている。
【0039】
アンタゴニスト活性に加えて、本発明の抗CD40抗体が腫瘍細胞に対する別の作用機構を有することが好ましい。例えば、天然の5.9抗体およびCHIR−12.12抗体はADCC活性を有する。あるいは、5.9抗体およびCHIR−12.12抗体の可変領域は、ADCC活性を有する別の抗体アイソタイプ上で発現され得る。5.9またはCHIR−12.12の、天然形態、組換え形態、または抗原結合フラグメントを細胞毒と結合体化することもまた可能である。
【0040】
5.9モノクローナル抗体およびCHIR−12.12モノクローナル抗体は、ELISA型アッセイにおいて可溶性CD40に結合し、フローサイトメトリーアッセイによって決定されるように細胞表面CD40に対するCD40リガンドの結合を妨げ、予め結合したCD40リガンドを置き換える。抗体5.9および抗体CHIR−12.12は、互いにCD40に対する結合について競合するが15B8とは競合せず、この15B8は、発明の名称「Human Anti−CD40 Antibodies」である、2000年10月2日に出願された米国仮特許出願番号第60/237,556号および発明の名称「Human Anti−CD40 Antibodies」である、2001年10月2日に出願されたPCT国際出願番号第PCT/US01/30857(代理人事件番号PP16092.003)に記載される抗CD40モノクローナル抗体であり、これらの両方が参考としてその全体が本明細書中で援用される。健常なヒト被験体由来のB細胞の増殖における効果についてインビトロで試験される場合、5.9およびCHIR−12.12は、アンタゴニスト抗CD40抗体として作用する。さらに、5.9およびCHIR−12.12は、健常な被験体由来のヒトリンパ球の強力な増殖を誘導しない。これらの抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)によって、CD40を発現する標的細胞を殺傷することが可能である。BiacoreTMアッセイによって決定されるように、ヒトCD40に対する5.9の結合親和性は1.2×10−8Mであり、そしてCHIR−12.12の結合親和性は5×10−10Mである。
【0041】
本発明の方法において使用するのに適切なアンタゴニスト抗CD40抗体は、CD40細胞表面抗原に対して強力な単一部位結合親和性を示す。本発明のモノクローナル抗体は、少なくとも10−5M、少なくとも3×10−5M、好ましくは少なくとも10−6M〜10−7M、より好ましくは少なくとも10−8M〜約10−12MのCD40に対する解離平衡定数(K)を示し、これはBiacoreTMのような標準的なアッセイを用いて測定される。Biacore分析は当該分野で公知であり、詳細は「BIAapplications handbook」に提供されている。WO 01/27160に記載される方法が結合親和性を調節するために使用され得る。
【0042】
「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40レセプター」または「CD40」によって、腫瘍壊死因子(TNF)レセプターファミリーに属する膜貫通糖タンパク質が意図される(例えば、米国特許第5,674,492号および同第4,708,871号;Stamenkovicら(1989)EMBO 8:1403;Clark(1990)Tissue Antigens 36:33;Barclayら(1997)The Leucocyte Antigen Facts Book(第2版;Academic Press,San Diego)を参照のこと)。ヒトCD40の2つのアイソフォーム(この遺伝子の代替スプライス転写産物改変体によってコードされる)が同定されている。第1のアイソフォーム(「長いアイソフォーム」または「アイソフォーム1」としてもまた公知である)は、277個のアミノ酸の前駆ポリペプチド(配列番号12(GenBankアクセッション番号CAA43045として最初に報告され、GenBankアクセッション番号NP_001241においてアイソフォーム1として同定された)、配列番号11(GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250を参照のこと)によってコードされる)として発現され、これは最初の19残基によって表されるシグナル配列を有する。第2のアイソフォーム(「短いアイソフォーム」または「アイソフォーム2」としてもまた公知である)は、203個のアミノ酸の前駆ポリペプチド(配列番号10(GenBankアクセッション番号NP_690593)、配列番号9(GenBankアクセッション番号NM_152854)によってコードされる)として発現され、これも最初の19残基によって表されるシグナル配列を有する。ヒトCD40のこれら2つのアイソフォームの前駆ポリペプチドは、共通してその最初の165残基(すなわち、配列番号10および配列番号12の残基1〜165)を共有する。短いアイソフォームの前駆ポリペプチド(配列番号10に示される)は、コードセグメントを欠失する転写産物改変体(配列番号9)(これは、翻訳のフレームシフトをもたらす)によってコードされ、得られるCD40アイソフォームは、CD40の長いアイソフォームに含まれるもの(配列番号12の残基166〜277に示されるC末端)とは異なる、より短いC末端(配列番号10の残基166〜203)を含む。本発明の目的のために、用語「CD40抗原」、「CD40細胞表面抗原」、「CD40レセプター」または「CD40」は、CD40の短いアイソフォームおよび長いアイソフォームの両方を包含する。本発明の抗CD40抗体は、本明細書中で以下に示されるようにヒトCD40のエピトープに結合し、このヒトCD40は、この細胞表面抗原の短いアイソフォームまたは長いアイソフォームのいずれかのうちの同じ位置に存在する。
【0043】
CD40抗原は、本明細書中で他の部分に記載されるように、種々の細胞型の表面に提示される。「表面に提示される」および「表面に発現される」により、CD40抗原のうちのすべてまたは一部が、細胞の外側に曝露されることが意図される。提示または発現されたCD40抗原は、完全にまたは部分的にグリコシル化され得る。
【0044】
「アゴニスト活性」により、その物質がアゴニストとして機能することが意図される。アゴニストは細胞上のレセプターと結合し、レセプターの天然のリガンドにより惹起されるものと類似または同じ反応もしくは活性を惹起する。例えば、CD40のアゴニストは、以下の応答のうちのいずれかまたはすべてを誘導するが、これらに限定されない:B細胞増殖および分化、抗体産生、細胞間接着、B細胞記憶生成、アイソフォーム転換、MHC クラスIIおよびCD80/86の細胞表面発現のアップレギュレーション、ならびに、IL−8、IL−12およびTNFのような炎症誘発性サイトカインの分泌。「アンタゴニスト活性」により、その物質がアンタゴニストとして機能することが意図される。例えば、CD40のアンタゴニストは、CD40レセプターのアゴニストリガンド(特に、CD40L)に対する結合により誘導される応答のうちのいずれかの誘導を妨げるかまたは減少させる。アンタゴニストは、アゴニスト結合に対する応答のうちのいずれか1つ以上の誘導を、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、好ましくは40%、45%、50%、55%、60%、より好ましくは70%、80%、85%、そして最も好ましくは90%、95%、99%、または100%減少させ得る。抗CD40抗体およびCD40リガンドの結合特異性およびアンタゴニスト活性を測定するための方法は、当業者に公知であり、標準的な競合結合アッセイ、B細胞による免疫グロブリン分泌をモニタリングするためのアッセイ、B細胞増殖アッセイ、Banchereau様B細胞増殖アッセイ、抗体産生についてのT細胞ヘルパーアッセイ、B細胞増殖の同時刺激アッセイ、およびB細胞活性化マーカーのアップレギュレーションについてのアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、WO 00/75348、米国特許第6,087,329号、ならびに発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」である、2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日に出願され、それぞれ、米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件番号PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件番号PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710号(代理人事件番号PP20107.003(035784/277214))と割り当てられた同時係属中の仮特許出願(これらの各々の内容はその全体が参考として本明細書中に援用される)に開示されるアッセイを参照のこと。
【0045】
「有意な」アゴニスト活性により、B細胞応答のアッセイで測定されるように、中性物質またはネガティブコントロールによって誘導されるアゴニスト活性を少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%上回るアゴニスト活性が意図される。好ましくは、「有意な」アゴニスト活性は、B細胞応答のアッセイで測定されるように、中性物質またはネガティブコントロールにより誘導されるアゴニスト活性より少なくとも2倍もしくは少なくとも3倍上回るアゴニスト活性である。従って、例えば、目的のB細胞応答がB細胞増殖である場合、「有意な」アゴニスト活性は中性物質またはネガティブコントロールにより誘導されるB細胞増殖レベルよりも少なくとも2倍上回るかまたは少なくとも3倍上回るB細胞増殖レベルの誘導である。1つの実施形態において、CD40に結合しない非特異的免疫グロブリン(例えば、IgG1)は、ネガティブコントロールとしての役割を果たす。「有意なアゴニスト活性を有さない」物質は、B細胞応答のアッセイで測定されるように、中性物質またはネガティブコントロールにより誘導されるアゴニスト活性よりも高くて約25%上回るアゴニスト活性、好ましくは、中性物質またはネガティブコントロールにより誘導されるアゴニスト活性よりも高くて約20%上回る、約15%上回る、約10%上回る、約5%上回る、約1%上回る、約0.5%上回る、または高くて約0.1%上回るアゴニスト活性を示す。本発明の方法において有用なアンタゴニスト抗CD40抗体は、ヒト細胞上のCD40抗原に結合される場合に、上記のように有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体は、1つのB細胞応答において有意なアゴニスト活性を有さない。本発明の別の実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体は、1つのB細胞応答(例えば、増殖および分化、または増殖、分化、ならびに抗体産生)のアッセイにおいて有意なアゴニスト活性を有さない。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「抗CD40抗体」は、CD40 B細胞表面抗原を特異的に認識する任意の抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、およびそれらのフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fおよび親の抗CD40抗体の抗原結合機能を保持する他のフラグメント)が挙げられる)を包含する。本発明においてとりわけ関心があるのは、上記のモノクローナル抗体CHIR−5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12の結合特性を共有する、本明細書中に開示されるアンタゴニスト抗CD40抗体である。このような抗体としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)131.2F8.5.9(本明細書中で細胞株5.9と称される)および153.8E2.D10.D6.12.12(本明細書中で細胞株12.12と称される)(それぞれ、特許受託番号PTA−5542および特許受託番号PTA−5543としてATCCに受託された)で表されるハイブリドーマ細胞株によって産生されるモノクローナル抗体;(2)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(3)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6と配列番号7とに示される両方の配列、および配列番号6と配列番号8とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;(4)配列番号1に示されるヌクレオチド配列、配列番号3に示されるヌクレオチド配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;(5)ハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;(6)配列番号10または配列番号12に示されるアミノ配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;(7)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−5.9またはモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;ならびに(8)CHIR−12.12モノクローナル抗体またはCHIR−5.9モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントまたは上述の項目(1)〜(7)のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、ここで、このフラグメントはヒトCD40抗原に対して特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体。当業者は、本明細書中に開示されるアンタゴニスト抗体およびこれらの抗体の抗原結合フラグメントは、当該分野で周知でありかつ本明細書中の以下に記載される方法を使用して組換え的に産生される抗体およびその抗原結合フラグメントを含むこと、および例えば、組換え的に産生されたモノクローナル抗体CHIR−5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12を含むことを認識する。
【0047】
(アンタゴニスト抗CD40抗体の作製)
本発明の方法において使用するためのアンタゴニスト抗CD40抗体は、当業者に公知の任意の抗体作製方法を使用して作製され得る。例えば、ポリクローナル血清は、従来の方法によって調製され得る。一般的に、CD40抗原を含む溶液が最初に使用されて、適切な動物(好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、またはヤギ)を免疫化する。入手可能な血清の量、および標識された抗ウサギ抗体および抗ヤギ抗体が利用できることに起因して、ウサギまたはヤギが、ポリクローナル血清の調製に好ましい。
【0048】
ポリクローナル血清は、トランスジェニック動物(好ましくは、ヒト免疫グロブリン座を有するマウス)において調製され得る。好ましい実施形態において、CD40を発現するSf9細胞が、免疫原として使用される。免疫化はまた、生理的食塩水(好ましくは、フロイント完全アジュバントのようなアジュバント)中の抗原を含む溶液を混合または乳化し、そしてその混合物またはエマルジョンを非経口的(一般的には、皮下または筋肉内)に注射することによって、実施され得る。1回の注射あたり50〜200μgの用量は、代表的に十分である。免疫化は、一般的に、生理的食塩水中のタンパク質の1回以上の注射によって、好ましくはフロイント不完全アジュバントを使用して、2〜6週間後にブーストされる。あるいは、本発明の目的がインビトロの免役化と等しいと考えられる場合、当該分野で公知の方法を使用したインビトロの免疫化によって、抗体が作製され得る。ポリクローナル抗血清は、免役化された動物の血液をガラスまたはプラスチックの容器に採取し、その血液を25℃で1時間インキュベートし、次いで4℃で2〜18時間インキュベートすることによって得られる。この血清は、遠心分離(例えば、1,000×gで10分間)によって回収される。1回の採血あたり約20〜50mlが、ウサギから得られ得る。
【0049】
Sf9(Spodoptera frugiperda)細胞の作製は、米国特許第6,004,552号において開示され、これは本明細書中に参考として援用される。手短に言えば、ヒトCD40をコードする配列は、輸送ベクターを使用してバキュロウイルスに組換えされる。上記プラスミドは、野生型バキュロウイルスDNAと共にSf9細胞に同時トランスフェクトされた。組換えバキュロウイルスに感染したSf9細胞が同定され、クローン的に精製された。
【0050】
好ましくは、上記抗体は、本質的にモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」によって、実質的に同質な抗体の集団から得られた抗体が意図される。すなわち、上記集団を構成する個々の抗体は、微量に存在し得る天然に生じ得る可能性のある変異体を除いて、同一である。この用語は、抗体の種または供給源に関して限定されない。この用語は、全ての免疫グロブリン、ならびにFab、F(ab’)2、Fvのようなフラグメント、および抗体の抗原結合機能を保持する他のものを包含する。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位(すなわち、本発明におけるCD40細胞表面抗原)に対して指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を代表的に包含する従来の(ポリクローナル)抗体の調製とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に同質である抗体の集団から得られる場合の抗体の性質を示し、いずれかの特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製されても、または組換えDNA方法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624−628;Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;および米国特許第5,514,548号において記載される技術を使用したファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0051】
「エピトープ」によって、抗体が作製され、そしてその抗体が結合する抗原分子の部分が意図される。エピトープは、直鎖状のアミノ酸残基(すなわち、エピトープ内の残基が、直鎖状様式で連続して順々に配置される)、非直鎖状のアミノ酸残基(本明細書において「非直鎖状エピトープ」といわれ;これらのエピトープは、連続的には配置されない)、または直鎖状アミノ酸残基と非直鎖状アミノ酸残基との両方を含み得る。
【0052】
モノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495−496の方法、またはその改変を使用して調製され得る。代表的には、マウスが、抗原を含む溶液を使用して免疫化される。免疫化は、生理的食塩水(好ましくは、フロイント完全アジュバントのようなアジュバント)中の抗原を含む溶液を混合または乳化し、そしてその混合物またはエマルジョンを非経口的に注射することによって実施され得る。当該分野で公知の任意の免疫化方法が、本発明のモノクローナル抗体を得るために使用され得る。動物を免疫化した後、脾臓(そして必要に応じて、1または数個の大きなリンパ節)が取り出され、そして単一の細胞に分離される。上記脾臓細胞は、目的の抗原でコーティングされたプレートまたはウェルに細胞懸濁液を適用することによって、スクリーニングされ得る。上記抗原に特異的な膜結合型免疫グロブリンを発現するB細胞は、プレートに結合し、リンスで除かれない。得られたB細胞、または全ての解離された脾臓細胞は、次いでミエローマ細胞との融合が誘導されてハイブリドーマを形成し、そして選択培地中で培養される。得られた細胞は、連続希釈によってプレートされ、そして目的の抗原に特異的に結合する(かつ、無関係の抗原に結合しない)抗体の産生についてアッセイされる。選択されたモノクローナル抗体(mAb)を分泌(secret)するハイブリドーマは、次いでインビトロ(例えば、組織培養ボトルまたは中空繊維反応器において)、またはインビボ(例えば、マウスの腹水)のいずれかで培養される。
【0053】
本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体が、組換えDNA方法を使用して調製される場合、モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を使用して容易に単離され、かつ配列決定される。本明細書におい記載されるハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源として機能する。一旦単離されると、上記DNAは、発現ベクター中に配置され得、次いでこの発現ベクターは、それ以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞)中にトランスフェクトされ、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体をコードするDNAの、細菌における組換え発現に関する概説の論文としては、Skerraら(1993)Curr.Opinion in Immunol.5:256およびPhickthun(1992)Immunol.Revs.130:151が挙げられる。ハイブリドーマの使用に代わるものとして、抗体は、米国特許第5,545,403号;同第5,545,405号;および同第5,998,144号(これらは、本明細書において参考として援用される)に開示されるように、CHO細胞株のような細胞株において産生され得る。手短に言えば、上記細胞株は、それぞれ軽鎖および重鎖を発現し得るベクターを用いてトランスフェクトされる。別個のベクター上の2つのタンパク質をトランスフェクトすることによって、キメラ抗体が産生され得る。別の利点は、上記抗体の正しいグリコシル化である。
【0054】
いくつかの実施形態において、上記アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12抗体またはCHIR−5.9抗体)またはその抗原結合フラグメントは、グルタミン合成をマーカーとして使用するGS遺伝子発現系(Lonza Biologics,Portsmouth,New Hampshire)を使用してCHO細胞中で産生され得る。米国特許第5,122,464号;同第5,591,639号;同第5,658,759号;同第5,770,359号;同第5,827,739号;同第5,879,936号;同第5,891,693号;および同第5,981,216号もまた参照のこと;これらの内容は、その全体が参考として援用される。
【0055】
CD40に対するモノクローナル抗体は、当該分野で公知である。例えば、以下におけるB細胞抗原のための節を参照のこと:McMichael(編)(1987;1989)Leukocyte Typing III and IV(Oxford University Press,New York);米国特許第5,674,492号;同第5,874,082号;同第5,677,165号;同第6,056,959号;WO 00/63395;国際公開第02/28905号および国際公開第02/28904号;Gordonら(1988)J.Immunol.140:1425;Valleら(1989)Eur.J.Immunol.19:1463;Clarkら(1986)PNAS 83:4494;Paulieら(1989)J.Immunol.142:590;Gordonら(1987)Eur.J.Immunol 17:1535;Jabaraら(1990)J.Exp.Med.172:1861;Zhangら(1991)J.Immunol.146:1836;Gascanら(1991)J.Immunol.147:8;Banchereauら(1991)Clin.Immunol.Spectrum 3:8;およびBanchereauら(1991)Science 251:70;これらの全ては、本明細書において参考として援用される。本発明に対する特有の目的は、上記に記載のモノクローナル抗体5.9およびモノクローナル抗体CHIR−12.12の結合特性を共有する、本明細書において開示されるアンタゴニスト抗CD40抗体である。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「CD40抗原エピトープ」は、本発明の抗CD40モノクローナル抗体と免役反応をし得る分子をいい、CD40抗原それ自身は除く。CD40抗原エピトープは、タンパク質、タンパク質フラグメント、ペプチド、炭水化物、脂質、および他の分子を含み得るが、本発明に関しては、最も一般的なタンパク質、短いオリゴペプチド、オリゴペプチドの模倣体(mimic)(すなわち、CD40抗原の抗体結合特性を模倣する有機化合物)、またはそれらの組み合わせである。適切なオリゴペプチド模倣体は、特に、PCT出願US91/04282に記載される。
【0057】
さらに、用語「抗CD40抗体」は、本明細書において使用される場合、キメラ抗CD40抗体を包含する;本発明の方法で使用するためのこのようなキメラ抗CD40抗体は、本明細書において記載される5.9モノクローナル抗体およびCHIR−12.12モノクローナル抗体の結合特性を有する。「キメラ」抗体によって、最も好ましくは組換えデオキシリボ核酸技術を使用して誘導され、そしてヒト(免疫学的に「関連した」種(例えば、チンパンジー)を含む)と非ヒトの両方の構成要素を含む抗体が意図される。したがって、上記キメラ抗体の定常領域は、最も好ましくは、天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;上記キメラ抗体の可変領域は、最も好ましくは非ヒト供給源に由来し、そしてCD40細胞表面抗原に対して所望の抗原特異性を有する。上記非ヒト供給源は、ヒトCD40細胞表面抗原またはヒトCD40細胞表面抗原を含む物質に対する抗体を作製するために使用され得る任意の脊椎動物供給源であり得る。このような非ヒト供給源としては、げっ歯類(例えば、ウサギ、ラット、マウスなど;例えば、米国特許第4,816,567号(本明細書において、参考として援用される)を参照のこと)および非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル、サルなど;例えば、米国特許第5,750,105号および同第5,756,096号(本明細書において、参考として援用される)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において使用される場合、語句「免疫学的に活性」とは、キメラ抗CD40抗体をいう際に使用される場合、ヒトCD40に結合するキメラ抗体を意味する。
【0058】
キメラ抗CD40抗体およびヒト化抗CD40抗体もまた、本明細書で使用される用語抗CD40抗体によって包含される。キメラ抗体は、異なる種に由来する抗体のセグメントを含む。Rituxan(登録商標)は、マウス可変領域およびヒト定常領域を有するキメラ抗体の例である。
【0059】
「ヒト化」によって、非ヒト免疫グロブリン配列に由来する最小の配列を含む抗CD40抗体の形態が意図される。大部分については、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリンであり(レシピエント抗体)、このヒト化抗体において、レシピエントの超可変領域(相補性決定領域またはCDRとしても公知)からの残基は、非ヒト種(例えば、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類)の超可変領域に由来する残基によって置換される(ドナー抗体)。語句「相補性決定領域」とは、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および結合特異性を一緒に規定するアミノ酸配列をいう。例えば、Chothiaら(1987)J.Mol.Biol.196:901−917;Kabatら(1991)米国保健省(U.S.Dept.of Health and Human Services)、NIH公開番号91−3242を参照のこと。語句「定常領域」とは、エフェクター機能を与える抗体分子の部分をいう。ヒト疾患の治療において使用するための非免疫原性抗体の作製に関する先行する研究において、マウスの定常領域は、ヒト定常領域によって置換された。この対象のヒト化抗体の定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来した。しかしながら、これらのヒト化抗体は、ヒトにおいて好ましくなく、かつ危険な可能性のある免疫応答を依然として誘発し、そして親和性が喪失した。本発明の方法において使用するためのヒト化抗CD40抗体は、本明細書中に記載された5.9モノクローナル抗体およびCHIR−12.12モノクローナル抗体によって示される結合特性と類似した結合特性を有する。
【0060】
ヒト化は、本質的に、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536)に従って、げっ歯類もしくは変異体げっ歯類のCDRまたはげっ歯類もしくは変異体げっ歯類のCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列と置換することによって実施され得る。米国特許第5,225,539号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第5,859,205号もまた参照のこと;これらは、本明細書において参考として援用される。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンの1以上の可変領域のフレームワーク領域内の残基は、対応する非ヒト残基によって置換される(例えば、米国特許第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;および同第6,180,370号を参照のこと)。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体においては見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに洗練させるため(例えば、所望の親和性を得るため)になされる。一般的に、上記ヒト化抗体は、少なくとも1つの、そして代表的には2つの可変領域の全てを実質的に含み、この抗体において、非ヒト免疫グロブリンに対応する超可変領域の全てまたは実質的に全て、ならびに上記フレームワーク領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)(代表的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域)の少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、Jonesら(1986)Nature 331:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596を参照のこと;これらは、本明細書において参考として援用される。従って、このような「ヒト化」抗体は、実質的に決してインタクトでないヒト可変領域が、非ヒト種からの対応する配列によって置換されている抗体を包含し得る。実際には、ヒト化抗体は、代表的に、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのフレームワーク残基が、げっ歯類抗体におけるアナログ部位からの残基によって置換されるヒト抗体である。例えば、米国特許第5,225,539号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;同第5,859,205号を参照のこと。米国特許第6,180,370号および国際公開第01/27160号もまた参照のこと。ここで、ヒト化抗体および所定の抗原に対して改善された親和性を有するヒト化抗体を作製するための技術が、開示される。
【0061】
用語抗CD40抗体によって、不活化された内因性免疫グロブリン(Ig)座によって特徴付けられる非ヒト哺乳動物宿主(より具体的には、トランスジェニックマウス)において産生される異種抗CD40抗体または改変抗CD40抗体もまた包含される。このようなトランスジェニック動物において、宿主免疫グロブリンの軽鎖サブユニットおよび重鎖サブユニットの発現に対して競合する内因性遺伝子は、非機能的になり、アナログのヒト免疫グロブリン座で置換される。これらのトランスジェニック動物は、軽鎖または重鎖の宿主の免疫グロブリンサブユニットが実質的にない場合に、ヒト抗体を産生する。例えば、米国特許第5,877,397号および同第5,939,598号(本明細書において参考として援用される)を参照のこと。
【0062】
好ましくは、トランスジェニックマウスを免疫化することによって、CD40に対する完全ヒト抗体が得られる。このようなマウスの1つは、XenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California)を使用して得られ、米国特許第6,075,181号、同第6,091,001号および同第6,114,598号(これらの全ては、本明細書において参考として援用される)に開示される。本明細書において開示される抗体を作製するために、ヒトIg G重鎖遺伝子座およびヒトκ軽鎖遺伝子座についてのトランスジェニックマウスを、ヒトCD40を発現するSf9細胞で免疫化した。マウスはまた、他のアイソタイプについてのトランスジェニックであってもよい。本発明の方法において有用な完全ヒト抗体は、本明細書において開示される5.9モノクローナル抗体およびCHIR−12.12モノクローナル抗体によって示される結合特性と類似の結合特性によって特徴付けられる。
【0063】
上記抗CD40抗体のフラグメントは、それらが全長抗体の所望される親和性を保持する限り、本発明の方法においての使用に適切である。従って、抗CD40抗体のフラグメントは、CD40 B細胞表面抗原に結合する能力を保持する。このようなフラグメントは、対応する全長のアンタゴニスト抗CD40抗体に類似の特性によって特徴付けられる。すなわち、このフラグメントは、ヒト細胞の表面上に発現されたヒトCD40抗原に特異的に結合し、そして有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原に結合された場合、アンタゴニスト活性を示す。このようなフラグメントは、本明細書において「抗原結合」フラグメントといわれる。
【0064】
抗体の適切な抗原結合フラグメントは、全長抗体の一部分(一般的には、抗原結合領域またはその可変領域)を含む。抗体フラグメントの例としては、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、およびFvフラグメント、ならびに単鎖抗体分子が挙げられるが、これらに限定されない。「Fab」によって、軽鎖と重鎖の一部とからなる免疫グロブリンの一価の抗原結合フラグメントが意図される。F(ab’)によって、両方の軽鎖と両方の重鎖の一部を含む免疫グロブリンの二価の抗原結合フラグメントが意図される。「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントによって、抗体のVドメインおよびVドメインを含み、これらのドメインが一本のポリペプチド鎖中に提示されるフラグメントが意図される。例えば、米国特許第4,946,778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号および同第5,856,456号(これらは、本明細書において参考として援用される)を参照のこと。一般的に、上記Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間に、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするためのポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの概要については、Pluckthun(1994)、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore(編)(Springer−Verlag,New York)、pp.269−315を参照のこと。本明細書において開示されるアンタゴニスト抗CD40抗体の抗原結合フラグメントはまた、本明細書の以下に記載されるように、細胞毒と結合体化されて標的癌細胞の殺傷を達成し得る。
【0065】
抗体または抗体フラグメントは、例えば、McCaffertyら(1990)Nature 348:552−554(1990)および米国特許第5,514,548号において記載される技術を使用して作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clacksonら(1991)Nature 352:624−628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597は、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウス抗体およびヒト抗体の単離を記載する。以下の刊行物は、鎖の混合(shuffling)による高親和性(nM範囲)のヒト抗体の作製(Marksら(1992)Bio/Technology 10:779−783)、および非常に広範なファージライブラリーを構築するためのストラテジーとしての、組み合わせ感染およびインビボの再組換え(Waterhouseら(1993)Nucleic.Acids Res.21:2265−2266)を記載する。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体のハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替物である。
【0066】
種々の技術が、抗体フラグメントの作製のために開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質分解性消化を介して得られた(例えば、Morimotoら(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)およびBrennanら(1985)Science 229:81を参照のこと)。しかし、これらのフラグメントは、現在は、組換え宿主細胞によって直接的に産生され得る。例えば、この抗体フラグメントは、上記の抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’−SHフラグメントは、E.coliから直接回収され得、化学的に結合されてF(ab’)フラグメントを形成する(Carterら(1992)Bio/Technology 10:163−167)。別のアプローチに従って、F(ab’)フラグメントは、組換え宿主細胞の培養物から直接単離され得る。抗体フラグメントを作製するための他の技術は、当業者には明らかである。
【0067】
本発明の方法において有用なアンタゴニスト抗CD40抗体としては、本明細書において開示された5.9モノクローナル抗体およびCHIR−12.12モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体とは異なるが、そのCDRを保持している抗体;および1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を有する抗体が挙げられる。ここで、上記アンタゴニスト活性は、B細胞の増殖および/または分化の阻害によって測定される。本発明はまた、脱免疫化された(de−immunized)アンタゴニスト抗CD40抗体を包含する。この抗体は、例えば、国際公開第98/52976号および同第0034317号(本明細書において参考として援用される)に記載されたとおりに作製され得る。この様式において、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体内の残基が改変されて、ヒトCD40発現細胞に対するアンタゴニスト活性を保持しながら、抗体を、ヒトに対して免疫原性がないか、または免疫原性を低くするようにする。ここで、このような活性は、本明細書の他で記述されるアッセイによって測定される。特許請求の範囲の範囲内には、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質もまた包含され、この融合タンパク質は、当該分野で公知のように、合成されても、対応するポリヌクレオチドベクターから発現されてもよい。このような融合タンパク質は、以下に記述される抗体の結合体化への参照とともに記載される。
【0068】
本発明の抗体は、例えば欧州特許出願公開第0 983 303 A1号、国際公開第00/34317号および同第98/52976号(本明細書において参考として援用される)において記載される方法を使用して作製される配列のバリエーションを有し得る。例えば、CDR内の配列は、抗体をMHCクラスIIに結合させ、好ましくないヘルパーT細胞応答を誘発し得ることが示されている。保存的置換は、上記抗体の結合活性は保持させるが、好ましくないT細胞応答を誘発するその能力を失わせ得る。任意のこのような保存的置換または非保存的置換は、当該分野で認められた方法(例えば、本明細書中で他の部分に記載される方法)を使用して作製され得、そして生じた抗体は、本発明の範囲内である。この改変抗体は、本明細書において記載された方法を使用して、通常、アンタゴニスト活性、親和性、および特異性について試験され得る。
【0069】
上記に記載された任意の方法、または本明細書において開示されていない任意の他の方法によって作製された抗体は、以下の生物学的活性のうちの少なくとも1つを有する場合、本発明の範囲内である:T細胞によって刺激された正常ヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;ジャーカットT細胞によって刺激された正常ヒト末梢B細胞の増殖の阻害;CD40L発現細胞または可溶性CD40リガンド(sCD40L)によって刺激された正常ヒト末梢B細胞の増殖の阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lによって刺激された任意の細胞における「生き残った」の抗アポトーシス性細胞内シグナルの阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lとの連結の際の任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害;ならびに以下に示されるようなヒト悪性B細胞の増殖の阻害。これらのアッセイは、同時継続中の仮出願(発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」であり、それぞれ、2003年11月4日、2003年11月26日、および2004年4月27日出願、割り当てられた米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件整理番号:PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件整理番号:PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710号(代理人事件整理番号:PP20107.003(035784/277214))において記載されるように実施され得る。これらの特許文献の各々の内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol.164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin.Hematol.3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;ならびに米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号(本明細書において参考として援用される)において記載されるアッセイもまた参照のこと。
【0070】
本明細書において同定されるCD40抗原エピトープに特異的なアンタゴニスト抗CD40抗体を検出するための代表的なアッセイは、「競合的結合アッセイ」である。競合的結合アッセイは、そのアッセイにおいて、未知のものが、特異的な抗体に対する標識された既知のリガンドの結合を阻害するその能力によって検出されて定量される血清学的アッセイである。これはまた、競合的阻害アッセイともいわれる。代表的な競合的結合アッセイにおいて、標識されたCD40ポリペプチドは、例えば、本発明のモノクローナル抗体の1つ以上のエピトープに対して惹起されたモノクローナル抗体と組み合わせて、サンプル中の候補抗体によって沈殿される。目的のエピトープと特異的に反応する抗CD40抗体は、CD40タンパク質または目的のCD40タンパク質の特定のエピトープを含むタンパク質のフラグメントに対して調製された一連の抗体をスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、ヒトCD40について、目的のエピトープとしては、図4B(配列番号10)に記載されたヒトCD40の短いアイソフォーム(GenBankアクセッション番号NP_690593を参照のこと)(図4Aに記載される配列(配列番号9;GenBankアクセッション番号NM_152854もまた参照のこと)によってコードされる)、もしくは図4D(配列番号12)に記載されたヒトCD40の長いアイソフォーム(GenBankアクセッション番号CAA43045およびNP_001241を参照のこと)(図4Cに記載される配列(配列番号11;GenBankアクセッション番号X60592およびNM_001250もまた参照のこと)によってコードされる)の直鎖状アミノ酸残基および/または非直鎖状アミノ酸残基を含むエピトープが挙げられる。あるいは、以前に同定された適切なアンタゴニスト抗CD40抗体を用いた競合的結合アッセイは、以前に同定された抗体に匹敵するモノクローナル抗体を選択するために使用される。
【0071】
このような免疫アッセイで使用される抗体は、標識されていても標識されていなくてもよい。標識されていない抗体は、凝集反応において使用され得;標識された抗体は、多種多様の標識を使用して、多種多様のアッセイにおいて使用され得る。抗CD40抗体と目的のエピトープとの間の抗体−抗原複合体の形成の検出は、上記抗体に検出可能な物質を結合させることによって容易にされ得る。適切な検出手段としては、放射性核種、酵素、補酵素、蛍光剤、化学ルミネセンス、色素体、酵素基質または補因子、酵素インヒビター、補欠分子族複合体、フリーラジカル、粒子、色素など標識の使用が挙げられる。適切な酵素の例としては、ホースラディシュ(西洋ワサビ)ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられる;ルミネセンス物質の例は、ルミノールである;生物ルミネセンス物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる;そして適切な放射活性物質の例としては、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。このような標識された試薬は、種々の周知のアッセイ(例えば、放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISA)、蛍光免疫アッセイなど)において使用され得る。例えば、米国特許第3,766,162号;同第3,791,932号;同第3,817,837号;および同第4,233,402号を参照のこと。
