説明

多目的バーティカル装置

【課題】既設のコンベアによる食材の搬送経路を大幅に変更することなく、コンベアで搬送される食材を発酵又は冷却させる工程を組み込む。
【解決手段】上流側コンベア装置151は、上流側既設コンベア装置103Uから受け渡されたトレイTRを載置する。第1リフト装置201は、上昇用フリッパによって上流側コンベア装置151上のトレイTRを掬い上げ、上方に搬送する。第1リフト装置201の最上段に位置付けられたトレイTRは、プッシャ装置301によって第2リフト装置401に移し変えられる。第2リフト装置401は、下降用フリッパでトレイTRを保持した状態で下方に搬送し、下流側コンベア装置152の上に載置する。下流側コンベア装置152は、載置されたトレイTRを下流側既設コンベア装置103Dに渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程で発酵又は冷却等を必要とする食品の製造ラインに導入される食品の多目的バーティカル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パン等の食品を製造する食品製造工程には、加工中の食材又は完成品を発酵及び冷却させる工程が必要となる。この場合、発酵又は冷却に要する時間だけ食材を製造ラインの途中で滞留させる必要がある。これに関連して、従来、製造工程で発酵を必要とする食品の製造ラインに導入される発明が開示されている。
【0003】
一例として、特許文献1は、パン生地発酵ラインの搬送システムの発明を開示している。この搬送システムでは、ラックローダと発酵室とアンラックローダとが、離れた箇所に設置されている。ラックローダは、コンベアの最下流位置に配置され、このコンベアによってパン生地の載せた状態で順次搬送される天板を、天板ラックに段積みする。天板ラックは、自動搬送台車に載置されていて、天板を搭載した状態で自動搬送台車によって発酵室に運ばれ、パン生地の発酵に要する時間だけ経過した後にアンラックローダまで運ばれる。アンラックローダは、オーブン接続コンベアの最上流位置に配置され、天板ラックに段積みされた天板をオーブン接続コンベアに順次載せる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306934公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された搬送システムを設置するためには、広大な設置場所を要する。また、この搬送システムでは、自動搬送台車の使用が前提となっている。このため、この搬送システムを導入するためには、自動搬送台車の移動経路を設定したり、既設のコンベアによるパン生地の搬送経路を大幅に変更したり、自動搬送台車の移動手順を制御するプログラムを組んだりする等の困難が予想される。さらに、自動搬送台車を駆動するために、多くのエネルギーが必要とされる。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、既設のコンベアによる食材の搬送経路を大幅に変更することなく、コンベアで搬送される食材を発酵又は冷却させる工程を組み込むことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多目的バーティカル装置は、トレイを載置する第1コンベア装置と、前記第1のコンベア装置によって搬送されるトレイを保持して上方に搬送する第1リフト装置と、トレイを載置する第2コンベア装置と、前記第1リフト装置に隣接して配置され、トレイを保持して下方に搬送し前記第2コンベアに載置する第2リフト装置と、前記第1コンベア装置よりも上方で、前記第1リフト装置に保持されたトレイを前記第2リフト装置に押し出して移し変えるプッシャ装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トレイは、第1コンベア装置から第1リフト装置、プッシャ装置、第2リフト装置を経由した後に第2コンベア装置に戻り、既設のコンベアによる加工中の食材の搬送経路を大幅に変更することなくコンベアで搬送される食材を発酵又は冷却させる工程を組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多目的バーティカル装置の全体を示す側面図である。
【図2】上流側コンベア装置の側面図である。
【図3】上流側コンベア装置の平面図である。
【図4】第1リフト装置の側面図である。
【図5】図4のA矢視図である。
【図6】プッシャ装置の側面図である。
【図7】図6のB矢視図である。
【図8】第2リフト装置の側面図である。
【図9】図8のC矢視図である。
