多相三角波発振回路及びそれを用いたスイッチングレギュレータ
【課題】 多相の三角波を設定通りの波形、波高値および位相関係で発振出力すること。
【解決手段】 この多相三角波発振回路は、互いに逆位相の2相三角波A,Bを発生するための2つの三角波発生回路10A,10Bと、、両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの中点電位を常時一定値に固定するための中点電位固定部20と、両三角波発生回路10A,10Bにおける出力電圧発生モード(アップスロープ波形モード/ダウンスロープ波形モード)を予め設定した基準の波高値レベルで瞬時に切り換えるためのモード切換部30とを有している。
【解決手段】 この多相三角波発振回路は、互いに逆位相の2相三角波A,Bを発生するための2つの三角波発生回路10A,10Bと、、両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの中点電位を常時一定値に固定するための中点電位固定部20と、両三角波発生回路10A,10Bにおける出力電圧発生モード(アップスロープ波形モード/ダウンスロープ波形モード)を予め設定した基準の波高値レベルで瞬時に切り換えるためのモード切換部30とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三角波を発振出力する三角波発振回路に係わり、特に位相の異なる複数の三角波を同時に発生する多相三角波発振回路およびそれを用いるスイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
三角波は、直線的な上がり下がりの電圧変化を周期的に繰り返す周波数信号であり、典型的にはパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)で用いられている。たとえば、PWM方式のフィードバック制御は、演算増幅器からなるコンパレータの一対の入力端子に三角波および帰還信号(PWM変調入力)をそれぞれ入力して、両入力信号の電圧レベルを比較し、三角波のレベルが帰還信号のレベルよりも高い区間では第1の論理レベル(たとえばHレベル)、三角波のレベルが帰還信号のレベルよりも低い区間では第2の論理レベル(たとえばLレベル)となる変調バルス幅のパルス列信号を生成し、このパルス列信号に基づいてスイッチング素子をスイッチング制御するようにしている。
【0003】
1つのシステム内の複数系統でPWM制御が同時に行われるときは、複数の三角波が用いられる。その場合、それら複数の三角波の位相が同じではなく適当にずれている方が都合のよいアプリケーションもある。たとえば、多チャンネルのスイッチングレギュレータを搭載するICでは、消費電力の分散化や入力ラインのノイズ低減化をはかるために、同一チップ上の複数のスイッチングレギュレータに位相をずらしてスイッチング動作を行わせるマルチフェーズ方式が採られており、多相の三角波を必要とする。
【0004】
図7に、PWM制御に用いられている従来の多相三角波発振回路の回路構成を示す。この多相三角波発振回路は、2相型であり、基準三角波発振回路100と差動増幅器102と出力段回路104,106とを有する。
【0005】
基準三角波発振回路100は、たとえば方形波発振回路と積分回路とからなり、ほぼ理想に近い一定周波数の基準三角波Sを発振出力する。この基準三角波発振回路100には、基準三角波Sの上限波高値および下限波高値に相当する基準電圧VRH,VRLが電源回路104より供給される。
【0006】
差動増幅器102は、差動接続された一対のNMOSトランジスタ108,110と、両トランジスタのソースに共通接続された定電流源112と、両トランジスタのドレインと電源電圧端子VDDとの間にそれぞれ並列に接続された負荷抵抗114,116および時定数コンデンサ118,120とからなり、低スルーレートの電圧フォロアとして構成されている。一方のNMOSトランジスタ108のゲート端子には基準三角波発振回路100からの基準三角波Sが入力され、他方のNMOSトランジスタ110のゲートには基準三角波Sの中心レベルに等しい基準電圧VRNが入力される。NMOSトランジスタ108のドレインには基準三角波Sよりも位相が少し遅れたほぼ同相または正相の三角波Aが得られ、MOSトランジスタ110のドレインには正相三角波Aとは逆相の三角波Bが得られる。出力段回路104,106は、バッファ回路または駆動回路からなり、差動増幅器102からの2相三角波A,Bをそれぞれ対応するPWMコンパレータ(図示せず)に向けて駆動出力する。
【0007】
図8に、基準三角波Sと2相三角波A,Bとの理想的な関係および2相三角波A,B同士の理想的な関係を示す。図中、基準三角波Sの上限波高値VRH,下限波高値VRLと多相三角波A,Bの上限波高値VGH,下限波高値VGLとの間には幾らかのオフセットδVがある。このオフセットδVは、NMOSトランジスタ108,110のしきい値電圧に因るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の多相三角波発振回路は、基準三角波発振回路100により基準三角波Sを生成し、差動増幅器102で基準三角波Sから正相の三角波Aと逆相の三角波Bとを同時に生成し、出力段回路104,106で両三角波A,Bを駆動出力するようにしており、いわばオープンループ型で2相の三角波A,Bを発振出力している。このようなオープンループ型は、回路素子の特性のばらつきによって多相三角波の精度が大きく左右されるという問題がある。
【0009】
特に、図7の2相三角波発振回路では、差動増幅器102における左右の同一機能素子の間で、つまり両NMOSトランジスタ108,110、両抵抗114,116および両コンデンサ118,120の間でそれぞれ素子特性を同一に設定している。しかし、そのような同一機能素子の間で素子特性にばらつきがあると、2相三角波A,Bの波形や位相のバランスがくずれる。また、同一機能素子間で特性が同一であっても、元の仕様特性からずれていたり他機能素子との関係で電気的特性に誤差があれば、何らかの形で三角波の精度が下がる。
【0010】
実際、図7の2相三角波発振回路においては、量産品の中に、たとえば図9Aおよび図9Bに示すように、多相三角波A,Bの波形精度、位相関係、波形レベル等に大きなばらつきがみられる。図9Aのケースは全体的に理想(図8)に近いが、それでも両三角波A,Bのピークがなまっている。図9Bのケースは両三角波A,Bのピークが一層なまっているだけでなく波高値も理想(図8)から相当ずれている。
【0011】
このように多相三角波発振回路より各PWMコンパレータに供給される三角波の精度が良くないと、当然にPWM変調結果に影響が出る。たとえば、上記のように実際の三角波A(三角波Bも同様)のピークがなまっていると、図10に示すように、実際のPWM変調結果(PWMコンパレータ出力)も理想から外れたものとなる。これは、PWM制御の精度を下げる原因となる。
【0012】
また、PWMコンパレータでは、PWM変調入力の電圧レベルが三角波の波高値を振り切った(越えた)後にあまりにもかけ離れたレベルまでいかないように、電圧クランプ(またはリミッタ)機能を設けることもある。その場合、クランプレベルは理想波高値を基準として設定されるが、実際の三角波の波高値に誤差があると、クランプ機能にも狂いが生じる。たとえば、実際の波高値がクランプレベルから程遠くなるほどに絶対値の小さい方にずれていると、クランプの働くタイミングが遅れてしまい、結果としてPWM制御に支障が出る。たとえば、スイッチングレギュレータにおいては、出力にリップルが生じる等の支障が出る。あるいは、実際の波高値がクランプレベルを越えるほど絶対値の大きい方にずれている場合は、PWM変調入力が波高値の内側でクランプされることになり、波高値付近(デューティ0%付近またはデューティ100%付近)では所望のPWM変調結果が得られなくなる。
【0013】
PWM制御を行う一般のシステムにおいて、PWM変調という信号処理は、PWM変調入力の微小変化をΔe、PWM変調結果の微小変化をΔmとするとΔm/Δeの増幅段とみなせる。したがって、三角波の波高値またはピーク・ツー・ピーク値が理想値または設定値からずれていたり、波形(特にピーク)がなまっていると、PWM変調の小信号特性が設計通りにいかなくなり、ゲインが高すぎて異常発振したり、ゲインが低すぎて精度不足を招くおそれがある。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、多相の三角波を設定通りの波形、波高値および位相関係で発振出力できるようにした多相三角波発振回路を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の別の目的は、回路素子の特性にばらつきがあっても所期の多相の三角波を安定確実に発振出力できるようにした多相三角波発振回路を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、高性能で信頼性の高いスイッチングレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の多相三角波発振回路は、各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生するN個(Nは2以上の整数)の三角波発生回路と、前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を表す中点電位を検出する中点電位検出回路と、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記N個の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一つを制御する第1の制御回路と、前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧を監視し、各々の出力電圧が基準の波高値に到達した時に当該三角波発生回路の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ、またはダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換える第2の制御回路とを有する。
【0018】
上記第1の多相三角波発振回路では、第1の制御回路のフィードバック機能と第2の制御回路のモード切換機能とにより、N個の三角波発生回路がそれぞれの出力電圧を互いの均衡関係の中で中点電位を基準値に一致させながら一定の波高値と所定の位相差でアップスロープ波形のモードとダウンスロープ波形のモードとを交互に繰り返すことにより、N相の三角波を発振出力する。
【0019】
本発明の好適な一態様によれば、中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有するN個の抵抗素子を有し、それらN個の抵抗素子の一方の端子を共通接続するとともに、他方の端子をN個の三角波発生回路の出力端子にそれぞれ接続し、共通接続のノードに中点電位が得られる抵抗回路を有する。
【0020】
また、好適な一態様によれば、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするようにN個の三角波発生回路の少なくとも一つの出力電圧のスロープ特性を可変制御するスロープ制御回路を有する。
【0021】
また、好適な一態様においては、各々の三角波発生回路が、当該三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続されたコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するためにコンデンサを充電する充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するためにコンデンサを放電させる放電回路とを有する。
【0022】
また、好適な一態様によれば、第2の制御回路が、各々の三角波発生回路について、アップスロープ波形の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時にコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、ダウンスロープ波形の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時にコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える。
【0023】
本発明の第2の多相三角波発振回路は、各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生する第1および第2の三角波発生回路と、前記第1および第2の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一方を制御する第1の制御回路と、前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧を監視し、どちらかの出力電圧が基準の波高値に到達した時に前記第1および第2の三角波発生回路の一方の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードに切り換えると同時に他方の出力電圧発生モードをダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードに切り換える第2の制御回路とを有する。
【0024】
上記第2の多相三角波発振回路では、第1の制御回路のフィードバック機能と第2の制御回路のモード切換機能とにより、第1のおよび第2の三角波発生回路がそれぞれの出力電圧を互いの均衡関係の中で中点電位を基準値に一致させながら一定の波高値で、しかも逆相でアップスロープ波形のモードとダウンスロープ波形のモードとを交互に繰り返すことにより、2相の三角波を発振出力する。