【0072】
以前に記載されたアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗体フラグメントのいずれも、本発明の方法において使用する前に結合体化され得る。結合体化抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。従って、上記抗CD40抗体は、間接的標識または間接的標識アプローチを使用して標識され得る。「間接的標識」または「間接的標識アプローチ」によって、キレート剤が抗体に共有結合され、そして少なくとも1種の放射性核種が、キレート剤に挿入されることが意図される。例えば、SrivagtavaおよびMease(1991)Nucl.Med.Bio.18:589−603(本明細書において参考として援用される)において記載されるキレート剤および放射性核種を参照のこと。適切な標識としては、発蛍光団、発色団、放射活性原子(特に、32Pおよび125I)、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的には、その活性によって検出される。例えば、ホースラディシュペルオキシダーゼは、通常、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を青色色素に変換する能力によって検出され、分光光度計で定量化可能である。「特異的結合パートナー」とは、例えば、抗原およびその特異的なモノクローナル抗体の場合のように、高い特異性でリガンド分子に結合し得るタンパク質をいう。他の特異的な結合パートナーとしては、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとタンパク質A、および当該分野で公知の多くのレセプター−リガンド対が挙げられる。同じ標識は1または数種の異なる様式において機能し得るので、上記の説明は、種々の標識を別個のクラスに分類することを意味しないことが理解されるべきである。例えば、125Iは、放射活性標識としてか、または高電子密度試薬として機能し得る。HRPは、酵素としてか、またはmAbに対する抗原として機能し得る。さらに、所望の効果のために種々の標識を組み合わせることもできる。例えば、mAbおよびアビジンもまた、本発明の実施において標識を必要とする:従って、ビオチンでmAbを標識し、125Iで標識したアビジンまたはHPRで標識した抗ビオチンmAbを用いて、その存在を検出し得る。他の交換および可能性は、当業者には容易に明らかであり、本発明の範囲内の等価物として考えられる。
【0073】
あるいは、上記抗CD40抗体は、「直接的標識」または「直接的標識アプローチ」を使用して標識され得、ここで放射性核種は、抗体に直接共有結合される(代表的には、アミノ酸残基を介して)。好ましい放射性核種は、SrivagtavaおよびMease(1991)(前出)において提供される。上記間接的標識アプローチが、特に好ましい。例えば、国際公開第00/52031号および同第00/52473号(ここでリンカーは、放射活性標識を抗体に結合するために使用される);および米国特許第6,015,542号に記載された抗CD40抗体の標識形態もまた参照のこと(これらは本明細書において参考として援用される)。
【0074】
さらに、抗体(またはそのフラグメント)は、細胞毒のような治療部分、治療剤、または放射活性金属イオンもしくは放射性同位元素に結合体化され得る。細胞毒または細胞傷害剤は、細胞に対して有害である任意の薬剤を含む。例としては、以下が挙げられる:タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトザントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびプロマイシン、ならびにこれらのアナログまたはホモログ。治療剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン(fluorouracil decarbazine))、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびcis−ジクロロアミン白金(dichlorodiamine platinum)(It)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(ホルミルダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(ホルミルアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアントラマイシン(anthramycin)(AMC))、ならびに抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)。放射性同位元素としては、I−131、I−123、I−125、Y−90、Re−188、Re−186、At−211、Cu−67、Bi−212、Bi−213、Pd−109、Tc−99、In−111などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の結合体は、所定の生物学的応答を改変するために使用され得;上記薬物部分は、典型的な化学的治療剤に限定されるとは解釈されない。例えば、上記薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質であってもポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質としては、例えば、以下が挙げられる:毒素(アブリン、リシンA、pseudomonas体外毒素、またはジフテリア毒素);タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンβ、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノゲン賦活剤);または、生物学的反応修飾物質(例えば、リンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)、または他の成長因子)。
【0075】
抗体に対するこのような治療部分を結合体化するための技術は、周知である。例えば、Arnonら(1985)、「Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drug in Cancer Therapy」Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Reisfeldら(編)(Alan R.Liss,Inc.),pp.243−256;Hellstromら(編)(1987)「Antibodies for Drug Delivery」,Controlled Drug Delivery,Robinsonら(編)(第2版;Marcel Dekker,Inc.),pp.623−653;Thorpe(1985)「Antibody Carriers of Cytotoxic Agents in Cancer Therapy:A Review」,Monoclonal Antibodies’84:Biological and Clinical Applications,Pincheraら(編)pp.475−506(Editrice Kurtis,Milano,Italy,1985);「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,Baldwinら(編)(Academic Press,New York,1985),pp.303−316;およびThorpeら(1982)Immunol.Rev.62:119−158を参照のこと。
【0076】
あるいは、抗体は、第2の抗体に結合体化されて、米国特許第4,676,980号に記載されるような抗体ヘテロ結合体(heteroconjugate)を形成し得る。さらに、リンカーが、上記標識と本発明の抗体との間に使用され得る(例えば、米国特許第4,831,175号を参照のこと)。抗体またはその抗原結合フラグメントは、当該分野で公知の放射活性ヨウ素、インジウム、イットリウム、または他の放射活性粒子を用いて直接的に標識され得る(米国特許第5,595,721号)。処置は、同時または引き続いて投与される結合体化抗体および非結合体化抗体を用いた、処置の組み合わせからなり得る(WO 00/52031およびWO 00/52473)。
【0077】
(アンタゴニスト抗CD40抗体の改変体)
上記アンタゴニスト抗CD40抗体の生物学的に活性な適切な改変体が、本発明の方法において使用され得る。このような改変体は、親のアンタゴニスト抗CD40抗体の所望の結合特性を保持する。抗体改変体を作製するための方法は、当該分野で一般的に利用可能である。
【0078】
例えば、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、本明細書において記載される5.9モノクローナル抗体またはCHIR−12.12モノクローナル抗体)のアミノ酸配列の改変体は、目的の抗体をコードするクローン化されたDNA配列中の変異によって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更についての方法は、当該分野で周知である。例えば、以下を参照のこと:WalkerおよびGaastra(編)(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkelら(1987)Methods Enzymol.154:367−382;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor,New York);米国特許第4,873,192号;およびこれらにおいて引用される参考文献(これらは、本明細書において参考として援用される)。目的のポリペプチドの生物学的活性に影響しない適切なアミノ酸置換基に関してのガイダンスは、Dayhoffら(1978)、Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(本明細書において参考として援用される)のモデルにおいて見出され得る。1つのアミノ酸を類似の特性を有する別のアミノ酸で交換するような、保存的置換が好まれ得る。保存的置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
目的のアンタゴニスト抗CD40抗体ポリペプチドの改変体の構築において、改変は、改変体が所望の活性(すなわち、類似の結合親和性)を保有し続け、そしてヒト細胞の表面上に発現されたヒトCD40抗原に特異的に結合することができ、そして有意なアゴニスト活性を有さないが、ヒトCD40発現細胞上のCD40抗原に結合された場合に、アンタゴニスト活性を示すようになされる。明らかに、上記改変ポリペプチドをコードするDNA中に作製された任意の変異は、リーディングフレームの外の配列に位置してはならず、そして好ましくは、2次mRNA構造を生じ得る相補的領域を作製しない。欧州特許出願公開第75,444号を参照のこと。
【0080】
さらに、アンタゴニスト抗CD40抗体の定常領域が変異されて、多くの方法でエフェクター機能を変更し得る。例えば、米国特許第6,737,056B1号および米国特許出願公開第2004/0132101A1号を参照のこと。これらは、Fcレセプターへの抗体結合を最適化するFc変異体を開示する。
【0081】
好ましくは、参照アンタゴニスト抗CD40抗体の改変体は、参照アンタゴニスト抗CD40抗体分子(例えば、本明細書において記載される5.9モノクローナル抗体またはCHIR−12.12モノクローナル抗体)についてのアミノ酸配列に対してか、あるいは参照抗体分子のより短い部分に対して、少なくとも70%もしくは75%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%もしくは85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%または95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。より好ましくは、上記分子は、少なくとも96%、97%、98%または99%の配列同一性を共有する。本発明の目的のために、アフィンギャップサーチを使用したSmith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズム(12のギャップオープンペナルティおよび2のギャップ伸長ペナルティ、62のBLOSUMマトリックスを使用)を使用して、配列同一性%が決定される。このSmith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズムは、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489において教示される。改変体は、例えば、わずか1〜15アミノ酸残基、わずか1〜10アミノ酸残基(例えば、6〜10)、わずか5、わずか4、3、2、またはさらに1アミノ酸残基だけ上記参照アンタゴニスト抗CD40抗体と異なり得る。
【0082】
2つのアミノ酸配列の最適アラインメントに関して、上記改変アミノ酸配列の隣接するセグメントは、上記参照アミノ酸配列について、アミノ酸残基の付加またはアミノ酸残基の欠失を有し得る。上記参照アミノ酸配列を比較するために使用される隣接するセグメントは、少なくとも20個の連続するアミノ酸残基を含み、そして30個、40個、50個またはそれ以上のアミノ酸残基であり得る。保存的な残基置換またはギャップに関連する配列同一性に対する補正が、なされ得る(Smith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズムを参照のこと)。
【0083】
特に、悪性B細胞上のCD40抗原に結合された場合、CD40を特異的に結合し、かつアンタゴニスト活性を保持し得るポリペプチドの正確な化学的構造は、多くの因子に依存する。イオン化可能なアミノ基およびカルボニル基が分子中に存在する場合、特定のポリペプチドは、酸性塩もしくは塩基性塩として、または中性形態で得られ得る。適切な環境状態に配置された場合に、その生物学的活性を保持するこのような調製物の全ては、本明細書において使用されるアンタゴニスト抗CD40抗体の定義の中に含まれる。さらに、上記ポリペプチドの一次アミノ酸配列は、糖部分を使用した誘導体化(グリコシル化)または他の補助的な分子(例えば、脂質、リン酸、アセチル基など)によって増加され得る。上記ポリペプチドの一次アミノ酸配列は、糖類との結合体化によってもまた増加され得る。このような増加の特定の局面は、産生する宿主の翻訳後の処理システムを通じて達成され;他のこのような改変も、インビトロで導入され得る。とにかく、このような改変は、上記抗CD40抗体のアンタゴニスト特性が破壊されない限り、本明細書において使用される抗CD40抗体の定義の中に含まれる。このような改変体は、種々のアッセイにおいて、上記ポリペプチドの活性を増強させるか、または弱めるかのいずれかによって、その活性に量的または質的に影響し得ることが予想される。さらに、上記鎖中の個々のアミノ酸残基は、酸化、還元、または他の誘導体化によって改変され得、そして上記ポリペプチドは、活性を保持するフラグメントを得るために切断され得る。アンタゴニスト活性を破壊しないこのような変更は、本明細書において使用される目的の抗CD40抗体の定義から上記ポリペプチド配列を除かない。
【0084】
当該分野は、ポリペプチド改変体の調製および使用に関する実質的なガイダンスを提供する。抗CD40抗体改変体の調製において、当業者は、天然のタンパク質ヌクレオチドまたはアミノ酸配列に対するどの修飾が、本発明の方法において使用される薬学的組成物の治療的に活性な成分として使用するために適切である改変体を生じるかを容易に決定し得る。
【0085】
(本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体を使用する治療の方法)
本発明の方法は、多発性骨髄腫を有する被験体(すなわち、患者)を処置するためのアンタゴニスト抗CD40抗体の使用に関し、この使用において、この癌の細胞は、CD40抗原を発現する。「CD40発現多発性骨髄腫細胞」によって、上記CD40抗原を発現する多発性骨髄腫細胞が意図される。多発性骨髄腫の成功する処置は、診断の際に上記癌がどのくらい進行しているかと、上記被験体が、抗CD40抗体投与と組み合わせて他の治療方法を受けてきたか否か、またはそのような方法を受けるか否かとに依存する。
【0086】
多くの診断基準が、多発性骨髄腫の病期を分類するために使用され得る。本発明の方法は、3つの病期を含むDurie−Salmon分類システムに従って分類された多発性骨髄腫を処置するために利用され得る。この分類システムに従って、I期の多発性骨髄腫を有する被験体は、低い「M成分(M component)」を有し、貧血または高カルシウム血症の徴候はなく、X線によって示される骨病変はないか、または1個の病変のみを有する。「M成分」によって、1つの免疫グロブリン型の過剰な存在が意図される。多発性骨髄腫が進行するにつれて、被験体は、IgA抗体またはIgG抗体の高いM成分を発現し、低いレベルの他の免疫グロブリンを発現する。II期は、I期よりもより進行しているが、まだIII期の特徴は欠いている中間状態を表す。この第3の病期は、1つ以上の以下のものが検出される場合に到達される:高カルシウム血症、貧血、多発性の骨病変、または高いM成分。
【0087】
上記Durie−Salmon分類システムは、クレアチニンレベルの測定と組み合わされて、上記疾患の状態のより正確な特徴付けを提供し得る。多発性骨髄腫被験体におけるクレアチニンレベルは、「A」または「B」として分類され、「B」の結果は、「A」よりもより予後が不良であることを示す。「B」は、高いクレアチニンレベルおよび腎臓機能が不全であることを示す。この様式において、多発性骨髄腫の「IA期」の症例は、低いクレアチニンレベルと組み合わされて貧血も高カルシウム血症も他の症状も示さない。診断を評価するためのさらなる手段として、これら前述の診断基準は、多発性骨髄腫細胞によって産生されるβ−2−ミクログロブリンの血中レベルのモニタリングと組み合わせて利用され得る。上記タンパク質の高いレベルは、癌細胞が多くの数で存在してることを示す。
【0088】
本発明の方法は、任意の前述の診断基準に従って分類された多発性骨髄腫の処置に適用可能である。これらの診断基準が、上記疾患の進行性の段階を特徴付けるために利用され得るのとちょうど同じように、これらの同じ診断基準(すなわち、貧血、高カルシウム血症、クレアチニンレベル、およびβ−2−ミクログロブリンレベル、骨病変の数、およびM成分)は、処置効果を評価するためにモニタリングされ得る。
【0089】
「処置」は、本明細書において、アンタゴニスト抗CD40抗体もしくはその抗原結合フラグメントの被験体への適用または投与、あるいはアンタゴニスト抗CD40抗体もしくはそのフラグメントの被験体から単離された組織または細胞株への適用または投与として定義され、ここで上記被験体は、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫に関連する症状、または多発性骨髄腫の発症に対する素因を有し、その目的は、上記多発性骨髄症、多発性骨髄症の任意の関連する症状、または多発性骨髄腫の発症に対する素因を、治療(cure)、治癒(heal)、緩和(alleviate)、軽減(relieve)、変更(alter)、治療(remedy)、改良(ameliorate)、改善(improve)、あるいは影響する(affect)ことである。「処置」によって、アンタゴニスト抗CD40抗体もしくはそのフラグメントを含有する薬学的組成物の被験体への適用または投与、あるいは抗CD40抗体もしくはそのフラグメントを含有する薬学的組成物の被験体から単離された組織または細胞株への適用または投与もまた意図され、ここで上記被験体は、多発性骨髄症、多発性骨髄症に関連する症状、または多発性骨髄症の発症に対する素因を有しており、その目的は、上記多発性骨髄症、多発性骨髄症の任意の関連する症状、または多発性骨髄腫の発症に対する素因を、治療、治癒、緩和、軽減、変更、治療、改良、改善、あるいは影響することである。
【0090】
「抗腫瘍活性」によって、悪性のCD40発現細胞の増殖または蓄積の速度の低下、そしてそれ故の既存の腫瘍もしくは治療の間に生じた腫瘍の成長速度の衰え(decline)、および/または既存の新生物性(腫瘍)細胞もしくは新しく形成された新生物性細胞の破壊、そしてそれ故の治療の間の腫瘍の全体の大きさの減少が意図される。少なくとも1種の抗CD40抗体(またはその抗原結合フラグメント)を用いた治療は、多発性骨髄腫の処置に関して有益である生理学的応答を引き起こし、ここで上記疾患は、上記CD40抗原を発現する細胞を含む。本発明の方法は、治療の間に生じる多発性骨髄腫細胞のさらなる増殖(proliferation)および生長(outgrowth)を防止する際に有用であり得ることが認識される。
【0091】
本発明の方法に従って、本明細書の他の部分で定義されるような少なくとも1種のアンタゴニスト抗CD40抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、多発性骨髄腫の処置または防止に関してポジティブな治療応答を促進するために使用される。癌の処置に関する「ポジティブな治療応答」によって、これらの抗体もしくはそのフラグメントの抗腫瘍活性に関連する疾患の改善、および/または上記疾患に関連する症状の改善が意図される。すなわち、抗増殖効果、さらなる腫瘍生長の防止、腫瘍の大きさの減少、癌細胞数の減少、および/またはCD40発現細胞の刺激によって媒介される1以上の症状の減少が、観察され得る。従って、例えば、上記疾患の改善は、完全応答(complete response)として特徴付けられ得る。「完全応答」によって、任意の先行する異常なX線写真研究、骨髄、および脳脊髄液(CSF)の正常化による臨床的に検出可能な疾患がないことが意図される。このような応答は、本発明の方法に従う処置を受けて、少なくとも1ヶ月持続しなければならない。あるいは、上記疾患の改善は、部分的な応答であるとして分類され得る。「部分的な応答」によって、新規の病変がなく、かつ少なくとも1ヶ月持続する、全ての測定可能な腫瘍負荷量(すなわち、上記被験体において存在する腫瘍細胞の数)の少なくとも約50%の減少が意図される。このような応答は、測定可能な腫瘍にのみ適用できる。
【0092】
腫瘍応答は、磁気共鳴画像法(MRI)スキャン、X線撮影画像化法、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、生物ルミネスセンス画像化法(例えば、ルシフェラーゼ画像化法)、骨スキャン画像化法、および骨髄穿刺(BMA)を含む腫瘍生検サンプリングなどのスクリーニング技術を使用した腫瘍形態(すなわち、全体の腫瘍負荷量、腫瘍の大きさなど)の変化について評価され得る。これらのポジティブな治療応答に加えて、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを用いた治療を受ける被験体は、上記疾患に関連する症状において改善の有益な効果を経験し得る。
【0093】
「治療有効用量または治療有効量」または「有効量」によって、投与された場合に、多発性骨髄腫を有する被験体の処置に関してポジティブな治療応答を引き起こす、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの量が意図される。本発明のいくつかの実施形態において、抗CD40抗体またはそのフラグメントの治療有効用量は、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、または約7mg/kg〜約12mg/kgの範囲である。処置の方法は、上記アンタゴニスト抗CD40抗体もしくはその抗原結合フラグメントの、治療有効用量の一回投与または治療有効用量の複数回投与を包含し得ることが認識される。
【0094】
本発明のさらなる実施形態は、臨床的な試験手順の一部として、例えば、与えられた処置レジメンの効能を決定するために、組織中のタンパク質レベルを診断的にモニタリングするためのアンタゴニスト抗CD40抗体を使用することである。検出は、上記抗体を検出可能な物質に結合させることによって容易にされ得る。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、ルミネセンス物質、生物ルミネセンス物質、および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられる;ルミネセンス物質の例としては、ルミノールが挙げられる;生物ルミネセンス物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる;そして適切な放射活性物質の例としては、125I、131I、35S、またはHが挙げられる。
【0095】
上記アンタゴニスト抗CD40抗体は、多発性骨髄腫の処置のために、公知の化学療法薬と組み合わせて、単独か、または骨髄移植、放射線療法、ステロイド、およびインターフェロンαと組み合わせて使用され得る。この様式において、本明細書において記載されるアンタゴニスト抗CD40抗体、またはその抗原結合フラグメントは、少なくとも1種の他の癌療法(放射線療法、化学療法、インターフェロンα療法、またはステロイド療法が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて投与され、ここでこのさらなる癌療法は、抗CD40抗体療法の前、その間、またはその後に投与される。従って、組み合わされた治療が、化学療法、放射線療法、またはインターフェロンαおよび/もしくはステロイドを用いた治療のような別の治療剤の投与と組み合わせた抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの投与を含む場合、本発明の方法は、別個の処方物または単一の薬学的組成物を用いた同時投与、およびいずれかの順番での連続投与を包含し、この方法において、好ましくは、両方(または全て)の活性因子がそれらの治療的活性を同時に発揮する期間が存在する。本発明の方法が組み合わされた治療レジメンを含む場合、これらの治療は、同時に与えられ得る。すなわち、上記アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、同時にか、または他の癌療法として同じ期間内に投与される(すなわち、上記治療は同時に行われるが、抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、他の癌療法のように正確に同時には投与されない)。あるいは、本発明の抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントはまた、他の癌療法の前に投与されてもよいし、他の癌療法に続いて投与されてもよい。異なる癌療法の連続投与は、処置された被験体が、第1のクールの治療に対して応答して寛解または再発の可能性を減少させるか否かに関わらず、実施され得る。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態において、本明細書において記載されるアンタゴニスト抗CD40抗体、またはその抗原結合フラグメントは、化学療法と組み合わせて投与され、そして必要に応じて自己骨髄移植と組み合わされる。ここで上記抗体および上記化学療法剤は、いずれの順番で連続的に投与されてもよいし、同時に(すなわち、同時または同じ期間内)投与されてもよい。適切な化学療法剤の例としては、ビンクリスチン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、およびプレドニゾンまたはデキサメタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
従って、例えば、1つの実施形態において、上記抗CD40抗体は、メルファラン、アルキル化薬、およびステロイドプレドニゾン(MPともいわれる)と組み合わせて投与される。あるいは、上記アルキル化薬剤であるシクロホスファミドおよびクロラムブシルは、メルファランの代わりに、ステロイドおよび本発明の抗CD40抗体と組み合わせて使用され得る。被験体がMPまたはその代替物に反応しない場合、そしてMP処置の後に再発する被験体に対して、本発明の抗CD40抗体は、ビンクリスチン、ドキソルビシン、および高用量のデキサメタゾン(「VAD」ともいわれる)の投与を含む化学療法レジメンと組み合わせて投与され得、この化学療法レジメンは、シクロホスファミドの同時投与をさらに含み得る。他の実施形態において、上記抗CD40抗体は、抗脈管形成特性を有する別の薬剤(例えば、サリドマイド、またはインターフェロンα)と組み合わせて使用され得る。被験体がMP療法および/またはVAD療法に耐性である場合、これらの後者の薬剤が有効であり得る。さらに他の実施形態において、上記抗CD40抗体は、ボルテゾミブ(VelcadeTM)のようなプロテアソームインヒビターと組み合わせて投与され得、後者は、疾患が2回の前の処置の後に再発し、かつその最後の処置に対する耐性が実証されている被験体に投与される。あるいは、上記抗CD40抗体は、高用量の化学療法と組み合わせて、単独か、または自己の骨髄移植と共に、被験体に投与され得る。
【0098】
本明細書において記載される抗CD40抗体は、例えば、CD40を発現している細胞を同定するために使用され得る標識抗体のような試薬を提供するために、さらに使用され得る。これは、未知のサンプルの細胞型を決定する際に非常に有用であり得る。モノクローナル抗体のパネルは、種によっておよび/または器官の型によって組織を同定するために使用され得る。類似の様式において、これらの抗CD40抗体は、混入について組織培養物の細胞をスクリーニング(すなわち、培養物中のCD40発現細胞および非CD40発現細胞の混合物の存在についてのスクリーニング)するために使用され得る。
【0099】
(薬学的処方物および投与の様式)
本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体は、治療上有効である濃度において投与されて、多発性骨髄腫を防止または処置する。この目的を達成するために、上記抗体は、当該分野で公知の種々の受容可能な賦形剤を使用して処方され得る。代表的には、上記抗体は、静脈内注射または腹腔内注射のいずれかによって投与される。この投与を達成するための方法は、当業者に公知である。局所投与もしくは経口投与され得る組成物、または粘膜を通過して透過し得る組成物を得ることもまた可能であり得る。
【0100】
静脈内投与は、投与される抗CD40抗体に依存して、好ましくは約1時間〜約10時間にわたる期間、より好ましくは約1時間〜約8時間にわたる期間、さらにより好ましくは約2時間〜7時間にわたる期間、なおより好ましくは約4時間〜6時間にわたる期間の注入によって起こる。薬学的組成物による最初の注入は、約4時間〜約6時間の期間にわたって行われ、続く注入はより迅速に送達され得る。続く注入は、約1時間〜約6時間(例えば、約1時間〜約4時間、約1時間〜約3時間、または約1時間〜約2時間を含む)の期間にわたって投与され得る。
【0101】
本発明の薬学的組成物は、意図される投与の経路と適合するように処方される。可能な投与の経路の例としては、非経口投与(例えば、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、皮内、皮下(SC)、または注入)、経口投与および肺投与(例えば、吸入)、鼻投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与ならびに直腸投与が挙げられる。非経口適用、皮内適用、もしくは皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈液(例えば、注射用水)、生理的食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張度調節のための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはブドウ糖)。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)で調節され得る。この非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製もしくはプラスチック製の複数用量バイアルの中に封じ込められ得る。
【0102】
上記抗CD40抗体は、代表的には、標準的技術によって、薬学的に受容可能な緩衝剤(例えば、滅菌生理的食塩水、滅菌緩衝水、ポリピレングリコール、前述のものの組み合わせなど)内に提供される。非経口的に投与可能な薬剤を調製するための方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;Mack Publishing Company,Eaton,Pennsylvania,1990)(本明細書において参考として援用される)において記載される。例えば、本発明の方法において使用するために適切な安定化抗体の薬学的処方物を記載するWO98/56418もまた参照のこと。
【0103】
投与される少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの量は、当業者によって過度の実験なしに容易に決定される。投与の様式および少なくとも1種のアンタゴニスト抗CD40抗体(またはそのフラグメント)のそれぞれの量に影響する因子としては、治療を受ける特定の疾患、上記疾患の重篤度、上記疾患の病歴、ならびに治療を受ける個体の年齢、身長、体重、健康状態、および生理学的状態が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、投与されるアンタゴニスト抗CD40抗体またはそのフラグメントの量は、投与の様式およびその被験体がこの抗腫瘍剤の一回用量または複数用量のどちらを受けるかに依存する。一般的に、抗CD40抗体またはそのフラグメントの投薬量をより高くすることが、治療を受ける患者の体重の増加に関して好ましい。投与される抗CD40抗体またはそのフラグメントの用量は、約0.003mg/kg〜約50mg/kgの範囲であり、好ましくは、0.01mg/kg〜約40mg/kgの範囲である。従って、例えば、用量は、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、または50mg/kgであり得る。
【0104】
本発明の別の実施形態において、上記方法は、複数用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはそのフラグメントの投与を包含する。上記方法は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、20回、25回、30回、35回、40回、もしくはそれ以上の治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはそのフラグメントを含有する薬学的組成物の投与を包含し得る。抗CD40抗体またはそのフラグメントを含有する薬学的組成物の複数用量の投与の頻度および期間は、当業者によって過度に実験なしに容易に決定され得る。さらに、治療有効量の抗体を用いた被験体の処置は、一回の処置を包含し得るか、または好ましくは一連の処置を包含し得る。好ましい例において、被験体は、約0.1〜20mg/kg体重の間の範囲のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを用いて、約1〜10週間の間、好ましくは約2〜8週間の間、より好ましくは約3〜7週間の間、そしてさらにより好ましくは約4週間、5週間、または6週間の間に週に1回処置される。処置は、再発を防止するためか、または再発の徴候に対して、毎年行われ得る。処置に使用される抗体またはその抗原結合フラグメントの有効な投薬量は、特定の処置のクールにわたって増加されても減少されてもよいこともまた、認識される。投薬量の変化は、本明細書において記載される診断アッセイの結果を生じ得、そしてそのアッセイの結果から明らかになり得る。従って、1つの実施形態において、その投薬レジメンは、処置期間の1日目、7日目、14日目、および21日目での治療有効用量の少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの第1の投与を含む。別の実施形態において、上記投薬レジメンは、処置期間の1週の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、および7日目での治療有効用量の少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの第1の投与を含む。さらなる実施形態は、処置期間の1週の1日目、3日目、5日目、および7日目での治療有効用量の少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの第1の投与を有する投薬レジメン;処置期間の1週の1日目および3日目での治療有効用量の少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの第1の投与を含む投薬レジメン;および処置期間の1週の1日目での治療有効用量の少なくとも1種の抗CD40抗体またはそのフラグメントの第1の投与を含む好ましい投薬レジメンを包含する。この処置期間は、1週、2週、3週、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年を含み得る。処置期間は、続いてもよいし、互いに1日、1週、2週、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、または1年離れていてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの治療上有効な用量の範囲は、約0.003mg/kg〜約50mg/kg、約0.01mg/kg〜約40mg/kg、約0.01mg/kg〜約30mg/kg、約0.1mg/kg〜約30mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約1mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約30mg/kg、約3mg/kg〜約25mg/kg、約3mg/kg〜約20mg/kg、約5mg/kg〜約15mg/kg、または約7mg/kg〜約12mg/kgである。従って、例えば、任意の1種のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、抗CD40モノクローナル抗体CHIR−12.12もしくはモノクローナル抗体CHIR−5.9またはその抗原結合フラグメント)の用量は、0.003mg/kg、0.01mg/kg、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、または約0.003mg/kg〜約50mg/kgの範囲にある他のそのような用量である得る。同じ治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体投薬の各週を通じて、投与され得る。あるいは、異なる治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、処置期間のクールにわたって使用され得る。
【0106】
他の実施形態において、本明細書の他の部分で定義されるように、最初の治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、より低い用量範囲(すなわち、約0.003mg/kg〜約20mg/kg)であり得、引き続く用量は、より高い用量範囲(すなわち、約20mg/kg〜約50mg/kg)になり得る。
【0107】
代替的な実施形態において、本明細書の他の部分で定義されるように、最初の治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、より高い用量範囲(すなわち、約20mg/kg〜約50mg/kg)であり得、引き続く用量は、より低い用量範囲(すなわち、0.003mg/kg〜約20mg/kg)になり得る。従って、1つの実施形態において、上記最初の治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、約20mg/kg〜約35mg/kg(約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、および約35mg/kgを含む)であり、そして引き続く治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、約5mg/kg〜約15mg/kg(約5mg/kg、約8mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、および約15mg/kgを含む)である。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体療法は、「ローディング用量(loading dose)」の抗体またはその抗原結合フラグメントを、アンタゴニスト抗CD40抗体療法を必要としている被験体に投与することによって開始される。「ローディング用量」によって、投与される抗体またはその抗原結合フラグメントの用量がより高い用量範囲(すなわち、約20mg/kg〜約50mg/kg)にある、上記被験体に投与されるアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの最初の用量が意図される。上記「ローディング用量」は、完全な「ローディング用量」が約24時間の期間内に投与される限り、一回投与(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントがIV投与される一回注入)としてか、または複数投与(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントがIV投与される複数注入)として投与され得る。「ローディング用量」の投与に続いて、次いで上記被験体は、1以上のさらなる治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを投与される。引き続く治療有効用量は、例えば、毎週の投薬スケジュールに従ってか、または2週間に一度、3週間に一度、もしくは4週間に一度、投与され得る。このような実施形態において、上記引き続く治療有効用量は、一般的により低い用量範囲(すなわち、0.003mg/kg〜約20mg/kg)内にある。
【0109】
あるいは、いくつかの実施形態において、「ローディング用量」に続いて、上記引き続く治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが、「維持スケジュール」に従って投与される。このスケジュールにおいて、上記治療有効用量の抗体またはその抗原結合フラグメントは、1ヶ月に1回、6週間に1回、2ヶ月に1回、10週間に1回、3ヶ月に1回、14週間に1回、4ヶ月に1回、18週間に1回、5ヶ月に1回、22週間に1回、6ヶ月に1回、7ヶ月に1回、8ヶ月に1回、9ヶ月に1回、10ヶ月に1回、11ヶ月に1回、または12ヶ月に1回、投与される。このような実施形態において、上記治療有効用量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、特に引き続く用量がより頻繁な間隔(例えば、2週間に1回〜1ヶ月に1回)で投与される場合、より低い用量範囲(すなわち、0.003mg/kg〜約20mg/kg)であるか、または特に引き続く用量がより頻繁でない間隔(例えば、引き続く用量が約1ヶ月〜約12ヶ月離れて投与される)で投与される場合、より高い投薬範囲(すなわち、約20mg/kg〜約50mg/kg)である。
【0110】
本発明の方法において使用するための、本明細書において記載される薬学的組成物中に存在するアンタゴニスト抗CD40抗体は、天然のものであっても、組換え技術によって得られても良いし、そして任意の供給源(例えば、マウス、ラット、ウサギ、霊長類、ブタおよびヒトのような哺乳動物供給源が挙げられる)に由来してもよい。好ましくは、このようなポリペプチドは、ヒト供給源に由来し、そしてより好ましくはハイブリドーマ細胞株からの組換えヒトタンパク質である。
【0111】
本発明の方法において有用な薬学的組成物は、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体の生物学的に活性な改変体を包含し得る。このような改変体は、被験体に投与されたときに、改変体ポリペプチドを含有する薬学的組成物が、天然のポリペプチドを含有する薬学的組成物と同じ治療的効果を有するように、上記天然ポリペプチドの所望の生物学的活性を保持するべきである。すなわち、上記改変体の抗CD40抗体は、天然のアンタゴニスト抗体(例えば、それぞれハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株12.12によって発現される5.9またはCHIR−12.12)について観察されるものと類似した様式において、薬学的組成物中の治療上活性な成分として機能する。改変体抗CD40抗体が、所望の生物学的活性を保持し、それ故、薬学的組成物中の治療的に活性な成分として機能するか否かを決定するための方法は、当該分野で利用可能である。抗体改変体の生物学的活性は、天然のアンタゴニスト抗体の活性を測定するために特異的に設計されたアッセイ(本発明において記載されるアッセイを含む)を使用して測定され得る。
【0112】
治療的に活性な成分として本明細書中に記載される結合特性を有するアンタゴニスト抗CD40抗体を含有する、あらゆる薬学的組成物が、本発明の方法において使用され得る。従って、1種以上の本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体を含有する液体、凍結乾燥または噴霧乾燥した組成物は、本発明の方法に従う、その後の被験体への投与のために、水系もしくは非水系の溶液または懸濁液として調製され得る。これらの組成物の各々は、治療的または予防的に活性な成分として、少なくとも1種の本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体を含有する。「治療的または予防的に活性な成分」により、抗CD40抗体が、組成物中に特異的に組み込まれて、薬学的組成物が被験体に投与されるときに、この被験体内の疾患もしくは状態の、処置、予防または診断に関して、所望の治療的または予防的な応答をもたらすことが意図される。好ましくは、薬学的組成物は、適切な安定化剤、充填剤、またはこれらの両方を含有し、調製および保存の間の、タンパク質の安定性および生物学的活性の喪失に伴う問題を最小限にする。
【0113】
処方用物質(formulant)が、本発明のアンタゴニスト抗CD40抗体を含有する薬学的組成物に添加され得る。これらの処方用物質としては、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミン酸(amine acid)、塩、緩衝液、アルブミン、界面活性剤、または充填剤が挙げられ得るがこれらに限定されない。好ましくは、炭水化物としては、糖または糖アルコール(例えば、単糖類、二糖類、もしくは多糖類、または水溶性グリカン)が挙げられる。糖類またはグリカンとしては、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、αおよびβシクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ならびにカルボキシメチルセルロース、またはこれらの混合物が挙げられ得る。「糖アルコール」は、ヒドロキシル基を有するC〜C炭化水素として定義され、そして、糖アルコールとしては、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロールおよびアラビトールが挙げられる。これらの糖または糖アルコールは、個別または組み合わせで使用され得る。糖または糖アルコールの濃度は、1.0%w/vと7%w/vとの間であり、より好ましくは、2.0%w/vと6.0%w/vとの間である。好ましくは、アミノ酸としては、左旋(L)形態のカルニチン、アルギニンおよびベタインが挙げられる;しかし、他のアミノ酸も添加され得る。好ましいポリマーとしては、2,000と3,000との間の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、または、3,000と5,000との間の平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。処方物中に添加され得る界面活性剤としては、欧州特許第270,799号および同第268,110号に示される。