【図10】下流側コンベア装置の側面図である。
【図11】多目的バーティカル装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図12】多目的バーティカル装置の各部の動きの流れを示すフローチャートである。
【図13】多目的バーティカル装置の各部の動きの流れを示すフローチャートである。
【図14】多目的バーティカル装置の各部の動きの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態を、図1ないし図14に基づいて説明する。図1は、多目的バーティカル装置101の全体を示す側面図である。多目的バーティカル装置101は、食品製造ライン(例えば、パン製造ライン)に沿って工場内に設けられた食材FIの搬送経路102の途中に設けられるもので、食材FIが発酵又は冷却するのに充分な搬送時間をかけて食材FIを載せたトレイTRを迂回させる装置である。搬送経路102は、工場内に敷設されている複数のコンベア装置103によって予め規定されている。
【0011】
多目的バーティカル装置101は、第1コンベア装置としての上流側コンベア装置151と、第2コンベア装置としての下流側コンベア装置152と、第1リフト装置201と、プッシャ装置301と、第2リフト装置401と、シーケンス回路501(図11参照)と、各種のセンサと、を備える。
【0012】
上流側コンベア装置151及び下流側コンベア装置152は、いずれも、モータ153と、駆動ローラ154と、従動ローラ155と、ベルト156とを備える。駆動ローラ154は、モータ153の駆動力を受けて回転する。ベルト156は、駆動ローラ154及び従動ローラ155の両方に掛け渡されている。トレイTRは、ベルト156に載置されて、モータ153の駆動により搬送経路102の下流側に搬送される。
【0013】
上流側コンベア装置151及び下流側コンベア装置152は、既設のコンベア装置103の一部を置き換えて設置されるものである。より詳しくは、上流側コンベア装置151は、既設のコンベア装置103によって搬送されるトレイTRを受け取ることができるよう、分断されて上流側に位置する上流側既設コンベア装置103Uの下流端に連続して設けられる。また、下流側コンベア装置152は、既設のコンベア装置103にトレイTRを受け渡しできるよう、分断されて下流側に位置する下流側既設コンベア装置103Dの上流端に連続して設けられる。ここで、本実施の形態では、図1に示すように、上流側コンベア装置151と下流側コンベア装置152とは、ベルト156の高さ位置を違えて設置されているが、このベルト156の高さは同じであってもよい。上流側コンベア装置151の詳細については、図2及び図3に基づいて後述する。また、下流側コンベア装置152の詳細については、図10に基づいて後述する。
【0014】
第1リフト装置201は、上流側コンベア装置151を取り囲んで設けられ、この上流側コンベア装置151から上方に突出する。第1リフト装置201は、上流側コンベア装置151に位置するトレイTRの側部を上昇用フリッパ205(図4及び図5参照)によって掬い上げ、プッシャ装置301の高さ位置まで持ち上げる。この第1リフト装置201については、図4及び図5に基づいて後述する。
【0015】
第2リフト装置401は、下流側コンベア装置152を取り囲んで設けられ、この下流側コンベア装置152から上方に突出する。第2リフト装置401は、次に述べるプッシャ装置301によって下降用フリッパ405(図8及び図9参照)に載せられたトレイTRを降ろし、下流側コンベア装置152のベルト156に載せる。この第2リフト装置401については、図8及び図9に基づいて後述する。
【0016】
プッシャ装置301は、第1リフト装置201によって持ち上げられたトレイTRを第2リフト装置401に向けて押し出し、このトレイTRを第2リフト装置401に備わる下降用フリッパ405に載せる。このプッシャ装置301については、図6及び図7に基づいて後述する。
【0017】
このような多目的バーティカル装置101によれば、上流側既設コンベア装置103Uによって搬送されるトレイTRは、上流側コンベア装置151のベルト156に載置される。続いて、このトレイTRは、第1リフト装置201によって上方に持ち上げられ、プッシャ装置301によって第2リフト装置401に移し変えられる。続いて、このトレイTRは、第2リフト装置401によって下方に下ろされ、下流側コンベア装置152のベルト156に載置され、下流側コンベア装置152によって下流側既設コンベア装置103Dに受け渡される。
【0018】