【0025】
本発明の好適な一態様によれば、中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有する2個の抵抗素子を有し、それら2個の抵抗素子のそれぞれの一方の端子を共通接続するとともに、それぞれの他方の端子を第1および第2の三角波発生回路の出力端子に接続し、共通接続のノードに中点電位が得られる抵抗分圧回路を有する。
【0026】
また、好適な一態様によれば、第1の三角波発生回路が、第1の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために第1のコンデンサを充電する第1の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために第1のコンデンサを放電させる第1の放電回路とを有し、第2の三角波発生回路が、第2の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第2のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために第2のコンデンサを充電する第2の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために第2のコンデンサを放電させる第2の放電回路とを有する。
【0027】
また、好適な一態様によれば、第1および第2の充電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する。第1の充電回路と第2の充電回路とが1つの定電流回路を共有することもできる。また、定電流回路が可変のバイアスに応じて動作するようにしてもよい。この場合、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように定電流回路に対するバイアスを可変制御してよい。
【0028】
また、好適な一態様によれば、第1および第2の放電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する。第1の放電回路と前記第2の放電回路とが1つの前記定電流回路を共有することもできる。また、定電流回路が可変のバイアスに応じて動作するようにしてもよい。この場合、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように定電流回路に対するバイアスを可変制御してよい。
【0029】
また、好適な一態様においては、第2の制御回路が、第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、第2の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換える。
【0030】
あるいは、別の好適な一態様として、第2の制御回路が、第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換え、第2の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える。
【0031】
本発明のスイッチングレギュレータは、電圧入力端子と、電圧出力端子と、上記電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、上記帰還信号と上記三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、上記制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有するスイッチングレギュレータであって、上記三角波信号生成回路を本発明の多相三角波発振回路とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の多相三角波発振回路によれば、上記のような構成と作用により、多相の三角波を設定通りの波形、波高値および位相関係で発振出力することができる。また、回路素子の特性にばらつきがあっても所期の多相三角波を安定確実に発振出力することができる。
【0033】
本発明のスイッチングレギュレータにおいては、本発明の多相三角波発振回路を有することにより、高精度なPWM制御により高性能で信頼性の高いスイッチング動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図1〜図6を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0035】
図1に、本発明の一実施形態における多相三角波発振回路の構成を示す。この多相三角波発振回路は、2相型であり、互いに逆位相の2相三角波A,Bを発生するための2つの三角波発生回路10A,10Bを有している。
【0036】
第1の三角波発生回路10Aは、正相の三角波Aを出力する第1のノードNAとグランド電位との間に接続された第1のコンデンサ12Aと、電源電圧端子VDDとノードNAとの間に接続されたソース用または充電用の定電流回路14Aと、ノードNAとグランド電位との間に接続されたシンク用または放電用の定電流回路16Aとを有する。ソース定電流回路14Aは、ゲート端子が後述する中点電位固定部20の制御回路24の出力端子に接続されているPMOSトランジスタからなり、可変のバイアスでソース(充電)電流を可変できるようになっている。シンク定電流回路16Aはバイアス一定で固定値のシンク(放電)電流を流すようになっている。シンク定電流回路16Aの電流吸い込み容量はソース定電流回路14Aの電流供給容量よりも大きく、たとえば約2倍に選ばれている。
【0037】
第1の三角波発生回路10Aにおいて、ノードNAとシンク定電流回路16Aとの間にはON/OFFスイッチ18が挿入されている。このスイッチ18がオン状態からオフ状態に切り換わると、ソース定電流回路14Aからのソース電流が全てコンデンサ12Aに流れ込み、コンデンサ12Aにおいて定電流の充電動作が行われる。この充電動作中は、ノードNAの電位がほぼ一定の勾配で直線的に上がって、アップスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0038】
スイッチ18がオフ状態からオン状態に切り換わると、コンデンサ12Aにシンク定電流回路16Aが接続され、コンデンサ12Aにおいて定電流の放電動作が行われる。ここで、シンク定電流回路16Aの電流吸い込み能力がソース定電流回路14Aの電流供給能力よりも勝るため、ソース定電流回路14Aからのソース電流はコンデンサ12Aからの放電電流と一緒にシンク定電流回路16Aに吸い込まれるようになっている。この放電動作中は、ノードNAの電位がほぼ一定の勾配で直線的に下がって、ダウンスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0039】
スイッチ18は一定周期で交互にオン・オフするようになっており、そのスイッチングによってコンデンサ12Aの充電動作と放電動作が交互に繰り返され、ノードNAよりアップスロープ波形とダウンスロープ波形とを交互に繰り返す三角波Aが出力されるようになっている。
【0040】
第2の三角波発生回路10Bは、逆相の三角波Bを出力する第2のノードNBとグランド電位との間に接続された第2のコンデンサ12Bと、電源電圧端子VDDとノードNBとの間に接続されたソース用または充電用の定電流回路14Bと、ノードNBとグランド電位との間に接続されたシンク用または放電用の定電流回路16Bとを有する。ソース定電流回路14Bは、ゲート端子が中点電位固定部20の制御回路24の出力端子に接続されているPMOSトランジスタからなり、可変のバイアスでソース(充電)電流を可変できるようになっている。シンク定電流回路16Bはバイアス一定で一定のシンク(放電)電流を流すようになっている。シンク定電流回路16Bの電流吸い込み容量はソース型定電流回路14Bの電流供給容量よりも大きく、たとえば約2倍に選ばれている。
【0041】
第2の三角波発生回路10Bにおいて、ノードNBとシンク定電流回路16Bとの間にはON/OFFスイッチ18Bが挿入されている。このスイッチ18Bがオン状態からオフ状態に切り換わると、ソース定電流回路14Bからのソース電流が全てコンデンサ12Bに流れ込み、コンデンサ12Bにおいて定電流の充電動作が行われる。この充電動作中は、ノードNBの電位がほぼ一定の勾配で直線的に上がって、アップスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0042】
スイッチ18Bがオフ状態からオン状態に切り換わると、コンデンサ12Bにシンク定電流回路16Bが接続され、コンデンサ12Bにおいて放電動作が行われる。ここで、シンク定電流回路16Bの電流吸い込み能力がソース型定電流回路16Bの電流供給能力よりも勝るため、ソース定電流回路14Bからのソース電流はコンデンサ12Bからの放電電流と一緒にシンク型定電流回路16Bに吸い込まれるようになっている。この放電動作中は、ノードNBの電位がほぼ一定の勾配で直線的に下がって、ダウンスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0043】
スイッチ18Bは一定周期で交互にオン・オフするようになっており、そのスイッチングによってコンデンサ12Bの充電動作と放電動作が交互に繰り返され、ノードNBよりアップスロープ波形とダウンスロープ波形とを交互に繰り返す三角波Bが出力されるようになっている。
【0044】
また、第1の三角波発生回路10Aにおけるスイッチ18Aと第2の三角波発生回路10Bにおけるスイッチ18Bとの間では、両者が互いに逆相でオン・オフする関係になっている。すなわち、スイッチ18Aがオン状態になっている期間中はスイッチ18Bがオフ状態になり、スイッチ18Bがオン状態になっている期間中はスイッチ18Aがオフ状態になる。これにより、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの充電動作(アップスロープ波形出力)と第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの放電動作(ダウンスロープ波形出力)とが同時または並行して行われ、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの放電動作(ダウンスロープ波形出力)と第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの充電動作(アップスロープ波形出力)とが同時または並行して行われる。こうして、第1の三角波発生回路10AのノードNAより正相の三角波Aが発振出力される同時に、第2の三角波発生回路10BのノードNBより逆相の三角波Bが発振出力されるようになっている。
【0045】
この2相三角波発振回路において、2相三角波A,Bを一般的な二等辺三角形の波形で発振出力する場合は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにおいてそれぞれのコンデンサ12A,12Bのキャパシタンスを同一の値に設定し、かつそれぞれのシンク定電流回路16A,16Bの電流引き込み容量も同一の値に設定してよい。
【0046】
この2相三角波発振回路は、上記のような一対の三角波発生回路10A,10Bに加えて、両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの中点電位を常時一定値に固定するための中点電位固定部20と、両三角波発生回路10A,10Bにおける出力電圧発生モード(アップスロープ波形モード/ダウンスロープ波形モード)を予め設定した基準の波高値レベルで瞬時に切り換えるためのモード切換部30とを有している。
【0047】
中点電位固定部20は、第1のノードNAと第2のノードNBとの間に接続された中点電位検出回路22と、この中点電位検出回路22により検出される中点電位VNが予め設定した基準中点電位VRNに一致するように両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの少なくとも一方を制御する中点電位制御回路24とを有している。
【0048】
中点電位検出回路22は、両ノードNA,NBの間に抵抗値の等しい2つの抵抗26A,26Bを直列接続してなる抵抗分圧回路からなり、両抵抗26A,26Bの接続点のノードNnを中点電位検出端子としている。この中点電位検出回路22においては、ノードNAの電位(三角波Aの電圧レベル)とノードNBの電位(三角波Bの電圧レベル)が抵抗値の等しい2つの抵抗26A,26Bによって分圧されることにより、中点ノードNnに両三角波A,Bの電圧レベルの相加平均値(A+B)/2を表す中点電位VNが得られる。
【0049】
中点電位制御回路24は、反転増幅器として動作する演算増幅器からなり、その反転入力端子に中点電位検出回路22からの中点電位VNを入力する。中点電位制御回路(演算増幅器)24の非反転入力端子には、基準電圧発生回路28からの予め設定された基準の中点電位VRNが入力される。上記したように、中点電位制御回路(演算増幅器)24の出力端子は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにおけるソース定電流回路(PMOSトランジスタ)14A,14Bの制御端子に接続されている。
【0050】
かかる中点電位制御回路(演算増幅器)24は、入力側でイマジナリ・ショートが形成されるように増幅動作を行う。つまり、中点電位検出回路22で検出される実際の中点電位VNを基準の中点電位VRNに一致させるように、中点電位制御回路24の出力電圧がバイアス電圧として両三角波発生回路10A,10Bのソース型定電流回路(PMOSトランジスタ)14A,14Bに作用する。
【0051】