【0114】
さらに、抗体は、例えば、その循環半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学的に修飾され得る。好ましいポリマー、およびこのポリマーをペプチドに結合させる方法は、米国特許第4,766,106号;同第4,179,337号;同第4,495,285号;および同第4,609,546号(これらは、全て、その全体が本明細書中に参考として援用される)に示される。好ましいポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温で水溶性であり、一般式:R(O−−CH−−CHO−−Rを有する。この式において、Rは、水素、またはアルキル基もしくはアルカノール基のような保護基であり得る。好ましくは、この保護基は、1個と8個の間の炭素を有し、より好ましくは、この保護基はメチルである。記号nは、正の整数であり、好ましくは、1と1,000との間、より好ましくは、2と500との間である。PEGは、1,000と40,000との間、より好ましくは、2,000と20,000との間、最も好ましくは、3,000と12,000との間の好ましい平均分子量を有する。好ましくは、PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有し、より好ましくは、それは、末端のヒドロキシ基である。好ましくはインヒビター上の遊離アミノ基と反応するように活性化されるのは、このヒドロキシ基である。しかし、反応基の型および量は、本発明の共有結合化PEG/抗体を達成するために変動し得ることが理解される。
【0115】
水溶性のポリオキシエチル化ポリオールもまた、本発明において有用である。これらとしては、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)などが挙げられる。POGが好ましい。1つの理由は、ポリオキシエチル化グリセロールのグリセロール骨格が、例えば、動物およびヒトのモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドにおいて天然に存在するものと同じ骨格であるからである。従って、この分枝形成は、必ずしも身体において外来因子として認識されない。POGは、PEGと同じ範囲の好ましい分子量を有する。POGの構造は、Knaufら(1988)J.Bio.Chem.263:15064−15070に示され、POG/IL−2結合体の考察については、米国特許第4,766,106号に見られ、これらは、いずれも、その全体が本明細書により参考として援用される。
【0116】
循環半減期を増加するための別の薬物送達系は、リポソームである。リポソーム送達系を調製する方法は、Gabizonら(1982)Cancer Research 42:4734;Cafiso(1981)Biochem Biophys Acta 649:129;およびSzoka(1980)Ann.Rev.Biophys.Eng.9:467において議論されている。他の薬物送達系が当該分野で公知であり、例えば、Poznanskyら(1980)Drug Delivery Systems(R.L.Juliano編,Oxford,N.Y.)pp.253−315;Poznansky(1984)Pharm Revs 36:277に記載される。
【0117】
薬学的組成物に組み込まれる処方用物質は、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの安定性のために提供されるべきである。すなわち、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、その物理的および/または化学的安定性を保持し、そして、所望の生物学的活性(すなわち、本明細書において上で定義される1種以上のアンタゴニスト活性(T細胞により刺激された正常なヒト末梢B細胞による免疫グロブリン分泌の阻害;Jurkat T細胞により刺激された正常なヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;CD40L発現細胞もしくは可溶性CD40リガンド(sCD40L)により刺激された正常なヒト末梢B細胞の生存および/または増殖の阻害;sCD40Lもしくは固相CD40Lにより刺激された、あらゆる細胞における「生き残った」抗アポトーシス細胞内シグナルの阻害;sCD40Lまたは固相CD40Lとのライゲーションに対する任意の細胞におけるCD40シグナル伝達の阻害;ならびに、本明細書中の他の部分で言及した、ヒト悪性B細胞の増殖の阻害が挙げられるがこれらに限定されない))を有するべきである。
【0118】
タンパク質の安定性をモニターするための方法は、当該分野で周知である。例えば、Jones(1993)Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90;Lee編(1991)Peptide and Protein Drug Delivery(Marcel Dekker,Inc.,New York,New York);および本明細書中、以下に開示される安定性アッセイを参照のこと。一般に、タンパク質の安定性は、特定の時間にわたって、選択された温度において測定される。好ましい実施形態において、安定な抗体の薬学的処方物は、室温(約25℃)において、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、もしくは少なくとも6ヶ月保存した場合に、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの安定性を提供し、そして/あるいは、約2〜8℃において、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、安定である。
【0119】
薬学的組成物中に処方される場合、抗体のようなタンパク質は、その薬学的組成物中で、沈殿、凝集および/または変性の、目に見える徴候(すなわち、変色または透明性の喪失)または(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはUV光散乱を使用して)測定可能な徴候を示さない場合に、所定の時点において、その物理的安定性を保持すると考えられる。化学的安定性に関して、薬学的組成物中に処方される場合、抗体のようなタンパク質は、その薬学的組成物中で、化学的安定性の測定が、そのタンパク質(すなわち、抗体)が、目的の生物学的活性を保持することを暗示する場合に、所定の時点において、その化学的安定性を保持すると考えられる。化学的安定性の変化をモニターするための方法は、当該分野で周知であり、この方法としては、例えば、SDS−PAGE、SECおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間質量分析を使用する、タンパク質の化学的に変更された形態(例えば、クリッピングからの結果)を検出するための方法;および、例えば、イオン交換クロマトグラフィーを使用する、分子の電荷の変化に伴う分解(例えば、脱アミドに伴う分解)を検出する方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、本明細書中で、以下に開示される方法を参照のこと。
【0120】
薬学的組成物中に処方される場合、アンタゴニスト抗CD40抗体、またはその抗原結合フラグメントは、所望の生物学的活性について適切なアッセイにおいて測定されるとき、その時点での所望の生物学的活性が、その薬学的組成物が調製された時点で示される所望の生物学的活性の約30%以内、好ましくは、約20%以内である場合に、所定の時点において所望の生物学的活性を保持すると考えられる。本明細書中に開示されるアンタゴニスト抗CD40抗体およびその抗原結合フラグメントの所望の生物学的活性を測定するためのアッセイは、本明細書中の実施例に記載されるようにして実施され得る。また、Schultzeら(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:8200−8204;Dentonら(1998)Pediatr.Transplant.2:6−15;Evansら(2000)J.Immunol 164:688−697;Noelle(1998)Agents Actions Suppl.49:17−22;Ledermanら(1996)Curr.Opin,Hematol.3:77−86;Coliganら(1991)Current Protocols in Immunology 13:12;Kwekkeboomら(1993)Immunology 79:439−444;ならびに米国特許第5,674,492号および同第5,847,082号に記載されるアッセイもまた参照のこと(これらは、本明細書中に参考として援用される)。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメントは、液体薬学的処方物中に処方される。アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、当該分野で公知の任意の方法を使用して調製され得、これらの方法としては、本明細書において上で開示された方法が挙げられる。1つの実施形態において、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメントは、CHO細胞株において組換え的に産生される。
【0122】
その調製および精製の後、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントは、本明細書中に示される様式で液体薬学的処方物として処方され得る。アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントが、その処方前に保存される場合、これらは、例えば、≦−20℃において凍結され、次いで、さらなる処方のために、室温にて融解され得る。この液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。この処方物中に存在する抗体またはその抗原結合フラグメントの量は、投与経路および所望の投薬用量を考慮に入れる。
【0123】
この様式において、液体薬学的組成物は、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12抗体もしくはCHIR−5.9抗体)またはその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、約0.5mg/ml〜約40.0mg/ml、約1.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約20.0mg/ml、または約15.0mg/ml〜約25.0mg/mlの濃度で含む。いくつかの実施形態において、この液体薬学的組成物は、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約5.0mg/ml、約5.0mg/ml〜約10.0mg/ml、約10.0mg/ml〜約15.0mg/ml、約15.0〜約20.0mg/ml、約20.0mg/ml〜約25.0mg/ml、約25.0mg/ml〜約30.0mg/ml、約30.0mg/ml〜約35.0mg/ml、約35.0〜約40.0mg/ml、約40.0〜約45.0mg/ml、または約45.0mg/ml〜約50.0mg/mlの濃度で含む。他の実施形態において、この液体薬学的組成物は、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを、約15.0mg/ml、約16.0mg/ml、約17.0mg/ml、約18.0mg/ml、約19.0mg/ml、約20.0mg/ml、約21.0mg/ml、約22.0mg/ml、約23.0mg/ml、約24.0mg/ml、または約25.0mg/mlの濃度で含む。この液体薬学的組成物は、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12抗体もしくはCHIR−5.9抗体)またはその抗原結合フラグメント、およびこの処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲(pH約5.0、pH約5.1、pH約5.2、pH約5.3、pH約5.4、pH約5.5、pH約5.6、pH約5.7、pH約5.8、pH約5.9、pH約6.0、pH約6.1、pH約6.2、pH約6.3、pH約6.4、pH約6.5、pH約6.6、pH約6.7、pH約6.8、pH約6.9、pH約7.0、およびpH約5.0〜pH約7.0の範囲内の他のこのような値が含まれる)に維持する緩衝液を含む。いくつかの実施形態において、緩衝液は、処方物のpHを、pH約5.0〜pH約6.5、pH約5.0〜pH約6.0、pH約5.0〜pH約5.5、pH約5.5〜pH約7.0、pH約5.5〜pH約6.5、またはpH約5.5〜pH約6.0の範囲に維持する。
【0124】
液体抗CD40抗体処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲に維持する任意の適切な緩衝液は、その抗体の物理化学的安定性および所望の生物学的活性が本明細書において上に言及されたように維持される限り、処方物において使用され得る。適切な緩衝液としては、従来の酸およびその塩が挙げられるがこれらに限定されず、ここで、対イオンは、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、またはマグネシウムであり得る。薬学的な液体処方物を緩衝するために使用され得る従来の酸およびその塩の例としては、コハク酸またはコハク酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、酒石酸または酒石酸塩、リン酸またはリン酸塩、グルコン酸またはグルコン酸塩、グルタミン酸またはグルタミン酸塩、アスパラギン酸またはアスパラギン酸塩、マレイン酸またはマレイン酸塩、およびリンゴ酸またはリンゴ酸塩の緩衝液が挙げられるがこれらに限定されない。処方物内の緩衝液の濃度は、約1mM〜約50mM(約1mM、約2mM、約5mM、約8mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値を含む)であり得る。いくつかの実施形態において、処方物内の緩衝液の濃度は、約5mM〜約15mM(約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、または約5mM〜約15mMの範囲内の他のこのような値を含む)である。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態において、液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(たとえば、CHIR−12.12モノクローナル抗体もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)またはその抗原結合フラグメント、およびこの処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0、好ましくは、pH約5.0〜pH約6.5の範囲に維持する濃度のコハク酸緩衝液またはクエン酸緩衝液を含む。「コハク酸緩衝液」または「クエン酸緩衝液」によって、それぞれ、コハク酸の塩またはクエン酸の塩を含む緩衝液が意図される。好ましい実施形態において、コハク酸またはクエン酸の対イオンは、ナトリウムカチオンであり、従って、緩衝液は、それぞれ、コハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムである。しかし、任意のカチオンが、有効であると予想される。他の可能なコハク酸カチオンまたはクエン酸カチオンとしては、カリウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムが挙げられるがこれらに限定されない。上記のように、処方物内のコハク酸緩衝液またはクエン酸緩衝液の濃度は、約1mM〜約50mM(約1mM、約2mM、約5mM、約8mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、または約1mM〜約50mMの範囲内の他のこのような値を含む)であり得る。いくつかの実施形態において、処方物内の緩衝液の濃度は、約5mM〜約15mM(約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、または約15mMを含む)である。他の実施形態において、液体薬学的処方物は、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメントを、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、または約5.0mg/ml〜約25.0mg/mlの濃度で、そして、コハク酸緩衝液またはクエン酸緩衝液(例えば、コハク酸ナトリウム緩衝液またはクエン酸ナトリウム緩衝液)を、約1mM〜約20mM、約5mM〜約15mM、好ましくは、約10mMの濃度で含む。
【0126】
液体薬学的処方物が等張付近であることが望ましい場合、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント、およびこの処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲内に維持するための緩衝液を含む液体薬学的処方物は、さらに、この処方物を等張付近にするために十分な量の等張化剤を含み得る。「等張付近(near isotonic)」により、水溶性処方物が、約240mmol/kg〜約360mmol/kg、好ましくは約240mmol/kg〜約340mmol/kg、より好ましくは約250mmol/kg〜約330mmol/kg、なおより好ましくは約260mmol/kg〜約320mmol/kg、なおより好ましくは約270mmol/kg〜約310mmol/kgの浸透圧を有することが意図される。溶液の等張度を測定する方法は、当業者に公知である。例えば、Setnikarら(1959)J.Am.Pharm.Assoc.48:628を参照のこと。
【0127】
当業者は、薬学的組成物に等張性を提供するのに有用な、種々の薬学的に受容可能な溶質に精通している。等張化剤は、本発明の液体薬学的処方物の浸透圧を、体液の浸透圧にほぼ等しい値に調節し得る任意の試薬であり得る。生理学的に受容可能な等張化剤の使用が望ましい。従って、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント、およびこの処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲内に維持するための緩衝液を含む液体薬学的処方物は、さらに、等張性を提供するために使用され得る成分(例えば、塩化ナトリウム;アミノ酸(例えば、アラニン、バリンおよびグリシン);糖類および糖アルコール(ポリオール)(グルコース、デキストロース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンニトール、トレハロース、グリセロール、ソルビトールおよびキシリトールが挙げられるがこれらに限定されない);酢酸、他の有機酸またはその塩、および比較的少量のクエン酸またはリン酸)を含み得る。当業者は、液体処方物の最適な張度を提供するために適切なさらなる薬剤を知っている。
【0128】
いくつかの好ましい実施形態において、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント、およびこの処方物のpHを、pH約5.0〜pH約7.0の範囲内に維持するための緩衝液を含む液体薬学的処方物は、さらに、等張化剤として塩化ナトリウムを含む。処方物中の塩化ナトリウムの濃度は、張度に対する他の成分の寄与に依存する。いくつかの実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約50mM〜約300mM、約50mM〜約250mM、約50mM〜約200mM、約50mM〜約175mM、約50mM〜約150mM、約75mM〜約175mM、約75mM〜約150mM、約100mM〜約175mM、約100mM〜約200mM、約100mM〜約150mM、約125mM〜約175mM、約125mM〜約150mM、約130mM〜約170mM、約130mM〜約160mM、約135mM〜約155mM、約140mM〜約155mM、または約145mM〜約155mMである。1つのこのような実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMである。他のこのような実施形態において、塩化ナトリウムの濃度は、約150mMであり、緩衝液は、約5mM〜約15mMの濃度のコハク酸ナトリウム緩衝液またはクエン酸ナトリウム緩衝液であり、この液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメントを含み、そして、この処方物は、pH約5.0〜pH約7.0、pH約5.0〜pH約6.0、またはpH約5.5〜pH約6.5のpHを有する。他の実施形態において、液体薬学的処方物は、pH約5.5のpHにおいて、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、または約5.0mg/ml〜約25.0mg/mlの濃度のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント、約150mMの濃度の塩化ナトリウム、および約10mMの濃度のコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムを含む。
【0129】
本発明の液体薬学的処方物を処理する間の凍結融解または機械的なせん断に起因するタンパク質の分解は、溶液−空気界面における表面張力を低下させるために、処方物内に界面活性剤を組み込むことによって阻害され得る。こうして、いくつかの実施形態において、液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)またはその抗原結合フラグメント、処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲内に維持するための緩衝液を含み、そしてさらに、界面活性剤を含む。他の実施形態において、液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント、処方物のpHをpH約5.0〜pH約7.0の範囲内に維持するための緩衝液、約50mM〜約300mMの濃度の等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)を含み、そしてさらに、界面活性剤を含む。
【0130】
使用される代表的な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤であり、これらとしては、以下が挙げられる:ポリオキシエチレンソルビトールエステル(例えば、ポリソルベート80(Tween 80)およびポリソルベート20(Tween 20));ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンエステル(例えば、Pluronic F68);ポリオキシエチレンアルコール(例えば、Brij 35);シメチコン;ポリエチレングリコール(例えば、PEG400);リゾホスファチジルコリン;およびポリオキシエチレン−p−t−オクチルフェノール(例えば、Triton X−100)。界面活性剤または乳化剤による薬剤の伝統的な安定化については、例えば、Levineら(1991)J.Parenteral Sci.Technol.45(3):160−165(本明細書中に参考として援用される)に記載される。本発明を実施する際に使用される好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80である。界面活性剤が含まれる場合、界面活性剤は、代表的に、約0.001%(w/v)〜約1.0%(w/v)、約0.001%(w/v)〜約0.5%(w/v)、約0.001%(w/v)〜約0.4%(w/v)、約0.001%(w/v)〜約0.3%(w/v)、約0.001%(w/v)〜約0.2%(w/v)、約0.005%(w/v)〜約0.5%(w/v)、約0.005%(w/v)〜約0.2%(w/v)、約0.01%(w/v)〜約0.5%(w/v)、約0.01%(w/v)〜約0.2%(w/v)、約0.03%(w/v)〜約0.5%(w/v)、約0.03%(w/v)〜約0.3%(w/v)、約0.05%(w/v)〜約0.5%(w/v)、または約0.05%(w/v)〜約0.2%(w/v)の量で添加される。
【0131】
こうして、いくつかの実施形態では、液体薬学的処方物は、治療有効量のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメントを含み、緩衝液は、約1mM〜約50mM、約5mM〜約25mM、または約5mM〜約15mMの濃度のコハク酸ナトリウム緩衝液またはクエン酸ナトリウム緩衝液であり;この処方物は、pH約5.0〜pH約7.0、pH約5.0〜pH約6.0、またはpH約5.5〜pH約6.5のpHを有し;そして、この処方物は、さらに、約0.001〜約1.0%、または約0.001%〜約0.5%の量の界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を含む。このような処方物は、必要に応じて、約50mM〜約300mM、約50mM〜約200mMまたは約50mM〜約150mMの濃度の等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)を含み得る。他の実施形態において、液体薬学的処方物は、約0.1mg/ml〜約50.0mg/ml、または約5.0mg/ml〜約25.0mg/ml(約20.0mg/mlを含む)の濃度のアンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、CHIR−12.12モノクローナル抗体、もしくはCHIR−5.9モノクローナル抗体)、またはその抗原結合フラグメント;約50mM〜約200mMの塩化ナトリウム(約150mMの塩化ナトリウムを含む);約5mM〜約20mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム(約10mMのコハク酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムを含む);約50mM〜約200mM(約150mMを含む)の濃度の塩化ナトリウム;および必要に応じて、約0.001%〜約1.0%(約0.001%〜約0.5%を含む)の量の界面活性剤(例えば、ポリソルベート80);を含み、ここで、この液体薬学的処方物は、pH約5.0〜pH約7.0、pH約5.0〜pH約6.0、約pH5.0〜pH約5.5,pH約5.5〜pH約6.5、または約pH5.5〜pH約6.0のpHを有する。
【0132】
液体薬学的処方物は、本質的に、保存料、および本明細書において上記された他のキャリア、賦形剤または安定化剤を含まなくてもよい。あるいは、この処方物は、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの物理化学的安定性に悪影響を及ぼさないという条件で、本明細書において上記される1種以上の保存剤(例えば、抗細菌剤)、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤または安定化剤を含み得る。受容可能なキャリア、賦形剤および安定化剤の例としては、さらなる緩衝化剤、共溶媒、界面活性剤、抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む)、キレート化剤(例えば、EDTA)、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)、および生分解性ポリマー(例えば、ポリエステル)が挙げられるがこれらに限定されない。薬学的に受容可能なキャリア、安定化剤、および等モル化剤(isomolyte)の処方および選択の詳細な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版;Mack Publishing Company,Eaton,Pennsylvania,1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
【0133】
本明細書中に記載される液体薬学的処方物または他の薬学的組成物が調製された後、これらは、分解を防ぐために凍結乾燥され得る。液体組成物を凍結乾燥するための方法は、当業者に公知である。使用の直前に、組成物は、さらなる成分を含み得る滅菌希釈剤(例えば、Ringer溶液、蒸留水または滅菌生理食塩水)で再構成され得る。再構成の際に、組成物は、好ましくは、当業者に公知の方法を使用して、被験体に投与される。
【0134】
(医薬の製造におけるアンタゴニスト抗CD40抗体の使用)
本発明はまた、被験体においてCLLを処置するための医薬の製造におけるアンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントの使用を提供し、ここで上記医薬は、少なくとも1種の他の癌療法による処置と共働(coordinate)される。「共働された(coordinated)」によって、少なくとも1種の他の癌療法による上記被験体の処置の前、その間、またはその後のいずれかに使用される医薬が意図される。
【0135】
他の癌療法の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:外科手術;放射線療法;化学療法(必要に応じて自己の骨髄移植と組み合わせられる)、この療法において、適切な化学療法剤としては、フルダラビンもしくはリン酸フルダラビン、クロラムブシル、ビンクリスチン、ペントスタチン、2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン)、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾン、およびこれらの組み合わせ(例えば、CAP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、さらにプレドニゾン)、CHOP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、さらにドキソルビシン)、VAD(ビンクリスチン(vincritsine)、ドキソルビシン、さらにデキサメタゾン)、MP(メルファラン、さらにプレドニゾン)のようなアントラサイクリン−含有レジメン)、ならびに化学療法において使用される他の細胞傷害剤および/または治療剤(例えば、ミトザントロン、ダウノルビシン、インダルビシン、アスパラギナーゼ、および代謝拮抗物質(シタラビン、メトトレキサート、5−フルオロウラシルデカルバジン(fluorouracil decarbazine)、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、ならびにネララビンが挙げられるが、これらに限定されない;他の抗癌モノクローナル抗体療法(例えば、アレムトツマブ(キャンパス(登録商標))または悪性B細胞上のCD52細胞表面糖タンパク質を標的にする他の抗CD52抗体;リツキシマブ(リツキサビン(Rituxan(登録商標)))、完全ヒト抗体HuMax−CD20、R−1594、IMMU−106、TRU−015、AME−133、トシツモマブ/I−131トシツモマブ(ベキサール(登録商標))、イブリツモマブチウキセタン(ibritumomabtiuxetan)(ゼバリン(登録商標))、または悪性B細胞上のCD20抗原を標的にする任意の他の治療的抗CD20抗体;抗CD19抗体(例えば、MT103、二重特異性抗体);抗CD22抗体(例えば、ヒト化モノクローナル抗体エプラツズマブ);ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))またはヒト血管内皮成長因子を標的にする他の抗癌抗体;悪性B細胞上のCD22抗原を標的にする抗CD22抗体(例えば、モノクローナル抗体BL−22、αCD22毒素);マクロファージコロニー刺激因子を標的にするα−M−CSF抗体;核因子κB(RANK)のレセプター活性因子を標的にする抗体およびそのリガンド(RANKL)(これらは、多発性骨髄腫において過剰発現される);悪性B細胞上のCD23抗原を標的にする抗CD23抗体(例えば、IDEC−152);悪性B細胞上のCD38抗原を標的にする抗CD38抗体;悪性B細胞上の主要組織適合遺伝子複合体クラスIIレセプターを標的にする抗体(抗MHC抗体);悪性B細胞上のCD40抗原を標的にする他の抗CD40抗体(例えば、SGN−40);ならびに多くの固体腫瘍および造血起源の腫瘍上に発現する腫瘍壊死因子関連性アポトーシス誘導リガンドレセプター1(TRAIL−R1)を標的にする抗体(例えば、アゴニスト性ヒトモノクローナル抗体HGS−ETR1);低分子ベースの癌療法(微小管インヒビターおよび/またはトポイソメラーゼインヒビター(例えば、有糸分裂インヒビターのドラスタチンおよびドラスタチンアナログ)が挙げられるが、これらに限定されない);チューブリン結合剤T900607;XL119;ならびにトポイソメラーゼインヒビターのアミノカンプトテシン、SDX−105(ベンダムスチンハイドロクロライド(bendamustine hydrochloride))、イキサベロピン(ixabepilone)(エポチロンアナログ(BMS−247550ともいわれる))、プロテインキナーゼCインヒビター(例えば、ミドスタウリン(midostaurin)((PKC−412、CGP 41251、N−ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine)))、ピクサントロン(pixantrone)、エロキサチン(抗新生物剤)、ガナイト(ganite)(硝酸ガリウム)、Thalomid(登録商標)(サリドマイド)、サリドマイドの免疫調節誘導体(例えば、レブリミド(以前のレビミド(revimid)))、AffinitakTM(プロテインキナーゼC−αのアンチセンスインヒビター)、SDX−101(R−エトドラク(悪性リンパ球のアポトーシスを誘導する))、第2世代(second−generation)プリンヌクレオシドアナログ(例えば、クロファラビン(clofarabine))、癌細胞によるタンパク質Bcl−2の産生のインヒビター(例えば、アンチセンス剤オブリマーゼン(oblimersen)およびジェナセンス(登録商標))、プロテアソームインヒビター(例えば、VelcadeTM(ボルテゾミブ))、低分子キナーゼインヒビター(例えば、CHIR−258)、低分子VEGFインヒビター(例えば、ZD−6474)、熱ショックタンパク質(HSP)90の低分子インヒビター(例えば、17−AAG)、ヒストンデアセチラーゼの低分子インヒビター(例えば、ハイブリッド/極性の細胞分化HPC)薬剤(例えばスベラニロヒドロキシアミン酸(suberanilohydroxamic acid)(SAHA)、およびFR−901228))およびアポトーシス剤(例えば、Trisenox(登録商標)(三酸化ヒ素)およびXcytrin(登録商標)(モテキサフィンガドリニウム(motexafin gadolinium)));ワクチン/免疫療法ベースの癌療法(ワクチンアプローチ(例えば、Id−KLH、オンコファージ(oncophage)、ビタレシン(vitalethine))、個別の免疫療法もしくは活性イディオタイプ免疫療法(例えば、MyVax(登録商標)個別の免疫療法、形式的に設計された(formally designated)GTOP−99)、Promune(登録商標)(CpG 7909、toll様レセプター9(TLR9)に対する合成アゴニスト)、インターフェロンα療法、インターロイキン−2(IL−2)療法、IL−12療法;IL−15療法、およびIL−21療法;ステロイド療法が挙げられるが、これらに限定されない);あるいは他の癌療法;ここで、さらなる癌療法を用いた処置、またはさらなる癌療法は、上記に記述されたように、上記アンタゴニスト抗CD40抗体もしくはその抗原結合フラグメントを含有する医薬を用いて被験体を処置する前、その間、またはその後に起こる。
【0136】
従って、例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、被験体の多発性骨髄腫を処置するための医薬の製造の際の、モノクローナル抗体CHIR−12.12もしくはモノクローナル抗体CHIR−5.9、またはその抗体結合フラグメントの使用を提供し、ここで上記医薬は、化学療法を用いた処置と共働され、この化学療法剤は、ビンクリスチン、ドキソルビシン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、およびプレドニゾンまたはデキサメタゾンからなる群より選択される。1つのこのような実施形態において、上記化学療法は、メルファラン、さらにプレドニゾンであり;他の実施形態において、上記化学療法は、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン)である。
【0137】
他の実施形態において、本発明は、被験体において多発性骨髄腫を処置するための医薬の製造の際の、モノクローナル抗体CHIR−12.12もしくはモノクローナル抗体CHIR−5.9、またはその抗原結合フラグメントの使用を提供する。ここで、上記医薬は、以下からなる群より選択される少なくとも1種の他の抗癌抗体を用いた処置と共働される:完全ヒト抗体HuMax−CD20、マクロファージコロニー刺激因子を標的にするα−M−CSF抗体;多発性骨髄腫において過剰発現される核因子−κB(RANK)のレセプター活性因子およびそのリガンド(RANKL)を標的にする抗体;悪性B細胞上のCD38抗原を標的にする抗CD38抗体;悪性B細胞上に発現される主要組織適合遺伝子複合体クラスIIレセプター(抗MHC抗体)を標的にする抗体;悪性B細胞上のCD40抗原を標的にする他の抗CD40抗体(例えば、SGN−40);ならびに腫瘍壊死因子関連性アポトーシス誘導リガンドレセプター1(TRAIL−R1)(例えば、アゴニスト性ヒトモノクローナル抗体HGS−ETR1)および多くの造血起源の腫瘍上に発現されるTRAIL−R2を標的にする抗体;ならびに任意のこれらの組み合わせ。これらの医薬は、他の癌療法での被験体の処置の前、その間、もしくはその後のいずれかに使用されるか、または複数の併用療法の場合において、他の癌療法での被験体の処置の前、その間、もしくはその後のいずれかに使用される。
【0138】
さらに他の実施形態において、本発明は、被験体において多発性骨髄腫を処置するための医薬を製造する際の、モノクローナル抗体CHIR−12.12もしくはモノクローナル抗体CHIR−5.9、またはそれらの抗原結合フラグメントの使用を提供し、ここで上記医薬は、以下からなる群より選択される少なくとも1種の他の低分子ベースの癌療法による処置と共働される:Thalomid(登録商標)(サリドマイド)、サリドマイドの免疫調節誘導体(例えば、レブリミド(以前のレブミド))、プロテアソームインヒビター(例えば、VercadeTM(ボルテゾミブ))、低分子キナーゼインヒビター(例えば、CHIR−258)、低分子VEGFインヒビター(例えば、ZD−6474)、熱ショックタンパク質(HSP)90の低分子インヒビター(例えば、17−AAG)、ヒストンデアセチラーゼの低分子インヒビター(例えば、ハイブリッド/極性の細胞分化HPC)薬剤(例えば、スベラニロヒドロキシアミン酸(SAHA)、およびFR−901228))およびアポトーシス剤(例えば、Trisenox(登録商標)(三酸化ヒ素))、ならびに任意のこれらの組み合わせ。これらの医薬は、他の癌療法での被験体の処置の前、その間、もしくはその後のいずれかに使用されるか、または複数の併用療法の場合において、他の癌療法での被験体の処置の前、その間、もしくはその後のいずれかに使用される。
【0139】
本発明はまた、多発性骨髄腫について被験体を処置するための医薬の製造の際の、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体CHIR−12.12またはモノクローナル抗体CHIR−5.9)またはその抗原結合フラグメントの使用を提供し、ここで上記医薬は、少なくとも1種の他の癌療法によって前処置されている被験体において使用される。「前処置された(pretreated)」または「前処置(pretreatment)」によって、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含有する医薬を受ける前に、1種以上の他の癌療法を受けている(すなわち、少なくとも1種の他の癌療法で処置されている)被験体が意図される。「前処置された」または「前処置」は、アンタゴニスト抗CD40抗体(例えば、本明細書において開示されるモノクローナル抗体CHIR−12.12またはモノクローナル抗体CHIR−5.9)、またはその抗原結合フラグメントを含有する医薬で処置の開始の前に、2年以内、18ヶ月以内、1年以内、6ヶ月以内、2ヶ月以内、6週間以内、1ヶ月以内、4週間以内、3週間以内、2週間以内、1週間以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内、またはさらに1日以内、少なくとも1種の他の癌療法で処置されている被験体を包含する。被験体が、前の癌療法での前処置または前の癌療法に対して応答者であることは、必ずしも必要ではない。従って、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含有する医薬を受ける被験体は、事前の癌療法または1種以上の事前の癌療法での前処置(前処置には、複数の癌療法が含まれる)に対して応答しても、応答しなくてもよい(すなわち、この癌は、治療不応性であった)。被験体が、アンタゴニスト抗CD40抗体またはその抗原結合フラグメントを含有する医薬を受ける前に前処置を受け得る他の癌療法の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:外科手術;放射線療法;必要に応じて自己の骨髄移植と組み合わせた化学療法(この療法において、適切な化学療法剤は、本明細書の上に列挙したものが挙げられるが、これらに限定されない);他の抗癌モノクローナル抗体療法(本明細書の上に列挙された抗癌抗体が挙げられるが、これらに限定されない);低分子ベースの癌療法(本明細書の上に列挙された低分子が挙げられるが、これらに限定されない);ワクチン/免疫療法ベースの癌療法(本明細書の上に列挙されたものが挙げられるが、これらに限定されない);ステロイド療法;他の癌療法;あるいは任意のこれらの組み合わせ。
【0140】
本明細書において記載される医薬の1種以上の他の癌療法と一緒の共働された使用の状況における「処置」は、本明細書において、上記医薬もしくは他の癌療法の被験体への適用または投与、あるいは上記医薬または他の癌療法の組織から単離された組織または細胞株への適用または投与として定義される。ここで上記被験体は、多発性骨髄種、このような癌に関連する症状、またはこのような癌の発症に対する素因を有し、その目的は、上記癌、上記癌の任意の関連する症状、または上記癌の発症に対する素因を、治療、治癒、緩和、軽減、変更、治療、改良、改善、あるいは影響することである。
【0141】
以下の実施例は、説明のために提供され、限定のために提供されるものではない。
【実施例】
【0142】
(導入部)
以下の実施例で使用されるアンタゴニスト抗CD40抗体は、5.9およびCHIR−12.12である。この5.9抗CD40抗体およびCHIR−12.12抗CD40抗体は、ヒトIgG重鎖座およびヒトκ軽鎖座を有するトランスジェニックマウス(XenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California))の免疫化により作製されるヒトIgGサブタイプ抗ヒトCD40モノクローナル抗体(mAb)である。CD40細胞外ドメインを発現するSF9昆虫細胞を、免疫原として使用した。
【0143】
簡単に述べると、免疫したマウスに由来する脾臓細胞を、de Boerら(1988)J.Immunol.Meth.113:143により以前に記載されたとおりに、50%ポリエチレングリコールを使用して、10:1の比で、SP 2/0マウス骨髄腫細胞またはP3 x 63Ag8.653マウス骨髄腫細胞と融合させた。融合した細胞を、ヒポキサンチン(0.1mM)、アミノプテリン(0.01mM)、チミジン(0.016mM)および0.5ng/mlのhIL−6(Genzyme,Cambridge,Massachusetts)を補充した完全IMDM培地中に再懸濁した。この融合した細胞を、次いで、各ウェルが、平均して1つの増殖するハイブリドーマを含むように、96ウェル組織培養プレートのウェル間に分配した。
【0144】
10〜14日後、ハイブリドーマ集団の上清を、特異的抗体の産生についてスクリーニングした。ハイブリドーマクローンによる特異的抗体の産生をスクリーニングするために、各ウェルからの上清を、プールし、まず、ELISAによって、抗CD40活性の特異性について試験した。次いで、陽性のものを、標準的なFACSアッセイを用いる、EBV−形質転換B細胞の蛍光細胞染色のために使用した。陽性のハイブリドーマ細胞を、0.5ng/mlのhIL−6を含有するIMDM/FBS中で限界希釈することによって、2回クローン化した。
【0145】
合計31匹のマウスの脾臓を、マウス骨髄腫SP2/0細胞と融合させて、ELISAにおいて組換えCD40を認識する895の抗体を作製した。平均して、Abgenix XenoMouse(登録商標)技術(Abgenix;Fremont,California)を使用して産生されたハイブリドーマの約10%が、ヒトκ鎖の代わりにマウスλ軽鎖を含み得る。これらのマウスλ軽鎖を含む抗体を選択した。細胞表面CD40への結合もまた示す260の抗体のサブセットを、さらなる分析のために選択した。一連のサブクローニング手順の間に選択された安定なハイブリドーマを、結合アッセイおよび機能アッセイにおけるさらなる特徴付けに使用した。選択プロセスのさらなる詳細については、同時継続中の仮出願(両方ともに、発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」であり、それぞれ、2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日出願、割り当てられた米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件整理番号:PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件整理番号:PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710(代理人事件整理番号:PP20107.003(035784/277214))を参照のこと。これらの特許文献の両方の内容は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0146】
7つの他のハイブリドーマからのクローンを、アンタゴニスト活性を有するものとして同定した。その相対アンタゴニスト能およびADCC活性に基づいて、2つのハイブリドーマクローンを、さらなる評価のために選択した(表1、以下)。これらを、131.2F8.5.9(5.9)および153.8E2.D10.D6.12.12(12.12)と名付けた。
【0147】
【表1】