ここで、上流側コンベア装置151と、下流側コンベア装置152と、第1リフト装置201と、プッシャ装置301と、第2リフト装置401とは、シーケンス回路501の制御を受けて駆動を開始したり、駆動を停止したりする。シーケンス回路501は、基本的には、予め定義されている制御手順に従って各部を制御する。そして、シーケンス回路501は、各種のセンサから受ける電気信号に応じた制御を各部に対して行う。多目的バーティカル装置101の電気的構成、及び、シーケンス回路501の制御による多目的バーティカル装置101の各部の動きについては、図11ないし図14に基づいて後述する。
【0019】
[上流側コンベア装置]
図2は、上流側コンベア装置151の側面図である。図3は、上流側コンベア装置151の平面図である。上流側コンベア装置151は、モータ153と、駆動ローラ154と、従動ローラ155と、ベルト156と、コンベア用レール156aと、終端ストッパ157と、変動ストッパ158と、変動ストッパ駆動部159と、センサ160とを備える。
【0020】
駆動ローラ154は、上流側コンベア装置151の下流端に位置する。従動ローラ155は、上流側コンベア装置151の上流端に位置する。ベルト156は、駆動ローラ154と従動ローラ155とに二本掛け渡され、これらは離間している。これらのベルト156は、駆動ローラ154と従動ローラ155との間に位置する支持部材(図示せず)にも支持されている。そして、コンベア用レール156aは、二本のベルトの外側に位置する。二本のコンベア用レール156aがなす幅は、図3に示すように、トレイTRの幅よりも小さい。そして、上流側既設コンベア装置103Uから上流側コンベア装置151に受け渡されたトレイTRは、その側部を二本のコンベア用レール156aから外側に突出させた状態で搬送される。終端ストッパ157は、駆動ローラ154の近傍で固定的に設けられ、ベルト156によって搬送されるトレイTRに干渉し、トレイTRを阻止する。センサ160は、搬送経路102に沿って複数設けられ、ベルト156によって搬送されるトレイTRをセンシングする。より詳細には、センサ160は、終端ストッパ157によって阻止される先頭のトレイTRをセンシングする第1センサ160aと、このトレイTRによって阻止されてベルト156上で停止する二番目のトレイTRをセンシングする第2センサ160bと、停止する二番目のトレイTRよりも上流側でこの二番目のトレイTRをセンシングしない箇所に設けられる第3センサ160cと、を含む。変動ストッパ158は、第3センサ160cがセンシングする箇所よりも上流側で、トレイTRを阻止するよう、二本のベルト156の間で上下に変位する。変動ストッパ158の変位は、変動ストッパ駆動部159によりなされる。このようにして、上流側コンベア装置151の上流側では、終端ストッパ157と変動ストッパ158との間で、終端ストッパ157に阻止されて二つのトレイTRが停止し、第1センサ160a及び第2センサ160bがこれらのトレイTRをセンシングする。このとき、第3センサ160cは二つのトレイTRのいずれをもセンシングしない。
【0021】
変動ストッパ158は、上記で説明したものの他に二つ、搬送経路102に沿って上流側コンベア装置151に配置される。三つの変動ストッパ158を、下流側から順に、第1変動ストッパ158a、第2変動ストッパ158b、第3変動ストッパ158cと呼ぶ。終端ストッパ157と第1変動ストッパ158aとの距離、第1変動ストッパ158aと第2変動ストッパ158bとの距離、及び、第2変動ストッパ158bと第3変動ストッパ158cとの距離は等しい。そして、第1変動ストッパ158aと第2変動ストッパ158bとの間、及び、第2変動ストッパ158bと第3変動ストッパとの間には、それぞれ、第1センサ160aと第2センサ160bと第3センサ160cとが設けられている。また、変動ストッパ158よりも上流側には、第1センサ160aと第3センサ160cとが設けられている。各変動ストッパ158により、上流側コンベア装置151では、七枚のトレイTRは、図2及び図3に示す箇所で阻止され、下流側から順に二枚、二枚、二枚、一枚というようにグループ分けされる。
【0022】
[第1リフト装置]
図4は、第1リフト装置201の側面図である。図5は、図4のA矢視図である。第1リフト装置201は、上部回転軸202と、下部回転軸203と、これらに掛け渡された昇降コンベア204とを、上流側コンベア装置151を挟んで一対備える。そして、昇降コンベア204には、所定間隔ごとに、上昇用フリッパ205が設けられている。上昇用フリッパ205は、断面L字形状をなす長尺部材である。上部回転軸202は、ギア列207を介して伝達されるモータ206の駆動力によって、図5に示す矢印R1の方向に回転する。これにより、上昇用フリッパ205は、上流側コンベア装置151上にあるトレイTRの両側部を掬い上げ、上方に搬送する。