両ソース型定電流回路14A,14Bは、上記したようにそれぞれの三角波発生回路10A,10Bのモードに応じて機能する。すなわち、第1の三角波発生回路10Aがアップスロープ波形モード中のときは、ソース定電流回路14Aがコンデンサ12Aに充電電流を供給し、コンデンサ12Aの充電電圧が一定の勾配で直線的に上昇する。ここで、コンデンサ12Aにおける充電特性(三角波Aのアップスロープ特性)がソース定電流回路14Aを介して中点電位制御回路24からのフィードバック制御を受けることになる。一方、この時、第2の三角波発生回路10Bの方はダウンスロープ波形モードになっており、コンデンサ12Bの放電特性(三角波Bのダウンスロープ特性)が一定のシンク電流ないし放電電流を流すシンク定電流回路16Bによって一定に管理される。
【0052】
第1の三角波発生回路10Aがダウンスロープ波形モードで第2の三角波発生回路10Bがアップスロープ波形モードのときは、両者の状態または関係が上記と反対になるだけで、同様の動作が行われる。すなわち、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの放電特性(三角波Aのダウンスロープ特性)がシンク定電流回路16Aによって一定に管理され、第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの充電特性(三角波Bのアップスロープ特性)がソース定電流回路14Bを介して中点電位制御回路24からのフィードバック制御を受けることになる。
【0053】
このように、この実施形態では、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにより発生される2相三角波A,Bのうち、ダウンスロープ波形モードになっている方のダウンスロープ特性を一定バイアスのシンク定電流回路16A(16B)によって一定の勾配に管理する。そして、アップスロープ波形モードになっている方のアップスロープ特性を可変バイアスのソース定電流回路14A(14B)を介して中点電位固定部20(中点電位検出回路22、中点電位制御回路24)が両三角波A,Bの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するようにフィードバック制御で管理する。これにより、図2の(a)に示すように、2相三角波A,Bの電圧レベルは基準の中点電位VRNを中心として常に上下対照のスロープで変化することになり、両者は互いに上下反転の逆相関係に維持される。
【0054】
モード切換部30は、切換スイッチ32、コンパレータ34、切換制御回路36および反転回路38を有している。切換スイッチ32は、一方の入力端子が第1のノードNAに接続されるとともに、他方の入力端子が第2のノードNBに接続されており、出力端子がコンパレータ34の一方の入力端子に接続され、切換制御回路36の出力信号(切換制御信号)CSに応じて切り換わるようになっている。ここで、切換制御回路36より出力される切換制御信号CSは、第1の三角波発生回路10AのON/OFFスイッチ18Aにも与えられ、第2の三角波発生回路10BのON/OFFスイッチ18Bにも反転回路38を介して与えられる。すなわち、切換制御信号CSがHレベルのときはスイッチ18Aがオンしてスイッチ18Bがオフし、切換制御信号CSがLレベルのときはスイッチ18Aがオフしてスイッチ18Bがオンするようになっている。
【0055】
切換スイッチ32は、ON/OFFスイッチ18Aがオンしている間(第1の三角波発生回路10Aがダウンスロープ波形モードになっている間)はノードNA側に切り換わり、三角波Aのダウンスロープ波形をコンパレータ34に転送する。また、ON/OFFスイッチ18Bがオンしている間(第2の三角波発生回路10Bがダウンスロープ波形モードになっている間)はノードNB側に切り換わり、三角波Bのダウンスロープ波形をコンパレータ34に転送するようになっている。図2の(b)に、切換スイッチ32の出力端子に得られる監視電圧(ダウンスロープ波形)を示す。
【0056】
コンパレータ34は、基準電圧発生回路40より他方の入力端子に基準の下限波高値電位VRLを入力し、両入力A(またはB),VRLの電圧レベルの大小を比較して、その比較結果を2値出力する。たとえば、A(またはB)>VRLのときはLレベルを出力し、A(またはB)≦VRLのときにHレベルを出力する。したがって、図2の(b),(c)に示すように、第1の三角波発生回路10Aにおいてダウンスロープ波形モードの三角波Aが基準の下限波高値電位VRLまで下がった時に、コンパレータ34の出力がそれまでのLレベルからHレベルに変わる。また、第2の三角波発生回路10Bにおいてダウンスロープ波形モードの三角波Bが基準の下限波高値電位VRLまで下がった時も、その時点でコンパレータ34の出力がそれまでのLレベルからHレベルに変わる。
【0057】
切換制御回路36は、コンパレータ34の出力がLレベルからHレベルに変わると、図2の(c),(d)に示すように、これに応答して切換制御信号CSの論理レベルを反転させる。切換制御信号CSがLレベルからHレベルに反転すると、第1の三角波発生回路10Aではスイッチ18Aがオンしてそれまでのアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ切り換わり、第2の三角波発生回路10Bではスイッチ18Bがオフしてそれまでのダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換わる。切換スイッチ32はそれまで第2のノードNBに切り換わっていたのが今度は第1のノードNAに切り換わり、コンパレータ34の出力はHレベルからLレベルに戻る。
【0058】
また、切換制御信号CSがHレベルからLレベルに反転すると、第1の三角波発生回路10Aではスイッチ18Aがオフしてそれまでのダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換わり、第2の三角波発生回路10Bではスイッチ18Bがオフしてそれまでのアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ切り換わる。切換スイッチ32はそれまで第1のノードNAに切り換わっていたのが今度は第2のノードNBに切り換わり、コンパレータ34の出力はHレベルからLレベルに戻る。
【0059】
このように、モード切換部30は、切換スイッチ32とコンパレータ34により、2相三角波A,Bのうちダウンスロープ中の方の電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の下限波高値VRLに到達したタイミングを検出するようにしている。ここで、重要なことは、この実施形態では、上記のように中点電位固定部20の働きにより2相三角波A,Bの電圧レベルは基準の中点電位VRNを中心として常に上下対照の関係を維持しており、一方の電圧レベルが基準の下限波高値VRLに到達するタイミングと他方の電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達するタイミングは常に一致するということである。なお、VRH−VRN=VRN−VRLという関係がある。
【0060】
したがって、モード切換部30が2相三角波A,Bのうちダウンスロープ中の方の電圧レベルを直接監視することは同時にアップスロープ中の方の電圧レベルを間接的に監視していることにもなり、ダウンスロープ中の方の電圧レベルが下限波高値VRLに到達したタイミングを直接検出することは同時にアップスロープ中の方の電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを間接的に検出することにもなる。
【0061】
上記のように、中点電位固定部20とモード切換部30の働きにより、両三角波発振回路10A,10Bより波形形状、波高値、位相関係、周波数のいずれにおいても設定(理想)通りの高精度な2相三角波A,Bを安定に発振出力することができる。したがって、本発明の多相三角波発振回路をPWM制御に用いることで、信頼性の高いマルチフェーズ方式のPWM制御を実現することができる。
【0062】
さらに、この実施形態では、上記のように、フィードバックループで2相三角波A,Bのスロープ特性を動的に設定値に一致させるので、回路素子のばらつきを吸収することができる。図3Aおよび図3Bに、この実施形態における2相三角波発振回路において回路素子の素子特性のばらつきを盛り込んだシミュレーションの2相三角波形を示す。図3Aは素子特性のばらつき度合いが小さいケースであり、図3Bはばらつき度合いが大きいケースである。図示のように、両者に殆ど差はなく、いずれも設定通りの2相三角波A,Bが得られる。
【0063】
この実施形態では、第1および第2の三角波発振回路10A,10Bにそれぞれシンク定電流回路16A,16Bを設けている。上記のように、第1の三角波発振回路10A側のシンク定電流回路16Aは直接には当該三角波Aのダウンスロープの傾斜角を規定し、ひいては中点電位固定部20の働きを通じて第2の三角波発振回路10Bにおける三角波Bのアップスロープの傾斜角を規定する。他方、第2の三角波発振回路10B側のシンク定電流回路16Bは当該三角波Bのダウンスロープの傾斜を規定し、ひいては中点電位固定部20の働きを通じて第1の三角波発振回路10Aにおける三角波Aのアップスロープの傾斜角を規定する。したがって、両シンク定電流回路16A,16Bの電流引き込み容量に所定量の違いを持たせることで、2相三角波A,Bを所定勾配ののこぎり波やランプ波の波形で発振出力することも可能である。
【0064】
他にもこの実施形態では様々な変形が可能であり、その幾つかを盛り込んだ変形例の回路構成を図4に示す。
【0065】
図4の回路構成では、第1および第2の三角波発振回路10A,10Bに1つのソース定電流回路14Mと1つのシンク定電流回路16Mとを切換使用で共有させるようにしている。詳細には、ソース定電流回路14Mは切換スイッチ18Pを介して第1のノードNAおよび第2のノードNBのいずれか一方に選択的に接続されるようになっている。一方、シンク定電流回路16Mは、切換スイッチ18Qを介して第1のノードNAおよび第2のノードNBのいずれか一方に選択的に接続されるようになっている。両切換スイッチ18P,18Qは切換制御回路36からの切換制御信号CSに応じて動作する。
【0066】
たとえば、切換制御信号CSがHレベルのときは、切換スイッチ18Pが第2のノードNB側に切り換わるとともに切換スイッチ18Qが第1のノードNA側に切り換わる。この時、第1の三角波発生回路10Aではコンデンサ12Aの放電動作(ダウンスロープ波形出力)が行われ、第2の三角波発生回路10Bではコンデンサ12Bの充電動作(アップスロープ波形出力)が行われる。また、切換制御信号CSがLレベルのときは、切換スイッチ18Pが第1のノードNA側に切り換わるとともに切換スイッチ18Qが第2のノードNB側に切り換わる。この時、第1の三角波発生回路10Aではコンデンサ12Aの充電動作(アップスロープ波形出力)が行われ、第2の三角波発生回路10Bではコンデンサ12Bの放電動作(ダウンスロープ波形出力)が行われる
【0067】
また、図4の回路構成では、シンク定電流回路16Mをバイアス可変のNMOSトランジスタで構成し、中点電位制御回路24の出力をバイアスとしてシンク定電流回路(NMOSトランジスタ)16Mの制御端子に与えるようにしている。一方、ソース定電流回路14Mは、バイアス一定の定電流回路であり、予め設定された一定(固定値)のソース電流を流すようになっている。この場合は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにより発生される2相三角波A,Bのうち、アップスロープ波形モードになっている方のアップスロープ特性を一定バイアスのソース定電流回路14Mによって一定の勾配に管理することになる。そして、ダウンスロープ波形モードになっている方のダウンスロープ特性を可変バイアスのシンク定電流回路16Mを介して中点電位固定部20(中点電位検出回路22、中点電位制御回路24)が両三角波A,Bの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するようにフィードバック制御で管理することになる。
【0068】
また、図4の回路構成では、モード切換部30において、切換スイッチ(32)を省き、代わりに2つのコンパレータ34A,34Bを設けている。両コンパレータ34A,34Bには基準電圧発生回路42より基準の上限波高値VRHに相当する基準電圧が与えられる。一方のコンパレータ34Aは、第1の三角波発生回路10Aより出力される三角波Aの電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを検出する。他方のコンパレータ34Bは、第2の三角波発生回路10Bより出力される三角波Bの電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを検出する。切換制御回路36は、両コンパレータ34A,34Bの出力に応動して、切換制御信号CSの論理レベルを交互に反転させる。
【0069】
なお、図1および図2の回路構成ではコンデンサ12A、12Bをグランド電位に接続しているが、任意の基準電位に接続することができる。また、上記した実施形態は2相の三角波を発振出力する回路構成であったが、本発明の多相三角波発振回路は3相以上の多相三角波を発振出力することも可能である。
【0070】
図5に、上記実施形態の一変形例による3相三角波発振回路の回路構成を示す。図中、実施形態の2相三角波発振回路(図1)のものと同様の構成または機能を有する部分には同一の符号を附してある。
【0071】