マウスハイブリドーマ株131.2F8.5.9(CMCC#12047)およびハイブリドーマ株153.8E2.D10.D6.12.12(CMCC#12056)は、それぞれ、American Type Culture Collection ATCC;10801 University Blvd.,Manassas,Virginia 20110−2209(USA)に、特許寄託番号PTA−5542およびPTA−5543の下、寄託されている。
【0148】
候補抗体の可変領域をコードするcDNAを、PCRにより増幅し、クローン化し、そして、配列決定した。CHIR−12.12抗体の軽鎖および重鎖についてのアミノ酸配列を、それぞれ、図1Aおよび1Bに示す。配列番号2(mAb CHIR−12.12の軽鎖)および配列番号4(mAb CHIR−12.12の重鎖)もまた参照のこと。mAb CHIR−12.12の重鎖の改変体を、図1Bに示す(配列番号5もまた参照のこと)。この改変体は、配列番号4の第153位のアラニン残基の代わりにセリン残基を有するという点で配列番号4と異なる。CHIR−12.12抗体の軽鎖および重鎖をコードするヌクレオチド配列を、それぞれ、図2Aおよび2Bに示す。配列番号1(mAb CHIR−12.12の軽鎖のコード配列)および配列番号3(mAb CHIR−12.12の重鎖のコード配列)もまた参照のこと。5.9抗体の軽鎖および重鎖についてのアミノ酸配列を、それぞれ、図3Aおよび3Bに示す。配列番号6(mAb 5.9の軽鎖)および配列番号7(mAb 5.9の重鎖)もまた参照のこと。mAb 5.9の重鎖の改変体を、図3Bに示す(配列番号8もまた参照のこと)。この改変体は、配列番号7の第158位のアラニン残基の代わりにセリン残基を有するという点で配列番号7と異なる。
【0149】
個々のハイブリドーマに由来する抗体について予測されるとおり、相補性決定領域(CDR)内のヌクレオチド配列に実質的なバリエーションが存在する。VのCDR3領域内の多様性は、抗体特異性を最も有意に決定するものと考えられる。
【0150】
FACS分析により示されるように、5.9およびCHIR−12.12は、ヒトCD40に特異的に結合し、そして、CD40−リガンド結合を妨げ得る。両方のmAbが、細胞表面のCD40に予め結合したCD40リガンドと競合し得る。5.9のヒトCD40への結合親和性は、1.2×10−8Mであり、CHIR−12.12のヒトCD40への結合親和性は、5×10−10Mである。
【0151】
CHIR−12.12モノクローナル抗体および5.9モノクローナル抗体は、強力なアンタゴニストであり、正常なB細胞のインビトロCD40リガンド媒介性の増殖を阻害し、ならびに、NHL患者およびCLL患者に由来する癌細胞のインビトロCD40リガンド媒介性の増殖を阻害する。インビトロで、両方の抗体は、NHL患者に由来する原発性の癌細胞を、ADCCによって死滅させる。用量依存性の抗腫瘍活性が、異種移植片ヒトリンパ種モデルにおいて見られた。これらの結果、およびこれらの結果を得るために使用したアッセイのより詳細な説明については、同時継続中の仮出願(発明の名称「Antagonist Anti−CD40 Monoclonal Antibodies and Methods for Their Use」であり、それぞれ、2003年11月4日、2003年11月26日および2004年4月27日出願、割り当てられた米国特許出願番号第60/517,337号(代理人事件整理番号:PP20107.001(035784/258442))、同第60/525,579号(代理人事件整理番号:PP20107.002(035784/271525))、および同第60/565,710号(代理人事件整理番号:PP20107.003(035784/271525)))を参照のこと。これらの各々の内容は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0152】
アンタゴニスト抗CD40抗体mAb 5.9およびCHIR−12.12が以下の特徴を示すか否かを決定するための研究を行う:(1)多発性骨髄腫患者の細胞へ結合すること(フローサイトメトリーを使用して決定する);(2)CD40リガンドに誘導された生存シグナルを遮断することによって、多発性骨髄腫患者の細胞において細胞死を促進すること;(3)多発性骨髄腫(MM)細胞に対する、それ自身による任意の刺激/阻害活性を有すること;および/または;(4)作用の様式として、ADCCを媒介すること。
【0153】
(実施例1:mAb 5.9およびCHIR−12.12の、MM患者からのCD40多発性骨髄腫(MM)細胞への結合)
FITCで標識した抗CD40 mAb 5.9およびCHIR−12.12を、多発性骨髄腫(MM)細胞の染色について、コントロールのFITCで標識したヒトIgG1と共に試験する。8人の患者から得られたCD40MM細胞を、FITCで標識した抗CD40 mAb 5.9またはCHIR−12.12、またはFITCで標識したヒトIgG1と共にインキュベートする。FACSCAN V(Becton Dickinson,San Jose,California)を用いて、フローサイトメトリー分析を行う。
【0154】
(実施例2:抗CD40 mAb 5.9およびCHIR−12.12は、多発性骨髄腫(MM)細胞におけるCD40リガンドが媒介する生存シグナルを遮断する)
8人の患者から得られた多発性骨髄腫細胞を、以下の条件下で、アンタゴニスト抗CD40 mAb 5.9またはCHIR−12.12およびコントロールのヒトIgG1と共に別個に培養する:
【0155】
【表2】