【0023】
[プッシャ装置]
図6は、プッシャ装置301の側面図である。図7は、図6のB矢視図である。プッシャ装置301は、モータ302と、駆動スプロケット303と、従動ギア304と、チェーン305と、プッシャ体306と、プッシャ用レール307とを備える。プッシャ用レール307は、第1リフト装置201の上方から第2リフト装置401の上方にかけて、搬送経路102と平行に延びている。プッシャ用レール307には、プッシャ体306がスライド自在に取り付けられている。また、駆動スプロケット303及び従動ギア304は、プッシャ用レール307よりもさらに上方に設けられる。モータ302は、シーケンス回路501の制御を受けて正逆両方向に回転するものであり、駆動スプロケット303を回転させる。また、チェーン305は、駆動スプロケット303及び従動ギア304に掛け渡されてプッシャ用レール307と平行に延びている。このチェーン305には、プッシャ用レール307が取り付けられている。そして、チェーン305が回転することにより、プッシャ体306はプッシャ用レール307に沿ってスライドする。
【0024】
プッシャ体306は、プッシャ用レール307と平行に延びる棒状の基部308と、基部308の両側部に取り付けられプッシャ用レール307に載置されるタイヤ部309と、基部308から下方に延出する板状の四つの当接部310とを備える。各当接部310は、上流側コンベア装置151に位置付けられたトレイTRの各グループ(図2、図3参照)の後端部に対応するよう、互いに離間してプッシャ用レール307に取り付けられる。
【0025】
ここで、第2リフト装置401に備わる下降用フリッパ405(図8及び図9も参照)のうち最上段にあるものは、第1リフト装置201に備わる上昇用フリッパ205のうち最上段にあるものと同じ高さ位置に位置付けられる。そして、第1リフト装置201における最上段の上昇用フリッパ205と第2リフト装置401における最上段の下降用フリッパ405との間には、トレイTRの両側部を支持する固定レール311が配置されている。
【0026】
プッシャ装置301は、まず、第1リフト装置201の上方に位置付けられている。ここで、モータ302の駆動によりチェーン305が回転すると、プッシャ体306が動く。これにより、第1リフト装置201における最上段の上昇用フリッパ205に支持されたトレイTRを当接部310が押し出す。トレイTRは、第1リフト装置201による最上段の上昇用フリッパ205から、固定レール311を経由して、第2リフト装置401における最上段の下降用フリッパ405の上まで摺動する。第2リフト装置401の駆動によって第2リフト装置401における最上段の下降用フリッパ405が下方に動いた後、プッシャ装置301では、モータ302の駆動によりチェーン305が回転してプッシャ体306が第1リフト装置201の上方の位置まで復帰する。
【0027】
プッシャ装置301は、プッシャ用レール307よりも上方にリミットスイッチ312を備える。下方から突き上げられたプッシャ体306がリミットスイッチ312に接触した場合、リミットスイッチ312はエラー信号を出力する。
【0028】
プッシャ装置301は、プッシャ用レール307における搬送経路102の上流側の部分の近傍に、減速用センサ313と、定位置用センサ314と、オーバーラン検出用センサ315とを、下流側から順に並べて備える。これらのセンサは、プッシャ体306に取付られた検知板(図示せず)をセンシングすると電気信号を出力する。これらのセンサは、プッシャ体306の位置を検出するために用いられる。
【0029】
[第2リフト装置]
図8は、第2リフト装置401の側面図である。図9は、図8のC矢視図である。第2リフト装置401は、上部回転軸402と、下部回転軸403と、これらに掛け渡された昇降コンベア404とを、下流側コンベア装置152(図10及び図11参照)を挟んで一対備える。そして、昇降コンベア404には、所定間隔ごとに、下降用フリッパ405が設けられている。下降用フリッパ405は、第1リフト装置201に備わる上昇用フリッパ205と同様、断面L字形状をなす長尺部材である。上部回転軸402は、ギア列407を介して伝達されるモータ406の駆動力によって、図9に示す矢印R2の方向に回転する。これにより、下降用フリッパ405は、プッシャ装置301によって上流側コンベア装置151から移されたトレイTRの両側部を支持して、このトレイTRを下流側コンベア装置152に載置させる。
【0030】
[下流側コンベア装置]