この変形例においては、図5に示すように、図1の回路構成に、第3の三角波Cを発生するための1相分の三角波発生回路10Cを並列に増設している。それに伴って、中点電位固定部20の中点電位検出回路22において、第3の三角波発生回路10Cのノード(出力端子)NCに接続される第3の抵抗26Cを追加して、第1および第2の抵抗26A,26Bと共に3者でスター結線の抵抗回路を構成している。ここで、3つの抵抗26A,26B,26Cの抵抗値は同じ値に設定される。この場合、中点電位検出回路22の中点ノードNnには、第1、第2および第3の三角波発生回路10A,10B,10Cより出力される3つの三角波A,B,Cの電圧レベルの相加平均値(A+B+C)/3を表す中点電位VNが得られる。
【0072】
この3相三角波発振回路では、3つの三角波A,B,Cが120°の位相差でそれぞれアップスロープ波形とダウンスロープ波形を繰り返し、常に3つの第3の三角波発生回路10A,10B,10Cの中のいずれか1つまたは2つがアップスロープ波形モードで動作している。中点電位制御回路24は、3つの三角波A,B,Cの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するように、アップスロープ波形モード中の三角波発生回路10に作用し、当該三角波のアップスロープ特性を当該可変バイアスのソース定電流回路14を介してフィードバック制御で管理する。
【0073】
モード切換部30は、第1、第2および第3の三角波発生回路10A,10B,10Cより出力される3つの三角波A,B,Cの各々について電圧レベルを監視する電圧レベル監視回路44を有する。この電圧レベル監視回路44は、各三角波A,B,Cに共通の基準下限波高値VRLと基準上限波高値VRHを設定し、各ダウンスロープが基準下限波高値VRLに到達したタイミングと基準上限波高値VRHに到達したタイミングとを各三角波A,B,C別に検出する。切換制御回路36は、電圧レベル監視回路44からの出力(監視情報)に応じて動作し、三角波発生回路10A,10B,10CのON/OFFスイッチ16A,16B,16Cに個別の切換制御信号CSA,CSB,CSCを与える。
【0074】
図6に示すように、この3相多相三角波発振回路においても、2相三角波発振回路(図1)の場合と同様に、波形形状、波高値、位相関係、周波数のいずれにおいても設定通りの高精度な3相三角波A,B,Cを安定に発振出力することができる。
【0075】
本発明の一実施形態におけるスイッチングレギュレータは、図示省略するが、 電圧入力端子と、電圧出力端子と、この電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、該帰還信号と該三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、該PWM制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有し、該三角波信号生成回路として上記実施形態の多相三角波発振回路を有する。したがって、上記実施形態の多相三角波発振回路における作用効果をスイッチングレギュレータの諸機能に反映して、高精度なPWM制御により高性能で信頼性の高いスイッチング動作を行うことができる。特に、本発明は、同一システム内の複数のスイッチングレギュレータに位相をずらしてスイッチング動作を行わせるマルチフェーズ方式において大なる利点が得られる。
【0076】
もっとも、本発明の多相三角波発振回路は、スイッチングレギュレータへの用途に限られるものではなく、任意の用途のPWM制御またはPWM応用(たとえばPWM通信)に好適に適用可能であり、たとえばオーディオ分野のD級アンプ等のPWMにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態による多相三角波発振回路の構成を示す回路図である。
【図2】実施形態の多相三角波発振回路における各部の信号の波形を示す信号波形図である。
【図3A】実施形態の多相三角波発振回路においてシミュレーションで得られる2相三角波の波形(一例)を示す波形図である。
【図3B】実施形態の多相三角波発振回路においてシミュレーションで得られる2相三角波の波形(別の例)を示す波形図である。
【図4】実施形態による多相三角波発振回路の一変形例の構成を示す回路図である。
【図5】実施形態における多相三角波発振回路の別の変形例の構成を示す回路図である。
【図6】図5の多相三角波発振回路で得られる3相三角波の波形を示す信号波形図である。
【図7】従来の多相三角波発振回路の構成を示す回路図である。
【図8】従来の多相三角波発振回路における理想波形の波形図である。
【図9A】従来の多相三角波発振回路において実際に得られる2相三角波(一例)の波形図である。
【図9B】従来の多相三角波発振回路において実際に得られる2相三角波(別の例)の波形図である。
【図10】従来の多相三角波発振回路を使用する場合のPWMの信号処理を示す波形図である。
【符号の説明】
【0078】
10A,10B,10C 三角波発生回路
12A,12B,12C コンデンサ
14A,14B,14C,14M ソース定電流回路
16A,16B,16C,16M シンク定電流回路
18A,18B,18C ON/OFFスイッチ
18P,18Q 切換スイッチ
20 中点電位固定部
22 中点電位検出回路
24 中点電位制御回路
26A,26B,26C 抵抗
28 基準電圧発生回路
30 モード切換部
32 切換スイッチ
34,34A,34B コンパレータ
36 切換制御回路
40,42 基準電圧発生回路
44 電圧レベル監視回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、三角波を発振出力する三角波発振回路に係わり、特に位相の異なる複数の三角波を同時に発生する多相三角波発振回路およびそれを用いるスイッチングレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
三角波は、直線的な上がり下がりの電圧変化を周期的に繰り返す周波数信号であり、典型的にはパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)で用いられている。たとえば、PWM方式のフィードバック制御は、演算増幅器からなるコンパレータの一対の入力端子に三角波および帰還信号(PWM変調入力)をそれぞれ入力して、両入力信号の電圧レベルを比較し、三角波のレベルが帰還信号のレベルよりも高い区間では第1の論理レベル(たとえばHレベル)、三角波のレベルが帰還信号のレベルよりも低い区間では第2の論理レベル(たとえばLレベル)となる変調バルス幅のパルス列信号を生成し、このパルス列信号に基づいてスイッチング素子をスイッチング制御するようにしている。
【0003】
1つのシステム内の複数系統でPWM制御が同時に行われるときは、複数の三角波が用いられる。その場合、それら複数の三角波の位相が同じではなく適当にずれている方が都合のよいアプリケーションもある。たとえば、多チャンネルのスイッチングレギュレータを搭載するICでは、消費電力の分散化や入力ラインのノイズ低減化をはかるために、同一チップ上の複数のスイッチングレギュレータに位相をずらしてスイッチング動作を行わせるマルチフェーズ方式が採られており、多相の三角波を必要とする。
【0004】
図7に、PWM制御に用いられている従来の多相三角波発振回路の回路構成を示す。この多相三角波発振回路は、2相型であり、基準三角波発振回路100と差動増幅器102と出力段回路104,106とを有する。
【0005】
基準三角波発振回路100は、たとえば方形波発振回路と積分回路とからなり、ほぼ理想に近い一定周波数の基準三角波Sを発振出力する。この基準三角波発振回路100には、基準三角波Sの上限波高値および下限波高値に相当する基準電圧VRH,VRLが電源回路104より供給される。
【0006】
差動増幅器102は、差動接続された一対のNMOSトランジスタ108,110と、両トランジスタのソースに共通接続された定電流源112と、両トランジスタのドレインと電源電圧端子VDDとの間にそれぞれ並列に接続された負荷抵抗114,116および時定数コンデンサ118,120とからなり、低スルーレートの電圧フォロアとして構成されている。一方のNMOSトランジスタ108のゲート端子には基準三角波発振回路100からの基準三角波Sが入力され、他方のNMOSトランジスタ110のゲートには基準三角波Sの中心レベルに等しい基準電圧VRNが入力される。NMOSトランジスタ108のドレインには基準三角波Sよりも位相が少し遅れたほぼ同相または正相の三角波Aが得られ、MOSトランジスタ110のドレインには正相三角波Aとは逆相の三角波Bが得られる。出力段回路104,106は、バッファ回路または駆動回路からなり、差動増幅器102からの2相三角波A,Bをそれぞれ対応するPWMコンパレータ(図示せず)に向けて駆動出力する。
【0007】
図8に、基準三角波Sと2相三角波A,Bとの理想的な関係および2相三角波A,B同士の理想的な関係を示す。図中、基準三角波Sの上限波高値VRH,下限波高値VRLと多相三角波A,Bの上限波高値VGH,下限波高値VGLとの間には幾らかのオフセットδVがある。このオフセットδVは、NMOSトランジスタ108,110のしきい値電圧に因るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の多相三角波発振回路は、基準三角波発振回路100により基準三角波Sを生成し、差動増幅器102で基準三角波Sから正相の三角波Aと逆相の三角波Bとを同時に生成し、出力段回路104,106で両三角波A,Bを駆動出力するようにしており、いわばオープンループ型で2相の三角波A,Bを発振出力している。このようなオープンループ型は、回路素子の特性のばらつきによって多相三角波の精度が大きく左右されるという問題がある。
【0009】
特に、図7の2相三角波発振回路では、差動増幅器102における左右の同一機能素子の間で、つまり両NMOSトランジスタ108,110、両抵抗114,116および両コンデンサ118,120の間でそれぞれ素子特性を同一に設定している。しかし、そのような同一機能素子の間で素子特性にばらつきがあると、2相三角波A,Bの波形や位相のバランスがくずれる。また、同一機能素子間で特性が同一であっても、元の仕様特性からずれていたり他機能素子との関係で電気的特性に誤差があれば、何らかの形で三角波の精度が下がる。
【0010】
実際、図7の2相三角波発振回路においては、量産品の中に、たとえば図9Aおよび図9Bに示すように、多相三角波A,Bの波形精度、位相関係、波形レベル等に大きなばらつきがみられる。図9Aのケースは全体的に理想(図8)に近いが、それでも両三角波A,Bのピークがなまっている。図9Bのケースは両三角波A,Bのピークが一層なまっているだけでなく波高値も理想(図8)から相当ずれている。
【0011】
このように多相三角波発振回路より各PWMコンパレータに供給される三角波の精度が良くないと、当然にPWM変調結果に影響が出る。たとえば、上記のように実際の三角波A(三角波Bも同様)のピークがなまっていると、図10に示すように、実際のPWM変調結果(PWMコンパレータ出力)も理想から外れたものとなる。これは、PWM制御の精度を下げる原因となる。
【0012】
また、PWMコンパレータでは、PWM変調入力の電圧レベルが三角波の波高値を振り切った(越えた)後にあまりにもかけ離れたレベルまでいかないように、電圧クランプ(またはリミッタ)機能を設けることもある。その場合、クランプレベルは理想波高値を基準として設定されるが、実際の三角波の波高値に誤差があると、クランプ機能にも狂いが生じる。たとえば、実際の波高値がクランプレベルから程遠くなるほどに絶対値の小さい方にずれていると、クランプの働くタイミングが遅れてしまい、結果としてPWM制御に支障が出る。たとえば、スイッチングレギュレータにおいては、出力にリップルが生じる等の支障が出る。あるいは、実際の波高値がクランプレベルを越えるほど絶対値の大きい方にずれている場合は、PWM変調入力が波高値の内側でクランプされることになり、波高値付近(デューティ0%付近またはデューティ100%付近)では所望のPWM変調結果が得られなくなる。
【0013】
PWM制御を行う一般のシステムにおいて、PWM変調という信号処理は、PWM変調入力の微小変化をΔe、PWM変調結果の微小変化をΔmとするとΔm/Δeの増幅段とみなせる。したがって、三角波の波高値またはピーク・ツー・ピーク値が理想値または設定値からずれていたり、波形(特にピーク)がなまっていると、PWM変調の小信号特性が設計通りにいかなくなり、ゲインが高すぎて異常発振したり、ゲインが低すぎて精度不足を招くおそれがある。
【0014】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、多相の三角波を設定通りの波形、波高値および位相関係で発振出力できるようにした多相三角波発振回路を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の別の目的は、回路素子の特性にばらつきがあっても所期の多相の三角波を安定確実に発振出力できるようにした多相三角波発振回路を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、高性能で信頼性の高いスイッチングレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の多相三角波発振回路は、各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生するN個(Nは2以上の整数)の三角波発生回路と、前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を表す中点電位を検出する中点電位検出回路と、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記N個の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一つを制御する第1の制御回路と、前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧を監視し、各々の出力電圧が基準の波高値に到達した時に当該三角波発生回路の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ、またはダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換える第2の制御回路とを有する。