72時間後、この培養物を以下のように分析する:
・PIおよびアネキシンVでの染色による生存細胞計数および細胞死の測定
・一晩トリチウム化チミジンを適用し、増殖を測定する。
【0156】
(実施例3:多発性骨髄腫(MM)細胞に対する抗CD40 mAb刺激性/阻害性活性の評価)
8人の患者からの多発性骨髄腫細胞を、以下の条件下で、抗CD40 mAb CHIR−12.12または抗CD40 mAb 5.9の存在下において、IgGをコントロールとして使用して培養する:
【0157】
【表3】

72時間後、この培養物を以下のように分析する:
・PIおよびアネキシンVでの染色による生存細胞計数および細胞死の測定
・一晩トリチウム化チミジンを適用し、増殖を測定する。
【0158】
(実施例4:抗体依存性細胞傷害性(ADCC)によって患者に由来する多発性骨髄腫(MM)細胞を溶解する、抗CD40 mAb CHIR−12.12および抗CD40 mAb 5.9の能力)
8人の患者から得られた多発性骨髄腫細胞を、以下の条件下で、アンタゴニスト抗CD40 mAb 5.9またはCHIR−12.12およびコントロールのヒトIgG1と共に別個に培養する:
【0159】
【表4】

4時間後に、特異的な細胞溶解を、放出された51Crのレベルまたは蛍光色素を測定することによって計算する。
【0160】
(実施例5:5.9およびCHIR−12.12は、CD40上の15B8とは異なるエピトープに結合する)
候補のモノクローナル抗体5.9およびCHIR12.12は、CD40の結合について互いに競合するが、15B8(IgG抗CD40 mAb)とは競合しない(国際公開第02/28904号を参照のこと)。Biacoreを使用した抗体競合結合研究を、アミン結合を介して固定したプロテインAを用いたCM5バイオセンサーチップを使用して設計した。このバイオセンサーチップは、抗CD40、CHIR−12.12、または15B8のいずれかを捕捉するために使用した。標準の会合/解離結合曲線を、種々の濃度のCD40−hisを用いて観察する(データは示さず)。競合研究のために、CHIR−12.12または15B8のいずれかを、プロテインAの表面上で捕捉した。続いて、CD40−his/5.9Fab複合体(100nM CD40:1μM 5.9Fab)を、種々の濃度において改変された表面に流した。CHIR−12.12の場合において、上記複合体の会合は観察されず、5.9は、CHIR−12.12のCD40−hisへの結合を遮断することを示した。15B8については、Fab 5.9複合体の会合が観察され、5.9は15B8のCD40結合部位への結合を遮断しないことを示した。しかし、この複合体が離れる割合(off rate)は、劇的に増加した(データは示さず)。
【0161】
15B8およびCHIR−12.12は、CD40−his結合について競合しないことも決定した。プロテインAバイオセンサーチップ上のCHIR−12.12を捕捉し、コントロールのhIgGによって残りのプロテインA部位を遮断し、CD40−hisを結合し、次いで改変された表面に15B8を流すことによって、この実験を組んだ。15B8は、これらの条件下で結合し、CHIR−12.12は15B8のCD40への結合を遮断しないことを示した。
【0162】
(実施例6:CHIR−12.12 mAbおよび5.9 mAbの結合特性)
プロテインAを、アミンカップリングにより、CM5バイオセンサーチップ上に固定化した。ヒト抗CD40モノクローナル抗体(1.5μg/ml)を、この修飾したバイオセンサの表面に10μl/分で、1.5分間捕捉した。組換え可溶性CD40−hisを、種々の濃度で、バイオセンサの表面上に流した。抗体および抗原を、0.01M HEPES(pH7.4)、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005% Surfactant P20(HBS−EP)中に希釈した。動力学定数および親和性定数を、1:1の相互作用モデル/全体的なフィットを用いて、Biaevaluationソフトウェアを使用して決定した。
【0163】
以下の表2に示すように、5.9とCHIR−12.12の解離する速度には121倍の差があり、結果として、CHIR−12.12に対する親和性が24倍高かった。
【0164】
【表5】