図10は、下流側コンベア装置152の側面図である。下流側コンベア装置152は、モータ153と、駆動ローラ154と、従動ローラ155と、ベルト156と、コンベア用レール156aと、透過型センサ161とを備える。
【0031】
下流側コンベア装置152における駆動ローラ154、従動ローラ155、ベルト156及びコンベア用レール156aの構成は、上流側コンベア装置151に備わるものと同じであるため、説明を省略する。下流側コンベア装置152に備わるベルト156の上には、プッシャ装置301によって第2リフト装置401に備わる下降用フリッパ405に移され、二枚、二枚、二枚、一枚とグループ分けされたトレイTRが、図10に示すように載置される。透過型センサ161の発光部161aと受光部161bとは、このようにベルト156の上に載置されたトレイTRを挟む位置に配置される。トレイTRが一枚でもベルト156に載置されていると、透過型センサ161は、そのトレイTRをセンシングして電気信号を出力する。
【0032】
また、プッシャ装置301は、下流端の近傍に、トレイTRを整流させるガイド部材162も備える。そしてプッシャ装置301では、モータ153が駆動すると駆動ローラ154が回転し、ベルト156上のトレイTRが搬送経路102の下流側に搬送され、ガイド部材162によって整流された後に、下流側既設コンベア装置103D(図1参照)に受け渡される。
【0033】
[電気的構成及び各部の動き]
図11は、多目的バーティカル装置101の電気的構成を示すブロック図である。多目的バーティカル装置101に備わるシーケンス回路501は、上流側コンベア装置151に備わるモータ153、三つの第1センサ160a、二つの第2センサ160b、三つの第3センサ160c、及び、三つの変動ストッパ駆動部159のそれぞれに接続する。また、シーケンス回路501は、第1リフト装置201に備わるモータ206に接続する。また、シーケンス回路501は、プッシャ装置301に備わるモータ302、リミットスイッチ312、減速用センサ313、定位置用センサ314及びオーバーラン検出用センサ315のそれぞれに接続する。また、シーケンス回路501は、第2リフト装置401に備わるモータ406に接続する。また、シーケンス回路501は、下流側コンベア装置152に備わるモータ153及び透過型センサ161のそれぞれに接続する。
【0034】
図12ないし図14は、多目的バーティカル装置101の各部の動きを示すフローチャートである。多目的バーティカル装置101において、上流側コンベア装置151と下流側コンベア装置152とは、ベルト156を下流側に搬送し続けている。そして、上流側コンベア装置151には、上流側既設コンベア装置103Uによって搬送されるトレイTRが載置される。このとき、いずれの変動ストッパ158(第1変動ストッパ158a、第2変動ストッパ158b、第3変動ストッパ158c)も、トレイTRを干渉しない下方位置に位置付けられている。
【0035】
まず、図12を参照する。シーケンス回路501は、終端ストッパ157に近い第1センサ160a〜第3センサ160cからの電気信号によって、終端ストッパ157が二枚のトレイTRを停止していることを判定した場合(ステップS101のY)、第1変動ストッパ158aを上方に動かすよう変動ストッパ駆動部159を駆動して、ベルト156上を搬送されるトレイTRに干渉する上方位置に位置付ける(ステップS102)。より詳細には、シーケンス回路501は、終端ストッパ157よりも上流側でこの終端ストッパ157に近い第1センサ160a及び第2センサ160bのいずれもがトレイTRをセンシングした状態で所定時間以上経過し、かつ、第3センサ160cがトレイTRをセンシングしていない状態で所定時間以上経過した場合に、終端ストッパ157に阻止されて二枚のトレイTRが停止していると判定する。ここで、第1センサ160a〜第3センサ160cのいずれもがトレイTRをセンシングした場合、シーケンス回路501は、エラー処理として、多目的バーティカル装置101の各部の全てを停止する。
【0036】
続いて、シーケンス回路501は、第1変動ストッパ158aに近く且つこれよりも上流側に位置する第1センサ160a〜第3センサ160cからの電気信号によって、第1変動ストッパ158aが二枚のトレイTRを停止していることを判定した場合(ステップS103のY)、第2変動ストッパ158bを上方に動かすよう変動ストッパ駆動部159を駆動して、ベルト156上を搬送されるトレイTRに干渉する上方位置に位置付ける(ステップS104)。
【0037】