【0018】
上記第1の多相三角波発振回路では、第1の制御回路のフィードバック機能と第2の制御回路のモード切換機能とにより、N個の三角波発生回路がそれぞれの出力電圧を互いの均衡関係の中で中点電位を基準値に一致させながら一定の波高値と所定の位相差でアップスロープ波形のモードとダウンスロープ波形のモードとを交互に繰り返すことにより、N相の三角波を発振出力する。
【0019】
本発明の好適な一態様によれば、中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有するN個の抵抗素子を有し、それらN個の抵抗素子の一方の端子を共通接続するとともに、他方の端子をN個の三角波発生回路の出力端子にそれぞれ接続し、共通接続のノードに中点電位が得られる抵抗回路を有する。
【0020】
また、好適な一態様によれば、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするようにN個の三角波発生回路の少なくとも一つの出力電圧のスロープ特性を可変制御するスロープ制御回路を有する。
【0021】
また、好適な一態様においては、各々の三角波発生回路が、当該三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続されたコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するためにコンデンサを充電する充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するためにコンデンサを放電させる放電回路とを有する。
【0022】
また、好適な一態様によれば、第2の制御回路が、各々の三角波発生回路について、アップスロープ波形の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時にコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、ダウンスロープ波形の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時にコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える。
【0023】
本発明の第2の多相三角波発振回路は、各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生する第1および第2の三角波発生回路と、前記第1および第2の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一方を制御する第1の制御回路と、前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧を監視し、どちらかの出力電圧が基準の波高値に到達した時に前記第1および第2の三角波発生回路の一方の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードに切り換えると同時に他方の出力電圧発生モードをダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードに切り換える第2の制御回路とを有する。
【0024】
上記第2の多相三角波発振回路では、第1の制御回路のフィードバック機能と第2の制御回路のモード切換機能とにより、第1のおよび第2の三角波発生回路がそれぞれの出力電圧を互いの均衡関係の中で中点電位を基準値に一致させながら一定の波高値で、しかも逆相でアップスロープ波形のモードとダウンスロープ波形のモードとを交互に繰り返すことにより、2相の三角波を発振出力する。
【0025】
本発明の好適な一態様によれば、中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有する2個の抵抗素子を有し、それら2個の抵抗素子のそれぞれの一方の端子を共通接続するとともに、それぞれの他方の端子を第1および第2の三角波発生回路の出力端子に接続し、共通接続のノードに中点電位が得られる抵抗分圧回路を有する。
【0026】
また、好適な一態様によれば、第1の三角波発生回路が、第1の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために第1のコンデンサを充電する第1の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために第1のコンデンサを放電させる第1の放電回路とを有し、第2の三角波発生回路が、第2の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第2のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために第2のコンデンサを充電する第2の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために第2のコンデンサを放電させる第2の放電回路とを有する。
【0027】
また、好適な一態様によれば、第1および第2の充電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する。第1の充電回路と第2の充電回路とが1つの定電流回路を共有することもできる。また、定電流回路が可変のバイアスに応じて動作するようにしてもよい。この場合、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように定電流回路に対するバイアスを可変制御してよい。
【0028】
また、好適な一態様によれば、第1および第2の放電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する。第1の放電回路と前記第2の放電回路とが1つの前記定電流回路を共有することもできる。また、定電流回路が可変のバイアスに応じて動作するようにしてもよい。この場合、第1の制御回路が、中点電位検出回路により検出される中点電位を第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように定電流回路に対するバイアスを可変制御してよい。
【0029】
また、好適な一態様においては、第2の制御回路が、第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、第2の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換える。
【0030】
あるいは、別の好適な一態様として、第2の制御回路が、第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換え、第2の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に第2の三角波発生回路における第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に第1の三角波発生回路における第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える。
【0031】
本発明のスイッチングレギュレータは、電圧入力端子と、電圧出力端子と、上記電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、上記帰還信号と上記三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、上記制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有するスイッチングレギュレータであって、上記三角波信号生成回路を本発明の多相三角波発振回路とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明の多相三角波発振回路によれば、上記のような構成と作用により、多相の三角波を設定通りの波形、波高値および位相関係で発振出力することができる。また、回路素子の特性にばらつきがあっても所期の多相三角波を安定確実に発振出力することができる。
【0033】
本発明のスイッチングレギュレータにおいては、本発明の多相三角波発振回路を有することにより、高精度なPWM制御により高性能で信頼性の高いスイッチング動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図1〜図6を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0035】
図1に、本発明の一実施形態における多相三角波発振回路の構成を示す。この多相三角波発振回路は、2相型であり、互いに逆位相の2相三角波A,Bを発生するための2つの三角波発生回路10A,10Bを有している。
【0036】
第1の三角波発生回路10Aは、正相の三角波Aを出力する第1のノードNAとグランド電位との間に接続された第1のコンデンサ12Aと、電源電圧端子VDDとノードNAとの間に接続されたソース用または充電用の定電流回路14Aと、ノードNAとグランド電位との間に接続されたシンク用または放電用の定電流回路16Aとを有する。ソース定電流回路14Aは、ゲート端子が後述する中点電位固定部20の制御回路24の出力端子に接続されているPMOSトランジスタからなり、可変のバイアスでソース(充電)電流を可変できるようになっている。シンク定電流回路16Aはバイアス一定で固定値のシンク(放電)電流を流すようになっている。シンク定電流回路16Aの電流吸い込み容量はソース定電流回路14Aの電流供給容量よりも大きく、たとえば約2倍に選ばれている。
【0037】
第1の三角波発生回路10Aにおいて、ノードNAとシンク定電流回路16Aとの間にはON/OFFスイッチ18が挿入されている。このスイッチ18がオン状態からオフ状態に切り換わると、ソース定電流回路14Aからのソース電流が全てコンデンサ12Aに流れ込み、コンデンサ12Aにおいて定電流の充電動作が行われる。この充電動作中は、ノードNAの電位がほぼ一定の勾配で直線的に上がって、アップスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0038】
スイッチ18がオフ状態からオン状態に切り換わると、コンデンサ12Aにシンク定電流回路16Aが接続され、コンデンサ12Aにおいて定電流の放電動作が行われる。ここで、シンク定電流回路16Aの電流吸い込み能力がソース定電流回路14Aの電流供給能力よりも勝るため、ソース定電流回路14Aからのソース電流はコンデンサ12Aからの放電電流と一緒にシンク定電流回路16Aに吸い込まれるようになっている。この放電動作中は、ノードNAの電位がほぼ一定の勾配で直線的に下がって、ダウンスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0039】
スイッチ18は一定周期で交互にオン・オフするようになっており、そのスイッチングによってコンデンサ12Aの充電動作と放電動作が交互に繰り返され、ノードNAよりアップスロープ波形とダウンスロープ波形とを交互に繰り返す三角波Aが出力されるようになっている。
【0040】
第2の三角波発生回路10Bは、逆相の三角波Bを出力する第2のノードNBとグランド電位との間に接続された第2のコンデンサ12Bと、電源電圧端子VDDとノードNBとの間に接続されたソース用または充電用の定電流回路14Bと、ノードNBとグランド電位との間に接続されたシンク用または放電用の定電流回路16Bとを有する。ソース定電流回路14Bは、ゲート端子が中点電位固定部20の制御回路24の出力端子に接続されているPMOSトランジスタからなり、可変のバイアスでソース(充電)電流を可変できるようになっている。シンク定電流回路16Bはバイアス一定で一定のシンク(放電)電流を流すようになっている。シンク定電流回路16Bの電流吸い込み容量はソース型定電流回路14Bの電流供給容量よりも大きく、たとえば約2倍に選ばれている。
【0041】
第2の三角波発生回路10Bにおいて、ノードNBとシンク定電流回路16Bとの間にはON/OFFスイッチ18Bが挿入されている。このスイッチ18Bがオン状態からオフ状態に切り換わると、ソース定電流回路14Bからのソース電流が全てコンデンサ12Bに流れ込み、コンデンサ12Bにおいて定電流の充電動作が行われる。この充電動作中は、ノードNBの電位がほぼ一定の勾配で直線的に上がって、アップスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0042】
スイッチ18Bがオフ状態からオン状態に切り換わると、コンデンサ12Bにシンク定電流回路16Bが接続され、コンデンサ12Bにおいて放電動作が行われる。ここで、シンク定電流回路16Bの電流吸い込み能力がソース型定電流回路16Bの電流供給能力よりも勝るため、ソース定電流回路14Bからのソース電流はコンデンサ12Bからの放電電流と一緒にシンク型定電流回路16Bに吸い込まれるようになっている。この放電動作中は、ノードNBの電位がほぼ一定の勾配で直線的に下がって、ダウンスロープ波形の出力電圧が生成される。
【0043】
スイッチ18Bは一定周期で交互にオン・オフするようになっており、そのスイッチングによってコンデンサ12Bの充電動作と放電動作が交互に繰り返され、ノードNBよりアップスロープ波形とダウンスロープ波形とを交互に繰り返す三角波Bが出力されるようになっている。
【0044】