(実施例7:モノクローナル抗体CHIR−12.12およびモノクローナル抗体5.9についてのエピトープの特徴づけ)
モノクローナル抗体CHIR−12.12およびモノクローナル抗体5.9により認識されるCD40上のエピトープの位置を決定するために、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析を実施した。精製したCD40(0.5μg)を、還元条件および非還元条件下で、4〜12%のNUPAGEゲル上で分離し、PVDFメンブレンに移し、そして、10μg/ml濃度のモノクローナル抗体でプローブした。ブロットを、アルカリホスファターゼ結合体化抗ヒトIgGでプローブし、そして、アルカリホスファターゼについてのWestern Blue安定化基質(Promega)を用いて発色させた。
【0165】
結果は、抗CD40モノクローナル抗体CHIR−12.12が、CD40の非還元型形態および還元型形態の両方の上にあるエピトープを認識し、CD40の非還元型形態が、CD40の還元型形態よりも高い強度を示すことを示す(表3;ブロットは示さず)。CD40の両方の形態についての認識が、陽性であるという事実は、この抗体が、線形配列である立体配座のエピトー部分と相互作用することを示す。モノクローナル抗体5.9は、主に、CD40の非還元型形態を認識し、この抗体が、本来の立体配座のエピトープと相互作用することを示唆する(表3;ブロットは示さず)。
【0166】
【表6】