続いて、シーケンス回路501は、第2変動ストッパ158bに近く且つこれよりも上流側に位置する第1センサ160a〜第3センサ160cからの電気信号によって、第2変動ストッパ158bが二枚のトレイTRを停止していることを判定した場合(ステップS105のY)、第3変動ストッパ158cを上方に動かすよう変動ストッパ駆動部159を駆動して、ベルト156上を搬送されるトレイTRに干渉する上方位置に位置付ける(ステップS106)。
【0038】
続いて、シーケンス回路501は、第3変動ストッパ158cに近く且つこれよりも上流側に位置する第1センサ160a及び第3センサ160cからの電気信号によって、第3変動ストッパ158cが二枚のトレイTRを停止していることを判定した場合(ステップS107のY)、次のステップS108に処理を進める。
【0039】
シーケンス回路501は、ステップS108において、第1リフト装置201の最上段にトレイTRが存在するか否かを判定する(ステップS108)。この処理において、シーケンス回路501は、プッシャ装置301においてプッシャ体306が上流側に位置付けられた場合に、第1リフト装置201の最上段にトレイTRが存在しないと判定する(図13のステップS204参照)。
【0040】
ステップS108において、第1リフト装置201の最上段にトレイTRが存在しないと判定した場合(ステップS108のN)、シーケンス回路501は、第1リフト装置201を駆動して上昇用フリッパ205を上方に一段動かし(ステップS109)、全ての変動ストッパ158を下方に動かして(ステップS110)、処理をステップS101に戻す。なお、ステップS108において、シーケンス回路501は、第1リフト装置201の最上段にトレイTRが存在すると判定した場合(ステップS108のY)、処理を待機するとともに、上流側コンベア装置151のモータ153を停止し、その後において第1リフト装置201の最上段にトレイTRが存在しないと判定した場合に上流側コンベア装置151のモータ153の駆動を再開する。
【0041】
図13を参照する。シーケンス回路501は、図12に示すステップS109の処理によって第1リフト装置201を駆動させた後に(ステップS201のY)、モータ302を駆動して、プッシャ体306を下流側へ移動する。ステップS109の処理により、第1リフト装置201の最上段に位置付けられた上昇用フリッパ205には、既にトレイTRが載置されている。そして、ステップS202の処理によって、プッシャ体306はこれらのトレイTRを下流側に押し出し、第2リフト装置401の最上段に位置する下降用フリッパ405に移し変える。
【0042】
続いて、シーケンス回路501は、第2リフト装置401が駆動した後に(ステップS203のY、図14のステップS302参照)、モータ302を駆動してプッシャ体306を上流側に動かしプッシャ体306を第1リフト装置201の上方に復帰させる(ステップS204)。ステップS204の処理後、シーケンス回路501は、処理をステップS201に戻す。
【0043】
図14を参照する。シーケンス回路501は、下流側コンベア装置152に備わる透過型センサ161によって、下流側コンベア装置152のベルト156上にトレイTRが一つも存在しないことを判定した場合(ステップS301のN)、第2リフト装置401を駆動して下降用フリッパ405を下方に一段動かす(ステップS302)。ステップS302により、第2リフト装置401の下降用フリッパ405上にあるトレイTRは、下流側コンベア装置152のベルト156の上に載置される。ここで、下流側コンベア装置152のモータ153は駆動し続けているので、ベルト156上に載置されたトレイTRは下流側に搬送され、下流側既設コンベア装置103Dに受け渡される。
【0044】
ここで、第1リフト装置201において不具合が発生してトレイTRが突き上げられリミットスイッチ312に接触した場合、リミットスイッチ312はエラー信号を出力する。シーケンス回路501は、リミットスイッチ312からのエラー電気を受けると、エラー処理として、多目的バーティカル装置101の各部の全てを停止する。
【0045】
また、シーケンス回路501は、減速用センサ313からの電気信号を受けた場合、モータ302の駆動を遅くする。その後、定位置用センサ314からの電気信号を受けた場合、シーケンス回路501はモータ302の駆動を停止する。ここで、プッシャ体306が止まらずに本来の停止位置に対して上流側にずれた位置に停止した場合、オーバーラン検出用センサ315は、プッシャ体306に取付られた検知板(図示せず)をセンシングして電気信号を出力する。そして、シーケンス回路501がオーバーラン検出用センサ315からの電気信号を受けると、エラー処理として、多目的バーティカル装置101の各部の全てを停止する。
【0046】