また、第1の三角波発生回路10Aにおけるスイッチ18Aと第2の三角波発生回路10Bにおけるスイッチ18Bとの間では、両者が互いに逆相でオン・オフする関係になっている。すなわち、スイッチ18Aがオン状態になっている期間中はスイッチ18Bがオフ状態になり、スイッチ18Bがオン状態になっている期間中はスイッチ18Aがオフ状態になる。これにより、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの充電動作(アップスロープ波形出力)と第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの放電動作(ダウンスロープ波形出力)とが同時または並行して行われ、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの放電動作(ダウンスロープ波形出力)と第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの充電動作(アップスロープ波形出力)とが同時または並行して行われる。こうして、第1の三角波発生回路10AのノードNAより正相の三角波Aが発振出力される同時に、第2の三角波発生回路10BのノードNBより逆相の三角波Bが発振出力されるようになっている。
【0045】
この2相三角波発振回路において、2相三角波A,Bを一般的な二等辺三角形の波形で発振出力する場合は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにおいてそれぞれのコンデンサ12A,12Bのキャパシタンスを同一の値に設定し、かつそれぞれのシンク定電流回路16A,16Bの電流引き込み容量も同一の値に設定してよい。
【0046】
この2相三角波発振回路は、上記のような一対の三角波発生回路10A,10Bに加えて、両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの中点電位を常時一定値に固定するための中点電位固定部20と、両三角波発生回路10A,10Bにおける出力電圧発生モード(アップスロープ波形モード/ダウンスロープ波形モード)を予め設定した基準の波高値レベルで瞬時に切り換えるためのモード切換部30とを有している。
【0047】
中点電位固定部20は、第1のノードNAと第2のノードNBとの間に接続された中点電位検出回路22と、この中点電位検出回路22により検出される中点電位VNが予め設定した基準中点電位VRNに一致するように両三角波発生回路10A,10Bの出力電圧A,Bの少なくとも一方を制御する中点電位制御回路24とを有している。
【0048】
中点電位検出回路22は、両ノードNA,NBの間に抵抗値の等しい2つの抵抗26A,26Bを直列接続してなる抵抗分圧回路からなり、両抵抗26A,26Bの接続点のノードNnを中点電位検出端子としている。この中点電位検出回路22においては、ノードNAの電位(三角波Aの電圧レベル)とノードNBの電位(三角波Bの電圧レベル)が抵抗値の等しい2つの抵抗26A,26Bによって分圧されることにより、中点ノードNnに両三角波A,Bの電圧レベルの相加平均値(A+B)/2を表す中点電位VNが得られる。
【0049】
中点電位制御回路24は、反転増幅器として動作する演算増幅器からなり、その反転入力端子に中点電位検出回路22からの中点電位VNを入力する。中点電位制御回路(演算増幅器)24の非反転入力端子には、基準電圧発生回路28からの予め設定された基準の中点電位VRNが入力される。上記したように、中点電位制御回路(演算増幅器)24の出力端子は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにおけるソース定電流回路(PMOSトランジスタ)14A,14Bの制御端子に接続されている。
【0050】
かかる中点電位制御回路(演算増幅器)24は、入力側でイマジナリ・ショートが形成されるように増幅動作を行う。つまり、中点電位検出回路22で検出される実際の中点電位VNを基準の中点電位VRNに一致させるように、中点電位制御回路24の出力電圧がバイアス電圧として両三角波発生回路10A,10Bのソース型定電流回路(PMOSトランジスタ)14A,14Bに作用する。
【0051】
両ソース型定電流回路14A,14Bは、上記したようにそれぞれの三角波発生回路10A,10Bのモードに応じて機能する。すなわち、第1の三角波発生回路10Aがアップスロープ波形モード中のときは、ソース定電流回路14Aがコンデンサ12Aに充電電流を供給し、コンデンサ12Aの充電電圧が一定の勾配で直線的に上昇する。ここで、コンデンサ12Aにおける充電特性(三角波Aのアップスロープ特性)がソース定電流回路14Aを介して中点電位制御回路24からのフィードバック制御を受けることになる。一方、この時、第2の三角波発生回路10Bの方はダウンスロープ波形モードになっており、コンデンサ12Bの放電特性(三角波Bのダウンスロープ特性)が一定のシンク電流ないし放電電流を流すシンク定電流回路16Bによって一定に管理される。
【0052】
第1の三角波発生回路10Aがダウンスロープ波形モードで第2の三角波発生回路10Bがアップスロープ波形モードのときは、両者の状態または関係が上記と反対になるだけで、同様の動作が行われる。すなわち、第1の三角波発生回路10Aにおけるコンデンサ12Aの放電特性(三角波Aのダウンスロープ特性)がシンク定電流回路16Aによって一定に管理され、第2の三角波発生回路10Bにおけるコンデンサ12Bの充電特性(三角波Bのアップスロープ特性)がソース定電流回路14Bを介して中点電位制御回路24からのフィードバック制御を受けることになる。
【0053】
このように、この実施形態では、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにより発生される2相三角波A,Bのうち、ダウンスロープ波形モードになっている方のダウンスロープ特性を一定バイアスのシンク定電流回路16A(16B)によって一定の勾配に管理する。そして、アップスロープ波形モードになっている方のアップスロープ特性を可変バイアスのソース定電流回路14A(14B)を介して中点電位固定部20(中点電位検出回路22、中点電位制御回路24)が両三角波A,Bの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するようにフィードバック制御で管理する。これにより、図2の(a)に示すように、2相三角波A,Bの電圧レベルは基準の中点電位VRNを中心として常に上下対照のスロープで変化することになり、両者は互いに上下反転の逆相関係に維持される。
【0054】
モード切換部30は、切換スイッチ32、コンパレータ34、切換制御回路36および反転回路38を有している。切換スイッチ32は、一方の入力端子が第1のノードNAに接続されるとともに、他方の入力端子が第2のノードNBに接続されており、出力端子がコンパレータ34の一方の入力端子に接続され、切換制御回路36の出力信号(切換制御信号)CSに応じて切り換わるようになっている。ここで、切換制御回路36より出力される切換制御信号CSは、第1の三角波発生回路10AのON/OFFスイッチ18Aにも与えられ、第2の三角波発生回路10BのON/OFFスイッチ18Bにも反転回路38を介して与えられる。すなわち、切換制御信号CSがHレベルのときはスイッチ18Aがオンしてスイッチ18Bがオフし、切換制御信号CSがLレベルのときはスイッチ18Aがオフしてスイッチ18Bがオンするようになっている。
【0055】
切換スイッチ32は、ON/OFFスイッチ18Aがオンしている間(第1の三角波発生回路10Aがダウンスロープ波形モードになっている間)はノードNA側に切り換わり、三角波Aのダウンスロープ波形をコンパレータ34に転送する。また、ON/OFFスイッチ18Bがオンしている間(第2の三角波発生回路10Bがダウンスロープ波形モードになっている間)はノードNB側に切り換わり、三角波Bのダウンスロープ波形をコンパレータ34に転送するようになっている。図2の(b)に、切換スイッチ32の出力端子に得られる監視電圧(ダウンスロープ波形)を示す。
【0056】
コンパレータ34は、基準電圧発生回路40より他方の入力端子に基準の下限波高値電位VRLを入力し、両入力A(またはB),VRLの電圧レベルの大小を比較して、その比較結果を2値出力する。たとえば、A(またはB)>VRLのときはLレベルを出力し、A(またはB)≦VRLのときにHレベルを出力する。したがって、図2の(b),(c)に示すように、第1の三角波発生回路10Aにおいてダウンスロープ波形モードの三角波Aが基準の下限波高値電位VRLまで下がった時に、コンパレータ34の出力がそれまでのLレベルからHレベルに変わる。また、第2の三角波発生回路10Bにおいてダウンスロープ波形モードの三角波Bが基準の下限波高値電位VRLまで下がった時も、その時点でコンパレータ34の出力がそれまでのLレベルからHレベルに変わる。
【0057】
切換制御回路36は、コンパレータ34の出力がLレベルからHレベルに変わると、図2の(c),(d)に示すように、これに応答して切換制御信号CSの論理レベルを反転させる。切換制御信号CSがLレベルからHレベルに反転すると、第1の三角波発生回路10Aではスイッチ18Aがオンしてそれまでのアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ切り換わり、第2の三角波発生回路10Bではスイッチ18Bがオフしてそれまでのダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換わる。切換スイッチ32はそれまで第2のノードNBに切り換わっていたのが今度は第1のノードNAに切り換わり、コンパレータ34の出力はHレベルからLレベルに戻る。
【0058】
また、切換制御信号CSがHレベルからLレベルに反転すると、第1の三角波発生回路10Aではスイッチ18Aがオフしてそれまでのダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換わり、第2の三角波発生回路10Bではスイッチ18Bがオフしてそれまでのアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ切り換わる。切換スイッチ32はそれまで第1のノードNAに切り換わっていたのが今度は第2のノードNBに切り換わり、コンパレータ34の出力はHレベルからLレベルに戻る。
【0059】
このように、モード切換部30は、切換スイッチ32とコンパレータ34により、2相三角波A,Bのうちダウンスロープ中の方の電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の下限波高値VRLに到達したタイミングを検出するようにしている。ここで、重要なことは、この実施形態では、上記のように中点電位固定部20の働きにより2相三角波A,Bの電圧レベルは基準の中点電位VRNを中心として常に上下対照の関係を維持しており、一方の電圧レベルが基準の下限波高値VRLに到達するタイミングと他方の電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達するタイミングは常に一致するということである。なお、VRH−VRN=VRN−VRLという関係がある。
【0060】
したがって、モード切換部30が2相三角波A,Bのうちダウンスロープ中の方の電圧レベルを直接監視することは同時にアップスロープ中の方の電圧レベルを間接的に監視していることにもなり、ダウンスロープ中の方の電圧レベルが下限波高値VRLに到達したタイミングを直接検出することは同時にアップスロープ中の方の電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを間接的に検出することにもなる。
【0061】
上記のように、中点電位固定部20とモード切換部30の働きにより、両三角波発振回路10A,10Bより波形形状、波高値、位相関係、周波数のいずれにおいても設定(理想)通りの高精度な2相三角波A,Bを安定に発振出力することができる。したがって、本発明の多相三角波発振回路をPWM制御に用いることで、信頼性の高いマルチフェーズ方式のPWM制御を実現することができる。
【0062】
さらに、この実施形態では、上記のように、フィードバックループで2相三角波A,Bのスロープ特性を動的に設定値に一致させるので、回路素子のばらつきを吸収することができる。図3Aおよび図3Bに、この実施形態における2相三角波発振回路において回路素子の素子特性のばらつきを盛り込んだシミュレーションの2相三角波形を示す。図3Aは素子特性のばらつき度合いが小さいケースであり、図3Bはばらつき度合いが大きいケースである。図示のように、両者に殆ど差はなく、いずれも設定通りの2相三角波A,Bが得られる。
【0063】
この実施形態では、第1および第2の三角波発振回路10A,10Bにそれぞれシンク定電流回路16A,16Bを設けている。上記のように、第1の三角波発振回路10A側のシンク定電流回路16Aは直接には当該三角波Aのダウンスロープの傾斜角を規定し、ひいては中点電位固定部20の働きを通じて第2の三角波発振回路10Bにおける三角波Bのアップスロープの傾斜角を規定する。他方、第2の三角波発振回路10B側のシンク定電流回路16Bは当該三角波Bのダウンスロープの傾斜を規定し、ひいては中点電位固定部20の働きを通じて第1の三角波発振回路10Aにおける三角波Aのアップスロープの傾斜角を規定する。したがって、両シンク定電流回路16A,16Bの電流引き込み容量に所定量の違いを持たせることで、2相三角波A,Bを所定勾配ののこぎり波やランプ波の波形で発振出力することも可能である。
【0064】
他にもこの実施形態では様々な変形が可能であり、その幾つかを盛り込んだ変形例の回路構成を図4に示す。
【0065】