CD40上の抗原性領域をマッピングするために、CD40の4つの細胞外ドメインをクローニングし、そして、GST融合タンパク質として昆虫細胞において発現させた。4つのドメインの分泌を、GP67分泌シグナルで確認した。昆虫細胞の上清を、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析により分析し、エピトープを含むドメインを同定した。
【0167】
モノクローナル抗体CHIR−12.12は、還元条件および非還元条件の両方の下で、ドメイン2上のエピトープを認識する(表4;ブロットは示さず)。対照的に、モノクローナル抗体5.9は、ドメイン2に対して、非常に弱い認識を示す(表4;ブロットは示さず)。これらの抗体のいずれもが、この分析において、ドメイン1、3または4は認識しない。
【0168】
【表7】

mAb CHIR−12.12により認識されるエピトープをより正確に規定するために、ペプチドを、CD40の細胞外ドメイン2から合成し、これは、配列
PCGESEFLDTWNRETHCHQHKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTICT(配列番号10または配列番号12に示される配列の残基61〜104)
に対応する。1アミノ酸が相殺された(offset)10マーペプチドを含む35種のSPOTメンブレン(Sigma)を作製した。mAb CHIR−12.12および抗ヒトIgG β−ガラクトシダーゼを二次抗体として用いるウエスタンブロット分析を実施した。このブロットを、細片に分け、mAb 5.9で再度プローブして、この抗体により認識される領域を決定した。
【0169】
10μg/mlの抗CD40モノクローナル抗体CHIR12.12でプローブするSPOT分析では、スポット18〜22の反応が陽性であった。これらのペプチドによりカバーされる配列領域を、表5に示す。
【0170】
【表8】

これらの結果は、以下の線形エピトープに対応する:YCDPNL(配列番号10または配列番号12に示す配列の残基82〜87)。このエピトープは、Y82、D84およびN86を含み、これらは、CD40−CD40リガンドの相互作用に関与すると予測されている。
【0171】
mAb 5.9を用いるSPOT分析は、表6に示されるスポット20〜22により表されるペプチドの弱い認識を示し、これは、そのCD40への結合において、領域YCDPNLGL(配列番号10または配列番号12に示す配列の残基82〜89)が関与することを示唆した。mAb CHIR−12.12および5.9は、BIACORE分析においてCD40への結合に関して、互いに競合することに注意すべきである。
【0172】
【表9】

SPOT分析により同定した線形エピトープは、CD40 B1モジュールの内部である。CD40 B1モジュールの配列は;
HKYCDPNLGLRVQQKGTSETDTIC(配列番号10または配列番号12の残基80〜103)
である。
【0173】
線形エピトープ内でCHIR−12.12について同定されたのはC83である。このシステイン残基がC103とジスルフィド結合を形成することは公知である。CHIR−12.12 mAbの立体配座のエピトープは、このジスルフィド結合(C83−C103)および/またはC103にコンホメーション的に近い周囲のアミノ酸を含むようである。
【0174】
(実施例8:CHIR−12.12は、正常なヒトB細胞においてCD40L媒介性CD40生存およびシグナル伝達経路を遮断する)
可溶化CD40リガンド(CD40L)は、B細胞を活性化し、種々の局面の機能応答(生存および増殖の促進、ならびにNFκB、ERK/MAPK、PI3K/Akt、およびp38のシグナル伝達経路の活性化を含む)を誘導する。さらに、CD40L媒介性CD40刺激は、正常B細胞において、切断されたPARPの減少および抗アポトーシスタンパク質(XIAPおよびMcl−1)の導入によって生存シグナルを提供する。CD40L媒介性CD40刺激はまた、TRAF2およびTRAF3を増加させてCD40細胞質ドメインに結合する。
【0175】
以下の研究は、CHIR−12.12が、正常なヒトB細胞に影響するこれらの刺激の全てを直接阻害することを実証する。例えば、CHIR−12.12処置は、時間用量依存性様式において、カスパーゼ−9、カスパーゼ−3、およびPARPの切断の増加、ならびにXIAPおよびMcl−1の減少を生じ、B細胞のアポトーシスを回復させた。CHIR−12.12での処置はまた、CD40L媒介性CD40刺激に応答して、IκBキナーゼ(IKK)αおよびβ(NFκB経路)、ERK、Akt、およびp38のリン酸化を阻害した。さらに、CHIR−12.12は、最初のCD40L媒介性CD40刺激なしに、これらのアポトーシス効果を引き起こさないことを見出した。
【0176】
(CHIR−12.12は、PARPの切断を誘導することによって、CD40リガンドにより媒介された生存を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの0.6×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の純度(%))を、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。次いで、CHIR−12.12(10μg/ml)およびコントロールのIgGを添加した。0分、20分、2時間、6時間、18時間、および26時間で細胞を回収した。細胞溶解物中の切断されたカスパーゼ−9、切断されたカスパーゼ−3、切断されたPARPおよびβ−アクチンコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0177】
簡単に述べると、切断されたカスパーゼ−9、切断されたカスパーゼ−3、または切断されたPARPの経時的な増加を生じなかったので、CD40L媒介性CD40刺激が、生存シグナルを提供することを観察し、その細胞はアポトーシスを受けないことを示した。しかし、CHIR−12.12での処理は、これらの切断生成物の増加を生じ、CHIR−12.12処理が、CD40Lに刺激された正常なB細胞において、生存シグナルに関するCD40L結合の効果を排除し、B細胞のアポトーシスを回復することを示した(データは示さず)。
【0178】
(CHIR−12.12は、「生き残った」抗アポトーシスタンパク質の発現を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの0.6×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。次いで、CHIR−12.12(10μg/ml)およびコントロールのIgGを添加した。0分、20分、2時間、6時間、18時間、および26時間において細胞を回収した。細胞溶解物中のMcl−1、XIAP、CD40、およびβ−アクチンのコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。簡単に述べると、sCD40L刺激は、長期にわたるMcl−1およびXIAPの発現の持続を生じた。しかし、CHIR−12.12でのsCD40Lで刺激した細胞の処理は、これらのタンパク質の発現の経時的な減少を生じた(データは示さず)。Mcl−1およびXIAPは、アポトーシス経路を遮断し得る「生き残った」シグナルであるので、これらの結果は、CHIR−12.12処理が、sCD40Lで刺激した正常なB細胞におけるアポトーシスに対する遮断を除くことを実証する。
【0179】
(CHIR−12.12処理は、正常なB細胞において、IKKα(Ser 180)およびIKKβ(Ser 181)のリン酸化を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの1.0×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。次いで、CHIR−12.12(10μg/ml)およびコントロールのIgGを添加した。0分および20分において細胞を回収した。細胞溶解物中のリン酸化されたIKKα(Ser 180)およびリン酸化されたIKKβ(Ser 181)およびリン酸化された全IKKβのコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0180】
簡単に述べると、sCD40Lによる刺激は、IKKα(Ser 180)およびIKKβ(Ser 181)の経時的なリン酸化を生じた;しかし、CHIR−12.12での処理は、正常なB細胞において、sCD40L刺激に対するこの応答を排除した(データは示さず)。
【0181】
(CHIR−12.12処理は、用量依存的様式でCD40リガンドによって媒介された生存を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの0.6×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。次いで、CHIR−12.12(0.01μg/ml、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.5μg/ml、1.0μg/ml)およびコントロールのIgGを添加した。24時間において細胞を回収した。細胞溶解物中の切断されたPARP、およびβ−アクチンのコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0182】
簡単に述べると、CHIR−12.12処理は、用量依存的様式でsCD40Lで刺激した細胞におけるPARP切断の増加を生じ、その結果、sCD40Lで刺激した正常なB細胞において、生存シグナル伝達経路を排除した(データは示さず)。
【0183】
(CHIR−12.12は、用量依存的様式で「生き残った」抗アポトーシスタンパク質の発現を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの0.6×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。次いで、CHIR−12.12(0.5μg/ml、2μg/ml、および10μg/ml)およびコントロールのIgGを添加した。22時間において細胞を回収した。細胞溶解物中のMcl−1、XIAP、切断されたPARP、およびβ−アクチンのコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0184】
簡単に述べると、CHIR−12.12処理は、用量依存的様式でMcl−1およびXIAPの発現を減少させ、sCD40Lで刺激した細胞における切断されたPARP発現を増加し、その結果、sCD40Lで刺激した正常なB細胞において、アポトーシス経路に対するこれらの遮断を排除した(データは示さず)。
【0185】
(CHIR−12.12は、可溶性CD40Lシグナル伝達がない場合、抗アポトーシスタンパク質(切断されたPARP、およびXIAP)の発現に影響しなかった)
これらの実験において、健康なドナーからの1.0×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、CHIR−12.12(10μg/ml)およびコントロールのIgGのみで処理した(すなわち、抗体を添加する前に、細胞をsCD40Lで前処理しなかった)。0時間、4時間、14時間、および16時間において細胞を回収した。細胞溶解物中のXIAP、切断されたPARP、およびβ−アクチンのコントロールを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0186】
簡単に述べると、この結果は、IgG処理のコントロール細胞およびCHIR−12.12細胞の両方において、sCD40L刺激なしに、細胞が切断されたPARPの濃度の上昇を表した一方で、XIAP発現は一定のままであることを示す(データは示さず)。これらのデータは、CHIR−12.12は、正常なB細胞において、CD40L刺激なしにアポトーシスを誘発しないことを示す。
【0187】
(CHIR−12.12は、正常なB細胞においてIKKα(Ser 180)およびIKKβ(Ser 181)、Akt、ERK、およびp38のリン酸化を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの1.0×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1%FBS含有培地において血清飢餓状態にし、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。この培養物をCHIR−12.12(1μg/mlおよび10μg/ml)およびコントロールのIgGで処理した。細胞を0分および20分において回収した。細胞溶解物中のリン酸−IKKα、リン酸−IKKβ、全IKKβ、リン酸−ERK、全ERK、リン酸−Akt、全Akt、リン酸−p38、および全p38を、ウエスタンブロットによって検出した。
【0188】
簡単に述べると、sCD40L刺激は、IKKα/βリン酸化、ERKリン酸化、Aktリン酸化、およびp38リン酸化の増加を生じ、従って、細胞の生存および/または増殖をもたらした。この細胞のCHIR−12.12での処理は、正常なB細胞においてこれらのシグナル伝達経路に関するsCD40L刺激の効果を除去した(データは示さず)。
【0189】
(CHIR−12.12は、CD40シグナル伝達カスケードにおいて、PI3KおよびMEK/ERKのような複数のシグナル伝達経路を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの1.0×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1%FBS含有培地において血清を飢餓させ、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で刺激した。この培養物をまた、CHIR−12.12(1μg/mlおよび10μg/ml)、Wortmanin(PI3K/Aktインヒビター;1μMおよび10μM)、LY 294002(PI3K/Aktインヒビター;10μMおよび30μM)およびPD 98095(MEKインヒビター;10μg/mlおよび30μg/ml)で処理した。細胞を0分および20分において回収した。細胞溶解物中のリン酸−ERK、リン酸−Akt、全Akt、リン酸−IKKα/β、および全てを、ウエスタンブロットによって検出した。
【0190】
簡単に述べると、この結果は、CHIR−12.12が、これらのシグナル伝達分子の全てのリン酸化を排除するのに対して、このシグナル伝達インヒビターは、シグナル伝達の特異的な排除のみを示したことを示し、CHIR−12.12は、おそらく、CD40L刺激によって媒介されるこれらのシグナル伝達分子の上流を阻害することを示した(データは示さず)。
【0191】
(CHIR−12.12は、正常なB細胞において、シグナル伝達分子TRAF2およびTRAF3のCD40の細胞質ドメインへの結合を阻害する)
これらの実験において、健康なドナーからの4.0×10個の正常なヒトB細胞(85〜95%の間の純度(%))を、1%FBS含有培地において4時間血清飢餓状態にし、1μg/ml sCD40L(Alexis Corp.,Bingham,Nottinghamshire,UK)で20分間刺激した。細胞を0分および20分において回収した。ポリクローナル抗CD40(Santa Cruz Biotechnology,CA)を使用してCD40を免疫沈降し、抗TRAF2 mAb(Santa Cruz Biotechnology,CA)、抗TRAF3 mAb(Santa Cruz Biotechnology,CA)、および抗CD40 mAb(Santa Cruz Biotechnology,CA)を用いたウエスタンブロットにおいてプローブ化した。
【0192】
簡単に述べると、この結果は、TRAF2およびTRAF3は、sCD40L刺激の後、CD40と共沈殿したことを示す。対称的に、CHIR−12.12での処理は、sCD40Lで刺激した正常なB細胞において、CD40−TRAF2/3シグナル伝達複合体の形成を排除した。CD40発現は変化しなかった(データは示さず)。
【0193】
理論に束縛されることなく、これらの実験の結果、および上に略述された実施例における結果は、CHIR−12.12抗体が固有の性質の組み合わせを有する二重作用(dual action)のアンタゴニスト抗CD40モノクローナル抗体であることを示す。この完全ヒトモノクローナル抗体は、B細胞の生存および増殖に対する、CD40L媒介性CD40シグナル伝達経路を遮断する;このアンタゴニスト性は、最終的には細胞死をもたらす。CHIR−12.12はまた、エフェクター細胞による認識および結合を媒介し、抗体依存性の細胞傷害性(ADCC)を開始する。一旦CHIR−12.12がエフェクター細胞に結合されると、細胞溶解酵素が放出され、B細胞のアポトーシスおよび溶解をもたらす。CHIR−12.12は、前臨床腫瘍モデルにおいて比較した場合、リツキシマブよりもより強力な抗腫瘍抗体である。
【0194】
(実施例9:多発性骨髄腫動物モデルにおけるCHIR−12.12の抗腫瘍活性)
合計3用量について週に1度腹腔内(i.p.)投与された場合、CHIR−12.12は、用量依存的様式で、進行性の病期および発達段階ではない病期の多発性骨髄腫の成長を有意に阻害した。効能は、ボリテゾミブ(VELCADE(登録商標))処置による抗体療法を組み合わせることによって、さらに改善され得る。
【0195】
(IM−9多発性骨髄腫の異種移植片モデル)
50%MATRIGELTM中のIM−9腫瘍細胞(CD40とCD20との両方を発現するヒト多発性骨髄腫細胞株)を、1匹のマウスにつき5×10個の細胞でSCIDマウスの皮下に接種した。発達段階ではない病期(unstaged)のモデルにおいて、腫瘍移植の1日後に処置を開始した。進行性の病期モデルにおいて、腫瘍量が150〜200mmに達したときに、処置を開始した。週に1度、腫瘍を有するマウスに、示した用量で抗CD40 mAbを腹腔内注射した。ログランク試験を使用してデータを分析した。
【0196】
発達段階ではない病期の状態の生存モデルにおいて、CHIR−12.12は、用量依存的様式で腫瘍を有するマウスの生存を有意に延長した。この生存は、それぞれ、56日目において、0.1mg/kg CHIR−12.12処置群において60%の生存であり、1mg/kg CHIR−12.12処置群および10mg/kg CHIR−12.12処置群において80%の生存であった(それぞれ、p<0.01およびp<0.001)(データは示さず)。コントロールIgGの全ての動物、およびボルテゾミブ処置群を、腫瘍発症に関連する疾患に起因して18日目と26日目の間に安楽死させた。
【0197】
進行性の病期の皮下モデルにおいて、毎週0.1mg/kg、1mg/kg、および10mg/kgにおいて投与したCHIR−12.12は、それぞれ17%(p>0.05;データは示さず)、34%(p<0.01;図A)および44%(p<0.001;データは示さず)の腫瘍量の減少を伴って腫瘍成長を有意に阻害した。0.5mg/kgにおいて週に2度試験した場合、ボルテゾミブは、腫瘍成長を阻害しなかった(データは示さず)。最大耐性量(MTD)(週に2回の1mg/kg)において、ボルテゾミブは、図Aに示すように、30%まで腫瘍成長を阻害した(p<0.01)。しかし、CHIR−12.12を、最大耐性用量のボルテゾミブと組み合わせて毎週投与した場合(1mg/ml)、50%を超える腫瘍容量の減少を観察した(p<0.001)。
【0198】
要約すると、この抗CD40 mAb CHIR−12.12は、実験的多発性骨髄腫モデルにおいて、有意に腫瘍成長を阻害した。さらに、ボルテゾミブとのCHIR−12.12の組み合わせは、全ての一回の単一治療を超えて効能を増大させる。これらのデータは、抗CD40 mAb CHIR−12.12は、単独または他の化学療法剤と組み合わせのいずれかで、強力な抗腫瘍活性を有し、そして多発性骨髄腫の処置に対して臨床的に有効であることを示唆する。
【0199】
(実施例10:5.9およびCHIR−12.12を用いた臨床研究)
(臨床の目的)
全体的な目的は、これらの癌細胞を抗CD40 IgGで標的化することにより、多発性骨髄腫のための効果的な治療を提供することである。活性のいくつかの基準が、第I相において得られ得るにもかかわらず、この疾患についてのシグナルは、第II相において決定される。最初は、薬剤を単剤として試験するが、開発が進むにつれ、他の薬剤、化学療法剤、および放射線療法と組み合わされる。
【0200】
(第I相)
・安全性および薬物動態を評価する−多発性骨髄腫を有する被験体における用量の段階的拡大。
・安全性、許容性、およびCD40の血清マーカーにおける変化に基づいて、用量を選択する。一般に、MTDが求められるが、他の効能の指標(CD40多発性骨髄腫細胞の枯渇など)が、用量決定に適切であり得る。
・2以上の用量を考える。なぜならば、第II相では、いくつかの用量決定が必須であり得るからである。
・患者に毎週投薬し、リアルタイム薬物動態学(Pk)のサンプリングをする。最初の4週のサイクルは、最大投薬を可能とする。Pkは、疾患の状態、CD40の密度などに依存して大きく変動し得る。
・この治験は、多発性骨髄腫を有する被験体に対して公開される。
・研究を中止するかまたは継続するかの決定は、安全性、用量、および抗腫瘍活性の予備的な評価に基づく。
・応答速度により決定された薬物の活性は、第II相で決定される。
・第II相のための用量を特定する。
【0201】
(第II相)
1回または数回の治験を、多発性骨髄腫を有する被験体において開始する。2以上の用量、および2以上の計画が、無作為化された第II相の設定において試験され得る。
【0202】
*現行の標準的な医療が機能しない(化学療法による治療が機能しない)多発性骨髄腫の集団を対象とする
*研究を中止するかまたは継続するかの決定は、第II相における治療概念の証明に基づく
*臨床上の効果の早期の指標として、代理マーカーが使用され得るか否かを決定する
*第III相のための用量を特定する。
【0203】
(第III相)
第III相は、第II相においてシグナルがどこで検出されるか、そして、どのような競合する治療が標準的なものと考えられるかに依存する。標準的な治療が存在しない疾患の段階にシグナルがある場合、単群の、十分に制御された研究が、中心的な治験として機能し得る。標準的であると考えられる競合薬剤が存在する場合は、直接比較する研究が行なわれる。
【0204】
(実施例11:アンタゴニスト抗CD40抗体のための液体薬学的処方物)
本研究の目的は、この抗体についての最適な溶液環境を選択するために、生物物理学的方法および生化学的方法の両方により、アンタゴニスト抗CD40抗体CHIR−12.12の安定性に対する溶液のpHの効果を調べることであった。示差走査熱量測定法(DSC)の結果は、CHIR−12.12のコンホメーションの安定性が、pH5.5〜6.5を有する処方物において最適であることを示した。SDS−PAGE、サイズ排除HPLC(SEC−HPLC)、およびカチオン交換HPLC(CEX−HPLC)分析の組み合わせに基づくと、CHIR−12.12の物理化学的な安定性は、pH約5.0〜5.5において最適である。これらの結果を鑑みて、この抗体を含有する1つの推奨される液体薬学的処方物は、約10mMのコハク酸ナトリウム、約150mMの塩化ナトリウム中に処方された約20mg/mlのCHIR−12.12を含有し、pH約5.5のpHを有する処方物である。
【0205】
(材料および方法)
処方物の研究において使用されるCHIR−12.12抗体は、CHO細胞培養手順により作製されたヒトモノクローナル抗体である。このMAbは、150kDaの分子量を有し、ジスルフィド結合により互いに連結された2つの軽鎖および2つの重鎖から構成される。この抗体は、種々の癌および自己免疫性/炎症性の疾患の処置のために、CD40を発現する細胞(正常および悪性のB細胞を含む)上のCD40細胞表面レセプターに対して標的化される。
【0206】
この研究のために使用される抗CD40薬物原料(drug substance)は、CHOに由来する精製抗CD40(CHIR−12.12)のバルクロットであった。この薬物原料の組成は、10mMのクエン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム(pH6.5)中9.7mg/mlのCHIR−12.12抗体であった。この研究におけるコントロールサンプルは、一般に認められた薬物原料であり、その後、<−60℃にて凍結し、RTで融解し、そして、所定の時点において、安定性サンプルとともに試験した。この安定性サンプルは、異なるpH溶液に対する薬物原料の透析により調製したものであり、そして、各サンプルにおけるCHIR−12.12の濃度を、表7に示すように、UV280により測定した。
【0207】
【表10】