本実施の形態の多目的バーティカル装置101は、上記のように各部が駆動して、上流側既設コンベア装置103Uによって搬送されてきたトレイTRを、第1リフト装置201によって上方に搬送する。そして、第1リフト装置201の最上段に位置付けられたトレイTRは、プッシャ装置301によって第2リフト装置401に移し変えられる。そして、第2リフト装置401は、移しかえられたトレイTRを下流側コンベア装置152まで下ろし、このトレイTRを下流側コンベア装置152から下流側既設コンベア装置103Dに受け渡す。このようにして、トレイTRに載置された食材FI(図1参照)は、搬送経路102から外れた経路を辿って時間をかけて迂回し、上流側既設コンベア装置103Uから下流側既設コンベア装置103Dまで移動する。
【0047】
本実施の形態の多目的バーティカル装置101は、既設のコンベアの一部を上流側コンベア装置151及び下流側コンベア装置152に置き換えて、これらを取り囲むように第1リフト装置201と第2リフト装置401とを設置し、さらにこれらの装置の上方にプッシャ装置301を設置することで構成される。つまり、本実施の形態の多目的バーティカル装置101は、工場内の縦方向の空間を活かして設置できるものである。このため、既設のコンベア(上流側既設コンベア装置103U、及び、下流側既設コンベア装置103D)による食材FI(例えば、パン生地)の搬送経路102を大幅に変更することなく、コンベアで搬送される食材FIを発酵又は冷却させる工程を組み込むことができる。例えば、本実施の形態の多目的バーティカル装置101を、発酵室を形成する装置内に配置することにより、加工中の食材FIを所望の状態に発酵させることができる。また、別の一例として、本実施の形態の多目的バーティカル装置101を、冷却室内に配置することにより、加工中の食材FIを所望の状態に冷却させることができる。
【0048】
また、本実施の形態の多目的バーティカル装置101は、特許文献1に記載された技術のような大掛かりなものではなく、既存の食品製造ラインに沿って工場内に設置できるものである。加えて、本実施の形態の多目的バーティカル装置101に備わる各部の中で、特許文献1に記載された技術のように機器の全体が動くものはない。このため、多目的バーティカル装置101を工場内に導入した場合、消費されるエネルギーを抑えることができる。
【0049】
また、本実施の形態の多目的バーティカル装置101では、上流側コンベア装置151において複数のトレイTRがグループ分けされて位置付けられ、そのまま第1リフト装置201によって上方に搬送された後に、プッシャ装置301によってグループ分けされた状態で第2リフト装置401に移し変えられる。このため、プッシャ装置301によってトレイTRが押される際に最も下流側(先頭側)に位置するトレイTRにかかる力が小さくなって、多目的バーティカル装置101からトレイTRが脱落するようなことがない。
【符号の説明】
【0050】
101 多目的バーティカル装置
151 上流側コンベア装置(第1コンベア装置)
152 下流側コンベア装置(第2コンベア装置)
201 第1リフト装置
301 プッシャ装置
401 第2リフト装置
TR トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイを載置する第1コンベア装置と、
前記第1のコンベア装置によって搬送されるトレイを保持して上方に搬送する第1リフト装置と、
トレイを載置する第2コンベア装置と、
前記第1リフト装置に隣接して配置され、トレイを保持して下方に搬送し前記第2コンベアに載置する第2リフト装置と、
前記第1コンベア装置よりも上方で、前記第1リフト装置に保持されたトレイを前記第2リフト装置に押し出して移し変えるプッシャ装置と、
を備える多目的バーティカル装置。
【請求項2】
前記第1コンベア装置は、載置した複数の前記トレイを離間させた状態で阻止し、
前記第1リフト装置は、離間している各前記トレイを離間させたまま上方に搬送し、
前記プッシャ装置は、前記トレイを離間させたまま前記第2リフト装置に移し変える、
請求項1記載の多目的バーティカル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−102181(P2011−102181A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258336(P2009−258336)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000177298)三鈴工機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】