図4の回路構成では、第1および第2の三角波発振回路10A,10Bに1つのソース定電流回路14Mと1つのシンク定電流回路16Mとを切換使用で共有させるようにしている。詳細には、ソース定電流回路14Mは切換スイッチ18Pを介して第1のノードNAおよび第2のノードNBのいずれか一方に選択的に接続されるようになっている。一方、シンク定電流回路16Mは、切換スイッチ18Qを介して第1のノードNAおよび第2のノードNBのいずれか一方に選択的に接続されるようになっている。両切換スイッチ18P,18Qは切換制御回路36からの切換制御信号CSに応じて動作する。
【0066】
たとえば、切換制御信号CSがHレベルのときは、切換スイッチ18Pが第2のノードNB側に切り換わるとともに切換スイッチ18Qが第1のノードNA側に切り換わる。この時、第1の三角波発生回路10Aではコンデンサ12Aの放電動作(ダウンスロープ波形出力)が行われ、第2の三角波発生回路10Bではコンデンサ12Bの充電動作(アップスロープ波形出力)が行われる。また、切換制御信号CSがLレベルのときは、切換スイッチ18Pが第1のノードNA側に切り換わるとともに切換スイッチ18Qが第2のノードNB側に切り換わる。この時、第1の三角波発生回路10Aではコンデンサ12Aの充電動作(アップスロープ波形出力)が行われ、第2の三角波発生回路10Bではコンデンサ12Bの放電動作(ダウンスロープ波形出力)が行われる
【0067】
また、図4の回路構成では、シンク定電流回路16Mをバイアス可変のNMOSトランジスタで構成し、中点電位制御回路24の出力をバイアスとしてシンク定電流回路(NMOSトランジスタ)16Mの制御端子に与えるようにしている。一方、ソース定電流回路14Mは、バイアス一定の定電流回路であり、予め設定された一定(固定値)のソース電流を流すようになっている。この場合は、第1および第2の三角波発生回路10A,10Bにより発生される2相三角波A,Bのうち、アップスロープ波形モードになっている方のアップスロープ特性を一定バイアスのソース定電流回路14Mによって一定の勾配に管理することになる。そして、ダウンスロープ波形モードになっている方のダウンスロープ特性を可変バイアスのシンク定電流回路16Mを介して中点電位固定部20(中点電位検出回路22、中点電位制御回路24)が両三角波A,Bの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するようにフィードバック制御で管理することになる。
【0068】
また、図4の回路構成では、モード切換部30において、切換スイッチ(32)を省き、代わりに2つのコンパレータ34A,34Bを設けている。両コンパレータ34A,34Bには基準電圧発生回路42より基準の上限波高値VRHに相当する基準電圧が与えられる。一方のコンパレータ34Aは、第1の三角波発生回路10Aより出力される三角波Aの電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを検出する。他方のコンパレータ34Bは、第2の三角波発生回路10Bより出力される三角波Bの電圧レベルを監視し、その電圧レベルが基準の上限波高値VRHに到達したタイミングを検出する。切換制御回路36は、両コンパレータ34A,34Bの出力に応動して、切換制御信号CSの論理レベルを交互に反転させる。
【0069】
なお、図1および図2の回路構成ではコンデンサ12A、12Bをグランド電位に接続しているが、任意の基準電位に接続することができる。また、上記した実施形態は2相の三角波を発振出力する回路構成であったが、本発明の多相三角波発振回路は3相以上の多相三角波を発振出力することも可能である。
【0070】
図5に、上記実施形態の一変形例による3相三角波発振回路の回路構成を示す。図中、実施形態の2相三角波発振回路(図1)のものと同様の構成または機能を有する部分には同一の符号を附してある。
【0071】
この変形例においては、図5に示すように、図1の回路構成に、第3の三角波Cを発生するための1相分の三角波発生回路10Cを並列に増設している。それに伴って、中点電位固定部20の中点電位検出回路22において、第3の三角波発生回路10Cのノード(出力端子)NCに接続される第3の抵抗26Cを追加して、第1および第2の抵抗26A,26Bと共に3者でスター結線の抵抗回路を構成している。ここで、3つの抵抗26A,26B,26Cの抵抗値は同じ値に設定される。この場合、中点電位検出回路22の中点ノードNnには、第1、第2および第3の三角波発生回路10A,10B,10Cより出力される3つの三角波A,B,Cの電圧レベルの相加平均値(A+B+C)/3を表す中点電位VNが得られる。
【0072】
この3相三角波発振回路では、3つの三角波A,B,Cが120°の位相差でそれぞれアップスロープ波形とダウンスロープ波形を繰り返し、常に3つの第3の三角波発生回路10A,10B,10Cの中のいずれか1つまたは2つがアップスロープ波形モードで動作している。中点電位制御回路24は、3つの三角波A,B,Cの実際の中点電位VNが基準の中点電位VRNに一致するように、アップスロープ波形モード中の三角波発生回路10に作用し、当該三角波のアップスロープ特性を当該可変バイアスのソース定電流回路14を介してフィードバック制御で管理する。
【0073】
モード切換部30は、第1、第2および第3の三角波発生回路10A,10B,10Cより出力される3つの三角波A,B,Cの各々について電圧レベルを監視する電圧レベル監視回路44を有する。この電圧レベル監視回路44は、各三角波A,B,Cに共通の基準下限波高値VRLと基準上限波高値VRHを設定し、各ダウンスロープが基準下限波高値VRLに到達したタイミングと基準上限波高値VRHに到達したタイミングとを各三角波A,B,C別に検出する。切換制御回路36は、電圧レベル監視回路44からの出力(監視情報)に応じて動作し、三角波発生回路10A,10B,10CのON/OFFスイッチ16A,16B,16Cに個別の切換制御信号CSA,CSB,CSCを与える。
【0074】
図6に示すように、この3相多相三角波発振回路においても、2相三角波発振回路(図1)の場合と同様に、波形形状、波高値、位相関係、周波数のいずれにおいても設定通りの高精度な3相三角波A,B,Cを安定に発振出力することができる。
【0075】
本発明の一実施形態におけるスイッチングレギュレータは、図示省略するが、 電圧入力端子と、電圧出力端子と、この電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、該帰還信号と該三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、該PWM制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有し、該三角波信号生成回路として上記実施形態の多相三角波発振回路を有する。したがって、上記実施形態の多相三角波発振回路における作用効果をスイッチングレギュレータの諸機能に反映して、高精度なPWM制御により高性能で信頼性の高いスイッチング動作を行うことができる。特に、本発明は、同一システム内の複数のスイッチングレギュレータに位相をずらしてスイッチング動作を行わせるマルチフェーズ方式において大なる利点が得られる。
【0076】
もっとも、本発明の多相三角波発振回路は、スイッチングレギュレータへの用途に限られるものではなく、任意の用途のPWM制御またはPWM応用(たとえばPWM通信)に好適に適用可能であり、たとえばオーディオ分野のD級アンプ等のPWMにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施形態による多相三角波発振回路の構成を示す回路図である。
【図2】実施形態の多相三角波発振回路における各部の信号の波形を示す信号波形図である。
【図3A】実施形態の多相三角波発振回路においてシミュレーションで得られる2相三角波の波形(一例)を示す波形図である。
【図3B】実施形態の多相三角波発振回路においてシミュレーションで得られる2相三角波の波形(別の例)を示す波形図である。
【図4】実施形態による多相三角波発振回路の一変形例の構成を示す回路図である。
【図5】実施形態における多相三角波発振回路の別の変形例の構成を示す回路図である。
【図6】図5の多相三角波発振回路で得られる3相三角波の波形を示す信号波形図である。
【図7】従来の多相三角波発振回路の構成を示す回路図である。
【図8】従来の多相三角波発振回路における理想波形の波形図である。
【図9A】従来の多相三角波発振回路において実際に得られる2相三角波(一例)の波形図である。
【図9B】従来の多相三角波発振回路において実際に得られる2相三角波(別の例)の波形図である。
【図10】従来の多相三角波発振回路を使用する場合のPWMの信号処理を示す波形図である。
【符号の説明】
【0078】
10A,10B,10C 三角波発生回路
12A,12B,12C コンデンサ
14A,14B,14C,14M ソース定電流回路
16A,16B,16C,16M シンク定電流回路
18A,18B,18C ON/OFFスイッチ
18P,18Q 切換スイッチ
20 中点電位固定部
22 中点電位検出回路
24 中点電位制御回路
26A,26B,26C 抵抗
28 基準電圧発生回路
30 モード切換部
32 切換スイッチ
34,34A,34B コンパレータ
36 切換制御回路
40,42 基準電圧発生回路
44 電圧レベル監視回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生するN個(Nは2以上の整数)の三角波発生回路と、
前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、
前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記N個の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一つを制御する第1の制御回路と、
前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧を監視し、各々の出力電圧が基準の波高値に到達した時に当該三角波発生回路の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ、またはダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換える第2の制御回路と
を有する多相三角波発振回路。
【請求項2】
前記中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有するN個の抵抗素子を有し、それらN個の抵抗素子の一方の端子を共通接続するとともに、他方の端子を前記N個の三角波発生回路の出力端子にそれぞれ接続し、前記共通接続のノードに前記中点電位が得られる抵抗回路を有する請求項1に記載の多相三角波発振回路。
【請求項3】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記N個の三角波発生回路の少なくとも一つの出力電圧のスロープ特性を可変制御するスロープ制御回路を有する請求項1または請求項2に記載の多相三角波発振回路。
【請求項4】
各々の前記三角波発生回路が、
当該三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続されたコンデンサと、
アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記コンデンサを充電する充電回路と、
ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記コンデンサを放電させる放電回路と
を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項5】
前記第2の制御回路が、各々の前記三角波発生回路について、アップスロープ波形の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に前記コンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、ダウンスロープ波形の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に前記コンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える請求項1〜5のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項6】
各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生する第1および第2の三角波発生回路と、
前記第1および第2の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、
前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一方を制御する第1の制御回路と、
前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧を監視し、どちらかの出力電圧が基準の波高値に到達した時に前記第1および第2の三角波発生回路の一方の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードに切り換えると同時に他方の出力電圧発生モードをダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードに切り換える第2の制御回路と
を有する多相三角波発振回路。
【請求項7】
前記中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有する2個の抵抗素子を有し、それら2個の抵抗素子のそれぞれの一方の端子を共通接続するとともに、それぞれの他方の端子を前記第1および第2の三角波発生回路の出力端子に接続し、前記共通接続のノードに前記中点電位が得られる抵抗分圧回路を有する請求項6に記載の多相三角波発振回路。