種々の処方物におけるCHIR−12.12抗体の物理化学的安定性を、以下のプロトコルを用いてアッセイした。
【0208】
(示差走査熱量測定法(DSC))
異なる処方のサンプルのコンホメーションの安定性を、1℃/分で、15℃から90℃まで加熱しながら、MicroCal VP−DSCを用いてモニターした。
【0209】
(SDS−PAGE)
分解(fragmentation)および凝集を、非還元条件および還元条件下で、4〜20%のTris−グリシンゲルを用いて評価した。タンパク質を、Coomassieブルー染色により検出した。
【0210】
(サイズ排除クロマトグラフィー(SEC−HPLC))
タンパク質の分解および凝集をまた、0.7ml/分の流速で、100mMリン酸ナトリウム(pH7.0)を移動相として用いて、Tosohaas TSK−GEL 3000SWXLカラムを備えるWater Alliance HPLCにより測定した。
【0211】
(カチオン交換クロマトグラフィー(CEX−HPLC))
0.5ml/分の流速で、50mMのHEPES(pH7.3)を移動相Aとして、そして、500mMのNaClを含有する50mM HEPES(pH7.3)を移動相Bとして用いて、Dionex Propac WCX−10カラムを備える、Waters 600s HPLCシステムを使用して、分解に関連する電荷の交換を測定した。
【0212】
(結果および考察)
(コンホメーション安定性研究)
CHIR−12.12の熱によるアンフォールディングは、少なくとも2つの熱遷移(thermal transition)を明らかにし、おそらく、それぞれ、FabドメインおよびFcドメインのアンフォールディング融解を表す。高温では、タンパク質は、おそらく凝集して、DSCシグナルの喪失をもたらした。処方物のスクリーニングの目的で、最も低い熱遷移温度を、この研究において、融点Tmとして規定した。図6は、処方物のpHの関数としての熱融点を示す。pH5.5〜6.5の処方物は、より高い熱融点により実証されるように、より高いコンホメーション安定性を有する抗CD40を提供した。
【0213】
(SDS−PAGE分析)
pH4.5〜9.0のCHIR−12.12処方物サンプルを、40℃にて2ヶ月インキュベートし、SDS−PAGE分析に供した(データ示さず)。非還元条件下では、pH5.5を上回る処方物において、23kDaおよび27kDaの分子量(MW)を有する種が観察され、そして、全ての処方物において、51kDaのMWを有する種が観察されたが、pH5.0〜5.5においては少ないようであった。100kDaのMWを有する種が、pH7.5およびpH9.0において見られ得た。
【0214】
還元条件下では、CHIR−12.12は、それぞれ、50kDaのMWおよび24kDaのMWを有する、遊離重鎖および遊離軽鎖に還元された。100kDaの種は、完全には還元性ではなく、そして、溶液のpHの上昇に伴って増加するようであり、非ジスルフィド共有結合が、この分子において生じている可能性を示唆する。SDS−PAGEにおいて未知の正体を有する他の種が存在しなかったので、各処方物の安定性の比較は、残存するCHIR−12.12の純度に基づく。pH5.0〜6.0の処方物は、CHIR−12.12に対して、より安定な環境を提供した。SDS−PAGEによって、わずかな凝集が検出された(データ示さず)。
【0215】
(SEC−HPLC分析)
SEC−HPLC分析は、主ピーク種としてインタクトなCHIR−12.12を、主ピーク種とは別個の前ピーク種として凝集種を、主ピーク種の後にあるショルダー状のピークとして大きなフラグメントの種を検出し、そして、小さなフラグメントの種が、主ピーク後の種として検出された。5℃および25℃で3ヶ月インキュベートした後、無視できる量(<1.0%)のタンパク質のフラグメントおよび凝集が、上記処方物中で検出され、そして、CHIR−12.12主ピーク種は、99%以上純粋なままであった(データ示さず)。しかし、タンパク質のフラグメントは、40℃で保存すると、次第に進展し、表8に示すように、pH4.5およびpH6.5〜9.0においては、より多くのフラグメントが形成された。CHIR−12.12処方物を40℃にて3ヶ月間インキュベートした後、約2〜3%の凝集が、pH7.5およびpH9.0において検出されたが、他のpHの処方物においては、1%未満の凝集が検出された(データ示さず)。SEC−HPLCの結果は、CHIR−12.12が、pH約5.0〜6.0においてより安定であることを示す。
【0216】
【表11】

(CEX−HPLC分析)
CEX−HPLC分析は、インタクトなCHIR−12.12を主ピーク種として検出し、酸性改変体は、主ピーク種よりも速く溶出し、そして、C末端リジン付加改変体は、主ピーク後の種として溶出した。表9は、残存する主ピークCHIR−12.12種および酸性改変体の百分率の、溶液のpHに対する依存性を示す。コントロールサンプルは、すでに、高い度合の酸性種(約33%)を含んでおり、おそらくこれは、初期段階での発酵および精製のプロセスに起因するものである。より高いpH溶液に対するCHIR−12.12の感受性は、2つの事実により証明される。第一に、pH9.0(t=0)の最初の処方物サンプルは、すでに、コントロールよりも12%多い酸性種を生じていた。第二に、酸性種の百分率は、pHの増加に伴って急に増加した。電荷の変化に関連する分解は、脱アミド化に起因するようである。上記のデータは、CHIR−12.12のこの型の分解が、pH約5.0〜5.5において最小であったことを示す。
【0217】
【表12】

(結論)
pHは、CHIR−12.12のコンホメーションおよび物理化学的な安定性に有意な効果を有する。電荷の変化に関連する分解は、CHIR−12.12についての主な分解経路であると決定され、これは、pH5.0〜5.5において最小であった。全体的な安定性のデータに基づいて、この抗体を含有する1つの推奨される液体薬学的処方物は、約10mMのコハク酸ナトリウム、約150mMの塩化ナトリウム中に処方された約20mg/mlのCHIR−12.12を含有し、pH約5.5のpHを有する処方物である。
【0218】
本明細書中に示される本発明の多くの改変および他の実施形態は、上述の明細書および添付の図面に提示される教示を利用して、本発明が属する分野の当業者に想到される。従って、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないこと、そして、改変および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲および本明細書中に開示される実施形態一覧の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において使用されるが、これらは、一般的かつ説明的な意味のみで使用されているのであり、制限する目的で使用されているわけではない。
【0219】
明細書中で言及された全ての刊行物および特許出願は、本発明が属する分野の当業者の技術水準を示している。全ての刊行物および特許出願は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参考として援用されることが示されるのと同じ程度まで、本明細書中に参考として援用される。
【0220】
【表13−1】

【0221】
【表13−2】

【0222】
【表13−3】

【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、mAb CHIR−12.12の軽鎖および重鎖についてのアミノ酸配列を示す。軽鎖のリーダー領域(配列番号2の残基1〜20)、可変領域(配列番号2の残基21〜132)および定常領域(配列番号2の残基133〜239)は図1Aに示される。重鎖のリーダー領域(配列番号4の残基1〜19)、可変領域(配列番号4の残基20〜139)および定常領域(配列番号4の残基140〜469)は図1Bに示される。図1Bに示されるmAb CHIR−12.12の重鎖についての代替定常領域は、配列番号4の位置153におけるアラニン残基に対するセリン残基の置換を反映する。このmAb CHIR−12.12の重鎖の改変体についての完全配列は、配列番号5に示される。
【図2】図2は、mAb CHIR−12.12に関する軽鎖についてのコード配列(図2A;配列番号1)および重鎖についてのコード配列(図2B;配列番号3)を示す。
【図3】図3は、mAb 5.9の軽鎖および重鎖についてのアミノ酸配列を示す。軽鎖のリーダー領域(配列番号6の残基1〜20)、可変領域(配列番号6の残基21〜132)および定常領域(配列番号6の残基133〜239)は図3Aに示される。重鎖のリーダー領域(配列番号7の残基1〜19)、可変領域(配列番号7の残基20〜144)および定常領域(配列番号7の残基145〜474)は図3Bに示される。図3Bに示されるmAb 5.9の重鎖についての代替定常領域は、配列番号7の位置158におけるアラニン残基に対するセリン残基の置換を反映する。このmAb 5.9の重鎖の改変体についての完全配列は、配列番号8に示される。
【図4−1】図4は、ヒトCD40の短いアイソフォームについてのコード配列(図4A;配列番号9)(アミノ酸配列は図4B;配列番号10に示される)、およびヒトCD40の長いアイソフォームについてのコード配列(図4C;配列番号11)(アミノ酸配列は図4Dに示される)を示す。
【図4−2】図4は、ヒトCD40の短いアイソフォームについてのコード配列(図4A;配列番号9)(アミノ酸配列は図4B;配列番号10に示される)、およびヒトCD40の長いアイソフォームについてのコード配列(図4C;配列番号11)(アミノ酸配列は図4Dに示される)を示す。
【図5】図5は、ヒト多発性骨髄腫IM−9異種移植モデルを用いる、モノクローナル抗体CHIR−12.12とbortrzomib(VELCADE(登録商標))による併用処置の、増強されたインビボでの抗腫瘍活性を実証する。
【図6】図6は、示差走査熱分析(DSC)によって測定された、様々なpHの処方物におけるCHIR−12.12の熱融点を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫についてヒト被験体を処置するための方法であって、該方法は、ヒトCD40発現細胞の表面に発現されるヒトCD40抗原に特異的に結合し得るヒト抗CD40モノクローナル抗体の有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該モノクローナル抗体は、有意なアゴニスト活性を有さず、それによって該モノクローナル抗体が該細胞の表面に発現された該CD40抗原に結合する場合に、該細胞の増殖または分化は阻害され、該ヒト抗CD40モノクローナル抗体は、以下:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9またはモノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6と配列番号7とに示される両方の配列、および配列番号6と配列番号8とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−5.9またはモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体または前述の項目c)〜i)のいずれか1項のモノクローナル抗体であって、該抗体は組換え産生される、モノクローナル抗体;ならびに
k)前述の項目a)〜j)のいずれか1項のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは該ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体
からなる群より選択される、方法。
【請求項2】
前記モノクローナル抗体が、少なくとも約10−6M〜約10−12Mの親和性(K)で、前記ヒトCD40抗原に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多発性骨髄腫についてヒト被験体を処置するための方法であって、該方法は、ヒトCD40抗原のドメイン2に特異的に結合するアンタゴニスト抗CD40モノクローナル抗体の有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該抗体はヒトCD40抗原のドメイン2に結合する場合に有意なアゴニスト活性を有さない、方法。
【請求項5】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、ハイブリドーマ細胞株5.9によって産生される抗体およびハイブリドーマ細胞株12.12によって産生される抗体からなる群より選択される抗体の結合特異性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、特許受託番号PTA−5542としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体、および特許受託番号PTA−5543としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、モノクローナル抗体CHIR−12.12またはモノクローナル抗体CHIR−5.9に関する結合特異性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、以下:
a)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
b)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
c)ハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;
d)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
e)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
f)前述の項目a)〜e)のいずれか1項のモノクローナル抗体であって、該抗体が組換え産生される、モノクローナル抗体;および
g)CHIR−12.12モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントまたは前述の項目a)〜f)のいずれか1項のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは該ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体
からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
CD40抗原を発現する多発性骨髄腫細胞の成長を阻害するための方法であって、該方法は、該CD40抗原に特異的に結合し得るヒト抗CD40モノクローナル抗体の有効量を該細胞に接触させる工程を包含し、該モノクローナル抗体は、CD40抗原に結合する場合に有意なアゴニスト活性を有さず、該抗体は、以下:
a)モノクローナル抗体CHIR−5.9またはモノクローナル抗体CHIR−12.12;
b)ハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株CHIR−12.12によって産生されるモノクローナル抗体;
c)配列番号6に示される配列、配列番号7に示される配列、配列番号8に示される配列、配列番号6と配列番号7とに示される両方の配列、および配列番号6と配列番号8とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
d)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
e)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
f)ハイブリドーマ細胞株5.9またはハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;
g)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
h)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜89を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
i)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−5.9またはモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
j)前述の項目a)のモノクローナル抗体または前述の項目c)〜i)のいずれか1項のモノクローナル抗体であって、該抗体は組換え産生される、モノクローナル抗体;ならびに
k)前述の項目a)〜j)のいずれか1項のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは該ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体
からなる群より選択される、方法。
【請求項12】
前記モノクローナル抗体が、少なくとも約10−6M〜約10−12Mの親和性(K)で、ヒトCD40抗原に結合する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フラグメントが、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fvフラグメント、および単鎖Fvフラグメントからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
CD40抗原を発現する多発性骨髄腫細胞の成長を阻害するための方法であって、該方法は、ヒトCD40抗原のドメイン2に特異的に結合するアンタゴニスト抗CD40モノクローナル抗体の有効量を該細胞に接触させる工程を包含し、該抗体はヒトCD40抗原のドメイン2に結合する場合に有意なアゴニスト活性を有さない、方法。
【請求項15】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、ハイブリドーマ細胞株5.9によって産生される抗体およびハイブリドーマ細胞株12.12によって産生される抗体からなる群より選択される抗体に関する結合特異性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、特許受託番号PTA−5542としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体、および特許受託番号PTA−5543としてATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される抗体からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、モノクローナル抗体CHIR−12.12またはモノクローナル抗体CHIR−5.9の結合特異性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、以下:
a)配列番号2に示される配列、配列番号4に示される配列、配列番号5に示される配列、配列番号2と配列番号4とに示される両方の配列、および配列番号2と配列番号5とに示される両方の配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むモノクローナル抗体;
b)配列番号1に示される配列、配列番号3に示される配列、および配列番号1と配列番号3とに示される両方の配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体;
c)ハイブリドーマ細胞株12.12によって産生されるモノクローナル抗体に結合し得るエピトープに結合するモノクローナル抗体;
d)配列番号10または配列番号12に示されるヒトCD40配列の残基82〜87を含むエピトープに結合するモノクローナル抗体;
e)競合結合アッセイにおいてモノクローナル抗体CHIR−12.12と競合するモノクローナル抗体;
f)前述の項目a)〜e)のいずれか1項のモノクローナル抗体であって、該抗体が組換え産生される、モノクローナル抗体;および
g)CHIR−12.12モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントまたは前述の項目a)〜f)のいずれか1項のモノクローナル抗体の抗原結合フラグメントであるモノクローナル抗体であって、該フラグメントは該ヒトCD40抗原に特異的に結合する能力を保持する、モノクローナル抗体
からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−500956(P2008−500956A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538548(P2006−538548)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/037281
【国際公開番号】WO2005/044855
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】