【請求項8】
前記第1の三角波発生回路が、前記第1の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第1のコンデンサを充電する第1の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第1のコンデンサを放電させる第1の放電回路とを有し、
前記第2の三角波発生回路が、前記第2の三角波発生回路の出力端子と前記第2の基準電位との間に接続された第2のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第2のコンデンサを充電する第2の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第2のコンデンサを放電させる第2の放電回路とを有する請求項6または請求項7に記載の多相三角波発振回路。
【請求項9】
前記第1および第2の充電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する請求項8に記載の多相三角波発振回路。
【請求項10】
前記第1の充電回路と前記第2の充電回路とが1つの前記定電流回路を共有する請求項9に記載の多相三角波発振回路。
【請求項11】
前記定電流回路が可変のバイアスに応じて動作する請求項9または請求項10に記載の多相三角波発振回路。
【請求項12】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記定電流回路に対するバイアスを可変制御する請求項11に記載の多相三角波発振回路。
【請求項13】
前記第1および第2の放電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する請求項8〜12のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項14】
前記第1の放電回路と前記第2の放電回路とが1つの前記定電流回路を共有する請求項13に記載の多相三角波発振回路。
【請求項15】
前記定電流回路が可変のバイアスに応じて動作する請求項13または請求項14に記載の多相三角波発振回路。
【請求項16】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記定電流回路に対するバイアスを可変制御する請求項15に記載の多相三角波発振回路。
【請求項17】
前記第2の制御回路が、前記第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、前記第2の三角波発生回路の出力電圧が前記基準の下限波高値に到達した時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換える請求項8〜16のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項18】
前記第2の制御回路が、前記第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換え、前記第2の三角波発生回路の出力電圧が前記基準の上限波高値に到達した時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える請求項8〜16のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項19】
電圧入力端子と、電圧出力端子と、上記電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、上記帰還信号と上記三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、上記制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有するスイッチングレギュレータであって、
上記三角波信号生成回路が請求項1〜18のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路であるスイッチングレギュレータ。
【請求項1】
各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生するN個(Nは2以上の整数)の三角波発生回路と、
前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、
前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記N個の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一つを制御する第1の制御回路と、
前記N個の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧を監視し、各々の出力電圧が基準の波高値に到達した時に当該三角波発生回路の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードへ、またはダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードへ切り換える第2の制御回路と
を有する多相三角波発振回路。
【請求項2】
前記中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有するN個の抵抗素子を有し、それらN個の抵抗素子の一方の端子を共通接続するとともに、他方の端子を前記N個の三角波発生回路の出力端子にそれぞれ接続し、前記共通接続のノードに前記中点電位が得られる抵抗回路を有する請求項1に記載の多相三角波発振回路。
【請求項3】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記N個の三角波発生回路の少なくとも一つの出力電圧のスロープ特性を可変制御するスロープ制御回路を有する請求項1または請求項2に記載の多相三角波発振回路。
【請求項4】
各々の前記三角波発生回路が、
当該三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続されたコンデンサと、
アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記コンデンサを充電する充電回路と、
ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記コンデンサを放電させる放電回路と
を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項5】
前記第2の制御回路が、各々の前記三角波発生回路について、アップスロープ波形の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に前記コンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、ダウンスロープ波形の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に前記コンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える請求項1〜5のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項6】
各々がアップスロープ波形の出力電圧とダウンスロープ波形の出力電圧とを選択的に発生する第1および第2の三角波発生回路と、
前記第1および第2の三角波発生回路のそれぞれの出力電圧の相加平均値を現す中点電位を検出する中点電位検出回路と、
前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位が一定レベルの第1の基準電位に一致するように前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧の少なくとも一方を制御する第1の制御回路と、
前記第1および第2の三角波発生回路の出力電圧を監視し、どちらかの出力電圧が基準の波高値に到達した時に前記第1および第2の三角波発生回路の一方の出力電圧発生モードをアップスロープ波形のモードからダウンスロープ波形のモードに切り換えると同時に他方の出力電圧発生モードをダウンスロープ波形のモードからアップスロープ波形のモードに切り換える第2の制御回路と
を有する多相三角波発振回路。
【請求項7】
前記中点電位検出回路が、同一の抵抗値を有する2個の抵抗素子を有し、それら2個の抵抗素子のそれぞれの一方の端子を共通接続するとともに、それぞれの他方の端子を前記第1および第2の三角波発生回路の出力端子に接続し、前記共通接続のノードに前記中点電位が得られる抵抗分圧回路を有する請求項6に記載の多相三角波発振回路。
【請求項8】
前記第1の三角波発生回路が、前記第1の三角波発生回路の出力端子と第2の基準電位との間に接続された第1のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第1のコンデンサを充電する第1の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第1のコンデンサを放電させる第1の放電回路とを有し、
前記第2の三角波発生回路が、前記第2の三角波発生回路の出力端子と前記第2の基準電位との間に接続された第2のコンデンサと、アップスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第2のコンデンサを充電する第2の充電回路と、ダウンスロープ波形の出力電圧を発生するために前記第2のコンデンサを放電させる第2の放電回路とを有する請求項6または請求項7に記載の多相三角波発振回路。
【請求項9】
前記第1および第2の充電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する請求項8に記載の多相三角波発振回路。
【請求項10】
前記第1の充電回路と前記第2の充電回路とが1つの前記定電流回路を共有する請求項9に記載の多相三角波発振回路。
【請求項11】
前記定電流回路が可変のバイアスに応じて動作する請求項9または請求項10に記載の多相三角波発振回路。
【請求項12】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記定電流回路に対するバイアスを可変制御する請求項11に記載の多相三角波発振回路。
【請求項13】
前記第1および第2の放電回路の少なくとも一方が定電流回路を有する請求項8〜12のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項14】
前記第1の放電回路と前記第2の放電回路とが1つの前記定電流回路を共有する請求項13に記載の多相三角波発振回路。
【請求項15】
前記定電流回路が可変のバイアスに応じて動作する請求項13または請求項14に記載の多相三角波発振回路。
【請求項16】
前記第1の制御回路が、前記中点電位検出回路により検出される前記中点電位を前記第1の基準電位と比較して、比較誤差を零にするように前記定電流回路に対するバイアスを可変制御する請求項15に記載の多相三角波発振回路。
【請求項17】
前記第2の制御回路が、前記第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の下限波高値に到達した時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換え、前記第2の三角波発生回路の出力電圧が前記基準の下限波高値に到達した時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換えると同時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換える請求項8〜16のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項18】
前記第2の制御回路が、前記第1の三角波発生回路の出力電圧が基準の上限波高値に到達した時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換え、前記第2の三角波発生回路の出力電圧が前記基準の上限波高値に到達した時に前記第2の三角波発生回路における前記第2のコンデンサの動作モードを充電モードから放電モードに切り換えると同時に前記第1の三角波発生回路における前記第1のコンデンサの動作モードを放電モードから充電モードに切り換える請求項8〜16のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路。
【請求項19】
電圧入力端子と、電圧出力端子と、上記電圧出力端子に現れる出力電圧に応じた帰還信号を生成する帰還信号生成回路と、三角波信号を生成する三角波信号生成回路と、上記帰還信号と上記三角波信号とを入力してPWM制御信号を生成する制御信号生成回路と、上記制御信号によりPWM制御されるスイッチング回路とを有するスイッチングレギュレータであって、
上記三角波信号生成回路が請求項1〜18のいずれか一項に記載の多相三角波発振回路であるスイッチングレギュレータ。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【公開番号】特開2006−50310(P2006−50310A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229340(P2004−229340)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【Fターム(参考)】
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